GSJ Open-file Report no.415

三宅島ヘリ観測記録:2002年1月〜12月分

観測者(著者):
川辺禎久・宮城磯治・東宮昭彦・下司信夫・伊藤順一・篠原宏志・高田亮・石塚治
産業技術総合研究所・地質調査総合センター

まとめ: 宮城磯治
産業技術総合研究所・地質調査総合センター

観測者と観測日のリスト:

                    
川辺禎久  1月18日,1月30日,2月14日,3月25日,4月18日,5月15日,5月30日,7月4日,9月4日,10月16日
宮城磯治  1月23日,3月13日,7月12日,8月29日,10月2日,11月13日
東宮昭彦  2月6日,4月10日,7月31日,12月25日
下司信夫   4月30日,7月24日,9月25日,12月18日
伊藤順一  2月27日,10月30日
篠原宏志  1月9日,12月11日
高田亮    1月15日
石塚治    5月22日

観測日、観測者、概要

2002年12月25日 (東宮@地調) 白色噴煙。高度はカルデラ縁より200m程度。 東へたなびくが、カルデラ縁を超えるとすぐに消失。 青白いガスはほとんど視認できないほど少ない。 カルデラ内、主火口を含め、良く見えた。 先週から大きな変化はない模様。 カルデラ底の、西側の池の色は緑色。

2002年12月18日 (下司@地調) 白色噴煙。火口縁より300mまで上昇し、東にたなびく。 午前中の噴煙は、塊が断続的に上昇し、午後は連続的(気象条件の違いか)。 青白い火山ガスはすくない。 陥没カルデラ内の状況、特に変化なし。 噴気は主に主火口北側火口底の孔より出ており、 竪穴火孔からの噴煙は比較的少なく、弱い。 火砕丘基部に複数の湧水を確認。 カルデラ底の低部は広く池になっている.黒池から北池まで水面はほとんど連続 しているようだが,池の色はそれぞれ異なっている.隆起マウンドと北側のカル デラ壁の下の崖錐に挟まれた凹地にある水溜りはとくに濃い赤褐色をしている

2002年12月11日 (篠原@地調) CO2観測と火口観測。 三宅の天候は曇り(4000ft弱)時々小雨で強い西風(35kt)。 噴煙は火口縁から立ち上るとすぐ消える程度だが、 青白くたな引くガスを確認。 陥没カルデラ内、噴煙の循環により目視困難(特に異常はない模様)。 小雨のため、CO2観測には悪条件であった。

2002年11月13日 (宮城@地調) 冬型の快晴,強い西風(上空3000ftは風速46kt, 風向280度)。 白色噴煙。高度は山頂のカルデラリムとほぼ同程度。 明らかに量が少ない。 陥没カルデラ内、強風のためガスが巻いているが、 今回は噴煙の量が少ないために、視程は比較的良好。 主火口の噴煙が少ない。一方、主火口周辺の割目等の噴煙は以前と同程度。 熱赤外線温度計(気象庁)では、主火口内の温度は212℃、 但し上空5000ftからの測定なので、過小評価の可能性あり。 山腹〜山麓を流れ下っていた青白いガスは、今回は確認できず。 山麓周辺部、 特に変化なし。

2002年10月30日 (伊藤@地調) 噴煙はやや多め。南縁の火口より、海抜1600m程度までほぼ真上に上昇。 陥没火口内、池の色は赤サビ色。陥没火口縁とともに、特に変化なし。 から噴煙上昇(本日は比較的量が多い) 大路池ー日光の反射で確認できず 

2002年10月16日 (川辺@地調) 噴煙は目立たない。量は10/2(観測=宮城)時と同じ〜やや少ない。 ときおり白色噴煙塊がカルデラ縁200-300m程度に上昇しすぐ消滅し、 青白色火山ガスとなり空港-三池港方向に流れるが、かなり薄い。 快晴で西風やや強し。カルデラ内は噴煙とガスが巻いて視程悪し。 主火口、噴気帯に大きな変化はない模様。 赤外温度計観測(気象庁)では、最高温度は264℃。 カルデラ底の水たまり、10/2よりやや水位は下がったが、まだ広い面積を占める。 カルデラ縁、大きな変化はなし。但し、 スオウ穴西のカルデラ壁崩落は相変わらず活発で、直下に崖錐の成長が目立つ.

