15097_1959
5万分の1地質図幅説明書
(鹿児島 第 97 号)
通商産業技官 木野義人
地質調査所
昭和 34 年
目次 I. 地形 II. 地質 II.1 古第三系 ? -- 日南層群 -- II.1.1 西部地域 II.1.2 東部地域 II.2 新第三系 -- 宮崎層群 -- II.3 第四系 II.3.1 更新統 II.3.2 現世統 III. 応用地質 III.1 石炭 III.2 冷泉 III.3 石材 III.4 山地の崩壊 III.5 土地利用と地質 III.6 自然景観と地形・地質 文献 Abstract
1 : 50,000 地質図幅説明書 (昭和 33 年稿)
(鹿児島 第 97 号)
本図幅の野外調査は昭和 32 年 10 月から 12 月までの 50 日間に行なわれた。 日南層群中の動物化石の鑑定は, 本所地質部 水野篤行技官によった。
本図幅地域は, 南九州の南那珂山地の南限にあり, 東方と南方は太平洋に面し, 西方は志布志湾に臨む半島部をなしている。 主として晩壮年期ないし早老年期の丘陵性山地からなり, 小河川によって刻まれた処々の平野部には段丘が発達している。
山地のなかで, 本図幅地域のほゞ中央にある高畑山(517.6 m)を主峯とする部分は, 本図幅地域としてはもっとも急峻な地形を呈しているが, 山頂部あるいは山嶺部は中腹の急斜面から急に緩やかになり, 標高 400~500 m の平坦面ないし緩斜面をなしている。 一方図幅地域北西部から南西部にかけても, 高度 200 m から数 10 m の平坦面ないし緩斜面の発達が顕著で, 西方に傾きつつ漸次高度を減じ, 西隣の志布志図幅地域内で志布志湾に没するあたりで, 数 10 m あるいはそれ以下にまで低下している。
これらの平坦面ないし緩斜面のうち, 本城北方においては円礫層がのっている。 またいずれの面も日南層群の地層を鋭く切っているので, これらはいわゆる隆起準平原に相当するものと推定される。 また都井岬附近にも高度 100~200 m の平坦面ないし緩斜面が発達している。
本図幅地域北西部, 西部の本城川沿岸および北東部の市木川沿岸などに発達する段丘は, 主としてシラス灰石層とローム層とからなり, 段丘面の冲積面に対する比高は 20~50 m に及んでいるが, シラス灰石層の下限は冲積面下に隠れてほとんど見ることができない。
海図 [ 以下の [注] 参照 ] によれば, 本図幅地域周辺の海底地形は 水深約 20 m までは約 27 / 1,000(約 1°30')程度の勾配で, 全体としてほとんど平坦な面であるが, 水深 20 m を超えるあたりから勾配を増し, 50 / 1,000(約 3°)を示す遷急点が認められる。 このような遷急点の顕著な場所は, 鳥島東岸や都井岬南岸などいずれも堆積作用による影響が少なく, ほとんど原地形を残しているものとみなしてさしつかえない。 また波浪の侵蝕作用は水面上あるいは水面直下における場合に較べて, 水深 20 m においてはそれほど大きな影響は考えられない。 したがってこれらの水深約 20 m までの平坦面は, 過去における海蝕台または陸上侵蝕面の遺物と考えられる。 またこれらの事実は日向青島図幅地域における海底地形の場合とよく一致し, 青島附近におけると同様に, 現世の最大海面上昇期に海面下に没した侵蝕面遺物と思われる。
なお, 更新統に属する段丘砂礫層の基底面や, シラス灰石層の基底面の冲積面に対する比高が, 日向青島図幅地域あるいはそれ以北における場合と, 本図幅地域における場合とでは, かなりの差があるのに対して, 水深約 20 m 以浅の海底平坦面が大体一致している。
本図幅地域に分布する岩層は, 古第三系に属するとみられる日南層群を主とし, これに傾斜不整合に重なる宮崎層群の基底部, これらを覆う更新統の湊層・中千野礫層・シラス灰石層・ローム層 および現世統の冲積層・海浜砂層などがある。 これらの地質系統を総括すれば第 1 表の通りである。
本図幅地域の大部分を占めて発達する地層で, 主として砂岩と頁岩とからなり, 飫肥図幅地域の油津附近および本図幅地域の高畑山附近から産する動物化石は, 古第三紀を指示するものと考えられている。
本層群は無数の断層と褶曲とを伴ない, かつ砂岩と頁岩との繰り返しという単純な岩相から構成されているので, その層序区分を明らかにすることはきわめて困難である。
