あとがき

いしい たけまさ(石井 武政)

 キッズのみなさん、こんにちは。
 地質まんが「地質標本館に行こう!」をここまで読んでくれてどうもありがとう。このまんがでは地震や火山のほかに、化石や恐竜、地下水、地層、地磁気などに関連した話題をとりあげてきました。ところどころで難しい専門用語が出てきますが、杏桃ちゃんと騎士くんの質問に地質標本館の館長さんが答える形で、できるだけ易しく説明していますよ。読んでみてどうでしたか? 難しかったですか?
 地質は私たちが住む大地そのものといってもいいですから、ふだんはあまり意識することもなく、当たり前の存在になっているかもしれません。でも、河原で偶然キラキラ光る石を目にしたり、テレビで絶滅した生物の化石が発見されたというニュースを見たりしたとき、それから地震で建物が揺れたり、大雨で低地が浸水したりするといった災害が起こったとき、「なぜ?」、「どうして?」と考えてしまうことがありませんか。そんな「なぜ?」や「どうして?」に一つの答えを示してくれるのが「地質学」という学問です。
 地質学は資源を探したり、生物の進化を解き明かしたり、地球環境の変化を予想したりするのに役立ちます。そして地質災害に強い街づくりに活かせるアイデアを提供してくれます。
 さて、学問というとなんかとっつきにくそうですが、崖に出ている地層やそこに含まれる岩石や化石などを観察し、記録し、試料を集めることから地質学は始まります。観察した結果を地図に記入して大まかな特徴ごとに色付けしたりしてだんだん広い地域をカバーしていくと、その地域の地質の成り立ちをうまく説明できそうな“考え”がきっと浮かんできます。
 ただ“考え”はまだまだ確実なものとはいえないので、集めた岩石や化石を詳しく調べて、地層のできた年代を確かめたり、地層の堆積した場所が海だったのか陸地だったのかなどを明らかにしていく必要もあります。そんなとき、予想に合わないデータが出てきたりします。それを「予想に合わない」からと、はなから捨てないようにしましょう。もしかしたら「予想に合わない」データこそが大事で、「なぜ?」や「どうして?」を解き明かす手がかりを与えてくれるかもしれないからです。
杏桃ちゃんと騎士くんは地質まんがの中でさまざまな不思議に出会い、「なぜ?」や「どうして?」を自分たちなりに考え、分からないことを館長さんにぶつけます。館長さんは豊富な知識と地質学者としての長年の経験をもとに杏桃ちゃんと騎士くんに説明しますが、「分からないことがまだまだいっぱいある」とか「分からないことだらけなんだ」という地質学の一面も正直に話してくれます。
 そう、地質学は「分からないことがまだまだいっぱい」、「分からないことだらけ」なんですね。キッズの皆さんには地質のいろいろな現象や地質学という学問に少しでも興味をもって、分からないことの解明にこれから取り組んでくれたらとてもうれしいです。

 この地質まんがの製作にあたり、しょうこんじ さちこ(正根寺 幸子)さんには杏桃ちゃんや騎士くん、館長さんほかの素晴らしいキャラクターを表情豊かに、そして地質の現象は分かりやすく、古生物の姿などはいきいきと描いていただきました。ありがとうございました。また、登場するキャラクターのセリフや表情の改善、図版の仕上げ、地質学的データのチェック、広報などで地質調査総合センターの次の方々にたいへんお世話になりました。
 つじの たくみ(辻野 匠)さん、かねこ なおとも(兼子 尚知)さん、としみつ せいいち(利光 誠一)さん、もりじり りえ(森尻 理恵)さん、さいとう えいじ(斎藤 英二)さん、かわなべ よしひさ(川邉 禎久)さん、つねき としひろ(常木 俊宏)さん、いがらし さちこ(五十嵐 幸子)さん、うえの かおり(上野 香緒里)さん、あさかわ のぶこ(朝川 暢子)さん。ありがとうございました。


杏桃ちゃんと騎士くん

( あん ) ( ) ちゃんと 騎士 ( ないと ) くん
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