GSJニュースレター NO.22 2006/7

地質地盤情報協議会第1回意見交換会の開催 
佐藤 努 (地質調査情報センター)


写真:意見交換会の様子.

  2006年7月5日に産総研丸の内サイト会議室にて,地質地盤情報協議会の第1回意見交換会が開催されました.この意見交換会は,今年度発足した地質地盤情報協議会が主催するもので,当協議会の運営委員会の場で重要と判断されたテーマについて講演者をお呼びして意見交換を行うことが主旨となっています.6月2日の運営委員会において取り上げられたテーマは,「ボーリングデータの利用と公開」です.各機関により収集されたボーリングデータなどの膨大な地質地盤情報について,公的な取り扱いと公開のあり方を検討するため,年2回ほどの意見交換会を開いて産業界,学協会,国及び自治体の公的機関等から幅広く意見を聴取し,相互の情報交換を図ることになりました.

 第1回の意見交換会は,2名の方に主に海外におけるボーリングデータの整備や公開について講演していただきました.参加者は26名で,内訳は政府関係(内閣府,文部科学省,経済産業省)からの招待が4名,当協議会からの参加が21名(講演者を含む.ただし役員・運営委員・事務局は11名),自治体連絡会からの参加が1名(当協議会の2名を加えると自治体関係者は計3名)でした.

 講演は,まず株式会社建設技術研究所の磯部猛也氏より,「諸外国におけるボーリングデータのWeb上での流動動向について」と題して,EUのeEarthプロジェクトやアメリカの仮想地質データセンタープロジェクトの紹介がありました.eEarthプロジェクトとは,EUの予算によるボーリングデータ共有プロジェクトで,6カ国(オランダ,イギリス,ドイツ,ポーランド,チェコ,リトアニア)とイタリアの1機関において実施されています.一方,アメリカでは,カリフォルニア地区の公的機関が保有するボーリングデータを仮想的なデータセンターを介して共有するプロジェクトが進められています.いずれの場合も,膨大なデータを複数の国や機関で共有するためには,データを統一的に扱うことのできる仕組みが必要であることが強調されました.

 続いて,NPO法人地質情報整備・活用機構(GUPI)の大矢 暁会長より,「オランダにおける地下地質データの整備状況」についての講演がありました.オランダは国土の最高地点が標高300mほどで,海抜0m以下の土地も多く,そのほとんどが第三紀よりも新しい地質で覆われています.従って,地質地盤情報におけるボーリングデータの重要性は高く,そのデータを収集・整備するための法的制度が世界で最も進んだ国の一つとして挙げられます.講演では,ボーリングデータを収集するための法的制度の説明や,石油資源開発戦略と地盤沈下対策などとの関係について,また2004年に完成した地下地質図幅などの紹介もありました.

 講演の後は,活発な意見交換が行われました.具体的には,著作権の問題を解決する方法,データを収集するためのビジネスモデルに関する意見,公的に収集されたデータが死蔵されている現状と,それらの膨大なボーリングデータが生かされれば都市部の地震防災などに役立つといった展望についてです.また講演で紹介された諸外国のプロジェクトを日本に適用するためには,新たな法的整備に加え,データを総合的かつ継続的にメンテナンスできる公的な組織が必要であるということを確認して,意見交換会は終わりました.

 第2回の意見交換会は,7月31日に予定されています.次回は,日本におけるボーリングデータ収集の実態把握を中心として,広く意見を収集する予定です.

 なお地質地盤情報協議会の活動につきましては,GSJの産学官連携活動のWebページ(http://www.gsj.jp/Sgk/)をご参照下さい.

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