次に本層群の構造を概観すれば, 本図幅地域南部の黒井附近から都井峠を経てさらに北方に延びる構造線が, まずこの地域の日南層群の構造を大きく両断しているのが認められるが, これは両側の地質構造から判断して西から東に衝き上げた衝上断層と推定される。 これを以下都井峠溝造線と呼ぶ。
この断層線を境にしてその西側地域は, 本城附近を中心とする大きな半ドームないし背斜構造によって特徴づけられ, 東側地域は市木川河口附近を中心とする, 半ドームないし背斜構造を基幹とする複背斜または複向斜構造と, 都井岬附近における波状褶曲構造とによって特徴づけられている。 そしてこれらの大規模な褶曲構造が, 細部的には無数の断層によって寸断されているわけである。
都井峠構造線を境にして西部地域と東部地域とに分け, そのおのおのの日南層群について述べる。
全体として本城附近を中心とする半ドーム状構造をなし, その北西翼においては西北西に傾斜する単斜構造を呈するが, 南東翼においては地層は上位になるほど漸次転倒の傾向を示し, 都井峠構造線附近では横臥褶曲構造を呈する。
岩相はドームの中心部はほとんど頁岩のみからなるが, 中上部では砂岩層と砂岩頁岩互層が多くなる。
頁岩は暗灰色~黒色を呈し, 比較的軟質で侵蝕に対する抵抗が弱い。 砂岩は一般に細粒かつ堅硬で, 侵蝕に対する抵抗が比較的強い。 新鮮面は灰色~青灰色を呈するが, 風化面は黄色~黄褐色を呈する。 またこの地域の砂岩層はよく連続し, 本図幅地域における日南層群中もっとも構造を明瞭にさせている。
砂岩頁岩互層には砂岩と頁岩との量的比率によって, 砂岩がち互層・等互層・頁岩がち互層などがあり, 砂岩が多くなるにつれて砂岩層の性質が強くなり, 頁岩が多くなるにつれて頁岩層の性質に近似してくる。
なお, 図幅地域北西隅の田淵附近の頁岩中に, 赤紫色凝灰質頁岩の薄層が介在するが, その連続性は認められない。
市木川河口附近を中心とする半ドーム状構造を基幹とし, 背斜・向斜・波状褶曲などの複雑な構造を繰り返しながら最上部は都井峠構造線に接する。
西部地域と同様に主として砂岩・頁岩および砂岩頁岩互層からなるが, 図幅地域北東部を除いては砂岩の岩相変化が著しく, ことに中央部の高畑山附近の砂岩層は, 砂岩頁岩互層や頁岩への移化が急速に行なわれる傾向を示している。
各岩層の性質は西部地域と大差ないが, 砂岩層中にはときに礫岩を含み, 市木湾北岸のものは比較的顕著である。
なお, 高畑山周辺の頁岩または 砂岩頁岩互層中および名谷附近の海崖の頁岩申から得られた動物化石を第 2 表に示す。
本地域南東部の黒井附近の沿岸にあるトセンバイなる小岩礁は, 赤紫色~暗緑色の玄武岩質塩基性岩からなっている。 この岩礁中に砂岩あるいは頁岩も混入していて, 塩基性岩との境界が不明瞭である点をみると, この塩基性岩は日南層群の砂岩ないし頁岩中に貫入してきたものと考えられる。 この附近沿岸の日南層群は著しく擾乱されている。
本図幅地域の宮崎層群は, 主として基底部の双石山砂岩礫岩層に相当する部分で, 北東部の 夫婦 浦附近および築島などにおいて, 下位の日南層群に対して傾斜不整合に重なっている。 薄い基底礫岩にはじまり, 主として黄褐色に風化した細粒砂岩からなり, 東に向かって約 20°の傾斜をなして海中に没している。
夫婦浦の沖合の水嶋を形成する砂岩は, 飫肥図幅地域における大島の東半部を占める砂岩層の連続で, 郷之原泥岩層中の砂岩単層に相当する。
いずれの砂岩も侵蝕に対する抵抗が比較的強いので, 島嶼・岬・山頂部などをなしている。
本図幅地域にはシラス灰石層およびローム層がかなり広範囲に散在分布する。 また西隣志布志図幅地域の湊附近および中千野附近に, 標式的に露出する礫・砂岩などの未凝固堆積物の一部は, 本図幅地域の西隅にも見られるので, 湊層および中千野礫層として記載する。
西隣志布志図幅地域東隅の湊附近において, 標式的に見られる砂岩ないし礫岩を主とする未凝固堆積物で, 本図幅地域においては西隅の本城西方に僅かにその一部の粗粒砂岩が見られる。 志布志図幅地域内のものを含めて一般に未凝固の細粒~粗粒の砂岩および小礫からなり, 上位に向かって次第に細粒となり泥岩も挾んでいる。 また礫は主として日南層群の砂岩によって構成されている。 ほとんど水平で, 全体として僅かに西方に傾き, 厚さは 30 m 以下である。 湊附近の志布志湾岸においては, 本層が基底礫岩をもって日南層群上に不整合に重なっているのが観察される。
