15082_1956
5万分の1地質図幅説明書
(鹿児島 第 82 号)
通商産業技官 沢村孝之助
地質調査所
昭和 31 年
目次 I. 地形 II. 地質 II.1 四万十層群 II.1.1 礫岩 II.1.2 砂岩 II.1.3 頁岩 II.1.4 凝灰質頁岩 II.1.5 チャート II.1.6 構造 II.2 第三紀安山岩(An) II.3 国分層群(K) II.4 姶良火山軽石流 II.5 姶良層 II.6 その他の第四系 II.6.1 姶良火山軽石流に伴なうローム軽石層 II.6.2 再堆積シラス層(いわゆる水成シラス) II.6.3 段丘砂礫層 II.6.4 ローム軽石層 II.6.5 冲積層 III. 応用地質 文献 Abstract
1 : 50,000 地質図幅説明書 (昭和 30 年稿)
(鹿児島 第 82 号)
国分図幅のうち, その北半地域を昭和 30 年 2 月から 3 月にかけて調査した。 南半地域は7万5千分の1鹿児島図幅 2) としてすでに調査されており, 今回はこの地域には触れていない。 なお, この南半地域のうちの西部の地質については, 昭和 25 年の伊田一善等による敷根天然ガス調査 6) の際に, 詳しく調べられている。
国分図幅地域は鹿児島湾の北東隅を占め, ほとんど低い丘陵のみからなる地域であって, 国分周辺に冲積地がやゝ広く発達しているのみである。 丘陵は2段になっている。 高い方は図幅地域の中央を北から南へ走って, 海抜 600 m 以下の高さを示す山地で, これは中生層からなっている。 低い方はこの山地の両側に発達するいわゆるシラス台地で, 海抜 200~300 m の平坦面がよく発達しており, これは主として 姶良 火山が流し出した軽石流からなっている。 中生層からなる山地は晩壮年期のなだらかな地形を呈し, ほゞ E ‒ W に流れる谷によって刻まれている。 シラス台地は主としていわゆるシラス, すなわち, まだよくは固結していない軽石凝灰角礫岩からなるのであるが, その表面が 霧島火山および桜島火山が噴出した 火山灰・軽石によって薄く覆われているためもあって, シラスの堆積面がよく保存されており, 特に山地の西側の台地には春山原・須川原などの広い平坦面が存在する。 山地東側の台地では火山灰などの堆積前にやゝ侵蝕が進んでおり, 台地面は細かな起伏に富み, また一段低い面, すなわち侵蝕されたシラスがふたゝび堆積して生じた面が発達している。 シラス台地は鹿児島湾へ向かっては 200 m に近い断崖をつくり終っている。 中生層が山地を形成している地域あるいは北隣の霧島火山地域では, シラス台地は谷に沿って連続しており, このような場所では急激にシラスの堆積面の高さが増し, 霧島火山鳥帽子岳の南西麓では標高 500 m にまで達している。 中生層の山地をこえてその西側では, シラスの堆積面は西方へ漸次低くなり, 台地面に連続している。 このような状況はシラス下のいわゆる灰石, すなわち熔結凝灰岩でも同様である(第 1, 2 図)。 これは軽石流が熱雲(Nuées ardents)として噴出したために, 火口を遠ざかってもなお流動性が強いためであって, 山地にのしあがって堆積し, また中生層の山地では, その間の峠をこえて流れ, 高い稜線の背後の谷に廻りこんでいる状況も呈する。 たゞし, このような軽石流の分布には, 霧島火山と中生層の山地とが 鹿児島湾沿岸地域に対して傾動的に上昇したことの影響も多少は認められる。 傾動については, 1914 年の桜島大爆発の際に沿岸地域は 30~89 cmも沈降し 1) , また最下位の熔結凝灰岩が上位のものよりも, 急な傾斜で山地へ向かうにしたがい高くなっていることなどが, 傾動の端的なあらわれである。
シラス台地は細かな, しかし深い U 字谷に削られている。 大きな河川の流れる谷もまた U 字谷の形状を呈し, 比較的に幅広い川底をもつが, 砂礫の堆積は少ない。 たゞし, 霧島川の上流など, 霧島火山に近い地域では安山岩類の礫が多量に堆積している。 段丘はあまり明瞭ではなく, 東部の庄内川に沿って高低2段の段丘が断続的に認められるのみである。 国分平野は鹿児島湾を埋めた冲積地である。 こゝには後背地のシラスが流水によって運ばれやすいため, 扇状地はほとんど発達していない。
調査した地域の地質を地史的に概観する。 西南日本の太平洋側に広く発達する四万十層群(時代未詳中生層 2) )がこの地域の基盤をつくっている。 これは砂岩と頁岩とを主とする互層で, ほゞ NE ‒ SW に走り, NW へ傾斜する単斜構造を呈している。 これは地表には, 霧島火山最高峯の 韓国 岳の東側と桜島火山とを結ぶ線から東方にのみ露われている。 おそらく, この線に沿う断層によって, 西部は陥没しているものであろう。
