GSJニュースレター No.6  2005.3
火山ガス観測のための小型SO2観測システムの開発  大和田 道子・風早 康平 (深部地質環境研究センター)
写真1 小型SO2観測システム(トラバース用).分光器とレンズからなるDOASシステムは,USBケーブルでパソコン接続される.GPSデータも同時に取得する.
写真2 ウォーキングトラバースの様子.本DOASシステムとGPSをヘルメットに取り付け,小規模噴煙の下を歩いてスキャンする.
写真3 パンニング用SO2システムによる薩摩硫黄島での観測の様子.モータードライブのミラーが装備されており,ミラーを回転して噴煙をスキャンする.
 噴火活動を続けている浅間山や三宅島では多量の火山ガスが放出されおり,定期的に火山ガス中のSO2の放出量観測を行っています.現在,三宅島ではCOSPEC(相関スペクトロメーター)を,浅間山では,東京工業大学,東京大学と共同で2003年から開発中のDOAS法(Differential Optical Absorption Spectroscopy)を用いた小型SO2観測システムにより観測を行っています.

 DOASシステムもCOSPECシステムも基本的な観測原理は同じで,散乱紫外光を光源とし,310nm付近の波長におけるSO2の吸収を利用して,紫外光の光路上のSO2濃度を測定しています.観測手法としては,トラバース法とパンニング法があり,トラバース法では,ヘリコプターや車などに装置を取り付け,噴煙の下を通過することによって,噴煙中のSO2濃度をスキャンしています.それに対して,パンニング法では,定点から噴煙を横切るように装置を動かすことによって,SO2濃度をスキャンしています.スキャンしたSO2濃度の積分値が噴煙のSO2断面濃度になり,これに風速値をかけることによって放出量を求めています.

 両者とも同じ観測原理ですが,COSPECは,本体の重量が20kg,電源などを含めたフルシステムでは100kgを超え,運搬・設置の問題から,観測に大きな制限がありました.それに対し,本システムは,本体のサイズが手のひらサイズになり,パソコンや電源も含めて1-4kg程度(トラバース用とパンニング用で異なる)になっています.また,パソコンによる制御が可能となり,GPSデータも同時に取得できるようになったので,解析がCOSPECの時に比べより簡便になりました.本システムの小型かつ軽量の特徴を生かして,これまで観測が不可能だった雌阿寒岳や樽前山,岩手山などの山頂部の小規模な噴煙の観測も行っています.

 現在も,浅間山や,北海道,九州などの火山で,合同観測を行い,様々な地点からのデータを取得し,散乱によるSO2濃度の距離減衰の影響などの計測特性等の試験や解析用ソフトウェアの改良などを継続して行っています.本システムを用いて観測した浅間山のSO2放出量値は随時,下記のwebページに更新しています.

http://staff.aist.go.jp/kazahaya-k/asama/index.html

/ Page Top ↑ / Contents / GSJ ホーム /
GSJニュースレター No.6 2005.3
(独)産業技術総合研究所地質調査総合センター
GeologicalSurvey of Japan,AIST