15023_1977

地域地質研究報告
5万分の1図幅

鹿児島(15) 第 23 号

竹田 たけた 地域の地質

[ 地質調査所 ] 地質部 小野晃司
長崎大学 松本徰夫
愛媛大学 宮久三千年
[ 地質調査所 ] 地質部 寺岡易司
[ 地質調査所 ] 地質部 神戸信和

昭和 52 年

地質調査所


目次

I.		地形
II.		地質概説
III.		古生界
III.1		秩父帯の古生界
III.1.1		塩基性変成岩類
III.1.2		圧砕花崗岩
III.1.3		シルル系(九折層)
III.1.4		上部古生層
III.1.4.1	清川地区の上部古生層
III.1.4.2	九折地区の上部古生層
III.1.5		超塩基性岩類
III.2		朝地変成岩類
IV.		中生界
IV.1		土岩層
IV.2		湯ノ迫の白亜紀層
IV.3		大野川層群
IV.3.1		層序
IV.3.2		粗粗砕屑岩の粗成
IV.3.3		対比
V.		第三系
V.1		見立層
V.2		祖母山火山岩類
V.2.1		前期火山岩類
V.2.1.1		第 Ⅰ 期火山岩類
V.2.1.2		第 Ⅱ 期火山岩類
V.2.1.3		第 Ⅲ 期火山岩類
V.2.2		後期火山岩類
V.2.2.1		第 Ⅳ 期火山岩類
V.2.2.2		第 Ⅴ 期火山岩類
V.2.2.3		第 Ⅵ 期火山岩類
V.2.3		傾山カルデラと尾平断層
V.3		新第三紀酸性貫入岩類
V.3.1		珪長岩
V.3.2		細粗花崗閃緑岩
V.3.3		花崗斑岩・石英斑岩
V.3.4		黒雲母花崗岩
V.3.5		花崗岩体の形態と分布
V.4		三宅山火砕流
V.5		鮮新世火山岩類
V.5.1		大渡溶岩
V.5.2		小園火砕流
V.6		平石礫層
VI.		第四系
VI.1		更新世前期火山岩類
VI.1.1		今市火砕流
VI.1.2		河原立火砕岩
VI.1.3		下荻岳溶岩
VI.1.4		鷹匠町火砕流
VI.2		阿蘇火山噴出物
VI.2.1		Aso-1 火砕流
VI.2.2		Aso-1 と Aso-2 との間の降下火砕物
VI.2.3		玉来川溶岩
VI.2.4		Aso-2 サイクルの噴出物
VI.2.5		Aso-2 と Aso-3 との間の降下火砕物
VI.2.6		Aso-3 サイクルの噴出物
VI.2.7		Aso-3 と Aso-4 との間の降下火砕物
VI.2.8		Aso-4 火砕流
VI.2.9		中央火口丘降下火山灰
VI.3		九重火山噴出物
VI.3.1		宮城火砕流
VI.3.2		下坂田火砕流
VI.3.3		稲葉川泥流
VI.4		冲積層
VII.		応用地質
VII.1		錫・亜鉛・硫化鉄などの非鉄金属鉱床
VII.2		マンガン鉱床
VII.3		非金属鉱床
VII.4		石材・砕石
文献

Abstract

図版

付図の目次

第 1 図			竹田図幅地域付近の地形略図
第 2 図			(祖母・傾山地の地形写真)
第 3 図			(火砕流段丘の地形写真)
第 4・5 図		(火砕岩台地の地形写真)
第 6 図 a・b		(火砕岩台地の空中写真)
第 7 図			(法師山の地形写真)
第 8 図			竹田図幅地域付近の地質図
第 9 図			竹田地域の地質図
第 10 図		奥岳川上流地域の地質図
第 11 図		奥岳川上流地域の基盤岩の地質断面図
第 12 図		(圧砕花崗岩と九折層の接触部のスケッチ)
第 13 図		(古生層ホルンフェルスの標本写真)
第 14 図		(超塩基性岩の露頭のスケッチ)
第 15 図		宇曽層・霊山層および奥河原内層の層序断面図
第 16 図		竹田図幅地域の大野川層群の層相図
第 17 図		(霊山層の礫岩の露頭写真)
第 18 図		霊山・奥河原内 両層の砂岩粗成
第 19 図		(祖母山付近の地形写真)
第 20 図		(傾山付近の地形写真)
第 21 図		祖母山前期火山岩類の地表・ボーリング柱状図
第 22・23 図 a・b	(祖母山火山岩類の顕微鏡写真)
第 24・25 図		(祖母山火山岩類の露頭写真)
第 26~32 図		(祖母山火山岩類の顕微鏡写真)
第 33・34 図		(珪長岩の露頭写真)
第 35 図		(鷹匠町火砕流と Aso-1 火砕流の接触部の露頭写真)
第 36 図		竹田市街付近の地質図
第 37 図		竹田図幅地域および付近のボーリング柱状図
第 38 図		竹田図幅地域のボーリング柱状図
第 39 図		Aso-1 火砕流の分布と厚さ
第 40 図		Aso-1 の柱状図
第 41 図		(Aso-1 の露頭写真)
第 42 図		玉来川溶岩の分布
第 43 図		Aso-2 サイクル噴出物の各サブユニットの関係
第 44 図		Aso-2 火砕流の分布と厚さ
第 45 図		Aso-2T 降下スコリア層の厚さ
第 46 図		Aso-2 と Aso-3 との間の降下火砕物の柱状図
第 47 図		P 降下軽石層の厚さ
第 48 図		Q 降下火山灰層の厚さ
第 49 図		Aso-3 火砕流の柱状図
第 50 図		Aso-3W 降下軽石層の厚さ
第 51・52 図		(Aso-3 火砕流の露頭のスケッチ) 
第 53~55 図		(Aso-3 火砕流の露頭写真)
第 56 図		Aso-3 と Aso-4 との間の降下火砕物の柱状図
第 57 図		第 56 図の柱状図の位置図
第 58 図 a・b・c・d・e	Aso-3 と Aso-4 との間の降下火砕物の厚さ
第 59 図		(Aso-3 と Aso-4 との間の降下火砕物の露頭写真) 
第 60 図		Aso-4A 火砕流の非溶結・溶結部と Aso-4B 火砕流の関係を示す模式図
第 61 図		(竹田市街北東方の空中写真)
第 62 図		Aso-4A 異質角礫火砕流の厚さと最大粗径
第 63~71 図		(Aso-4 火砕流の露頭写真)
第 72 図		(Aso-4 火砕流と阿蘇火山中央火口丘降下火山灰層の露頭写真)
第 73 図		(宮城火砕流の露頭写真)
第 74 図		下坂田火砕流の層準を示す柱状図
第 75 図		(豊栄鉱山の選鉱工場の写真) 
第 76 図		豊栄鉱山1号鉱床付近の地質および鉱床分布図
第 77 図		豊栄鉱山1号鉱床の走向断面図
第 78 図		勇ガ鶴鉱山の露頭平面図

付表の目次

第 1 表		竹田図幅地域の層序表
第 2 表		黒瀬川構造帯の地層,岩体および対比
第 3 表		圧砕花崗岩の化学粗成
第 4 表		かんらん岩の化学粗成
第 5 表		祖母山火山岩類と新第三紀 酸性貫入岩類
第 6 表		祖母山火山岩類の活動表
第 7 表		祖母山火山岩類の化学粗成
第 8 表		黒雲母花崗岩の化学粗成
第 9 表		竹田図幅地域周辺の第四紀火山岩の層序表
第 10 表	阿蘇火砕流に関係した 14C 法および K - Ar 法の測年値
第 11 表	阿蘇火山 先カルデラ噴出物の鉱物粗成
第 12 表	阿蘇火山 先カルデラ噴出物の化学粗成
第 13 表	阿蘇火山 先カルデラ噴出物の平均化学粗成の変化
第 14 表	豊栄鉱山の生産量
第 15 表	豊栄鉱山1号鉱床の鉱物の晶出順序
第 16 表	竹田図幅地域の層序表(英文)
第 17 表	竹田図幅地域の第四紀 火山岩の層序表(英文)

図版の目次

第 Ⅰ 図版 1・2		祖母・傾山地の地形写真
第 Ⅱ 図版 1~4		祖母山火山岩類の顕微鏡写真
第 Ⅲ 図版 1~4		祖母山火山岩類・新第三紀 酸性貫入岩類の顕微鏡写真
第 Ⅳ 図版 1・2		阿蘇火砕流の露頭写真
第 Ⅴ~Ⅵ 図版 1・2	Aso-4 火砕流の顕微鏡写真

地域地質研究報告 (昭和 51 年稿)
5万分の1図幅

鹿児島(15) 第 23 号

竹田 たけた 地域の地質


竹田地域の野外調査は下記のように行われた。

中・北部
新生代 火山岩地域 : 小野 (昭和 38, 39, 41~44, 51 年)
大野川 層群 : 寺岡 (昭和 44 年)
南部(祖母・傾山地)
祖母山 火山岩類 : 松本 (昭和 47, 48 年)
新第三紀 酸性貫入岩 : 松本 (昭和 47, 48 年) , 宮久 (昭和 48 年)
秩父帯の古生界 : 神戸 (昭和 47 年) , 宮久 (昭和 48 年)
中生界 : 寺岡 (昭和 44 年) , 神戸 (昭和 47 年) , 宮久 (昭和 48 年)

上記の他に, 松本・宮久は それぞれの多年にわたる研究調査と, 昭和 41~45 年度にかけて行われた 金属鉱物探鉱促進事業団による祖母・傾山地域広域調査の成果を利用した。

この報告の執筆分担は以下のようである。

I. 地形 : 小野・宮久
II. 地質概説 : 寺岡・小野
III~VI. 地質各説 : 上記の調査担当者
VII. 応用地質 : 宮久・小野(石材・砕石のみ)
全体の調整 : 神戸・小野・寺岡

この地域の地質, とくに阿蘇火砕流の理解のために, 下記の多くの試錐の未公表資料が有益であった. すなわち, 昭和 42~44 年に 技術部の加藤完・伊藤吉助・柳原親孝・中川忠夫・小林竹雄各技官によって行われた 高森町 河原など5カ所(地質図の B1~B5), 九州農政局および大分県による 高森町 大谷ダム地点(BO)および竹田市 菅生(BS), 竹田市による同市 鉢山(BH) である。 資料の利用を許して下さった九州農政局の籾倉克幹地質官ほか各関係者の方々に感謝する。

この研究中, 多くの岩石が技術部の大森えい・倉沢一・大森貞子各技官によって化学分析された。 また, 一部の岩石試料は九州大学の石橋澄博士に分析を依頼した。 学習院大学の木越邦彦教授には多数の 14 C 法の測年をお願いした。 研究に使用した薄片は 技術部の大野正一・村上正・宮本昭正・安部正治・佐藤芳治各技官によって作成された。 顕微鏡写真の一部の撮影と多くの写真の調製は業務課の正井義郎技官によってなされた。 この研究中, 小野は ここにいちいち名前をあげきれない所内外の多くの方々から 野外・室内において援助・討論を受けた。 とくに, 熊本大学の渡辺一徳氏からは未発表資料や 14 C 測年試料の提供をうけた。 松本は 野外調査において 辻和毅・鴨川信之・田島俊彦・大石達彦・川原和博・酒井治孝の諸氏に援助をうけ, また, 宮久は, 豊栄 ほうえい 鉱山付近の調査において, もと同鉱業所の宮脇日出雄氏と大分県 工鉱課の稲積英朋氏とに助言を頂いた。 以上の方々に心からお礼申し上げる。

I. 地形

竹田図幅地域は地形的には 南部の 祖母 そぼ かたむき 山地と中・北部の台地~丘陵部とに大きく2分される。 両者の地形的境界は東北東 - 西南西方向に走り, 九州山地の北縁を示し, また, 地質的にはほぼ 臼杵 うすき - 八代 やつしろ 構造線に一致する。 この両者は地形的にきわめて対照的であるので, 以下には分けて記述する(第 1 図)。

第 1 図 竹田図幅地域付近の地形略図。
Topography of the Takata district and adjacent areas.

[ 第 1 図に関する注意書き ]
5万分の1地形図(Topographic maps, 1 : 50,000)
IK : 犬飼(Inukai) [ ← 本図幅の北東隣 ] ,
ME : 三重町(Mie-machi) [ ← 本図幅の東隣 ] ,
KD : 熊田(Kumada) [ ← 本図幅の南東隣 ] ,
KJ : 久住(Kujū) [ ← 本図幅の北隣 ] ,
TT : 竹田(Takata),
MT : 三田井(Mitai) [ ← 本図幅の南隣 ] ,
MY : 宮原(Miyano-haru) [ ← 本図幅の北西隣 ] ,
AS : 阿蘇山(Aso-san) [ ← 本図幅の西隣 ] ,
TM : 高森(Takamori) [ ← 本図幅の南西隣 ]
山 [ の名前 ]
K : 久住山 くじゅうさん [ ← 宮原 みやのはる 図幅地域内 ] , Hs : 法師山, So : 下荻岳 しもおぎだけ
Tk : 高岳, Nk : 根子岳 ねこだけ [ ← Tk と Nk はどちらも阿蘇山図幅地域内 ] ,
Km : 傾山 かたむきやま , Sb : 祖母山 そぼさん [ ← 三田井図幅地域内 ]
川 [ の名前 ]
Kj : 久住川, In : 稲葉川, Tr : 玉来 たまらい 川, Tm : 滝水 たきみず 川, Yz : 山崎川, Ot : 大谷川,
On : 大野川, Sg : 瀬口 せぐち 川, Kb : 神原 こうばる 川, Md : 門田 もんでん 川, Og : 緒方川, Ok : 奥岳川

祖母・傾山地 : この山地は北側の台地部に対し比高 1,000 m 以上を示し, 九州山地の中でもとくに高く急峻な地域である。 最高峰の祖母山 [ 1756 m ] は本図幅地域に南接する三田井図幅地域の北縁部に, また, 傾山 [ 1605 m ] は本地域の南東隅近くにあり, 両者を結ぶ稜線は大分・宮崎県境の分水界をなしている。 この山地は尾根線がやや緩やかではあるが, 全体としてかなり開析の進んだ壮年期の地形を示す。 竹田図幅地域では大野川の支流の奥岳川・ 神原 こうばる 川などによって深く刻まれ, 谷密度が小さく, 谷底から尾根まで比較的傾斜が一様で, 且つ高度差の大きい地形をつくっている(第 2 図)。 この山地の大部分は中新世の祖母山火山岩類からなり, 谷沿いの低所にそれを貫く貫入岩類と基盤の先第三系とが分布するが, やや局所的なものを除いては岩石種による地形の差はあまり明瞭ではない。 奥岳川・神原川の谷底部は Aso-4 火砕流によって埋積されている。 現在の谷はそれをさらに下刻したもので, 溶結凝灰岩の垂直な柱状節理に囲まれた峡谷と, 両岸に残された火砕流堆積物による段丘状の小平坦面とからなる(第 3 図)。 この平坦面上には集落・水田が発達している。

第 2 図 祖母・傾山地の山容。 笠松 [ ← 三田井図幅地域内の笠松山 ? ] 付近から祖母山方面を望む。 左端の樹木の右が 古祖母山 ふるそぼさん , その右が 障子岳 しょうじだけ , 中央右手が祖母山(以上は三田井図幅地域)。 祖母山の右下背後に阿蘇火山中央火口岳の根子岳・高岳。
Highly dissected Sobo - Katamuki Mountains. Sobo-san is to the right of the center. Viewing west at the north margin of the Mitai district.

第 3 図 奥岳川の峡谷を埋めた Aso- 4 火砕流のつくる段丘状地形。 柱状節理のみえる絶壁は強溶結部, その上の部落までの緩斜面は気相晶出帯と非溶結部との岩石からなる。 背後の山地は祖母山火山岩類からなる。
Terrace formed by the Aso-4 Pyroclastic Flow which filled the gorge of the Okutake River. The lower cliff is made of dense welded tuff and upper gentle slope is of the zone of vapor-phase crystallization and non-welded part.

この山地の東部には 傾山 かたむきやま カルデラがあるが, 同カルデラの南縁の一部にあたる 観音滝 かんのんだき 断層 [ ← 傾山の北方に観音滝断層があるが, … ] が地形にあらわれているのみで, 陥没後の花崗岩マグマの貫入による全体の隆起のために 陥没構造自体を示す地形は認められない。

空中写真観察によると, この山地には N 40~45°E 方向のリニアメントが顕著に認められる。 [ 図幅地域最南部・東西中央付近の ] 前障子岩 まえしょうじいわ [ 1409 m ] 大障子岩 おおしょうじいわ [ 1451 m ] を結ぶ稜線の北西側, および, その北側の 923 m 三角点から南西にのびる稜線の南東側などの谷がそれであり, [ 大障子岩の北北西方 3.5 km の ] 神原 こうばる から南西への神原川上流, [ 大障子岩の東北東方 5 km の ] 上畑より上流の奥岳川の部分などの大きい谷やその中間の稜線, [ 大障子岩の北北東方 7.5 km の ] からす [ 684 m ][ 大障子岩の西北西方 5 km の ] 緩木 ゆるぎ [ 1046 m ][ 大障子岩の西北西方 7 km の ] 越敷 こしき [ 1061 m ] などをそれぞれ含む稜線なども すべで同方向のリニアメントに規制されているものとみられる。

台地・丘陵部 : この部分は北・西・南を高地に囲まれ, 全体として東に緩く傾斜する。 すなわち, 北は久住図幅地域南東部の大野山地(小野, 1963), 北西方に九重火山, 西には阿蘇山図幅地域の阿蘇カルデラ, 南には前述の祖母・傾山地がある。 この地域は主に阿蘇火山起源の火砕岩によってつくられた火砕岩台地であるが, それをさらに, [ 1 ] 西部の平坦であまり開析のおよんでいない 波野 なみの おぎ 台地と, [ 2 ] 中・東部の多くの谷によって開析され, 定高性はあるが平坦面があまり残されていない 大野川 おおのがわ 丘陵地 [ 以下の [注] 参照 ] とに2分できる。

[注]
[ 大野川丘陵地は ] 「久住」図幅説明書(小野, 1963)の p. 1 の大野川低地にあたる。

波野 なみの おぎ 台地 は西方の阿蘇カルデラの東縁にいたる広大な火砕岩台地であり, 本地域にあるのはその東半部である(第 4 図)。 この台地は 東流する数本の大きい河川によって切られているほかはきわめて平坦であるか, 緩やかな起伏を示し, 台地上を浅い谷が間隔をおいて東流している。 この台地が平坦なのは Aso-4B 火砕流の溶結凝灰岩が連続して分布しているためであり, 台地の周囲はどこでも同溶結凝灰岩の垂直な崖に囲まれている(第 5 図と第 6 a・b 図)。 台地表面は 阿蘇火山中央火口丘からの降下火山灰に厚く覆われているために起伏が緩やかであり, 谷が浅いのは 火山灰を切った谷が Aso-4B 溶結凝灰岩の表面に達して下刻の進行が抑えられたためである。 玉来 たまらい 川・ 滝水 たきみず 川などの大きい河川では, 河床が溶結凝灰岩の層準を通過したために下刻が再び急速に進み, 深い峽谷が作られている。 この台地上では火山灰の保水性が低いために表流水が少なく, 溜池や長大な水路などによって農業用水利がはかられている。

第 4 図 平坦な火砕岩台地。 左の遠景の山は, 手前左が 上荻岳 かみおぎだけ , その右が 下荻岳 しもおぎだけ , 背後の山は阿蘇火山中央火口丘で, 両荻岳の中間が根子岳, 下荻岳の右が高岳。 下荻岳以外の3峰は阿蘇山図幅地域内。 竹田市 古城 [ 位置不明 ] 付近から。
Pyroclastic plateau viewed west toward the Aso Caldera from west of Taketa City. Two mountains in the far back are central cones of the Aso Caldera and two small peaks before them are of early Pleistocene volcanic rocks not buried by the Aso Pyroclastic Flows.

第 5 図 波野・荻台地。 台地の縁に連なる崖は Aso-4B 溶結凝灰岩(A4B)。 その上の台地表面までは阿蘇火山中央火口丘からの降下火山灰(Ac), Aso-4B の下は近景まで Aso-4A の軽石流からなる。 荻町 鴫田 しぎた [ 位置不明 ; 恵良原の南東方 1 km 強 ] から 恵良原 えらはる 付近をみる。
The cliff bounding the plateau is made of the Aso-4B welded tuff (A4B) which is covered by the air-fall ash from the Aso Central Cones (Ac). Hills in the foreground are made of non-welded part of the Aso-4A Pyroclastic Flow.

第 6 図 a・b 波野・荻台地の東端付近の空中写真(立体写真)。 台地面は耕地となっているが, Aso-3 の部分(3)は小谷に刻まれて平坦地がない。 中央および左端近くに東西方向の谷を横断して連なる南北方向のリニアメントが見える。
Well-cultivated plateau, covered by the air-fall ash of the Aso Central Cones (Ac), is bounded by the cliff of the Aso-4B Welded Tuff (4B). The plateau of the Aso-3 Pyroclastic Flow (3) is dissected by many parallel gullies. N - S trending lineaments near the center and the left margin cut valleys flowing east-wards.

[ 第 6 図 a・b に関する注意書き ]
立体写真の領域のスケッチに用いられている略号の意味
(3) : Aso-3 火砕流, (4B) : Aso-4B 熔結凝灰岩の崖, (Ac) : 阿蘇火山中央火口丘火山灰,
TR : 玉来川, TK : 滝水川, S : 菅生, T : 戸上, O : 荻, E : 恵良原
立体写真に用いた空中写真の使用に関すること
本書に掲載した空中写真は, 建設省 国土地理院長の承認を得て, 同院発行の4万分の1空中写真を複製したものである。 承認番号 : 昭和 52 総複, 第 60 号

この台地上には, 必従的に東に流れる谷を横断して, 南北に連なる狭い谷がある。 図幅地域の西縁の [ 波野村 なみのそん ] 山崎・ 仁田水 にたみず [ ← これらの部落名は地質図上で印字不良 ] の北方で大分・熊本県境をなす谷, 下荻岳の東西両側, 荻町の杉園・藤渡・中山 [ ← これらの3部落は下荻岳の北東~南東に南北に並んでいる ] を連ねるものなどである。 これらと同様の地形は西方へ阿蘇カルデラ縁まで台地上に多数発見される。 これは同カルデラの周囲をとりまくように発達する顕著なリニアメントの一部である (曽屋ほか(1975); 国土地理院 地殻調査部(羽田野誠一 ; 1976))。 九州中部には 広域的な応力場に関係して生じたと思われる 西北西および東北東方向のリニアメントが広く発達しているが, ここで述べたリニアメントは 阿蘇カルデラ縁から 15 km 以内の範囲に カルデラをとりまくように発達していることからみて, 同カルデラの形成に関係して生じた割れ目系と思われる。

大野川丘陵地 は, ほぼ竹田市街を境として, [ 1 ] Aso-3 火砕流が主体である西部と, [ 2 ] 主に Aso-4 火砕流からなる東部とに2分することができる。 この両者には, それぞれの岩相を反映して地形に相異がみられる。

西部の Aso-3 火砕流の台地では, 急崖に囲まれた廊下状の小谷がほぼ平行に密にならび, その結果, 小谷と小尾根とが櫛の歯状に交互している(第 6 図)。 そのため, 遠望すると一見 台地状にみえるが, ここには平坦面はほとんど残されていない。 両側の主谷からの櫛の歯がおよんでいない稜線部には平坦面が保存され, 上面に Aso-3 と Aso-4 間の降下火砕物をのせている。 ここには稲葉川の北側の 城原 きばる [ ← 図幅地域北端部・東西中央から西方に 4 km ] 付近や, 大谷川と瀬口川との間の 次倉 つぎくら [ ← 恵良原 えらはる の東南東方 2 km ] 付近などのように集落が発達している。

東部の Aso-4 火砕流の地域では, 台地上部をつくる非溶結部の固結度が低いために 樹枝状の谷によって細かく刻まれ, 平坦面は局部的にしか残されていない。 一方, やや大きい河川に沿っては, Aso-4 火砕流の硬い溶結凝灰岩が分布しているために 平滑で単調な斜面が谷沿いに続き, 上述の非溶結部からなる地形ときわだった対照をなしている( [ 後述する「VI.2.8 Aso-4 火砕流」の項で示している ] 第 61 図)。 Aso-4 火砕流堆積物の岩相と地形との関係については同火砕流の項で改めて述べる。

波野・荻台地および大野川丘稜地には, 阿蘇火砕流より下位の岩石が台地面上に島状の高地として点在している。 波野・荻台地の上荻岳 [ 843 m ] (阿蘇山図幅地域)と下荻岳 [ 688 m ] とはやや古い火山岩からなる。 大野川丘陵地にあるものは, 竹田市街の北方の 法師山 ほうしやま 朝地 あさじ 変成岩からなり(第 7 図), それ以外のもの, すなわち [ 法師山の南南東方 4.5 km の ] 小富士山 こふじさん [ 457 m ][ 法師山の南南西方 7 km の ] 牧ノ城 まきのじょう [ 449.5 m ][ 法師山の南南東方 7 km 弱の ] 巣石山 すいしやま [ 455 m ] などは大野川層群の主に砂岩からなる。

第 7 図 北東からみた法師山。 朝地変成岩類からなり, Aso-4 火砕流のつくる台地面から突出している。
Hōshi-yama of the Asaji Metamorphic Rocks surrounded by plateau-forming Aso-4 Pyroclastic Flow.

II. 地質概説

竹田図幅地域は西南日本の内・外両帯にまたがり, この地域以西では三波川帯を欠いて秩父帯が直接 内帯と接するようになる。 すなわち, 九州の東岸部では 臼杵 うすき - 八代 やつしろ 構造線を境として秩父帯の北側には三波川帯がひろがっているが, 内陸部にはいるにつれ内帯が南にはりだし, 内・外両帯を画する中央構造線が臼杵 - 八代構造線に接近していくため, 三波川帯は漸次 幅を減じ, 本地域の東端部にいたって尖滅する。 先第三系についてみると, 本地域は秩父帯, 大野川地溝帯および内帯 古期岩類分布地帯とに構造区分される。 このような基盤構造に関してはすでに寺岡(1970)によって論述されており, 第 8・9 図に竹田図幅地域およびその周辺の地質の概要を示す。

第 8 図 竹田図幅地域付近の地質図。
Geologic map of the Taketa district and surrounding areas.

[ 第 8 図に関する注意書き ]
[ 地質図上に記した ] 5万分の1地形図名
Ⅰ : 久住(Kujū), Ⅱ : 犬飼(Inukai),
Ⅲ : 阿蘇山(Aso-san), Ⅳ : 竹田(Takata), Ⅴ : 三重町(Mie-machi),
Ⅵ : 高森(Takamori), Ⅶ : 三田井(Mitai), Ⅷ : 熊田(Kumada)
地質図の凡例に関する記載は省略する。

第 9 図 竹田地域の地質図。
Geologic map of the Taketa district.

[ 第 9 図に関する注意書き ]
地質図の凡例に関する記載は省略する。

秩父帯は本地域の南東隅を占め, そこに分布する先第三系としては 圧砕花崗岩 [ G ][ 塩基性 ] 変成岩類 [ B ] , シルル系 九折 つづら [ Tz, ls ][ 秩父帯の ] 上部古生層 [ ph, bv, psl, ch, ssl, ls ] および白亜紀層がある。 これらのうち 前3者は秩父帯中のいわゆる黒瀬川構造帯にレンズ状岩体をなして露出するもので, 九州東部ではこのような構造帯が雁行しながら数列にわたって発達している。 ただし, シルル系がみられるのは [ 本図幅の南西隣の高森図幅の南隣の ] 鞍岡図幅地域の 祇園山 ぎおんやま [ 1307 m ] 付近と本地域およびその東方延長にあたる三重町図幅地域の三国峠付近だけである。 九折層は秩父帯のシルル系としては比較的分布が広く, [ 秩父帯の ] 上部古生層とは断層または超塩基性岩類 [ U ] によって境されている。 圧砕花崗岩は九折層と接しているが, これとの関係はよくわからない。 [ 塩基性 ] 変成岩類 [ B ] は主として角閃岩からなり, 圧砕花崗岩 [ G ] や超塩基性岩類 [ U ] に伴って露出し, 秩父帯の北縁にちかい 湯ノ迫 ゆのさこ [ ← 烏岳の東方 3 km ] 付近の構造帯にややまとまってみられる。 この帯には白亜紀層 [ Yu ? ] がはさみこまれており, 本層は三重町図幅地域に広く分布する白亜系のうちの宮古統の 佩楯山 はいだてやま 層群の一部に対比されるであろう。 [ 秩父帯の ] 上部古生層の下部 [ ph, bv, psl ] は千枚岩化しており, この千枚岩帯は奥岳川の上流地域および祖母山火山岩類 [ S* ] を介してその北東側にもみられ, 東方延長は三重町図幅地域においてもよく追跡される。 千枚岩類の南側の古生層は部分的ながら厚い石灰岩 [ ls ? ] を挟んでおり, 北側のものには塩基性火山岩類 [ ? ] が多く, これらの間にはかなり著しい層相のちがいが認められる。 隣接地域における産出化石からみると, [ 秩父帯の ] 上部古生層の大部分は二畳系と推定される。 奥岳川ぞいに分布する 土岩 つちいわ [ Ts ] の時代については確証はないが, 秩父帯における中・古生界の構造配列の状況や層相から判断すると, 三重町図幅地域の白亜紀前期の高知統の 山部 やまぶ 層に対比される可能性がつよい。

[ 本図幅地域の北東部から南西部にかけて横切る ] 大野川地溝帯は南縁を臼杵 - 八代構造線, 北縁を 佐志生 さしゅう 断層・竹田断層などで画され, そこには上部白亜系 大野川層群 が北東に沈下する非対称複向斜構造をなし, 最大 18 km の幅をもって 臼杵 うすき 湾岸から西は阿蘇山の南方の 見岳山 みたけやま [ ← 本図幅の南西隣の高森図幅地域の南西隅 ] 付近まで約 93 km にわたって分布する。 この地層群は層相の側方変化が著しく, 複向斜軸部付近にはタービダイトで特徴づけられる中軸相, その両側, とくに北側には礫岩に富む周辺相が発達しており, 層序的には最下部, 下部, 中部および上部の4亜層群に区分される。 竹田図幅地域では 中軸相と北側の周辺相に属する最下部亜層群上部および下部亜層群下部が分布するが, 阿蘇火山噴出物をはじめ新生界による被覆が甚しく, その露出は断片的である。 三重町図幅地域の北西部では 岩上断層と臼杵 - 八代構造線にはさまれた地帯(三波川帯)に 下部亜層群上部の 柴北 しばきた [ S ] が向斜構造をなして露出しており, 本地域の東端部にもその西方延長が新生界の下位に分布していると考えられる。

竹田断層の北側には 朝地 あさじ 変成岩類 [ Aj ] およびこれを貫く朝地深成岩類や超塩基性岩類 [ U ] からなる内帯 古期岩類が分布する(小野(1963); 大島ほか(1971))。 この変成岩類は古生層を原岩とし, はじめ低度の広域変成作用を受けて片岩化し, その後, 白亜紀前期の朝地深成岩類の貫入に伴い接触変成作用をうけたものと考えられている。 変成度は南東から北西に向って上昇し, 原岩としては泥質岩・砂岩のほか, かなりの量の塩基性火山岩類があり, わずかながらチャート・石灰岩もみられる。 竹田図幅地域においては, 竹田の北方の法師山およびその東北東の三宅付近に朝地変成岩類, 竹田の東北東約 1.5 km の 挟田 はさだ に超塩基性岩類がそれぞれ小範囲に露出しているにすぎない。 しかし, 西隣の阿蘇山図幅地域の小園(豊肥線 滝水駅の北西約 2.5 km)には 花崗岩の小露出があること, 阿蘇根子岳溶岩中の捕獲岩(唐木田, 1966), Aso-4 火砕流中の異質岩片として角閃石斑れい岩, 超塩基性岩などの緑色岩がみられることなどを考慮すると, 本地域以西においても, 少なくとも阿蘇山付近までは, 竹田断層の北側に前述のような内帯 古期岩類が 新生代火山岩類の下位に広く分布しているものと推定される。

以上のような中・古生界を覆って 本地域には火山岩類を主とする新生界が広く分布している。

祖母山・傾山などからなる山岳地には中新世の 祖母山火山岩類 [ S* ] が分布し, 本地域ではその北半部がみられる。 傾山付近の秩父帯から四万十帯にかけての地域では, この火山岩類の下位に礫岩からなる 見立 みたて [ M ] があり, 両者は不整合関係にある。 本層の時代については, これを四国の始新統の 久万 くま 層群に対比して古第三系とみなす見解が有力であり(永井(1956); 松本・橋本(1963); その他), このほか, 見立層の礫岩の少なくとも一部は二畳系であるとの主張もある(加納ほか, 1962)。 しかし, 四万十累層群が 第三紀中頃の変動(高千穂変動)によって著しい変形・変位を受けているのに対し, 見立層は全体としては傾斜がごく緩く, 前者を顕著な傾斜不整合をもって覆っており, 分布・構造のうえでは祖母山火山岩類と密接な関係がある。 したがって, 見立層は中新統である可能性もある。

祖母山火山岩類は, それを貫く新第三紀酸性貫入岩類 [ Yf, Ygd, Yp, Yg ] とともに, 中新世の火成活動の大きいサイクルをなしている。 この火山岩類は溶岩・火砕岩からなり, 前期と後期とに大別される。 前期火山岩類はデイサイト・流紋岩を主とし, 観音滝断層以南の傾山を中心とする地域に古生界や見立層を覆って分布している。 後期火山岩類は大部分が安山岩質であり, 少量のデイサイトを伴い, 秩父帯から大野川地溝帯にかけて広く分布している。 臼杵 - 八代構造線は 奥岳川流域の 小原 おばる [ ← 烏岳の東南東方 1.5 km 弱 ] 付近から祖母山火山岩類分布地域に入って [ 本図幅の南隣の ] 三田井図幅地域の西縁の河内付近にのびるが, これによる祖母山火山岩類の変位は認められない。

[ 祖母山火山岩類の ] 後期火山岩類は, 弧状の断層 もしくは それに沿って貫入した新第三紀酸性貫入岩体にかこまれて 古期岩の中に分布しており, その分布地は大規模な陥没地 -- 2つのカルデラ -- とみなされる。 その一つは 観音滝断層を南縁として北西 - 南東方向にのびる傾山カルデラ(松本・宮久, 1973)であり, 他の1つは 尾平 おびら 断層あるいは奥岳川の北西側の 三田井図幅地域にのびる祖母山を含むブロックである。 金属鉱物探鉱促進事業団による広域調査のボーリングによって, 両者についてそれぞれ 850~1,050 m 以上と 1,000~1,050 m の落差が確認されている。

新第三紀酸性貫入岩類は珪長岩 [ Yf ] , 細粒花崗閃緑岩 [ Ygd ] , 花崗斑岩・石英斑岩 [ Yp ] , 花崗岩 [ Yg ] などからなり, 上記の順序で前述のように断層に沿うほか, ところどころで祖母山火山岩類およびそれ以前の岩層に貫入している。 傾山カルデラの北東縁を限る花崗斑岩 [ Yp ] の岩脈は, この地域から南東へのびて 三田井・熊田図幅地域の 大崩山 おおくえやま の底盤をとりまくように延岡市の北方を経て 再び北西に向い, 三田井図幅地域の三田井の北方まで断続し, 北西 - 南東の長径 40 km, 北東 - 南西の短径 20 km に達する大きな環状岩脈の一部をなすものである。 また, 花崗岩 [ Yg ] は, この図幅地域内では奥岳川沿いの上畑付近の小分布の他, 傾山カルデラ内のボーリングの深所に発見されている(地質図幅の断面図参照)が, これらは 上述の環状岩脈の中心貫入岩体である 大崩山の底盤の一部あるいはそのキュポラ [ cupola ; 潜在岩体の頂部 ] とみられるもので, 祖母山火山岩類にはじまる一連の火成活動の終期にあたる。 これらの酸性貫入岩に関係して 錫・亜鉛・銅などの豊富な金属鉱床群が形成され, 竹田図幅地域にも 豊栄 ほうえい 鉱山その他の鉱床がある。

