15091_1959
5万分の1地質図幅説明書
(鹿児島 第 91 号)
通商産業技官 木野義人
地質調査所
昭和 34 年
目次 I. 地形 I.1 山地 I.2 平野 I.3 海岸 II. 地質 II.1 古第三系 ? -- 日南層群 -- II.1.1 砂岩層 II.1.2 頁岩層 II.1.3 砂岩頁岩互層 II.1.4 礫岩層 II.1.5 凝灰質頁岩層 II.1.6 塩基性岩 II.2 新第三系 -- 宮崎層群 -- II.2.1 双石山砂岩・礫岩層 II.2.2 家一郷砂岩・泥岩層 II.2.3 郷之原泥岩層 II.2.4 鵜戸互層 II.2.5 内海互層 II.3 第四系 II.3.1 更新統 II.3.2 現世統 III. 応用地質 III.1 天然ガスおよび湧出水 III.2 石材 III.3 山地の崩壊 III.4 土地利用と地質 III.5 自然景観と地質 文献 Abstract
1 : 50,000 地質図幅説明書 (昭和 33 年稿)
(鹿児島 第 91 号)
本図幅の野外調査は, 昭和 31 年 3 月および同年 10~12 月において, 延約 80 日間にわたって行なわれた。 なお, 動物化石の鑑定については, 本所 水野篤行技官の協力を得た。
本図幅地域の地形は大別して山地, 平野および海岸の3部分に分けられる。
本図幅地域の大部分を占め, 概して晩壮年期ないし早老年期の, 丘陵性山形を呈している。 図幅地域のほゞ中央を南北に流れる広瀬川を境として, 西半部と東半部とに分けられる。
西半部は本図幅地域の北西部, 西部などの一部を除いては, 一般になだらかな丘陵地形を呈しているが, これに対して東半部は, 日向青島図幅地域に続く鵜戸山塊をなして, 比較的急峻な地形を保っている。
この両者の山形の相違は, 東半部が宮崎層群の主として規則正しい砂岩泥岩互層からなっているので, 侵蝕に対する抵抗力が比較的強いのに対して, 西半部は主として日南層群の甚だしく擾乱された地層からなっているので, 侵蝕に対する抵抗力が, 比較的弱いということによって生じたものと思われる。
たゞし, 西半部の日南層群地域でも, 北西部ないし西部の奥地は, 砂岩に富む比較的堅固な地層からなっているので, いまだ急峻な地形を残している。 ちなみに, 本図幅地域北西部から僅かに北側の日向青島図幅地域に入った部分には, 1,000 m を超える小松山があり, また西部にはほとんど 1,000 m に近い男鈴山があり, いずれもいわゆる南那珂山地の最高峯群の一部をなしている。
図幅地域中央部の広渡川および酒谷川沿岸を始めとして, 細田川・南郷川・潟上川およびその他の小河川沿岸には, 冲積平野が開けている。 また酒谷川以南の各河川沿岸には, シラス灰石層からなる段丘平坦面の発達が著しい。 本図幅地域南部の南郷町 外浦 附近は湿地帯をなし, 潟上川による外浦湾の埋立作用が, 未だ充分行なわれていないことを示している。 南郷駅附近の民家の井戸水が僅かに SO42- を含むほか, それぞれ HCO3- ≒ 293 mg / l, Mg2+ ≒ 22 mg / l, Ca2+ ≒ 84 mg / l, Cl- ≒ 53 mg / l の含有量を示していることは, このあたりがもと外浦湾の一部であり, それが停滞性の湿地となり, 冲積地として現在の状態になったのは, ごく近い時代であることを裏書きしている。
いわゆる日南海岸の中央部にあたり, 大部分は屈曲に富む山地海岸であるが, 広渡川河口附近や細田川河口附近などに, 海浜砂層からなるかなり大規模な砂丘地帯を形成している。 このような現在の地形は, 現世の相対的海面上昇期におけるいわゆる沈降海岸が, その後の冲積作用によって湾頭部は漸次埋立てられ, 波浪の侵蝕作用によって岬の部分は破壊されて, 原地形がいくぶん単調化したものと思われる。 また砂丘地帯は河川の冲積作用と沿岸流, 波浪との相互作用によって形成されたものである。 山地海岸には, 至るところに現世最新期の微量の, 相対的隆起によって海面上に出現したとみられる, いわゆる隆起海蝕台が発達している。
