15071_1963
5萬分の1地質図幅説明書
(鹿児島 第 71 号)
通商産業技官 神戸信和
通商産業技官 大沢穠
地質調査所
昭和 38 年
目次 I. 地形 II. 地質 II.1 概説 II.2 古生層 II.3 四万十層群 II.4 変成岩 II.4.1 角閃岩 II.4.2 珪質岩 II.5 新生代火山岩類 II.5.1 高城安山岩類 II.5.2 阿久根熔結凝灰岩 II.5.3 2次堆積軽石層 II.5.4 岩脈 II.6 第四紀層 II.6.1 礫層 II.6.2 砂丘 II.6.3 冲積層 III. 応用地質 III.1 砂鉄 III.2 石灰石 III.3 石材 文献 Abstract
1 : 50,000 地質図幅説明書(昭和 36 年稿)
(鹿児島 第 71 号)
本地質図幅は昭和 35 年 3 月および昭和 36 年 3 月において, 約 20 日を野外調査に費やし, 作成されたものである。 古生層および四万十層群の分布する地帯の野外調査を神戸が, 火成岩類の分布する地帯の調査ならびに顕微鏡観察を大沢が分担した。 海上の黒神および中ノ瀬両島嶼の調査は第七管区海上保安本部串木野海上保安署の協力をえた。 古生層ならびに四万十層群について, 九州大学教養学部の橋本勇講師から有益な助言を受けた。
本図幅地域は鹿児島県の西海岸に面し, 海抜 100~300 m の山地が海岸まで迫り, 平地はきわめて狭い。 川内川河口付近には海抜 40 m くらいの砂丘地形がみられる。 海岸線は単純で入江に乏しい。 海上島嶼の黒神は海抜 5 m 前後, 中ノ瀬は海抜 3 m 前後のそれぞれ小さな島で全島露岩している。
本図幅地域は西南日本外帯に属し, 基盤岩としては秩父帯に属する古生層, 四万十帯に属する四万十層群が糸川 - 仏像構造線を境として, それぞれ西および東に分布しており, また黒神には所属未詳の角閃岩が露出している。 古生層ならびに四万十層群は本図幅地域で, 南北~北北西の走向をもって配列されているが, これは西南日本外帯の一般的方向と相違し, 地質構造上重要な意義をもつものと考えられる。 古生層および四万十層群を覆って, 第三紀の 高城 安山岩類が主として地域南半部に, 第四紀の阿久根熔結凝灰岩類が地域北半部に, それぞれ広く分布している。 図幅地域南部の海岸には, きわめて顕著な砂丘が, また川内川左岸の久見崎南方には礫層が分布している。
本図幅地内の古生層は地域北部および南端部に分布している。 この古生層は厚いチャート・砂岩粘板岩互層および石灰岩から構成されている。 これらの岩相から西南日本外帯の秩父帯の上部古生層に属するものと考えられるが, その正確な時代は未詳である。
粘板岩 : 黒色~暗灰色で, 風化すると一般に黄褐色となる。 ときにレンズ状の砂岩が介在することがあり, 粒度の変化により層理がみられる。 古生層の粘板岩は四万十層群の粘板岩に較べ, 擾乱をより多くうけ, 剪断が著しく, 剥理性に富んでいる。 とくに断層に沿っては剪断が顕著である。
砂岩 : 本岩は粘板岩に伴ない, あるいは互層する。 粒度の変化に乏しく層理は一般に識別しにくい。
チャート : 本岩は古生層のうちでもっとも多い。 白色, 乳白色または褐色で, よく風化に堪え, 山の稜線に大きな岩塊として露出することが多い。 一般に薄い粘板岩を挾有することにより, 帯状を呈し, 層理が明瞭であるが, 粘板岩を挾むことなく厚く塊状をなして露出することもある。 チャートは不定方向の節理の発達も著しく, 角張った破片に割れる。
石灰岩 : 本岩は乳白色~白色で, 北部の地塊では一般に連続性に乏しく, レンズ状のものが多い。 南部の地塊では比較的厚く露出し, 連続している。 石灰岩の周辺にはチャートもみられるが, 砂岩および粘板岩をより密接に伴なう。 本岩から化石を発見することができなかった。
構造 : 北部の地塊では一般に走向 N 5~15°E, 傾斜 40~80°W であるが, まれに走向 N 5~35°W で, 東に慎斜する。 東方の四万十層群とは走向 N 10°E, 傾斜 50°E の断層により境されており, この断層は糸川 - 仏像構造線の西方延長にあたる。 牛ノ浜駅の西方海岸の露頭では, チャートは走向 N 5°W, 傾斜 70°E で, 東方の四万十層群とは走向 N 35°W の垂直断層により境されている。 南部の地塊では走向 N 35°W, 傾斜 70°W で, この走向・傾斜はほとんど一定である。 時代未詳の四万十層群との関係は露頭がなく, まったく不明である。 北部の古生層と南部の古生層とは, チャートが著しいこと, 石灰岩を伴なうことから, 一連のものであろう(図版 1 参照)。