現在のところ化石が発見されていないので時代を決定できないが, 岩質や堆積状態などの情況から判断して, 更新世 -- おそらくその初期の陸上堆積物と思われる。
西隣志布志図幅地域東隅の中千野北方の県道切通しにおいて, 標式的に見られる未凝固礫層で, 日南層群を傾斜不整合に覆っている。 本図幅地域では, 西部の本城北方の丘陵上に同じく日南層群を不整合に覆っている。 いずれもほゞ水平に重なり, 厚さは 10~20 m, 礫は中礫~大礫からなり, 主として日南層群の砂岩によって構成されている。
本礫層は分布, 岩質および堆積状態などから判断して, おそらく上述の湊層に対比されるものと思われる。
本図幅地域のシラス灰石層は, 北隣の飫肥図幅地域と同様の分布と産状を呈し, 西部の福島川や本城川の沿岸および北東部の市木川沿岸などに, 段丘をなして発達する珪長質火山噴出物である。
一般に灰白色を呈し, 粗鬆, 無層理で, 主としてガラスないし軽石からなり, 石英粒・角閃石などを含んでいる。 上部ほど粗鬆となり, 凝固度も小さぐ, 下部ほど緻密, 堅硬となる。 俗にシラスと呼ばれているものは上部の粗鬆, 未凝固の部分に当り, 灰石と呼ばれて石材に利用されているものは, 下部の緻密, 堅硬な部分に相当する。
本層によって構成されている段丘の冲積面上の高さは 20~50 m であるが, 本図幅地域においてはその下底が冲積面下に没しているので, 本層の厚さはそれ以上に及ぶものと思われる。
なお, 北方の日向青島図幅地域や飫肥図幅地域北部では, いずれもシラス灰石層の下底が冲積面上にあるのに対して, 飫肥図幅地域南部から本図幅地域および西隣志布志図幅地域にわたって, シラス灰石層の下底がことごとく冲積面下に没しているという事実は, シラス灰石層堆積後現在までの地盤の運動の結果, 飫肥図幅地域以北においては相対的に上昇し, 飫肥図幅地域以南においては相対的に下降していることを示している。
本図幅地域西部の本城附近の段丘平坦面ないし丘陵緩斜面上には, いわゆるローム層が 1~2 m の厚さでかなり広く発達している。
主として褐色~赤褐色の火山灰質粘土からなるが, 上部は腐植質の黒色土壌と化している。 このようなローム層は他のシラス灰石層からなる段丘面をあまねく被覆し, さらに日南層群上の緩斜面ないし平坦面上にも高度に関係なく存在しているが, 地質図においてはもっとも顕著に発達する本城附近のもののみを表わし, ほかは省略されている。
シラス灰石層は都井峠 - 高畑山を連ねる嶺線以南には分布しないが, ローム層は至る処に分布している。
主として現在の河川の埋立作用によって形成された冲積層 [ 以下の [注] 参照 ] からなっているが, 海岸地帯には河川の埋立作用と沿岸流および波浪の営力の相互作用とによって形成された, 海浜砂層がかなり発達している。
福島川・本城川・市木川およびその他の各河川沿岸低地に狭小な地域を占めて分布する。 本層は礫・砂・粘土などからなるが, 表層部は風化および腐植土壌に覆われ, 居住地・交通路・耕作地などになっている。
背後に前述のような冲積低地をひかえている海岸には, 浜・浜堤・砂丘などが発達し, 主として砂からなり一部に礫を含んでいるが, これらを総称して海浜砂層と呼ぶ。 浜堤および砂丘は冲積面よりも僅かに高く, 海抜数 m の卓状地をなしている。 市木川河口附近には幅約 300 m, 延長約 2,500 m に及ぶ海浜砂層が発達しているが, 浜の堆積物は南に向かって次第に粗粒となり, 幸 島対岸附近では礫層となっている。
本図幅地域には鉱物資源としては現在のところほとんど見るべきものがないが, 日向青島図幅および飫肥図幅地域における場合と同様に, 遊離ガスを伴なう自噴泉の存在は, 天然ガスその他の地下資源の調査に関して重要な意義をもつ可能性がある。
その他広く自然現象および人文的な分野で, 地形・地質と関連のあるものも少なくない。
本図幅地域の日南層群中にはしばしば石炭が挾有されているが, いずれも数 10 cm 以下の薄層で, また連続性に乏しい。 これは含炭層の性状から推して, 炭層そのものが元来薄く小規模であるばかりでなく, 地層の著しい擾乱に伴なって圧縮, 断裂されたものと思われる。 現在のところ稼行に堪えるものは見当らない。
