AI(人工知能)を活用した微化石の自動鑑定・分取技術

2021年 4月13日 開設

 大きさが数マイクロメートルから数ミリメートルの微小生物の化石のことを「微化石」といいます。地層中に大量に含まれる微化石からは、その地層が堆積した年代や当時の環境を知ることができ、石油やレアアース等の資源探査にも活用されています。しかし、複雑な形をした微化石の種の鑑定には、長い経験に基づく専門的な知識が必要で、更に顕微鏡下でこれらを手作業で拾い出すという膨大な時間と労力が注がれてきました。このような地道な作業は、微化石による地層解析が始まってから50年以上を経てもほとんど変わっていません。そして、近年では熟練した専門家の減少も懸念されています。
 私たちは、これまで人が行ってきた微化石の選別作業を自動化したシステムを世界で初めて開発しました。AI学習方法のひとつであるディープラーニング技術により、堆積物の中から複雑な形態の微化石を見つけ出し、それらを迅速かつ正確に鑑定し、更にマイクロ・マニピュレーターを用いて繊細な骨格を壊さずに連続的に分取することが出来るようになりました。こうして集められた微化石は、年代測定や環境解析の分析に供されます。
 従来、専門的な鑑定技術をもつ人材の育成には数年かかり、そうした専門家による単一種の微化石1,000個体の鑑定と分取には数日を要していました。一方、今回開発したシステムでは、教師データとなる画像の取得とAIを用いた鑑定モデルの構築を数ヶ月、単一種の微化石1,000個体の鑑定と分取を3時間程度で行うことができます。さらに、これまで人の手では難しかった100マイクロメートルにも満たない微化石の分取も可能なので、地層解析技術として新たな道筋を与えるものとして期待されています。

参考文献:

Itaki et al. (2020) Automated collection of single species of microfossils using a deep learning–micromanipulator system. Progress in Earth and Planetary Science, 7:19,
https://doi.org/10.1186/s40645-020-00332-4

開発したシステムによって微化石を拾い出している様子

開発したシステムによって微化石を拾い出している様子

拾い出された単種の微化石

拾い出された単種の微化石