本層群は図幅地域北半部の大部分を占めて分布する。 本層群は砂岩・礫岩・粘板岩・砂岩粘板岩互層, および砂岩粘板岩細互層から構成されており, とくに砂岩はもっとも豊富であり, 一般に峻嶮な山稜を形成することが多い。 粘板岩は分布範囲が狭く, しばしば谷に分布する。
砂岩 : 一般に堅硬, 緻密, 灰緑色~暗灰色で, 風化すると黄褐色となる。 とくに潮に洗われている部分は, 茶褐色で堅硬である。 一般に塊状であるが, 粒度変化あるいは黒色粘板岩の介在により, 層理が見られる。 砂岩は一般に石英の大きな粒に富んでおり, しばしば玉葱状構造を呈する。 砂岩はときに礫質砂岩に移化し, ときにレンズ状の大小の黒色粘板岩を挾み, しばしば礫状の部分を含むが, おそらくこれは同時侵蝕礫であろう。 砂岩は一般に連続性に富んでおり, 鍵層として有効であるが, しばしば砂岩粘板岩互層ないし砂岩粘板岩細互層に移化することがある。 砂岩は不定方向のいくつもの節理を有し, 大小の岩塊に割れる性質がある。
粘板岩 : 黒色~暗灰色で, 風化すると黄褐色となる。 粘板岩は砂岩の薄層を伴なうことが多く, また粘板岩自体も粒度の変化に富み, 層理が明瞭である。 一般に剥理性に富んでいる。 粘板岩は砂岩に較べ軟弱なため, 断層に沿った部分では擾乱が著しく粘板岩の細破片化が著しい(図版 2 参照)。
砂岩粘板岩互層 : この互層は図幅地域内でもっとも広範囲に分布しており, 一般に砂岩に富んでいる。 砂岩・粘板岩ともに 10 cm~10 m のいろいろな厚さの単位で互層を形成している。 この互層のなかに, まれに厚さ 10 m 以上の砂岩あるいは粘板岩が挾まれ, また厚さ 10 cm 以下の単位で細互層する部分も, ときおり見られる(図版 3 参照)。
砂岩粘板岩細互層 : この互層は図幅地域のとくに西半部に発達する。 砂岩・粘板岩ともに厚さ 10 cm 以下の単位で互層し, 層理が明らかである。 全般的にこの細互層は粘板岩に富む(図版 4, 5 参照)。
礫岩 : 本岩は地域中央部東縁北方の道路沿い, 牛ノ浜駅 西方の海岸および地域中央部の上方 南東方の小谷に非常に薄く, 約 5 m の厚さで露出し, 連続性に乏しい。 礫は直径 2 mm~1 cm の円礫ないし角礫で, 淘汰が非常に悪く, 礫質はチャートが非常に多く, 黒色粘板岩および砂岩がこれに次いでいる。 礫の配列により走向ないし層理を測定することができる。
構造 : 四万十層群は全般を通じて凸面を西方に向けた, 南北性の弓なりの構造を呈する。 北部では走向は NNE - SSW であるが, 南部では NNW - SSE である。 傾斜はいずれも急角度のものが多い。 四万十層群のなかには多くの断層がみられ, 傾斜方向の違いは, 必ずしも向斜構造あるいは背斜構造を示すものではなく, 断層の影響によるものも多いと考えられる。
古生層と四万十層群とを境するものは, 糸川 - 仏像構造線で, この構造線は地質図幅において示したように, クレ小島北方で NNE から SSE の方向へ彎曲している。 さらにこの断層は, 南にすすみ, 大川付近を通る NNW - SSE 方向の断層により断ち切られ, 海中に没しており, さらに安山岩などにより被覆されているので, 正確な位置は不明であるが, 南縁部の古生層の分布および構造から, 川内市網津町浜田・草道付近を通るものと推察される。
本岩は図幅地域西縁海上の黒神島に分布している。 岩石は暗緑色で, きわめて堅硬で, 風化によく堪える。 角閃石は光沢を有し, 肉眼でもよく識別することができる。 片理がよく発達しており, その走向 N 30°E, 傾斜 60°W である(図版 6 参照)。
構成鉱物 : 淡緑色, 新鮮な角閃石がもっとも多い。 斜長石は一般に新鮮な中性長石であるが, 一部にはソーシュル石化したものがある。 まれにみられる石英は波動消光を示し, 緑簾石がまばらに散在している。
本岩は黒神島 南東方海上の中ノ瀬島に露出している。 岩石は風化著しく, 茶褐色~黄褐色を示している。 本岩は変質を受けており, 著しく石英粒に富んでいるが, 露出が少ないために原岩は明らかでない(図版 7 参照)。
構成鉱物 : 石英・黝簾石・緑簾石・絹雲母および褐鉄鉱である。
高城安山岩類は, 古生層および四万十層群を被覆し, 主として図幅地域の南部に広く分布している。 下部の角閃石安山岩類と, 上部の輝石安山岩類とに分けられる。