2002年10月2日 (宮城@地調) 白色噴煙。山頂上約200mに上昇。 上空は南西の風10m/s。噴煙は三池〜赤場暁方面に流れる。 ガスの量は中〜やや少なめ。 白煙は山麓付近で消滅し、青白いガスが残る。 陥没カルデラ内、主火口群北側のマウンド内に小さな三日月型の池あり。 既存の池は面積が拡大中央の池はやや赤く、その周辺の池はやや緑色。 カルデラリム、特に大きな変化はなし。 すおう穴〜その西部では、小規模な崩落が継続。 すおう穴はやや赤みがかった灰色。大路池は普通の陸水色(暗い青緑)。 台風の影響か、三宅島沿岸の海水は各所で変色(暗灰色〜明るい緑)。 大路池の西沿岸で、非変色/変色海水の境界付近に赤茶色の浮遊物を確認。

2002年9月25日 (下司@地調) 噴煙量および青白いガスは極めて少ない。 白色噴煙が数分おきに断続的に上昇(海抜1000-1200)。 噴煙が少ないので、カルデラ内の主火口の内部がよく見えた。 噴気は、北側火口底にある三組の孔と、南側の火口からほぼ当量放出されている。 南側の火口は深く、底が確認できないほど。 そのほか噴気孔の分布などには顕著な変化はなし。 西側カルデラ縁、落ちかかっていたブロックの一部が崩壊。 大路池の色は通常通り。西側湖岸に茶褐色の浮遊物あり。 大路池南東の海岸に薄い褐色の変色域。

2002年9月4日 川辺(地調) 雲多し。 火口直上1700-1800mまで白色噴煙が上がり、 火山ガスは西-北西にたなびく。 主火口では噴煙はやや少なめ。 北側噴気孔からのガスは少なく、 南側からのガスが目立つ。 カルデラ底、北池の水位がやや低下。 黒池の水は緑色-褐色と再び黒くなりはじめている。 スオウ穴西側付近では小規模な崩落が連続している模様。 大路池の色、透明感のある青緑から濁った茶緑色に変化。 大路池につづくココマの海岸にも変色水が認められた。

2002年8月29日 (宮城@地調) 雲底500m程度の雲のため山頂部は目視できず。 青白い火山ガスが南東の風により伊豆地区方面に流れる。 噴煙と雲との区別が困難だが、三宅島上空の雲は周囲より高く、 10:00頃に海抜2000m程度(目視&GPS高度計による)あった。 また、ガスの到達高度は少なくとも上空1600m程度と思われる (10:08ごろ約10km北北西の1600m地点の機内で硫化水素臭があった。 山麓部には顕著な変化は認められず。

2002年7月31日 (東宮@地調) 三宅島は中腹(海抜300m程度)より上は完全に雲に覆われ、 火口・カルデラは全く見えず。 雲と噴煙との識別が困難だが、 噴煙高度は火口上200-300m以下と思われる。 「青白いガス」はが東(三池)方向に斜面に沿って流下。

2002年7月24日 (下司@地調) 鉢巻林道付近より上の山頂部は笠状の雲で覆われ、観測不能。 北東の風34kt。南東海岸線に高い波が打ち寄せる。 新鼻〜錆浜にかけて青白い火山ガスが山腹に沿って這い降りる。 高度1000ftの飛行中、機外のSO2濃度は最大で2ppm。 山麓に大きな変化はなし。

2002年7月12日 (宮城@地調) 白色噴煙。高さは山頂から200m程度で、ほぼ一定。 少なくとも火口観察時間内には、単発的なプリュームは発生せず。 西の風。白色煙は島内で消滅し、青白色ガスはサタドー岬を中心に、 標高100〜500m程度を、三池浜北端〜ひょうたん山の幅で、延々と流れる。 白煙のため火孔群の目視は困難。顕著な変化はない模様。 すおう穴下方の崩落は単調に継続か。 火口内の池、面積が拡大。 赤黒かった西側の池は白緑色を主体とする色に変化し、 池東がわの池ほど赤みが強い。

2002年7月4日 (川辺@地調) 当日は視程が悪く、海霧を避けながら三宅島に到達。 白色噴煙。主火口直上で高度は海抜1000m程度。 時々単発で勢いなく1100m程度まで上昇。 青白色ガスとともにサタドー岬方面へ流れる。 ガスの濃さの(見た目)は、1ヶ月前と大差なし。 東-北東カルデラ壁を観察。降水による侵食が進み、雨裂が沢山できている。 カルデラ底の池の水位が上昇し、面積も拡大。 主火口や火口壁に大きな変化はない模様。 午後、火口東海上5マイルでCOSPECを3パス。

2002年5月30日 (川辺@地調) 山頂部の雲多め。 噴煙は、量は少なめ、高度は最高1400m。 青白色ミストが三池〜サタドー岬方向に流れる。 カルデラ内は、池の水位が低下したものの、極端に大きな変化はない模様。 カルデラ壁、北カルデラ壁で崩落に伴う定常的な土煙を確認したが、 大きな変化はない模様。

2002年05月22日 (石塚@地調) 風が弱く天候は良好。噴煙は、最高高度が1500-600m、 量は普通〜やや多く、流されずに火口上空を漂う。 ミストがかなり濃いため火口上空およびカルデラ北側は視程が悪い。 カルデラ内で確認できたものは、主火口付近から幾筋もあがる白色噴煙と、 中央部に広がる茶褐色の水たまり。

