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平成30年4月11日に大分県中津市耶馬溪(やばけい)で発生した斜面崩壊の地質概説

平成30年4月13日:更新
平成30年4月11日:開設

斜面崩壊地周辺の地質概説

活断層・火山研究部門:石塚吉浩
地質情報研究部門:川畑大作

 平成30年4月11日に大分県中津市耶馬溪(やばけい)で発生した斜面崩壊地の地質を概説します。

 大分県中津市耶馬溪金吉地区周辺の地質は、川沿いに露出する300万年前頃の新期宇佐火山岩類(図2:U3v)の火山岩類及び堆積岩類と、台地上部の平坦面をつくる100万年前頃の耶馬溪火砕流堆積物(図2のYb)からなります。
 300万年前頃の新期宇佐火山岩類(U3v)は、安山岩〜デイサイト質の火山砕屑岩(写真1)を主体とし、砂岩〜シルト岩及び軽石凝灰岩(写真2)を伴います。
 100万年前の耶馬溪火砕流堆積物(Yb)は、金吉地区から南方約20kmの九重(ここのえ)(しし)牟田(むた)付近を給源とするデイサイト質の大規模火砕流堆積物で、強く溶結した凝灰岩を主体とし、その下部に非〜弱溶結の部分を伴います(写真3 )。強溶結した部分には、柱状節理が発達しています(写真4)。
 図2でわかるように、主に強溶結した火砕流堆積物からなる耶馬溪火砕流堆積物が平坦な台地の上部を占め、比較的脆弱な新期宇佐火山岩類(U3v)の火山砕屑岩などが谷沿いの標高の低いところに分布します。耶馬溪火砕流堆積物の台地の縁は急峻な崖になっています。この断面を模式的に書くと図3のようになります。

図1  耶馬溪地域の位置[図2の枠]図1 耶馬溪地域の位置[白枠は図2の範囲]


図2 斜面崩壊発生地付近の地質(左)と地形(右)図2 斜面崩壊発生地付近の地質(左)と地形(右)
Yb(オレンジ色)の耶馬溪火砕流堆積物が平坦な台地を作り、周囲が急峻な崖になっていることがわかります。
地質図:20万分の1地質図幅「中津」(石塚ほか, 2009)
地形モデル:国土地理院が公開する基盤地図情報数値標高モデル10mメッシュより作成


図3  崩壊地周辺の概念的な断面図図3 崩壊地周辺の概念的な断面図


写真1 安山岩〜デイサイト質の火山砕屑岩(中津市耶馬溪町宮園山国川)写真1 安山岩〜デイサイト質の火山砕屑岩(中津市耶馬溪町宮園山国川)


写真2  砂岩〜シルト岩及び軽石凝灰岩(中津市耶馬溪町宮園山国川)写真2 砂岩〜シルト岩及び軽石凝灰岩(中津市耶馬溪町宮園山国川)


写真3  耶馬溪火砕流堆積物の下部にみられる非溶結部(玖珠(くす)町日出生(ひじゅう))写真3 耶馬溪火砕流堆積物の下部にみられる非溶結部(玖珠(くす)日出生ひじゅう


写真4  耶馬溪火砕流堆積物の強溶結部(玖珠(くす)町古後(こご)立羽田(たちはだ)の景)写真4 耶馬溪火砕流堆積物の強溶結部(玖珠町古後(こご)(たち)羽田(はだ)の景)

空中写真による斜面崩壊発生地付近の地形判読

活断層・火山研究部門:川邉禎久

 図4は、1975年撮影の空中写真を用いた斜面崩壊地の地形判読により、斜面崩壊地周辺の地形の特徴を示したものです。赤線は古い侵食谷地形と地すべり地形を示します。今回の斜面崩壊が起こった場所(黄線)は両脇に古い崩壊地形があり、崩壊を免れていた小さな尾根の部分に当たります。
 今回の斜面崩壊が起こった金吉川流域には多数の侵食谷地形、地すべり地形が認められ、斜面崩壊が繰り返し発生していたことがわかります。耶馬渓のような特異な地形は、耶馬渓火砕流堆積物などの地質と、それによって引き起こされる斜面崩壊の集積によって形成されたものといえます。
(空中写真は国土地理院空中写真 CKU7423-C20-60の一部を使用)

図4  空中写真による斜面崩壊発生地付近の地形判読図図4 空中写真による斜面崩壊発生地付近の地形判読図

更新履歴

  • 2018年4月13日:本文修正。「空中写真による斜面崩壊発生地付近の地形判読」を追加
  • 2018年4月12日:「図1」「図2」の更新

問い合わせ先

産総研地質調査総合センター