例えば図幅地域西部の 遍保 ケ野北方 1 km 附近の頁岩中に, 厚さ 30~40 cm の炭層露頭が見られるが, 厚さ 6~8 cm の頁岩を挾み, 一方向の延長は僅か 1 m 未満である。 その他日南層群中の各所に露頭が発見されているが, レンズ状または薄層のものばかりで, いずれも探鉱の対象にはならない。
次に遍保ケ野附近の試料の分析値を示す(本所 化学課分析)。
| 水分(%) | 揮発分(%) | 灰分(%) | 硫黄分(%) | 固定炭素(%) | 発熱量(Cal) | 粘結性 |
| 2.82 | 11.59 | 32.80 | 1.71 | 52.79 | 5,363 | 非粘結 |
本図幅地域北西部の秋山附近と東部の石波とには冷泉が湧き, それぞれ浴用に供されており, それらの概況は次の通りである。
秋山の東南東方約 2 km の谷間に湧出し, 附近の地質は日南層群申の頁岩を主とする地層で, 部分的に砂岩薄層を挾んでいる。 湧水量はきわめて少なく, 味はないが僅かに H2S 臭と白色沈澱とを伴なう。 ガスは伴なわない。
市木湾南岸の石波にあり, 海浜砂層に属する砂礫層を通って湧出するもので, 一名タギリ冷泉と呼ばれている。
湧出量は日南地方の群小の冷泉としては比較的多く, ほとんど無臭であるが鹹味が強い。 また多量のガスが気泡となって噴出しているので産ガス地として注目される。
この冷泉が水成分として多量の Cl-, HCO3- を含んでいることは, 日向青島図幅地域や飫肥図幅地域の産ガス地における場合と類似しているが, 遊離ガス成分のうち相当量のメタンガスをさらに上廻って, 炭酸ガスの方が約2倍も多く含まれていること, および水量に較べてガス量が異常に多いことなどは, 他のいずれのガス田や産ガス地においても類例がなく, この冷泉の特異性である。
秋山冷泉と石波冷泉との分析値を第 3 表に示す。
本図幅地域に分布するシラス灰石層のうち, 西部の遍保ケ野北東方および北部の郡司部附近では, その下部の灰石と呼ばれる比較的緻密な部分が採掘されて, 建築石材その他に利用されている。 灰石の特徴は強度の割合に軟かいので切採が容易であり, かつ耐熱性を有することである。 しかし需要は少なく, 販路は産地近傍に限られている。
上述のように日南層群は著しく変動を受けているので, 地層はしばしば破砕されて侵蝕に対する抵抗力が弱くなっている。 そしてこの傾向はとくに頁岩の多い部分が顕著である。 幸い本図幅地域はすでに侵蝕が進み. 過去の崩壊によって一般に低夷な地貌を呈しているので, 内陸部では現在のところ大規模な崩壊斜面は見られない。 しかし山地が海に直接する海崖においては, 強い波蝕によって勾配が過大になるとともに, 破砕された地層内部が直接露出しているので崩壊し易い状態になっている。 とくに本図幅地域南西部の屋方附近, 南部の都井岬西岸, 南東部の名谷 - 石波間などの海崖においては, 充分その危険性が予想される。 したがってこれらの地域における土木工事に際しては, 厳重な注意が必要である。
本図幅地域においても飫肥図幅地域や日向青島図幅地域と同様に, 植生は地質と密接な関係を有する。 すなわち, 砂岩層の発達している部分は多くの場合, 暖帯性闊葉樹の天然林となっているが, 頁岩層の発達している部分は緩斜面が多く, かつ風化土壌が発達しているので植林に適し, 杉・松・楠などの人工林となっている。
シラス灰石層からなる段丘面や, 冲積層からなる低地は居住地・耕作地・交通路として利用されている。 また市木川河口附近の海浜砂層からなる卓状地は冲積面より数 m 高いので, 水害の危険からまぬがれ, また乾燥地でもあるので居住地に適し, 藤浦・石波などの聚落がこの上に発達し, 周囲の冲積低地を耕作地としている。
本図幅地域の海岸地帯は「日南海岸国定公園」の南端部に当り, 北から築島のビロー樹林, 舳 のバナナの栽培, 石波の亜熱帯樹林, 幸島の野生猿, 都井岬の蘇鉄の自生, 同じく野生猿や野生馬の棲息などが観光的に知られているが, それらは地形・地質的條件とも密接な関係を有している。