内帯側の朝地変成岩類 [ Aj ] ・朝地深成岩類や大野川層群の上には, 中新世中期(14 m.y.)の 大野火山岩類 (小野(1963); 柴田・小野(1974))がのっている。 同岩類の分布は犬飼・久住・三重町・竹田図幅地域にまたがっているが, 本図幅地域では 同岩類の最上部層である 三宅山 みやけやま 火砕流 [ Om ] が北縁部にわずかに分布するのみである。 同火砕流は流紋岩質であり, 緻密な溶結凝灰岩からなる。

図幅地域の北東隅近くには, 鮮新世の火山岩と考えられる 大渡 おわたり 溶岩 [ Ow ] 小園 こぞの 火砕流 [ Oz ] とが分布する。 大渡溶岩は黒色緻密な輝石安山岩の溶岩であり, [ 図幅地域北東部の ] 緒方 おがた の北方の大野川の河床に露出し, 阿蘇火砕流に覆われる。 小園火砕流は非溶結の角閃石黒雲母流紋岩火砕流であり, [ 緒方の東方の図幅地域の東端近くの ] 緒方川の南側の丘陵に露出して 平石 ひらいし 礫層 [ H ] に覆われる。 両者とも下位層は不明であり, 付近に近縁の岩体がみつからないので, 岩石が新鮮なことと 後者が平石礫層に覆われることとから, ここでは鮮新世としておく。

平石礫層 [ H ] は地域の東部にあり, 阿蘇火砕流のつくる台地内に それよりもやや高い, 開析された台地状の地形をなして分布する。 本層は巨礫を含む 分級のよくない礫層であり, 地形・分布・礫種などから 祖母・傾山地から主に奥岳川の水系によって運び出された古い扇状地礫層と考えられる。

竹田図幅地域で更新世前期の火山岩としたものは 今市 いまいち 火砕流 [ I ] 河原立 かわらだて 火砕岩 [ Oa ] 下荻岳 しもおぎだけ 溶岩 [ Og ] 鷹匠町 たかじょうまち 火砕流 [ T ] である。 中部九州には新第三紀末から第四紀にかけて広域的な火山活動があった。 これらは大量の輝石安山岩に, より少量の角閃石安山岩~デイサイト・流紋岩・玄武岩などを伴う カルクアルカリ火山岩類であり, そのうちの主に輝石安山岩について 筑紫溶岩(赤木(1933)など)・ 豊肥火山岩類(松本徰夫(1963)など), 流紋岩について 万年山 はねやま 溶岩(松本唯一(1933)など), あるいは岩系全体に対して やや局地的に先阿蘇火山岩類(小野(1965)など)などの地域的岩層名が与えられている。 本図幅地域はこの火山岩類の分布の南東縁の一部にあたり, 更新世前期の火山岩類としたものはその一員と考えられる。

今市火砕流 [ I ] は久住図幅地域に広く分布する輝石流紋岩の火砕流であり, 本地域では北部の谷沿いの低地に露出しているが, 地表を覆っている阿蘇火砕流の下に広く連続して分布しているものと思われる。 強溶結の溶結凝灰岩が多く, しばしば気相晶出変質をうけている。

河原立火砕岩 [ Oa ] は図幅地域中央部, 河原立の対岸の大野川河床におけるボーリング( [ 後述する「VI.2 阿蘇火山噴出物」の項に示した ] 第 38 図の B2)によって伏在が判明した輝石安山岩・輝石角閃石安山岩の火砕岩である。 下荻岳溶岩 [ Og ] は地域の西縁の下荻岳をつくるもので, 黒雲母角閃石デイサイトの溶岩である。 鷹匠町火砕流 [ T ] は竹田市街地のみで発見されている角閃石黒雲母流紋岩の火砕流であり, 非溶結の堆積物である。 噴出源は不明であるが, 九重火山の初期の噴出物である可能性もある。

更新世後期には西隣の阿蘇山図幅地域の阿蘇火山, 北・北西隣の久住・宮原図幅地域の九重火山が活動し, この地域に噴出物をもたらした。

竹田図幅地域は阿蘇カルデラ東側の火砕岩台地の東部にあたり, 阿蘇火山の噴出物 [ A* ] はこの図幅地域では南部の山地を除く台地状部のほぼ全域に分布して, 最も広い面積を占める。 阿蘇火山はおそらく 10~20 万年前に活動を始め, 古い順に Aso-1 から Aso-4 とよばれる4回の大規模なサイクルの活動によって 大量の火砕流とそれに伴う降下火砕物とを噴出した。 それらの間にも より規模の小さい活動があって降下火砕物を堆積させ, また Aso-1 と Aso-2 との間には溶岩が流出し, 本図幅地域には 玉来 たまらい 川溶岩 [ At ] が分布する。 これらの岩石の大部分は輝石安山岩・輝石流紋岩であり, Aso-4 サイクルのみには角閃石流紋岩が多い。

大規模な活動のサイクルにそれぞれ伴ってカルデラが形成されたのであろうが, その明らかな証拠はない。 現在みられる阿蘇カルデラは 4 万年前か, それよりやや古い時期に噴出した Aso-4 火砕流の流出直後に形成されたものである。 カルデラ内には中央火口丘群が生じ, 現在まで活動を続けている。 本地域には, 台地上にそれからの厚い降下火山灰層があり, 多数の薄いユニットの累積からなる。

九重火山の活動 [ K* ] は阿蘇火山の活動と平行して行なわれ, 少くとも2回の火砕流と1回の泥流とが北西方から本地域内に流入した。 すなわち, Aso-2・Aso-3 両サイクル間の 宮城 みやぎ 火砕流 [ Km ] , Aso-3・Aso-4 両サイクル間の 下坂田 しもさかた 火砕流 [ Ks ] , Aso-4 サイクル以後の 稲葉川 いなばがわ 泥流 [ Ki ] である。 両火砕流は角閃石デイサイトからなり, 溶結していない。

現世の堆積物としては 前述の阿蘇火山中央火口丘からの降下火山灰 [ Ac ] の一部がこれに含まれる他, 小規模の冲積層 [ a ] があるのみである。 冲積層は河谷に沿って分布しているが, 狭く, 薄い。

第 1 表 竹田図幅地域の層序表

地域 →
時代 ↓
西日本外帯 西日本内帯
秩父帯 三波川帯
大野川地溝帯

[ 地質図の凡例 ]

新生代 第四紀 完新世 冲積層 a 砂および礫
阿蘇火山
中央火口丘
降下火山灰 Ac 火山灰 (主に輝石安山岩)
更新世
後期
阿蘇火山
先カルデラ期
(A)
および
九重火山
(K)
稲葉川 泥流 Ki 非固結の火山灰および岩塊
(主に角閃石安山岩)
Aso-4B 火砕流 A4B 熔結凝灰岩 (輝石角閃石流紋岩)
Aso-4A 火砕流 A4P 非熔結のガラス火山灰および軽石
(紫蘇輝石角閃石流紋岩)
A4W 熔結凝灰岩 (紫蘇輝石角閃石流紋岩)
Aso-3・4 間の
降下火砕物
A3-4 軽石および火山灰の成層した堆積物
(輝石流紋岩)
下坂田 火砕流 Ks 非熔結のガラス火山灰および軽石
(黒雲母紫蘇輝石角閃石デイサイト)
Aso-3 火砕流 A3 非熔結のガラス火山灰・スコリア・軽石
あるいは熔結凝灰岩
(輝石安山岩および輝石流紋岩)
Aso-2・3 間と
それ以下の
降下火砕物
A2-3 軽石および火山灰の成層した堆積物
(主に輝石流紋岩)
宮城 火砕流 Km 非熔結のガラス火山灰および軽石
(黒雲母紫蘇輝石角閃石デイサイト)
Aso-2 火砕流 A2 非熔結の火山灰およびスコリア
(輝石安山岩)
玉来川 熔岩 At 輝石安山岩
Aso-1 火砕流 A1 熔結凝灰岩 (輝石流紋岩)
更新世
前期
鷹匠町 火砕流 T 非熔結のガラス火山灰および軽石
(角閃石黒雲母流紋岩)
下荻岳 熔岩 Og 黒雲母角閃石デイサイト
河原立 火砕岩 Oa 火山礫凝灰岩および凝灰角礫岩
(輝石安山岩および角閃石輝石安山岩)
(地質断面図 F - H のみに示す)
今市 火砕流 I 熔結凝灰岩 (一部非熔結)
(輝石流紋岩)
第三紀 鮮新世 平石 礫層 H 礫・砂および泥
小園 火砕流 Oz 非熔結のガラス火山灰および軽石
(角閃石黒雲母流紋岩)
大渡 熔岩 Ow 輝石安山岩
中新世 大野
火山岩類
三宅山 火砕流 Om 熔結凝灰岩 (かんらん石輝石流紋岩)
新第三紀 酸性貫入岩類 Yg 黒雲母花崗岩
Yp 花崗斑岩および石英斑岩
Ygd 細粒花崗閃緑岩
Yf 珪長岩
祖母山
火山
岩類
後期
火山
岩類
第 Ⅵ 期 S6-dt 安山岩~デイサイト質凝灰角礫岩
S6-d デイサイト熔岩
第 Ⅳ~Ⅴ 期 S-ap 斑状輝石安山岩熔岩
S-at 安山岩質凝灰角礫岩
S-aa 無斑晶質輝石安山岩熔岩
前期
火山
岩類
第 Ⅲ 期 S3-dt2 デイサイト質凝灰角礫岩
S3-dwt デイサイト~流紋岩質溶結凝灰岩
s3-d
s3-d'
流紋岩~デイサイト熔岩・
凝灰角礫岩(S3-d')を伴う
S3-dt1 デイサイト質凝灰角礫岩
第 Ⅱ 期 S2 リソイダイト
第 Ⅰ 期 S1-dt デイサイト質凝灰岩・凝灰角礫岩
S1-dwt デイサイト質溶結凝灰岩
見立 層 M 礫岩, 砂岩を伴う
中生代 白亜紀 大野川 層群 t 酸性凝灰岩
柴北 層 S 砂岩・頁岩
(地質断面図 A - E のみに示す)
奥河原内 層 O1 砂岩, 礫岩および頁岩を伴う
霊山 層 R2 砂岩, 頁岩および礫岩を伴う
R1 頁岩
R1 礫岩および砂岩, 頁岩を伴う
湯ノ迫の白亜紀層 Yu 砂岩・頁岩および礫岩
土岩 層 Ts 砂岩および頁岩, 礫岩を伴う
超塩基性岩類 U かんらん岩・蛇紋岩および輝岩
古生代 朝地 変成岩類 Aj 変成玄武岩熔岩・同凝灰岩・砂岩・頁岩
二畳紀
[ = ペルム紀 ]

石炭紀 ?
秩父帯の上部古生層 ls 石灰岩
ssl 砂岩および粘板岩
ch チャート
psl 千枚岩質粘板岩および砂岩
bv 緑色千枚岩および輝緑岩
ph 縞状千枚岩
シルル紀 九折 層 ls 石灰岩
Tz 粘板岩・砂岩・流紋岩および酸性凝灰岩
(熱変成をうけている)
先シルル紀 ? G 圧砕花崗岩
塩基性変成岩 B 角閃岩・輝岩および片状斑れい岩

III. 古生界

III.1 秩父帯の古生界

本図幅地域内の秩父帯古生界は主として南東部を流れる奥岳川の右岸の山地を占め, その北縁は阿蘇火山噴出物などによる被覆のため不明である。 古生界は, 傾山の北方の祖母山火山岩類および新第三紀 酸性貫入岩類により, [ 1 ] 清川村 きよかわむら 地域( 左右知 さうち [ ← 図幅地域東端・南北中央付近 ] とどろ [ ← 左右知の南西方 1.5 km ] 周辺)および, [ 2 ] 緒方町地域( 九折 つづら [ ← 大障子岩の東北東方 5.5 km ] 土岩 つちいわ [ ← 大障子岩の東方 3 km ] 周辺)の2つの地域に分かれる。

なお, 清川村地域の古生界としては塩基性変成岩類 [ B ] , 超塩基性岩類 [ U ] および上部古生層が, 緒方町地域の古生界としては圧砕花崗岩類 [ G ] , シルル系 九折層 [ Tz, ls ] および上部古生層が分布している。

西南日本外帯の秩父帯にはシルル~デボン系, 深成岩類, 変成岩類などの古期岩類が 構造帯にそってレンズ状岩体をなして分布することが各地で知られており, このような構造帯は市川ほか(1956)により 黒瀬川構造帯 とよばれている。 黒瀬川構造帯の諸岩石は地域によってそれぞれ異なって命名され, 第 2 表のように対比される。

第 2 表 黒瀬川構造体の地層, 岩体および対比

四国 九州東部 九州中部 九州西部
シルル紀層
酸性火成岩類
変成岩類
岡成層群
三滝火成岩類
横倉山火成岩類
寺野変成岩類
奥畑層
三国圧砕花崗岩類
本匠変成岩類
九折層・祇園山層
鞍岡火成岩
圧砕花崗岩
五ヶ瀬変成岩類
八代火成岩類

八代片麻岩類
研究者
または
命名者
小林(1941)
市川ほか
  (1956)
宮地・富田・野田
  (1963)
斎藤・神戸(1954)
宮地・野田(1965)
野田(1959)
松本・勘米良
  (1952)

九州の黒瀬川構造帯については, 東部(大分県 三重町の南方の三国峠付近 ; 三重町図幅地域)は宮地・富田・野田(1963), 中部(大分県 緒方町~宮崎県 高千穂町および五ケ瀬町 ; 竹田・三田井および鞍岡各図幅地域)は神戸(1957), 斎藤・神戸・片田(1958)および野田(1959)により研究された。 竹田図幅地域の秩父帯では 野田の研究による珊瑚化石 Dania tsuzuraensis の発見によりシルル系 九折層が報告され, 圧砕花崗岩や超塩基性岩類とともにレンズ状岩体をなす部分があり, 黒瀬川構造帯に対比される。

III.1.1 塩基性変成岩類(B)

緑色・片状(一部塊状)の変成岩である。 そのなかでは角閃岩が最も多く, 単斜輝石岩と片状斑れい岩とがそれにつぐ。 それらは緒方町 湯ノ迫の東方のレンズ状岩体をのぞけば分布範囲がせまく, 地質図に図示できないものが多いが, 超塩基性岩に伴われてしばしば分布する。

角閃岩は暗緑色~灰緑色で片状を呈し, 細粒~中粒の普通角閃石からなり, 緑れん石・緑泥石・スフェーン・ざくろ石(おそらくアルマンディン)などを伴う。 普通角閃石は鏡下に淡緑色で多色性がある。 これとはべつに長柱状のアクチノ閃石が脈状につらぬくものがある。

角閃岩には斑れい岩質の組織を示すものがある。 この場合, 斜長石はソーシュル石化し, また, 普通角閃石は結晶の周縁や劈開にそって青緑色 角閃石となることがある。 塩基性変成岩体の一部には 単斜輝石(異剥輝石)のやや粗粒の集合からなるものがあるが, 片状を示さず火成岩組織に近い。 これは超塩基性岩の一種と見なしてよいかも知れない。

角閃岩は超塩基性岩に伴ってレンズ状岩体をなし, 原岩の推定は困難であるが, 宮地(1964)の指摘のように 輝石を含む火成岩に由来する可能性がある。 それが角閃岩相の変成作用をこうむり, さらに後退変成(後退変質)をうけたと考えられる。

これら変成岩類の原岩は先カンブリア時代であり, また初期の変成作用は先シルル紀であろうとの見解が 宮地ほか(1963)によってのべられているが, その考えは有力なものであろう。

III.1.2 圧砕花崗岩(G)

圧砕花崗岩は緒方町 九折 つづら 谷に主として分布するが, 湯ノ迫付近の構造帯の中にもわずかに分布する(第 10・11 図)。

第 10 図 奥岳川の上流地域の地質図。
Geologic map of upper basin of the Oku-take River.

[ 第 10 図に関する注意書き ]
地質図の凡例に関する記載は省略する。

第 11 図 奥岳川の上流地域の基盤岩の地質断面図(凡例は第 10 図と同じ)。
Geologic profiles of the basement rocks in the Fig. 10 (see Fig. 10 for legend).

九折谷では東西 800 m, 南北 1,200 m の範囲を占め, 東および南は見立層 [ M ] および祖母山火山岩類 [ S* ] におおわれている。 地表で見られるかぎり ほぼ南北方向の分布形態を示し, この地域の秩父帯の一般的構造方向である東西, あるいは東北東 - 西南西方向とは調和しない形態であるのが注目される。

この岩体は上記のように新生代の地層によっておおわれるほか, 超塩基性岩類 [ U ] によって切られ, また, シルル系 九折 つづら [ Tz ] と接する。 圧砕花崗岩とシルル系との関係は 貫入または被覆のいずれであるか断言できない(第 12 図)。 圧砕花崗岩の接触部における熱変成の有無は, そのあとの新第三紀花崗岩の貫入による広範囲にわたるホルンフェルス化によって 不明の状態となっている。 一方, これに接するシルル系の側には基底礫岩は認められない。

第 12 図 圧砕花崗岩とシルル系 九折層の接触部のスケッチ(豊栄鉱山の -105 m 坑の壁)。 熱変成をうけているためもあって, 貫入または不整合のいずれとも判断が困難である。 石英脈がつらぬくところでは花崗岩が脱色して優白色となる。
The cataclastic granite and the Silurian Tsuzura Formation. Contact relations, intrusion or unconformity, is not determined owing to thermal metamorphism affecting both units.

竹田図幅地域内の圧砕花崗岩の時代を示す直接の証拠は現在のところ見出されていない。 しかし, 一般にこの種の構造帯の花崗岩類が先カンブリア時代のものであるとする考えは有力である。 これらの岩石を先カンブリア時代のものとする主張の一つに 副成分ジルコンの群色 [ = 時代に応じたジルコンの色の変化 ] がある。 三滝・三国峠などの花崗岩類は紫ジルコンを含むことが知られており, これは TOMITA(1954)によれば始生代に限られるという。 竹田図幅地域の圧砕花崗岩のジルコン群色は無色~白色であるが, これは後期の熱変成による変色と考えられ, この場合はジルコン群色による時代推定は不確実となる。

九折谷の上流の一部では この岩体のなかに片麻岩状の部分があり, これは普通角閃石と斜長石とが交互に縞状に配列する片麻状斑れい岩であるが, これはむしろ前項の塩基性変成岩類 [ B ] に属するものであろう。

圧砕花崗岩の化学組成を第 3 表に示す。

第 3 表 九折谷(豊栄鉱山の南)の圧砕花崗岩の化学組成。
Chemical composition of cataclastic granites from Tsuzura-dani.

sample
SiO2 74.83 69.43
TiO2 0.10 0.36
Al2O3 13.24 16.57
Fe2O3 0.74 0.21
FeO 1.84 1.98
MnO 0.05 tr
MgO 0.48 1.04
CaO 0.77 1.11
Na2O 4.03 3.75
K2O 3.57 4.80
P2O5 0.16 0.03
H2O + 0.10 1.02
H2O - 0.07 0.18
Total 99.98 100.48
[ 第 3 表の sample の説明 ]
Ⅰ : 新発表(採取地点は地質図の上の "CG")。 分析者は石橋澄
Ⅱ : 加納(1967)による。 分析者は平野次男

この花崗岩の鏡下における性質はつぎのとおりである。

主成分鉱物 : 斜長石・カリ長石・石英・黒雲母
副成分鉱物 : 白雲母・燐灰石・ジルコン・クリノゾイサイト
二次生成鉱物 : 石英・緑泥石・酸化鉄(~チタン)鉱物・炭酸塩鉱物・粘土鉱物

斜長石(おそらく灰曹長石)は大きい長方形その他の形で量的にも多い。 アルバイト双晶縞のゆがみが特徴的で. ときにそれが切断されたところは 他の結晶粒界とともに石英の細粒集合の脈によってうずめられている。 カリ長石は大小さまざまで, 石英とこまかく共存して上記のような脈状~網状をなすことが多い。 黒雲母はこわれた破片の集合をなし, しばしば緑泥石とチタン鉄鉱の集合に変化しそれらが脈状~くさり状につらなる。 方解石や苦灰石(?)などの炭酸塩鉱物あるいは セリサイトを含む粘土鉱物が斜長石を交代することがある。

この圧砕花崗岩の石英・カリ長石・斜長石の量比は一定しないが, 斜長石 ≧ カリ長石であるからアダメロ~花崗閃緑岩である。 しかしながら, 苦鉄鉱物が少く, とくに角閃石をほとんどみとめないことや 石英が多く含まれることなどからトロニエム岩と呼びうるものも多い。

圧砕化がさらにすすんで等粒状組織が失なわれ, 鏡下で珪長質部分がレンズ状となり, その間をセリサイト・黒雲母・緑泥石・鉄鉱物の集合が脈状に充填する ミロナイト状の岩相もある。 しかしながら, ミロナイト状のところは新期の熱変成をうけて 細粒ホルンフェルス組織となることがしばしばで, 多量の黒雲母が生じており, そこに角閃石集合体が伴なわれたり, ざくろ石(アルマンディン?)が生成したりしている。

III.1.3 シルル系( 九折 つづら 層 ; Tz およびそれに伴う ls)

本図幅地域内のシルル系は 南東部の緒方町地域の奥岳川の支流の九折谷流域の一部 [ ← 図幅地域南東隅の傾山の西方 2.5~4 km ] を占め, およそ 1.5 km の幅で東西方向ないし北東 - 南西方向をもって分布し, 北東部は祖母山火山岩類 [ S* ] により被覆される。 北西部は超塩基性岩類 [ U ] をへだてて, 縞状千枚岩源ホルンフェルス [ ph ? ] と接する。 さらに南西部は三田井図幅地域におよび, 南東部は見立層 [ M ] および祖母山火山岩類 [ S* ] により被覆される。

本地域内のシルル系は野田(1959)により九折層と命名され, 西南日本外帯各地のシルル系と同じく, 秩父帯のなかにあってもいわゆる秩父系すなわち上部古生界(一部は三畳系)の諸地層とは その産状, 岩質および地質構造がいちじるしく違っており, 北上系(矢部(1958)の提唱)として区別されている。

この図幅地域のシルル系は熱変成をかなり強くうけているので, ほかの地方のシルル紀の地層とはその外観が異なり, 黒雲母ホルンフェルスで特色づけられる紫褐色化は むしろ秩父帯一般の地層と近似した様相を呈している。

九折層の模式地である緒方町 九折谷の流域では, 構成岩石は 紫褐色の黒雲母ホルンフェルス(粘板岩起源)と 灰白色の砂岩源ホルンフェルスの互層を主とし, 石灰岩層 [ ls ] を挟有する。 紫褐色黒雲母ホルンフェルスのなかには 1~3 mm の石英や長石を斑状に含むものがあり, 流紋岩熔岩あるいは酸性凝灰岩起源のホルンフェルスであることを示すが, ほかのものは粘板岩起源であろう。 斑状鉱物の有無でそれを区別し得るのみである。

石灰岩も同様に全く糖晶質化し, 色々の原構造は失なわれている。 もっとも大きく発達するのは九折谷の右岸の 豊栄 ほうえい 鉱山 二号鉱床付近であり, 九折谷の支流の無名谷の左岸斜面にそって厚さ 30 m で単斜状に北へ傾く。 石灰岩からは 野田(1959)により Dania tsuzuraeusis NODA n. sp. なる床板珊瑚化石が発見され, Dania 属はかつて H. MILNE-EDWARDS と J. HAIME(1850)により報告され, シルル紀特有のものであると考えられているので, 九折層の地質時代がシルル紀とされるにいたった。 珊瑚化石は石灰岩層の層理に平行して産出し, まわりは かなり粗大な方解石の集合からなる糖晶質石灰岩からなり, 一部にはざくろ石スカルンが生じているにもかかわらず 化石はよく組織が保存されて風化面に突出している。 おそらくやや珪質となっているのであろう。 ほかの地方のような Halysites や Favosites が発見されないのは, このように強い熱変成により消失したものと考えられる。

この九折谷の石灰岩層は下部で金属鉱床を胚胎し, 豊栄鉱山 一号鉱床として錫・亜鉛・硫化鉄鉱を採掘している。

九折層は全面的にホルンフェルスになっており 地質構造の判定はむずかしいが, 石灰岩層の形態により構造をあるていど識別できる。 それによると, 秩父帯の諸岩層の一般的構造である 東西性あるいは東北東 - 西南西性の傾向とは必ずしも一致しない。

豊栄鉱山の一号鉱床付近では, 圧砕花崗岩の形態に調和し, 花崗岩体と九折層の接触面に平行して 接触面からほぼ 30 m へだてた九折層のなかに石灰岩層が賦存する。 このような配列の関係は, 花崗岩が貫入岩体ではなくて 既存岩体としての花崗岩体を被覆して九折層が堆積した可能性を示すものではあるまいか。 同様の関係は西隣の 尾平 おびら 鉱山(三田井図幅地域内)にもあり, 同鉱山のスカルン化した層状~レンズ状の石灰岩のほとんどが 圧砕花崗岩の分布に近接している事実がある。 ただし, 九折層の堆積の基底を示す礫岩層は発見されないので, なお詳細な検討が必要である。

九折層の流紋岩質岩石の鏡下の観察はつぎの通りである。

斑晶 : カリ長石・斜長石・石英
石基 : 珪長質鉱物の微晶の集合

カリ長石と斜長石(曹長石~灰曹長石)の粗大な斑晶がめだち, 融食された石英がそれに次ぐ。 有色鉱物も含まれるが, 緑泥石化して原鉱物は明らかでない。 緑泥石が一部 角閃石化することと, 斑晶および石基をつらぬく角閃石脈の存在は新期の熱変成に由来するのであろう。

III.1.4 [ 秩父帯の ] 上部古生層 [ ph, bv, psl, ch, ssl, ls ]

九州の秩父帯の大部分は上部古生層からなるが, 構成岩石と地質構造とから 北から南へ つぎのような3つの帯 [ 以下の [注] 参照 ] にわけることができる。

[注]
黒瀬川構造帯研究グループによる四国秩父帯の区分は北帯・中帯・南帯の名称であるが, それらと厳密に対応するとはかぎらないので, ここでは北部帯・中部帯・南部帯とよんでおく。

北部帯 : 主としてチャート・粘板岩・砂岩および塩基性火山岩類からなり, かなりの部分が低度の広域変成作用をうけている。 また, 超塩基性岩類の迸入とそれに伴う古期岩層のレンズ状衝入がある。 地質時代の詳細は明らかでないが, 上部古生界の比較的古いメンバーを含んでいることがある。

中部帯 : 砂岩・粘板岩互層を主とするが, 顕著な石灰岩層を伴い, かなりの塩基性火山岩類も含まれる。 大部分が二畳系であるが, 下部三畳系の含まれる地域もある。

南部帯 : 砂岩・粘板岩およびチャートの互層を主とし, 南限付近に厚い石灰岩層を伴う。 二畳系~三畳系と考えられ, 南半の部分は三畳系を主とする 三宝山帯 さんぽうさんたい に対比される。

竹田図幅地域の秩父帯は主に北部帯に属するが, 中部帯の一部もみられる。 これらの地帯の大部分は上部古生層であるが, それらの層序・構造ともに明らかでなく, 地層の大部分は東西または東北東 - 西南西の走向をもち, 北または南へかなり急傾斜である。 北部帯の地層は広域変成作用により千枚岩化している。 これは 北へむかって変成度がやや高まると共に, 黒瀬川構造帯の周辺とくに北縁や超塩基性岩体に接近するところでも著しい。

図幅地域内では 傾山の祖母山火山岩類 [ S* ] により上部古生層の分布が断たれ, [ ← 図幅地域の東端・南北中央やや南付近 ] 清川地区 (大分県 大野郡 清川村)と, 西 [ ← 傾山の西方の図幅地域の南端付近 ] 九折地区 (大分県 大野郡 緒方町)とにわけられる。

III.1.4.1 清川地区の上部古生層(ph, bv, psl, ch, ssl およびそれらに伴う ls)

竹田図幅地域南東縁部に位置する清川地区には, [ 本図幅の東隣の ] 三重町図幅地域の上部古生層の西延にあたる地層が分布する。 すなわち, 北部帯から中部帯の上部古生層で, 地層は北あるいは南に傾き, 背斜あるいは向斜を繰り返し, 時には東北東 - 西南西の断層でたち切られ, 複雑な構造を 呈がる [ ← 示す ? ] が, 層序については詳らかでない。 つぎに, 北部帯および中部帯のそれぞれについての分布, 岩相, 構造などについて記載する。

[ III.1.4.1.1 ] 北部帯の地層

層序が不明で地層区分は難しいので, 北から最北部, 北部, 中央部, 南部に分けて説明する。

最北部 : 奥岳川をはさみ, 北は相野を中心とし, 主部は 湯ノ迫 ゆのさこ 左右知 さうち を結ぶ地域に, 南は とどろ 部落の北縁を限界とし, 幅約 1 km を占めて分布する。 岩相は緑色千枚岩 [ bv ] を主とし, 黒色千枚岩質粘板岩 [ psl ] がこれにつぎ, チャート [ ch ] ・砂岩 [ psl ? ] および石灰岩 [ ls ] の薄層を伴っている。

緑色千枚岩 [ bv ] は淡緑色の塩基性凝灰岩源の千枚岩である。 鏡下では緑泥石 - 絹雲母 - 石英の組合せからなり, アクチノ閃石が生じている場合や, 長柱状の緑れん石 - 方解石 - 曹長石 - 青緑色の角閃石の鉱物組合せを レンズ状~脈状に伴う場合などがある。 一般に細粒で, かつ堆積ラミナを残し, 不透明に近い汚濁物のバンドを伴うなど広域変成岩としての再結晶作用は弱いが, 三波川変成岩に似る千枚岩~片岩化の傾向を認めることができる。 緑色千枚岩は轟谷 以東では次第に緑色・塊状の輝緑岩質となる。

主に緑色千枚岩に挟有される薄い石灰岩 [ ls ] は肉眼的には不純で, 珪質バンドや緑色凝灰質バンドを頻繁にはさむが, これらは石英および緑泥石からなる。 石灰岩そのものはこまかく再結晶しているが, その方解石粒の劈開面は弯曲している。

最北部の地層は東北東 - 西南西の走向をもっているが, 北あるいは南に傾斜し 背斜および向斜を呈するが, つぎにのべる北部の地層との上下関係は不明である。 塩基性変成岩類 [ B ] や超塩基性岩類 [ U ] が出現するのも最北部の分布地域である。

北部 : 轟部落を中心とし, 最北部の南に幅約 500 m を占めて分布する。 岩相は 暗灰色の中粒~細粒砂岩および黒色千枚岩質粘板岩の互層 [ psl ? ] を主とし, チャート [ ch ] および石灰岩 [ ls ] の薄層を伴っている。

北部の地層は 最北部の地層と同様に東北東 - 西南西の走向を有し, 背斜および向斜を呈するが, 最北部や中央部の地層との上下関係は不明である。 しかしながら, 北部の砕屑岩の岩相からそれらの火山岩類の岩相にかけては漸移的である。

中央部 : 轟部落より南に位置し, 北部の南に幅約 1.5 km を占めて分布する。 岩相は塩基性火山岩類 [ bv ? ] およびチャート [ ch ] の互層を主とし, 暗灰色の中粒~粗粒砂岩および黒色千枚岩質粘板岩 [ psl ] を伴っている。

輝緑岩 [ bv ] は鏡下においてオフィティック組織をとどめる。 すなわち, ソーシュル石化した自形長柱状の斜長石の集合の間を有色鉱物がうずめる。 後者は緑泥石化と方解石化などのため原鉱物は明らかでないことが多いが, 一部に淡紫褐色のチタン輝石がレリクトとしてみとめられる。

チャート [ ch ] は塊状ないし縞状を呈し, 前者 [ = 塊状チャート ] は白色でときに厚層をなし, 屹立する コシキ岩(海抜 656 m) [ 位置不明 ] の岩峯をつくる。 堅硬で風化によく耐えるので急峻な地形を呈することが多い。 後者 [ = 縞状チャート ] は灰・暗灰・灰白・青灰・褐黄など雑色を示し, 小褶曲をくりかえしている。 これらのチャート層はマンガン鉱床を伴うことがある。

中央部の地層は東北東 - 西南西の走向を有し, 背斜および向斜を呈するが, 中央部のほぼ中央を占めて東北東 - 西南西の走向を有し, ほぼ 30°北に傾斜する断層があり, 顕著な擾乱帯がある。

南部 : 中央部の南に位置し, 幅約 500~700 m を占めて分布する。 岩相は黒色千枚岩 [ ph ? ] を主とし, 砂岩 [ ssl ? ] およびチャート [ ch ] を挟有する。 中央には数 m の, 南限には幅 50 m におよぶ超塩基性岩類 [ U ] が分布する。 地層は東北東 - 西南西の走向を有し, ほぼ 30~60°北に傾斜する。

北部帯の地層は化石は未発見であるが, その大部分が千枚岩質粘板岩や塩基性火山岩類などを主とする岩相からなり, さらに構造的位置を考慮に入れると, 三重町図幅地域や臼杵図幅地域(神戸・寺岡, 1968)の 鎮南山 ちんなんざん 帯の古生層に対比されることはほぼ確実で, Pseudofusulina 帯ないしそれより下位に及ぶと考えられる。 すなわち, 二畳紀前期あるいはさらに下位におよぶと考えられる。

[ III.1.4.1.2 ] 中部帯の地層

北部帯の南限に分布する超塩基性岩類 [ U ] の南に分布するが, 竹田図幅地域にはわずかに分布し, 大部分は三重町図幅地域に分布する。 岩相は主として砂岩・粘板岩 [ ssl ] および石灰岩 [ ls ] により特徴づけられる。 全般に石灰岩の発達が著しく, 見かけ上 数枚の厚い石灰岩があり, 隣接の三重町 大白谷 おおしろたに 部落付近では石灰岩のみの露出幅が 500 m をこえる。 地層はおおむね東北東 - 西南西の走向を有し, 45~75°北の傾斜の単斜状を呈するが, 露頭の観察から複雑な褶曲のくりかえしと考えられる。 石灰岩はドロマイトを伴うことがある。

西方には北西 - 南東方向にのびる花崗斑岩を主とする岩脈 [ Yp ] があり, また上部古生層にもその分岐または平行の小岩脈が多く, それらによる熱変成がみられる。 変成部分の幅は数 100 m である。 石灰岩はこの岩脈に近づくおよそ 500 m の範囲が白色糖晶質となっている。

中部帯の地層は化石が未発見であるが, 幅広い石灰岩を主とし, 砂岩および粘板岩からなり, その構造的位置をも考慮に入れると, 三重町図幅地域や臼杵図幅地域(神戸・寺岡, 1968)の津久見帯 古生層に対比されることはほぼ確実で, 二畳系に属し, その大部分は Pseudofusulina 帯から Yabeina 帯に属するものと推定される。 なお, 津久見帯には三畳紀前期の碁盤ケ岳層や石炭紀の水晶山層が分布するが, 竹田図幅地域の中部帯の地層にこれらの地層が含まれるかは つまび らかでない。

III.1.4.2 九折 つづら 地区の上部古生層(ph)

九折地区の超塩基性岩類 [ U ] の北側にある縞状千枚岩源ホルンフェルス [ ph ] は, 野田(1959)により 岩相上の対比から秩父系と見做されているが, 化石は未発見であり 正確な時代は不明である。

縞状ホルンフェルスとよぶフィールドネームは 白と黒または白と緑の互層状の細縞の発達がいちじるしいためであり, 原岩の堆積岩が一たん千枚岩となったのちに熱変成をうけるという, 複変成の産物と考えられる。

豊栄鉱山選鉱場の南にあるケイセイ谷とドウカイ谷 [ 位置不明 ] に分布するものは, 黒色ホルンフェルスのほかにかなりの緑色ホルンフェルスを伴う。 上記の細縞は堆積のラミナを示すものと思われるが, 微褶曲の発達がいちじるしく地質構造は明らかでない。

しかし, 両翼には背斜形態の超塩基性岩類が分布し, ホルンフェルスの部分的走向および傾斜などから, 地層は背斜を基本構造とすると考えられる。

九折谷の西方では, 土岩の南方の柳谷 [ 位置不明 ] , ケイソウ谷(海相谷), イボシ谷(飯干谷または烏帽子谷)などの奥岳川の右岸の支流の流域に分布し, さらに [ 本図幅の南隣の ] 三田井図幅地域の尾平鉱山方面へのびる。 イボシ谷付近ではその北側(山地斜面の下方)に土岩層 [ Ts ] の砂岩が接するが, おそらく断層関係であろう。 ほかの場所では両者の境界に超塩基性岩類が貫入している。

黒色縞状ホルンフェルスは明暗の細縞の発達がいちじるしい(第 13 図)。 すなわち, 粘板岩源の黒雲母からなる黒色~暗褐色縞と, 珪長質の白色縞とが交互していわゆるトラシマ状をなすが, 剥離性にはとぼしく, 全体が堅硬なホルンフェルスである。 その一部は一見 片麻岩(とくに准片麻岩)ともよぶべき外観を呈する。

第 13 図 上部古生層の縞状千枚岩を原岩とする黒雲母ホルンフェルス(緒方町 土岩の南東方)。
Biotite hornfels from banded phyllite of upper Paleozoic formation.

