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平成24年7月九州北部豪雨による
熊本県、阿蘇カルデラ北東部で発生した斜面崩壊の地質学的背景

平成24年7月25日開設

斜面崩壊地周辺の地質概説

   平成24年7月12日早朝の猛烈な雨により、阿蘇カルデラ北東部に位置する熊本県阿蘇市一の宮町手野〜坂梨周辺で、数多くの斜面崩壊が発生しました。

   産総研地質調査総合センターでは、当該地域に関する地質情報として、阿蘇火山地質図 (5万分の1) を発行しています (図1; 小野・渡辺, 1985)。

図1 阿蘇火山地質図
図2 図1の一部を拡大
(図をクリックすると大きなサイズで表示されます。)

   今回崩壊した斜面は、およそ9万年前の阿蘇-4火砕流噴火によって生じ、その後拡大したカルデラの内側の急傾斜地です (図2)。

   急傾斜地には、阿蘇火山噴出物とそれ以前の火山噴出物 (溶岩) が重なっています。下位から、輝石安山岩溶岩 (60万年前)、阿蘇-1火砕流堆積物 (27万年前)、阿蘇-2火砕流堆積物 (14万年前)、阿蘇-3火砕流堆積物 (12万年前)、阿蘇-4火砕流堆積物 (9万年前)、阿蘇-4以降の降下火砕物 (*2) (9万年前以降〜現在) です。

   この地域の阿蘇-1火砕流堆積物は主に溶結凝灰岩 (*3) からなり、阿蘇-2火砕流堆積物は溶結凝灰岩と未固結の火砕物から構成されています。阿蘇-3, 4火砕流堆積物は主に未固結の火砕物から構成されています。最上位の阿蘇-4以降の降下火山灰は、最大で層厚30m以上あり、阿蘇カルデラ東縁で厚くなっています。

   このうち、急傾斜地の多くを占める火砕流堆積物に関しては、おおまかに、急傾斜部分で溶結度が高く、緩傾斜部分で溶結度が低いあるいは非溶結になっています。

   また、地質図 (図1) では示されていませんが、それぞれの火砕流間には10m以上の厚さの土壌と降下火砕物が挟まれています。また、カルデラ内側の急傾斜地も阿蘇-4以降の降下火砕物や土壌により薄く覆われています。

今回の斜面崩壊

   今回の記録的豪雨によって、阿蘇カルデラ壁の急斜面が複数箇所で崩壊しました (図2の赤太線)。これらの斜面には、阿蘇-4以降の火山灰などからなる降下火砕物や土壌が覆うとともに、谷沿いには、斜面から崩落した崖錐堆積物も堆積しています。現地で撮影された写真 (*1) を見る限り、表層の堆積物と一部はカルデラ壁をつくる火砕流堆積物が崩壊した、もしくはそれらの崩壊が土石流の引き金になったと考えられます。

地質情報研究部門火山活動研究グループ・
シームレス地質情報研究グループ

  • *1 アジア航測株式会社「平成24年7月九州北部豪雨による阿蘇山北東側外輪山の土砂移動状況」に掲載された資料および写真を参考にした。
    URL: http://www.ajiko.co.jp/bousai/aso2012_07/index.html
  • *2 降下火砕物: 火山噴火で生じた火山灰や軽石などが空から降ってきて堆積したもの。
  • *3 溶結凝灰岩: 火山噴火で堆積した火山灰と軽石などが自身の熱と荷重によって固結した岩石。