GSJニュースレター NO.25 2006/10

第2回ユネスコジオパーク国際会議出席報告
渡辺 真人 (地質情報研究部門)・宝田 晋治 (地質調査情報センター)


写真:発表中の佃コーディネータ.


 2006年9月18日から21日まで,第2回ユネスコジオパーク国際会議が英国北アイルランドのベルファストで行われ,40ヵ国から約300人が参加しました.日本からは,地質調査総合センター(GSJ)の佃・渡辺・宝田を含む4人が参加しました.

 ジオパークというのは,地質学的に重要な露頭や場所(地質遺産といいます)を含む地域において,その地質遺産を研究・教育に活用し,遺跡や文化遺産とあわせて観光などに活用し,その地域の持続的発展を目指す活動です.元々はヨーロッパで始まり,現在ではユネスコが推進しており,2004年からは一定の基準を満たすジオパークがユネスコの世界ジオパークネットワークの一員として認定されることとなりました.今回の会議で12のジオパークが新たに世界ジオパークネットワークのメンバーとして認定され,ユネスコ認定のジオパークは50箇所になりました(ヨーロッパ30箇所,中国18箇所,イラン・ブラジル各1箇所).日本では地質学会の下にジオパーク推進委員会があり,日本におけるジオパークの設立へ向けて関連省庁・学会,地方自治体などへ働きかけを行っています.また,GUPI(地質情報整備・活用機構)がジオパークに関する講演会とシンポジウムをそれぞれ今年の4月と8月に行い,ジオパークという活動が日本でも徐々に認知されつつあります.

 ジオパークの目的は,地質遺産を保護することだけではなく,それを観光資源として地域振興に活かすことにより,地元の人と訪問者に地域の地質や地形の成り立ち,およびそれらが人間の生活とどう関わってきたかを理解してもらい,最終的には地球科学の成果を今よりももっと社会の中で役立ててもらうことです.これを実現するには,ジオパークが本来の目的から遊離せずに,採算の取れる形で長く継続することが重要です.このような視点で各国でのジオパークの活動を報告して情報交換するとともに,今後の方向を議論するのが今回の会議の目的でした.

 GSJから参加した3人は,日本のジオパーク推進活動(佃),ジオパーク候補としての有珠と雲仙(宝田),日本のジオパーク候補(渡辺)について発表しました(写真).今のところ安定大陸にしかジオパークはなく,変動帯に位置するために地質災害という形で地球科学と社会との関わりがある,日本におけるジオパークの活動には多くの期待と関心が寄せられました.

 会議では,持続的開発とは何か,といった理念的な議論に加え,どのように現地のガイドを養成するか,パンフレットをどう魅力的にするか,など具体的なジオパークの運営に関しても様々な議論がなされました.また,各地のジオパークの立ち上げの経緯や運営の工夫に関する発表を聞くとともに,それらの活動を推進している人たちと話をすることができ,日本におけるジオパークの推進にとって有意義な情報収集をすることができました.

 各国のジオパークの推進と運営は大まかに次のようになっているようです.英国を中心とする西欧では,過去からの自然保護の活動の蓄積の結果,地質遺産の保護ということに社会の理解があり,その状況下で草の根的な地元の活動によりジオパークが推進・維持されています.北欧・中欧などその周辺地域では,国立公園を所管する省庁や,国立地質調査機関など国の協力のもとで地方自治体などがジオパークを推進しています.中国の例は特異で,国を挙げてのバックアップによりジオパーク(地質公園と呼ばれています)が公的資金で整備され,一種のテーマパークとしてジオパークに多数の観光客が遊びに来ています.その賑わいと経済的な成功が広く知られたため,現在では民間資金がジオパークの開発に投資されてさらに新たなジオパークの開発が加速しています.

 今回ブラジルが新たにネットワークの一員に認定され,マレーシア,ナミビア,モロッコからも申請が出ており,オーストラリア,カナダやベネズエラからも会議に参加者が来ています.このことはジオパークがヨーロッパ・中国中心の活動から真のグローバルな活動になりつつあることを示しています.日本でも,今後地道な広報・普及活動を続けていき,多くのジオパークが設立されて,地球科学が多くの人にもっと身近なものになることを願っています.

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