産業技術総合研究所   地質調査総合センター

三宅島空撮:2002年4月10日

                   by A.Tomiya (2002/04/15改訂)
現在,気象庁のアレンジにより,三宅島の上空に週に1回ヘリコプターを飛ばしており,
大学および産業技術総合研究所(旧・地質調査所)のスタッフがこれに搭乗して観測にあたっています.
原則的に,警視庁,東京消防庁,自衛隊,海上保安庁のヘリが交代で飛んでいます.

ここでは,4月10日に東宮により撮影された写真の一部を公開いたします.
小さな写真をクリックするともっと大きな写真(40-100KB程度)が御覧いただけます.
なお,写真の無断2次使用は御遠慮下さいませ.


観測時間  :2002年4月10日(水) 10:09~10:27および12:52~13:29(三宅島付近での滞空時間)
ヘリコプター:警視庁「おおとり6号」
搭乗者   :大久保(東大震研),大野(日大),東宮(産総研),中堀 ・小泉(気象庁),ほかクルー3名
行程:
  9:05 東京ヘリポート離陸
 10:02 三中ヘリポート着陸(大久保さん・小泉さん降機→島内にて重力測定)
 10:09    同   離陸
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         火口観測(10:09~10:27)
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 10:43 新島空港着陸(給油・休憩・COSPEC機材セッティング)
 12:38    同   離陸
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         COSPEC観測(12:52~13:29)
           |
 13:31 三中ヘリポート着陸(大久保さん・小泉さん再搭乗)
 13:33    同   離陸
 14:35 東京ヘリポート着陸

○観測の様子(午前の部)

DSCN3115s.JPG(1) P0204101020Cs.JPG(2) DSCN3128s.JPG(3)
白色噴煙が,火口上700-800m程度まで上昇していた.
噴煙はまずほぼ真上に上昇し,カルデラリムより上空に達すると,東南東方向に向きを変えていった.
白色噴煙の量は,4月に入ってから減っているようである. 4月10日については,4月4日~5日頃に比べれば噴煙量はやや回復(※)していたが,これは雨上がりのため(降雨によってカルデラ地下浅部に水が供給されたため)であろう.

(※)
4月4日~5日頃,噴煙が極端に減少したことがあった.
参考:東大地震研のページ “噴煙の消えた” 三宅島
http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/terada/kansi/back_number/img/200204041200.jpg

‥‥東大震研が設置した「御蔵島カメラの4月4日12時の画像」
http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/topics/MIYAKE/kansi/index.html
(実際には,4月4日は弱い噴煙が島の反対側に少量流れていた.しかし,以前なら,反対側に流れる噴煙も御蔵島から見えていた,とのこと.)


DSCN3124s.JPG(4) P0204101021Bs.JPG(5) P0204101026Fs.JPG(6) P0204101025As.JPG(7)
今日は主火口が非常に良く見えた.
前回の観察4月5日,東大震研・金子隆之氏の観察 (http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/nakada/2_0405/index.htm )から特に目立った変化は無さそうである.
これまで同様に,主火口のうち,南側(カルデラ壁に近い方)の穴から主に白色噴煙が出ていた.
一方,青白いガスは,主火口のうち北側(写真の手前側)から主に出ているらしい.
噴煙の量が減ってきたので,主火口の内部の細かい構造が見えるようになってきている. 例えば,主火口北側の穴の中には,小さな噴気口が列をなしているように見える(写真5の左手側や,写真6の下手側).

なお,今週末に,主火口付近に「ガス採取用のパイプ」を設置する計画があるとのこと. カルデラリム(写真7の右手側)からカルデラ内に数百mの長さのパイプを垂らし,火口のすぐ近くから直接火山ガスを採取しようという試みである.


DSCN3135s.JPG(8) DSCN3139s.JPG(9)
カルデラ底には,水たまりがいくつか見られる.4月5日に比べて,小さい水たまりが増えているようだ.
カルデラ壁直下では,特に北側で崩落堆積物がひと頃より増えてきているようだ.
DSCN3141s.JPG(10) P0204101026Cs.JPG(11) DSCN3140s.JPG(12)
スオウ穴(写真11の左側,池を含む窪み)のすぐ西側(写真11では手前側)のカルデラリムは,ここ数カ月で次第に崩落が進んでいるとのことである.