この陥没運動と関連して, 激しい第三紀火山活動が生じ, その噴出物は 今回調査した地域にも霧島火山の基盤の一部として露われている(An)。 その大部分は橄欖石輝石安山岩で, 少量の火山砕屑岩を伴なっている。
第三紀安山岩が著しく侵蝕された後に, 淡水性の水成岩類からなる国分層群(K) [ 以下の [注] 参照 ] が堆積した。 これは固結度の低い礫岩・砂岩・泥岩などからなり, 地域南方の敷根附近では天然ガスを埋蔵している 6) 。
次いで姶良火山の活動が起り, 何回も石英安山岩質軽石流(A1~A5)が噴出して, 鹿児島県および宮崎県の南半に 3,870 km 2 に及ぶ広大なシラス台地を形成し, 鹿児島湾頭に径 23 km の一大カルデラをつくった 5) 。 現在もなお活動している桜島火山はこの中央火口丘である。 姶良火山が活動を休止している間に, 局地的に淡水成(?)の堆積物がしばしば生じた。 姶良層(I)がそれで, その厚さは処によっては 60 m に達する。 なお, 当時すでに活動していた霧島火山から噴出したものと考えられる火山灰・軽石が, 軽石流の間に時に介在する。
姶良火山の活動終了直後に, 特に調査地東域でシラスが侵蝕され, その一部がふたたび堆積していわゆる水成シラスとなって各所に散在する。
またこれらを覆って, 当地域全面に, 桜島火山と霧島火山とが噴出したローム軽石層が分布する。 これらは地質図では軽石流のなかに含めて塗色してある。
西南日本に広く分布し, ジュラ紀ないし白堊紀といわれる四万十層群は, 調査地域にも厚さ 3,000 m に達する一連の地層として露われる。 その最下部は細かな層理を呈する砂岩(Mbs)で, これは頁岩の薄層をしばしば挾み, また 10 cm 前後の厚さの炭質頁岩ないし石炭を挾んでいる。 この上位には, 漸移の関係で, 無層理の砂岩(Mss)と頁岩(Msh)との不規則な互層がみられる。 これは当地域の四万十層群の大部分を構成するもので, 概して北東部では粗粒で砂岩に富み, 礫岩あるいは礫質砂岩を介在するが, 南西部では細粒で頁岩に富む傾向をもっている。 なお, 本層群は凝灰質頁岩(Ms)・チャート(Mc)を介在し, 岩相からみれば鹿児島図幅 2) (7万5千分の1)における「下部層」に相当する。 調査地域南方に分布する鹿児島図幅における「上部層」とは断層で接している。
図幅地域北東隅近くの高野部落北方によくみられる。 径 3 cm 程度のよく円磨された珪岩・粘板岩などの礫, あるいは黒色頁岩の亜円礫(径 7 cm 以下)を含有する。
青緑色(風化して黄褐色)あるいは灰白色の緻密な岩石で, 斜長石片に富み, 黒色頁岩の細片が散点している。 頁岩との境には縞状を呈する互層部があり, 時にはこの部分は珪質となっている。 下部の砂岩(Mbs)は細かに成層し, 上部の砂岩(Mss)は無層理である。
青色~黒色の無層理の岩石で, 風化して黄色を呈する。 白色あるいは赤色を呈する海百合の柄 ? の化石をしばしば埋蔵する。 擾乱帯では著しく硬化し, 千枚岩状を呈することもある。
暗赤褐色を呈する緻密な岩石で, 他の岩石より軟弱である。 通常層理を示さぬが, 高野部落の南方ではよく成層しており, こゝでは特に厚く 200 m 以上に達する。 一般には数 10 m の厚さで砂岩と頁岩との境に, あるいは頁岩中に介在する。
青黒色または白色の岩石で, 厚さ 5~10 cm の細かな縞状を呈する。 砂岩に伴なってあらわれ, 通常は珪質頁岩に近い。 大部分は1単層が 50~200 cm の厚さであるが, 高野北西方の西折田代の西に僅かにやゝ厚いものがある。
概して NE ‒ SW に走り, NW へ傾斜する単斜構造を呈するが, 走向は NNE ‒ SSW から E ‒ W にまで変化し, 地層は蛇行するように分布する。 最下部にみられる成層砂岩では細かな褶曲構造が特によく発達している。 丘陵の末端にあたる部分の地層は一般に断層によって寸断され, 破砕されて, 著しく風化しているが, 丘陵の内部ではこのような破砕が少ない。 たゞし, 地域中央の市野野から NE へ走る走向断層には断層破砕帯がよく発達している。 この南の, NW ‒ SE に走る断層は破砕帯を伴なっておらず, その存在は両側の地層の分布の差から推定される。
図幅地域の中央北端に橄欖石輝石安山岩が分布する。 これは霧島火山の基盤をつくる安山岩類の1種で, こゝでは基盤の四万十層群の風化した部分を直接覆っている。 ほゞ水平に分布する上下2枚の熔岩流があり, その間には, 風化して全く軟弱となり, 雑色を呈する 10 数 m の厚さの凝灰角礫岩が挾まれている。 下位の熔岩は厚さ 40 m 以下, 上位のものは少なくも 80 m の厚さをもつが, ともに普通輝石の斑晶が散点し, 青灰色または黄褐色を呈する緻密な岩石である。
紫蘇輝石は常に単斜輝石を平行連晶状に伴なっている。