本図幅地域に分布する岩層は, 古第三系に属すると思われる日南層群, および新第三系に属する宮崎層群を主とし, 更新統に属する猪崎礫層およびシラス灰石層, 現世統に属する冲積層および海浜砂層などが, 基盤岩類を覆っている。 また地質図には省略したが, 更新統のシラス灰石層およびそれより古期の岩層を覆って, ローム層が広く分布している。 これらの地質系統を総括すれば第 1 表の通りである。
本図幅地域西半部を占めて広く発達する地層で, 主として砂岩と頁岩とからなり, 飫肥および油津附近から産する動物化石は, 古第三紀を指示している。 本層群は擾乱が甚だしく, 複雑な褶曲構造がさらに無数の断層によって破壊寸断されていることと, 砂岩と頁岩との不規則な繰り返しという単純な岩相的特徴とのために, これを層序的に区分することはきわめて困難なので, こゝではその岩相的区分に従って記述することとする。
なお, その前に本層群の構造を概観すれば次の通りである。 すなわち本図幅地域には, 比較的整然とした砂岩頁岩互層が発達することがあるので, 単にみかけ上の傾斜のみならず, しばしば逆転構造をも認めることができる。 しかし頁岩中では, 逆転構造, 褶曲, 断層などの存在を確認することが困難なので, 本地質図は必ずしも全地域の構造を完全に表現したものではないが, 本図幅地域中央部の油津附近および南部の南郷町贄波附近が, 本図幅地域における最下部にあたり, それより北方ないし西方に向かって, 多くの褶曲や断層を繰り返しながら漸次上位の地層が累重しているもののようである。 しかし局部的には無数の断層が認められるが, 地質図に表現しうる規模のものを確認し追跡することは, きわめて困難なのでほとんど省略されている。 図幅地域西部の男鈴山東麓の頁岩帯(凝灰質頁岩を挾む部分)には 西方から東方に突き上げる衝上断層の存在が濃厚である。
次に各岩層について述べる。 たゞし本層群の層序は確認されていないので, 記載順序は不同で, 各岩層ごとに区分して述べる。
砂岩を主とする地層で, ときに頁岩や砂岩頁岩細互層などの薄層を挾む。 本図幅地域の周辺部に発達し, 中央部には少ない。 細粒砂岩を主とするが, 図幅地域西部の男鈴山附近や, 南部の滝ガ平山山塊・高畑山山塊などの地域には粗粒砂岩が多い。 また油津南西方平峯附近の動物化石を産する砂岩層は, 極細粒砂岩または游泥岩に近い細粒のものである。
砂岩の色は普通灰白色~青灰色であるが, 風化面は黄褐色を呈することが多い。 主として石英粒からなり, しばしば白雲母が認められ, また頁岩の小破片を含むことがある。 一般に堅硬で, 侵蝕に対する抵抗が大きいので, 本層の発達する部分は, 比較的高峻な地形をなしている。 また本層は頁岩や砂岩頁岩互層(泥岩がち)に較べて擾乱を受ける程度が少ないので, 比較的よく連続し, 砂岩頁岩互層(等量または砂岩がち)とともに日南層群の構造を表現する有力な手懸りとなる。
なお, 油津南方平峯附近砂岩中, 飫肥南方 275.1 高地附近砂岩中, および本図幅地域南西隅の串間市大平胡桃ガ野附近砂岩頁岩互層中などから得られた, 動物化石を第 2 表に掲げる。
| 産地名 | 化石名 | 備考 |
| 油津南西方平峯附近 | Qstrea sp. | |
| 〃 | Anadara sp. | |
| 〃 | Niticidae gen. and sp. indet. | |
| 〃 | Cancellaria ? sp. | |
| 〃 | Calyptraea sp. | |
