GSJニュースレター NO.24 2006/9

第3回CCOP火山災害軽減のための野外ワークショップ
高田 亮(地質調査情報センター)・浦井 稔・下司 信夫・鬼沢 真也(地質情報研究部門)


写真1:アナクラカタウ火山の登山途中での記念撮影.周辺には2002年噴火の噴出物が表面に見られる.

写真2:ジャワ西海岸のアンヤールで,津波で崩壊した灯台跡を見学している参加者(写真左側).灯台は高さ約40mあったと言われている.クラカタウ火山から約50kmの距離である.津波は写真の奥のほうから,手前に向かってやってきた.


 若手の研究者を中心に,相互に噴火体験を交換して交流を深め,アジア太平洋諸国で互いに噴火経験を共有化するために,CCOP火山災害軽減のための野外ワークショップを2004〜2007年の期間,毎年開催している.第1回は,2004年12月に産総研が中心となり日本で開催した1)2).第2回は,インドネシア火山地質災害防災局が現地組織者となり,2005年9月に,メラピ火山のお膝元であるジョグジャカルタで開かれた3).第3回は,名称が変更された上記研究組織であるインドネシア火山地質災害防災センター(CVGHM)が現地組織者となり,インドネシアのバンドンで2006年8月29日から9月3日まで開催された.インドネシアから約30人,フィリピンから2名,日本から5名,CCOP事務局から1名の計40名が参加した.

 8月30日には,インドネシア地質局長とCVGHM所長の挨拶から始まる厳粛な式典が行われ,本ワークショップの重要度が認識された.メラピ火山が活動中のジョグジャカルタの支所からも幹部が出席した.30日と31日午前の発表会では,CVGHMから,メラピ火山における2006年噴火の活動報告と初期における警報伝達の有用性について,カランゲタン火山における2006年噴火活動と地球物理観測,ハザードアセスメントの発表があった.また,イジェン火口周辺の地下水汚染の地球化学観測とバンドン北方のスンダカルデラ形成に伴うプリニアン噴火についての報告があった.フィリピン地震火山研究所から,カントリーレポートとマヨン火山の2006年の最新の火山活動が報告された.地質調査総合センターからは,鬼沢真也が,有珠火山2000年噴火の例をもとに,地下構造がマグマの動きに及ぼす影響を,下司信夫が,カルデラ形成を伴う三宅島2000年の噴火活動を,浦井 稔が,ASTERによる熱観測例とALOSによる観測概要を報告した.電力中央研究所から,土志田潔氏が火口の移動の意義を発表した.アジア航測がインドネシアの赤色マップをポスターで発表した.最後に,アジア諸国への貢献について,CCOP事務局と議論した.

 野外巡検は8月31日午後〜9月3日に行われた.8月31日午後は,有史に山体崩壊をおこしているパパンダヤン火山を訪れ,2004年噴火の火口と堆積物を見学した.火山ガス採取のデモが行われた.夕方,近年,地震が急増し緊張が高まったグントール火山の観測所を訪問し,観測体制と最近の状況の説明を受け,夜8時まで議論した.9月2日は,1883年にカルデラ形成を伴う大噴火をし,発生した津波により,3万6000人の犠牲が出た,クラカタウ火山を訪れた.今回のメインイベントである.カルデラ形成後,現在活動中のアナクラカタウ火山にボートで上陸し,山頂火口で最近の火山活動を議論した(写真1).午後には,クラカタウの外輪であるラカタ火山に残るカルデラ壁で,成層火山の断面を観察した.9月3日には,ジャワ西海岸沿いで津波の痕跡として残る,崩壊した煉瓦でできていた灯台跡を見学した(写真2).この遺跡を説明した立看板がないのは残念であった.ジャワとスマトラで,最大で35mの高さの津波が来たと言われている.

 第3回は,セレモニーを大事にするインドネシアらしい会議の進行であった.要旨集と巡検ガイドブックが当日準備されていた.巡検出発前には,発表のパワーポイントファイルと写真がコピーされたCD-ROMと,本ワークショップのオリジナルTシャツが,参加者に配布された.今回は,CCOP事務局が参加し,会計などが円滑に進んだ.来年の第4回は,フィリピンで開催する予定である.これまでの本ワークショップの成果のとりまとめも行う予定である.


関連HP:http://staff.aist.go.jp/a-takada/ccopworkshop-e.html

引用

1)GSJ Newsletter.No.4, 2005/1, 9-10
2)地質ニュース,608,21-27
3)GSJ Newsletter,No.13, 2005/10, 6-7
 

/↑up / Contents / ニュースレターTop / GSJホーム /

独立行政法人産業技術総合研究所
地質調査総合センター