第4回 都市地質問題講演会「地質汚染問題の現状と調査・研究手法」

趣旨

本講演会は,関連する各分野で活躍されている研究者や技術者の方々から提言を得 て,都市地質研究を推進するための方策や関連機関との連携のあり方を検討することを目的としております.都市地質研究に興味のある幅広い方の参加を期待しております.参加無料で,予約の 必要もありません.

概要

日 時 2001年11月22日(木)13:30〜17:00
場所 場所:産業技術総合研究所 第7事業所 第2会議室(別棟大会議室)
(案内図 http://www.aist.go.jp/aist_j/guidemap/guidemap.html 参照)
<主催及び連絡先> 産業技術総合研究所 茨城県つくば市東1-1-1 つくば中央第7事業所
産学官連携部門 研究コーディネータ 金原 啓司
地質調査総合センター 都市地質研究推進部会
電話 0298-61-3687 (地質調査情報部内),Fax 0298-61-3672

プログラム

<13:30-13:40> 主催者挨拶  
<13:40-15:00> 1. (招待講演) 地質汚染問題 −第2の不良債権− ・公的研究機関の必要性 楡井 久(茨城大学 教授)
<15:00-16:30>   2. 地球化学図による全国的な元素の自然バックグランド評価 今井 登(産業技術総合研究所)
3. 精密地質汚染評価マップ作成の研究 丸茂克美・竹内美緒・江橋俊臣(産業技術総合研究所)
4. 関東平野の中−上部更新統の地質と化学元素バックグランド評価研究の展望 中澤 努・木村克己(産業技術総合研究所)
<16:30-17:00> 総合討論  

講演要旨

時 間 講 演 内 容
13:40
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15:00
地質汚染問題−第2の不良債権−
・公的研究機関の必要性
楡 井  久(茨城大学広域水圏環境科学教育研究センター教授)
子供ころに遊んだ兎追えし彼の山、小鮒釣りし彼の川は、どこにいったのだろうか。汚染は山や川、そして地下にも及んでいる。我が国土の地質汚染は深刻で ある。地質汚染の問題の多くは、この30年間に発生してきている。そして、私達は子孫に負の遺産としてそれを確実に引き継ぐことになる。各民間シンクタン クが予測した浄化費用見積りでは、約6兆円、約13兆円、そして60兆円ともいわれている。しかし、私は、これらの予測機関が設立される以前から地質汚染 の仕事に携わり、汚染の状況を比較的正確に把握している者のひとりであると思っている。そのような私は、前述の見積り額より巨額であると思っている。今か ら、10数年前になるが、中曽根・レーガンによる日米会談があった。その際に、米国側から我が国へ、この先10年間で430兆円の公共投資を行うことの要 請があった。それを受けて、筆者は「病んでいる母なる大地の治療費の正確な試算はまだ難しいが、しかし数十兆を出しても恥ずかしくない。」という提言を、 地質学会のシンポジウムでしたことがある。この予算の裏付けはともかく、地質汚染の研究、そして調査や浄化をする特別な行政機構を、早急に立ち上げる必要 があることを述べておきたい。例えば、今までに閉じてしまった国立大学などの地質学教室や旧工業技術院地質調査所などの公的地質研究機関を再復活させ、そ して地質汚染問題に携わらせることである。そのことが、我が国の不良債権問題解決の早道にも思いてならない。
15:00
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15:30
地球化学図による全国的な元素の自然バックグランド評価 今井 登(産業技術総合研究所)
地球化学図とは地殻表層における元素の濃度分布図のことである.このような地球化学図は最近問題となっている土壌汚染などにおいて例えば有害物質である ヒ素や水銀,カドミウムなどがわれわれの周辺にどれくらいの濃度で分布しているか,またそれがわれわれにどのような影響を与えているかに答えるものであ る.しかしながら,自然界には鉱床などのように,自然的な要因でもともと特定元素の濃度の高い地域があり,環境汚染を正しく評価するためにはこれらの自然 起源の元素による自然のバックグラウンド値を正しく把握する必要がある.ここでは地球化学図の内外の動向、作成法とその意義について触れ、現在進行中の日 本全国をカバーする地球化学図プロジェクトについてqべる。
15:30
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16:00
精密地質汚染評価マップ作成の研究 丸茂克美・竹内美緒・江橋俊臣(産業技術総合研究所)
千葉県市原市及びその周辺には日本有数の臨海工業地帯であるとともに,アクアラ インの開通に伴って将来は宅地化が進むと考えられる.しかしこの地域では旧砂取場 などを対象として東京などからの残土が埋め立てられ,将来は地質汚染の発生が危惧 される.我々は5万分の1地質図幅「姉崎」を基図として,有害元素を対象とした5 万分の1地球化学図を作成する.具体的には約1000個の試料を対象とした蛍光 X線分析を行う.また公定法,米国スーパーファンド法を用いて評価する.これらの 分析により各地層中の有害元素含有量を把握し,人為的に発生した地質汚染と,自然 レベルでの異常を識別可能とする.
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16:30
関東平野の中−上部更新統の地質と化学元素バックグランド評価研究の展望 中澤 努・木村克己(産業技術総合研究所)
地下水中の化学物質の移動形態は,地下の地質構造や層相の分布形態に強く支配されている.そのため地質汚染評価を行う上で,地下の層相・地質構造の実態 把握とそれを基礎にした地下の化学物質の自然のバックグランド評価が重要である.関東平野の中−上部更新統についてみると,南東部(房総〜鹿島)では単斜 構造を呈するのに対し,中央部(東京湾北部〜埼玉県東部)では概ね平坦な分布をする.層相も両地域で大きく異なっている.今後,大都市圏にもかかわらず, 研究が立ち後れている中央部において,テフラ層序を確立し,広域での堆積システム,堆積シーケンス把握の必要性がある.
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17:00
総 合 討 論
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懇 親 会