国分層群は 西隣図幅地域内の鹿児島神宮から東部落に至る坂道が模式地となっている地層で, 岩相・層厚ともに変化が激しい。 下部は礫岩・偽層砂岩・暗灰色泥岩の累層で, 中部は厚い偽層砂岩と暗灰色泥岩とからなり, 上部は白色粗粒の軟弱な凝灰岩である。 次の植物化石を産する。
その時代は鮮新世末期あるいは更新世初期と考えられ, 姶良火山の噴出物によって覆われる 6) 。
今回の調査地にはその一部が僅かに露われている。 南西部の姫城の東側鉄橋下の切割りには, 第 3 図のように 10 m 以上の厚さをもち, 海抜 70 m 前後の高さにまで露われている。 こゝの下部にみられる礫岩層はこの附近によく分布するもので, 径 5 cm の円礫からなり, ローム質あるいは軽石質の基質をもち, よく成層しており, 時には泥岩の薄層を挾んでいる。 これより東方では, 国分層群は細粒であって, 鐘淵附近には塊状の砂岩が褐色ロームと青色泥岩との互層とともに分布するが, さらに東方では泥岩のみが露われている。 姫城より北方では礫岩と泥岩との互層がみられ(松永部落), また松永部落から春山原にのぼる通路の海抜 140 m 附近には, 第 4 図のように急傾斜を呈して露出する。 国分層群は通常海抜 140 m 以下にほゞ水平に分布しているのであるから, この地点の状況は, おそらく四万十層群の西縁をよぎると推定される断層に平行した, NNE ‒ SSW の断層が伏在することを示すものであろう。
姶良 火山は広大なカルデラ(径 23 km) 5) を有するが, その山体は莫大な量に達する石英安山岩質軽石流のみからなる。 軽石流は 更新世中期あるいはそれ以前から更新世末期にかけて何回も噴出されており, その間の相当の長さの活動休止期間に, 次節に述べる姶良層が局地的に堆積している。 軽石流のうち最も規模の大きなものは, 最後に噴出した 入戸 軽石流(A5)で, いわゆるシラス台地の主要部を構成している。 初期の萩の元軽石流(A1)もまたこれに劣らぬ規模をもっていたもののようで, 各地に断片的に残存している。 この両者の間には, 下位から順に新川(A2)・ 重久 (A3)・岩戸(A4)軽石流があるが, その規模はいずれも小さかったようである。
各軽石流は2部分に, すなわち, 軽石の集積からなる上位の粗雑な部分(軽石凝灰角礫岩で, シラスあるいは灰砂と呼ばれる)と, 固結して柱状節理を有する下位の部分 (熔結凝灰岩 welded tuff で灰石・泥熔岩・「安山岩はり」などと呼ばれる) とに分けられる。 この両者の境は, シラスが崩壊し易いのに対して灰石が断崖をつくるために, 遠望するときは容易に認められるものであるが, 露頭においてはその境を定めることが甚だ困難である。 特に鹿児島湾頭に近い地域では両者は全く漸移しており, 灰石に特徴的な柱状節理も, この漸移部約 2 m の間で消滅している。 しかし, 図幅地域の北東部では両者の境がやゝ明瞭である。 特に押し潰されて扁平緻密となった軽石片が シラスの下底部に密集して著しい流理を呈している際には, 軽石に乏しい灰石との境界面を容易に指摘しうる。 これが風化している場合には, シラス中の軽石は風化面に凸出しているのみでなく, 葉片状にはがれるが, 灰石中のものは風化しても変化がないので, さらに明瞭である。 なお, 一般の軽石流ではその中央部が熔結凝灰岩となっているというが, この地域では灰石が姶良層と直接していて, その間にシラス質の部分が存在する例は少なく, 存在してもそれは数 m 以下の厚さを有するにすぎないようである。
シラス (軽石凝灰角礫岩, 図版 1) : 軽石の大小さまざまの角礫あるいは亜円礫を多量に含有し, 緻密な安山岩片および粘板岩その他の基盤岩類の岩片を含んでおり, その基質は軽石質の砂からなる。 100 m に達する厚さをもつこともまれではないが, 全く無層理で, その粒度構成も鹿児島湾からの遠近にかゝわりなくほとんど同一であって 8) , 軽石流の淘汰が行われ難いことをよく示している。 色は通常白色であるが, 時には暗灰色~黒色を呈し, 特に下部では後者の場合が多い。 また時には美麗な淡紅色・淡紫色あるいは黄色を呈することもあるが, これはローム層または中生層に接する部分で, おそらく鉄分を吸着したために生ずる色である。 シラスは僅かに凝固しているが, 水の侵蝕にはきわめて弱く, 谷頭にあたる部分は常に崩壊の危険がある。 一般には緩傾斜の部分が崩落し易く, 垂直に切り立った崖はかえって崩れ難い傾向をもっている(図版 2)。
