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2020年7月4日に豪雨災害が発生した球磨川流域の地形・地質

2020年7月6日:開設

研究戦略部:斎藤 眞・利光誠一
地質情報研究部門:川畑大作

 2020年7月4日早朝の猛烈な雨により、熊本県南部の球磨川流域で大規模な氾濫が発生すると共に、斜面災害も発生しました。

 球磨川は水上村に端を発する球磨川本流と、八代市東端の国見岳(1738.8 m)に端を発した本流より長い川辺川が、主に付加体からなる急峻な山岳地に深い谷を刻んで南に流れ、人吉盆地で合流します。人吉を過ぎると球磨川は西北西に流向を変え、球磨村からは山岳地に急峻な谷を刻みます。球磨村-芦北町境からは、町境界に沿って北に向きを変え、八代平野に出て三角州を作って八代海に流れます。

 球磨川は、地質とその形成過程の影響による地形を反映して、U字型の大変特異な流路を持っています。この特異な流路には地質構造形成史が大きく関与しています(図)。


球磨川水系と地質の関係

図:球磨川水系と地質の関係
 本図は地理院地図を基図とし20万分の1日本シームレス地質図V2に活断層データベース、農研機構地図画像配信サービス(AGInfo.JP)
の配信による国土地理院の河川・湖沼情報を重ねて表示したものに地質情報、地形情報、地名等を加えて作成したものです。

 

 中流部の人吉盆地は、断層運動によってできた構造盆地で、南縁には活断層もあります。この直線的な幅広い盆地に球磨川や川辺川は多くの堆積物を運び、また複数の火砕流堆積物も供給され平坦な盆地をとなりました。人吉盆地は、九州南部の北東-南西方向の堆積盆と同様に後期中新世(700-800万年前)に形成され始め、西側の肥薩火山岩類の活動も始まります。肥薩火山岩類分布域では、基盤となる白亜紀以前の地層の分布と高度から、北西-南東方向の構造盆地が形成されつつ、火山岩が噴出したと考えられます。前期更新世になると、球磨川が火山活動でせき止められ、人吉盆地周辺に湖成層の人吉層がたまり。これ以降、球磨川は人吉より西では肥薩火山岩類と付加体との境界を削り込んで流れるようになったと考えられます。

 また、球磨川は、球磨村-芦北町境から北東-南西に伸びる地層を切るように北に流れます。これらの地層は球磨川上流部や川辺川中上流部の南西延長に当たりますが、九州山地を構成する地層が全体に緩く南西に傾いているために、西部ほど上位に位置するものが広く分布するようになります。このため八代近くではジュラ紀付加体を覆う比較的脆弱な蛇紋岩メランジュやペルム紀〜白亜紀の浅海成層が広く分布して川幅は少し広くなり、上流側に硬いジュラ紀付加体が分布して厳しいV字谷になっています。球磨川のU字型の流路の分水界は、球泉洞付近の石灰岩を多く含む後期ジュラ紀-前期白亜紀付加体で、その付近は特に急峻な谷になっているのがわかります。

参考:この付近の20万分の1日本シームレス地質図V2の3D表示。平坦な人吉盆地と急峻な下流域の地質が大きく違うことがわかります。【20万分の1日本シームレス地質図V2で表示

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  • 2020年7月6日:開設

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