| 飫肥南方丘陵 | Venericardia cfr. vestitoides MIZUNO | 北九州古第三系芦屋層群中の特徴種 |
| 串間市大平(図幅地域西隅) | Linthia praenipponica NAGAO | 〃 |
頁岩を主とする地層で, しばしば砂岩や砂岩頁岩互層などを挾む。 とくに砂岩を挾むことが多いが, 連続性はなく, レンズ状または塊状をなすことが多い。 本層は本図幅地域中もっとも広く発達し, とくに中央部に著しい。
普通, 黒色~黒灰色で, 風化面にも著しい変色は見られない。 剝離性は概して弱く, とくに本層の厚く発達する部分は塊状を呈し, 外見上宮崎層群の泥岩と区別し難い場合があるが, 膠結度はそれより大きい。
砂岩層や砂岩頁岩互層に較べて軟弱で, かつ甚だしい擾乱作用を受けて, 破砕されていることが多いので, 侵蝕に対する抵抗が弱く, かつ崩壊し易い。 したがって本層の発達する部分は概して低夷な地形を呈し, 溪谷に乏しく河川沿岸には幅広い谷底沖積地が形成されている。
厚さ数 cm~数 10 cm 単位の互層で, しばしば砂岩層または頁岩層に移化する。 本層は本図幅地域周辺の砂岩層が発達する部分と, 中央部の頁岩層が発達する部分との中間部によく発達し, 分布上から見ても砂岩層と頁岩層との漸移帯をなしている。
本層は砂岩と頁岩との量比によって, さらに砂岩がち互層・等量互層・頁岩がち互層などに分類され, 地層の擾乱, 侵蝕, 崩壊などに対する抵抗力に関しては, 砂岩がち互層は砂岩層, 頁岩がち互層は頁岩層にそれぞれ近い性質を有し, 等量互層はその中間の性質を有している。 これらの互層は日南層群の擾乱構造を, 局部的によく表現しており, 褶曲, 断層, 逆転構造などの状態を観察することができる。
本図幅地域西部の男鈴山東麓赤根附近の頁岩中または砂岩中, およびその北方延長方向にあたる中山附近の頁岩中に, 厚さ 10 m 前後の単層として介在する。 径数 cm 程度の小礫を主とし, 細礫ないし中礫を含む。 礫質は砂岩を主とし, 珪岩・珪質黒色頁岩・黒色頁岩などからなり, 粗粒砂または淤泥によって膠結されている。 本層中にはしばしば果実化石と思われる団塊を含むが, もとの組織を残さず, 識別は困難である。
上述礫岩層と同じく男鈴山東麓の頁岩中, 男鈴山山頂附近西寄りの頁岩中などに認められ, いずれも厚さ 10 m 前後の薄層である。 一般に赤紫色を呈するが, ときに暗緑色を呈し, それらは相漸移し, さらに周囲の黒色頁岩とも漸移的である。
普通の頁岩に較べて非常に軟らかく, 水を含むと粘土化し易い。 鏡下では石英の鋭角をなす微小破片が認められるほかは, 大部分褐色の微粒子からなっている。
北隣日向青島図幅地域における小松山東麓の凝灰質頁岩と同様, 男鈴山山頂附近の塩基性岩に近接して存在すること, および岩層分布からみて, 日向青島図幅地域中央やゝ西寄りを, ほゞ北から南に向かって断続する, 赤紫色凝灰質頁岩の南方延長線上に位置していることは, 本層が塩基性岩と密接な関係があり, さらに日南層群中のある層準をなす可能性を示しているようである。
本図幅地域西隅の男鈴山山頂附近には, 同山頂を半ば囲繞するような形で塩基性岩の露出が見られる。 産状は詳らかでないが, これを挾む地層と平行して露出しているので, 岩床状をなすものと思われる。
一般に暗赤紫色を呈するが, 部分的に暗緑色を呈し, 堅硬, 緻密, 方解石脈に網状に貫ぬかれている。 鏡下では玄武岩質で, 斑晶は輝石または橄欖石であったと思われるものが, まったく緑泥石化しており, さらに一部は炭酸塩鉱物化している。 石基は塡間組織または間粒状組織を呈し, 主として針状の斜長石・鉄鉱などからなり, 緑泥石化作用, 炭酸塩化作用などを受けている。