緑色縞状ホルンフェルスも明暗の縞の発達がいちじるしい。 緑色の縞はアクチノ閃石の細粒集合からなり, 一見すると構造帯古期岩としての角閃岩に似る。 しかし, 角閃石の種類, 粒度, 縞状構造の発達のちがい, 一部に玄武岩源とみられる杏仁構造の存在すること, などの相異点がある。 この緑色の縞状ホルンフェルスは塩基性火山岩類の千枚岩化されたものが 新第三紀酸性貫入岩類 [ Yf, Ygd, Yp, Yg ? ] により熱変成をうけて生じたのであって, 角閃岩相の高度広域変成岩ではない。

九折地区の古生層は上記のような特異な岩相で, チャートや石灰岩など二畳~石炭紀の地層に一般的に存在する岩相が見出されず, 化石も未発見であるので, 地質時代については今後 検討の余地がある。

III.1.5 超塩基性岩類(U)

秩父帯の超塩基性岩類は祖母・傾山地において東西の2地域に分かれて分布する。 東部地域の清川村では蛇紋岩を主とし, 数条の幅のせまい岩床状をなして分布する。 西部地域では むしろ かんらん岩が蛇紋岩よりも多く, 岩体の形態も複雑である。 西部地域のものは「本谷山かんらん岩体」と称せられる。

これらの超塩基性岩類は黒瀬川構造帯の古期岩類・ シルル紀 九折層・ 秩父帯の上部古生層および白亜紀の土岩層などをつらぬいている。 東部地域のように既存の岩層が背斜,向斜構造をなすとはいえ, 地層の擾乱が著しくないときは 超塩基性岩類も地層面にほぼ平行な板状をなし, 単純な岩床形態である。

しかし, 西部地域のように膨縮にとむとき, 岩体の傾斜が変化し, とくにドーム状ないし屋根型や分岐状をなすときなどの場合は, 岩体の賦存状態の立体的な解明が必要となる。 幸いこの地域は地形がけわしく, 谷が深く V 字状に山地をきざみ, また豊栄鉱山のように地表から 130 m の深部まで坑道がのびていることなどから, 超塩基性岩類の産状はかなり把握できる。

たとえば豊栄鉱山の九折谷の両岸では, 中間に縞状ホルンフェルスをはさんで南北2列の岩体があり, それぞれの傾斜は北側では北へ, 南側では南へむかう(第 14 図)。 これらは東方および西方の高位置ではしだいに接近してついに合致しており, 明らかに背斜形態で, ラコリス~ファコリス [ phacolith ] 状を呈する。

第 14 図 九折谷のサカオケ滝 [ 位置不明 ] 付近の右岸の超塩基性岩の産状。
Ultrabasic rocks at Tsuzura-dani.

また, その西方にあるケイソウ谷とイボシ谷にはさまれた尾根では, ほとんど水平構造のかんらん岩を主とする岩体があり, 一般走向と直角な NW - SE 方向にほぼ 600 m のひろがりをもって 竹田・三田井両図幅地域にまたがっている(第 10・11 図)。 この水平的分布の南北両側はそれぞれ外側へむかって傾く板状形態となるので, それらを翼とする背斜状またはドーム状形態ということができよう。

ただし, この背斜の両翼の岩層分布は対称的でなく, 北翼の北側には土岩層 [ Ts ] が, 南翼の南側にはシルル紀 九折層 [ Tz ] および黒瀬川構造帯の古期岩層が分布する。 また, 軸部には 豊栄鉱山と同じく縞状ホルンフェルス [ ph ] が分布する。

しかし, 向斜部では上部へむかっての分岐状をなし, その軸が傾くときは水平方向への分岐として平面図に表現される形態となる。 これはコノリスとよばれる型式で, 背斜部のゆるやかさは全く見られない。

超塩基性岩が背斜形態をなすときの軸部は秩父系の千枚岩化した地層であり, コノリス形態をなすのは古期岩の構造帯のところにおいてである。 古期岩がこのようなあり方を示すのは, それが超塩基性マグマ活動に伴って深部の基盤から衝入(squeeze out)したことを思わせる。

シルル紀 九折層や構造帯の火成岩・変成岩類がまわりの秩父帯の岩層と接する場合は ほとんどつねに接触部に超塩基性岩類が介在している。

超塩基性岩類の種類は 蛇紋岩 ダンかんらん岩 を主とする。 そのほかに滑石 [ tarc ] の濃集部や石綿の細脈も見出される。 また, 加水ざくろ石 + 単斜輝石からなる灰白色ロジン岩が [ 本図幅の東隣の三重町図幅地域内の ] 大白谷付近の蛇紋岩に伴われる(唐木田・宮地, 1973)。 蛇紋岩は肉眼的に ① 暗緑~黒色ちみつ質のものと, ② 淡緑~濃緑の種々の色調を有し, 葉片状に剥離しやすいものとがある。 ② は破砕帯を形成し, 地すべりなどの原因ともなる。 ① と ② のいずれも風化によって細片化し, このような破砕化と細片化とによって蛇紋岩の露出地は一見して他の種類の岩石と区別できる。 かんらん岩は蛇紋岩よりも塊状かつ堅硬であるが, 岩体内にはかなり剪断面や圧砕面が生じ, そのようなところは滑石化または蛇紋岩化がすすんでやはり軟弱となる。 かんらん岩の風化面は黄褐色化がはなはだしく, これは蛇紋岩と同様に他の岩石との識別の際に大きい特徴となる。

近畿地方以西の秩父帯では多くの場所で超塩基性岩類を伴うが, それらのなかにダンかんらん岩を主とする岩体は見られない。 祖母・傾山地の新第三紀花崗岩マグマによる熱変成帯にかぎって ダンかんらん岩が分布することは, それが蛇紋岩化をまぬかれた原岩としてのかんらん岩ではなく, 蛇紋石が熱変成をうけて脱水・転移してかんらん石となった 熱変成起源と考えるのが妥当である。 次にのべるダンかんらん岩の岩石組織もそのような原因, すなわち再結晶かんらん岩と考えて矛盾がない。

[ III.1.5.1 ] ダンかんらん岩の顕微鏡的性質

苦土かんらん石は比較的石粒の等粒状集合するところと, それらの間をうずめて細粒結晶の集合するところとがあり, 細粒部にはクロム鉄鉱を伴う。 これらを長柱状~針状の斜方角閃石がつらぬくことがある。 滑石の葉片集合が斑状または不規則にかんらん石集合部を交代し, そのなかにかんらん石粒がレリクトとして見られる。 そのほか, 蛇紋石は多くの場合 伴なわれる。 これらの構成鉱物の消長によって, この地域のかんらん岩は次の型式にわけられる。

ほとんど苦土かんらん石のみ
苦土かんらん石 + 蛇紋石
苦土かんらん石 + 滑石
苦土かんらん石 + 蛇紋石 + 滑石

苦土かんらん石の多いものは耐火度が高く, 鋳物砂そのほかの耐火物原料としで活用し得る(後述) 。 超塩基性岩のうち滑石化を伴うかんらん岩の化学組成を第 4 表に示す。 なお, このほかに後述のような多くの工業分析データがあり, それらによれば MgO : 49 % に達して苦土かんらん石にとむものがある。

第 4 表 豊栄鉱山産の滑石含有かんらん岩の化学組成(分析 : 石橋澄)。
Chemical composition of talc-bearing dunite.

SiO2 50.01
TiO2 0.17
Al2O3 0.77
Fe2O3 0.61
FeO 6.07
MnO 0.114
MgO 35.68
CaO 0.04
Na2O 0.098
K2O 0.038
P2O8 0.016
H2O + 5.94
H2O - 0.41
Total 99.966

[ III.1.5.2 ] 蛇紋岩の顕微鏡的性質

葉片状の蛇紋石の微細な集合からなり, 滑石が脈状~リボン状につらぬいている。 磁鉄鉱が粒状, 雲状そのほか不規則状に多量に伴われる。 不規則な形のかんらん石粒が散点することがあるが, それが残晶なのか, 変状斑晶なのかは明らかでない。 角閃石の集合体を伴うことがあり, 多くはアクチノ閃石であるが, 一部には斜方角閃石のことがある。

III.2 朝地 あさじ 変成岩類(Aj)

朝地変成岩類は 大分市の南西方から朝地町にかけて 延長約 23 km にわたり細長く分布し, その主な分布は北・北東隣の久住・犬飼両図幅地域内にある(小野(1963); 大島ほか(1971))。 本図幅地域内には竹田市街の北方 2 km の 法師山 ほうしやま (第 7 図)と 同市街の北東 3 km の三宅付近とに 新生代火山岩類に周囲をとりまかれた小分布があるのみである。 また, 竹田市街の北東 1.5 km の 挟田 はさだ には次項に述べる超塩基性岩 [ U ] の小露出があり, これは本変成岩類を貫く岩体と思われる。

法師山付近に分布するものは暗緑色, 緻密, 塊状の玄武岩が多く, 他に 気孔を含む玄武岩, 火山礫凝灰岩, 黒色または帯紫暗緑色の凝灰岩を伴う。 三宅付近のものは暗緑~灰緑色の中~細粒砂岩であり, 黒色頁岩をはさむ。 久住図幅地域に分布するものにくらべ, 両地域のものとも はるかに変成の程度が低い。

玄武岩(76TD839A ; 竹田市 法師山の西側のトンネル西口)
肉眼的性質 : 暗緑色, 塊状, 緻密。
構成鉱物 : アクチノ閃石・曹長石・緑れん石・緑泥石・スフェーン。

間粒状組織の石基中に曹長石化した斑晶を含み, 原構造がよく保存されている。
玄武岩凝灰岩(76TD840B ; 竹田市 法師山の南側)
肉眼的性質 : 黒色, 細粒, 緻密, やや片状。
構成鉱物 : 緑色粘土鉱物・曹長石・スフェーン・緑れん石・不透明鉱物。

岩石のほとんど全部が玄武岩ガラス片およびスコリアからなり, ごく少量の結晶片と間粒状の石基をもつ玄武岩岩片とを含む。 ガラス片はカスプ形または曲線に囲まれた不定形であり, スコリアは円形・長円形の気孔を有し, ともにその外形をよく保存している。 しかし, 内部は変質鉱物のみからなり, 初生結晶のあったことを示す残存組織は全くみられないので, 当初は完全なガラスであったものと思われ, この岩石が玄武岩の水中火山活動の産物であることを示している。
砂岩(67TD525C ; 竹田市 三宅の国道傍の農協倉庫の裏)
構成砂粒 : 玄武岩岩片, 斜長石 ≫ 石英

玄武岩岩片は緑色の粘土鉱物の基地に曹長石化した長柱状の石基斜長石を含むものが多い。 これらの岩片と斜長石結晶片とがほとんど全量を占め, 石英はごく少量で, カリ長石は含まない。

[ III.2.1 ] 朝地変成岩類に伴なう超塩基性岩(U)

竹田市街の東北東約 2 km の 挟田 はさだ 部落の西方の谷底に延長 100 m 以下の極めて狭い分布がある。 主に黒色の蛇紋岩からなり, 少量の緑色の輝岩を伴う。

久住・犬飼図幅地域の朝地変成岩類には蛇紋岩その他の超塩基性岩が伴われるので (小野(1963); 大島ほか(1971)), この岩体も朝地変成岩類を貫くものであろう。 この岩体は前項で述べた朝地変成岩類の露出地点よりも南方にあり, この岩体の南南西 1.3 km, 岡城の南側の大野川沿いの県道傍には大野川層群 [ R1 ? ] が露出している。 朝地変成岩・深成岩類と大野川層群との境界である 竹田断層は 新しい火山岩類に覆われて露出していないが, その位置は この両岩体 [ = 超塩基性岩(U)と大野川層群の 霊山 りょうぜん 層(R1)の岩体 ? ] の間の約 0.8 km の幅の間に限定されることになる。

かんらん石含有単斜輝石岩(67TD506B ; 竹田市 挾田の西方の道路傍)
初生鉱物 : 単斜輝石・かんらん石・緑色黒雲母・クロム鉄鉱
二次鉱物 : 無色角閃石・鉄鉱
蛇紋岩(67TD506A ; 竹田市 挾田の西方の道路傍)
構成鉱物 : かんらん石(残存結晶少量)・蛇紋石・磁鉄鉱・無色角閃石

IV. 中生界

IV.1 土岩 つちいわ 層(Ts)

土岩層は奥岳川の上流地域に分布し, かつては上部白亜系 大野川層群に属すると考えられていた地層である(斉藤ほか, 1958)。 これは下限不明で, 千枚岩類 [ ph ? ] と断層関係にあり, 新期 [ ← 新第三紀 ? ] 酸性貫入岩類 [ Yf, Ygd, Yp, Yg ] により著しい熱変成および熱水変質を受けている。 全体として北東に沈下する向斜構造をなし, 砂岩・頁岩からなり, 礫岩を伴う。 砂岩は大部分が中~細粒のもので, 厚層をなす塊状砂岩のほか 頁岩と種々の互層をなす。 頁岩はよく成層し, 砂岩との薄互層部ではしばしばスランプ構造が認められる。 土岩付近の奥岳川の河床にはスランピングにより薄互層がちぎれて角礫化し, 堆積時の変形を示す好露頭があり, またそこでは, 塊状の砂岩中に大小様々(最大径が数 10 cm)な砂岩・頁岩の同時侵食礫が含まれ, まれに外来の円礫もみられる。 このような礫状岩も一種のスランプ堆積物であり, 土岩層のいくつかの層準にみられる。 外来礫を主とする細~中礫礫岩は厚さ 1~数 m で 2・3 の層準に挟在し, 礫としてはチャート・砂岩・粘板岩が多く, 酸性火山岩や優白質花崗岩もある。

土岩層は層相・構造とも古生層とはかなり異なり, 中生層と考えられるが, その時代については確証がない。 [ 本図幅の東隣の ] 三重町図幅地域の秩父帯にはジュラ紀後期から白亜紀にかけての時代の諸層が分布しており, これらのうち層相が土岩層に似ているものをしいてあげれば 高知統 山部 やまぶ 層がこれにあたる。 土岩層は山部層の分布地帯の西方延長上にあって, 構造的位置もよく似ており, 現段階では山部層 相当層とみなすのが妥当だろう。

IV.2 湯ノ迫 ゆのさこ の白亜紀層(Yu)

本層は秩父帯の北縁にちかい奥岳川の南方の湯ノ迫付近に最大幅約 300 m, 延長約 1 km のレンズ状岩体をなして分布する。 これは砂岩・頁岩および礫岩からなり, 北に 30~65°傾斜し, まわりの超塩基性岩類 [ U ] とは断層関係にあり, 新期 [ ← 新第三紀 ] 貫入岩類 [ Yp ] に貫かれている。 砂岩はおもに中粒のもので, 礫岩は粘板岩・チャート・砂岩などからなる比較的 円磨度の低い径 2~15 cm の礫を含む。 化石は未発見であるが, 古生層とは著しく岩相を異にすること, 本層の分布する構造帯の東方の延長は [ 本図幅の東隣の ] 三重町図幅地域の北東隅まで追跡され, そこに下部白亜紀層が断続的にはさみこまれていることなどからして, 湯ノ迫の地層は下部白亜紀層で, おそらく宮古統の 佩楯山 はいだてやま 層群の一部に対比されるものだろう。

IV.3 大野川 おおのがわ 層群(R1, R2, O1, S および t)

本層群は大野川地溝帯に複向斜構造をなして分布し, 時代的にはギリヤーク統から浦河統 上部階にまたがり, 著しい層相の側方変化を示す極めて厚い地層群で, 4亜層群に大別される。 これについては YEHARA(1924), 松本(1936), 神戸・寺岡(1968), 野田(1969), 寺岡(1970)らの研究がある。 竹田図幅地域の大野川層群は 北側の朝地変成岩類 [ Aj ] ・その他の内帯 古期岩類と竹田断層で, 南側の秩父帯 古生層とは臼杵 - 八代構造線で境され, 最下部亜層群の上部の 霊山 りょうぜん [ R1, R2 ] と下部亜層群の下部の 奥河原内 おくかわらうち 層の一部 [ O1 ] からなり, ギリヤーク統 上部階に対比される。 この地域では臼杵 - 八代構造線が複向斜軸付近を走っているため 南翼部はほとんど欠除し, 露出している地層はほとんどすべて北翼のものである。 しかし, 上記の構造線と [ その北西方を通る ] 岩上断層 にはさまれた地帯には, 地質断面図に示してあるように, 下部亜層群の上部の 柴北 しばきた [ S ] (浦河統 下部階)が新生界の下位 [ ← 平岩礫層(H)や Aso-4 火砕流(A4W ?) ] に向斜構造をなして分布していると推定される。

霊山・奥河原内両層は [ 本図幅の北東隣の ] 犬飼図幅地域に広く露出し, そこでは礫岩に富むのに対し, 本地域では砂岩の卓越する より沖合の層相を示す(第 8・15 図)。 地層の厚さは北から南にいくにつれ増大する。 犬飼図幅地域では霊山層の下位に 宇曽 うそ 層とよばれる赤色岩層があり, それの下限は断層のため不明である。

第 15 図 宇曽層・霊山層および奥河原内層の層序断面図。 凡例は第 16 図と同じ。
Stratigraphic section of the Uso, Ryozen and Oku-kawara-uchi Formations of the Ōno-gawa Group. For legend, see Fig. 16.

本地域の大野川層群は露出がきわめて断片的であるが, NE - SW ないし NNE - SSW の走向をもって東方に 30~60°傾き, 第 16 図のように区分される。 一般に上位の地層ほど緩傾斜になり, 岩上断層 に近い部分ではゆるやかな褶曲がみられる。

第 16 図 竹田図幅地域の大野川層群の層相図。
Facies map of the Ōno-gawa Group in the Taketa district.

[ 第 16 図に関する注意書き ]
層相図の凡例に関する記載は省略する。

IV.3.1 層序

大野川層群は層相変化に富む地層群なので, その区分にあたっては 堆積輪廻に基づいて亜層群・層(累層)および部層に分けるほか, 層相の地域差によって部層をさらにいくつかの相にわける。 大局的にみれば, これら各相の境界は 堆積盆地の軸部(現在の複向斜軸部にほぼ一致する)ののびの方向に走っている場合が多い。

[注]
以下の大野川層群の層序に関する説明では, (地質図の凡例に「地質断面図 A - E のみに示す」と記されている) 「柴北層(S)」についての記載がない。 また, 地質図の凡例にある「酸性凝灰岩(t)」についても, 以下には霊山層の R1 部層の R1b 相の下部に挟まれていることしか記載されていない。

[ IV.3.1.1 ] 霊山 りょうぜん [ R1, R2 ]

R1 と R2 の2部層からなり, 本地域では大野川流域から祖母山の北麓にかけて露出する.

[ IV.3.1.1.1 ] R1 部層

R1a・R1b および R1c の3相に分けられる。 R1a は [ 本図幅の北東隣の ] 犬飼図幅地域に分布し, ほとんど礫岩ばかりからなり, そこでは部層全体の層厚が 2,400 m 内外ある。 本地域には R1b と R1c が分布し, 層序的には R1 部層の上部の地層がみられる。

[注]
地質図の凡例には R1 部層として表示色が異なる2つの領域がある。
緑系統の色 で描かれた R1 の領域 ( R1_G と呼ぶ) : 礫岩および砂岩, 頁岩を伴う
青系統の色 で描かれた R1 の領域 ( R1_B と呼ぶ) : 頁岩
これらは下記の R1b および R1c 相のそれぞれに含まれる。

R1b : 大野川沿いの小野 [ ← 法師山の東方 4.5 km ] 付近から小富士をへて 舞渡 まいわたり [ ← 神原 こうばる の西北西方 2 km ] まで断続的に露出する。 これにはよく連続する含化石頁岩層があり, その下限をもって上下に2分される。 上部は緒方川ぞいで約 900 m の層厚をもち, 北方に向って急速に薄くなる。 下部には 酸性凝灰岩 [ t ? ] が2層あり, 小富士のものはおそらく R1a 最上部の凝灰岩と同層準のものだろう。

下部は砂岩・礫岩からなり,ときに頁岩薄層を挟む [ R1_G ] 。 大野川流域では砂岩がち砂岩礫岩厚互層からなり, 南方にいくにつれ礫岩の発達がわるくなって牧ノ城・田井付近では砂岩が主体をなす。 このような岩相変化に伴い頁岩のはさみがふえ, 礫岩では礫径の減少, 基質および同時侵食による頁岩・砂岩の偽礫が多くなる。 北部では中礫礫岩が普通にみられるが, 南部では大部分が小~細礫礫岩である [ 以下の [注] 参照 ] 。 ただし, 舞渡には最も下位の層準の地層が露出しており, そこでは中礫礫岩も多く, 砂岩と厚互層をなし, 厚さ約 3 m の 酸性凝灰岩 [ t ? ] を挟む。 礫は後述のような岩種からなり, 一般によく円磨されている。 砂岩の大部分は粗~中粒のもので, しばしば頁岩偽礫を含み, R1c との境界付近では頁岩片が層理に平行に配列して縞状を呈することがある。

[注]
巨礫・大礫・中礫・小礫および細礫はそれぞれ boulder・ cobble・ 径 32 mm 以上の pebble・ 径 32 mm 未満の pebble および granule に対応する。

上部は下位から頁岩層 [ R1_B ] (50~80 m) , 砂岩礫岩層 [ R1_G ] , 頁岩砂岩互層 [ R1_G ] (15 m)に3分される。

頁岩層 [ R1_B ] はよく成層した頁岩からなり, ときおり石灰質団塊を含み, 次のような化石を多産する :

Mesopuzosia pacifica MATSUMOTO, M. indopacifica (KOSSMAT), Yubariceras cf. yubarense MATSUMOTO, SAITO & FUKADA, Romaniceras sp., Subprionocyclus neptuni (GEINITZ), Otoscaphites puerclus (JIMBO), Scalarites scalaris (YABE), Portlandia sp., Nanonavis sp., Glycymeris cf. amakusense solida NAGAO, Pinna sp., Inoceramus hobetsensis NAGAO & MATSUMOTO, Pecten cf. raduloides STOLICZKA, Anomis sp., Ostrea sp., Pterotrigonia datemasamunei (YEHARA), Lucina sp., Gyrodes sp., 腕足介, ウニ, 植物化石など。

砂岩礫岩層 [ R1_G ] は上部の主体をなすもので, 粗~中粒砂岩・礫岩からなり, 少量の頁岩を伴い, 層厚や岩相の側方変化が著しい。 礫岩は南部, とくに小富士付近によく発達する。 これは大小さまざまな角~円礫が雑然とはいった淘汰不良の礫岩で(第 17 図), 礫種の点では下部のものとほとんどかわらないが, 後者よりも粘板岩・砂岩・石灰岩などの古期堆積岩礫や頁岩・砂岩の同時侵食礫が多い。 概して大~巨礫(最大径 45 cm)は角ばっており, はいり方が不均一である。 なお, このような特異な礫岩は 中部亜層群の烏岳層や上部亜層群の海辺層など [ 層名不明 ] によく発達する。

最上部をなす頁岩砂岩互層 [ R1_G ] は頁岩がち薄~中互層からなり, 礫質泥岩(厚さ 2 m)を挾み, まれに二枚貝化石を産する。

第 17 図 花崗岩の巨礫を含む霊山層 R1b の礫岩(緒方町 小富士の北東 2 km)
Conglomerate containing boulders of granite.R1b of the Ryozen Formation.

R1c : 露出はごく限られ, 巣石山・田井・舞渡でみられる北縁部の地層 [ R1_G ] は粗~中粒砂岩からなり, ときおり細~小礫礫岩を伴い, 粗粒岩にはしばしば頁岩や砂岩の偽礫が含まれている。 R1b に較べ礫岩の発達がわるく, 頁岩のはさみが多い。

[ 烏岳の西方 2 km 強の ] 榎津留 えのきづる に露出する地層は頁岩 [ R1_B ] からなり, Inoceramus hobetsensis NAGAO & MATSUMOTO・ウニなどを産する。 これは岩相・化石内容とも R1b の頁岩層に似ているが, 後者よりも層序的には若干上位のものと推定される。

[ IV.3.1.1.2 ] R2 部層

R2a・R2b および R2c とに相区分される。 [ 本図幅の北東隣の ] 犬飼図幅地域に分布する R2a では頁岩・礫岩・砂岩からなり, 層厚が 150 m から 700 m 以上にわたって変化し, 南ほど厚い。 頁岩は化石に富み, 厚層をなして発達し, 水平的にも消長が著しい。 本地域でみられる R2b と R2c はいずれも砂岩相であり, 部層全体の層厚は南に向って増大し, [ 巣石山の南東方 1 km の ] 徳田付近では 1,600 m 内外に達すると推定される。

R2b : [ 図幅地域北東隅付近の ] 宮生 みやお から [ その南西方 1.5 km の ] 志賀・ [ 竹田の東方 4 km の ] 大久保をへて [ 巣石山の北北東方 2 km の ] 小宛 おあて にかけ点々と露出する砂岩層がこれである。 砂岩には粗粒のものが多く, ときに細~小礫礫岩を伴っており, 少量ながら頁岩のはさみもある。

R2c : 緒方川付近からその南方にかけて分布し, 砂岩からなり, 巣石山では酸性凝灰岩を1層挟む。 砂岩はおもに中~細粒のもので, 通例 0.5~2.0 m の厚さをもって成層し, ときおり頁岩薄層を挟む。 小宛の南方の緒方川の河岸では 頁岩のはさみから Inoceramus teshioensis NAGAO & MATSUMOTO を産する。

[ IV.3.1.2 ] 奥河原内 おくかわらうち [ O1 ]

下部亜層群の下部を構成する累層で, 2部層からなる。 犬飼図幅地域では下位の O1 部層は大部分が礫岩からなり, 上位の O2 部層は砂岩を主とし, 礫岩・砂岩を伴う。 本地域の冬原 [ ← 巣石山の東南東方 2.5 km ] 付近に露出する奥河原内層は O1 部層の下部の地層で, 相区分からいえば O1c にあたる。 これは粗~中粒砂岩からなり, 礫岩や頁岩を伴う。 礫岩は 1~3 m の厚さをもって数層準に挟在し, 多くの場合は小礫以下の円礫を含む。 頁岩のはさみは南ほど多く, ときに厚さ数 m に及び, 礫質泥岩をともなうことがある。 奥河原内層は化石に乏しく, 犬飼図幅地域の O2 部層から Gaudryceras sp., Baculites sp., Inoceramus sp., その他若干の二枚貝・ウニ・植物化石が知られているにすぎない。

IV.3.2 粗粒砕屑岩の組成

霊山・奥河原内両層における礫岩の礫組成は層準や場所によって, 例えば礫径が小さくなると 粗粒な花崗岩類・粘板岩・石灰岩などのようなこわれやすい岩石の礫が相対的に減少し, 火山岩類・チャート・石英など緻密で堅硬なものがふえる傾向はあるが, 礫種に関しては本質的なちがいはない。 礫を構成する岩石としては花崗岩・ アプライト・ 花崗斑岩・ 石英斑岩・ 花崗閃緑岩・ 閃緑岩・ 玢岩・ 斑れい岩・ 流紋岩・ 安山岩・ 粘板岩・ 砂岩・ チャート・ 石灰岩・ 石英・ 片麻岩・ 片状ホルンフェルス・ 結晶片岩・ 角閃岩・ 蛇紋岩などがある。 ここで流紋岩としたものには火砕岩が多い。 小島(1973)によると, 変成岩類のなかには絹雲母緑泥石片岩・ 黒雲母石英片岩・ 紅柱石白雲母黒雲母粘板岩・ 菫青石白雲母黒雲母片岩・ 角閃石黒雲母片状ホルンフェルス・ 角閃石石英片麻岩・ ザクロ石黒雲母石英片麻岩・ ザクロ石黒雲母正片麻岩・ 斜長石角閃岩・ 黒雲母緑れん石斜長石角閃岩などが含まれている。 また, 角閃石黒雲母斜長石石英岩・ カリ長石斑状変晶を含む黒雲母微花崗閃緑岩などと称すべき塩基性混成岩もみられる。 以上のように礫種は多様であるが, 量的には火成岩類, とくに花崗岩類・石英斑岩・流紋岩など酸性なものの礫が主体をしめる。

第 18 図 霊山・奥河原内両層の砂岩組成。 Q : 石英, K : カリ長石, P : 斜長石, V : 火山岩片, R : その他の岩片。 試料産地は第 16 図に示す。 ただし, OR-100, 101, 105, 176, 177 は犬飼図幅地域から採取。
Sandstone composition of Ryozen and Oku-kawa-uchi Formations. Q : quartz, K : pottasium feldspar, P : plagioclase, V : volcanic rock fragments, R : other rock fragments. See Fig. 16 for localities of the samples exclusive of OR-100, 101, 105, 176 and 177 which are from the Inukai district.