まず築島は島の中央分水嶺から, 東斜面は宮崎層群基底の礫岩および砂岩層からなり, 斜面は地層の傾斜と一致して東へ約 15°傾いている。 これに対して西斜面は日南層群の頁岩からなり, 表層部は崩壊岩屑および土壌に覆われ, 海抜約 30 m 以上の緩斜面上には人家が発達している。 この西側斜面は屏風のように屹立した宮崎層群基底の礫岩・砂岩層にさえぎられて, 強い風波から保護されているので, ビロー樹が無数に繁茂している。
一方対岸の舳はバナナの栽培地として知られているが, この人家のある平坦面は海抜約 30 m にあり, 市木附近のシラス灰石層の基底面より高位にあるので, それより古期に形成された海蝕段丘と思われる。
幸島は日南層群の砂岩層からなる小島で, 周囲は急崖をなしているので居住地として適せず, また全島暖帯性闊葉樹の天然林に覆われている。 したがってこのような條件下に, 本島に野生猿が安住の地をみいだしたのであろう。 幸島の沖にある鳥島は幸島と同様に日南層群の砂岩層からなる狭小な孤島で, ビロー樹が繁茂している。
石波海岸の樹林は市木川河口附近の海岸沿いに, 約 100 m の幅で帯状に繁茂する亜熱帯ないし暖帯性の原生林であるが, これは海浜砂層に属する砂礫層上に生育したもので, 石波・藤浦などの聚落を保護する防風林・砂防林として保存されたものである。
これら市木湾沿岸の暖帯性ないし亜熱帯性の自然景観は, 直接沿岸を洗う黒潮の影響が大きいことはいうまでもないが, 3方を山で囲まれた地形の影響も見逃すことはできない。
一方, 都井岬はこれを地質的にみれば, 燈台附近に発達する日南層群の砂岩層が侵蝕に対する抵抗が強いので, この部分が岬となって海上に突出したもので, 地形的にみれば, 高度 200 m 前後の平坦面ないし緩斜面は, 都井峠から南西方に発達する 200 m 前後の平坦面に対比される侵蝕平坦面である。 したがって都井岬が険しい海崖によって囲繞されているにもかかわらず, なだらかな中央高地は重要な交通路となっている。 そしてこの風化土壌の発達した緩斜面が野生馬の快適な牧草地となり, 燈台附近の険阻な砂岩部の暖帯性闊葉原生林は野生猿の安住地となり, また燈台下の神社附近の険しい海崖が, 蘇鉄の天然の保護地となったことも決して偶然ではない。
EXPLANATORY TEXT OF THE GEOLOGICAL MAP OF JAPAN Scale 1 : 50,000
Kagoshima, No. 97
By YOSHITO KINO (Written in 1958)
The mapped area is located in the southern end of Miyazaki prefecture, southern Kyūshū. Geologically, it is occupied mainly by Paleogene? (Nichinan group), and accessorily by Neogene (Miyazaki group) and Quaternary accumulations. The geological sequence in the area is summarized in Table 1.
Nichinan group
The Nichinan group comprises sandstone, shale, alternation of sandstone and shale, rarely tuffaceous shale and intrusive basaltic rock.
The strata of the group in this area are so intensely folded and faulted that almost all strata, especially shaly strata are heavily sheared and destroyed.
The group in this area is divided into two main tectonic units, the eastern block and western block, by a tectonic line passing northward through Kuroi and Toi-tōge.
