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平成30年7月豪雨による斜面災害地の地質

平成30年7月20日:更新
平成30年7月10日:開設

研究戦略部:斎藤  眞
研究戦略部研究企画室:佐藤大介

今回の豪雨では、各地で斜面崩壊が発生しており、発生地域の充分な把握ができておりませんが、いくつかの場所について地質図に基づいて地質の解説をします。

広島県安芸郡熊野町川角5丁目の斜面崩壊

 この地域の多くを占めるのは、8000-9000万年前(後期白亜紀)に地下でマグマがゆっくりと冷え固まってできた、広島花崗岩類に属する粗粒-中粒黒雲母花崗岩(GK1)です(図1)。団地の部分には、三石山のかつての斜面崩壊によってもたらされた崖錐堆積物(ty)が分布します。今回の斜面崩壊は、風化により真砂化した花崗岩が多量の降雨によって流出したものと考えられます。この周辺では坂町小屋浦をはじめ、多くの渓流で真砂化した花崗岩の流出による土石流が発生しています。
 同様の災害は、2009年7月21日に山口県防府市で発生した土石流災害がありました。

 一方、2014年8月20日の広島市安佐南区で発生した土石流災害は、花崗岩とは異なる岩石が崩壊して発生したものも多く、少し地質の状況は異なります。

図1 5万分の1地質図幅「呉」(東元ほか, 1985)。×印災害発生地。

図1 5万分の1地質図幅「呉」(東元ほか, 1985)。×印災害発生地。【地質図Naviで表示

愛媛県宇和島市吉田町の斜面崩壊

 この地域は、約1.1億年前(前期白亜紀)に海溝でたまった砂岩や砂岩泥岩互層からなる地層(Hs)でできています(図2)。これは海洋プレートの沈み込みによって、大陸の縁にくっついたもので、付加体と呼ばれます。今回の斜面崩壊は、風化した部分が多量の降雨によって流出したものと考えられます。

図2 5万分の1地質図幅「宇和島」(寺岡ほか, 1986) 。×印災害発生地。

図2 5万分の1地質図幅「宇和島」(寺岡ほか, 1986) 。×印災害発生地。【地質図Naviで表示

広島県呉市安浦町大字中畑-下垣内の斜面崩壊

 この地域でも多くの土石流が発生しています。市原、中畑、下垣内地区には、約9000万年前(後期白亜紀)に噴火で生じた火砕流が高温と自重で溶け固まった溶結結晶凝灰岩(Nr)が分布しています(図3)。この岩石は、結晶片(破片状の鉱物など)を多く含むのが特徴です(写真1)。周辺には、同じ後期白亜紀の頃の噴火でできた溶結ガラス質凝灰岩(Hr)や溶結凝灰岩(Hd)も分布しています(写真2、3)。結晶片の多い溶結結晶凝灰岩は,緻密な溶結ガラス質凝灰岩に比べて風化しやすく、風化が進むと花崗岩が風化した真砂土のような土砂になります。
今回の斜面崩壊は、溶結結晶凝灰岩の風化した部分が多量の降雨によって、多数の谷筋に沿って流出したものと考えられます。

図3 5万分の1地質図幅「呉」(東元ほか、1985)。市原、中畑、下垣内地区周辺の谷筋で多数の斜面崩壊が発生。

図3 5万分の1地質図幅「呉」(東元ほか、1985)。
市原、中畑、下垣内地区周辺の谷筋で多数の斜面崩壊が発生。【地質図Naviで表示

写真1 流紋岩溶結結晶凝灰岩(標本登録番号:GSJ R026628)。広島県呉市安浦町大字中畑で採取。粗い粒子(結晶片)を多く含む。

写真1 流紋岩溶結結晶凝灰岩(標本登録番号:GSJ R026628)。
広島県呉市安浦町大字中畑で採取。粗い粒子(結晶片)を多く含む。

写真2 流紋岩溶結ガラス質凝灰岩(GSJ R026717)。広島県呉市安浦町中央北で採取。

写真2 流紋岩溶結ガラス質凝灰岩(GSJ R026717)。
広島県呉市安浦町中央北で採取。

写真3 デイサイト溶結凝灰岩(GSJ R026716)。広島県呉市内海北で採取。

写真3 デイサイト溶結凝灰岩(GSJ R026716)。
広島県呉市内海北で採取。

高知県幡多郡大月町柏島県道沿いの斜面崩壊

 斜面崩壊が発生した地域は、1400-1500万年前に地下でマグマがゆっくりと冷え固まってできた花崗岩でできています【地質図Naviで表示】。もともと斜面には、割れ目(節理)のある花崗岩が露出していました。今回の斜面崩壊は、降雨によって割れ目を境に崩壊した可能性があります。

岡山県倉敷市真備町の水害地の地質

 この地域は、南方に流れる高梁川に西から小田川が合流するところです。合流地点の下流側にペルム紀の岩石が山を作り、流路が狭まっています(図4)。
 この地域では、小田川の堤防が決壊し、広大な地域が浸水しました(図5)。浸水域はH_sadで示された第四紀完新世(約1万年前〜現在)の河川堆積物の分布とほぼ一致します。この地質の分布は、現在の高梁川及び小田川が土砂を運んできて堆積させたところ、ということを意味しており、堤防がなかった時代には、しばしば浸水して土砂を堆積させていたと考えられます。
 日本では、完新世に堆積した川沿いの低地や海岸平野をつくる地層、扇状地堆積物などの上に多くの人が住んでいます。このようなところでは、現在でも堤防が破壊した場合には、土砂がたまりうる所であると認識しておくことが重要です。

図4 倉敷市真備町周辺の地質 20万分の1日本シームレス地質図V2 より

図4 倉敷市真備町周辺の地質
20万分の1日本シームレス地質図V2 より【地質図Naviで表示

H_sad:第四紀完新世(約1万年前以降)の河川堆積物
Pg2_snc:古第三紀始新世(4800〜3400万年前)の礫岩
P2_som:中期ペルム紀の泥岩、P_pbg_a:ペルム紀の斑れい岩、P_vb_al:ペルム紀の玄武岩
(ペルム紀は3〜2.5億年前)

図5 図4に地理院地図の平成30年7月豪雨、推定浸水範囲、岡山県倉敷市(2018年7月7日日中)を重ねたもの

図5 図4に地理院地図の平成30年7月豪雨、推定浸水範囲、岡山県倉敷市(2018年7月7日日中)を重ねたもの 

更新履歴

  • 2018年7月20日:「岡山県倉敷市真備町の水害地の地質」を追加
  • 2018年7月13日:「広島県呉市安浦町大字中畑-下垣内の斜面崩壊」と「高知県幡多郡大月町柏島県道沿いの斜面崩壊」を追加
  • 2018年7月10日:開設

問い合わせ先

産総研地質調査総合センター