新第三系中新統に属する宮崎層群は, 主として本図幅地域東半部の鵜戸山塊を構成し, その基底部は広渡川を越えて, 西半部の日南層群上に斜交不整合に重なっている。 日南層群が, 著しく擾乱された複雑な構造を呈しているのに対し, 本層群は東に向かって緩傾斜する単斜構造をなし, 本図幅地域においてはみかけ上の厚さ 3,000 m 以上に達する地層である。 本図幅地域における本層群の層序および層準は, 日向青島図幅地域におけるものとまったく同様である。
宮崎層群の基底部をなし, 礫岩層と砂岩層とからなっている。 両者とも塊状をなし, 侵蝕に対する抵抗力が比較的強いので, 広渡川西岸を北北西 - 南南東に連なる山嶺部の脊骨をなし, 日南市附近においては, 冲積層上に残丘として嘴状に長く連なっている。 本層はさらに油津市街地西部を横切り, 油津湾に一旦没した後, ふたゝび虚空蔵島に現われ, 狼の鼻・孤島・観音崎・松島・鳥帽子島などの岬や島嶼を経て, さらに南隣の都井岬図幅地域へ連なっている。
本層のうち, 礫岩は砂岩を主とする小礫ないし中礫から構成され, 比較的堅く膠結し, 風化面は鉄銹色~黄褐色を呈している。 また砂岩は一般に細粒で, 礫岩と同様に風化面は黄褐色を呈している。
礫岩層の厚さは南北を通じてあまり変化なく, 20~30 m である。 しかし砂岩層は北部では厚く, 約 250 m に達するが, 南部に向かうに従って減じ, 油津以南では上位の家一郷砂岩・泥岩層との区別が困難となる。
下位の双石山砂岩・礫岩層から, 上位の郷之原泥岩層への漸移相を示す地層で, 砂岩・泥岩・淤泥岩・砂質泥岩・泥質砂岩・砂岩泥岩互層などからなり, それらの岩相は互いに漸移し易い。 厚さは 300~400 m に達する。 北部においては日向青島図幅におけると同様に, 砂質泥岩ないし泥質砂岩または淤泥岩が, 下位の双石山砂岩・礫岩層の砂岩層に漸移的に重なるが, 南部においては本層の砂質泥岩・泥質砂岩および滲泥岩などは少なくなり, 砂岩層と砂岩泥岩互層とに分離されてそれらが繰り返すので, 下位の双石山砂岩・礫岩層の砂岩層との区別は困難となる。
本層中にはしばしば Operculina や, 日向青島図幅地域内で得られたものと同様の貝化石がみいだされる。
広渡川東岸沿いに分布する厚い泥岩層で, なかに2枚の砂岩単層を挾む。 全層の厚さは地質図上に現われている限りでは約 350 m であるが, 侵蝕に対する抵抗力が弱く, したがって広渡川の側蝕を受けて, 冲積層に覆われている部分が相当あると思われるので, 実際には 400 m 以上に及ぶものと推定される。
介在する2枚の砂岩単層は, 犬ガ城山附近および益安附近に始まり, 南するに従って厚くなる傾向にあり, 高砂城山以南では厚さ 20 m に及び, 油津東部の梅ガ浜附近から一旦海中に没した後, さらに小場島・ビロ岩・大島などの島喚を形成している。 つねに侵蝕に対する抵抗力の弱い泥岩部を保護して, 皮殼のように上を覆っている。 高砂城山・梅ガ浜・大島などの山塊では東側の斜面は砂岩層の傾斜面と一致している。 すなわちこれらの山塊の地形は, まったくこの砂岩層の構造に支配されている。 これに対し, 西側では泥岩部が著しく側蝕を受けて急斜面を形成している。
なお, 砂岩単層は本図幅地域北部において, その一部分が上位の鵜戸互層中に入っているが, このことは, この砂岩単層が宮崎層群の一般的岩相変化とは無関係に, 形成されたことを暗示している。
主として砂岩と泥岩との規則的な互層からなり, 本図幅地域嶋戸山塊の主要部を占めて発達し, 本図幅地域ではみかけ上の厚さ約 2,000 m を示し, 南限はいずれも日向灘に没している。 本互層は砂泥比によって泥岩がち互層・等量互層・砂岩がち互層などに分けられる。 また本層中には3~4枚の砂岩単層を挾んでいる。