It is considered that the western block thrusts up on the eastern block forming a dome structure which has its center near the mouth of Ichiki river, and also shows a dome structure having its center near Honjō. Moreover, both blocks have many overturned structures.
The molluscan fauna have been discovered in the environs of Mt. Takahata in the central part of the mapped area.
Miyazaki group
The group in this mapped area is only the basal part of it ; that is Boroishiyama sandstone and conglomerate overlying the intensely folded Nichinan group at the northeastern part of the area.
The Quaternary in the mapped area comprises mainly Pleistocene terrace and Recent accumulations. The Pleistocene terrace deposits measured up to 20 - 30 m on the alluvial plain, are composed of "Shirasu", "Haiishi" and loam. "Shirasu" and "Haiishi" are both salic volcanics, widely spreading themselves in Kagoshima prefecture and the southern part of Miyazaki prefecture. "Shirasu" is more unconsolidated facies than "Haiishi".
Though "Shirasu" and "Haiishi" are distributed only as terrace accumulations, the loam is distributed not only on the terrace accumulations but on the flat plane or gently sloped plane of the mountain.
A gravel bed is restricted on the hills north of Honjō. The gravel bed may be of Pleistocene, and older than "Shirasu" and "Haiishi".
The unconsolidated gravel lies on the Nichinan group clino-un-conformably, and the level of the base is higher than that of bases of "Shirasu" and "Haiishi".
Recent accumulations comprise alluvial deposits and beach sand.
The mapped area has no remarkable mineral resources. The occurrences of coal have been known in the Nichinan group. But they are not workable, as all are thin seams, 1 - 40 cm in thickness, and occur in the intensely disturbed Nichinan group. "Haiishi" is utilized for building stones at several places, as it is properly soft, easy to quarry, and yet has allowable strength.
昭和 34 年 9 月 10 日 印刷 昭和 34 年 9 月 15 日 発行 著作権所有 工業技術院 地質調査所