灰石 (熔結凝灰岩, 図版 3) : 凝灰角礫岩が高温で熔結された部分で, 一般に彎曲した柱状節理をもち, その下部には板状節理も時には発達している。 侵蝕に対する抵抗力が強いために, シラス台地の内部では川の両岸がシラスからなり, 川底は灰石からなる例がしばしばみられる。 灰石の岩質は シラスに酷似するものから通常の安山岩に似るものまで, さまざまである。 すなわち, シラスに類似しているが暗灰色~黒色を呈し, ガラス質であって, 柱状節理をもつ点でシラスから識別されるものもあり, 安山岩と類似し斑晶に富み, 石基も暗灰青色を呈するが, 僅かに黒曜石片や基盤岩片を含み, 板状節理も葉片状を呈する点で通常の安山岩から区別されるものもある。 阿蘇熔岩の一部にしばしばみられるような, 黒曜石と白色斑状部とが一様な縞をなすところは, 当地域の灰石には存在せず, また一般に, 阿蘇熔岩に較べて黒曜石片に乏しい。
軽石流の区分 : 山口鎌次 4) は当地域の灰石を 紫蘇輝石「粗面安山岩」 [ 以下の [注] 参照 ] ・ 普通輝石紫蘇輝石「粗面安山岩」・ 紫蘇輝石石英安山岩・ 角閃石含有紫蘇輝石石英石安山岩 の4種に分け, この順序に下位から上位に累重するものとした。 この層序は地域全般によくあてはまるが, 化学成分からいえばいずれも石英安山岩であり(第 1 表), また斑晶組み合せも地域全般にわたっては必ずしも同一ではないもののようで, こゝでは岩石名を使うことを避けて, それぞれ新川・重久・岩戸・入戸軽石流として記載する。 なお, 当地域の最下位には萩の元軽石流がある。
| SiO2 | Al2O3 | Fe2O3 | FeO | MgO | CaO | Na2O | K2O | H2O+ | H2O- | TiO2 | P2O5 | MnO | Total | |
| a) | 68.51 | 14.74 | 1.05 | 2.08 | 1.00 | 3.21 | 3.47 | 2.76 | 1.57 | 0.56 | 0.38 | 0.29 | 0.06 | 99.68 |
| b) | 66.58 | 15.22 | 1.64 | 2.70 | 1.16 | 3.85 | 3.59 | 2.06 | 1.88 | 0.31 | 0.78 | 0.32 | 0.10 | 100.19 |
| c) | 68.80 | 15.45 | 0.74 | 2.33 | 0.88 | 3.52 | 3.33 | 2.22 | 1.83 | 0.34 | 0.28 | 0.17 | 0.04 | 99.92 |
| d) | 70.56 | 14.33 | 0.35 | 2.66 | 0.59 | 3.74 | 3.35 | 2.31 | 1.32 | 0.48 | 0.23 | 0.06 | 0.05 | 100.03 |
| a) |
Welded tuff (Hypersthene "trachyandesite") of Shinkawa(新川)
Pumice flow(A2l)
鹿見島灣北岸十三塚原周邊(西隣図幅地域内)3種平均値 |
| b) |
Welded tuff (Augite-hypersthene "trachyandesite") of Shigehisa(重久)
Pumice flow(A3l)
姶良郡霧島村松永剣宇都石切場 |
| c) |
Welded tuff (Hypersthene dacite) of Iwato(岩戸)
Pumice flow(A4l)
霧島村春山原西南部稜線 |
| d) |
Welded tuff (Hornblende-bearing hypersthene dacite) of Ito(入戸)
Pumice flow(A5l)
霧島村春山原南東入戸石切場 |
萩の元軽石流 (A1) : 図幅地域のほゞ中央から北東方へ断片的に存在し, 他の灰石に較べてやゝ急に南西方向に傾斜している。 すなわち, 鹿児島湾沿岸では地表下に没しており, 郡田 川の上流部で地表に現われて約 3°の傾斜を示し, 大川原駅の南では海抜 300 m, 高野の北では 340 m の高さに分布している。 常に粘土層によって覆われ, 著しく風化しており, 他の軽石流が常に新鮮であるのに対してきわめて特異である [ 以下の [注] 参照 ] 。 軽石凝灰角礫岩質の部分はまれに少量残存するに過ぎない。 熔結凝灰岩の部分は通常の安山岩によく似ており, 葉片状を呈する板状節理に富む。 斑晶として 斜長石・普通輝石・紫蘇輝石(郡田川)あるいは斜長石・石英・紫蘇輝石 をもっている。
新川軽石流 (A2) : 山口が紫蘇輝石粗面安山岩としたもので, 図幅地域では西端部のみに露われ, これより西方に広く分布する。 その熔結凝灰岩の部分は新川の深い峡谷をつくり, 柱状節理をみせている。 これは灰白色または暗灰色を呈する新鮮な岩石で, 斜長石・紫蘇輝石および少量の角閃石・普通輝石を斑晶として有する。 約 40 m の厚さの軽石凝灰角礫岩を伴なう。
重久軽石流 (A3) : 山口が普通輝石紫蘇輝石粗面安山岩としたもので, 新川軽石流の東方に広く分布する。 熔結凝灰岩部の岩質は新川軽石流のものと異なって, 常に暗灰色あるいは黒色を呈し, やゝ粗面で, 柱状節理の存する点で軽石凝灰角礫岩と区別される。 他の軽石流に較べて熔結部は薄く, 時には 5 m 程度にすぎないこともある。 軽石凝灰角礫岩の部分は厚く, 時には 5 m に達する。 なお, 図幅地域の西端で新川軽石流を覆うものは, やゝ岩質が異なり, むしろ新川軽石流に似ている。