泥岩に富む互層で, 主として鵜戸互層最下部を占め, 下位の郷之原泥岩層から移化し, 上位の等量互層へと漸移する。 同様な岩相は上位の等量互層中にも介在し, 南に向かって発達する傾向がある。
益安附近における砂泥比の一例は砂岩の厚さ 10~70 cm, 泥岩の厚さ 40~150 cm を示し, 風田附近の一例は砂岩の厚さ 5~40 cm, 泥岩の厚さ 20~50 cm を示している。
なお, 北部の大藤東方では本層中に厚さ 5~10 m の砂岩単層を挾むが, 犬ガ城山では下部の郷之原泥岩層に入る。
砂岩と泥岩とがほゞ同じ厚さの互層で, 日向青島図幅地域南部から漸次発達し, 本図幅地域においてはほとんど砂岩がち互層にとって代わり, 鵜戸互層の主部をなして発達している。 また鵜戸山塊の南海岸沿いに泥岩がち互層の介在がめだっている事実は, 本等量互層はさらに泥岩がち互層におきかえられること, すなわち鵜戸互層が南に向かって泥岩がちになる傾向を示している。
本層の砂泥比は砂岩の厚さ 10~30 cm, 泥岩の厚さ 15~30 cm を示している。 また本層中には3枚の砂岩単層を挾み, いずれも厚さ約 10 m である。 立石附近の砂岩単層は Operculina の化石を含んでいる。
砂岩に富む互層で, 主として鵜戸互層の上部, すなわち宮浦および鵜戸附近に発達する。 また下位の等量互層中にも部分的に本層が介在する。 鵜戸附近における本互層の砂泥比の一例は, 砂岩の厚さ 10~40 cm, 泥岩の厚さ 5~10 cm を示している。
泥岩に富む互層で, 本図幅地域では北東隅の鵜戸神宮附近に小分布をなし, 1枚の砂岩単層を挾んでいる。 砂岩単層は 10~20 m の厚さで, 波蝕に堪えて岬として海上に突出している。 そしてこの砂岩単層の傾斜面はそのまゝこの附近の岬の地形斜面となっている。
鵜戸神宮はこの砂岩単層の裂罅が海蝕を受けて生じた, いわゆる海蝕洞のなかに祀られている。 またこの砂岩単層は波浪などのために種々の複雑な侵蝕形を呈している。
本図幅地域中部の, 猪崎燈台附近の丘陵中に礫層の小分布が見られる。 日南層群のものと思われる砂岩の小円礫ないし中円礫からなるが, ときに亜角礫を含み, あまりよく膠結していない。 一方目井津西部の丘陵中にも同様な礫層が認められ, 同じく日南層群のものと思われる砂岩の小円礫からなり, ほとんど膠結していない。
いずれも明瞭な平坦面を形成しておらず, またこれに対比しうる他の平坦面も, この附近には認め難い。 しかしいずれも海抜約 60 m の高所にある鞍部に分布しているので, 更新世前半における河床堆積物のなごりと思われる。 この礫層を猪崎礫層と名づける。
瀬谷川以南の諸河川沿岸に, いずれも段丘をなして発達する珪長質の火山噴出物で, 厚さは最大 50 m 以上に達する。 上部はいわゆるシラスと呼ばれている未凝固軽石質のものであるが, 下部は灰石と呼ばれている熔岩質のもので, 上流のものほど灰石の部分が厚くなり, しばしば石材として採石されている。
岩質は日向青島図幅地域のものと同様で, 一般に灰白色~暗灰色を呈し, 粗鬆, 無層理で, 主としてガラスないし軽石からなり, 鏡下では斑晶は石英および斜長石を主とし, 角閃石・鉄鉱を含むが, 石基はガラス質で著しい流状構造を示す。 また斑晶は必ずしも長軸が一定方向の排列を示さず, 稜角はいずれも丸みを帯びており, 石基の流状構造は斑晶を完全に囲繞し, 複雑な乱流状態を示している。 またしばしば安山岩・砂岩などの外来物破片を混じている。 各河川上流における灰石の部分には, 柱状節理が見られることがある。
本層の下底にはしばしば礫層あるいは砂岩を伴ない, 日南層群を傾斜不整合に覆っている。
地質図には省略したが, 本図幅地域全域を通じて, シラス灰石層の上には必ずローム層が 1~2 m の厚さでのっている。 本層はまた更新世以前の地層上の, 平坦面ないし緩斜面上にもしばしば見られる。