○観測の様子(午後の部)

DSCN3159s.JPG(13)
午後はCOSPEC観測に当てられていたが,その途上に少しだけ火口の様子も見ることが出来た(写真13).
P0204101310Cs.JPG(14) P0204101312As.JPG(15) DSCN3173s.JPG(16)
COSPEC観測中に,東方沖から見た三宅島.
白色噴煙の量は,午前よりやや減っているようにも感じられた.少ない時は火口上200-300m程度しか上がらない.
青白いガスは,東南東(三宅島空港付近)に向かって流下していた. しかし,その量はひと頃に比べるとかなり少なく,写真でも青白いガスはかすかにしか写っていない(曇り空だったこともあるが).
この日,SO2(二酸化硫黄)の放出量は,およそ5000トン/日(気象庁発表)と,最近では最低値に近いものだった. → 産総研・風早氏のまとめによるSO2放出量のグラフ(風早氏のページ)

○その他

DSCN3146s.JPG(17) DSCN3153s.JPG(18) DSCN3152s.JPG(19)
本日お世話になった警視庁のヘリ「おおとり6号」(ベル412型).
お昼の休憩中に,午後の観測に備えてCOSPECの機材を固定した(写真18,19).
なお,COSPEC観測(SO2観測)については,風早氏の解説を参照していただきたい.
DSCN3163s.JPG(20)
島の南西部にある「新澪池(しんみょういけ)跡」. 1983年噴火の際の「マグマ水蒸気爆発」で出来た爆裂火口である. ここにはもともと「新澪池」という池があったので,その名がある.
この地を「降灰泥土処分場」にする計画が去年(2001年)東京都から発表され,議論が巻き起こっている.
ships.JPG(21)
高速船「セブンアイランド」が,レインボーブリッジに向かって疾走する様子. 「セブンアイランド」は,東海汽船の伊豆七島航路に2002年4月に就航したばかり. 写真の船は,ちょうど竹芝桟橋を14:25に出たところであるが,伊豆大島には16:10に到着してしまう.
なお,船のカラーリングには3種類あるそうだが,写真はそのうちの「セブンアイランド 虹」であるようだ.
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1.概況

天気は晴れのち曇り.風は弱かった.海上も波がとても静か.
主火口をはじめ,カルデラ内部が非常に良く見えた.
前回(4月5日)の観察から特に目立った変化は無さそうである.

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2.噴煙・ガス

「白色の噴煙」がほぼ真上に上昇したあと,東南東に流れていた.
噴煙頂部の高度は,午前の観測時は海抜1500m程度(火口上700-800m程度).
午後の観測時は,それより低く,いくぶん間欠的にも見えた.
噴煙の量は,4月4日~5日頃に急減したときにくらべると回復しているが,
これには,前日の降雨による影響もあると思われる.

「青白いガス」は,東南東方向(三宅島空港)に斜面に沿って流下していた.
火口観測(ドアオープン)およびCOSPEC観測(窓オープン)の際,
機内でもガス臭を感じた.

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3.カルデラ内部・カルデラ縁

カルデラ内部は非常に良く見えた.
主火口やカルデラ縁について,前回(4月5日)の観察から特に目立った変化は無さそうである.
噴煙の量が減ってきたので,主火口の内部の細かい構造が見えるようになってきている.

なお,中堀さん(気象庁)によれば,火口の最高温度は356℃だったとのこと.

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4.飛行コース等について

○火口観測:
南西側からカルデラリムに接近し,リム沿いを右回りに飛び,北東縁で離脱,
というパターンを3回.
そのうち,はじめの2回は高度3500ft,最後の1回は高度4500ftで飛んだ.
いずれも,ドアを全開にしていただいたので,非常に観察がしやすかった.

○COSPEC観測:
島の東方沖を,南北に1往復半(北行→南行→北行).
COSPEC機材は,お昼の休憩時に座席に固定.
このため,新島離陸時から窓オープンで飛んだ.
COSPEC終了時の北行中,島の北東沖にて局所的な降雨に遭ったため,
機材の片づけは飛行中に慌ただしく行なわれた.


以上
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Created:Apr.,11,2002