A) 角閃石安山岩類 : 本岩類は主として角閃石安山岩熔岩, および同質の凝灰角礫岩からなり, 火山礫凝灰岩および凝灰岩を挾有し, 厚さ 60~140 m である。 角閃石安山岩熔岩は青灰色~灰色, 斑状, 緻密, 堅硬であって, 長柱状の角閃石を点在している。 凝灰角礫岩は角閃石安山岩熔岩の拳大~人頭大の角礫の間を, 粗粒の凝灰質物質が充填したもので, 角礫と基質との境は明瞭である。 角礫は一定方向に配列し, 厚さ 0.5~2.0 m の火山礫凝灰岩および凝灰岩を挾有し, よく層理を示している。 図幅地域北部の佐潟崎の凝灰角礫岩は, 古生層および四万十層群のチャート・頁岩・砂岩などの円礫を多数取込んでいる。 本岩類を構成している代表的岩石を鏡下でみると, 次のようである(図版 8 参照)。
B) 輝石安山岩類 : 本岩類は輝石安山岩熔岩からなり, 角閃石安山岩類を被覆し, 厚さ 60 m 以上である。 暗青灰色, 斑状, 緻密, 堅硬であって, 川内市椎原 北方の本岩類を鏡下でみると, 次のようである。
阿久根熔結凝灰岩は, 古生層・四万十層群および高城安山岩類を被覆して, 図幅地域の北部から中部に分布している。 石英安山岩熔結凝灰岩からなり, 厚さ 50 m 内外である。 垂直に近い崖をつくり, 熔結凝灰岩に特有の柱状節理を示している。 岩質は灰白色, 粗鬆, 脆弱, 石英斑晶を点在し, 大きさ 0.5~7.0 cm の安山岩の外来岩片を含有している。 本熔結凝灰岩は, 姶良火山から噴出したものと松本唯一 3) は考えている。 本岩の代表的岩石を鏡下でみると, 次のようである(図版 9 参照)。
本層は四万十層群および高城安山岩類を被覆して, 図幅地域内に点々と分布している。
本層は軽石凝灰角礫岩からなり, 厚さ数 m 内外で, 白色, 粗粒, 凝結度が低く, 大きさ指頭大の, 円味を帯びた酸性軽石を多数含有し, 無層理であって分級されていない。 本層はいわゆる「シラス」と呼ばれているものであって, 陸上で2次的に再堆積したものと考えられる。
図幅地域北部の阿久根市高口付近の海岸には, 阿久根熔結凝灰岩を貫く幅 1 m 内外, N 30~45°E の方向を示す玄武岩の岩脈がみられる。 岩脈の岩質は暗青色, 緻密であって, 肉眼的には斑晶がほとんど認められない。 鏡下でみると, 次のようである。
本図幅地内に分布する第四紀層は, 礫層・砂丘および冲積層からなる。
図幅地域南縁部 久見崎 南方には, 河岸段丘の一部と考えられる礫層が分布し, 礫・砂および粘土からなっている。
地域南部で川内川の両岸に分布している。 砂丘の厚さは場所によって 40 m に及ぶものと考えられるが, 西方に向かって次第に低くなる。 京泊北方の海岸の露頭では, 厚さ 20 cm 内外の砂鉄層を挾有している。
冲積層は川の沿岸に狭く分布し, 礫・砂および粘土からなっている。
図幅地域北部の阿久根市高口付近, および南部の川内市唐浜 - 京泊間の海岸で, 厚さ約 20 cm の砂鉄が知られているが, 鉱量の点で稼行の対象となりがたい。
石灰石のなかで, かつて採掘したものとして川内石灰が知られている。 地域南縁 川内市湯島町にあり, 川内駅から西北西 12 km, 草道駅から南西 6 km に位置する。 石灰石は古生層中に胚胎し, ほゞ N20°W の走向で, 傾斜は 60~70°W である。 脈幅は最大 250 m に及ぶが, 南北に向かって尖滅し, 延長は 650 m に及ぶ。 鉱床は北に向かって黝黒色, 非晶質, 堅緻となり, 南に向かって灰白色, 微晶質のものを増す。 南端近くにはやゝ脆い方解石質のものがある。
本鉱床は天保年間から知られ, 明治初年からたびたび操業され, 生石灰を生産したが, 昭和 33 年 4 月に需要不安定のため休山した。
阿久根熔結凝灰岩は柔軟で採取しやすいために, 土木工事用および石垣などとして, 主として阿久根市内の各地で小規模に採石されている。
EXPLANATORY TEXT OF THE GEOLOGICAL MAP OF JAPAN Scale 1 : 50,000
Kagoshima, No. 71
By NOBUKAZU KAMBE & ATSUSHI OZAWA (Written in 1961)
The area of this sheet-map is on the western coast of Kagoshima prefecture, Kyushu. The mountains from 100 m to 300 m high, are close to the sea-shore, and alluvial plain is not well developed along the coast.
