GSJニュースレター NO.18 2006/3

「日本におけるドイツ年イベント」記念品の紹介
青木 正博 (地質標本館)・脇田 浩二 (地質情報研究部門)


写真1.岩塩鉱物アラモード.
写真2.重晶石.
 日本におけるドイツ年を記念して地質標本館特別展示を開催した際に,共同開催者であるドイツ連邦地球科学天然資源研究所(BGR)より,地質図,書籍および鉱物標本が寄贈された.

 ドイツ連邦地球科学天然資源研究所に敬意を表するとともに,今後それらの資試料が有効に活用されることを願って概要を紹介する.

1.地質図4幅
 地質図は,20万分の1縮尺の地質図3枚と2.5万分の1地質図が1枚である.いずれもドイツで作成された非常に古い地質図で,貴重なものばかりである.

 3枚の20万分の1地質図は,1924年から1925年に出版された“Treptow”, “Wollin”,“Stettin” である.これらの3枚は南北に連なった連続する地域で,現在はドイツ国境の東側に沿ったポーランド国内の地域にあたるが,当時はドイツの領土内であった.ステッティンという町があり,その北西ステッティン湖という湖がある.また最北部の“Treptow”は,バルト海に面している.これらの地質図によると基盤の岩石はジュラ紀や白亜紀の地層で,洪積層と沖積層がこれらの基礎岩盤を覆っている.

 2.5万分の1の地質図は,1937年に作成されたベルリン市北部の地質図で,当時の詳しい都市の地下について,白亜紀の基礎や第三紀層,洪積層,沖積層,などの分布が詳しく示されている.現在,日本では,都市部の地質図は2.5万分の1縮尺で作成されておらず,近い将来の課題となっているが,ドイツでは既に1937年に作成されていたことに驚きを覚える.

2.書籍
 「ドイツのロマンティックな旅」と題された,最新の写真集である.ドイツの自然,家並み,古いお城や宮殿などが,大きめの写真とともに紹介されている.全228ページ,オールカラーのすばらしい装丁の本である.ドイツに旅する前に目を通しておくのもよし,眺めながら旅した気分になるのもよいだろう.

3.鉱物標本
 二つの鉱物標本が寄贈された.日独友好と,BGRとGSJとの協力関係のシンボルとして,地質標本館に永く展示,保存される.

 寄贈された標本の一つは,岩塩層構成鉱物のセットである.無色透明,白色,黄色,茶色,赤橙色,青紫など,色調のバリエーションにこだわって詰め合わされ“岩塩鉱物アラモード”と呼ぶにふさわしい姿になっている(写真1).細粒のものは半透明の不規則な塊を,また,大型結晶は無色透明の劈開片を入れてある.塊の大きさは長径2〜5cm程度で,岩塩,カーナライト,硬石膏,ポリハライトを含む.木製の台座に金属性のラベルが留めつけられ,BGRからのプレゼントと銘打たれている.ドイツ各地の岩塩坑から集めた見かけのきれいなものを組み合わせて,ディスプレイ用に特別に製作して頂いたものと思われる.ちなみに,ドイツの北部の岩塩層は,およそ2億5千万年前にドイツ北部の堆積盆で海水が干上がってできた蒸発堆積物で,それ以降に堆積した通常の砕屑性堆積岩より低密度であるため,上位の地層を押し上げてドーム構造をつくっている.岩塩層の中で量的に最も多い物質が塩化ナトリウム-岩塩(halite)である.岩塩は食用,保存剤や工業原料として古くから盛んに採掘された.今日では,その採掘跡の空洞を廃棄物の中間貯蔵や処分のために有効活用することが検討されている.

 もう一つの標本は,ドイツ西部のドライスラー鉱山(Dreislar, 12km ESE Medebach, Sauerland)から産出した重晶石である.熱水鉱脈の空隙に面して白色板状の結晶が大きく成長したもので,淡黄色のドロマイトと黄銅鉱を伴う.純白の重晶石の上に金色の粒子が散点する様は,色彩的にも造形的にも美しい(写真2).黄銅鉱は,他の硫化鉱物を伴わず,また結晶粒子が相互に干渉し合うことなくそれぞれ理想に近い結晶形態を示している.標本のサイズは25cm×15cm×7.5cm,重量は約2.5kg.ドイツから日本まで機内持ち込みにするなど細心の注意を払って運んで頂いた甲斐あって,ベストコンディションで地質標本館に到着した.特別展の終了後,この標本はホールから第4展示室の硫酸塩鉱物のコーナーに移される.

 BGRより寄贈された地質図,書籍,鉱物標本は,以下の場所で閲覧できます.

    地質図:研究本館1階地質図ライブラリー
    書籍(ドイツのロマンティックな旅):研究本館3階第7図書室
    鉱物標本(岩塩鉱物アラモード,重晶石):地質標本館第4展示室(特別展終了後)

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