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CCOP第43回年次総会・第48回管理理事会

高田 亮・村尾 智 (地質調査情報センター)

1.CCOP第43回年次総会報告
写真1:総会円卓会議での外務省小野企画官の「人間の安全保障」に関する発表.


写真2:佃議長のもとに議事進行が行われた管理理事会.佃議長の右手は,チェン事務局長.



表:年次総会参加者

CCOP 常任副代表,同管理理事会議長, 産総研 研究コーディネータ
佃 栄吉
CCOP 名誉顧問,産総研 参与 嶋崎吉彦
外務省 多国間協力課 企画官 小野日子
産総研 地質調査情報センター長 栗本史雄
産総研 地質調査情報センター 総括主幹 村尾 智
産総研 グリッド研究センター長 関口智嗣
産総研 地圏資源環境研究部門 主任研究員 奥田義久
産総研 地圏資源環境研究部門 主任研究員 鈴木祐一郎
帝塚山学院大学 教授 鈴木清史
金沢大学 助教授

塚脇真二


 東・東南アジア地球科学計画調整委員会(CCOP)は,東アジア・東南アジアにおける持続的発展と人間の安全保障のため,コーディネートする機関である.現在,中国,インドネシア,日本,韓国,カンボジア,マレーシア,パプア・ニューギニア,フィリピン,シンガポール,タイ,ベトナムが加盟している.また,加盟国を資金的・技術的に援助する協力国として先進国14ヶ国が関与している.日本は加盟国であると同時に協力国としての立場を持つが,実質的には後者としての役割が大きく,創立以来,資金協力,長期専門家・短期専門家の派遣など,さまざまな協力を行っている.

 今年の第43回年次総会は,2006年10月29日から11月3日まで,韓国大田広域市のユソン(儒城)ホテルにて,シンガポールを除く10加盟国,協力国,協力機関,顧問団が参加して開催された.今回の会議には,日本から表に示す者が出席した.

 開会式において,CCOPが創立40周年を記念して出版した「A World of Difference」について,記念式典が行われた.この出版物には2005年2月より嶋崎吉彦参与が共同執筆し,多大な貢献があったことから,内容の簡単な紹介などの短いスピーチを嶋崎参与が行った.

 チェン事務局長より,本期間中の事務局運営,予算,活動,新規プロジェクトについて報告が行われた.また,産総研が仲介し,CCOPと世界銀行の契約として2005年5月より開始した,零細鉱業(スモールスケールマイニング)のプロジェクトである「Communities And Small-Scale Mining-Asia」(CASM-Asia) について,報告があった.

 加盟国報告では,「CCOP国内支援委員会」が準備したレポートを発表した.CCOP国内支援委員会は,わが国の地球科学の全体像を把握し,その情報をCCOPに提供するため,今年の6月に設置されたものである.この委員会設置に対しては顧問団より強い賛成が寄せられた.CASM‐Asiaについては,その上位団体であるCASMの年次総会が管理理事会直後に開催され,地質調査情報センターがCASM-Asiaを代表して参加するため,意向のある国は表明するよう呼びかけた.また,講演の最後に,地質情報技術の重要性と「GEO Grid」について一言触れ,各国の支援に対する期待を表明した.わが国の講演後,タイはJICAに言及,ベトナムはCASM-AsiaおよびGEO Gridに言及した.

 協力国報告では,わが国がアジアをリードしているグリッド技術および「GEO Grid」について,その概要を発表するとともに,これまでの成果をデモンストレーションした.デンマークはベトナムと中国が国境を越える問題で協力することに首脳レベルで合意したことに触れ,CCOPがデンマークの出資で進めているICBプロジェクト(国境にまたがる石油胚胎盆地の評価)が,その合意を実践する手段として位置づけられると述べた.

2007年1月から12月までの事業計画について事務局より説明があり,了承された.わが国が人間の安全保障のために主導するCASM-Asiaに対しては,フィリピン政府より引き続き参加する旨の表明があった.

 総会とは別に,非公開で顧問団会合が開催され,CCOPが顧問団の勧告によく従い,改革を進めていること,財政・運営それぞれの活動が順調であることが認められた.

 会議では国際惑星地球年(IYPE)が話題になったが,これについては,わが国のIYPE事務局より用意した進捗状況報告書を会場で配布,補足説明を行った.

 各国代表団からの所見表明では,わが国のCCOPに対する考え方について,所見を述べた.国内支援委員会を各国に先駆けて作ったことと,「人間の安全保障」について外務省より講演があることを特に強調した.

 本円卓会議と呼ばれる課題別討議では,わが国は議長に選ばれ,英国とともに議事進行を担当した.この会議では次の4つの基調講演が行われた.

(1) タイ 「Role of geoscience in governance for sustainable development and human security: decelopment of mineral resources of Thailand」
(2) オランダ 「Role of geoscience in governance for sustainable development and human security: Geological Suevey of the Netherlands」
(3) 日本 「Human security challenges」.ここでは外務省の小野企画官がわが国の考えを説明し,高い関心がよせられた(写真1).
(4) GEM-IUGS 「Geoscience governance: issue and challenges for sustainable development and human security」
技術セッション「New energy resources in the CCOP region」では,奥田義久と鈴木祐一郎が発表を行った.

2.CCOP第48回管理理事会報告
 CCOP第48回管理理事会は,年次総会に続いて,2006年11月4日から11月5日まで,シンガポールを除く10加盟国が参加して開催された(写真2).日本からは,佃 栄吉研究コーディネータ,村尾 智,高田 亮、が出席した.

 昨年度の管理理事会の勧告に基づいて実施された活動について事務局より報告があった.この報告ではわが国提案の「GEO Grid」と「CASM-Asia」について言及された.「GEO Grid」についてはわが国からも「GEO Grid: our initiative, progress and prospect」として発表を行った.これに対しては大きな反響があり,顧問団からも,デジタルディバイド解消につながる重要なプロジェクトとして賞賛があった.

 わが国は,東・東南アジアの環境問題に貢献し,人間の安全保障と持続可能な発展を実現するための行動案として,在タイ日本国大使館およびCCOP事務局との連絡を取りつつ,「CCOP及びその他の地域における環境分析支援プログラム」構想を検討してきたが,今回の管理理事会で承認された.今後,これを受けて,速やかに,産総研,日本アイソトープ協会,CCOPの三者でMOUが締結される予定である.

 次期会合については,マレーシア政府より,第49回管理理事会を2007年3月にランカウイ島で,フィリピン政府より,第44回年次総会,第50回管理理事会を,それぞれ2007年10月21〜26日,27〜28日に,セブ島で開催することが表明された.

 CCOP事務局長選出に関する報告では,マレーシアは,CCOPに最適な人材を確保するため,事務局長職は一般公募することなどを盛り込んだ事務局長選出の手続きに関する改定案を提案した.この改定案は,次回の管理理事会で議論すべきであるという意見が出された.それを受けて,日本は事務局長立候補受付の期間を延長することを提案した.

 産総研よりCCOPへの長期派遣について,代表団よりスピーチを行い,了解を得た.この決定を受けて,産総研地質調査総合センターは,職員1名を2007年1月より2年間派遣する予定である.

 CCOP事務局長は,次回に国際惑星地球年を含むアジェンダを用意することを提案した.各国はこれを了承した.CCOP事務局長は,日本,マレーシアがすでに国際惑星地球年の国内委員会を設立していることを報告し,他の加盟国にも国内委員会を立ち上げるように呼びかけた.

 議題は一部修正のうえ,採択された.







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