GSJニュースレター No.7  2005.4
タイの地質図幅(1/5万)の新プロジェクトについて  脇田 浩二(地質情報研究部門)

中国で行われた世界地質図委員会、アジア地質図編集会議(IGMA5000)の際に、タイDMR(鉱物資源局)の地質図作成グループのリーダーの1人Pol Chaodumrong 氏から以下の話を伺った。

  タイでは、DMRが長らく5万分の1地質図幅を作成してきた。しかし、この10数年の間、地質図幅作成は、他のプロジェクトの副産物として年に6-7枚だけ作成され、公式のプロジェクトとはなっていなかった。しかし、一昨年の統廃合により新しい省庁に所属し、自然資源環境省の元に再編され、新しい所長Somsak Potisat氏が着任すると状況が一変し、新しい地質図幅作成方針が打ち出された。それは、現在未完成の地質図幅約300枚(タイ全土の約40%)を今後4年以内に完成させるというものであった。 約30名の地質図幅作成者(研究者とは別)が担当するのだが、人員はとても足りないので、急遽、新卒の学生を大量に任期付職員として採用し、地質図を作成することになっている。

 この話を聞いたとき驚愕したが、Pol Chaodumrong氏は非常にポジティブに受け止めていて、「十分な予算が配分され、公式に地質図幅を作成できて光栄である」と述べた。また、「若い地質の学生に地質図作成現場を経験させることができ、非常に有意義なプロジェクトである。地質図の精度は高い物は望めないが、早期に全国の地質図を完成する意義は大きい」としている。

 この話を、途上国の低い精度の地質図作成の話と一笑に付すのは、大きな間違いである。このプロジェクトの背景には、自然資源環境省の様々な情報(例えば、国立公園整備情報、自然保護関連情報等)が1/5万縮尺で整備されていて、それらと統合したデータベースの作成が急務であることがあげられる。基礎情報としての地質情報が全国レベルで早急に整備することの意義は、世界共通であることは明白である。これらのことは、地質図幅作成を単に自然科学の観点からばかりではなく、経済や社会の問題としてとらえ、社会の要請に的確な精度で応えることを真剣に考えることが必要であることを示唆している。


/ Pege Top ↑ / Contents / GSJホーム /
GSJニュースレター No.7 2005.4
(独)産業技術総合研究所地質調査総合センター
GeologicalSurvey of Japan,AIST