第 18 図に砂岩組成を示してある。 モード分析に際してはカリ長石を染色し, 薄片ごとに約 1,100 点のポイントカウンティングをおこなった。 平均粒径は 100 個の石英粒の平均長径である。 本図からわかるように, 比較的粗い砂岩についてみると層準により多少のちがいはあるが, 石英と長石はほぼ同程度に含まれ, カリ長石より斜長石のほうがかなり多い。 火山岩片としては酸性のものが主体をなし, その他の岩片は礫岩のところで述べたような岩種からなる。 大野川層群全体の平均砂岩組成(試料数 : 86)は, 基質が 13.9(3.0)% で, 基質を除いた部分についてみると 石英 : 34.9(4.7)%, カリ長石 : 10.6(2.7)%, 斜長石 : 23.6(4.5)%, 岩片 : 30.7(6.1) % で, 石英 / 長石は 1.06(0.25), カリ長石 / 長石は 0.31(0.06)になる。 岩片としては火山岩片がもっとも多く 19.7(5.9)% をしめる。 なお, カッコ内の値は標準偏差である。 奥河原内層の砂岩は鉱物組成の点で層群全体の平均にちかく, 霊山層の場合は長石, とくに斜長石が多く, 火山岩片が少ないといえる。

層相変化・古流系・石粒砕屑岩組成などからして 本層群を構成する堆積物は大部分が北側から供給され, その内容は時代と共に多少の変化はあったが, 供給源地には酸性火成岩類を主とする種々の火成岩類が広く分布し, 堆積岩類や変成岩類も露出していたことがわかる(寺岡, 1970)。

IV.3.3 対比

大野川層群の時代についてはこれまでに松本(1936), MATSUMOTO(1954), MATSUMOTO & NODA(1966), 野田(1969), 寺岡(1970)らによって論述され, 前記のほか多数の化石が報告されている。 これらによると 霊山層 R1 部層は Inoceramus hobetsensis 帯, R2 部層は I. teshioensis 帯に属し, いずれもギリヤーク統 上部階(Upper Turonian)に対比される。 アンモナイトに基づく化石帯としては R1 部層に Subprionocyclus neptuni 帯, R2 部層には S. bravaisianus 帯と S. normalis 帯が識別され, これらはいずれも Upper Turonian を指示する。 奥河原内層の時代については確証がないが, 犬飼図幅地域で下部亜層群 中部の 中河原内 なかがわらうち 層から Inoceramus cf. teshioensis, Reesidite cf. minimus が採取されているので, これら両層 [ = 奥河原内層と中河原内層 ] もギリヤーク統である可能性がつよい。

V. 第三系

V.1 見立 みたて 層(M)

本層は [ 本図幅の南隣の ] 三田井図幅地域に広く分布し, その一部が竹田図幅地域までのびて分布している。 本層は分布地域の全域にわたって礫岩が優勢で, 見立礫岩の呼称が有名である。

竹田図幅地域における見立層の分布は断片的である。 おもなものは 九折 つづら 谷の右岸 支流のドウカイ谷 [ ← 豊栄鉱山の北東方 1 km 弱 ; 北端が観音滝断層 ] の海抜 700 m 付近と, 同じく左岸 支流のケイセイ谷の上流の 900~1,200 m 付近とにある。 この両者はともに下位のシルル系 九折層 [ Tz ] を傾斜不整合におおってほぼ水平に重なっている。 これが松本・橋本(1963)の見立 不整合 [ = 見立層基底の不整合 ] である。 また, いずれも上位を祖母山火山岩類 [ S* ] がおおい, ごくせまい露出でしかない。

見立層は層厚 40 m ± である。 下位は礫岩からはじまるが, 全層厚の間ほとんど礫岩からなり, ところどころにうすく砂岩をレンズ状にはさむ。 礫は亜円~亜角礫で大きさ径 3~20 cm ていどの範囲にあるが不揃いで, 淘汰は良好でない。 基質はおおむね砂質である。

礫種は砂岩・チャートなどの堆積岩類と 花崗岩~閃緑岩の深成岩類とがおもな岩質であるが, そのほかに角閃岩類似の緑色岩, 石英斑晶を含む半深成岩, 珪質片岩または原岩不明の珪質塊状岩などの礫も見出される。 いずれの分布地においても礫岩層全体が強弱いろいろの程度に熱変成をこうむり, 礫と基質とはかたく膠結している。 とくにホルンフェルス化のすすんだ基質は再結晶石英とアクチノ閃石とが生じている。

見立層の地質時代については, 古生代説・中生代 白亜紀説・古第三紀説および新第三紀 中新世説とさまざまな見解がある。 そのうち, 加納ら(1962)による二畳紀の薄衣式礫岩であるとの斬新な説と, それに対する松本・橋本(1963)の古第三紀とする詳しい論述 (永井(1956)の古第三紀 始新世説の支持)とが最近のおもな意見である。 見立層は黒瀬川構造帯・ シルル系・ 秩父系からさらに四万十帯の地層に至るまでのすべてを不整合におおうので, その堆積は少なくとも四万十累層群より若い時代ということはできる。

なお, 竹田図幅地域の南限に近い上畑の西南方の奥岳川の河床に 礫岩類似のホルンフェルスが露出し, かつて見立礫岩とされたことがある。 しかし, これは珪長岩 [ Yf ] の一部の角礫岩相であって, 見立層ではない。

V.2 祖母山 そぼさん 火山岩類

祖母山火山岩類は 主として本図幅と南隣の三田井図幅の地域に分布するが, さらにその一部は これらの東側の三重町・熊田 および西側の高森の各図幅地域にまたがって分布する火山岩類であって, その分布は ほぼ南北 19 km × 東西 26 km にわたる。 この竹田図幅地域には 祖母山火山岩類の北半部の主要部分が分布していることになる。 したがって, この図幅調査のみでは その構造や活動史について不明な点が残される。 そのため, 昭和 41~45 年に行なわれた金属探鉱促進事業団の広域調査などの 隣接図幅の結果を含めて説明する。 あきらかになった部分を要約すれば第 5 表のとおりである。 この第 5 表には 祖母山火山岩類を貫ぬく新第三紀 酸性貫入岩類についても同時に示してある。

第 5 表 祖母山火山岩類と新第三紀酸性貫入岩類

新第三紀
(中新世)
新第三紀 酸性貫入岩類 黒雲母花崗岩
花崗斑岩・石英斑岩
細粒花崗閃緑岩
珪長岩
↙ 貫入関係
祖母山
火山 岩類
後期
火山 岩類
第 Ⅵ 期
火山 岩類
無斑晶質輝石安山岩熔岩
安山岩(~デイサイト)質凝灰角礫岩
デイサイト熔岩
  休止期・
↙ カルデラ形成
第 Ⅴ 期
火山 岩類
斑状輝石安山岩熔岩 (無斑晶輝石安山岩熔岩) 安山岩質凝灰角礫岩 } 互層
第 Ⅳ 期
火山 岩類
無斑晶質輝石安山岩熔岩 斑状輝石安山岩熔岩 安山岩質凝灰角礫岩 } 互層
前期
火山 岩類
第 Ⅲ 期
火山 岩類
デイサイト質凝灰角礫岩
デイサイト~流紋岩質溶結凝灰岩
流紋岩~デイサイト熔岩
デイサイト質凝灰角礫岩
↙ 傾山不整合
第 Ⅱ 期
火山 岩類
リソイダイト
第 Ⅰ 期
火山 岩類
デイサイト質凝灰岩・凝灰角礫岩
デイサイト質溶結凝灰岩・熔岩 互層
デイサイト質凝灰岩・凝灰角礫岩
古第三紀 見立層 礫岩(一部 砂岩)
先古第三紀 先古第三系 ↖ 見立不整合

祖母山火山岩類は見立層 [ M ] およびそれ以前の岩層を被覆して発達している。 本図幅の南隣の三田井図幅地域における祖母山火山岩類は [ 宮崎県と大分県の県境に位置する ] 本谷山 ほんたにやま の中腹および傾山の南面などにおいて 見立層を被覆する所が各地で認められる。 しかしながら, この図幅地域においては, 見立層の分布は傾山の西面の2カ所に狭い範囲に認められるのみである。 祖母山火山岩類と見立層との関係は不整合関係(傾山不整合と称される)であり, その関係も南隣の三田井図幅地域の傾山の南斜面において観察される。

竹田図幅地域における祖母山火山岩類は, [ 1 ] 傾山から その北方の三ツ尾 [ ← 傾山の北方 3.5 km ] の一帯, [ 2 ] 祖母山から その北東稜線の障子岩 [ ← 祖母山の南方 2 km ; 三田井図幅地域内 ] から烏岳の一帯, および, [ 3 ] 祖母山から その北西稜線の 緩木 ゆるぎ 山, 越敷 こしき 岳一帯に分布している(第 19・20 図)。

第 19 図 傾山の山頂より祖母山方面を望む。 So : 祖母山, T : 天狗, E : 烏帽子, S : 障子岳, F : 古祖母山, H : 本谷山, K : 笠松(以上は三田井図幅地域)。 祖母山から古祖母山およびその斜面にかけては祖母山火山岩類の後期火山岩類からなり, 本谷山から笠松にかけては前期火山岩類からなる。 本谷山~笠松と古祖母山との間に 尾平越 おびらごえ があり, そこを尾平断層が通っている。
Sobo-san from Katamuki-yama. H : Hontani-yama, F : Furu-sobo-san, S : Shōji-dake, So : Sobo-san. The ridge between F and So is made of the Late Volcanic Rocks of the Sobo-san Volcanic Rocks while that between H and K is of the Early Volcanic Rocks and Obira Fault between F and H bounds the two units.

第 20 図 緒方町 九折の谷より傾山方面を望む。 K : 吉作 きっさく 坊主, F : 二ツ坊主, M : 三ツ坊主, Mi : 三ツ尾。 写真撮影の位置からやや上流に豊栄鉱山があり, その鉱山付近から三ツ尾の右側に観音滝断層がほぼ東西方向に走っている。 この断層より右側(南側)は祖母山火山岩類の前期火山岩類からなり デイサイト質~流紋岩質の火山岩であるが, 断層より三ツ尾側はすべて後期火山岩類の安山岩類よりなる。 なお, この位置から傾山の本峰は見えない。
Peaks of the north Katamuki-yama from the west. The Kannon-daki Fault which runs along this valley to the right of Mi, bounds the Early Volcanic Rocks to the right of the fault from Late Volcanic Rocks of the left of it.

竹田図幅および隣接図幅地域の祖母山火山岩類の分布は 尾平断層と観音滝断層によって, [ 1 ] 祖母山地区, [ 2 ] 傾山~本谷山地区, および, [ 3 ] 九折 つづれ 大白谷 おおしろたに [ ← 三重町図幅地域内 ] 地区の3地区にわけられる(第 8 図)。

尾平断層は [ 本図幅の南に ] 隣接の三田井図幅地域において 大分県 尾平鉱山より尾平越の西方を通り, 宮崎県 土呂久 とろく 鉱山 [ ← 祖母山の南方 6 km ] の北方まで NE - SW 系で, それからほぼ西方に走り, 道元越 どうげんごえ の北方, 上野村 田井本, 高千穂町 河内 [ ← 三田井図幅地域の西端・南北中央やや北 ] の北方に走る北落ち断層であり, かつては臼杵 - 八代構造線の一部と考えられたものである。 この尾平断層の一部には新第三紀酸性貫入岩類が貫入しているが, これによって 祖母山火山岩類と古生層などの基盤岩などが接しており, 北側の祖母山火山体側が落ちている。 この尾平断層は上記のように弧状断層の性質を有しており, さらにその垂直落差は, 土呂久の北方の構造ボーリング(45EASK-1 ; 通商産業省(1971))の結果から 1,000~1,050 m におよぶと推定されている。 この尾平断層の北東延長部は 新第三紀酸性貫入岩の貫入および阿蘇火砕流堆積物の被覆によって あきらかにすることができないが, ほぼ奥岳川に沿って北東方向に走るものと推定される。

観音滝断層は, 豊栄鉱山のある九折谷から三ツ尾の南方で稜線を横切り東方に走る EW 方向の北落ち断層で, 傾山カルデラ(後述)の陥没の一部を示す断層である。 この断層はさらに東方に走り, 西山 [ 位置不明 ] から大白谷の南方に走り, 半円周状の弧状断層が推定される。

3つの地区の最東部にある九折~大白谷地区の東には NW - SE 方向の大白谷 - 大切峠 おおきりとうげ 断層があって, 火山岩体側がその東の基盤秩父系に対して落ちている。 大白谷 - 大切峠断層の北西延長は大白谷から北西方向に別れて, 清川村 大トガ山 [ ← 湯ノ迫の東南東方 1.5 km ] から弧状形態をとり, しだいに方向を西に転じて [ 湯ノ迫の南西方で ] 駄床川 [ だとこがわ ? ] を横切り, 緒方町 小原 おはる [ ← 湯ノ迫の西方 2 km ] の北方に達する断層となっている。 小原付近では この断層に沿う新第三紀酸性貫入岩類 [ Yp ? ] の貫入を認めるが, これを境にして祖母山火山岩類 [ S* ] と白亜系 大野川層群 [ R2 ] が接しており, 火山体側が落下している。 大白谷 - 大切峠断層の陥没落差は, 大白谷の西方の構造ボーリング(地質図の B42 [ ← 轟岳の南東方 1 km ] ; 42PASK-1 ; 通商産業省(1969))によって推定すると 850~1,050 m の垂直落差である。 さらに注目すべきことは, 隣接の三重町図幅地域において, この断層の南東延長が秩父系の地層のなかに入った所では顕著な水平転位を示し, SW 側が SE 方向に転位した性質を示していることである。

また, 祖母山地区の北, すなわち緩木山の北方においては, EW 系~ENE - WSW 系の断層によって 祖母山火山岩類 [ S* ] と大野川層群 [ R1 ] が接しており, ここでも火山体側が落下している。

以上の諸断層はいずれも火山岩体を落下させた動きのものであるが, それぞれ多少異なった性質をもっている。 また, これらの断層には, 弧状形態や環状に近い形態のものが直線状もしくは屈曲した断層とともに見出される。

これらのなかで観音滝断層は最もカルデラ形態に近いものである。 すなわち, 九折谷を横切って存在しており, その一部には新第三紀酸性貫入岩の珪長岩 [ Yf ] の貫入を見るが, その延長は 三ツ尾の南方~西山 [ 位置不明 ] の南方~大白谷の南方と半円周状の弧状断層として推定される。 さらに この弧状断層は 東北方で大白谷 - 大切峠断層とよんだ NW - SE 系のほぼ直線状の断層に合致するが, その北西では北西方向に別れて, 清川村 大トガ山 [ ← 湯ノ迫の東南東方 1.5 km ] からしだいに方向を西に転じ, 駄床川を横切り緒方町 小原 おばる に達する断層となっている。 これは, 長径(NNW - SSE 方向)が 9 km 以上, 短径(ENE - WSW 方向)が 6 km の楕円状の陥没構造となり, これに対して傾山カルデラと名付けられている。 この傾山カルデラの北西側は, 尾平断層の北東方延長に切られるためか, あまりはっきりしない。

この祖母山火山岩類は, 上述のように見立層を不整合関係で被覆し, 四国の石鎚山の火山岩類と同じく(堀越, 1957). 中新世の火山活動によるものと推定される。 すなわち, 祖母山火山岩類に引き続いて新第三紀 酸性貫入岩類の活動があり, 火山活動 - 半深成活動 - 深成活動と続いており, 大局的に一連の火成活動と見ることができる。

この新第三紀酸性貫入岩類には数種あって, 祖母山火山岩類に対して貫入関係にある。 これに属する宮崎県 大崩山 おおくえやま 産の黒雲母花崗岩の絶対年代は K - Ar 法で 21 m.y.(MILLER et al., 1962), フイッション・トラック法で 20 m.y.(西村・笹島, 1972)とされている。 また, 宮崎県 矢筈岳 やはずだけ 産の黒雲母花崗斑岩の絶対年代は フィッション・トラック法で 19 m.y.(西村・笹島, 1972)である。 これらのことから, 祖母山火山岩類および新第三紀 酸性貫入岩類の時代は中新世初期と考えられる。 そのほかの九州~四国のいわゆる外帯花崗岩類のそれも 11・12・13・14・15・17(いずれも m.y.) の年代測定値が得られており(SHIBATA and NOZAWA, 1968), 中新世の中頃から末期の時代を示している。

祖母山火山岩類は 前述のカルデラ形成期を境にして前期と後期の火山活動に大別される。 カルデラ形成前の前期火山活動はさらにⅠ, Ⅱ, Ⅲ 期に細分され, デイサイト類, 流紋岩類および無斑晶流紋岩類などの降下火砕岩, 火砕流堆積物, 溶岩などの活動である。 カルデラ形成後の後期火山活動は Ⅳ, Ⅴ, Ⅵ 期に細分され, 輝石安山岩類を主とし, 一部にデイサイト類を含む溶岩, 降下火砕岩の活動である。 これらを第 6 表に示す。

第 6 表 祖母山火山岩類の活動表。
Activity of Sobo-san Volcanic Rocks.

祖母山地区 傾山・
本谷山地区
九折・
大白谷地区
後期
(後カルデラ期)
火山岩類
第 Ⅳ 期火山岩類 Aa
A(D)tb
D(一部 tb)
第 Ⅴ 期火山岩類




Aa


Ap
A,tb


Ap
A,tb
Ap
A,tb
Ap
A,tb
Ap
A,tb
Ap
A,tb
Ap
A,tb
第 Ⅳ 期火山岩類 Aa
A,tb
Aa
A,tb
Aa
A,tb
Aa
A,tb
Ap
A,tb
Aa
A,tb
Ap
A,tb
Ap
A,tb
Aa
A,tb
Aa
Aa
A,tb
Aa
A,tb
Aa
A,tb
Aa
休止期(カルデラ形成期)
前期
(先カルデラ期)
火山岩類
第 Ⅲ 期火山岩類 D~D,tb(wt)
D,wt~R,wt
R~D
D,tb
D,tb(wt)
D,wt

D,tb(wt)
D,tb
第 Ⅱ 期火山岩類 L
第 Ⅰ 期火山岩類
D
D,wt
D
D,wt
D
D,t~tb
D,t~D,tb


D,wt


D,t
[ 第 6 表に関する注意書き ]
A : 安山岩, Aa : 無斑晶安山岩, Ap : 斑状安山岩,
D : デイサイト, L : 無斑晶流紋岩, R : 斑状流紋岩,
t : 凝灰岩, tb : 凝灰角礫岩, wt : 熔結凝灰岩

祖母山火山岩類の化学組成を第 7 表に示す。

第 7 表 祖母山火山岩類の化学組成。
Chemical compostion of Sobo-san Volcanic Rocks.

試料番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16
SiO2 66.83 68.31 74.74 75.59 73.29 68.72 73.41 57.80 57.83 58.24 58.35 58.19 58.91 60.79 62.10 66.91
TiO2 0.41 0.56 0.20 0.15 0.22 0.74 0.24 1.03 1.17 1.12 1.27 1.09 1.05 0.95 0.92 0.69
Al2O3 15.80 15.34 13.52 13.35 13.79 15.17 13.63 17.26 16.53 16.98 17.20 17.25 17.10 15.04 16.33 15.31
Fe2O3 0.59 0.64 0.84 1.18 0.39 0.56 1.02 0.63 0.91 2.23 0.86 1.63 2.00 1.08 0.36 1.16
FeO 3.51 3.41 0.83 0.43 1.37 2.80 0.90 5.32 5.10 3.95 5.07 4.38 3.81 4.49 4.92 2.84
MnO 0.07 0.08 0.03 0.02 0.04 0.11 0.04 0.14 0.14 0.13 0.15 0.16 0.13 0.14 0.12 0.11
MgO 1.33 1.54 0.09 0.05 0.23 1.19 0.39 4.54 4.44 3.26 3.90 3.29 2.84 4.70 3.29 1.77
CaO 3.62 2.03 0.67 0.65 1.05 2.00 0.88 7.45 7.55 5.99 7.25 7.84 5.69 5.54 5.30 2.13
Na2O 2.43 3.29 3.28 2.70 3.38 2.67 3.18 2.92 2.67 3.53 2.88 2.65 3.08 2.44 3.04 2.98
K2O 3.84 2.86 4.15 4.47 4.95 3.75 4.69 1.88 2.00 2.15 1.83 1.53 2.58 2.35 2.34 3.59
P2O5 0.15 0.16 0.06 0.05 0.04 0.15 0.05 0.16 0.18 0.23 0.17 0.16 0.24 0.21 0.22 0.20
H2O (+) 0.66 1.33 0.85 0.94 0.86 1.57 0.97 0.55 1.08 1.57 0.96 1.26 1.87 1.69 0.74 1.92
H2O (-) 0.31 0.34 0.36 0.32 0.10 0.28 0.24 0.24 0.22 0.36 0.02 0.32 0.38 0.28 0.02 0.34
Total 99.55 99.89 99.62 99.90 99.71 99.71 99.64 99.92 99.82 99.74 99.91 99.75 99.68 99.70 99.70 99.95
O 26.64 29.58 37.77 41.10 31.08 31.38 34.05 9.30 11.22 11.58 11.88 14.82 13.80 17.40 16.68 27.60
C 1.53 3.37 2.35 2.86 0.92 3.37 1.63 - - - - - - - - 2.96
or 22.24 17.24 25.02 26.69 29.47 22.24 27.80 11.12 11.68 12.79 10.56 8.90 15.57 13.90 13.90 21.13
ab 20.44 27.77 27.77 23.06 28.82 22.53 27.25 24.63 22.53 29.87 24.63 22.53 26.20 20.44 25.68 25.15
an 16.96 9.17 3.06 3.06 5.00 9.17 4.17 28.63 27.24 24.19 28.63 30.86 25.02 23.07 23.91 9.73
wo - - - - - - - 3.13 3.94 1.51 2.78 3.02 0.58 1.04 0.23 -
en 3.30 3.90 0.20 0.10 0.60 3.00 1.00 11.40 11.10 8.20 9.80 8.20 7.10 11.80 8.20 4.40
fs 5.41 4.88 0.59 - 1.85 3.70 0.59 7.79 6.86 3.83 6.73 5.15 3.70 6.07 7.52 3.30
mt 0.93 0.93 1.16 0.93 0.70 0.93 1.39 0.93 1.39 3.25 0.76 2.32 3.02 1.62 0.46 1.62
hm - - - 0.64 - - - - - - - - - - - -
il 0.76 1.06 0.46 0.30 0.46 1.37 0.15 1.98 2.28 2.13 2.43 2.13 2.13 1.82 1.67 1.37
ap 0.34 0.34 0.13 0.12 0.10 0.34 0.12 0.34 0.34 0.67 0.34 0.34 0.67 0.67 0.67 0.34
[ 第 7 表に関する注意書き ]
分析者
1 : 石橋澄, 2~16 : 東京石炭鉱物研究所
祖母山火山岩類の試料
第 Ⅰ 期火山岩類
1 : Hornblende-bearing biotite - quartz dacitic welded tuff(M66-250),
大分県 大野郡 緒方町 豊栄鉱山 観音滝の東方(上流), 標高 570 m
2 : Hornblende-bearing biotite - quartz dacitic welded tuff(5282715),
大分県 大野郡 緒方町 豊栄鉱山の南南東 1,800 m, アクタ神~九折越間5合目, 標高 840 m
第 Ⅱ 期火山岩類
3 : Lithoidite(5282806),
大分・宮崎県境, 本谷山の西方 400 m, 本谷山~三国岩間, 標高 1,530 m
4 : Lithoidite(5282802),
大分・宮崎県境, 本谷山の東方 1,000 m, 本谷山~笠松間, 標高 1,560 m
第 Ⅲ 期火山岩類
5 : Biotite rhyolite(72072303),
宮崎県 西臼杵郡 上野村 田井本の北方 1,000 m, 標高 610 m
6 : Hornblende-bearing biotite - quartz dacitic welded tuff(M66-223),
大分・宮崎県境, 傾山の南西方 450 m, 傾山直下, 標高 1,400 m
7 : Rhyolitic welded tuff(72072302),
宮崎県 西臼杵郡 高千穂町 五ケ所の南西 1,700 m, 標高 820 m
第 Ⅳ 期火山岩類
8 : Augite-bearing aphyric andesite(68072814),
大分県 大野郡 緒方町 上畑, 標高 400 m
9 : Augite- and ortho-pyroxene-bearing aphyric andesite(M66-100),
宮崎県 西臼杵郡 高千穂町 惣見上流の官行事務所の南東方 100 m, 官行~尾平トンネルの道路端, 標高 1,010 m
10 : Augite-bearing aphyric andesite(K72072804),
宮崎県 西臼杵郡 高千穂町 五ケ所岳の北東方 2,000 m, 標高 1,320 m
11 : Augite- and ortho-pyroxene-bearing aphyric andesite(H68080203),
大分県 大野郡 緒方町 中村の西方 700 m, 標高 600 m
第 Ⅴ 期火山岩類
12 : Augite-bearing aphyric andesite(KT72072708),
大分県 竹田市・緒方町境界の大障子岩の北方 300 m, 標高 1,380 m
13 : Ortho-pyroxene - augite andesite(68080305),
大分県 大野郡 緒方町 湯ノ迫の南東方 1,100 m, 標高 400 m
14 : Ortho-pyroxene - augite andesite(68073006),
大分県 大野郡 緒方町 上滞迫の東南東方 1,800 m, 駄床川の上流, 標高 750 m
15 : Ortho-pyroxene - augite andesite(660088),
大分県 大野郡 緒方町 尾平鉱山の西南西方 1,800 m. 標高 980 m
第 Ⅵ 期火山岩類
16 : Quartz dacite(KT72072710),
大分県 竹田市・緒方町境界の大障子岩の北東方 600 m, 標高 1,320 m
[注]
下線付きの番号の試料の採取地点は地質図上に同番号の記号で示されている。
下線なしの番号の試料の採取地点は本図幅の南隣の三田井図幅地域内。

V.2.1 前期火山岩類

V.2.1.1 第 Ⅰ 期火山岩類(S1-dwt, S1-dt)

デイサイト質の火砕岩で代表され, 一部に溶岩流を含むが, この溶岩流は竹田図幅地域内においては確認されていない。 地表における分布は傾山・本谷山地区を主とし, 祖母山地区においては [ 本図幅の南に ] 隣接の三田井図幅地域の土呂久鉱山北方におけるボーリング(第 21 図)によって 地下 328 m 以深で確認されている。 しかるに 九折・大白谷地区の観音滝断層の内側では, 地表はもちろん, 大白谷のボーリングによる 1,010 m の深度まで この Ⅰ 期を含む前期噴出物は全く見出されていない [ ← 地質断面図 A - E によると E の付近の地表に S1-dwt が露出しているが, 地質図の南東隅にはそれは表示されていない ]

第 21 図 祖母山前記火山岩類の地表の総合柱状図(左)と土呂久ボーリング柱状図(右)。
Generalized columnar section of Early Volcanic Rocks of Sobo-san Volcanic Rocks (left) and the columnar section of the drill-hole to the north of Toroku in Mitai district (right).

[ 第 21 図に関する注意書き ]
柱状図に用いられている記号の記載は省略する。

第 Ⅰ 期活動の初期には降下火山灰としての凝灰岩の生成があり, [ 本図幅の南隣の三田井図幅地域内の ] 本谷山の南方斜面(本谷)に20 m 以下の厚さをもって分布し, 見立層 [ M ] を被覆する。 これに相当するものは, 第 21 図に示すように, 土呂久の北方のボーリングにおいて 713 m 以深に 約 236 m の層厚を有するデイサイト質疑灰角礫岩のホルンフェルスとして認められる。

次いでこの地域で最も規模の大きいデイサイト質火砕流の活動がある。 これは主として [ 本図幅の南隣の三田井図幅地域内の ] 本谷山・傾山の斜面から [ 本図幅の南東隣の熊田図幅地域内の ] 杉ガ越~新百姓山に認められ, この図幅地域では 傾山の西面の標高 700 m 付近と上畑の南方の 689 m 三角点の周囲に分布している。 これらは溶結度の高い溶結凝灰岩 [ S1-dwt ] となっている。 しかし, ホルンフェルス化作用のため脱ガラス化もいちじるしく, 一見すると溶岩状を呈するため, 従来は斑状流紋岩として記載されていたものである。

このデイサイト質溶結凝灰岩 [ S1-dwt ] の厚さは一般に 150 m 以上あり, 断面作図によると 200 m 以上の部分もある。 岩相の変化は比較的少く, flow unit 間の境界は強溶結とホルンフェルス化作用のため不明瞭である。 しかし, 三田井図幅地域の土呂久の北方のボーリングの岩芯では 2 m の凝灰岩状の部分があり, これは flow unit の境界を示すものと推定される。 おそらく短期間で数回の流出があり, simple cooling unit [ 以下の [注] 参照 ] を形成したものであろう。 土呂久の北方のボーリングにおいては, 第 21 図に示すように -328 m から -713 m にかけて, 下位よりデイサイト質溶岩(80 m 厚), 同質溶結凝灰岩(100 m 厚), 同溶岩(40 m 厚), 同質溶結凝灰岩(110 m 厚), 同溶岩(50 m 厚)と互層する。 したがって, ボーリングの結果では, 約 210 m の溶結凝灰岩の間に 40 m の溶岩が挟まれていることになり, このような事実は地表で確認されなかったのであるが, 層厚 100 m と 110 m の2枚の cooling units を形成しているのかもしれない。 竹田図幅地域では分布面積も狭く, 詳細なことをあきらかにすることはできない。

[注]
simple cooling unit は以下の論文による。
Smith,R. L.(1960): Ash flows. Bull. Geol. Soc. America,vol. 71,p. 795~842.

前述したデイサイト質の火砕流と溶岩流の活動につづいて, デイサイト質の降下火砕岩としての凝灰岩~凝灰角礫岩 [ S1-dt ] の活動がある。 これは 九折越の北方のアクタ神滝の上流(標高約 900 m 付近)から 観音滝の東方にかけて発達しており [ ← 地質図上で確認できない ] , 層厚 50 m 以下である。

[ V.2.1.1.1 第 Ⅰ 期火山岩類の ] 岩石記載

1) 石英デイサイト質溶結凝灰岩 [ S1-dwt ]

この溶結凝灰岩は淡灰色~灰褐色を呈するちみつな塊状岩であり, 一見すると溶岩のようであるが, 注意深く観察すると レンズ状に引き伸ばされた溶結構造をもっており, これは新鮮な面より風化面の方が識別し易い。 このレンズは本質レンズであって, その原岩は軽石~黒曜岩であると推定されるが, この部分も脱ガラス化作用を受けて レンズ以外の性質と大差ない。 また, 肉眼的の見掛けはやや異なるものがあるが, 成分鉱物の種類には大差ない。 一般に斜長石, 石英およびカリ長石が目立つ岩石で, 一見 斑状岩である。 また, これは曹長石化や絹雲母化などの変質をかなり受けていると同時に, 新第三紀酸性貫入岩類の影響を受けてホルンフェルス化していることが多い。 そのため有色鉱物は肉眼ではっきりしない。

第 22 図 角閃石石英デイサイト質溶結凝灰岩(5282715)。 祖母山火山岩類の第 Ⅰ 期火山岩類。 溶結構造を示す基地の中に融食形の石英(Q), 斜長石(P), カリ長石などをみとめる。 (a) は開放ニコル, (b) は十字ニコル。
Hornblende - quartz dacitic welded tuff. 1st stage of Sobo-san Volcanic Rocks.
Q : quartz, P : plagioclase, (a) : open nicols, (b) : crossed nicols.

(角閃石)黒雲母石英デイサイト質溶結凝灰岩
産地
大分県 大野郡 緒方町 豊栄鉱山 観音滝の東方(上流) , 標高 570 m
大分県 大野郡 緒方町 豊栄鉱山の南南東 1,800 m,
アクタ神~九折越間の5合目, 標高 840 m(三田井図幅地域 ; 第 22 図)
化学組成
SiO2 : 66.83 %(第 7 表の試料 1)
SiO2 : 68.31 %(第 7 表の試料 2)

斑状鉱物 : 石英・斜長石・カリ長石・黒雲母・(角閃石)

斜長石がもっとも多く, 次に石英が多い。 斜長石は 0.5~2.5 mm の長柱状の自形~破片状を示し, アルバイト式双晶, アルバイト・カルルスバッド式双晶を認める。 一般に中性長石~灰曹長石に属するが, 絹雲母化, 曹長石化を受けたものが多い。 カリ長石は斜長石より量がはるかに少なく, 1.5 mm 以下の長柱状自形~半自形~破片状を示し, サニディンとしての光学的性質を示すものがある。 石英はふつうは 1.5 mm 以下の融食形~破片状を示す。 黒雲母は少量で, ふつうは 1 mm 以下であり, 暗褐色~淡褐色の多色性を示すが, しばしば緑泥石化して緑色を帯びるものやオパサイ卜になっているものが多い。 角閃石はオパサイトになって仮像をなしているものをまれに認めるのみである。

基質 : 石英・斜長石・カリ長石・黒雲母

一般には潜晶質または珪長質に近く, また著しく変質しており, 鉱物各個を識別し難いことか多い。 脱ガラス化作用のためガラスは少ない。 開放ニコルで溶結凝灰岩の特徴がよく認められるものもあるが, ホルンフェルス化作用が著しいと識別し難いものもある。 また, ホルンフェルス化作用のための黒雲母を多量に生じていることもある。

副成分鉱物 : ジルコン・ざくろ石・燐灰石・チタン鉄鉱・磁鉄鉱
2次的鉱物 : 曹長石・絹雲母・黒雲母・緑泥石

2) 石英デイサイト

本岩は淡灰色~灰色を呈するちみつ・堅硬な塊状岩である。 石英および斜長石が目立つ斑状岩である。 本岩は 現在までに 三田井図幅地域の 高千穂町 土呂久鉱山の北方のボーリングの岩芯にのみ認められているのであるが, ここではホルンフェルス化, 曹長石化, 絹雲母化, 炭酸塩化などの諸作用を受けている。 そのため有色鉱物は肉眼ではあきらかではない。

黒雲母石英デイサイト
産地
宮崎県 西臼杵郡 高千穂町 土呂久の北方 2,000 m のボーリングの岩芯,
孔口深度 331 m( [ 巻末の ] 第 Ⅱ 図版 1)および 367.2 m

斑晶 : 石英・斜長石・カリ長石・黒雲母

斜長石がもっとも目立ち, それに石英が散在する。 斜長石は 0.5~2.5 mm の長柱状自形を示し, アルバイト式双晶, アルバイト・カルルスバッド式双晶が発達し. 累帯構造もふつうに発達する。 成分は中性長石~灰曹長石に属するが, 絹雲母化, 曹長石化を受けたものが多い。 カリ長石はまれに存在し, 1 mm 以下の長柱状自形を示し, サニディンの光学的性質を示す。 石英は 1~2 mm, ときに 3 mm に達し, 高温型自形~半自形を示す。 黒雲母は少量でふつうは 1 mm 以下で, しばしは緑泥石化していたり微細な黒雲母の集合状に変化している。 また, 角閃石の仮像らしきものを認めるが, これはあきらかでない。

石基 : 石英・斜長石・カリ長石・黒雲母

一般にピロタキシティック~毛せん状組織を示している。 短冊状の斜長石の間を石英, カリ長石が埋めている。 また, 黒雲母を認めるが, ホルンフェルス化作用で生じたものか, 初生的なものかの識別が困難である。

副成分鉱物 : ジルコン・燐灰石・ざくろ石・鉄鉱物
2次的鉱物 : 曹長石・絹雲母・黒雲母・緑泥石・方解石・電気石

V.2.1.2 第 Ⅱ 期火山岩類(S2)

第 Ⅰ 期火山岩類に引き続く第 Ⅱ 期の火山活動は 無斑晶流紋岩(以下では「リソイダイト」とよぶ) [ S2 ] の溶岩によって代表される活動である。 これは 主として三田井図幅地域に分布し, 一部が竹田・三重町・熊田各図幅地域に発達する。 すなわち, 本谷山~傾山周辺~杉ガ越の西面および東面, 西山 [ 位置不明 ] の南面に大規模に発達し, 祖母山地区と九折・大白谷地区には認められない。 竹田図幅地域においては傾山の西斜面と東斜面とに分布・発達する。 西斜面のそれは標高約 750~800 m 付近から 1,000 m 付近にかけて, 第 Ⅰ 期火山岩類の降下火砕岩 [ S1-dt ] を被覆して発達する。 東斜面のそれは 南海部 みなみあまべ 宇目 うめ 町の標高約 850 m から 1,000 m 付近にかけて, 第 Ⅰ 期火山岩類のデイサイト質溶結凝灰岩 [ S1-dwt ] を被覆して発達している。 これらは大部分が溶岩流であり, 一部に凝灰角礫岩を挟む。 その全層厚は 300 m 以上に達する。

[ V.2.1.2.1 第 Ⅱ 期火山岩類の ] 岩石記載

1) リソイダイト(無斑晶流紋岩)

この岩石は暗灰~青灰~淡褐色を示し, 風化面は灰白~淡黄褐色を呈し, 著しい流理構造は細かい屈曲~弯曲を示し, また, しばしば球顆構造を有している。 このリソイダイトが, 球顆を多く含むにもかかわらず, 肉眼でも鏡下においてもガラス質のところは全く認められない。 これは単なる脱ガラス化作用のみならず, 花崗岩類による熱変成作用を全面的に受けていることに起因するものであろう。

第 23 図 リソイダイト(5282802)。 祖母山火山岩類の第 Ⅱ 期火山岩類。 著しい流理組織をもつリソイダイトの中で球顆組織をもった部分である。 球顆はやや放射状に石英とカリ長石が共生しており, 球顆組織の間に緑色の黒雲母がみとめられる。
(a) : 開放ニコル。 (b) : 十字ニコル。
Lithoidite. 2nd Stage of Sobo-san Volcanic Rocks.
(a) : open nicols, (b) : crossed nicols.