岩戸軽石流 (A4) : 山口の紫蘇輝石石英安山岩で, 春山原の南西端に細長く続いて屏風状にそびえる部分を構成し, その北西方に主として分布する。 熔結部は灰色を呈し, 他の軽石流に較べてやゝ軟弱であり, 凝灰岩に近い外観をもち, 姬城あるいは新川沿いに約 40 m の厚さで分布するが, 北東方へ薄くなり, 消滅する。 軽石凝灰角礫岩部は 100~120 m の厚さをもつところがある。
入戸軽石流 (A5) : 山口の角閃石含有普通輝石石英安山岩で, シラス台地の表層部を構成し, 最も広く分布し, その熔結凝灰岩の部分の岩相も変化に富み, ガラス質斑状安山岩と呼びうるもの(霧島村鍋窪)から, 黒色を呈する凝灰角礫岩質(春山原南西端)のものまでさまざまである。 大部分は流状構造を呈し, 黒曜石片がやゝ多く, 当地域の軽石流中では最も阿蘇熔岩に似ている。 通常斑晶として やゝ多量の石英・斜長石・普通輝石, 少量の角閃石・紫蘇輝石を含有するが, 鍋窪のものは斜長石・普通輝石・紫蘇輝石のみを含んでいる。 この熔結部の厚さは入戸附近で 40 m に達するが, 軽石凝灰角礫岩部も 100~120 m の厚さをもつ。 なお, その分布高度は第 1 図に示した。
姶良火山の軽石流の間に挾まって水成岩類がしばしば存在する。 軽石流の崩土に覆われ露出が悪いために詳細は不明であるが, その分布は局地的で, おそらく湖の堆積物と考えられる。 重久・岩戸両軽石流を間にして, 上・中・下の3部に区分されるが [ 以下の [注] 参照 ] 地質図には1色で示してある。
下部層 : 萩の元軽石流を覆い, 少なくも 20 m の厚さをもっている。 萩の元では下位から, ローム層・礫層・青灰色粘土層の順に累重し, その北方では粘土層が直接に風化して泥質となった淡青色軽石凝灰角礫岩上にのる。 清水村山之路には泥岩と白色火山灰との間に亜炭薄層を産するが, これも本層の一部と考えられる。
中部層 : 重久軽石流を覆い, 重久部落より東方に点在して, 30 m の厚さをもつものと考えられる。 重久の南東側の丘陵には, 下位から, 礫層(径 3 cm の円礫からなり, 厚さ 1 m 内外)・ 青灰色成層粘土層(厚さ 1 m 以上)・ 軽石質砂層(厚さ 6 m 以上, 径 1~3 cm の礫からなる礫層を挾有する)・ 粘土層の順序に累重する。 これより東では, 山之路西方の谷底, あるいは南方の地隙の下部にローム質粘土あるいは粘土層が露われる。
上部層 : 岩戸軽石流を覆い, 図幅地域北西端の安楽・妙見温泉から南東方へ, 小鹿野・入戸へ連続して存在し, その厚さは 60 m に達すると思われる。 これは南西方では急激に薄くなって消滅する。 入戸では重久軽石流を覆っており(図版 4), 下位から 白色無層理砂層(厚さ 3 m 以上)・ 褐色ローム質粘土層(厚さ 4 m 以上)・ 黄色軽石凝灰岩(粘土層を挾み細かに成層する, 厚さ 4 m 以上)・ 褐色ローム層 の順序に累重する。 なお, 後2者は街道沿いに露われている。 北西方の小鹿野では一般に粗粒で, 古道部落に上る道路沿いに下位から, 淘汰不良の礫層(径 7 cm 以下の礫からなり, 厚さ 1 m のローム質粘土層を挾む), 成層ローム質粘土層, 礫層(厚さ 2 m 以上), 軽石砂と礫との互層(厚さ 2 m 以上) が順次重なる。 この最後の互層は対岸の春山原に上る道にもよく露われている。 なお, 小鹿野の南方約 2 km の地点では 粗い軽石礫からなる礫層が僅かにみられるにすぎない。 小鹿野の北西方の安楽温泉では, 下位から 礫層(径 15 cm 以下・砂層を挾み厚さ 2 m)・ 褐色成層火山岩質砂層(厚さ 70 cm)・ 粗粒灰色砂層・ 軽石質黄色粘土層の順序 に累重しており, 黄色粘土層はこれより西方に厚く広く分布する。 妙見温泉では, 灰色砂と褐色ロームとの互層・ 黄色軽石層・ 紫色および褐色頁岩・ 細粒礫層が約 5 m の崖をつくって露われる。 この南東約 1 km では 著しく硬化した褐色ローム質粘土層が約 2 m の厚さでみられるのみである。 なお, これは軽石片に富み, 偽層理を呈している。
冲積層を除いて, こゝに述べる地層はその分布が断片的なので, 地質図には主として入戸軽石流の軽石凝灰角礫岩に含めて着色してある。
姶良層中に軽石層あるいはローム層が存在することはすでに述べたが, 調査地域の東半には, 入戸軽石流の下にしばしばローム軽石層が存在する(図版 5, 第 5, 6 図)。 露頭においては その多くはいわゆるシラスの下底に接してドーム状を呈して存在し, 基盤が高く残存するところを覆っている。 その厚さはシラス台地を覆うローム軽石層に匹敵するが, その分布は断片的であって, その大部分は霧島火山から噴出したものと考えられる。
