GSJニュースレター NO.20 2006/5

地質標本館特別展「日本列島の20年−白尾元理写真展−」と
普及講演会「日本列島の骨格をなす付加体」「デジカメで撮る地学写真」
酒井 彰 (地質標本館)


写真:講演している白尾元理氏.

 地質標本館では科学技術週間にあわせて,特別展「日本列島の20億年−白尾元理(もとまろ)写真展−」を2006年4月18日から7月17日まで開催しています.この展示は,同タイトルの写真集から32枚の写真を選んで,展示・解説しているものです.拡大された展示用写真からは,本の写真とは違った迫力と感動が伝わってくるようです.

 この特別展に関連して,4月22日(土)の午後には地質標本館映像室で普及講演会が行われました.13時30分から「日本列島の骨格をなす付加体」について,地質標本館の酒井 彰が講演しました.日本列島は付加体で成り立っていること,付加体とはどのようなものか,どんな岩石や地層からなっているか,日本は付加体研究の先進国であることを,陸上の調査・研究の成果と野外写真,教科書の図などを使って分かりやすく解説しました.また,昨年夏に就航し,現在テスト航海中の地球深部探査船「ちきゅう」を写真で紹介しました.この船は,海底下に分布する付加体の調査を行うことができ,海底下7,000mまでの掘削が期待されています.この船を使った調査で,付加体中で発生する地震のメカニズムの解明や,未来のエネルギー資源として期待され,「燃える氷」とも呼ばれるメタンハイドレートも調査する予定であることを紹介しました.講演の後,露頭や川原の転石から採集した,付加体を構成する岩石を展示し,説明しました.20人ほどが興味を持って岩石を手に取り,質問をしていました.

 14時40分から「デジカメで撮る地学写真」というタイトルで写真家の白尾元理氏が講演されました.白尾氏は学部と大学院で地質学を学んだ写真家です.まず,科学写真として必要なこと,できれば避けたいことなどを,実際の写真を例に説明されました.特に印象に残ったのは,被写体である露頭の撮影前の丁寧な掃除とスケールを入れること,スケールの入れ方に細心の注意を払うことというアドバイスというか苦言でした.また,被写体全体にピントを合わせる方法や,全体の光線の具合など,どうしたらいい写真が撮れるかが紹介されました.完璧な写真を撮るためには手を抜いてはだめなこと,時間をかけるべきところでは,時間をかけなければならないことを痛感させられました.次に,デジタルカメラで撮った写真をもとに,フィルム写真と比べどのような利点があるか講演されました.その中には,昨年国立科学博物館で公開されたティラノサウルス・スーの写真について,レタッチソフトを使って影や光線の具合などをどのように調節したか,苦労とその結果の紹介がありました.さらに,天体写真の撮り方や光学写真では得られない日食の際の月の映像など,かつて天体少年であった筆者などにはたまらない写真も紹介されました.講演の後に出た質問は,どの質問もどのようにしたら良い写真が撮れるかということに尽きるものでした.

 講演会終了後,白尾氏の著書のサイン会を兼ねた販売会と,質問に答える形での展示写真の説明がありました.著書の販売では,地質標本館ではこれまでに経験のない販売数であったことも特筆されます.参加者は会場がほぼ満席となるほどで,十数名の地球科学研究者とかなりの数の写真愛好家がおられたようです.


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