Tertiary and Quaternary volcanic products extensively cover the Paleozoic and the undifferentiated Mesozoic strata. Both of the latter two strata are characteristic of the Outer Zone of Southwest Japan, but the strike of the strata is generally north-south, different from northeast-southwest common in other regions in Southwest Japan. An extension of Butsuzo Tectonic Line usually bordering the Paleozoic and the undifferentiated Mesozoic in Southwest Japan is seen also in the northern part of the mapped area.
Other rocks occurring to lesser extent are Quaternary pumice bed, gravel bed, dune sand, alluvial deposits and igneous dykes. Small islets far to the west of main land are constituted of Pre-Tertiary metamorphic rocks.
The Chichibu Paleozoic formation is exposed in the northern and southern parts of the area. It is composed of chert, alternation of sandstone and clayslate, and limestone. In the northern block, the formation shows the strike of N 5~15°E or N 5°W and the dip of 40~80°W or 70°E. In the southern block, the formation shows the strike of N 35~70°W. Although the fossil is not discovered yet, this formation is lithologically correlated to the Chichibu Paleozoic formation.
The Shimanto group occupies the northern greater part of this sheet-map area. This group is composed of sandstone, conglomerate, clayslate, alternation of sandstone and clayslate, and fine alternation of sandstone and clayslate. Above all, sandstone is predominant. This group shows the strike of SSE and the dip of 60~80°E or W.
This rock crops out only in the Kurogami-jima. The schistose plane shows the strike of N 30°E and the dip of 60°W. The rock-forming minerals are fresh green hornblende, generally fresh andesine, quartz and epidote, and above all hornblende is abundant.
This rock occurs only in the Kurogami-jima. Because of the small outcrop, the original rock is not clear. The constituent minerals are quartz, zoisite, epidote, sericite and limonite.
Taki andesite is divided into hornblende andesite and pyroxene andesite. The hornblende andesite is 60~140 m thick, and mainly composed of lava and tuff-breccia, accompanied with lapilli-tuff and tuff. The pyroxene andesite covers the hornblende andesite, and is over 60 m in thickness.
Akune welded tuff covers the Taki andesite as well as the Paleozoic and Mesozoic strata. It is dacite welded tuff, up to 50 m in thickness.
This deposit occurs as small patches covering the Shimanto group and the Taki andesite. It is pumice tuff, only a several meters in thickness.
A dyke of basalt one meter wide cuts the Akune welded tuff on the coast of Takaguchi.
Gravel bed is confined within very narrow limits.
It is a part of river terrace deposits, and is composed of gravel, sand and clay.
The sand dune covers a considerable extent in the southern part of this sheet-map area. The maximum thickness reaches 40 m. The thin iron sand bed is interbedded.
This alluvial deposits are composed of gravel, sand and clay.
The thin iron sand bed is interbedded in the sand dune which developes in the southern part of the sheet-map.
Limestone is interbedded in the Chichibu Paleozoic formation. Limestone of the Tsukiya-yama was formerly worked.
The Akune welded tuff is worked as the building stone on a small scale.
昭和 38 年 11 月 4 日 印刷 昭和 38 年 11 月 11 日 発行 著作権所有 工業技術院 地質調査所 (C) 1963 Geological Survey of Japan