主として褐色~赤褐色の火山灰質粘土からなるが, 上部は腐植質の黒色土壌と化している。
鵜戸山地東側斜面には, シラス灰石層はまったく存在しないが, ローム層はその緩斜面上にしばしば認められる。
主として現在の河川の冲積作用によって形成された冲積層 [ 以下の [注] 参照 ] からなるが, 海岸地帯には, 河川と沿岸流および波浪との, 相互作用によって形成された海浜砂層がかなり発達している。
日南市附近を始め, 各河川沿岸の低地に狭小な地域を占めて分布する。 礫・砂・粘土などからなるが, 表層は土壌に覆われ, 居住地・交通路・耕作地そのほか人文的にもっとも重要な地域となっている。
海岸地帯の平野部および湾頭部には, 砂浜・浜堤および砂丘などが形成され, 主として砂によって構成されているが, これらを総称して海浜砂層と呼ぶ。 浜堤および砂丘は前述の冲積層面よりも僅かに高く, 海抜数 m の卓状地ないし小丘をなしている。 油津北東方および大堂津附近によく発達している。
本図幅地域内において, ガス徴地として著しいものは, 油津北方の益安附近にあり, ガスは湿田中の湧出水に伴なって噴出している。 湧出水からは約 665 mg / l の HCO3- と, 約 300 mg / l の Cl- とが検出された。 このほかにも附近の水田中には, ときにガス徴および油徴が認められるといわれている。
益安附近のこのような徴候に着眼して, 調査当時益安西方の広渡川東岸で, 貝島炭砿の手により天然ガス開発を目的とする試錐が行なわれていた。 その後の本所 本島公司技官らの調査資料 [ 以下の [注] 参照 ] によれば, 深度 260 m 附近および 600 m 以下において, ガスの噴出が認められ, 200 kl / day の自噴水に伴なって 235 m3 / day のガス量が算出され, また Cl- は 5,600 mg / lである。 なおこの試錐井は日南1号井と呼ばれているが, このほかに同資料によれば, 日南2号井その他の試錐が行われており, それらの柱状断面図によれば, これらの湧出水およびガスは, 宮崎層群下部の郷之原泥岩層のみならず, 下位の日南層群からも供給されていることは確実と思われる。
次に図幅地域北部の, 内之田附近の民家の井戸水においては, Cl- は約 1,250 mg / l を示している。 このほか図幅地域北西部の名尾附近および西部の大窪南西方にも, 湧出水が知られている。
シラス灰石層の下部すなわち灰石の部分は至る処で採石され, 建築土木用石材として利用されている。 とくに図幅地域北西部の深瀬附近および南西部の 榎原 附近では, 大規模な採石が行なわれている。
一方宮崎層群中に介在する砂岩単層も, ときに建築材料または骨材として利用されている。
日南層群は激しい擾乱作用を受けて, 大部分の地層が著しく破壊されているので, 地層としては脆弱で, 砂岩層の発達する部分を除いては侵蝕に対する抵抗が弱く, きわめて崩壊し易い性質をもっている。 ことに図幅地域中央部の頁岩地帯は, 風水の侵蝕に対して急斜面を維持することができず, 低夷な丘陵地となり, 谷は急斜面の溪谷とならずに, 幅広い冲積原が形成されている。 したがってこのような地層中に人工的な切割を加えるときは, 多くの場合その面はこれらの地層の安全勾配を超えるので崩壊し易い状態になる。
これに対して宮崎層群は地塊運動によって局部的に破砕されているほかは, 地層全体として強い粘着力を有するので, 比較的急峻な地形を維持している。 したがって人工的な切割に対しても堅固で, 断層の密な部分や, 切割面が地層の走向に平行で, かつ傾斜が地層の傾斜より急である場合を除いては崩壊することはまれである。 鵜戸山地海岸に沿う道路においては, しばしば傾斜 90°以上の切割に堪えている実例が見られる。
