浅海域電磁探査技術-連続して地下を可視化-

2021年 4月13日 開設

 浅海には大型の作業船は入れないため、海洋での探査で通常用いられる手法の適用は困難です。また、荒い波が海底にまで影響して計測データにノイズを発生させるため、既存の海底設置探査装置では良質なデータを取得することができません。そこで私たちは、小型の作業船でも運搬でき、波浪によるノイズの発生を減らすことが可能な電磁気を利用する地下探査装置を開発しました。
 開発した装置の実証実験として、北海道幌延沿岸域で、陸側と海側それぞれ約10km(全長で約20km)にわたって、電磁探査法のデータを取得しました。その結果と他の地質調査の結果を総合し、この地域では陸域の砂岩層が淡水性の地下水で満たされており、さらにその地層は沖合10kmまで続き、その部分は海底下であるにもかかわらず淡水を含むことを示しました。これは、過去に浸透した淡水性の地下水が、海水に覆われた現在の環境においても、いまだ海水に置き換えられることなく残っていることを示していると考えられます。
 このように浅海の地下探査を可能にすることで、陸域から海域へと連続して地下の様子を把握することができます。地下構造や地下水の状態を推定することは、沿岸部での重要施設立地や放射性廃棄物の地層処分、二酸化炭素の地中貯留などの事業において、利用目的に合う場所の選定に有効な情報となります。私たちが直接見ることができない地下において、どこにどのような構造があり、地下水がどのように分布しているのか、またなぜそのようになっているかが見えて来ます。

参考文献:

 Ueda, T., Mitsuhata, Y., Uchida, T., Marui, A., and Ohsawa, K. (2014), A new marine magnetotelluric measurement system in a shallow-water environment for hydrogeological study, Journal of Applied Geophysics, 100, 23-31, https://doi.org/10.1016/j.jappgeo.2013.10.003.

浅海域電磁探査装置の写真

浅海域電磁探査装置の写真

小型の作業船より浅海域電磁探査装置を使用している様子。Ueda et al. (2014) を改変

小型の作業船より浅海域電磁探査装置を使用している様子。Ueda et al. (2014) を改変