テクト珪酸塩鉱物

「テクト」とは, ギリシャ語で立体構造という意味を持ち, この名を冠したテクト珪酸塩鉱物では SiO4 四面体が 4個の頂点で互いに結び付いて立体的な網目状構造を造っています. 完全に立体的に重合すると化学式は SiO2 となり, すなわち珪酸鉱物 (石英など) となりますが, 珪酸鉱物は通常は酸化鉱物に分類され, 第4展示室での分類展示でもそのように扱っています. テクト珪酸塩鉱物では必ず, 一定の割合の SiO4 四面体の Siが Alに置きかえられていて, これで発生するプラスの電荷不足を補うために金属イオンを持ちますが, 網目状構造が緩やかなために半径の大きなイオンでも構造に取り込むことができます. このためテクト珪酸塩鉱物は, 地殻に多いアルカリ金属を格納する鉱物として重要で, 上部地殻を特徴づける鉱物ということもできます. テクト珪酸塩鉱物の代表には, 長石族 (例: 正長石 KAlSi3O8 ) と沸石族 (例: 方沸石 NaAlSi2O6・H2O, トムソン沸石 NaCa2Al5Si5O20・6H2O ) が挙げられます. 沸石族は SiO4 四面体からなる網目状構造の中に大きな空隙があり, 構造が壊れることなくアルカリ金属イオン, アルカリ土類金属イオン, 水などの分子が出入りできるという特性があります.