再堆積シラス層の一部は姶良層中にも存在するが, 大部分は姶良火山の活動終了直後, ローム軽石層の堆積前に生じたものである。 調査地西半では, 侵蝕が当時あまり進まなかったために, 再堆積シラス層はシラス台地を削った谷に狭く, 3 m 以下の厚さで残っているか, または台地縁辺に存在するのみである。 調査地東半には起伏に富む台地面よりー段低い平坦面を構成して広く分布する。 高塚の 305 m 台地, あるいはその北方の高野の 270 m 台地(図版 6, 第 7, 8 図)などがその例である。 なお, 第 8 図のように, ローム軽石層の堆積中にも再堆積シラス層が生じている。
調査地域にはきわめて侵蝕され易いシラスが広く分布しているので, 段丘が形成され易い筈であるが, 実際には明瞭な段丘は少ない。 前節に述べた再堆積シラス層は当地域で最高位の段丘をつくるものであり, これより低い段丘は図幅地域東部の溝口附近に認められる。 溝口には 220~230 m の高位段丘と 190 m 前後の低位段丘とがみられる。 高位の段丘上には再堆積シラス層が存在することもあるが, 多くの場合, 岩盤がそのまゝ露出している。 低位の段丘は厚さ 1~2 m の, 中生層の岩石の礫からなる礫層あるいは再堆積シラス層からなり, ローム層によって覆われている。 この種の段丘は庄内川あるいは千足川沿いに発達する。 なお, 図幅地域北端には, 中生層の岩石の礫からなる段丘砂礫層が ローム軽石層によって覆われて存在することがある(図版 7)。
シラス台地を覆って常に厚さ 2~6 m のローム軽石層が発達している。 その大部分は霧島火山源のものと思われるが, 桜島火山源のものもまた含まれているであろう。 その各地における柱状図を第 9 図に示した。
このうち, 特徴のあるものに「ボラ」と「牛のすねローム」とがある。 ボラ は表土の直下に広く分布する軽石層(あるいは岩滓)で, 2~4 cm 大の角閃石石英安山岩質角礫のみからなり, 赤色あるいは黄色を呈するものである。 図幅地域北東部のボラは霧島火山東端のマール御池が噴出したもので, 御池に近づけば急激にその厚さが増し, また層理をもつようになる。 牛のすねローム は当地方全般に分布するが, 北隣図幅地域南東端の牛臑部落附近で最も厚い。 これは赤黄色の軽石細砂からなる上部と, 長さ数 cm 以下の白色の植物の茎 ? を多量に含む 青色砂層からなる下部とにわかれている。 これは霧島火山の韓国岳・高千穂峰の中腹以下を覆っている。
なお, ボラを除いてローム軽石層は一般に風化が進んでおり, その下の姶良火山の軽石流が新鮮なまゝであるのと全く対照的である。
冲積層としては, 国分平野には暗灰色, 黒色の粘土層がよく発達しており, 内陸のシラス台地内の河川に沿っては, シラスあるいは灰石の崩土およびローム軽石層の崩土が薄く存在する。 霧島川の上流部には例外的に安山岩礫あるいは崩土が分布する。
姶良火山が噴出した熔結凝灰岩(灰石)が柔軟で採取し易いために, 土木工事用あるいは石垣などとして広く利用されている。 その分布は甚だ広いが, 当地域では大規模に採石しているところはなく, 必要に応じて各所で小規模に採取されている。 そのうち, 規模のやゝ大きなものは, 霧島村湯迫, 東国分村入戸・重久・日当山・剣の宇都などである。 入戸軽石流および重久軽石流に属する灰石が比較的多く利用されている。
図幅地域西端の新川沿いには 新川・安楽・妙見・姬城・日当山などの温泉群がほゞ南北に並んでおり, 図幅地域東部には西岳村西折田代に鉱泉が湧出している。 鹿児島県衞生試験所の資料によってそのおもなものを第 2 表に掲げた。 これらのうち, 妙見・姬城・日当山温泉群はよく開発されており, 泉源はそれぞれ 10 余, 20 余, 50 余に及び, 深度150 m に達する作井を行っている。
| 温泉名 | 温度 ℃ | 自然湧出量 l / m | pH | 泉質 | ||
| 新川 | 53 | 6.2 | 含食塩重炭酸土類温泉 | |||
| * | 山の湯 | 56 | - | - | 土類炭酸泉 | |
| 安楽温泉群 | ||||||
| 新湯 | 52 | 6.3 | 含土類重曹泉 | |||
| 鉄湯 | 55.5 | 7.6 | 同 | |||
| 安楽荘鉄湯 | 55.5 | 7.6 | 同 | |||
| たかしお湯 | 54 | 6.6 | 含食塩重炭酸土類泉 | |||
| 明ばん湯 | 46 | 6.4 | 同 | |||
| 妙見温泉群 | ||||||
| (妙見館) | 47 | 145 | 6.4 | 含土類重曹泉 | ||
| (田島旅館) | 48 | 166 | 6.3 | 同 | ||
| (おりはし旅館) | 47 | 61 | 6.4 | 同 | ||
