GSJニュースレター NO.12 2005/9

日本第四紀学会2005年大会参加報告
吾妻 崇(活断層研究センター)



 8月26日から8月29日にかけて,島根大学(松江市)を会場として,日本第四紀学会2005年大会が開催された.今大会では,口頭36件,ポスター33件の発表が前半2日間で行われ,28日にはシンポジウムと普及講演会が,29日には巡検が,それぞれ開催された.

 「第四紀」とは,地質時代区分のなかで最も新しい,約170万年前から現在までを含む期間を示す言葉である.同学会は,その期間におけるちきゅうの環境変化や人類を含む生物の生活の様子の移り変わり等を研究対象とし,地質,生物,考古,気候といった幅広い研究分野を横断的にカバーしている.したがって,学会における発表の内容も当然,多岐にわたっている.今大会の要旨を眺めると,層序対比,動物化石,年代測定,自然災害,生物群集の分析と,発表タイトルは様々である.研究地域も,地元島根県を対象としたものから,果てはイースター島にまで及んでいる.発表会場は,1会場のみであるので,真面目な参加者はこれらすべての研究発表を聞くことができ,日頃,他分野の研究論文に目を通す時間の取れない多忙な研究者にとっては,知識の幅を広げるための格好の「耳学問」の場ともいえる.

 大会では,毎年,開催地にちなんだシンポジウムを開催している.今年は会場が宍道湖,中海といった日本を代表する汽水湖に近接していることから,「汽水域における完新世の環境変動-自然環境の変遷と人為改変による環境変化-」がテーマであった.「現世,十年,百年,千年」といった異なる時間スケールが設定され,それぞれについて最新の汽水環境の変化と人間活動の影響に関する研究成果が3件ずつ報告された.また,28日午後には「人は自然環境にどのように向き合うのか-過去から現在,未来まで-」と題した普及講演会が,一般の方を大対象開催された.この講演会では,地球環境変遷の将来予測,出雲古代文化,中海・宍道湖の自然再生をテーマとした3講演が行われた.

 巡検では,「三瓶火山と三瓶小豆原埋没林」をテーマに日帰りで行われた.約16000年前以降に噴出・降下した三瓶火山からの噴出物を露頭で観察したり,それぞれ縄文時代及び最終氷期に埋没したとされつ三瓶小豆原と佐田横見の埋没林を見てまわる企画であった.残念ながらこの巡検には参加できなかったが,当日は天候も良かったので,きっと良い巡検が行われたことであろう.

 来年,同学会は創立50周年を迎える.50年の節目としての記念大会は首都大学東京で開催される予定であるが,その翌年2007年夏には,50周年記念行事として国際シンポジウムをつくばで開催する話があがっている.人と自然との関わりあいについてどのようにつくばから世界に情報を発信するか,今から楽しみである.

 最後になってしまったが,大会を運営して頂いた実行委員の方々には,温かいもてなしをしていただいた.27日夜に催された懇親会では,地元名産のシジミ汁や出雲そばが振る舞われ,本場の「安来節」の演出までしていただき,年に一度の学会会員の交流の場がとても記憶に残るものとなった.準備にご尽力いただいた方に,心よりお礼を申し上げたい. 

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