リソイダイト(無斑晶流紋岩)
産地
大分・宮崎県境, 本谷山の西方 400m,
本谷山~三国岩間, 標高 1,530 m(三田井図幅地域 ; 第 Ⅱ 図版 2)
大分・宮崎県境, 本谷山の東方 1,000 m,
本谷山~笠松間, 標高 1,560 m(三田井図幅地域 ; 第 23 図)
化学組成
SiO2 : 74.74 %(第 7 表の試料 3)
SiO2 : 75.59 %(第 7 表の試料 4)

斑晶 : なし
石基 : 石英・斜長石・カリ長石・黒雲母

石基は潜晶質であり, 各鉱物の判別は困難である。 ガラスはほとんどないが, 前述のように熱変成のためであろう。 流理を示す縞状の組織は粒度の差, 構成鉱物の差, 球顆の並びなどによって生じている。 また, しばしば見られる球顆は放射状に石英とカリ長石が共生, および微文象組織の発達によって作られている。 また, やや粗粒の結晶あるいは球顆の間は しばしば緑色を呈する雲母によって埋められている。 ガラスはきわめて少量みとめられる。

副成分鉱物 : ジルコン・燐灰石・ざくろ石・鉄鉱物
2次的鉱物 : 曹長石・絹雲母・緑泥石・方解石

V.2.1.3 第 Ⅲ 期火山岩類(S3-dt1, S3-d, S3-d', S3-dwt, S3-dt2)

第 Ⅱ 期のリソイダイトの活動に引き続いてデイサイト質~流紋岩質岩類の活動がある。 これは降下火砕岩, 火砕流堆積物によって代表されるが, 一部に溶岩を含む活動である。 傾山・本谷山地区および祖母山地区に分布し, 一部は大白谷地区にも発達する。 竹田図幅地域における分布は 傾山周辺, 大白谷の上流の西山 [ 位置不明 ] の東方の山麓, および祖母山地区における尾平鉱山周辺, 竹田市 神原 こうばる の上流付近, 熊本県 阿蘇郡 高森町 神原 こうら [ ← 越敷岳の南南西方 1 km ] の上流から越敷岳の一帯である。

第 Ⅲ 期下位の凝灰角礫岩 [ S3-dt1 ? ] は一部に降下火砕岩としての凝灰岩および火砕流堆積物を挟み, 全層厚 300 m に達する。 これは地表においては傾山・本谷山地区にのみ分布しており, 祖母山地区では地表で認められない。 しかし, 三田井図幅地域の土呂久の北方のボーリングにおいては地表下 162 m に断層があり, その下位に層厚 165 m に亘って発達している(第 21 図)。 竹田図幅地域の傾山の西斜面においては, 第 Ⅱ 期のリソイダイト [ S2 ] を被覆して標高約 1,000 m から 1,300 m にかけて発達する。 また傾山の東斜面においては, 標高約 1,000 m 付近に小規模にリソイダイトを覆って発達している [ ← 地質図の南東隅付近では確認できないが, 地質断面図 A - E の E の付近で確認できる ]

前述の凝灰角礫岩 [ S3-dt1 ] に続くと考えられる活動は斑状流紋岩(~デイサイト)溶岩 [ S3-d ] の活動である。 これは祖母山地区にのみ認められる。 すなわち, 竹田市 神原の上流の 白水 しろず の極めて狭い分布, 大分・熊本県境の越敷岳周辺, および隣接の三田井図幅地域の上野村 田井本の上流である。 神原の上流の白水では, 本岩を被覆して凝灰角礫岩 [ S3-d' ? ] の薄層, デイサイト質火砕流堆積物 [ S3-dwt ? ] が重なっている(第 24 図)。 上野村 田井本では本岩を被覆して後期火山岩類が発達している。 その他との関係はあきらかでなく, 細かな層序的関係が不明な点もある。 松本・宮久(1973)の報告では不明のままあつかっていたが, 竹田市 白水の露出から 本岩は第 Ⅲ 期デイサイト質火砕流の活動前のものと推定される。 一方, 越敷岳付近に露出する [ S3-d の ] 岩体は 一部に降下火砕岩 [ S3-d' ? ] を挟むが, 厚さ 300 m を越し, 産状が不自然な所もある。 これは越敷岳付近がこの岩体の噴出点に近いことによるのか, あるいは断層などが存在して不自然な産状になっているのか, あきらかでない。 さらに, この岩体に連続すると考えられるものが [ 越敷岳の北西方~西方 2.5~2 km の ] 大分・熊本県境の二俣~永野間, [ 越敷岳の西南西方 2 km 強の ] 熊本県 高森町 高群 たかむれ 付近で阿蘇溶結凝灰岩 [ A4W ? ] 中に地窓として小規模に露出している。

第 24 図 祖母山火山岩類第 Ⅲ 期のデイサイト溶岩(L)を被覆して発達する 第 Ⅲ 期のデイサイト質溶結凝灰岩(T)。 ハンマーの左右の破線が両岩の境界。 竹田市 神原の上流の白水。
Dacitic welded tuff covering dacite lava, both of 3rd Stage of Sobo-san Volcanic Rocks.

第 25 図 祖母山火山岩類第 Ⅲ 期のデイサイト質溶結凝灰岩 [ S3-dwt ]
Dacitic welded tuff. 3rd Stage of Sobo-san Volcanic Rocks.

これに続くと考えられる活動はデイサイト質火砕流の活動である。 この火砕流堆積物 [ S3-dwt ] は溶結度の高い溶結凝灰岩として祖母山地区と傾山地区とに分布する(第 25 図)。 傾山の山頂の周縁においては, 第 Ⅲ 期下位の降下火砕岩 [ S3-dt1 ] を被って 100~150 m の厚さで分布しており, 北東方向にゆるく傾斜(10~15°)している。 祖母山地区の尾平鉱山周辺 [ ← 図幅地域南端・東西中央付近 ? ] においては 150 m の層厚でゆるく南に傾斜(20°前後)しており, 竹田市 神原の上流の白水付近においては デイサイト質溶岩流 [ S3-d ] を被覆して約 250 m の層厚で分布している(第 24 図)。 また, 南隣の三田井図幅地域においては土呂久鉱山の上流付近に小規模に分布し, 土呂久の北方のボーリングでは 深度 50 m から 161 m の断層まで 110 m の厚さが認められている。 このボーリング岩芯では 厚さ 1 m 以下の降下火砕岩としての凝灰岩 [ S3-d' ? ] を3枚以上挾み, これらは flow unit の境界を示すものと考えられる。 すなわち, 第 Ⅰ 期の火砕流と同じように短期間で数回の流出があり, simple cooling unitを形成したものであろう。 また, 高千穂町 河内の北方の国見岳 [ ← 河内の南方の国見ヶ岳 ? ] から 崩野峠 くえのとうげ にかけては, 流紋岩質の火砕流堆積物 [ S3-d ? ] が約 300 m の層序で発達している。

この火砕流に続いてデイサイト質凝灰角礫岩 [ S3-dt2 ] の活動があり, 一部にリソイダイト質凝灰角礫岩・凝灰岩・火砕流堆積物および溶岩流を挟み, この火砕流堆積物の中には普通輝石石英デイサイト質溶結凝灰岩がみとめられる。 この石英デイサイト(安山岩)質凝灰角礫岩は祖母山地区と傾山地区とに発達している。 傾山地区では, 観音滝断層以南において傾山の山頂付近から北東方にゆるく傾斜しており, 火砕流堆積物を被って 250 m 以上の層厚で発達している。 さらに一部は, 大白谷 - 大切峠断層に沿って分布している。 祖母山地区では, 竹田市 神原の上流一帯にかけて約 300 m の層厚で発達しており, 火砕流堆積物 [ ← Aso-4A 火砕流の堆積物(A4W)? ] を被っている。 また, 一部は 熊本県 高森町 神原 こうら の上流から [ その南方の ] 三田井図幅地域の熊本・宮崎県境の 筒ガ岳 つつがたけ [ ← 越敷岳の南方 ; 標高 1291 m ] の周縁にかけて約 150 m の厚さで, また, 土呂久鉱山の上流域では 18 m の厚さで火砕流堆積物を被って発達している。

[ V.2.1.3.1 第 Ⅲ 期火山岩類の ] 岩石記載

1) 流紋岩

この流紋岩~デイサイトは灰青色~黄灰色~淡黄灰色などを呈するちみつな塊状岩であり, 粗大なカリ長石, 斜長石と融食された石英など斑晶が目立つ顕晶質斑状岩である。 場所により石英斑晶の量の差があり, 流紋岩とした方がよいものとデイサイトとした方がよいものの両者がある (第 26 図)。

第 26 図 黒雲母デイサイト(KT72072806)。 祖母山火山岩類の第 Ⅲ 期火山岩類のデイサイト溶岩。 竹田市 尾村 [ ← 越敷岳の北北東方 2 km ] の南方 1,800 m の越敷岳中腹の標高 840 m。 微細な鉱物の珪長岩質組織をなす石基の中に 融食形を示す大きな石英斑晶(Q)がみとめられる。 他の場所では斜長石, カリ長石がみとめられる。 開放ニコル。
Biotite dacite. 3rd Stage of Sobo-san Volcanic Rocks. Q : corroded quartz phenocryst.

黒雲母流紋岩
産地
大分・熊本県境, 越敷岳の北方 350 m, 標高 930 m
大分県 竹田市 神原の上流の白水, 標高 500 m
宮崎県 西臼杵郡 上野村 田井本の北方 1,000 m, 標高 610 m(三田井図幅地域)
化学組成
SiO2 : 73.29 %(第 7 表の試料 5 ; 田井本の北方産)

斑晶 : カリ長石・斜長石・石英・黒雲母

カリ長石がもっとも多く, 石英・斜長石がこれに次ぐ。 カリ長石はふつう 1~5 mm, 最大 1 cm におよぶ粗大なもので, 長柱状~短柱状の自形を示すが, 一般に角がとれで丸味をもっており, 時にカルルスバッド式双晶をなし, サニディンの光学性を示す。 また. 曹長石とともにパーサイト組織を示している。 これらカリ長石はカオリン化, 絹雲母化作用を受けたものが多く, そのため汚濁された感じである。 斜長石はカリ長石に比しはるかに量が少なく, 0.5~2 mm の長柱状~短柱状のやや丸味をもった自形を示し, アルバイト式双晶をなしており, 一般に灰曹長石~曹長石に属す。 カオリン化, 絹雲母化, ときに炭酸塩化作用を受けたものが多く, 汚濁された感じである。 石英はふつう 2 mm 以下の融食状をなしている。 黒雲母は大部分が緑泥石化して仮像をなしたものが大部分であり, ふつう 1 mm 以下である。

石基 : 石英・カリ長石・斜長石・黒雲母

一般には珪長岩質~微文象組織をなしており, 流理組織をみとめることがある。 2次的な諸作用のため個々の鉱物の判別が困難なこともある。 微細な鉱物は主として石英・カリ長石・斜長石であり. その間隙には緑色を呈する黒雲母などがあり, ガラスはほとんどみとめられない。

副成分鉱物 : ジルコン・燐灰石・ざくろ石・鉄鉱物
2次的鉱物 : 絹雲母・緑泥石・カオリン・方解石

2) デイサイト質溶結凝灰岩~流紋岩質溶結凝灰岩

この溶結凝灰岩は淡灰色~灰褐色を呈し, ちみつな塊状岩であるため, 一見すると溶岩と同様な外観を示す。 しかし, 注意深く観察すると, 第 Ⅰ 期の火砕流堆積物の溶結構造と同じように レンズ状に引き伸ばされた構造が見られる。 これは新鮮な面より風化面の方が識別し易い。 これは本質レンズであって, 原岩は軽石~黒曜岩であると推定される。 この部分は脱ガラス化作用を受けて全くガラスがなく, レンズ以外の部分の性質と大差ない。 また, 肉眼的な見掛けはやや異なるものがあるが, 成分鉱物の種類にはほとんど大差ない。 しかし, 三田井図幅地域の土呂久鉱山の上流およびボーリングに見られる溶結凝灰岩は, レンズの部分が緑泥石化などのために他の地域のものに比して識別し易い。 また, 三田井図幅地域の高千穂町 河内の北方の 崩野 くえの 峠に分布するものは他の地域のものに比してより酸性であり, 成分鉱物もカリ長石や石英が量的に多い。 一般に斜長石, カリ長石および石英が目立つ岩石で, 一見 斑状火山岩のようである。 また, これらは曹長石化, 絹雲母化, 緑れん石化, 緑泥石化, 炭酸塩化などの諸作用をかなり受けていると同時に, 花崗岩類などの熱変成を受けてホルンフェルス化作用を受けていることが多い。 そのため, 有色鉱物は肉眼でほとんど不明である。

第 27 図 デイサイト質溶結凝灰岩(M66-223)。 祖母山火山岩類の第 Ⅲ 期火山岩類。 大分・宮崎県境の傾山の南西方 450 m の傾山の直下。 溶結組織を示す基地中に破片状の石英(Q) , 斜長石(P)がみとめられる。 また, おそらく黒雲母から変ったと思われる緑泥石がみとめられる。 十字ニコル。
Dacitic welded tuff. 3rd Stage of Sobo-san Volcanic Rocks. Q : quartz, P : plagioclase.

(角閃石)黒雲母石英デイサイト質溶結凝灰岩
産地
大分・宮崎県境の傾山の南西方 450 m の傾山の直下,
標高 1,400 m(三田井図幅地域 ; 第 27 図)
大分県 竹田市 白水の上流のヒーバチ滝, 標高 580 m
化学組成
SiO2 : 68.72 %(第 7 表の試料 6 ; 傾山の南西方)

斑状鉱物 : 石英・斜長石・カリ長石・黒雲母・(角閃石)

斜長石がもっとも多く, 石英・カリ長石がこれに次ぐ。 斜長石は 0.5~3 mm の長柱状~短柱状の自形~半自形~破片状を示し, アルバイト式双晶, アルバイト・カルルスバッド式双晶が見られる。 成分は中性長石~灰曹長石に属するが, 絹雲母化, カオリン化, 曹長石化などを受けている。 カリ長石は量的に斜長石よりはるかに少なく, 2 mm 以下の長柱状の自形~半自形~破片状を示し, サニディンとしての光学的性質を示している。 石英はふつう 2 mm 以下の融食形~破片状を示す。 黒雲母は緑泥石化した仮像が多く, まれに暗褐色~淡褐色の多色性をもつものが残っている。 また, オパサイト化しているものもある。 角閃石はオパサイト化した仮像が主であるが, まれに 1 mm 以下の緑色角閃石をみとめる。

基質 : 石英・斜長石・カリ長石・黒雲母

基質は一般に潜晶質または珪長岩質組織に近く, また, レンズの部分が微文象組織を示すことがある。 また, 著しく変質しており, 鉱物各個を識別し難いことが多い。 脱ガラス化作用のためガラスは少ない。 鏡下で溶結凝灰岩の特徴がよく認められるものもあるが, 熱変質の影響などで識別困難なこともある。 有色鉱物はほとんど二次的鉱物の緑泥石などに変っている。

副成分鉱物 : ジルコン・燐灰石・ざくろ石・チタン鉄鉱・磁鉄鉱
二次的鉱物 : 絹雲母・曹長石・緑泥石・方解石・ざくろ石・緑れん石
流紋岩質溶結凝灰岩
産地
宮崎県 西臼杵郡 高千穂町 五カ所の南西 1,700 m,
標高 820 m(三田井図幅地域 ; [ 巻末の ] 第 Ⅱ 図版 3)
化学組成
SiO2 : 73.41 %(第 7 表の試料 7)

斑状鉱物 : カリ長石・斜長石・石英

カリ長石がもっとも多く, 石英・斜長石がこれに次ぐ。 カリ長石はふつう 1~3 mm の長柱状~短柱状の自形~半自形~破片状を示し, ときにカルルスバッド双晶をみとめる。 また, 曹長石とともにパーサイト組織をなしている。 さらにカオリン化や絹雲母化作用を受け, 汚濁されたものが多い。 斜長石はカリ長石に比して量がはるかに少なく, 2 mm 以下の長柱状~短柱状の自形~半自形~破片状を示し, アルバイト式双晶, アルバイト・カルルスバッド式双晶をなし, 成分は灰曹長石~曹長石に属している。 これら斑状斜長石はカオリン化, 絹雲母化, 炭酸塩化作用を受けたものが多く, 汚濁されたものが多い。 石英はふつう 2.5 mm 以下の融食状~破片状をなしている。 有色鉱物は二次的鉱物の緑泥石などに変っているが, おそらく黒雲母であって, 1 mm 以下である。

基質 : 石英・斜長石・カリ長石・黒雲母

基質は一般に潜晶質または珪長岩質組織である。 ときには著しく変質しており, 各鉱物を識別し難いことがある。 ホルンフェルス化作用などのために脱ガラス化しており, ガラスはほとんど認められない。 また, これらの作用のために鏡下で溶結構造の特徴があまり認められない。 有色鉱物はほとんど二次的鉱物の緑泥石などに変っている。

副成分鉱物 : ジルコン・燐灰石・ざくろ石・チタン鉄鉱・磁鉄鉱
二次的鉱物 : 絹雲母・緑泥石・方解石

V.2.2 後期火山岩類

祖母山火山岩類の第 Ⅲ 期活動ののち, 前述のような火山岩体陥没をもたらすカルデラ, あるいはそれに類似の構造運動が行なわれ, 次いで後期の火山活動となる。

前期火山活動の噴出物は珪長質の岩石で, 灰白色その他おおむね明るい色調を有しているのにくらべ, 後期火山活動の噴出物の主体をなす Ⅳ 期~Ⅴ 期のものは暗色の輝石安山岩であり, いちじるしい対照をなしている。

V.2.2.1 第 Ⅳ 期火山岩類(S-aa・S-at・S-ap の一部)

第 Ⅳ 期火山岩類は無斑晶質輝石安山岩(斑晶は存在するが小斑晶であり, 一見すると無斑晶質岩に見えるので このように呼んでおく)の溶岩 [ S-aa ] と同質 凝灰角礫岩 [ S-at ? ] で代表されるが, 祖母山地区の下部・中部には斑状輝石安山岩の溶岩 [ S-ap ] と同質 凝灰角礫岩 [ S-at ? ] がみとめられる。

祖母山地区においては, 大分県側の尾平鉱山の上流域には降下火砕岩 [ 以下の [注1] 参照 ] として凝灰角礫岩 [ S-at ? ] しか認められないが, 無斑晶質輝石安山岩 [ S-aa ] は祖母山の北東方の大障子岩から前障子岩 [ 以下の [注2] 参照 ] の中腹~山麓からその北東の山域に広く分布発達する。 また, 祖母山の北方斜面から緩木山および筒ガ岳にかけても広く分布する。 さらに, 祖母山の南方の 親父山 おやじやま の南面などに広く分布する。 一方, 九折・大白谷地区においては観音滝断層の北側にかけて分布している。

[注1]
この降下火砕岩は, 松本・宮久(1973)の報告では第 Ⅴ 期の火山噴出物としていたが, その後の調査によって各期の分布がよりあきらかになり, 第 Ⅳ 期の噴出物と考えるにいたった。
[注2]
5万分の1地形図では 南西側の大障子岩(1,458 m)と 北東側の障子岩(1,409 m)と似たような地名か2つあるが, ふつうは南西側の 1,458 m 峯を大障子, 北東側の 1,409 m 峯を前障子と呼んでいる [ ← 地質図上でもそのように記されている ] 。

祖母山の北西方~緩木山~祖母山の北面においては, 第 Ⅲ 期火山岩類の上部のデイサイト質凝灰角礫岩 [ S3-dt2 ] を直接おおって 2枚の無斑晶輝石安山岩溶岩 [ S-aa ] と同質 凝灰角礫岩 [ S-at ? ] , これをおおう2枚の斑状輝石安山岩溶岩 [ S-ap ] と同質 凝灰角礫岩 [ S-at ? ] , および, それをおおう2枚の無斑晶輝石安山岩溶岩 [ S-aa ] と同質凝灰角礫岩 [ S-at ? ] からなる。 三田井図幅地域の祖母山の西方から筒ガ岳にかけては, その北方の緩木山から続く斑状輝石安山岩溶岩流 [ S-ap ] が第 Ⅳ 期の輝石安山岩質凝灰角礫岩 [ S-at ? ] をおおって分布しており, さらにこれを被覆して斑状輝石安山岩 [ S-ap ] が発達する。 祖母山の北東方の前障子岩の西面~北面~東面においては, 斑状輝石安山岩溶岩流 [ S-ap ] をおおって 少くとも4枚の無斑晶輝石安山岩溶岩流 [ S-aa ] とその間に同質凝灰角礫岩 [ S-at ? ] が発達する。 また, 障子岩 [ ← 前障子岩 ? ] の東面から南西にかけては, 斑状輝石安山岩溶岩 [ S-ap ] , 同質 凝灰角礫岩 [ S-ap ? ] , 無斑晶輝石安山岩溶岩 [ S-aa ] , 輝石安山岩質凝灰角礫岩 [ S-at ? ] , 斑状輝石安山岩溶岩 [ S-ap ] , 無斑晶輝石安山岩溶岩 [ S-aa ] とかさなっている。 一方, 三田井図幅地域の [ 祖母山の南南西方の ] 宮崎県 上野村では, 第 Ⅲ 期の流紋岩溶岩 [ S3-d ] を直接おおって それぞれ3枚の斑状輝石安山岩溶岩 [ S-ap ] と同質 凝灰角礫岩 [ S-at ? ] , およびそれをおおう無斑晶輝石安山岩溶岩流 [ S-aa ] からなる。 また, 土呂久谷の上流では, 第 Ⅲ 期のデイサイト質溶結凝灰岩 [ S3-dwt ] および同質 凝灰角礫岩 [ S3-dt2 ? ] を直接おおい, 少くとも2枚の無斑晶安山岩 [ S-aa ] が発達し, 緩く東方に傾斜している。 その間には異質礫を多量に含む凝灰角礫岩 [ S-at ? ] が発達しており, 異質礫は花崗岩類, リソイダイト, 古生層砂岩, 同 頁岩などである。 また, 祖母山の東斜面, すなわち尾平鉱山の上流域の斜面では, 第 Ⅲ 期のデイサイト質溶結凝灰岩 [ S3-dwt ] をおおって, 標高およそ 1,000~1,100 m 以上に輝石安山岩質凝灰角礫岩と凝灰岩 [ S-at ? ] が 100~200 m の厚さで発達し, さらに これを無斑晶質輝石安山岩 [ S-aa ] がおおっている。

九折・大白谷における第 Ⅳ 期の火山岩は 観音滝断層による陥没構造の北側の奥岳川流域に分布・発達し, 少なくとも4枚の無斑晶質輝石安山岩溶岩流 [ S-aa ] と同質の凝灰角礫岩 [ S-at ? ] を識別することができ, これらは緩く北西方向に斜下している。 これら無斑晶質輝石安山岩は, 従来は中生層 頁岩ホルンフェルス, あるいは第三紀 黒色泥岩と呼ばれていたように 燧石状の堆積岩ホルンフェルスに類似しているが, 注意深く見ると小斑晶を有しており 火山岩であることがわかる。 また, 大白谷の上流域における地表の火山岩類は すべて第 Ⅴ 期火山岩類と推定される。 しかしながら, 大白谷上流の構造ボーリングでは 標高 530 m の位置から 1,200.9 m の深度まで行なわれており, 深度 1,010.0 m までは 斑状安山岩・ 安山岩質凝灰角礫岩・ 変質安山岩・ 安山岩類からの珪化岩(白色珪質岩)などの安山岩類であり, 1,010 m 以深が花崗岩類である。 したがって, このボーリング地点の地表から地下にかけて相当の厚さの安山岩類が存在することになり, 少くとも地下のある深度からそれ以深は 第 Ⅳ 期火山活動の噴出物と考えて差し支えないであろう。 すなわち, 数 100 m あるいはそれ以上の第 Ⅳ 期火山岩類が発達するものと考えられる。

第 Ⅳ 期火山噴出物の厚さは 地域によりかなりの差があるようである。 すなわち, 前述のように, 大白谷地区では数 100 m 以上, 九折の北方地区では 400 m あるいはそれ以上におよぶと考えられる。 前障子岩の北東地区では数 100 m, 前障子岩付近では 500 m 以上, 大障子岩の西方域では 400 m, 大障子岩の東方域では約 600 m, 祖母山の北方域で 500 m, 祖母山の東面では 200 m 弱, 緩木山周辺で 450 m, 三田井図幅地域の 国観峠 くにみとうげ [ 位置不明 ; 緩木 ゆるぎ 山の南東方 ] で 250~300 m, 上野村 四季見原 しきみばる [ 位置不明 ; 祖母山の南方 ] では 550 m である。

一般に噴出物の厚さの水平方向の変化はかなりみとめられるが, 溶岩も降下火砕岩も一般によく連続している。 すなわち, これら各溶岩の間に, あるいは溶岩と火砕岩との間に顕著な指交関係がみとめられ, 溶岩がレンズ状に消滅している。 さらに, 第 Ⅳ 期火山岩類の斑状輝石安山岩 [ S-ap ] の大きな あるいは厚い岩体は緩木山地域一帯と, これとはるか東方に約 15 km 離れた 大白谷地域のボーリングで認められた地下の岩体である。 それに対して, この両者の間の第 Ⅳ 期火山活動の噴出物は 主として無斑晶質輝石安山岩 [ S-aa ] である。 したがって, これらのことはおそらく成層火山, またはそれに類似する火山活動型式のものが 各地域ごとに活動したことを示すものであろう。

[ V.2.2.1.1 第 Ⅳ 期火山岩類の ] 岩石記載

1) 無斑晶質輝石安山岩 [ S-aa ]

無斑晶質輝石安山岩は灰黒色~暗灰色のちみつ・堅硬な岩石であり, しばしば貝殻状断口を生じて割れる性質をもった燧石状の岩石をみとめる。 あまりにもちみつであるため, 一見 あたかも泥質~凝灰岩質ホルンフェルスの外観を呈するが, 注意してみると 細かい斜長石と輝石の斑晶を見出すことができる。

第 28 図 普通輝石含有無斑晶質安山岩(K72072804)。 祖母山火山岩類の第 Ⅳ 期火山岩類の無斑晶質輝石安山岩溶岩 [ S-aa ] 。 石基はピロタキシティック組織~毛せん状組織を示し, 短冊状斜長石, アルカリ長石, 石英, 普通輝石, 斜方輝石, チタン鉄鉱, 磁鉄鉱などからなる。 開放ニコル。
Augite-bearing aphyric andesite. 4th Stage of Sobo-san Volcanic Rocks.

普通輝石含有無斑晶質安山岩
産地
大分県 大野郡 緒方町 上畑, 標高 400 m( [ 巻末の ] 第 Ⅲ 図版 1)
宮崎県 西臼杵郡 高千穂町 五カ所岳の北東方 2,000 m,
標高 1,320 m(三田井図幅地域 ; 第 28 図)
化学組成
SiO2 : 57.80 %(第 7 表の試料 8)
SiO2 : 58.24 %(第 7 表の試料 10)

斑晶 : 斜長石・普通輝石

斑晶は一般にきわめて少なく, こく少量の普通輝石(薄片1枚に 2~3 コ程度)と それよりやや多い斜長石(薄片1枚に 10 コ程度)をみとめる。 斜長石はふつう 1 mm 以下の長柱状~短柱状の自形を示し, アルバイト式双晶, アルバイト・カルルスバッド式双晶をなし, 曹灰長石~中性長石に属する。 普通輝石もその量はきわめて少なく, 0.7 mm 以下の短柱状自形結晶をみとめる。 変質を受けた他の地域のものは 有色鉱物は緑泥石化して仮像だけをとどめている。

石基 : 斜長石・アルカリ長石・石英・普通輝石・斜方輝石・チタン鉄鉱・磁鉄鉱・ガラス

毛せん状組織~ピロタキシティック組織を示している。 したがって ガラスは非常に少ない。 細い細かな短冊状斜長石を主とし, アルカリ長石・石英とからなる基地の間に 普通輝石・斜方輝石・チタン鉄鉱・磁鉄鉱などが存在する。 変質を受けた他の地域のものは 緑泥石・粘土鉱物・方解石・黒雲母などの二次的鉱物の発達をみる。

副成分鉱物 : 燐灰石・ジルコン
二次的鉱物 : 緑泥石・粘土鉱物・方解石・石英

第 29 図 斜方輝石普通輝石含有無斑晶質安山岩(H68080203)。 祖母山火山岩類の第 Ⅳ 期火山岩類の無斑晶質輝石安山岩溶岩 [ S-aa ] 。 石基は毛せん状組織を示し, 短冊状の斜長石・ アルカリ長石・ 石英・ 普通輝石・ 斜方輝石・ チタン鉄鉱・ 磁鉄鉱からなり微斑晶として紫蘇輝石・普通輝石・斜長石(P)をみとめる。 開放ニコル。
Ortho-pyroxene- and augite-bearing aphyric andesite. 4th Stage of Sobo-san Volcanic Rocks. P : plagioclase.

斜方輝石普通輝石含有無斑晶質安山岩
産地
宮崎県 西臼杵郡 高千穂町 惣見 そうみ 上流の官行事務所の南東方 800 m,
官行~尾平トンネルの道路端, 標高 1,010 m(三田井図幅地域)
大分県 大野郡 緒方町 中村の西方 700 m, 標高 600 m(第 29 図)
化学組成
SiO2 : 57.83 %(第 7 表の試料 9)
SiO2 : 58.35 %(第 7 表の試料 11)

斑晶 : 斜長石・普通輝石・斜方輝石

斑晶はきわめて少なく, ごく少量の普通輝石(薄片1枚に 3~4 コ程度)と これよりやや多い斜長石(薄片1枚に 10 コ程度)をみとめる。 斜長石はふつう 1 mm 以下の長柱状~短柱状の自形を示し, アルバイト式双晶またはアルバイト・カルルスバッド式双晶をなし, 成分は曹灰長石~中性長石である。 普通輝石は 0.8 mm 以下の短柱状自形結晶としてみとめられる。 微斑晶としての斜方輝石は いわゆる頭のない長柱状半自形結晶が多く, 0.4~0.2 mm の長さを有し, 多色性が少なく, Fe の少ない紫蘇輝石または古銅輝石に属するものである。 また, これと同じ程度の大きさを有する普通輝石もみとめられる。 また, 変質を受けた他の地域のものは, これら有色鉱物は緑泥石・方解石なとに変って仮像だけをとどめている。

石基 : 斜長石・普通輝石・斜方輝石・チタン鉄鉱・磁鉄鉱・ガラス

一般にガラス基流晶質組織を示すが, 毛せん状組織を示すものもある。 微細な短冊状斜長石を主とし, 普通輝石・斜方輝石・チタン鉄鉱・磁鉄鉱・ガラスなどからなる。 変質を受けた他の地域のものは 緑泥石・方解石・黒雲母・粘土鉱物などの2次的鉱物を生じている。

副成分鉱物 : 燐灰石・ジルコン

2) 斑状輝石安山岩 [ S-ap ]

斑状輝石安山岩は 新鮮なものは暗灰色~緑黒色を呈し, 粒度のそろった中粒の斜長石斑晶と輝石の斑晶からなる斑状岩である。 また, 変質したものは暗緑色~灰緑色, あるいは暗紫色~灰紫色を呈し, 弱変質(カオリン化)した斜長石斑晶, 緑泥石化した輝石斑晶, および方解石・緑れん石などの変質鉱物を生じた緑色化または紫色化した斑状岩であり, いわゆるプロピライト化している。 これの著しいものは奥岳川流域の緒方町 小原 おばる [ ← 烏岳の東南東方 1.5 km 弱 ] 付近などに認められ, やや変質の弱い斑状安山岩は 祖母山地区の竹田市 緩木山などにみとめられる。 変質の種類によっては 珪化作用や炭酸塩化作用が著しく, 斑状組織を残存した白色珪質岩, すなわち, 珪化安山岩になっている。 これは大白谷地区におけるボーリングの岩芯によくみとめられ, 局部的な珪化作用は 緒方町 小原付近にもみとめられる。

斜方輝石普通輝石安山岩
産地
大分県 竹田市 緩木山の南西 500 m, 標高 1,020 m
大分県 竹田市 神原の南南西方 4,200 m, 標高 1,075 m

斑晶 : 斜長石・普通輝石・斜方輝石

一般に斑晶が多量に存在する斑状岩で, 無斑晶質輝石安山岩に比して著しく対照的である。 斜長石はふつう 1~2 mm の短柱状自形結晶と 0.5~1.5 mm の長柱状自形結晶であり, アルバイト式双晶, アルバイト・カルルスバッド式双晶が多く, 短柱状結晶には累帯構造も顕著に発達しており, 曹灰長石・中性長石に属する。 しばしば変質して絹雲母化, 炭酸塩化している。 普通輝石は 0.5~1 mm の短柱状の自形~半自形結晶が多く, ときに双晶をなしている。 斜方輝石は 0.7 mm 以下であり, 長柱状の自形~半自形を示し, ときに斜方輝石の両側に普通輝石が平行に発達しており, 大部分が紫蘇輝石に属する。 これらの輝石は変質を受けてしばしば緑泥石化, 炭酸塩化しており, 仮像だけをとどめていることがある。

石基 : 斜長石・アルカリ長石・石英・普通輝石・斜方輝石・チタン鉄鉱・磁鉄鉱・ガラス

ガラス基流晶質組織~ピロタキシティック組織を示しているが, 変質を受けたもので脱ガラス化をしているものがある。 細い短冊状の斜長石を主とし, アルカリ長石・石英などからなる細かな基地の間を 普通輝石・斜方輝石・チタン鉄鉱・磁鉄鉱などが埋めている。 また, 変質を受けたものは 緑泥石・粘土鉱物・方解石・二次的石英などの二次的鉱物が発達している。

副成分鉱物 : 燐灰石・石英
二次的鉱物 : 緑泥石・緑れん石・粘土鉱物・方解石・石英

V.2.2.2 第 Ⅴ 期火山岩類(S-aa・S-at・S-ap の一部)

第 Ⅴ 期火山岩類は第 Ⅳ 期火山岩類の上に重なり, 分布範囲もほぼ一致している。 これは斑状輝石安山岩の溶岩 [ S-ap ] とその火砕岩とによって代表され, 一部には無斑晶輝石安山岩 [ S-aa ] とそれの凝灰角礫岩 [ S-at ? ] も発達している。 第 Ⅴ 期火山岩類は九折・大白谷地区の観音滝断層の北側および祖母山地区に分布する。

祖母山地区における第 Ⅴ 期の火山活動は, 祖母山の北東に続く稜線から その北東の大障子岩, さらに 前障子岩の稜線ならびにその近くに分布する。 さらに, その分布は三田井図幅地域につづき, 祖母山の北斜面も巻いて国観峠に, 一方は尾平鉱山側の斜面, すなわち祖母山およびその南方の障子岳の東面から古祖母山東方に連続して, 宮崎県側の土呂久鉱山の上流域の尾平断層の北西側から上野村 四季見原に分布し, 前述の国観峠に続いている。 これらはすべて 第 Ⅳ 期の無斑晶質輝石安山岩溶岩 [ S-aa ] や安山岩質凝灰角礫岩 [ S-at ] を被覆して発達している。 これらの分布地域においては 主として斑状輝石安山岩溶岩 [ S-ap ] であるが, 一部に無斑晶質輝石安山岩溶岩 [ S-aa ] が存在する。 すなわち, 前障子岩付近では無斑晶質輝石安山岩溶岩 [ S-aa ] が少なくとも2枚あり, 両者の間に安山岩質凝灰角礫岩 [ S-at ] の薄層(厚さ 30~0 m)が挟まれている。 もっとも ここでは, その下位の第 Ⅳ 期火山噴出物の無斑晶質輝石安山岩溶岩 [ S-aa ] を被覆しているため はっきりした第 Ⅳ 期と第 Ⅴ 期の境界は定かでないが, その標高はおよそ 1,100~1,150 m 付近と推定している。 したがって, この付近での第 Ⅴ 期噴出物の層厚は 200~250 m と推定される。 大障子岩付近では 第 Ⅳ 期の無斑晶質輝石安山岩溶岩 [ S-aa ] をおおって 第 Ⅴ 期の斑状輝石安山岩溶岩 [ S-ap ] が 200 m あるいはそれ以下の厚さでおよそ標高 1,100~1,120 m 以上に発達し, さらにそれを約 50~100 m の厚さの無斑晶輝石安山岩溶岩 [ S-aa ] がおおって ゆるく北西方向に傾斜している。 三田井図幅地域の祖母山の西側の国観峠付近では, 第 Ⅳ 期の無斑晶質輝石安山岩溶岩 [ S-aa ] をおおって 第 Ⅴ 期の斑状輝石安山岩溶岩 [ S-ap ] が標高約 1,400 m 以上に, その厚さ 40~50 m 程度発達している。 祖母山の東側, すなわち尾平鉱山の上流側斜面においては 第 Ⅳ 期の輝石安山岩凝灰角礫岩 [ S-at ] をおおって斑状輝石安山岩溶岩 [ S-ap ] が発達し, その厚さは 100~200 m であり, 標高およそ 1,300 m 以上に分布している。 また, 尾平断層の北~北西側, すなわち上野村から土呂久鉱山上流に分布するものは, 第 Ⅳ 期の無斑晶質輝石安山岩溶岩 [ S-aa ] をおおって 斑状輝石安山岩溶岩 [ S-ap ] がおよそ 200 m の厚さで発達し, さらにこれをおおって 100 m 以上の厚さを有する無斑晶質輝石安山岩溶岩 [ S-aa ] が発達し, 第 Ⅴ 期の火山噴出物の全層厚は 350 m におよび, ほぼ南西方向に 20~25°で緩く傾斜している。

[ 以上のような ] 祖母山地区に対して, 九折(~三ツ尾)・大白谷地区の傾山カルデラ内においては 第 Ⅴ 期の火山活動は著しく活発であり, とくにカルデラ内の北東側において顕著である。 ここでは第 Ⅳ 期の無斑晶質輝石安山岩溶岩 [ S-aa ] を直接おおって 少くとも6枚の斑状輝石安山岩溶岩 [ S-ap ] をかぞえることができるが, 鉱化変質を受けているため その火山層序など不明な点が多い。 溶岩流の間は 凝灰角礫岩~凝灰岩~結晶凝灰岩などの降下火砕岩が介在し, ゆるく北方に傾斜している。 これらの全層厚は地表調査のみでも 500 m を越すであろう。 大白谷の上流のボーリングでは 地表から 1,010 m の深度まで安山岩質の溶岩と火山砕屑岩が続くが, 鉱化作用のため著しく珪化されており, 既にのべたように 第 Ⅳ 期と第 Ⅴ 期の区別がつかないが, それにしても第 Ⅴ 期の火山噴出物の全層厚は 500 m をはるかに越すことが予想される。

第 Ⅴ 期の火山噴出物の厚さの水平方向の変化は 第 Ⅳ 期のそれと同じようにかなりみとめられるが, 溶岩も降下火砕岩も一般的によく連続する。 すなわち, 連続しながらも しばしばレンズ状に溶岩が消滅しており, 溶岩と火砕岩との間に指交関係がみとめられる。 したがって, 第 Ⅴ 期の火山活動も第 Ⅳ 期のそれと同じく, おそらく成層火山, またはそれに類似する火山活動型式のもので, 各地域ごとに活動したものであろう。

[ V.2.2.2.1 第 Ⅴ 期火山岩類の ] 岩石記載

1) 斑状輝石安山岩 [ S-ap ]

斑状輝石安山岩の岩石学的性質は 第 Ⅳ 期の斑状輝石安山岩と大差ない。 新鮮なものは暗灰色~暗緑色を呈し, 粒度の揃った中粒の斜長石斑晶と 輝石の斑晶からなる斑状岩である。 また, 大白谷地区にみられるものは 珪化作用を受けた灰白色の斑状岩や, 暗緑色~灰緑色 あるいは灰紫色~灰色を呈し 弱変質した斜長石斑晶と, 緑泥石化した輝石斑晶 および方解石・緑れん石などの変質鉱物を生じた斑状岩となっており, いわゆる珪化岩またはプロピライトとなっている。 また, 土呂久谷の上流の斑状輝石安山岩の中には, 鉱化作用によって 局部的に 斧石 ふせき [ axinite ; (Ca,Fe,Mn)3 Al2 BO3 Si4 O12 OH もしくは Ca2 (Fe,Mn) Al2 B Si4 O15 (OH) ] やダトー石 [ datolite ; Ca B SiO4 (OH) ] を生じているものもある。

第 30 図 斜方輝石普通輝石安山岩(68080305)。 祖母山火山岩類の第 Ⅴ 期火山岩類の斑状輝石安山岩溶岩 [ S-ap ] 。 石基は毛せん状組織を示し, 短冊状斜長石を主とし, アルカリ長石・石英・普通輝石・斜方輝石・チタン鉄鉱・磁鉄鉱からなり, 斑晶として斜長石(P), 普通輝石(A), 斜方輝石(O)をみとめる。 開放ニコル。
Ortho-pyroxene - augite andesite. 5th Stage of Sobo-san Volcanic Rocks. P : plagioclase, A : augite, O : ortho-pyroxene.

