GSJニュースレター NO.10 2005/7

GSJの動き
資源地質学会第55回年会学術講演会参加報告
清水 徹 (広報部地質表本館,地質情報研究部門併任)


 2005年6月15日(水)から17日(金)にかけて,今年で55回目となる資源地質学会年会が東京大学山上会館で開かれた.

 当年会では初日にシンポジウム,2日目から3日目にかけては学術一般講演及びポスターセッションが行われた.年会には大学,研究機関及び資源開発関連企業などから,期間中総勢143名の参加があった.

 初日のシンポジウムは,「資源環境地質学−周辺領域との交流−」というテーマで行われた.研究活動のフィールドであった稼行中の金属鉱山が国内では減少したことや,環境問題への社会的関心が高まったことなど,当学会を取り巻く昨今の状況変化を鑑み,シンポジウムは当学会が目指す新しい方向性を模索する場となった.講演は,三つのセッション(1. 地質学・地球化学,2. 環境・生物学, 3. 地球物理学・物理探査)に分けて実施された.講演者は,当学会会員・非会員を問わず,それぞれの分野で現在活躍している研究者から選出された.講演では,従来の鉱床学・鉱床探査で用いられていた手法を別分野で適用した場合や,他分野で用いられていた手法を鉱床探査や環境問題へ適用する可能性などについて,多くの興味深い内容が提示され,来場者の関心は高かった.

 2日目〜3日目の学術一般講演及びポスターセッションでは,産総研が貢献したアフリカ・モーリタニアでの金属鉱床探査及びその成因的研究の紹介を始めとして,国内外の様々な熱水性金属・非金属鉱床の成因的研究,及び地球表層環境での元素のグローバル循環に関する研究が発表された.また環境問題として,閉鎖鉱山から流出する廃水を媒体とした鉱床元素移動の仕組みに関する研究や,放射性廃棄物処理地の地質環境評価を目的として,自然界でのウランの濃集・拡散機構に関する研究も発表された.

 当学会年会では,今までは金属鉱床の探査・成因的研究に関する発表が主流であった.今後は今年の流れを受け,金属鉱床に関する研究と併せて,その時々の社会的ニーズの強い研究テーマ(環境問題など)の多くの成果公表の場にもなると思われる.すなわち多様な分野であっても自然界の元素の移動,濃集及び拡散機構に関する研究であれば資源地質学の研究テーマとなり,そのような研究成果を公表し得る場として当学会年会は今後さらに発展していくことが期待される.

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