GSJニュースレター NO.15 2005/12

地質標本館 開館25周年記念イベントの開催
目代 邦康 (地質標本館)
写真1 地質標本館多目的室で行われた化石レプリカの制作体験.
写真2 地質標本館ロビーで行われた砂で遊ぶ体験学習(鳴り砂とエキジョッカー:写真上部, 砂変幻:写真下部)

地質標本館は,今年で開館25周年を迎えました.地質調査総合センター(旧地質調査所)で行われた研究の過程で蓄積された地質標本の有効利用をはかるとともに,展示を通して研究成果の普及を行うために,1980年8月19日から一般公開を開始しました.館内には2,000点以上の岩石,鉱物,化石などの標本や地質模型,パネルを展示し収蔵庫には40万点を超える国内外の地質標本を所蔵しています.そして,常設展示や特別展等の館内展示のほかに,各種の体験学習型のイベントも実施してきました.開館以来の入場者数は,2005年10月末時点で68万人を超えます.

 開館25周年という節目の年を迎えましたので,去る10月29日に地質標本館において記念イベントを実施しました.今回,これまで行ってきた各種の体験学習の中から特に人気の高い,化石レプリカの作製,石割の体験,砂を題材にした体験学習などが行われました.前日までの好ましくない天気予報に反して当日は好天に恵まれ,230名の参加者がありました.親子での参加も多く,子供から大人まで楽しめるイベントとなりました.ここに,当日の様子を紹介いたします.

 化石レプリカは,三葉虫とアンモナイトの化石からとったビニルシリコンで作られた型に,石膏を流し込んでつくるものです.参加者は,作業をしながら三葉虫の複眼の仕組みや,アンモナイトの内部構造,泳ぎ方などの説明を受けます.化石のレプリカを作りながら,古生物の生態や化石のでき方を考えてもらおうというものです(写真1).

 石割りの体験は,事前に主催者側で準備した各地の様々な岩石を選んでもらい,それを(安全面の配慮から)ビニールに囲われた枠の中で叩いて割ってもらうというものです.参加した子供達は,硬く大きな岩石を割った達成感と,この中からきれいな新鮮な面が現れたことで,喜びと驚きの声をあげていました.そして,地質標本館のロビーに設けた「石の相談コーナー」で,参加者は自分が割った岩石について専門のスタッフによる説明を受けました.

 砂で遊ぶ体験学習は,鳴り砂と,(最近常設となっていますが)砂を使った不思議な玩具「砂変幻」と地盤の簡易液状化実験装置「エキジョッカー」が用意されました(写真2).鳴り砂の体験は,島根県の琴ケ浜から採取した鳴り砂をワイングラスに入れて,すりこぎでついてもらうというものです.実際につくと,キュッ,キュッと音がしますので,その感触や音を各自に体験してもらいました.鳴らした砂は,袋に入れて記念に持ち帰ってもらいます.さらに,日本各地の鳴り砂のパネルによる説明とともに,それぞれの場所の砂を両面テープで台紙に貼り付け,それを実態顕微鏡で,鉱物粒子一粒一粒の形や,場所の違いを観察してもらいます.砂の起源と各地の地質との関係や,減少しつつあるきれいな海岸環境について考えてもらおうというものです.地質標本館の展示物のひとつである砂変幻は,密封した箱の中に砂と穴の開いているアルミの板が入っているものです.穴から砂がこぼれ落ち,箱の中には,穴の配列によって様々な立体的な模様が現れます.子供達は,箱を何度もひっくり返して繰り返し楽しんでいました.今回のイベントでは,GSJのOBで,企画者でもある有田正史さんによる,砂変幻の作製実演も行われました.地元,筑波山と桜川の地図から,穴の配列を考えて図面を引き,ドリルで穴を開けていきます.イベントの終わりの頃には完成しましたが,子供達は興味深くその様子に見入っていました.

 いずれのイベントも,参加者の五感に直接訴えかけるものです.参加者のほとんどが,自分で体験し,スタッフから直接説明を受けたことによって,地球科学に対する興味が高まったと思われます.イベントの運営は経験豊富なスタッフ(地質標本館に加え,地質調査総合センターの研究ユニットからの協力者,そして博物館実習生)によって手際よく進められました.体験学習の回を重ねるごとに,イベントの内容は発展してきており,今後もさらに興味深いプログラムが用意されることと思います.

 このイベントは,子どもと自然学会*第5回全国研究大会(つくば大会)との共催イベントとして開催されたものです.10月29日には,同じく共催イベントとして,地質標本館野外地質観察会「古東京湾の地層と化石〜太古の渚で潮干狩り〜」が開催されました.そして,翌30日には,共用講堂で上記学会のシンポジウムや一般講演会が開催されました.ここでも地質標本館の体験学習プログラムを主体とした話題提供がなされ,活発な議論が交わされました.
*http://www5e.biglobe.ne.jp/~k-sizen/ を参照 

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