第 31 図 斜方輝石普通輝石安山岩(68073006)。 祖母山火山岩類の第 Ⅴ 期火山岩類の斑状輝石安山岩 [ S-ap ] 。 毛せん状組織を示す石基中に 双晶を示した普通輝石(A)と アルバイト式双晶を示す斜長石(P)の斑晶をみとめる。 十字ニコル。
Ortho-pyroxene - augite andesite. 5th Stage of Sobo-san Volcanic Rocks. A : augite, P : plagioclase.

斜方輝石普通輝石安山岩
産地
大分県 大野郡 緒方町 湯ノ迫の南東方 1,100 m, 標高 400 m(第 30 図)
大分県 大野郡 緒方町 上滞迫 [ 位置不明 ] の東南東方 1,800 m,
駄床川の上流の標高 750 m(第 31 図)
大分県 大野郡 緒方町 尾平鉱山の西南西 1,800 m,
標高 980 m(三田井図幅地域)
化学組成 :
SiO2 : 58.91 %(第 7 表の試料 13)
SiO2 : 60.79 %(第 7 表の試料 14)
SiO2 : 62.10 %(第 7 表の試料 15)

斑晶 : 斜長石・普通輝石・斜方輝石・(角閃石 ?)

一般に斑晶が多量に存在する斑状岩で, 無斑晶質輝石安山岩と著しく対照的である。 斜長石はふつう 0.5~2 mm, 最大 2.5 mm に達する長柱状自形結晶であり, アルバイト式双晶, アルバイト・カルルスバッド式双晶が多く, 大きな結晶は累帯構造もよく発達しており, 曹灰長石~中性長石に属する。 ときに変質して絹雲母化, 炭酸塩化している。 普通輝石は 0.5~1.5 mm の短柱状の自形~半自形結晶が多く, ときに双晶をなしている。 斜方輝石は 0.7 mm 以下であり, 普通輝石よりはるかに量が少なく, 長柱状の自形~半自形を示し, まれに普通輝石と平行連晶をなしており, 一般に紫蘇輝石に属する。 これらの輝石類は しばしば変質して緑泥石化, 炭酸塩化しており, 仮像だけをとどめていることがある。 さらに仮像として角閃石らしきものをみとめる。

石基 : 斜長石・アルカリ長石・石英・普通輝石・斜方輝石・チタン鉄鉱・磁鉄鉱・ガラス

ガラス基流晶質組織~ピロタキシティック組織を示しているが, 変質を受けて脱ガラス化したものがある。 特に尾平鉱山の上流斜面のものは 熱変質を受けでホルンフェルス化しており, 完晶質になっている。 一般に細い短冊状斜長石を主とし, アルカリ長石・石英などの基地の間隙に 普通輝石・斜方輝石・チタン鉄鉱・磁鉄鉱などがみとめられる。 また, 変質を受けたものは 緑泥石・粘土鉱物・方解石などを生じており, 熱変質を受けたものは多くの黒雲母を生じている。

副成分鉱物 : 燐灰石・石英
二次的鉱物 : 緑泥石・緑れん石・粘土鉱物・方解石・石英・黒雲母・ダトー石・斧石

2) 無斑晶質輝石安山岩 [ S-aa ]

第 Ⅴ 期の無斑晶質輝石安山岩は 第 Ⅳ 期の無斑晶質輝石安山岩と その岩石学的性質は酷似している。 灰黒色~暗灰色のちみつ・堅硬な岩石であり, 泥質~凝灰岩質ホルンフェルスの外観を呈するが, 注意してみると 細かい斑晶を見出すことができ, 火山岩であることが判明する。

普通輝石含有無斑晶質安山岩
産地 : 大分県 竹田市・緒方町 境界の大障子岩の北方 300 m, 標高 1,380 m
化学組成 :
SiO2 : 58.19 %(第 7 表の試料 12)

斑晶鉱物 : 斜長石・普通輝石

斑晶は一般にきわめて少なく, ごく少量の普通輝石と斜長石をみとめる。 斜長石斑晶は薄片一枚に 10 コ程度であり, ふつう 1 mm 以下の長柱状~短柱状の自形を示し, アルバイト式双晶, アルバイト・カルルスバッド式双晶をしており, 曹灰長石~中性長石に属する。 普通輝石は その量はきわめて少なく, 薄片1枚に 2~3 コ存在し, 0.8 mm 以下の短柱状自形結晶をみとめる。

石基 : 斜長石・アルカリ長石・石英・普通輝石・斜方輝石・チタン鉄鉱・磁鉄鉱・ガラス

毛せん状組織~ガラス基流晶質組織~隠微晶質組織を示し, ときに脱ガラス化使用を受けている。 細い細かな斜長石を主とし, アルカリ長石・石英・普通輝石・斜方輝石・チタン鉄鉱・磁鉄鉱などからなる。 緑泥石やその他の粘土鉱物もみとめる。

副成分鉱物 : 燐灰石・ジルコン
二次的鉱物 : 緑泥石・粘土鉱物

V.2.2.3 第 Ⅵ 期火山岩類(S6-d,S6-dt)

第 Ⅵ 期の火山活動は祖母山地区のみにみとめられる。 すなわち, 祖母山の山頂から [ その南方の ] 障子岳, 古祖母山の一帯と祖母山の北東に分布する。 これらはすべて第 Ⅴ 期の火山岩類を被覆しており, デイサイト溶岩 [ S6-d ] , 安山岩~デイサイト質凝灰角礫岩 [ S6-dt ] 無斑晶質輝石安山岩溶岩 よりなる。

祖母山の北東の大障子岩付近, およびその北東の前障子岩にかけて2カ所にデイサイト溶岩 [ S6-d(および S6-dt ?) ] の発達をみる。 これらは第 Ⅴ 期の斑状輝石安山岩 [ S-ap ] および無斑晶質輝石安山岩溶岩 [ S-aa ] をおおって 厚さ約 60 m で分布している。 さらに祖母山の東北東から三田井図幅地域に入り, 祖母山の北面および 祖母山の東面から土呂久側に, 主として尾平側にかけてデイサイト溶岩 [ S6-d ] がみとめられ, -部に降下火砕岩としての凝灰角礫岩 [ S6-dt ? ] がみとめられ, その全層厚は 200 m 前後 あるいはそれ以下であり, 第 Ⅴ 期の斑状輝石安山岩溶岩 [ S-ap ] を直接おおって発達している。

このデイサイト [ S6-d ] の上位に 安山岩~デイサイトの降下火砕岩としての凝灰角礫岩 [ S6-dt ] の発達がある。 これは竹田図幅地域では祖母山の東北東の 1,433 m 三角点付近に小規模に分布する。 しかし, 三田井図幅地域では 祖母山の北面~東面から 障子岳・古祖母山・親父山などの主稜から 土呂久側にかけて広範囲に分布しており, 全層厚は 200 m 前後に達し, 南または西方に緩く傾斜している。

これらの上位に 無斑晶質輝石安山岩 の活動があり, 上記の凝灰角礫岩をおおって祖母山の山頂付近と [ その南方の ] 天狗岩付近に分布しており, ゆるく北に傾斜しており, 層厚 150 m におよんでいる。 これは三田井図幅地域にのみ分布しており, 竹田図幅地域には分布しない。

[ V.2.2.3.1 第 Ⅵ 期火山岩類の ] 岩石記載

1) 石英デイサイト [ S6-d(および S6-dt ?) ]

この石英デイサイトは淡灰色-淡灰緑色を呈し, 比較的大きな石英および斜長石の斑晶が目立つ斑状岩である。 変質作用のため 有色鉱物は緑泥石化しており, はっきりと識別出来ない。 まれに緑れん石やざくろ石などをみとめることがある。

第 32 図 石英デイサイト(KT72072710)。 祖母山火山岩類の第 Ⅵ 期火山岩類のデイサイト溶岩 [ S6-d ] 。 毛せん状組織~珪長岩質組織を示す石基中に石英(Q), 斜長石(P), カリ長石(K)の斑晶をみとめる。 開放ニコル。
Dacite. 6th Stage of Sobo-san Volcanic Rocks. Q : quartz, P : plagioclase, K : K-feldspar.

(角閃石 ?)石英デイサイト
産地
大分県 竹田市・緒方町の境界, 大障子岩の北東方 600 m,
標高 1,320 m(第 32 図)
大分県 竹田市・緒方町の境界, 祖母山の東北東方 1,800 m,
標高 1,350 m(三田井図幅地域)
化学組成
SiO2 : 66.91 %(第 7 表の試料 16 ; 大障子岩の北東方)

斑晶 : 斜長石・石英・(角閃石)

斜長石がもっとも多く, それに石英が散点する。 斜長石はふつう 1~3 mm, 最大 5 mm に達する大きな斑晶であり, アルバイト式双晶, アルバイト・カルルスバッド式双晶, ペリクリン式双晶が発達し, 大きな結晶には累帯構造も顕著にみとめられる。 成分は中性長石を主とし 一部は灰曹長石であり, 絹雲母化, 曹長石化を受けている。 石英は 1~3 mm の融食形を示している。 有色鉱物は緑泥石化のため仮像のみをみとめるが, その形から角閃石と推定されるが, 輝石も存在していたのかもしれない。 また, 二次的鉱物として ざくろ石の結晶が斑晶大の大きさでみとめられる。

石基 : 斜長石・アルカリ長石・石英

一般に毛せん状組織またはピロタキシティック組織または珪長岩質組織を有しているが, 尾平鉱山側の斜面にあるものは熱変成の影響を受けている。 短冊状の斜長石・石英・アルカリ長石からなり, 一部にガラスを有し, その他に緑泥石・粘土鉱物・絹雲母・方解石などの2次的鉱物を認める。

副成分鉱物 : 鉄鉱物・ジルコン・燐灰石
二次的鉱物 : 曹長石・絹雲母・緑泥石・方解石・ざくろ石

2) 無斑晶質輝石安山岩 [ ← 竹田図幅地域には分布していない ]

この無斑晶質輝石安山岩は, その外観は第 Ⅳ 期および第 Ⅴ 期の無斑晶質輝石安山岩 [ S-aa ] と大差ない。 新鮮な部分では灰黒色~暗灰色のちみつ・堅硬な岩石であり, 風化すると淡灰褐色~灰褐色を呈する。 あたかも泥質~凝灰岩質ホルフェルスの外観を呈するが, 注意してみると 細かい斑晶を見出すことができ, 火山岩であることがわかる。

輝石含有無斑晶質安山岩
産地(いずれも三田井図幅地域内)
大分・宮崎県境の祖母山山頂の北方直下, 標高 1,720 m
大分・宮崎県境の祖母山の南方 900 m の天狗岩付近, 標高 1,560 m

斑晶 : 斜長石・輝石

斑晶は一般にきわめて少なく, ごく少量の斜長石と輝石の仮像を認める。 斜長石斑晶は 1 mm 以下の長柱状~短柱状の自形を示し, アルバイト式双晶, アルバイト・カルルスバッド式双晶をしており, 曹灰長石~中性長石に属し, しばしば絹雲母化, 炭酸塩化している。 輝石類はすべて仮像となっており, 緑泥石に変っている。 その形態から輝石類であろうと推定される。 おそらく単斜輝石であろう。

石基 : 斜長石・アルカリ長石・石英・普通輝石・斜方輝石・黒雲母・チタン鉄鉱・磁鉄鉱・ガラス

ガラス基流晶質組織~ピロタキシティック組織を示し, ときに脱ガラス化作用を受けている。 細かな短冊状斜長石・アルカリ長石・石英・ガラスなどと共に 普通輝石・斜方輝石・黒雲母・チタン鉄鉱・磁鉄鉱などがみとめられる。 斑晶輝石は仮像を示すのであるが, 石基輝石は残存している。 その他の二次的鉱物として 緑泥石・ざくろ石・粘土鉱物などがみとめられる。

副成分鉱物 : 燐灰石・ジルコン
二次的鉱物 : 緑泥石・ざくろ石・粘土鉱物・方解石

V.2.3 傾山カルデラと尾平断層

祖母山火山岩類を切る断層は, すでに概説したように, 弧状形態や環状に近い形態のものが 直線状もしくは屈曲した断層とともに見出される。 松本・宮久(1973)はそれらの断層によってかこまれた火山構造性陥没構造を発見し, 傾山カルデラと名付けた。 本項の記述は主に同論文に従う。

観音滝断層は九折谷を横切って存在し, その一部には これに沿う珪長岩 [ Yf ] の貫入を見るが, その延長の観音滝以東にも 三ツ尾の南方~西山の南方~大白谷の西方と半円周状の弧状断層が推定される。 この弧状断層の内側は祖母山火山岩類第 Ⅳ 期以降の噴出物が分布発達するのに対して, その外側は より下位の 祖母山火山岩類第 Ⅲ 期以前の火山噴出物と見立層・中生層・古生界が分布発達している。

この弧状断層は 北東方で大白谷 - 大切峠断層とよんだ NW - SE 系のほぼ直線の断層に合致するが, その北西では北西方向に別れて 清川村 大トガ山からしだいに方向を西に転じて駄床川を横ぎり, 緒方町 小原の北方に達する断層となっている。

大白谷 - 大切峠断層は, したがって弧状断層を切るかたちのものであり, 前述のように, この直線状断層によって基盤の古生界にかなり大きい水平転位が認められる。 ただし, 花崗斑岩 [ Yp ] や珪長岩 [ Yf ] が弧状断層からこの直線状断層にかけて貫入発達して, 両断層の前後関係を示す直接の証拠を見出すことはできない。

以上について, この付近の構造発達の順序はつぎのように考えられる。

  1. 祖母山火山岩類前期火山活動(第 Ⅰ~Ⅲ 期),
  2. 火山性陥没構造(弧状断層)の形成,
  3. NW - SE 系の大白谷 - 大切峠断層,
  4. 祖母山火山岩類後期火山活動(第 Ⅳ~Ⅵ 期),
  5. 陥没構造および NW - SE 系断層の再活動,
  6. それにともなう新期酸性貫入岩類の活動.

上記の観音滝からつづく半円周状断層をつなぐと, NNW 側の一部は尾平断層の影響のため はっきりしないが, 長径(NNW - SSE 方向)が 9 km 以上, 短径(ENE - WSW 方向)が 6 km の楕円状の陥没構造となり, 現在確認された段階での円周は 18 km におよぶ。 さらに北北西側を延長すると 12 km × 6 km, 円周およそ 28 km, 面積ほぼ 54 km2 の陥没構造が推定される。 この火山性陥没構造を傾山カルデラとよぶ。

さて, カルデラの陥没については, 第四紀火山では, また古い時代の開析火山岩体においても, その陥没落差の量がたしかめられたケースはきわめて少い。 しかるに傾山カルデラにおいては, その内部に探鉱事業団による 1,200 m の長さの垂直下方への構造ボーリングが行なわれて, あるていど陥没落差のデータが得られている。 すなわち, 大白谷の西方のカルデラ内の 1967 年のボーリング(42PASK-1 ; 地質図上では B42)では 地表下 1,010 m まで祖母山火山岩類の後期(Ⅳ~Ⅴ期)の火山岩類からなっており, それ以深から孔底 1,200 m まで花崗岩質複合貫入岩体が出現し, 基盤岩類はもちろん 前期噴出物も出現しない。 ボーリング地点の標高は 530 m, その東側において断層にそう地形の最低高度は 380 m であるから, これらの数字のみからは 大白谷付近においては 850 m 以上の落差を有することになる。 基盤岩を基準にすると 1,050 m 以上の落差になるが, この点はボーリング孔の深部の花崗岩類の貫入のため あきらかでない。

以上のことから 傾山カルデラの陥没量(容量)を推定してみると, 長径 12 km, 短径 6 km, 落差 850 m の値で計算すれば, 陥没量は約 46 km3 になる。 これに対して, 現在確認された前期(先カルデラの第 Ⅰ~Ⅲ 期)の噴出量は 約 40 km3 + である。 第Ⅰ~Ⅲ 期の噴出物が かりにすべて傾山カルデラから噴出したと仮定しても, 陥没容量に対して数 km3 少ない。 一般にカルデラ形成の場合, 陥没量より噴出量の方が少ないことが多く, 傾山カルデラにおいても同様である。 これは山崎(1959)が説くように水の影響とともに, 第 Ⅰ~Ⅲ 期の噴出物のかなりの量がその後の削剥作用によって失なわれた結果, さらに, 祖母山火山岩類後期火山活動(第 Ⅳ~Ⅴ 期)以降の陥没構造再動による結果などの 種々のためであろう。

一方, 傾山カルデラの西方, 祖母山の南側の尾平断層も弧状断層である。 この断層は祖母山火山岩類の後期 Ⅳ~Ⅴ 期のものまで切っており, また新第三紀酸性貫入岩類が貫入している。 したがって, 現在みられる断層の活動時期は 祖母山火山岩類後期火山活動の直後~新第三紀酸性貫入岩類活動の直前に限定される。 しかしながら, この断層の場合も, 祖母山火山岩類 前期活動の直後~同 後期活動の直前に 何らかの構造的ギャップ -- 断層であるか撓曲線であるか -- を生じていた可能性が考えられる。

この尾平断層の垂直落差は, 土呂久の北方の構造ボーリングと 本谷山における 祖母山火山岩類第 Ⅰ 期のデイサイト質溶結凝灰岩の下底面の高度から推定すると 約 1,050 m, 同じく第 Ⅲ 期のデイサイト質疑灰角礫岩の基底面を基準にすると約 1,000 m になる。 すなわち, この尾平断層は垂直転位がきわめて大きく, その落差は 1,000 m + にもおよんで, 北西側すなわち火山岩体側の落ちた断層である。

尾平断層をカルデラ構造とよんで良いか否かは なお今後の調査に待たねばならない。 この断層の東半に貫入する花崗斑岩の内部やその貫入接触面付近には 断層に平行する金属鉱脈があって, 尾平鉱山の主脈となっていることは前述のとおりである。 加藤武夫(1937)が鉱床記載に添えて公表した地質図(同書の p. 525)では, この尾平鉱山のさらに北方にむけて断層を延長している。 また, 前障子岩の東方~北方にみられる石英斑岩 [ Yp ] も断層に沿うものとすれば, 尾平断層は弧状から さらに半円周状の延長をもつことになり, 傾山カルデラに類似する形態をとることとなる。

V.3 新第三紀酸性貫入岩類 [ Yf, Ygd, Yp, Yg ]

祖母 傾山地域の南方に 大崩山 おおくえやま 花崗岩の底盤があり, その北方および北西方への発達延長部として 祖母山火山岩地域にも露出または潜在しており, 竹田図幅地域にも各種岩類がみとめられる。 さらに底盤から派生する岩株, 岩脈, ならびに花崗岩活動に先駆する珪長岩・細粒花崗岩類, および花崗斑岩~石英斑岩の貫入岩体などが各所に分布している。 これらは広範囲に既存岩に対して熱変成作用, 気成作用~熱水変質作用をあたえ, 錫をはじめ各種の金属の鉱脈形成や接触交代作用などの鉱化作用をもたらして, いわゆる尾平鉱床区を作っている。

V.3.1 珪長岩(フェルサイト ; Yf)

緻密・堅硬な火成岩である。 白色から暗灰色への色調の変化があり, また流理構造を有して祖母山火山岩類 第 Ⅱ 期のリソイダイト [ S2 ] に類似するものから, 角礫構造をもつものまで外観の変化にとむが, どれも きわめて珪質である(第 33 図)。 既存岩への貫入関係が各所がみとめられるが, その流理は必ずしも岩体の伸びの方向や壁面に平行ではない。 露出の良好な場所は 九折 つづら 谷と奥岳川(上畑の南西方)とである。

第 33 図 珪長岩の流動を示すユータキシティック組織。
Eutaxitic structure of felsite.

九折谷の豊栄鉱山の選鉱場付近では角礫状となっている。 礫は流理のある かたい珪長岩のほか 各種の異種岩石を含み, マトリックスもまた 珪長質で流理を示しかたく 緻密である。 ここでは厚さ最大 400 m の岩脈状をなし北へ傾き, 前述した観音滝断層に沿って貫入したものである。 その北側は祖母山火山岩類の比較的上位のメンバー [ S-aa, S-at, S-ap ] であるが, 南側は古生層 [ Tz(九折層) ] および超塩基性岩類 [ U ] など秩父帯の岩層, および祖母山火山岩類の最下位に近いメンバー [ S2 ] である。 したがって, ここでの珪長岩の貫入位置は北側が落下した断層に相当し, しかもその転位量はかなり大きいことが野外事実からみとめられる。

奥岳川の上流の上畑~土岩間の河床および その左岸の県道(尾平鉱山へ至る)にそって露出する珪長岩は, 祖母山火山岩 [ S-aa ] (北側)と土岩層 [ Ts ] (南側)の境界にそって貫入しており, 岩体の南縁に近いところでは異質の角礫を多くとりこんで, 一見すると礫岩の岩相である。

その他, 小規模な岩体として [ 図幅地域南東隅付近の ] 南海部 みなみあまべ 宇目 うめ 町, 大野郡 緒方町, 竹田市 神原 こうばる 付近などに貫入岩体がみとめられる [ ← 地質図上の宇目町では Yf を確認できない ] 。 緒方町 小原 おばる [ の北方 1 km ] では傾山カルデラの陥没構造に沿って 幅せまく貫入しており, さらにこれを石英斑岩 [ Yp ] が貫ぬいている。 [ 小原の南南東方 2.5 km の ] 緒方町 滞迫 たいさこ では N 40°W 方向の岩脈として 小岩体がみとめられる。 竹田市 神原の上流の 白水 しろず およびその北方の 振顔野 ふるがおの 付近の2カ所では N 45°E 方向の幅せまい岩脈としてみとめられる(第 34 図)。 これらはすべて祖母山火山岩類の第 Ⅲ 期のデイサイト質溶結凝灰岩 [ S3-dwt ] および凝灰角礫岩 [ S3-dt2 ] に対して貫入している。 宇目町のサンショウ谷の上流(傾山の東方 1,950 m)では, 祖母山火山岩類の第 Ⅰ 期のデイサイト質溶結凝灰岩 [ S1-dwt ] を貫ぬいて岩脈状に幅 100 m 以下のものがみとめられ, さらにこれを花崗斑岩 [ Yp ] が貫ぬいている [ ← これは地質断面図 A - E の E の付近で確かめることができる ; ただし, その図では Yf は地表に露出していない ]

第 34 図 祖母山火山岩類第 Ⅲ 期のデイサイト質溶結凝灰岩 [ S3-dwt ] 中に岩脈状に貫入した珪長岩(ハンマーの付近 ; 破線は境界を示す)。 竹田市 神原の上流の白水。
Felsite dike intruded into dacitic welded tuff of the 3rd Stage of Sobo-san Volcanic Rocks.

[ V.3.1.1 珪長岩の ] 岩石記載

1) 珪長岩(フェルサイト)

灰白色~白色を呈し, きわめてちみつ・堅硬な珪質火山岩であり, ほとんど斑晶を含まないが, きわめてまれに 1 mm 以下の石英の斑晶をみとめることがある。 祖母山火山岩類第 Ⅱ 期のリソイダイト [ S2 ] のような球顆組織はみとめられない。

珪長岩
産地
大分県 大野郡 緒方町 上畑の南方 1,200 m, 標高 400 m
大分県 竹田市 神原の上流の白水, 標高 600 m( [ 巻末の ] 第 Ⅲ 図版 2)

斑晶 : (石英)

きわめてまれに 1 mm 以下の融食形の石英をみとめる。

石基 : 石英・斜長石・アルカリ長石

石基はきわめて細かい珪長岩質組織を示し, 石英・斜長石・アルカリ長石よりなる。 しばしば 流理組織に対してほぼ垂直に アルカリ長石・石英が並んで成長している。 流理を示す縞模様は粒度の差や前述の結晶配列などによって生じている。

副成分鉱物 : 燐灰石・ジルコン・鉄鉱物
2次的鉱物 : 絹雲母・緑泥石・粘土鉱物

V.3.2 細粒花崗閃緑岩(Ygd)

本岩は主として奥岳川の上流の尾平鉱山周辺, すなわち [ 本図幅の ] 南隣の三田井図幅地域に小範囲に分布しているが, その一部が 土岩の南方 900 m 付近にのびて, ほんの一部が竹田図幅地域に分布している。 本岩は古生界・中生界 [ Ts ] ・珪長岩 [ Yf ] を貫いており, 他方, 花崗斑岩 [ Yp ] および黒雲母花崗岩 [ Yg ] によって貫入を受けている [ ← 地質図上では確認できない ]

[ V.3.2.1 細粒花崗閃緑岩の ] 岩石記載

1) 細粒花崗閃緑岩

暗灰色~灰色を呈し, 細粒~中粒の完晶質岩で, やや斑状を呈した部分もある。 黒雲母角閃石花崗閃緑岩に属し, 一般に新鮮である。 やや大型の斑晶として 斜長石・正長石・石英・角閃石・黒雲母が目立ち, その間を少量の石基が充たしている。 部分的にグラノファイアーと呼んでよいもの, また, 部分的にアダメロ岩質になっていることもある。

普通輝石含有黒雲母角閃石花崗閃緑岩
産地 : 大分県 大野郡 緒方町 尾平の西方 500 m, 標高 700 m(三田井図幅地域)

斑晶 : 石英・正長石・斜長石・角閃石・黒雲母・普通輝石

斜長石は 1 cm に達する短柱状の自形を示し, 中性長石に属する。 正長石は 1 cm に達する短柱状~長柱状の自形~半自形の斑晶として存在することもあるし, また斜長石を囲んで存在することもある。 石英と正長石は しばしばにルメカイト組織~微文象組織をなして共生している。 普通輝石は部分的に少量みとめられ, 角閃石に取り巻かれている。 角閃石は 0.5~1 mm の自形~半自形結晶の集合状を示し, 淡褐色~緑褐色の多色性を示す普通角閃石である。 黒雲母は細かい結晶の集合体となっており, 暗赤褐色~淡褐色の多色性を示す。

石基 : 石英・正長石・斜長石・角閃石・黒雲母

石基は完晶質であり, 主として石英と正長石とからなり, これらが共生して微文象組織~ミルメカイト組織をなしている。 そのほかに少量の斜長石・黒雲母・角閃石などからなる。

副成分鉱物 : 燐灰石・ジルコン・スフェーン・鉄鉱物

V.3.3 花崗斑岩・石英斑岩(Yp)

本岩は各所に大小種々の形態の岩脈をなして, 黒雲母花崗岩の 大崩山 おおくえやま の底盤の活動に先駆して活動している。 さらに, 前述の珪長岩 [ Yf ] および細粒花崗閃緑岩 [ Ygd ] に対して貫入の関係にある。

この地域の南方の宮崎県 大崩山の花崗岩底盤の南側にあって, 底盤体をとりまく弧状形態の大規模な岩脈が延長 40 km にわたり分布するが, ここにのべる岩脈と全く同質, 同時期のものである。 鳥山武雄(1953)は底盤に伴う剪断性の環状割れ目の生成機構を考察している。

祖母山火山岩の分布地域では, この種の岩脈の出現するところは, 基盤岩を切る断層の部分と 祖母山火山岩の陥没構造の部分(カルデラ壁)の断層とが主なものである。 すなわち, 前述の大白谷 - 大切峠断層や尾平断層に沿うものなどである。 なお, 尾平断層ぞいには, 珪長岩と斑岩の複合岩脈や, それらにさらに電気石 石英 錫鉱脈(尾平鉱山本ピ鉱脈)を伴うなど, 数次にわたる断裂活動と火成作用~鉱化作用の行なわれたことがわかる。

竹田図幅地域でみられる大きな岩体は 大白谷 - 大切峠断層の北西延長に沿う岩体である。 すなわち, 大白谷から湯ノ迫の南方, さらに奥岳川畔に至る岩体は延長約 6 km, 幅 150~500 m の岩体であり, 一部に分岐岩脈をみとめる。 また, この岩体に平行する小岩脈が火山体側(カルデラ内)に2コ, カルデラの外側の清川村 とどろ 付近に9コみとめられる。 さらに, 陥没をもたらした断層の北西延長の緒方町 小原の北方 1,000 m の所では 珪長岩 [ Yf ] に貫入した石英斑岩の小岩脈があり, ここでは複合岩脈をなしている。

観音滝断層に沿う斑岩として 緒方町 上畑の南東方 1,500 m に小岩脈をみとめ, さらにその付近に2コの小岩体が存在する。 また, 豊栄鉱山の東方 1,300 m には珪長岩を貫いた石英斑岩の小岩脈をみとめる [ ← 地質図上では確認できない ] 。 また, 上畑の東方 800 m および 上滞迫 かみたいざこ [ ← 滞迫の南方 1 km 弱 ] の南南東方 1,000 m の2カ所に祖母山火山岩類 [ S-aa, S-at, S-ap ] に貫入した小岩脈の石英斑岩があり, これも断層に沿うものであろう。

前障子岩の東方から北方にかけて 祖母山火山岩の第 Ⅳ~Ⅴ 期の安山岩類 [ S-aa, S-at ] に貫入した石英斑岩の小岩脈があり, また, 大障子岩の南方 1,000 m の図幅南縁中央部にも 三田井図幅地域から続いた石英斑岩の小岩脈があり, 祖母山火山岩類第 Ⅲ 期の溶結凝灰岩 [ S3-dwt ] に貫入している。 また奥岳川沿いには, 緒方町 土岩付近と その南西方 1,500 m にも斑岩をみとめ, これはさらに三田井図幅地域に続いている。

また, 南海部郡 宇目町の傾山の東方 2,000 m の本図幅地域南東隅では, 祖母山火山岩の第 Ⅰ 期溶結凝灰岩 [ S11-dwt ] , 第 Ⅱ 期のリソイダイト [ S2 ] および珪長岩 [ Yf ] を貫いた花崗斑岩の小岩体がみとめられる [ ← 地質図の南東隅付近では Yf は露出していない ; 地質断面図 A - E の E の付近に Yf と接する Yp を確認できる ] 。 図幅地域の南西隅に近い高森町 高群 たかむれ の南方にも同岩の小岩体がある。

地表ではないが, 大白谷の西方のボーリングでは, 地表より深度 1,054 m 以深でも本岩に似た岩質のものが認められている。

花崗斑岩の岩脈は その内部で貫入順序を示すような複合岩体をなさない(ただし, 例外的に, 三田井図幅地域における上記の尾平付近のもので, 完晶質の花崗斑岩の外側に石英斑岩がおくれて貫入しているのが見られた)。 しかし, すべての岩体にわたって その岩型は一様ではなく, 斑状組織のなかにも粗粒・完晶質のものから 石基の細粒・ちみつなものまで変化している。

[ V.3.3.1 花崗斑岩・石英斑岩の ] 岩石記載

1) 花崗斑岩

花崗斑岩はふつうは灰色~淡灰色を呈し, 斜長石・石英の斑晶が目立つ斑状岩である。 岩脈の周辺部や幅の狭いところは石英斑岩であるが, 数 100 m の範囲を占める岩体においては より完晶質の花崗斑岩となっている。

角閃石黒雲母花崗斑岩
産地 : 大分県 大野郡 緒方町 湯ノ迫の南方 500 m, 標高 260 m

斑晶 : 石英・斜長石・正長石・黒雲母・角閃石

斜長石および石英の斑晶が多い。 石英は円味のある自形で, ふつう 1~5 mm 大である。 斜長石は長柱状~短柱状の自形結晶を示し, ふつう 1~5 mm, 最大 1 cm に達する。 累帯構造が発達し, おもに灰曹長石であるが, 中心部は中性長石であり, アルバイト式双晶, アルバイト・カルルスバッド式双晶をなす。 正長石は自形~半自形の長柱状~短柱状をなし, カルルスバッド式双晶, またはバベノ式双晶をなし, 微細な包有物に富み汚濁している。 斜長石の結晶をしばしば包有し, あるいは斜長石斑晶の周縁に正長石が発達する。 またまれに, 正長石と石英が微文象組織をなしている。 黒雲母は細片をなし, しばしば集合体をつくり, 暗赤褐色~淡黄褐色の多色性を示す、 角閃石は部分的に含まれ, 小結晶の集合体をなし, 青緑色~淡黄褐色の多色性を示す。

