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第24回国際測地学・地球物理学連合(IUGG)総会参加報告
下司 信夫(地質調査情報センター)


写真1 会場のひとつであるこの建物はペルージャ大学のDepartment of Fine Art で,古い教会建築を利用している.芝生の前庭は日中になると日光浴をする若者であふれる.


写真2 Department of Fine Art にておこなわれた火山関係のセッション会場.壁一面にデザインが貼り出されており,独特の会場の雰囲気を醸し出している.熱心な議論が繰り広げられた.


 IUGGは地球・惑星学研究およびその国際的な発展の促進を目的とする国際的な学術団体で,第24回の総会が本年7月2日から13日までの日程でイタリア・ペルージャ市にて開催された.IUGGのウェブサイトによると,第24回総会には世界91カ国から約4400名が参加した.日本からの参加者は487名で,米国・イタリアについて3番目である.

 会場となったペルージャ市はイタリア中部に位置するウンブリア州の州都で,その起源は古代ローマ時代にさかのぼり,中心部は中世の町並みがよく保存されている歴史のある街である.われわれ日本人には中田英寿が欧州で始めて所属したクラブチームの所在地としても馴染み深い.今年は,イタリアを含む南ヨーロッパでは記録的な猛暑であったらしいが,会議期間中は猛暑も収まり,朝夕などは比較的涼しく快適であった.発表会場も冷暖房がない会場がほとんどであったが,真昼の数時間を除いて比較的快適に過ごすことができた.

 学会は2週間にわたって開催され,多くのセッションは前半と後半に分かれているうえに,同時にいくつもの会場でさまざまな分野のセッションが進行しているため,1人の参加者が会議の全貌を知ることは不可能である.私が参加したのは苦鉄質火山の噴火活動や火山テクトニクスに関係するセッションが中心であり,私の会議の感想は自分の参加したセッションに限定されるものであるが,活発なイタリアの火山を研究課題としたレベルの高い多くの研究が発表され,またそれぞれの発表に対して活発な議論が展開されていたことが印象的であった.ひとつの火山や噴火といった現象に対し,測地や地震といった地球物理学的な手法と,構造地質と岩石学といった地質学的手法,あるいは地球化学的な手法を融合した研究が行われ,全体としてより高度な火山の理解を目指していることが窺われた.多くの活動的火山を抱えるイタリアの研究者はこの分野では世界でも優れた研究を進つつあり,活発な活動を続けるイタリアのエトナ・ストロンボリの両火山をテーマとする多くの重要な研究発表が行われた.また火山のテクトニクス分野では,イタリアにも多く分布するカルデラ火山の形成のメカニズムやそれに伴う巨大噴火のメカニズムに関する一連のセッションが設けられ,理論・実験・観測・野外地質調査等さまざまな視点からの研究発表がなされた.

 今回は,大規模な学会にもかかわらず比較的多くの発表が口頭で行われた.そのため,多くのセッションで活発な質疑が展開され,内容の深いきわめて有意義な研究発表となった.一方ポスター発表は旧市街の歴史的な建物を利用して行われたため,広さや構造がポスター発表に適した会場とは言いがたく,ポスター会場の運営等には参加者から多くの不満が聞かれた.しかし、ポスター会場が旧市街の中心部にあったため発表終了後直ちに路上のオープンカフェにて反省会を促すことができ,その点については大変好評であった.IUGGの会期はちょうどヨーロッパで屈指の規模を誇るウンブリア州ジャズフェスティバルと重なっていたため,街はお祭りムードに満ち,メインストリートは深夜まで多くの人々でにぎわっていた.イタリアの都市といえばスリ置き引きが多いとうわさされるが,ペルージャはきわめて安全で余計な心配なく楽しむことができたのは幸いであった.







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