GSJ Open-file Report no.440

三宅島ヘリ観測報告:2004年1月〜2005年8月分

観測者(著者):
宮城磯治・下司信夫・東宮昭彦・川辺禎久
産業技術総合研究所・地質調査総合センター

まとめ: 宮城磯治
産業技術総合研究所・地質調査総合センター

観測者と観測日のリスト:

宮城磯治:2004年1月14日, 2004年4月8日, 2004年7月27日, 2004年10月14日, 2005年8月9日
下司信夫:2004年2月9日, 2004年6月8日, 2005年2月9日
川辺禎久:2004年4月1日, 2004年9月21日
東宮昭彦:2004年8月10日, 2004年11月16日


2004年01月14日 (宮城@地調) 白色噴煙は、リムの外ですぐ拡散消滅。 青白いガスは、陥没カルデラ内と、風下側の地上付近に確認できた。 噴煙の勢いは、昨年10月30日や12月16日とほぼ同じか、やや強め。 カルデラ内の池は、中央部のやや青白いものを除けば、みな赤茶色。 崖錐や崩落は、大きな変化を認められず。 本日は非常に強い西高東低の気圧配置のため西〜北西風が非常に強く、 火口観測は10分間のみ。ドアを開けるCOSPEC測定は実行できず。

2004年02月09日 (下司@地調) カルデラ内には白色噴煙(特に南半分に)と青白いガス(全体的に)が充満し、 東縁から(西風は約30kt)流出している。 白色噴煙は鉢巻林道より内側で消滅する一方、 青白いガスは三池港付近まで明瞭に確認できた。 噴煙量は比較的少ない。 火口付近、昨年はじめの頃の状況とほとんど変化なし。 カルデラ底では、池が縮小。 カルデラ縁には、新たな崩落などは発見できず。 山麓部には特に大きな変化はなし。

2004年4月1日 (川辺@地調) 白色噴煙。高度は1000m程度か。量はやや少なく、火口から離れると消える。 ガスは北東風により南西の薄木方向に流される。COSPEC観測時にややガス臭を感じた。 カルデラ内はよく見えた。大きな変化はなし。 カルデラ壁、カルデラ底、カルデラ底の岩塊の位置、 水溜りの位置や形(多少の水位変化がある)に違いはなく、 大きな崩落も起きていない。

2004年4月8日(宮城@地調) 雲底500m程度のため山頂部は見えず。 COSPECを用いたSO2放出量測定(4回)と、山麓部の観察。 「風下側の山麓を流れ下る青白いガス」がはっきり見えた。 COSPEC中のh2S臭も強く、最近にしてはガスが多い印象。 山麓部では、風上側に緑が増えたのに対し、風下側は冬の風景のまま。 その他、特に変化は認められず。

2004年6月8日 (下司@地調) 標高300m以上はほとんど雲に隠れ、カルデラ内の目視はできず。 噴煙高度は、雲との区別が困難だが、1200-1500m(雲の頂)よりは低い。 火山ガスは主に東山腹に流下。 赤場暁を中心とする狭い範囲でやや濃い「青白いガス」を認めた。 COSPECとDOASを同時に使用し、 島から5マイルと3マイルで火山ガス観測を行なった。 赤場暁付近の緑がやや増えたか(?)。

2004年7月27日 (宮城@地調) 山頂部は雲底高度600m程度の雲に覆われていたが、 雲の切れ目から火孔および陥没カルデラの一部を目視できた。 噴煙は白色で、 総量は2004年1月14日(観測=宮城)や4月1日(観測=川辺)と大差なく、 到達高度は島雲の高度(約1500m)よりは低い。 青白いガスが島の風下(阿古〜新澪池にかけて)山麓を流れ下るのを認めた。 カルデラ壁と火孔は、最近の観察と大きな変化はない。 カルデラ底は乾いており、水溜りは一つも確認できず。 島の東側(風下)山麓部の植生の回復は、谷部を主体としており、 尾根部は地面や樹々が茶色である。大路池はやや濁った緑色を呈していた。

2004年8月10日 (東宮@地調) 晴天で風弱く、山頂部がよく見えた。 噴煙はほぼ垂直にカルデラ縁より700〜1000m程度に上昇し、 上空で東北東〜北東方向にたなびきつつ雲と混じる。 青白いガスは山麓には流れ下らず、噴煙とともに上空を流れる。 カルデラ内に大きな変化はなし。 底の水溜まりはほとんど干上がり(7月27日同様)、 カルデラ壁が最近顕著に崩壊した跡は見当たらなかった。 赤外線温度計による火口温度は190℃(気象庁・宮下氏による)。 大路池が黄緑色に濁る。以前にも観察されたように、藻の大量発生か(?)。