石基 : 石英・正長石・斜長石・黒雲母・角閃石

石基は珪長質細粒状~細粒花崗岩状の完晶質を示す。 石英と正長石は微文象組織を示すこともあり, また互いに遊離していることもあり, 微粒状になっていることもある。 斜長石は 量が少なく 灰曹長石に属する。 有色鉱物は主として黒雲母であるが, 部分的に角閃石が存在する。

副成分鉱物 : 燐灰石・ジルコン・スフェーン・ざくろ石・電気石・磁鉄鉱

2) 石英斑岩

石英斑岩は灰色を呈し, 石英の斑晶が目立つ斑状岩である。 小岩脈や花崗斑岩の周縁部にみとめられ, これと漸移関係にある。 石英の斑晶のほかに 正長石・斜長石の斑晶をみとめる。

黒雲母石英斑岩
産地
大分県 大野郡 緒方町 前障子岩の東方 400 m,
標高 1,250 m( [ 巻末の ] 第 Ⅲ 図版 3)

斑晶 : 石英・正長石・斜長石・黒雲母

石英は最大 5 mm, ふつうは 1~3 mm の丸味をもった高温型自形結晶をなす。 正長石はふつうは7 mm 以下の長柱状~短柱状の自形結晶をなし, カルルスバッド式双晶, バベノ式双晶をなしている。 微細な包有物を含み汚濁している。 正長石は 石英とともに しばしば微文象組織をつくる。 また, 斜長石の周りに正長石が発達することもある。 斜長石はふつう 5 mm 前後, 最大 1 cm に達し, 長柱状~短柱状の自形結晶を示し, アルバイト式, アルバイト・カルルスバッド式双晶をなし, 灰曹長石に属する。 累帯構造も著しく, 中心部は中性長石である。 黒雲母は 多くの場合に細片をなし, 集合体をつくり, 暗赤褐色~淡黄褐色の多色性を示す。

石基 : 石英・正長石・斜長石・黒雲母

石基は珪長質細粒の完晶質を示す。 石英と正長石は しばしば 微文象組織~ミルメカイト組織を示す。 斜長石は少量で灰曹長石に属す。 黒雲母は少量存在する。 石英斑岩はしばしばカオリン化して, 石基の各鉱物が識別できないこともある。

副成分鉱物 : 燐灰石・ジルコン・スフェーン・ざくろ石・電気石・磁鉄鉱

V.3.4 黒雲母花崗岩(Yg)

大崩山 おおくえやま の底盤およびそれより分岐した岩株, キュポラなどの小岩体をなすものである。 岩石は粗粒~中粒の優白質岩で, 石英, 正長石, 斜長石および黒雲母からなる黒雲母花崗岩である。 これらの岩体の周辺や頂部は, しばしば優白質周縁相の白雲母黒雲母花崗岩や 白雲母と電気石を含むグライゼンなどになり, またペグマタイト, アプライトも発達する。 竹田図幅地域の岩体には電気石グライゼンの発達は顕著ではないが, 周辺の母岩中には, 鉱床の項 [ VII.1 錫・亜鉛・硫化鉄などの非鉄金属鉱床 ] で後述するように, 電気石脈が多く生じている。

祖母・傾山地を含め 大分県南部から宮崎県北部にかけて大崩山の底盤の深成活動の範囲は広く, 秩父帯から四万十帯にまたがっているが, その北半の秩父帯のものは 黒瀬川構造帯や仏像構造線のような基盤岩中の断裂の付近に小岩体群として貫入し, あるいはそれらの位置でさらに上位の見立層 [ M ] や祖母山火山岩体 [ S* ] のなかまで上昇・貫入している。 一方, 火山構造性の陥没断層に直接そって入るということはなく, その部分の珪長岩 [ Yf ] や花崗斑岩 [ Yp ] などを含めて 非調和・非整合的な貫入岩体をなしている。 また, 特記すべきことは, この最終期の花崗岩マグマ迸入活動に伴って地域全体が -- 火山性陥没構造もろともに -- 隆起上昇していることである。

この花崗岩は 西南日本外帯の各所に分布する いわゆる外帯花崗岩に 産状やその他の性質が類似している。 大崩山花崗岩の年代は [ 「V.2 祖母山火山岩類」の項で ] 既述したように 20~21 m.y. とされており, 中新世初期を示している。

この黒雲母花崗岩の主要な分布地は南および南東隣の三田井・熊田両図幅地域である。 竹田図幅地域では熱変成帯の分布は広いが 地表露出は狭く, 緒方町 上畑の南方 1,000 m 付近の奥岳川沿いに 祖母山火山岩類 [ S-aa(など ?) ] および珪長岩 [ Yf ] を貫いて小範囲に分布するのみである。 また, 三重町 大白谷における上述のボーリング(42PASK-1 ; 地質図の B42)の深部に花崗岩類が出現する(通商産業省, 1969)。 近接した分布地は三田井図幅の緒方町 尾平鉱山周辺, および日之影町 奥村 [ ← 傾山の南南東方 3 km ] 付近などである。 参考のため, 尾平鉱山産の本岩の化学組成を第 8 表に示す。

第 8 表 尾平鉱山産 黒雲母花崗岩の化学組成。 産地 : 大分県 大野郡 緒方町 尾平鉱山(三田井図幅地域)。 分析者 : 滝本清。
Chemical compostion of biotite granite from Obira Mine

試料 1 2
SiO2 71.21 71.21
TiO2 0.27 0.25
Al2O3 13.81 13.79
Fe2O3 0.50 0.53
FeO 2.30 2.39
MnO 0.05 0.06
MgO 0.63 0.65
CaO 2.22 2.18
Na2O 3.87 3.85
K2O 3.32 3.28
P2O5 0.19 0.18
ZrO2 0.07 0.02
SnO2 0.95 0.03
B2O3 0.15 0.12
SrO 0.18 0.07
H2O + 0.51 0.71
H2O - 0.20 0.21
Total 100.43 99.53

[ V.3.4.1 黒雲母花崗岩の ] 岩石記載

1) 黒雲母花崗岩(上畑付近の岩体)

本岩は粗粒~中粒で, 優白色を呈し, 一般的に新鮮であり, 圧砕構造は示さない。

黒雲母花崗岩
産地
大分県 大野郡 緒方町 上畑の南南西 1,000 m,
標高 390 m( [ 巻末の ] 第 Ⅲ 図版 4)
化学組成
SiO2 : 71.21 %(緒方町 尾平産 ; 第 8 表の試料 1)
SiO2 : 71.21 %(緒方町 尾平産 ; 第 8 表の試料 2)

主成分鉱物 : 石英・正長石・斜長石・黒雲母
副成分鉱物 : 角閃石・電気石・燐灰石・ジルコン・スフェーン・磁鉄鉱・褐れん石

石英および正長石はもっとも多量に存在し, 径 5 mm 前後のことが多いが, さらに大きいこともある。 石英は他形を示し, 正長石は半自形の大晶をなしている。 正長石はカルルスバッド式双晶, バベノ式双晶をなし, 微細な包有物に富み, カオリン化, 絹雲母化などを受けて汚濁している。 斜長石と共生して しばしば微ペルト長石をなしている。 斜長石は半自形を呈し, 量が少なく, 灰曹長石に属し, 累帯構造を示し, アルバイト式双晶, アルバイト・カルルスバッド式双晶を示す。 黒雲母は粗い単独結晶をなし. 暗赤褐色~淡黄褐色の多色性を示す。 まれに緑色角閃石をみとめる。 電気石は長柱状~針状の結晶をなしている。 スフェーンは黒雲母に接して成長しているのをみとめることが多く, 1 mm 以下である。

2) 大白谷構造ボーリング [ 42PASK-1 ; 地質図の B42 ] の潜在花崗岩体

このボーリングは海抜 530 m の位置から垂直下方へ 1,200 m 掘進したが, そのうち 1,010 m すなわち海面下 480 m の位置に花崗岩類を把握し, 孔底までつづいた。 それは次のような多くの岩型を含む複合岩体である。

黒雲母花崗岩
細粒~中粒の優白質, 正長石 ≧ 斜長石で, アダメロ岩質であり, しばしばアプライト質となり, また, ざくろ石含有優白質アプライトも伴われる。
花崗閃緑岩
等粒状~斑状の灰色~暗灰色のアダメロ岩~トナル岩である。 有色鉱物として黒雲母および角閃石を含み. 菫青石変質物(緑泥石 + 絹雲母)やゼノリス~ゼノクリストも多い。
アルカリ深成岩類
斜長石 > 正長石 > 石英の量比関係をもつモンゾニ岩質のところが多い。 ほかにパーサイト質アルカリ長石の多い閃長岩もある。 いずれの場合も 灰鉄輝石質の単斜輝石を特徴的に含む。
花崗斑岩~斑状黒雲母花崗岩
斑晶はカルルスバッドおよびバベノ双晶をなす長柱状のカリ長石と, アルバイトおよびアルバイト・カルルスバッド双晶をなし, 累帯構造のある斜長石(灰曹長石~中性長石)とがおもな斑晶鉱物で, いずれも大きくめだっている。 ついで石英と黒雲母を斑晶として有する。 有色鉱物は黒雲母と少量の角閃石とである。 黒雲母はジルコン, 放射能ハロのある不明鉱物, 細柱状の燐灰石およびざくろ石などを包有する。 角閃石は緑~黄緑色の多色性がいちじるしい。 このほか, 赤褐~淡褐色の多色性のある褐れん石が副成分鉱物として含まれる。
石基も完晶質の花崗岩組織をなす。

V.3.5 花崗岩体の形態と分布

竹田図幅地域の新第三紀花崗岩体群は 三田井図幅地域のいくつかのものと類似のあり方を示し, まとめて同じグループの岩体群とみなすことができる。 いずれも露出部の長径は 1.5 km 以下で, やや大きいものは岩株, 小さいものはキュポラと称すべきであろう。

それらはいずれも既存構造に対して非調和 非整合で. 岩体接触部においては既存構造といちじるしく斜交している。 しかしながら, 岩体群をつらねたおよその方向は南西から北東へむかって一線上に近くならび, しかも次のような岩体の頂部の高さ, すなわち, それが南西方に高く 北東方へむかって沈むような傾向にある。

南西 尾平の岩体群(3個) 海抜 650~800 m
上畑の岩体 海抜 500 m 付近
豊栄鉱山坑内のアプライト脈 海抜 300 m 付近
北東 大白谷の潜在岩体 海面下 -480 m

岩体の頂部は硼素鉱物の生成その他の気成鉱化~変質が行なわれ, そこを中心として金属鉱化作用が波及しているが, それらは上記のような花崗岩体群の配列に支配される。 すなわち, 尾平鉱山付近では鉱床の主要部が侵食をうけで露出するが, その北東方の豊栄鉱山は, それより低位置にあるにもかかわらず, その主要鉱床は潜頭型である。 また, 大白谷の潜在岩体はボーリングによる把握であるが, その地表付近では 小規模な鉱床群が水平的な帯状配列をなしで分布している。

花崗岩体の配列方向は ほぼ 秩父帯における古期岩や超塩基性岩類の分布する方向であって, 古い断裂構造により 新期の花崗岩マグマの貫入位置がやや規制されることを示す。 また, 鉱化作用については, 後述のように古い断層や割れ目にそって鉱脈が生じたり, シルル紀石灰岩層を交代してスカルン鉱床が生ずるなど, 既存構造による支配性がいちじるしい。

V.4 [ 大野 おおの 火山岩類の ] 三宅山 みやけやま 火砕流 [ 以下の [注] 参照 ] (Om)

[注]
小野(1963)および柴田・小野(1974)の三宅山流紋岩と同じ。 なお本書では, 以下で誤解のおそれのないときは, 火砕流・泥流の語を現象のみでなく その堆積物をさす岩体名としても用いる。

本火砕流は大野火山岩類(小野, 1963)の一員であり, 主に北および北東隣の久住・犬飼両図幅地域に分布し, 竹田図幅地域では北縁西よりに岩体の南西端がわずかに露出している。 本図幅地域内では基底が露出していないが, 久住図幅地域では大野火山岩類の他の岩層と朝地変成岩類とを覆っている。

この岩体は流紋岩火砕流起源の緻密な溶結凝灰岩であり, 大部分の岩相は脱ガラス化した, 淡褐色, 石質の流紋岩である。 [ 図幅地域北端部・東西中央から西方に 4 km 付近の ] 城原 きばる の北方の路傍には黒色, 緻密なガラス質岩が露出しており, これは この岩体の基底の急冷相と思われる。 径 2~3 mm の長石・石英の斑晶をかなり多量(約 30 %)に含む。 黒色ガラス質岩では, ガラスの均質化のために葉理構造がほとんどなく, 本質レンズも小形で見えにくいために, 溶結凝灰岩であることを肉眼では判定しにくい。 脱ガラス化した石質岩では, やや淡色であったり, 空隙が集ることによって本質レンズとそれによる葉理とを認めることができる。

本火砕流の3個の試料について K - Ar 法の年代決定が行われた( 柴田・小野(1974)の OV-3, 4, 5 [ 以下の [注] 参照 ] )。 それらの測定値はそれぞれ 13.6, 13.9, 14.4 m.y. で, 平均して 14.0 m.y. であった。 同時に測定された大野火山岩類の下位層の白岩山火砕流(三重町図幅地域, OV-1)と 代三五山 だいさんごやま 溶岩(犬飼図幅地域, OV-2)については それぞれ 15.5, 14.2 m.y. であり, 大野火山岩類全体についての5個の平均値は 14.3 ± 0.4 m.y. であった。 この火山岩類の噴出年代は中新世中期とみなされる。

[注]
OV-3・4 の採取地点は地質図上に OV として示されている。 OV-5 は [ 本図幅の北隣の ] 久住図幅地域産である。
かんらん石輝石流紋岩溶結凝灰岩(64Z302 ; K - Ar 測年の試料 OV-3・4 の母岩)
産地 : 竹田市 城原 [ の南東方 1 km の ] 轟木 とどろき の北 0.7 km の道路傍

斑晶 : サニディン・斜長石・石英・単斜輝石・斜方輝石・かんらん石・鉄鉱・褐れん石

モード分析の結果はサニディンと斜長石とはそれぞれ約 10 %, 石英は約 6 %, 他の苦鉄質斑晶は 0.1~0.8 %, 基質は約 70 % である。 サニディンはほぼ Or :68 + Ab : 31 + An : 1.3, 斜長石は ほぼ均質な内核(~An : 50)から 細かい反覆累帯をしつつ ~An : 25 の外縁部にいたる累帯構造をなす。 単斜・斜方輝石・かんらん石は Fs もしくは Fa 成分にとみ, それそれほぼ Wo : 40 + En : 20 + Fs : 40, Wo : 3 + En : 27 + Fs : 70, Fo : 12 + Fa : 88 の成分である(曽屋・小野・奥村, 1974)。

基質 : 淡褐色のガラス。 扁平化したビトロクラスティック組織がきわめて明瞭。

V.5 鮮新世火山岩類

V.5.1 大渡 おわたり 溶岩(Ow)

この溶岩は, 図幅地域北東隅に近い緒方町の北方の大渡 [ ← 緒方の北東方 1.5 km ] ~宇土 [ ← 緒方の北北西方 1.5 km ] 付近の緒方川の川岸および川床にのみ露出する。 地表の露出では下位層との関係は不明であるが, 後述する試錐の結果では厚さは約 20 m あり, その下位に時代不明の礫層がある。

この溶岩は, 露頭では黒色緻密でやや気泡があり, 少量の斜長石斑晶が見える安山岩である。 小さい径の不規則な方状節理が発達する。

緒方町の北方の緒方川の右岸の水際でボーリングが行われた(地質図および第 38 図 [ ← 後述する「VI.2 阿蘇火山噴出物」の項で示すボーリング柱状図 ] の B4)。 そこでは, この溶岩の地表の厚さは約 10 m, 地下で 9.8 m, 計約 20 m の厚さであり, その下位は孔底まで 14.5 m の厚さは礫層であった。 礫層中の礫は ほとんどが大野川層群のものと思われる砂岩であった。

この溶岩は孤立した分布であり, 下位の礫層とともに 現在のところ詳細な層準を定める資料がないが, 一応 鮮新世のものとしておく。

輝石含有安山岩(63TDl30)
産地 : 緒方町 越生 こしお , 緒方川の南西岸, 大渡への橋の西側
斑晶 : 斜長石・普通輝石・紫蘇輝石・磁鉄鉱(計約 3 %)
石基 : 長柱状の斜長石・単斜輝石と細粒の磁鉄鉱とが多量の褐色ガラス中にある。

V.5.2 小園 こぞの 火砕流(Oz)

本火砕流の分布は極めて狭く, 図幅地域東縁北よりの緒方町 小園 [ ← 緒方の東南東方 2 km ] の西方に露出する他, さらに小さい分布が緒方駅の北西 2.5 km の高無礼 [ 位置および読み方不明 ; たかむれ ? ] に発見されている。 小園に分布するものは基底は露出せず, 高無礼のものは大野川層群を覆い, 両者とも平石礫層 [ H ] に覆われる。 小園では厚さ 10 m 以上ある。

この火砕流は細粒ガラス火山灰を基質とし, ごく少量の軽石を含む, 淡桃色, 非溶結の火山灰流である。 軽石はときに径 15 cm, 多くは径数 cm 以下で, 白~淡桃色, 長孔状あるいは繊維状によく発泡している。 斑晶として, ときに径 2 mm 以上のものがある六角板状の黒雲母と少量の角閃石が認められる。

時代を定める積極的な資料がないが, 新鮮であり, 平石礫層に覆われるので, 鮮新世のものとしておく。

黒雲母流紋岩軽石(69TD620)
産地 : 緒方町 小園の西, 堤の北方の路傍
斑晶 : 斜長石・黒雲母・磁鉄鉱・燐灰石
石基 : 無色ガラス

V.6 平石 ひらいし 礫層(H)

図幅地域の東縁中央部の奥岳川の北側とその北の 荒平池 あらひらいけ [ ← 緒方の南南西方 4 km ? ] の東側とにやや広い分布があり, 阿蘇火砕流 [ A4W, A4P ] の台地の中に それよりもやや高い丘陵をつくっている。 この他, 図幅地域北東部の火砕岩台地内に小島状か窓状をなして狭い分布が点在する。 古生界・大野川層群などを覆い, それらの起伏ある地形を埋積したもので, 層厚は厚いところで 130 m 以上ある。

この礫層は巨礫を含む あまり分級のよくない非固結の礫層で, ときに砂層およびシルト層をはさむ。 礫は径 20 cm 以下の円~亜円礫が多く, ときに径 2 m に達する巨礫をまじえる。 礫種は祖母山火山岩類の白色流紋岩溶結凝灰岩・斑状および無斑晶安山岩, 古生界のチャート・黒色泥岩などが多く, 少量の花崗岩・花崗斑岩を含む。 大野川層群のものと思われる砂岩・泥岩を顕著に含むこともある。 荒平池の北東の竹脇 [ 位置不明 ] の東では この礫層に厚さ 1 m, 灰色~暗灰色のシルト層がはさまれている。 シルト層は塊状で, 木片を含んでいる。

奥岳川の北側と荒平池の東側とにあるこの礫層は いずれも東北東 - 西南西の方向に細長く分布し, その頂部の高度は西から東にゆるく低下し, かつ, それぞれの西端にはこの礫層のつくる丘陵よりも高い大野川層群の島状の山体がある [ ← 大野川層群の奥河原内層(O1)? ] 。 このような分布状態と前述の構成礫種とからみて, この礫層は 祖母山山地から主に奥岳川の水系によって運び出された巨大な扇状地礫層が 侵食・開析された残りの部分と考えられる。

北および北東隣の久住・犬飼図幅地域の南部の大野山地の南側山麓には 田中礫層 とよばれる厚い礫層が堆積している。 同礫層は中新世中期の大野火山岩類よりも新しく, 更世前期と考えられる今市火砕流 [ I ] よりは古く, 久住図幅(小野, 1963)では鮮新世の地層とされた。 平石礫層については それより詳細に時代を限定する資料がないが, 両礫層の堆積条件の類似から 田中礫層と同様に鮮新世の地層としておく。

VI. 第四系

VI.1 更新世前期火山岩類

VI.1.1 今市 いまいち 火砕流(I)

分布 : 今市火砕流は北隣の久住図幅地域に主な分布があり, さらに北方へ, 別府・森図幅地域 [ ← 別府図幅地域は久住図幅の北隣, 森図幅地域は久住図幅の北西隣 ] にも分布しているらしい。 竹田図幅地域では 北縁から竹田市街の南方までの範囲に谷沿いの低地に露出し, この地域では阿蘇火砕流 [ A* ] の下位に連続して分布しているものと思われる。 この火砕流の噴出中心はまだ明らかでないが, 九重火山付近あるいはその東方地域の可能性がある。

層位 : 本火砕流は [ 大野火山岩類の ] 三宅山火砕流 [ Om ] を覆い, 鷹匠町火砕流 [ T ] および阿蘇火砕流群 [ A1 ?, A2, A3, A4W, A4P, A4B ? ] に覆われる。 この火砕流の正確な時代はまだ決定されていないが, 岩体の保存の程度と逆帯磁していることとから, ここでは更新世前期と考えておく。

層厚 : 本火砕流は現在の分布が限られているばかりでなく, 凹凸のある地形を埋積して堆積したために 当初から層厚に変化があったものらしく, 厚さを算定しにくい。 竹田図幅地域のすぐ北側, 久住図幅地域の南縁 [ ← 城原の西北西方 1.5 km(久住図幅地域内) ] の竹田市 鉢山におけるボーリング(地質図および第 37 図 [ ← 後述する「VI.2 阿蘇火山噴出物」の項で示すボーリング柱状図 ] の BH)では厚さ 46 m 以上(孔底が基底に達していない)であった。 平均の厚さは 30 m 以上であろう。

岩相 : 今市火砕流は複数のフローユニットからなり 構成は単純ではないが, 本図幅地域では露出が断片的なので岩相変化を統一的に観察できない [ 以下の [注] 参照 ] 。 非溶結の火山灰流・スコリア流, 弱~強溶結の溶結凝灰岩などの種々の岩相があるが, 結晶化した溶結凝灰岩が最も多い。

[注]
模式的な垂直の岩相変化は 「久住」図幅説明書(小野(1963)の p. 57~60)に記載してある。

非溶結の軽石質火山灰流は竹田市内の [ 岡城址付近の ? ] 岡城トンネルの壁に露出する。 基質は帯紫灰色のガラス火山灰であり, 径数 cm 以下の同質の軽石を含む。 軽石は流紋岩質で, やや発泡がよく, 斜長石斑晶を含む。 この非溶結の岩相は 竹田市街地でみられるように ガラス質の弱溶結相に移過する。

強溶結の溶結凝灰岩は竹田市街の東方の大野川沿いなどにみられ, 帯紫暗灰色, 緻密, 一般に脱ガラス化して著しく硬い。 本質レンズは長さ 1~5 mm の斜長石斑晶を数~10 % 含む。 基質は結晶および石質破片に富む。 しばしば 長さ数 mm の輝石の良晶を含んでいる。 脱ガラス化した岩石では 本質レンズがやや多孔質で, 基質には葉理に平行な板状の剥離があることが多い。 強溶結で脱ガラス化した岩相は 後述する Aso-1 火砕流の同様の部分とよく似ており, 肉眼による識別がむずかしいことがある。 このようなとき, この岩体は逆帯磁, Aso-1 火砕流は正帯磁 なので, 磁化方位を調べることは野外で岩体を識別するのによい助けとなる。

今市火砕流には気相晶出作用の著しい岩相が特徴的に多く, 豊後竹田駅の南側の 稲葉 いなば 川の河床などの各地でみられる。 基質は桃~桃灰色で, 白色, 多孔質の本質レンズを含む。 一般に脆く, 露頭面は円味を帯びる。

この火砕流の表層と思われる非溶結のスコリア流は, 図幅地域の北縁に近い竹田市 法泉庵 ほうせんあん [ ← 城原 きばる の南南東方 1 km ] 付近などでみられる。 スコリアの岩塊には径 10 cm 以上のものがあり, 漆黒色, 光沢があり, 斜長石斑晶が目立つ。

輝石流紋岩溶結凝灰岩(67TD358B2)
産地 : 竹田市 折立 おりたて [ ← 法師山の西方 2 km ]
本質レンズ
脱ガラス化した基質中に 斜長石・普通輝石・紫蘇輝石・磁鉄鉱・燐灰石の斑晶を含む。
基質
結晶片および石質破片の量が多く, その合計は 30 % をこえる。 著しい脱ガラス化のため, ガラス破片の境界が不鮮明である。

VI.1.2 河原立 かわらだて 火砕岩(Oa)

竹田市 次倉 つぎくら [ ← 恵良原 えらはる の東南東方 2 km ] の北方の大野川の河床(河原立 [ ← 恵良原の東方 2.5 km ] の対岸)におけるボーリング(地質図および第 38 図 [ ← 後述する「VI.2 阿蘇火山噴出物」の項で示すボーリング柱状図 ] の B2)において地下 29~50 m に発見された安山岩の火砕岩を河原立火砕岩とよぶ。 この岩石の地表露頭はないので地質図上には表現がなく, 地質断面図 F - H のみに示されている。

この試錐では地表から深さ 29 m まで Aso-1 火砕流であり, 以下 50 m の孔底まで 本層のやや緑色を帯びた 輝石安山岩・角閃石輝石安山岩の火山礫凝灰岩・凝灰角礫岩であった。 これらの岩石は固結度が強くはなく, 鏡下ではわずかに緑色粘土鉱物が見られる程度で, ほぼ新鮮である。 これに相当する岩体は付近の地表に露出していないが, 以上の岩相から 次節の下荻岳溶岩 [ Og ] と同様に 更新世前期の火山岩類の 一頁 いちページ であろう。

VI.1.3 下荻岳 しもおぎだけ 溶岩(Og)

本溶岩は図幅地域西縁中央部の下荻岳を構成する。 下荻岳は阿蘇火砕流の台地面から突出した 比高約 90 m の雲立した小峰であり, 阿蘇火砕流に覆われる以外 この溶岩の層位関係は不明である。

灰白色, やや多孔質で, 脆く, 流理構造のある溶岩で, 長さ数 mm の角閃石を顕著に含む。

下荻岳の西南西 2.5 km の阿蘇山図幅地内に上荻岳があり, 下荻岳と同様に火砕岩台地内の雲立峰であるが, その岩石は角閃石黒雲母流紋岩であって, 下荻岳のもの [ = 黒雲母角閃石デイサイト ] とは異なる。 おそらく, 両者および前節の河原立火砕岩は, 阿蘇カルデラの周囲に露出する 輝石安山岩~角閃石安山岩・ デイサイト~黒雲母流紋岩からなる(鮮新世~)更新世前期の先阿蘇火山岩類の一員で, 両荻岳のように孤立した山体は 開析された溶岩ドームか 溶岩流の一部であろう。

紫蘇輝石含有黒雲母角閃石デイサイト(64TD214)
産地 : 荻町 下荻岳の東側の山腹

斑晶 : 斜長石・緑褐色角閃石・黒雲母・鉄鉱・紫蘇輝石(微量)(計約 15 %)

斜長石の多くはやや円味を帯び, 逆累帯構造をもち, また, 虫食い状に無色ガラスを包有する。

微斑晶~石基 : 斜長石・黒雲母・角閃石・鉄鉱・無色ガラス

VI.1.4 鷹匠町 たかじょうまち 火砕流(T)

本火砕流の現在の分布は極めて狭く, 竹田市街地に数個所発見されている。 これらの地点, 例えば竹田高校の入口付近や同高校の正門前のトンネル西口付近など では, Aso-1 火砕流の基底が露出しており, その下位にこの火砕流がある(第 35 図および第 36 図 [ ← 後述する「VI.2 阿蘇火山噴出物」の項で示す竹田市街付近の地質図 ] )。 本火砕流は 豊後竹田駅の東方の稲葉川の左岸沿いの路傍(人家の裏など)で今市火砕流 [ I ] を覆う。

第 35 図 鷹匠町火砕流の風化面を覆う Aso-1 火砕流の溶結凝灰岩。 中間の縞状の部分は Aso-1 に伴う降下軽石・火山灰。 竹田市 豊後竹田駅の東方の稲葉川の北岸, 大分バス寮の裏。
Welded tuff and air-fall pumice and ash of Aso-1 overlying on the weathered surface of Takajo-machi Pyroclastic Flow.

本火砕流は軽石を含む火山灰流であり, 灰白~淡紅色を呈し, 全く溶結していない。 細粒のガラス火山灰中に数 % 以下の軽石と石質破片とを含む。 軽石はまれに径 5 cm, 一般には径 1 cm 以下であり, 白色, 長孔状に発泡している。 黒雲母および角閃石斑晶をわずかに含む。 石質破片は一般に径 1 cm 以下であり, 主に安山岩からなる。

前述したように, この火砕流が露出しているときは ほとんど常に その風化・侵食面を Aso-1 火砕流(あるいは それに伴う降下火砕物)が覆っているので, 鷹匠町火砕流の噴出は Aso-1 火砕流のやや前ということになる。 本火砕流が黒雲母・角閃石の斑晶をもつことから, 小野(1965)はこの火砕流を九重火山起源と考えたが, 同火山起源の他の火砕流(後述)とよく似ているとはいえないので, ここでは 一応 独立した給源不明の火砕流としておく。

角閃石黒雲母流紋岩軽石(72TD810)
産地 : 竹田市 竹田高校の南側の崖
斑晶 : 斜長石・黒雲母・褐緑色角閃石・磁鉄鉱
石基 : 無色ガラス

VI.2 阿蘇 あそ 火山噴出物

阿蘇火山噴出物は この図幅地域では 南部の山地を除いた台地状の地域の大部分を占め, 最も広い面積を覆っている。 そのうち 西部の波野・荻台地と, 他の地域でも とくに平坦な台地との表面を覆っているのは, 阿蘇カルデラ内の中央火口丘群から噴出した火山灰・軽石の降下堆積物 [ Ac ] であるが, それ以外はすべて, 現在の阿蘇カルデラの形成より前に噴出した火砕流堆積物・降下火砕物・溶岩流である。

この火砕流は 阿蘇カルデラの周囲に広く分布して阿蘇火砕流と総称されるものであって, 現在のカルデラ内にあった噴出口から噴出し, カルデラの形成に導いたものである。 阿蘇火砕流は それぞれがかなり長い時間間隔をおいた4回の大きい噴火サイクル [ 以下の [注1] 参照 ] に噴出したもので, それらを噴火サイクルごとに古い方から順に Aso-1, Aso-2, Aso-3, Aso-4 火砕流とよぶ [ 以下の [注2] 参照 ] 。 火砕流を噴出したこれらの大きい噴火サイクルの中間には, 降下堆積物の存在のみから知られる より小さい噴火サイクルが多数回ある。 また, Aso-1 と Aso-2 との間には溶岩流が流出しており, この図幅地域には そのうちの 玉来川 たまらいがわ 溶岩 [ At ] が分布している。

[注1]
中村ほか(1963)の「噴火輪廻」にあたる内容を, 以下には「噴火サイクル」あるいは単に「サイクル」として, 「Aso-2 サイクル」というように使う。
[注2]
前述の「V.4 三宅山火砕流」に対する [注] で述べたとおり, 以下で誤解のおそれのないときは, 火砕流の堆積物も「Aso-1 火砕流」あるいは単に「Aso-1」のようによぶ。

区分の基準 : Aso-1 から Aso-4 までの火砕流群は 同一噴火サイクルに属することを基準とした区分である。 1噴火サイクルの噴出物中には 鉱物・化学組成を異にするものがあり, また, 噴火形式(放出~降下, 火砕流など), 噴出から堆積までの諸要因(分級・溶結など)による変化を生じ, 1サイクル内で多様な岩相変化のあることが普通である。 たとえば, 同一サイクル内の非溶結軽石流と溶結凝灰岩よりは 他のサイクル間の軽石流同士, 溶結凝灰岩同士の方がそれぞれみかけは似ている。 また, 各サイクルの噴出物の全要素がどの地域にも一様に分布しているわけではなく, 地域ごとに構成要素が異なっていることがある。 一方, 降下火砕物は 分布状態(層厚・岩相の変化)が規則的であり, それらのうちの鍵層を確実に追跡することができる。 従って, 各火砕流は それらの間の降下火砕物によって確実に対比することができる。 こうして確立された火砕流の層序を降下火砕物の発達の不良な地域にも延長して カルデラ全周にわたる層序を定める。 小野(1965)は阿蘇火砕流を Aso-Ⅰ, -Ⅱ, -Ⅲ に区分したが, これは主に岩相の類似にもとづいたための対比の誤りであって, 小野・曽屋(1968), 渡辺・小野(1969)は Aso-1, -2, -3, -4 に改めた。 上記以外にも阿蘇火砕流群を区分した報文は多数あるが, それらの区分の基準は必ずしも明らかではない。

Aso-2, -3, -4 の各火砕流は それぞれいくつかのサブユニットに分けられる。 これらのサブユニットは構成物・溶結度などのちがいによって区別され, 1サブユニットは単一のフローユニット(らしい)のことも, ひきつづいて堆積した 岩相のよく似ているフローユニット群のこともある。 したがって, 各サイクルの火砕流は それぞれ複数のフローユニットからなり, またサブユニットごとに溶結度が不連続的に異なるので, 1サイクルの火砕流全体は compound cooling unit [ 以下の [注] 参照 ] を形成する。

[注]
compound cooling unit は以下の論文による。
Smith,R. L.(1960): Ash flows. Bull. Geol. Soc. Am.,vol. 71,p. 795~842.