2002年5月15日 (川辺@地調) 雲のため視程悪し。風弱し。 白色噴煙が雲をつきぬけてほぼまっすぐ立ち上がり(最高1500m程)、 三池方向にゆっくり流れる。青白色ミストは明瞭でない。 カルデラ内は崩落など大きな変化は認められず。 底の池の水位が上昇し、面積も大きい。 カルデラ底中央部にも大きな池が出現。 北東の新北池は黄緑色、黒池はよく見えず。

2002年4月30日 (下司@地調) 噴煙は最大海抜1000mまで上昇。強い南西風で北東方向にたなびく。 白煙は鉢巻林道付近まで到達後、消滅。 青白いミストは美茂井方向に下降し海上に到達(昨年に比べかなり薄い) 陥没火口内の状況に大きな変化はなし。池の水位はやや高め。 主火口全体の白色噴煙量は多く、主火口底北側は全面噴気地帯。 カルデラリムの小規模な崩壊が続いているようだ。 ガス観測用ホースはカルデラリムより手前で切断か(by中堀氏)。

2002年4月18日 (川辺@地調) 午前午後合わせて1時間のカルデラ内観測. 白色噴煙。噴煙高度は高いときで900-1000m程度 火口上に勢いなく立ち上がる。かなり少ない。 青白色のミストも薄め。やや強い西風によって三池方面に流される。 カルデラ内部に大きな変化はない模様。

2002年4月10日 (東宮@地調) 風が弱く、白色噴煙は、真上に上昇し、東南東に流れる。 高度は海抜1500m程度(午前)、午後にはやや低く間欠的か。 量は4月4日〜5日頃の急減時に比較してやや回復。 青白いガスは斜面に沿って三宅島空港方面に流下。 カルデラ内部が非常に良く見えた。 主火口やカルデラ縁、目立った変化は無い模様。

2002年3月25日 (川辺@地調) 白色噴煙。断続的に高度1100m程度まで上昇。 北東の風がやや強く、ガスは薄木方面へ吹きおろされている。 白煙は島内でほとんど消滅。青白ガスが海上を低く流れる。 主火口内、南側がやや活発な模様。 カルデラ内に大きな変化はなし。水たまりは南西黒池(茶色)を除き、 かなり縮小(小雨のため?)。 カルデラ壁北側では常に小規模な崩落による土煙が認められた。

2002年3月13日 (宮城@地調) 白色噴煙。火口内の南よりの部分から、より多く出ている模様。 平均高度(海抜)1200m、時々1500mに到達し、 南西に流される(上空1000mの風、北東15ノット)。 カルデラ内は乾燥している模様。 スオウ穴付近で、恐らく崩落のため土埃(茶色)があがっていた。 陥没カルデラ内の池の色、噴煙に近い西側は赤黒く、それ以外は褐色。 島の南部5マイルにてCOSPEC観測を3回行なった(H2S臭あり)。

2002年2月27日 (伊藤@地調) 噴煙高度は海抜1800m程度。南〜南南東方向に流れる。 火口内が極めて鮮明に見えた。噴火口、中央奥から青白いガスを噴出。 火口縁は特に新しい亀裂の形成は確認できず。 また、2/23の降灰は上空からは確認できず。

2002年2月14日 (川辺@地調) 白色噴煙。海抜1500-1700mほぼ垂直上昇。 ガスも地表を這う流れも比較的希薄。大路池〜新澪池方面に流れる。 カルデラ壁に大きな変化はないが、小規模な崩落は続いている。 新北池は色がオレンジ色に変化。

2002年2月6日 (東宮@地調) 白色噴煙がほぼ真上(やや東寄り)に上昇。 雲を突き抜け海抜1500m程度、ときおり2000m程度。 青白いガスは低層部では南南西方向、高層部では南東方向へ。 雲のためカルデラ内部・カルデラ縁とも見えず。

2002年1月30日 (川辺@地調) 白色噴煙。高度は海抜900-1000m程度、三池港方向へ。 青白色ガスは地表を這うように流れている。 カルデラ内は噴煙が巻いて視界が悪い。 18日の観察とあまり大きな変化はない模様。

2002年1月23日 (宮城@地調) 白色噴煙、高度約1300m、東〜東南東にながれる。 青白いガスは比較的濃密。高度約100mでCOSPEC観測中、強いH2S臭。 カルデラ内は視界不良で観察不可。

2002年1月18日 (川辺@地調) 噴煙高度は不明。三宅島周辺の雲底高度800m。 噴煙は新澪から薄木-阿古東にかけて流れる。 カルデラ内は、崖錐の大きさや壁面の岩脈などに変化はほとんどなし。

2002年1月15日 (高田@地調) 白色噴煙、到達高度は約1300m。下の方には火山ガス。東北東に流れる。 カルデラ内は視界不良で観察不可。山麓部は特に変化なし。

2002年1月9日 (篠原@地調) 強風.火口内はほぼ水蒸気の白煙が充満しほとんど何も見えない. 観測後半に火口内北半分が見えた.特に変化なし. CO2観測実施(バックグラウンド変動大).


GSJ Open-file Report no.415

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