| (らむね館) | 41 | 320 | 6.3 | 同 | ||
| 国立病院(武安) | 33 | - | - | |||
| 姫城温泉群 | ||||||
| (山月荘) | 53 | 7.5 | 重曹泉 | |||
| (姫城荘) | 53 | 7.6 | 同 | |||
| (泉帯温泉) | 46 | 220 | 7.5 | 同 | ||
| (天降川温泉) | 55.5 | 55 | 7.0 | 同 | ||
| (元湯) | 52.5 | 7.6 | 同 | |||
| (清姫温泉) | 58.5 | 7.5 | 同 | |||
| (山野浴場) | 49 | 7.3 | 同 | |||
| 日当山温泉群 | ||||||
| (大正館) | 46 | 7.7 | 重曹泉 | |||
| (元湯) | 46 | 7.7 | 同 | |||
| (鶴の湯) | 45 | 7.6 | 同 | |||
| (小松湯) | 46 | 7.5 | 同 | |||
| (亀屋) | 45.5 | 7.7 | 同 | |||
| (共同浴場) | 56 | 7.0 | 同 | |||
| * | 西折田代鉱泉 | 22.5 | - | - |
含土類重曹泉
附近に石灰華が多量に沈殿している | |
| 註 | * 印は本所地質部 中村久由技官分析, その他は鹿児島縣衛生試験所の昭和 24, 25 年の調査分析資料よる。 | |||||
EXPLANATORY TEXT OF THE GEOLOGICAL MAP OF JAPAN Scale 1 : 50,000
Kagoshima, No. 82
By KONOSUKE SAWAMURA (Written in 1955)
The sheet map is located at the southern Kyūshū, between the volcano Kirishima and Sakura-jima. The area of the southern half of the sheet map is excluded as it is included in the Kagoshima sheet map already published in scale 1 : 75,000.
The central part of the sheet map is composed of low mountainland of the Mesozoic Shimanto group, and the other flat land is composed of pumice flow of the Aira Volcano. A narrow alluvial plain of Kokubu is developed at the head of the Kagoshima Bay.
The Shimanto group (M) is a member of Mesozoic geosynclinal deposits destributed along the south side in the sothwest Japan, and is composed of monotonous alternations of sandstone and mudstone intercalating tuffaceous shale and others. The thickness is more than 3,000 m in this area, but it contains no fossils except stems of Crinoids.
After subsidence of the west part of the Mesozoic mountainland, severe Volcanism took place in that area at the Tertiary. The Tertiary Andesite (An) of this area is the product of this activity. After the strong denudation of the andesites, the Kokubu group (K) deposited in the Pleistocene. The group is composed of soft conglomerate, sandstone and mudstone with a few remains of plants. It seems to be the sediments of fresh water and very variable in its thickness, but the most thick part reaches about 200 m. The