Contents ニュースレタートップ GSJホーム

地質情報構造規格SciML実務者会議出席報告
伏島 祐一郎(活断層センター、現 地質情報研究部門)・Joel C Bandibas(地質調査情報センター)


写真 たくさんの概念設計図を描きながら,活発な討議をおこないました.

  

 2007年9月10日から19日にかけて,オーストラリア・メルボルン市のビクトリア州立地質調査所において,地質情報構造規格GeoSciMLの実務者会議が開催されました.この会議には,二つの目的がありました.そのひとつめは,今年5月米国で開かれたGeoSciML設計部会において構築された,GeoSciML第二版データモデルの完成度を高めることです.そしてその結果を基に,インターネット上で地質情報交換の運用実験をおこなう環境を整える事が,もうひとつの目的です.会議の出席者は,日本・オーストラリア・カナダ・米国・スウェーデン・英国・フランス・イタリアの8カ国の地質調査所関係実務担当者,合計25名でした.日本からは,伏島祐一郎・Joel C Bandibasの2名が出席しました.5月の会議同様,密度の濃い討議が連日早朝から日暮れまで繰り返され,運用実験への道筋が見えてきました.会議の詳細な議事録は,下記のWebページとそのリンクページに発表されています.

 https://www.seegrid.csiro.au/twiki/bin/view/CGIModel/MelbourneF2F2007

 第一の目的のために,データモデルの過不足を調整しました.このうち最も重要な追加によって,他言語対応が図られました.根本的な地質学の共通概念に関する要素を基軸に据え,それに多様な言語の専門用語を個別に対応付ける構造の追加です.この構造追加を具体化するためには,各言語の専門用語辞書を作るだけでなく,それを地質学の共通概念に関連付ける必要があります.これらの作業は,各国の地質調査機関が担当する事が最も効率的であり,GSJにもその責務を担う事が期待されました.これまでGSJが長年にわたって積み重ねてきた,多言語辞書などの成果に基づいて努力を重ねれば,積極的にこの期待に応えていくことができるでしょう.

 第二の目的,すなわち地質情報交換の運用実験を目指して,その仕様の策定をおこないました.詳細に亘って議論され,大量の図と文書にまとめられた仕様の骨子を,以下に略記します:(1)各国の地質調査機関の,多様な構成のサーバから供給される多様な地質図のつなぎ合わせと,共通凡例の多言語表示.(2)この地質図を構成する各地層の年代・岩相などの属性データの,多言語一覧表示・並べ替え.(3)同様のデータの,多言語検索.(4)各種システム・アプリケーションソフト・フォーマットからフォーマット間の入出力と変換.(5)多言語メタデータによる地質図の検索.

 以上の仕様はすなわち,GeoSciML第二版を利用すると何ができるようになるかをも示していますが,そのためにはまず,運用実験を成功させなければなりません.成功に向けた準備日程も議論され,2007年末までに,運用実験環境のプロトタイプとマニュアルなどの書類やサンプルデータの準備;2008年前半に非公開実験と調整の繰り返し;8月に実験環境を完成し公開実験という道筋が定められました.準備作業の分担もおこなわれ,実験環境の基幹部分の構築は,イギリス・カナダ・オーストラリア・フランスの各機関が担当する事になりました.GSJは,伏島とJoel C Bandibasを中心に,地質情報統合化推進室および統合地質情研究グループが,GEO Gridと協力しながら分担作業を進めていきます.すなわち上記の多言語環境に関わる分担作業のほか,既存の数値地質図と属性データの書式変換・XML文書作成・地質図配信サーバ構築・XML変換システム構築などで,これらによって日本の地質情報の国際流通促進を目指します.

 会議では頻繁に,OneGeologyとの関係も議論されました.OneGeologyは,全地球を覆う電子地質図のインターネット配信を目指す国際計画で,GeoSciMLの利用が具体化すれば,どちらにとっても大きな国際的周知宣伝活動になりえます.このため次回のGeoSciML実務者会議を,すでに来年2月にフランスで開かれる事が確定しているOneGeology実務者会議との共同開催とする予定がたてられ,会議は無事終了しました.








Contents ニュースレタートップ GSJホーム

独立行政法人産業技術総合研究所
地質調査総合センター