2004年9月21日 (川辺@地調) 山頂にかかる雲のため、噴煙高度やカルデラ内部の様子は不明。 青白い火山ガスが、南西の風に乗り、三七山方向に流れていた。

2004年10月14日 (宮城@地調) 高度約700mの雲の隙間から短時間、陥没カルデラ内を観察。 白色噴煙が標高約1400mに到達。島を出る前に消滅。 白煙の量は2004/7/27や同8/10の数倍(気象条件のためと思われる)。 青白い火山ガスが新澪池方向に山腹を流れ下る。 風下側海上では、普段のh2S臭に加え、SO2臭も強く感じた。 陥没カルデラ内、噴気孔マウンドの中央に池ができ、 池の周囲にあった黄色い物質(硫黄)の大半が消失。 陥没カルデラ底に緑色〜赤褐色の池が多数出現。 池の色は、噴気孔マウンドに近いほど緑で、遠いほど赤い傾向あり。 これらの点を除けば、顕著な変化は認められず。 カルデラ縁の新たな崩落や崖錐の生成も認められず。

2004年11月16日 (東宮@地調) 好天。風は西北西22ノット(2500ft,11:34)。カルデラ内が良く見えた。 白色噴煙はカルデラ縁から100m程度の高さで消失。 青白いガスは三宅島空港方面に漂うが、色が薄い。 カルデラ内やカルデラ縁に大きな変化は認められず。 カルデラ底の水溜まりは少なめ。 三宅島空港にごく短時間だけ着陸した際にはかなり強い硫黄臭があり、 ガスマスクの必要性を感じた。

2005年2月9日 (下司@地調) 火口内の状況に大きな変化なし。 カルデラ南西部の火口カメラの設置場所付近のカルデラリムが、 数m程度にわたって崩落しているのを確認。

2005年8月9日(宮城@地調) 晴れ。高度約1000mの風は南西約6m。白色噴煙が標高約1000m程度まで力なく上昇。 島を出る頃には雲と区別ができず。それとは別に青白いガスが北東山麓を流下。 気象庁によれば火口の最高温度は178.3℃。 DOASを用いたSO2放出量値は約8000トン/日で、最近にしては多目。 火口内、多数の噴気孔を有するマウンドに大きな変化は認められないが、 周囲に比べると粗粒な岩石が少ない。小規模な噴火による火山灰の堆積のためであろう。 陥没カルデラ底は比較的乾燥し、池はすべて赤茶色で、面積も狭い。 カルデラ縁では新たな顕著な崖錐の生成や崩落は認められなかったが、 継続的に小規模な崩落が発生している模様。


以上をもって、5年がかりの三宅島ヘリ観測記録を終了する。

これまでの観測データは以下のとおり。

  1. 2000年9月分 (川辺禎久・中野俊・宇都浩三・風早康平・ 金子克哉・伊藤順一・星住英夫・山元孝広・宮城磯治(2002) 三宅島ヘリ観測記録: 2000年9月分, 地質調査総合センター研究資料集, no. 380, 産業技術総合研究所地質調査総合センター)
  2. 2000年10月分 (中野俊・宮城磯治・伊藤順一・川辺禎久・濱崎聡志・高田亮・星住英夫・山元孝広(2001) 三宅島ヘリ観測記録: 2000年10月分, 地質調査総合センター研究資料集, no. 369, 産業技術総合研究所地質調査総合センター)
  3. 2000年11月〜2001年3月分 (川辺禎久・中野俊・宮城磯治・伊藤順一・山元孝広・東宮昭彦・高田亮・星住英夫・斉藤元治・佐藤久夫・須藤茂・濱崎聡志(2003) 三宅島ヘリ観測報告: 2000年11,12月、2001年1,2,3月分, 地質調査総合センター研究資料集, no. 392, 産業技術総合研究所地質調査総合センター.)
  4. 2001年4月〜12月分 (川辺禎久・宮城磯治・須藤茂・東宮昭彦・伊藤順一・中野俊・ 斉藤元治・高田亮・石塚吉浩・松島喜雄・浦井稔・栗原新・篠原宏志・山元孝広(2003) 三宅島ヘリ観測記録: 2001年4月〜12月分, 地質調査総合センター研究資料集, no. 405, 産業技術総合研究所地質調査総合センター.)
  5. 2002年1月〜12月分 (川辺 禎久, 宮城 磯治, 東宮 昭彦, 下司 信夫, 伊藤 順一, 篠原 宏志, 高田 亮, 石塚 治 (2005) 三宅島ヘリ観測報告: 2002年1月〜12月分, 地質調査総合センター研究資料集, no. 415, 産業技術総合研究所地質調査総合センター.)
  6. 2003年3月〜12月分 (川辺 禎久, 宮城 磯治, 下司 信夫, 東宮 昭彦, 篠原 宏志,須藤 茂,小栗 和清 (2005) 三宅島ヘリ観測報告: 2003年1月〜12月分, 地質調査総合センター研究資料集, no. 416, 産業技術総合研究所地質調査総合センター.)
  7. 2004年1月〜2005年8月分 (本報告)

※リンク切れの際はこちらを参照のこと。


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