日南層群が甚だしく破砕されていることは, 地層が風化ないし侵蝕, 崩壊に対する抵抗力が弱く, したがって一方においては山地そのものの崩壊あるいは切割の崩壊という, 不利な條件をもたらすが, 他の一方においては風化土壌の発達と, 崩壊岩屑からなる緩斜面の形成とをうながし, したがって森林植生にとって有利な條件をもたらす結果となっている。 日向青島図幅において述べた通り, 本地域一帯がいわゆる飢肥杉の産地となっていることは, 単に人為的な影響によるのみでなく, 温暖湿潤な気候風土と相侯って, この地質的條件が基礎的條件となっていることを見逃すことはできない。 杉の人工林としてもっともみごとに発達している地域は, 日向青島図幅地域南部から本図幅地域北部の飢肥北方, ないし酒谷川流域地区である。
一方宮崎層群地域である鵜戸山地をみると, 本図幅地域では日向青島図幅地域に較べて杉の人工林区域が増加している。
なお, 頁岩のもっともよく発達している本図幅地域中央部の日南層群地域が, 杉の植林地としてのみならず, 畑作地として, あるいは果樹園地としての面積が多いことは, この丘陵地域の利用度が進んでいることを示している。
本図幅地域の海岸は北隣の日向青島図幅地域から, 南隣の都井岬図幅地域に至る中間部にあたり, 日南海岸国定公園の一部をなしている。 海岸線は屈曲に富み, いわゆる奇岩奇勝少なからず, 亜熱帯的植生, 強烈な日光, 紺青の海の色と相侯って, 至るところ明媚な風光を現出しているが, このような自然景観は, 実は地質的條件を無視しては存在し得ないであろう。
この地域の海岸線の形状を支配し特徴づけているものは, なんといっても宮崎層群の砂岩層と砂岩がちの砂岩泥岩互層とである。 これらの岩層は侵蝕に対する抵抗が比較的強いので, 波浪の侵蝕を受けても容易に削剝されず, 種々の小侵蝕形を呈しつつも, 多くの場合海上に突出し, 岬・島嶼として海岸線に変化を与えている。 鵜戸神宮附近の岬・海蝕洞・海蝕台, 油津附近の残丘・岬・島嶼, 大堂津以南の岬・島喚・海蝕台および海蝕台礁 [ 以下の [注] 参照 ] などは, いずれもこの宮埼層群中の砂岩層, または砂岩がちの砂岩泥岩互層の侵蝕形である。
また, 鵜戸神宮附近や虚空蔵島などに見られる亜熱帯性ないし暖帯性広葉常緑樹の天然林は, いずれもこの砂岩層の所産といえるであろう。
一方油津北方風田附近や, 大堂津などに見られる海浜砂層が, いわゆる白砂青松地帯をなすのも, これらの砂層の成因が, 広渡川や南郷川の運搬作用と波浪, 沿岸流との相互作用にあること, その砂粒が本地域一帯の石英粒に富む砂岩に由来するものであり, 安山岩などの火成岩その他に由来する有色鉱物を多く含んでいないこと, さらに広渡川以南の各河川がいずれも上流から, シラス灰石層の主成分である石英粒・軽石粒をもたらしていることなどによることは いうまでもない。
EXPLANATORY TEXT OF THE GEOLOGICAL MAP OF JAPAN Scale 1 : 50,000
Kagoshima, No. 91
By YOSHITO KINO (Written in 1958)
The mapped area is located in the southern part of Kyūshū and faces to Hyūganada. Geologically, it is occupied by Paleogene ? (Nichinan group), Neogene (Miyazaki group) and Quaternary accumulations. The geological sequence in the area is summarized in Table 1.
