地下と地表の温度差を利用するー地中熱ヒートポンプシステムー

 地質まんがの中で館長さんが話しているように、地表から10 mほど下の地中の温度、そしてそこにある地下水の温度は年間を通じてほぼ一定で、その場所の年平均気温とだいたい同じ(1~2℃高めのところもある)になっています。するとその場所の夏の気温は地下水の温度より高く、冬の気温は地下水の温度より低くなるので、くみ上げた地下水に触ってみると夏には冷たく、冬には暖かく感じられます。このような地中の、あるいは地下水の温度の特性を冷房や暖房、さらに給湯や道路の融雪などにうまく利用するのが地中熱ヒートポンプシステムです。
 ヒートポンプは温度の高いところと低いところとの間で熱を移動させる装置です。例えば夏に部屋を冷房するときは部屋の空気の熱を外に移動させて部屋の温度を下げます。逆に冬に部屋を暖房するときは部屋の外にある熱を集めて部屋に移動させて部屋の温度を上げます。エアコンではこの熱の移動を部屋と屋外の空気との間で行います。屋外の空気は夏に高く冬に低いので、部屋との間で熱を移動させるのは効率が悪そうですね。
 そこで熱を移動させる一方を屋外の空気ではなく地中にしたのが「地中熱ヒートポンプシステム」です。地中の温度は屋外の気温より夏には低く冬には高いので、地中熱ヒートポンプシステムはエアコンに比べて部屋の冷房や暖房のために熱を移動させるのにずっと効率が良いのです。さらに地中に地下水の流れがあると、熱の移動が促進され、いっそう有利になります。
 地中熱ヒートポンプシステムを設置するには、まず熱のやりとりをするために普通は地面からボーリングで縦穴を掘るか、既に掘ってある水井戸を使うかします。この縦穴に地中熱交換器を入れたり、水井戸から地下水をくみ上げたりして熱をやりとりします。そしてこの熱をヒートポンプによって部屋の冷暖房などにあてるのです。
 地中熱ヒートポンプシステムは在来の冷暖房システムに比べて、省エネや二酸化炭素発生量の削減などに効果があり、ヒートアイランド現象の緩和にも寄与すると考えられています。

参考 地中熱ヒートポンプシステム
(特定非営利活動法人)地中熱利用促進協会

地中熱ヒートポンプシステムの概要

地中熱ヒートポンプシステムの概要
左の方式をクローズドループ、右の方式をオープンループという。
(特定非営利活動法人)地中熱利用促進協会のホームページに掲載の図を改編http://www.geohpaj.org/introduction/index1/types
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