放散虫とは

 放散虫は「虫」という字が付いていますが、昆虫などではなく、海の中を漂って生きている動物性プランクトンです。1mmの10分の1から100分の1ほどの小さな生き物で、詳しく観察するには顕微鏡が必要です。殻の間から細長い「仮足(かそく)」あるいは「軸足(じくそく)」と呼ばれる針のようなものを放射状に出しています。 化石の産出状況からみて、放散虫は今からだいたい5億年前のカンブリア紀に出現し、姿かたちを変えながら今日に至るまで絶えることなく続いています。この姿かたちを変えながら生物群として続いてきたこと、殻がガラス質でしかも個体の数が多く化石になって残りやすいことなどから、放散虫は地層の年代を決めるのにとても役立っています。


地質標本館所蔵の放散虫化石の模型

Neoalbaillella ornithoformis Takemura and Nakaseko 後期ペルム紀

Neoalbaillella ornithoformis Takemura and Nakaseko
後期ペルム紀

Triassocampe deweveri (Nakaseko and Nishimura)中〜後期三畳紀

Triassocampe deweveri (Nakaseko and Nishimura)
中〜後期三畳紀

Striatojaponocapsa synconexa O'Dogherty, Goričan and Dumitrica 中〜後期ジュラ紀

Striatojaponocapsa synconexa O'Dogherty, Goričan and Dumitrica
中〜後期ジュラ紀

放散虫化石の取り出し方

 放散虫の化石はチャートと呼ばれる硬い岩石にたくさん含まれています。この硬いチャートから放散虫化石をきれいに取り出す手法が1970年代から1980年代にかけて考案されました。その手法は、チャートの表面を溶かす性質のあるフッ化水素酸という薬品の5 %水溶液にチャートのかけらを数時間~24時間浸しておいた後、水溶液の底にたまった粒々を水洗、ふるい分けしてその中から放散虫を見つけ出すというものです。 フッ化水素酸の水溶液やその蒸気は人体に大変有害であるため、フッ化水素酸を用いる実験は排気機能を備えたドラフトチャンバーという装置の中で行わなければなりません。また、有害なフッ化水素酸を用いることのほかに、チャートの割れ口や破片が鋭くとがっていて怪我をする恐れがあるので、安全のために丈夫なゴム手袋と目を保護するゴーグルの着用が求められます。


Neoalbaillella ornithoformis Takemura and Nakaseko 後期ペルム紀

地質調査総合センターにあるドラフトチャンバーの一例
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