断層と褶曲

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断層と褶曲

1. 断層

   日本列島には数多くの断層があります。地質図では黒い実線で描かれています。このうち、最近の地質時代に繰り返し活動し、今後も活動する可能性のある断層を「活断層」と呼びます。活断層にはそれぞれ特徴があり、活動の周期や1回に動く量 (変位量) が断層ごとにおおよそ決まっています。大きな被害を及ぼす地震の場合、断層の変位量は数mからときには10m以上に及ぶことがあります。

   断層は動く方向によって正断層、逆断層、横ずれ断層と分類されています。それぞれの断層ができる原因は、地殻のどの方向に最も強い力がはたらいているかの違い (広域応力場) にあります。理想的には、正断層は地殻が引き延ばされているとき (引張応力場)、逆断層は横から強く押されているとき (圧縮応力場) に、横ずれ断層は斜め横方向からの圧縮を受けているときに、それぞれできると考えられています。

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* 広域応力場については、こちら で解説しています。

   断層活動の規模を見積もるのに、しばしば地形に現れた垂直方向のずれ (鉛直落差) を使います。ただし、実際の断層は斜め方向に動くことも多いので、落差が少ない断層であっても走向変位が大きければ断層の規模は大きいと言えます。また、断層は地層の強度の弱い場所にできます。実際の地層は不均質にできているため、断層面は必ずしも単純な平面になるとは限りません。

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   断層がひとたび形成されると、地殻の中ではそこだけが強度の弱い場所となります。このため、力を受けている限り、同じ断層が繰り返し活動することになります。

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inversionfault2    広域応力場は時代によって大きく変わることがありますが、その変化を反映して、断層も時代によって性質を変えることがあります。特に東北日本の陸上または日本海の海底に多数見られる南北方向の断層は、もともと正断層として形成されました。しかし、現在その多くが逆断層として活動しています。このような断層は、正逆反転断層と呼ばれています。

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inversionfault5    日本海ができるときに、地殻には水平方向に引っ張られる力がはたらき、正断層ができました。その後、安定した状態が続き、断層で落ち込んだ凹地は堆積盆地となり、堆積物が厚く堆積しました。やがて、今度は地殻が水平方向に押される力がはたらき始め、断層は逆断層として再活動します。このため、堆積盆地は次第に隆起し、今度は地形の高まりとなります。つまり、初めは盆地だった場所が、後には山になっているわけです。このような現象は、盆地反転と呼ばれています。

2. 褶曲

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   褶曲と逆断層はともに圧縮を受けてできる構造で、密接に関係しています。
   地層が堆積してから硬い岩石になるまでには、通常は長い時間がかかります。つまり地層は堆積して間もないときにはまだ軟らかく、力が加わったときにも柔軟性があります。このため、横方向に圧縮されたとき、地表の近くほど褶曲しやすく、地下になるほど断層をつくりやすくなります。
flexure2J    地下に断層ができると、そこが最も強度の低い場所になるため、その断層が動き続けることになります。すると地表では断層の延長上の一部分に変形が集中し、そこだけ地層が急傾斜したり、ときには逆転したりします。このような構造は、特に 撓曲 (とうきょく) といいます。撓曲は逆断層だけでなく、地下に正断層が伏在している場合にも形成されます。

* 日本の活断層について更に知りたい方は、活断層データベース をご覧ください。