Nichinan group
The Nichinan group comprises sandstone, shale, alternation of sandstone and shale, and rarely tuffaceous shale and basaltic rock. The group is intensely folded and faulted, and shows many anticlines, synclines, domes and overturned structures. Most of the strata, especially shaly strata, are sheared and show mosaic-like structures. The monotonous rock facies and the disturbed structure make it difficult to distinguish the stratigraphical division of the group, although the strata exposed in the middle and southeastern parts of the mapped area would be regarded as the lower part of the group. The molluscan fauna yielded in the environs of Obi and Aburatsu has been considered similar to Oligocene fauna of Northern Kyūshū.
Miyazaki group
The Miyazaki group belongs to the Miocene, and overlies the Nichinan group, clino-unconformably.
It comprises basal conglomerate, massive sandstone, sandy mudstone, massive mudstone, and alternation of sandstone and mudstone in ascending order, and is intercalated by several sandstone beds.
The total thickness measures up to 3,000 m. The structure is generally monoclinal, gently inclining towards the eastern seaside, and then many blocks are formed by many faults. As the strata of the group are cohesive, they are fairly resistant against the erosion, therefore Udo mountain block composed of this group keeps comparatively steep topography. The sandstone and muddy sandstone contain many animal fossils, namely Operculina and various molluscs.
The Quaternary comprises mainly Pleistocene terrace and Recent accumulations.
The Pleistocene terrace accumulations are composed of so-called "Shirasu", "Haiishi" and loam. "Shirasu" and "Haiishi" are salic volcanics, spreading themselves widely in Kagoshima prefecture and the southern part of Miyazaki prefecture, and they are believed to have been poured down as pumice flow or mud lava from "Aira Volcano", the centre of which is presumably the northern part of Kagoshima bay. The loam is the decomposed product of volcanic ash of late Pleistocene. The terrace plains of "Shirasu" and loam are utilized for arable and habitable land.
The Recent accumulations comprise alluvial deposits and beach sands.
A test boring developing the natural gas resources was recently operated near Masuyasu, the north of Aburatsu. The data of this boring indicate that the natural gas brought up by the artesian ground water is derived from the lower mudstone of Miyazaki group or further lower horizon, and that the issued water contains a large quantity of chlorine as much as Cl- = 5,600 mg / l.
The water of a well near Uchinoda in the northern part of the mapped area contains Cl- of about 1,250 mg / l.
As "Haiishi" has a suitable strength and yet is easy to be quarried, it has been utilized as building stone.
This area affords splendid woods of cryptomeria. All over the area, the land rich in shale or mudstone is suitable for the growth of cryptomeria, but not in the southern part covered by the natural forest of evergreen broad-leaved trees.
昭和 34 年 9 月 10 日 印刷 昭和 34 年 9 月 15 日 発行 著作権所有 工業技術院 地質調査所