地質図を描く

地質図のホームページ トップへ
地質図のできるまで トップへ

地質図を描く

   地質図では表土や植生がない状態の、地層や岩石の分布を表します。しかし、実際には土や草木に覆われて、全面的には石を観察できません。では、限られた情報からどのように地質図をつくるのでしょうか。

   地層には広い範囲に連続するものがたくさんあります。それらは、隣り合うルートで同じ地層が確認されれば、その間にも連続して分布していると推定します。なるべく多くのルートを調査し、連続する地層を追いかけます。

Gongenyama1.jpg Gongenyama2.jpg Gongenyama3.jpg

   こうして野外調査を続け、データを増やしていくと、最初は点にすぎなかった露頭の情報も、調査が進めば線状につながってきます。地質図の作成では、このように情報を点から線、線から面へと広げていきます。


点から線へ -ルートマップ-

Shiibamura1.jpg

   それぞれの露頭での観察結果は、フィールドノートと地図に記載されます。通常、野外調査では、できあがりの地図の縮尺よりも精度のよい地図を使って歩きます。時には地図に出ていない道を書き加える必要もありますし、位置を正確に知るためにはその方が都合がよいからです。これをルートマップと呼んでいます。

   ただし、精度のよい地図は枚数も必要になってしまうので、野外から戻ったときに完成時の縮尺により近い地図にデータを書き写します。このとき、統一した色をつけたり、サンプルポイントを書き込んだりして全体の地質の様子を把握するのに利用します。


線から面へ -地質図の作成-

Shiibamura2.jpg

   地質調査中は、調査の済んだ地点から次第にルートマップに書き込まれていきます。しかし、植生や土壌がある限り、地層の露出には限界があり、地域を全面的に調べ尽くすのは困難です。また、そこで、どうしても調査できない場所は、最後にはさまざまな状況証拠から推量して地質図を完成させます。

   例えば、深い海で堆積した地層は、通常広い分布を示します。隣り合うふたつの谷でそのような地層が確認されれば、その間の尾根にもその地層が分布していると考えるのです。反対に続くはずの地層が隣り合うルートに現れないときには、断層などの何らかの原因が考えられます。このようにして、地層の境界 (界線) をルートマップ上に書き入れていきます。

Shiibamura3.jpg

   更には過去の研究報告がある場合はそれを参考にして、継承するところ、直すところを考えながら、ようやくひとつの区割りの地質図が完成します。

   こうした一連の過程の中で、過去の研究とは異なる事実を見いだしたり、新しい発見があったりします。それらは地質図とは別に、地質図の作成と並行して専門誌に研究報告として公表され、社会の知的財産として蓄えられていきます。


    * 本ページを作成するにあたり、基図として国土地理院発行の数値地図50mメッシュ (標高)、2万5千分1地形図「上椎葉」及び5万分1地形図「椎葉村」を使用しました。