vast amount of incandescent pumice flows spread out from Aira Volcano (A1~5) , and covered the area of 3,870 km 2 . The top of the volcano subsided to form a gigantic caldera of the diameter about 23 km at the head of the Kagoshima Bay. The Sakurajima Volcano -- one of the most active ones in Japan -- is the central cone constructed on the southern rim of the caldera. Some parts of the pumice flow are welded and they are called Hai-ishi (ash stone) or mud lava, and the other unwelded parts are called Shirasu (white sand) vulgarly. The flows are erupted one after another for at least 5 times in this area. All of them are dacite of nearly the same kind. The chemical composition is represented in table 1 of the text. Between the activities of these flows, Aira Bed (I) deposited locally on the eroded surface of pumice flows. They seem to be the sediments of fresh water origin, and at a locality the thickness is about 60 m. Following the termination of the activity of the Aira Volcano, slight erosion and deposition of pumice sand bed occurred especally in the east area of the sheet map and formed a small flatted terrace, which is 10 m or so lower than plateau area of pumice flows.
The surface of these flat land is always covered by the ash and pumice bed which is erupted chiefly from the Kirishima Volcano. The thickness is 2~6 m. Ash and pumice beds of the same nature are also intercalated in the pumice flows with thickness of the same scale.
The natural resorces are rather poor in this area. The building stone is abundant in this area, as the welded tuff of the Aira Volcano is soft and easy to quarry. Now they are only utilitized for local uses. The hot springs of this area are famous in Kyūshū. They are located in a zone from the north to the south along the river at the west end of the sheet map. This zone is situated just on the line connecting the Kirishima and Sakura-jima volcanos. The nature of the springs occurred in this zone, is alkali or earthy-carbondioxide. In the Mesozoic mountainland, one mineral spring is known.
昭和 31 年 12 月 5 日印刷 昭和 31 年 12 月 10 日発行 著作権所有者 工業技術院 地質調査所