2016年11月14日に発生したニュージーランド南島の地震(Mw7.8)に関する情報



2016年11月14日に発生したニュージーランド南島の地震(Mw7.8)について

2016年11月15日  開設

 現地時間の11月14日午前0時過ぎ(日本時間:13日午後8時過ぎ)、ニュージーランド南島の北東部を震源とする大地震が発生しました。アメリカ地質調査所(USGS)によれば、地震の規模はモーメントマグニチュード7.8、震源の深さは23kmで、横ずれを伴う逆断層型のメカニズムであったとされています。この地震の余震域は震央から北東に150km程度伸びており、北島にある首都ウェリントンの近くまで達しています。(図1

 ニュージーランドは、太平洋プレートとオーストラリアプレートの境界に位置する変動帯に位置しており、地震活動や火山活動が活発な島国として知られています。ニュージーランド北島の東側に沿ったヒクランギ海溝では太平洋プレートが北西側に沈み込み、その延長部は南島の西岸に沿って延びるトランスフォーム断層であるアルパイン断層に続いています(図2)。この沈み込み帯とトランスフォーム断層との間に位置する南島の北東部には幅100〜200kmに及ぶ断層帯が発達しており、断層帯の北西側には数条の活動的な横ずれ成分が卓越する断層群が、また南東側には逆断層成分が卓越する断層群が卓越しています。図2およびニュージーランドの活断層データベース(https://data.gns.cri.nz/af/)によれば、それらのうち、横ずれ断層群はホープ断層をはじめとする変位速度が1〜40m/千年程度に達するA〜AA級の活断層です。一方、逆断層群の変位速度は0.1〜4m/千年程度でB級〜A級下位の活動度を持つとされています。

図2:ニュージーランドと周辺海域の活断層

図2:ニュージーランドと周辺海域の活断層(Litchfield et al., 2014の図に加筆)。

 今回の本震の震央は逆断層成分が卓越する断層群が発達する地帯に位置しており、メカニズムも横ずれを伴う逆断層型でした。また、余震域はENE〜WSW走向の横ずれ成分が卓越する断層帯の延長部を横切るように、海岸と概ね平行にNE〜SW方向に伸びています。このことから、今回の地震は、ヒクランギ海溝の南西への延長部にあたる沿岸域の逆断層成分が卓越する断層で発生した可能性があります。地震に伴って津波が観測されていることも、このことと調和的です。
 震源域にあたる南島の北東岸には、海成段丘群が発達しており、過去から隆起が繰り返されてきたことが地質学的にわかります(図3)。太田(1999)は、余震域の中央付近にあたるカイクラの南方において、海岸段丘の隆起速度が最大で2m/千年に達すると報告しています。海成段丘群の分布は、南島最大の都市であるクライストチャーチが位置するカンタベリー平原で絶たれており、平原の北縁から北西縁にかけては逆断層成分が卓越する活断層群が断続的に分布するようですが、詳しいことはわかっておりません。

 なお、 カンタベリー平原では、2010年9月にマグニチュード7.1、2011年2月にマグニチュード6.3の地震が発生し、クライストチャーチなどで多くの犠牲者が出ました。今回の地震は、これら2つの地震とは100km程度以上離れた場所で発生しており、その関係は明らかではありません。

図3:震源域の中央付近、カイクラから見る海岸の地形。図3:震源域の中央付近、カイクラから見る海岸の地形。標高2000m級の山地が海岸からせり上がっており、その麓には複数段の海岸段丘(矢印)が発達している。

活断層・火山研究部門 粟田泰夫、石川有三

参考文献

Litchfield, N. J. et al.(2014)A model of active faulting in New Zealand.New Zealand Journal of Geology and Geophysics, vol. 57, p.32-56.

太田陽子(1999)変動地形を探るⅡ,環太平洋地域の海成段丘と活断層の調査から.古今書院,216pp.

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産総研地質調査総合センター