1噴火サイクルの堆積物全体の分布は広大であるが, その中で各サブユニットの分布は限られている。 逆に, 阿蘇火砕流全体でサブユニットあるいはフローユニットの数は多数あるが, これまで知られている限り 火砕流は Aso-1 から Aso-4 までの4回のサイクルのどれかに属しており, それ以外の火砕流はカルデラの全周を通じてまだ発見されていない。

降下火砕物には 火砕流を流出させた4回の噴火サイクル中に噴出したものと, それらの中間の別のサイクルによるものとがある。 これらの降下火砕物は, 保存地点の分布が偏在しているために 必ずしも信頼できる等層厚線を描くことはできないが, 阿蘇カルデラの内側に噴出源があったと考えて差支えない。

阿蘇火山噴出物の層序を 他の第四紀火山岩とともに第 9 表に示す。

第 9 表 竹田図幅地域周辺の第四紀火山岩の層序表

阿蘇火山 九重火山
(カルデラおよびその西側) 竹田図幅地域 (久住図幅地域)
[ 第 9 表に関する注意書き ]
括弧 "()" 内は本図幅地域に分布しないもの, また N と R はそれぞれ正帯磁と逆帯磁を示す。

竹田地域の阿蘇火砕流 : この図幅地域は, 阿蘇火砕流の分布地のなかで その層序を確立するために最も重要な地域である。 阿蘇火砕流について世界でも先駆的な研究を行い, 現在の研究の基礎を築いた松本唯一も その総括(MATUMOTO, 1943)の中でこの地域の地質を記載している。 この地域が重要と考えられるのは次のような理由による。

  1. カルデラの東側のこの地域は 北・南・西側に比べて Aso-1 噴出以前の地形が低平であり, 火砕流が堆積しやすく, 且つ, 保存がよかった。 そして, 1回の火砕流の流出ごとに基盤の起伏は埋められ, 火砕岩台地は広く 厚く成長した(小野, 1965)。 このため, 各噴火サイクルの火砕流とも比較的整然と分布し 累重している。
  2. この地域は噴出中心の東側に位置しているため 火砕流の中間の降下火砕物が厚く分布し, 且つ, 平坦な台地上ではそれらの保存がよいので 各火砕流を識別するための確実な鍵層となる。
  3. 下位から順次形成された火砕岩台地は現在は深い峡谷に刻まれ, その断面をみることができる。
  4. 火砕流の谷埋め現象が典型的に発達している。

各火砕流が整然と累重しているといっても それは他の地域と比較してのことであって, 火砕流の累重関係は細部ではかなり複雑である。 この地域は阿蘇火砕流の活動期間を通じて陸域であり, 現在のような下刻は過去の噴火サイクルの間にも継続して行われていたらしい。 Aso-4 火砕流によって埋積された谷を複元すると, それらは現在のすべての大きい河川の流路とほとんど同じ位置にあったことがわかる。 このように, 1つの火砕流が形成した台地は, 次の火砕流の流出までに 平坦な台地と深い箱状の峡谷とが交互する 現在とよく似た火砕岩台地特有の地形をつくった。 従って, それを埋積した次の火砕流は, 台地上に薄く整然と堆積した部分と 峽谷を埋積した著しく厚い部分とに分れる。 後に述べるとおり, この両部分は分布高度が異るのみでなく, 溶結・結晶作用の程度が著しく異なるために固結後の岩相が異なり, それは, しばしば対比を誤らせて層序の混乱の一因ともなった。 この図幅地域では谷埋め現象が典型的に発達しているので, この地域での観察は 全体の層序をたてることがより困難な他の地域の理解に役立つ。

Aso-4 火砕流の地形の項 [ ← 後述する「VI.2.8 Aso-4 火砕流」の小項目の「地形」の項 ] で述べるように, 火砕岩台地では火砕流が一旦 谷を埋積しつくしても 次の谷は以前と同じ場所にでき易く, その結果, 同じ場所で谷埋めが繰返される。 竹田市街地付近には このようにして谷沿いに多くの火砕流のユニットが集中して露出し, それらの層序関係を明確に示している(第 36 図および [ 巻末の ] 第 Ⅳ 図版 1)。

第 36 図 竹田市街付近の地質図。 矢印は本文中の写真の撮影地で, 番号 35, 38, 39, 53 はそれぞれ第 35, 40, 41, 55 図に対応する。 C : 市役所, G : 竹田女子高等学校, H : 竹田高等学校, N : 滑瀬 ぬめりぜ 橋, O : 岡城, S : 国鉄 豊後竹田駅, U : 魚住ダム。
Geologic map of Taketa city. Arrows show the site of photographs in the text, and numbers 35, 38, 39 and 53 indicate those of Figres 35, 40, 41 and 55 respectively.

[ 第 36 図に関する注意書き ]
地質図の凡例に関する記載は省略する。

この地域において行われた数本のボーリングによって, 開析がおよんでいない台地部にも上述の層序がそのまま連続していることが明らかになった。 第 37, 38 図にこれらのボーリング柱状図を示す。

第 37 図 竹田図幅地域および付近のボーリング柱状図。 各地点は地質図上に示されている。 各地点における小野の観察および以下の資料による。 B0 : 九州農政局 計画部 資源課(籾倉克幹)(1970), B1 : 加藤完・柳原親孝・伊藤吉助・中川忠夫・小林竹雄(地質調査所 試錐課 ; 未公表), BS : 大分県(1970), BH : 竹田市(未公表)。
Columnar sections of drill holes in and around the Taketa district. Drill sites are shown in the geologic map.

[ 第 37 図に関する注意書き ]
柱状図の凡例に関する記載は省略する。

第 38 図 竹田図幅地域のボーリング柱状図。 加藤完・小林竹雄(地質調査所 試錐課)および小野の未公表資料による。
Columnar sections of drill holes in the Taketa district. Drill sites are shown in the geologic map.

カルデラの形成 : 阿蘇カルデラの現在の地形は Aso-4 火砕流の流出直後に形成されたものと考えられる。 しかし, Aso-4 が噴出する以前に Aso-1 から Aso-3 までの各噴火サイクルに伴って カルデラが形成されていたか否かについては, 現在は直接の資料がない。 Aso-1 から Aso-3 までの各噴火サイクルの噴出物量は それぞれ数 10 km3 に達するので, それぞれのサイクルごとにカルデラは形成されたものと ここでは考える。 その場合, 各サイクルの堆積物がカルデラの四周にほぼ一様に分布することと, 前述したように降下火砕物の噴出源も現在のカルデラ地域にもとめられることから, Aso-4 以前にもカルデラがあったとすれば それは現在のカルデラ地形のなかにあり, 次にできたカルデラは以前のカルデラに重複し, おそらくそれを拡大して形成されたものなのであろう。

時代 : 阿蘇火砕流の測年値はまだ確定的なものが得られてない。 これまでに行われた阿蘇火砕流および それと層位関係の明らかな他の岩類の 14C 法および K - Ar 法の測年の結果を 第 10 表に示す。

第 10 表 阿蘇火砕流に関係した 14C 法および K - Ar 法の測年値。
Absolute-age data by 14C and K - Ar method related with Aso Pyroclastic Flows.

14C 法の測年値(B. P. Y.)

ID 測年値 測定番号
(GaK-)
備考 文献
Aso-4 火砕流を覆う岩体
A 21,000~22,000 多数 姶良 Tn 火山灰 入戸 いと 妻屋 つまや 火砕流 } (姶良 カルデラ) 町田・新井(1976)
B 30,600 ± 3,000 283 大三東 おおみさき ローム(島原半島) Kigoshi et al(1964)
C > 32,300 2267 飯田 はんだ 火砕流(九重火山) 松本ほか(1970)
Aso-4 火砕流
D 26,400 ± 1,100 478 一色ほか(1965)
E 29,100 ± 400 1588 新発表
F > 31,000 273 Kogiso et al(1964)
G 32,600 +3,200 -2,300 282 八女 やめ 粘土層(= Aso-4) Kogiso et al(1964)
H 33,100 +3,100 -1,900 554 一色ほか
I 35,100 ± 900 1597 新発表
J 39,400 +1,700 -1,400 4989 新発表
K > 43,000 2212 新発表
Aso-3 火砕流
L 23,000 ± 750 480 一色ほか
M > 31,500 2210 新発表
N > 41,800 2211 新発表
Aso-2 火砕流
O 20,100 ± 600 479 一色ほか
P 35,600 +5,600 -2,200 553 新発表
Q > 39,800 1587 新発表
(Aso-1 火砕流)
K - Ar 法の測年値(m. y.)

ID 測年値 備考 文献
Aso-1 火砕流に覆われる岩体
R 0.43 ± 0.02 坂梨流紋岩 兼岡・小嶋(1970)
S 0.84 ± 0.03 宮地安山岩 兼岡・小嶋(1970)
[ 第 10 表の測年試料の詳細 ]

ID 試料番号 試料材質 産地(5万分の1地形図名)
D 64TD165B 炭化樹幹 大分県 竹田市 千引の小採石場(竹田)
E 67TD368-1 炭化樹幹 大分県 竹田市 平田の西方の小採石場(竹田)
H 64TD180B 炭化樹幹 大分県 竹田市 鏡の小採石場(竹田)
I 67TD472-1 炭化樹幹 熊本県 阿蘇郡 高森町 多多野の大谷ダムの左岸堤体の直上(竹田)
J 72MF80
[ 採取 : 渡辺一徳 ]
炭化樹幹 熊本県 上益城郡 益城町の 深迫 ふかさこ ダム( 御船 みふね [ ← 阿蘇山の南西隣 ]
K 68YH30 炭化樹幹 熊本県 菊地市 中山の神社の東側(八方ガ岳)
L 64AS90 炭化樹幹 熊本県 阿蘇郡 一の宮町 滝室坂の国道 57 号(阿蘇山)
M 67AS330-1 炭化樹幹 熊本県 阿蘇郡 高森町 大村の東のカルデラ縁への道(阿蘇山)
N 68AS90 炭化樹幹 L と同じ(阿蘇山)
O 64AS72-1 炭化樹幹 熊本県 阿蘇郡 一の宮町 城山の「やまなみ」ハイウェイ(阿蘇山)
P 64AS86P 腐植 熊本県 阿蘇郡 一の宮町 滝室坂の国道 57 号(阿蘇山)
Q 67AS72C 炭化樹幹 O と同じ(阿蘇山)
R 64AS70 全岩 熊本県 阿蘇郡 一の宮町 浄土寺の東のカルデラ縁への道(阿蘇山)
S 61AS19 全岩 熊本県 阿蘇郡 一の宮町 妻子が鼻の西下の国道 265 号(阿蘇山)

Aso-1 火砕流は 坂梨 さかなし 流紋岩(0.43 m. y.)を不整合に覆い, それよりかなり新しい。 Aso-2, Aso-3 両火砕流の測年値はともに有限値と無限(不定)値とが得られているが, Aso-4 火砕流の値からみて 無限値の方が正しいのであろう。 Aso-4 火砕流には数多くの 14C 測年値があり, そのうちの1つ( [ 試料の ID が K の ] GaK-2212)は > 43,000 B. P. Y.を示す。 値がばらつく理由は現在明らかではないが, 14C 測年法の限界に近い試料に対しては 微量であっても現在の炭素(modern carbon)の混入の与える影響が大きいことと, 試料採取の際に微細な現生植物を完全に取除くことの困難さとを考えると, 古い測年値の方が真の年代に近いものと考えられる。 また, Aso-4 火砕流を覆う 飯田 はんだ 火砕流( [ 試料 ID が C の ] GaK-2267)は 32,300 B. P. Y.よりも古い。 以上から, Aso-4 火砕流の噴出年代は 4 万年よりも古いのであろう。

各火砕流間には著しい侵食間隙がある。 [ 先に「竹田地域の阿蘇火砕流」の小項目で述べたように ] 現在の Aso-4 火砕流の侵食地形と各火砕流が埋積した地形が似ていることから, 各時間間隔も Aso-4 火砕流噴出後から現在までと同様だとすると, Aso-1 火砕流の噴出は 10~20 万年前となる。 その後, Aso-2, -3 およびそれらの間の各噴火サイクルの活動を経て, 多分, 4 万年よりも以前に Aso-4 火砕流が噴出し, それ以降から現在まで阿蘇カルデラ内の中央火口丘群の活動が続いている。

岩石 : 阿蘇火砕流およびその間の溶岩流をつくる岩石は 基性安山岩から流紋岩までの組成範囲にわたる。 そのうち Aso-1 火砕流は輝石流紋岩, Aso-1 と Aso-2 との間の溶岩流は基~中性の安山岩, Aso-2 サイクルと Aso-3 サイクルとの噴出物は基~中性の輝石安山岩と輝石流紋岩, Aso-4 火砕流は中性の輝石角閃石安山岩 [ 以下の [注] 参照 ] と輝石角閃石流紋岩とからなる。 各火砕流間の小噴火サイクルに放出された軽石は これまで知られている限りは輝石流紋岩である。 この他に, より風化の進んだ細粒部分には安山岩質のもののある可能性がある。 一般的にいって, 1噴火サイクル中では 初期に噴出した岩石ほど酸性で, 後期のものが基性に変化する傾向がある。

[注]
阿蘇カルデラ西側の地域から, Aso-4 サイクル末期の噴出物として基性安山岩のスコリア流が最近発見された(渡辺, 1976)。

これらの岩石には, 全体を通じて, 斑晶の少ない岩石が多い。 溶岩流の一部の Aso-3C, Aso-4B の一部などには斑晶量が 20 容量 % あるいはそれ以上のものがあるが, その他はすべて 10 % 以下であり, Aso-2 および Aso-3B の岩石は無斑晶岩に近い(第 11 表)。

第 11 表 阿蘇火山の先カルデラ噴出物の鉱物組成(試料の記載は第 12 表をみよ)。
Modal composition of pre-caldera rocks of Aso Volcano (Numbers are the same as those in the Table 12).

試料 A3 B1 B2 CR C5 D1 D5 D6 * E3 E4 F3 F5 ** sample
斜長石 5.5 28.3 4.4 0.8 2.8 5.7 0.2 16.3 7.7 4.4 8.4 14.1 Plagioclase
かんらん石 - 2.8 - - - - - 0.1 - - - 0.1 Olivine
普通輝石 1.0 4.7 0.4 - 0.4 0.4 - 1.3 - - 0.1 0.8 Augite
紫蘇輝石 0.5 0.4 0.4 - 0.2 0.2 - 0.4 0.6 0.5 0.5 1.1 Hypersthene
角閃石 - - - - - - - - - 1.2 0.8 3.6 Hornblende
鉄鉱 0.5 0.9 0.3 0.1 0.4 0.5 - 0.9 0.3 0.7 0.4 1.4 Iron ore
燐灰石 0.1 - - - - 0.1 - - - - - 0.1 Apatite
斑晶(合計) 7.6 37.1 5.5 0.9 3.8 6.9 0.2 19.0 8.6 6.8 10.2 21.2 Phenoryst (total)
石基 92.4 62.9 94.5 99.1 96.2 92.0 99.7 81.0 91.4 93.2 89.8 78.8 Groundmass
岩片 - - - - - 1.1 0.1 - - - - - - Lithic fragment
[ 第 11 表の試料(sample)に関する注意書き ]
D6 * : D6 を含む4個の同種岩石の分析値の平均
F5 ** : Lipman(1957)の Table 5 からの計算値

火山岩の斑晶の珪長質鉱物は斜長石のみであり, 石英・カリ長石はない。 斑晶の鉄苦土珪酸塩鉱物としては輝石・角閃石と少量のかんらん石とがある。 角閃石は普通角閃石であり, Aso-4 サイクルの岩石のみに含まれ, Aso-1 以後 Aso-4 サイクル直下の降下堆積物までのすべてを通じ角閃石は含まれず, 輝石のみである。 輝石の斑晶は, 角閃石を含まない岩石では紫蘇輝石・普通輝石の双方を含み, 角閃石を含む岩石では紫蘇輝石のみか, それに少量の普通輝石を伴う。 かんらん石は, 多斑晶の基性安山岩には顕著に, その他の基~中性岩にはときとして含まれる。

これまでになされた岩石の化学分析のうち, 図幅地域外のものも含めて, 代表的な 21 個の分析値を第 12 表に示す。 同表に示した岩石の命名は久野(1976)の分類表 [ 以下の [注] 参照 ] にほぼ従っているが, 同分類表によると C8・D6 は粗面安山岩となり, また B2・CR・C1・C7・D5・F5 の各岩は色指数 10~20 の中性岩であるが, ノルム Q が 10 以上で, かつ, Or > An であるため同分類では未定義の領域に入り 命名できない。 以上の事実は, これらの岩石が日本産の通常のカルクアルカリ火山岩に比べて著しくアルカリ, とくに K2O に富んでいることに由来する。 本書では岩石群の組成変化の連続性を考えて, C8・D6 をも含め, 中性岩全体を安山岩とよぶことにする。 また, 第 12 表の岩石のうち Aso-1 から Aso-3 まで(同表の A~D)の岩石は Aso-4(E・F)の岩石に比べて K2O / Na2O が高く, 2つの異なる成分変化を示す。 第 13 表に Aso-1 から Aso-3 までと Aso-4 とに分けて平均化学組成変化を示す。

[注]
久野の分類表は以下の教科書の表 21(p. 288)のものである。
久野久(1976): 火山及び火山岩,第2版, 283 p.,岩波書店,東京

第 12 表 阿蘇火山の先カルデラ噴出物の化学組成。
Chemical composition of pre-caldera rocks of Aso Volcano.

主成分の組成(水を除いた再計算値)/ Major oxides, recalculated without H2O.

sample A3 A5 B1 B2 CR C1 C4 C5 C7 C8 C9 D1 D3 D5 D6 E1 E3 E4 E5 F3 F5
ノルム / Norm

sample A3 A5 B1 B2 CR C1 C4 C5 C7 C8 C9 D1 D3 D5 D6 E1 E3 E4 E5 F3 F5
原分析値と H2O の合計 / H2O and total of the original analyses.

sample A3 A5 B1 B2 CR C1 C4 C5 C7 C8 C9 D1 D3 D5 D6 E1 E3 E4 E5 F3 F5
[ 第 12 表に関する注意書き ]
分析者 / Analyst
C7 : 大森貞子 / T. OHMORI
C8, D5, E1, E3, F3, F5 : 倉沢一 / H. KURASAWA
others(14 samples): 大森江い / E. OHMORI
分析試料の詳細
Aso-1 火砕流
A3 : Pyroxene rhyolite, essential block in welded tuff of Aso-1, 64AS86I1,
熊本県 阿蘇郡 一の宮町 滝室坂の国道 57 号傍, 標高 620 m (阿蘇山)
A5 : Vitric ash of pyroxene rhyolite, non-welded base of Aso-1 Pyroclastic Flow, 68TD566A1,
大分県 竹田市 竹田高校のグラウンド入口 (竹田) 
Aso-1 と Aso-2 との間の熔岩
B1 : Hypersthene-bearing andesite - augite andesite, Matoishi Lava, 6WF121A1,
熊本県 阿蘇郡 阿蘇町 的石の北西のカルデラ壁, 標高 820 m (菊池)
B2 : Pyroxene-bearing andesite, Tamarai-gawa Lava, 67TD469,
大分県 竹田市 長迫の北西の大谷川 白水ダムサイトの右岸側 (竹田)
Aso-2 サイクルの噴出物
CR : Pyroxene-bearing andesite, Aso-2R Pyroclastic Flow (secondary flowed), 67WF80G,
熊本県 菊池群 大津町 畑の岩戸神社の社殿の裏 (菊池 ; 小野・渡辺(1974))
C1 : Pyroxene-bearing andesite, scoria of Aso-2V Scroria Fall, 68AS67A,
熊本県 阿蘇郡 一の宮町 滝室坂の旧道, 標高 640 m (阿蘇山)
C4 : Pyroxene rhyolite, pumice of ASO-2TL Pumice Fall, 68TD588TL,
大分県 竹田市 竹田女子高校の校庭傍 (竹田)
C5 : Pyroxene-bearing rhyolite, essential lens in welded tuff of Aso-2A, 64AS86II,
熊本県 阿蘇郡 一の宮町 滝室坂の国道 57 号傍, 標高 640 m (阿蘇山)
C7 : Aphyric andesite, bomb-form essential block in Aso-2B Pyroclastic Flow, 64AS89A,
熊本県 阿蘇郡 一の宮町 滝室坂の国道 57 号傍, 標高 730 m (阿蘇山)
C8 : Aphyric andesite, bomb-form essential block in Aso-2B Pyroclastic Flow, 61AS25,
産地は C7 と同じ
C9 : Andesite, scoria of Aso-2T Scoria Fall, 64AS89F,
産地は C7 と同じ
Aso-3 サイクルの噴出物
D1 : Pyroxene-bearing rhyolite, essential lens in welded tuff of Aso-3A, 64TM2,
熊本県 阿蘇郡 高森町 柳谷の国道傍 (高森)
D3 : Pyroxene rhyolite, oumice in Aso-3A Pyroclastic Flow, 67TD425A,
大分県 竹田市 百木の南西 600 m (竹田)
D5 : Aphyric andesite, essential block in Aso-3B Pyroclastic Flow, 61TD12B,
大分県 竹田市 茶屋辻の南方の魚住ダムの上流側の左岸 (竹田)
D6 : Pyroxene andesite, bomb-form essential block in Aso-3C Pyroclastic Flow, 61AS22B,
熊本県 阿蘇郡 一の宮町 滝室坂の国道の南 200 m, 標高 780 m (阿蘇山)
Aso-4 火砕流
E1 : Vitric ash of hypersthe rhyolite, non-welded base of Aso-4A Pyroclastic Flow, 61IK126A2,
大分県 大野郡 犬飼町 戸上の東 500 m (犬飼)
E3 : Hypersthene rhyolite, essential lens in welded tuff of Aso-4A, 61ME67D,
大分県 大野郡 大野町 矢田の東 1 km の平井川の右岸 (三重町)
E4 : Hypersthene - hornblende rhyolite, white-colored pumice in Aso-4A Pyroclastic Flow, 68ME501A3,
大分県 大野郡 清川村 砂田の北西 300 m (三重町)
E5 : Hypersthene - hornblende rhyolite, dark brown-colored pumice in Aso-4A Pyroclastic Flow, 68ME501B5,
産地は E4 と同じ
F3 : Augite-bearing hypersthene - hornblende rhyolite, essential lens in welded tuff of Aso-4B, 61TD16B1,
大分県 竹田市 戸上の国道 57 号傍 (竹田)
F5 : Olive-bearing pyroxene - hornblende andesite, essential lens in welded tuff of Aso-4B, 61AS23A3,
熊本県 阿蘇郡 一の宮町 滝室坂の国道 57 号傍, 標高 780 m (阿蘇山 ; Lipman(1967))
[注]
産地の後の括弧 "()" 内に5万分の1地形図名を示した。
上記の括弧 "()" 内に出典をあげた CR・F5 以外はすべて新発表の分析値

第 13 表 阿蘇火山の先カルデラ噴出物の平均化学組成変化。
Average chemical variation of pre-caldera rocks of Aso Volcano.

Aso-1, 2, 3 Aso-4
1 2 3 4 5 6 7
D.I. (range) 40~50 50~60 60~70 70~80 80~90 70~80 80~90
No. of Analyses 1 3 6 7 5 1 10
SiO2 54.80 57.05 60.51 65.19 67.65 63.87 68.32
TiO2 0.87 1.01 1.15 0.88 0.76 0.80 0.57
Al2O3 17.55 18.85 16.35 16.23 15.85 17.07 16.09
Fe2O3 3.12 3.38 3.00 1.73 1.58 1.63 1.17
FeO 5.45 4.22 4.26 3.02 1.94 2.61 1.57
MnO 0.15 0.12 0.15 0.11 0.11 0.12 0.11
MgO 4.45 2.44 1.96 1.09 0.75 1.75 0.92
CaO 8.58 6.60 4.54 2.89 2.25 3.51 2.11
Na2O 3.02 3.39 3.84 4.04 4.09 4.67 4.72
K2O 1.79 2.66 3.78 4.57 4.88 3.58 4.20
P2O5 0.22 0.28 0.46 0.25 0.14 0.39 0.22
D.I. 41.9 53.5 66.2 77.0 82.5 73.6 83.7
C.I. 29.1 18.1 17.6 10.4 7.1 11.5 6.8
[ 第 13 表に関する注意書き ]
D.I. : Differentiation Index
C.I. : Color Index

VI.2.1 Aso-1 火砕流(A1)

名称・分布 : Aso-1 火砕流は阿蘇火山の最初期の噴出物である。 カルデラの東および北縁に連続して分布し, 下位層を不整合に覆っている。 小野(1965)の Aso-Ⅰ にあたる。 本図幅の地域では西半部の大谷(大野)川・ 玉来 たまらい 川・稲葉川などの河谷の底にのみ露出し, 東方には竹田市街を経て, その 2 km 北東がこれまで知られている分布の東限である。

層位 : 図幅地域の北西隅の稲葉川沿いと竹田市街地とでは今市火砕流 [ I ] を, 同じ竹田市街地の一部では鷹匠町火砕流 [ T ] を(第 35 図), 図幅地域中央部の次倉の試錐(第 38 図の B2)では河原立火砕岩 [ Oa ] を, また分布の東縁の竹田の北東の 笹無田 ささむた [ ← 竹田の北東方 2 km ] では平石礫層 [ H ] をそれぞれ覆っている。

第 39 図 Aso-1 火砕流の分布(アミの部分)と厚さ(m)。 括弧内の数字はボーリングによる。 打線部は下位の岩層の分布を示す。
Distribution (shaded area) and thickness in meters of Aso-1 Pyroclastic Flow. Dashed area represents exposure of underlying beds.

層厚 : カルデラ東縁から本図幅地域にかけての分布概念図と層厚とを第 39 図に示す。 この地域内では Aso-1 火砕流は翼部を除いては基底が露出していないので, 示された層厚は カルデラ縁以外は すべで試錐の資料による。 また, この火砕流はかなり削剥を受けており, 当初の表層部はほとんど保存されていないので, 現在 測定される厚さは当初の厚さよりも薄い。 第 39 図にみられるとおり 本火砕流は西方の火砕岩台地ではかなり厚く, 70 m あるいはそれ以上あり, 東の竹田市街近くで急に薄くなり 尖滅している。 これは この火砕流が基盤のかなり起伏の大きい地形を低所から埋積したためと思われる。

岩相 : Aso-1 は基底部に薄い降下軽石層があり, その上に火砕流がのる。 火砕流堆積物の大部分は強く溶結している。 Aso-1 の基底が露出しており, 従って そこにある降下軽石層が観察できるのは 本図幅地域では竹田市街地のみである。 そこでは 露出している基底面はほとんどつねに傾斜しており, その上にのる火砕流は薄く(1~2 m), かつ, 基底が高くなる方に向かってさらに薄くなる( [ 巻末の ] 第 Ⅳ 図版 1)。 竹田市街の近傍でも [ 竹田の南方 1.5 km の ] 魚住の滝付近のように河床に露出するものは, 層厚が 5 m 以上あって基底がなお露出してなく, 岩相も薄い断面の部分とはやや異なる。 このような部分は火砕流が基盤の谷を埋めてやや厚く堆積した軸部であり, 基底が露出して 堆積物が側上方に薄失する部分は火砕流の翼部にあたる。

第 40 図 Aso-1 の薄い断面。 竹田市 竹田高校のグラウンド入口。
Columnar section of thin Aso-1 at Taketa city.

第 41 図 第 40 図に同じ [ = Aso-1 の薄い断面の露頭写真 ]
Same as the Fig. 40 [ = Photograph of thin Aso-1 exposure ] .

竹田市街地の Aso-1 の薄い断面の1例を以下に示す(第 40・41 図)。 下位層(ここでは鷹匠町火砕流 [ T ] )の風化面上に厚さ 60 cm の白~黄灰白色の降下軽石層(A)があり, その上に 数~10 cm の厚さの 白~桃白色の軽石砂まじりの灰と黒色の砂状の灰とが2回繰返す特徴的な互層(B)があって, その上に火砕流の本体がのる。 それは暗褐色のかなりの分級のよい細粒ガラス火山灰であり, 下部数 10 cm はサラサラした非溶結の灰(C)であり, その上から同質のまま急激に溶結する(D)。 溶結凝灰岩は厚さ 1 m 程度であり, 下部は褐色で 上部は赤褐~橙赤色を呈する。 ガラス質であり, 緻密か あるいは やや空隙を残したまま強く溶結している。 上部に黒色~暗褐色のガラス質本質レンズを少量ふくむが, 石質破片はきわめてまれである。

細粒ガラスの火山灰中には非溶結部(C)および溶結部(D)を通じて, やや粗い結晶片・石質破片を多く含む砂状の薄層が 3~4 層はさまれ, 成層してみえるため, 基底の降下軽石層(A)から溶結凝灰岩(D)まで, 一見 成層した降下火砕物が連続しているかにみえる。 しかし, C・D の部分で砂質の薄層で区切られる単層の厚さは露頭ごとに一定せず, これらの単層は火砕流のごく薄いフローユニットであると思われる。 露頭の保存が悪く観察が限られているために確実なことはわからないが, 互層状の火山灰(B)も火砕流の一部かも知れない。

溶結凝灰岩表面の赤褐~橙赤色の着色は Aso-1 の表層に特徴的であって, Aso-1 火砕流がローム状の風化火山灰中に薄失するときにも この橙赤色の色調の部分のみが連続して, Aso-1 の層準を認めることができる。 この特徴は竹田図幅地域のみでなく 各地の Aso-1 の表層を通じて認められる。

図幅地域の西部や竹田市 魚住の滝などの火砕流の厚さが数 m 以上の断面では, 全体が強く溶結し, 暗灰・褐灰色などの基地に 本質レンズおよび石質破片を含む。 本質レンズは小量・小型のことが多いが, ときに長さ 5 cm 以上のものも含まれる。 厚い断面の溶結凝灰岩は脱ガラス化していることが多く, そのようなときは岩石はとくに硬い。

輝石流紋岩溶結凝灰岩(63TD61A)
産地 : 竹田市 竹田高校の旧グラウンド( [ 巻末の ] 第 Ⅳ 図版 1 参照)

斑晶 : 斜長石・普通輝石・紫蘇輝石・鉄鉱

斜長石は容量比 1 % 以下で, 輝石はそれよりもはるかに少い。 斑晶はほとんどすべて自形結晶であり, あまり破砕されていない。

基質
薄板状のガラス破片が大部分を占め. それらによる扁平化したビトロクラスティック組織を示す。 ガラスは淡褐色 透明である。 まれに. 扁平化した軽石片を含む。 径 0.5 mm 以下の安山岩の石質破片を数 % 含み, それらは先阿蘇火山岩類のものらしい。
輝石流紋岩溶結凝灰岩(64TD116)
産地 : 竹田市 魚住橋の南 0.1 km の県道の東側
斑晶 : 斜長石・普通輝石・紫蘇輝石・鉄鉱
基質
組織は上記の 63TD61A に似ているが, より粗粒の破片や本質レンズを含む。 強く扁平化したビトロクラスティック組織であるが. 脱ガラス化のためにガラス破片は暗褐色を呈し, 微弱な複屈折を生じ, その外形はやや不明瞭になっている。 結晶・石質破片の周囲や基質中に円いポケット状をなして 珪酸鉱物が晶出している。

VI.2.2 Aso-1 と Aso-2 との間の降下火砕物 [ A2-3 に一括 ]

Aso-1 サイクルの終了後, Aso-2 サイクルまでの間に 火山灰・軽石を噴出して本地域に降下・堆積させる活動があった。 この堆積物は 地域北西部の [ 久住町 ] 米賀 こめか 宮城 みやぎ 付近などに小面積の分布が少数あるのみなので, 地質図には Aso-2 と Aso-3 との間の降下火砕物 [ S2-3 ] と一括して塗色してある 。 また, Aso-3 火砕流が Aso-1 火砕流・今市火砕流などの Aso-2 よりも下位の層準の地層を覆う場合は, それらと Aso-3 との間の降下火砕物の下部は Aso-2 サイクルよりも以前の活動の産物であるが, その場合も Aso-2 と Aso-3 との間の降下火砕物にふくめて区別せずに図示してある。

本堆積物は大部分が著しく風化し, 黄褐色, 土壌化した火山灰であり, 白色, 粘土化した軽石層をはさむこともある。

地域北西部の宮城の南方では厚さ 4 m あり, 最下部に1層の粘土化した軽石層があり, それから上の Aso-2B 火砕流に覆われるまでに3層の風化土層がある。 竹田市街地の竹田高校のグラウンド( [ 後述する「VI.2.6 Aso-3 サイクルの噴出物」の項で示している ] 第 55 図)では厚さ 4 m 以上あり, 途中に腐植土層をはさむ。

VI.2.3 玉来川 たまらいがわ 溶岩(At)

分布 : この溶岩は斑晶の少ない輝石安山岩溶岩であり, Aso-1 と Aso-2 との中間の層準にある。 玉来川の中流の向山田 [ ← 漆迫の北西方 500 m ] から玉来市街の北までと, その北の稲葉川沿い, その南の滝水川沿い, [ そのさらに南の ] 大谷川 [ ← 大野川 ? ] 沿いの 陽目谷 ひなためだに [ ← 越敷山の北北西方 4 km ] から岩本 [ ← 河原立の北東方 1 km ] 付近までの, いずれも河床近くのみに露出する(第 42 図)。

第 42 図 玉来川熔岩の分布(アミの部分)。 [ 図幅地域西端付近の ] 「×o」印はこの熔岩の存在しないことが確かめられた試錐地点。 打線部は下位層の地表分布を示す。
Distribution (shaded area) of Tamarai-gawa Lava Flow. Cross [ × ] with "o" marks the drill site where this lava flow was not distributed. Dashed area represents exposure of underlying beds.

この溶岩はカルデラ縁には露出していない。 しかし, その分布が広い範囲にわたって Aso-1 と Aso-2 とに調和的であることと, この溶岩の岩相がカルデラ北縁の象ガ鼻に露出する Aso-1 と Aso-2 との中間の溶岩や Aso-2 の初期の噴出物である Aso-2R(小野・渡辺, 1974)とよく似ていることからみて, この溶岩が阿蘇火山に関係した溶岩であることは確実である。 現在のカルデラ東縁にこの溶岩の露頭がみられないので, 噴出口は ① 現在のカルデラ縁よりも外側(東側)にあったのか, あるいは, ② この溶岩の流路がカルデラ東縁の 現在の中央火口丘の根子岳によって覆われている部分にあるのか, のいずれとも断定できない。 分布図(第 42 図)に示されるように, ② のように考えることも全く不自然とはいえない。

層位 ; 露出が河床近くのみに限られているので, 基底部および下位層が露出しているのは 大谷川 [ ← 大野川 ? ] 沿いの陽目谷と河原立の西方の2地点のみであり, その両地点とも Aso-1 火砕流の溶結凝灰岩を覆っている。 また, [ 滝水川沿いの ] 竹田市 渡瀬における試錐 [ B5 ? ] では 河床に露出するこの溶岩から堀進を始め, 深さ 9 m でこれを貫き, 厚さ 6.5 m の風化火山灰層をはさんで, その下位は Aso-1 の溶結凝灰岩であった。

前節の Aso-1 と Aso-2 との間の降下火砕物のどの層準にあたるのかは明確ではないが, 玉来川の左岸, 漆迫の対岸付近では, この溶岩と上位の Aso-2B スコリア流との間には 厚さ約 70 cm の風化火山灰をはさむのみであったので, 上述の下位の火山灰の厚さとあわせて考えると, この溶岩は Aso-1 と Aso-2 の間の上部にはさまれることになる。

層厚 : 厚さは数~15 m 程度である。 安山岩溶岩としては比較的厚さが薄く, 緩い傾斜でありながら知られている限りで 10 km 以上延長しており, かなり低粘性の溶岩流であったと思われる。

岩相 : この溶岩は基底に角礫化部, 表層に多孔質のスコリア状部をもち, 黒~灰色で 堅硬である。 少量の斜長石斑晶と, まれに長さ 5 mm 程度の輝石の斑晶とを含む。 一般に厚さが薄いため, 黒色・細粒で気泡を含む岩相が多く, 灰色・緻密で結晶度の高い岩相は河原立の西方などで見られるのみである。 溶岩表面のスコリア状部は岩瀬 [ ← 穴井迫の北東方 500 m ] から向山田にいたる玉来川の北岸沿いの道路傍でよく観察される。

輝石安山岩(67TD469)
産地 : 竹田市 納野の大野川 白水 はくすい ダムサイト [ ← 恵良原の南方 2 km ] の右岸の下流側
化学組成
SiO2 : 61.58 %(第 12 表の試料 B2)

斑晶 : 斜長石・普通輝石・紫蘇輝石・鉄鉱(計約 5 %)

斜長石は長柱状, 清澄で, 弱い累帯構造がある。 他に, 融食されて不規則な外形をもち ガラスを含有する 汚れた感じの斜長石を少量ふくむ。

石基
斜長石・単斜輝石・アルカリ長石・クリストバライト・鱗珪石・磁鉄鉱・チタン鉄鉱

細粒のピロタクシティック組織で, 斜長石・輝石の柱状結晶は強く流状配列する。 通常の部分よりもやや珪長質鉱物の多い部分が不規則なパッチ状に散在する。

VI.2.4 Aso-2 サイクルの噴出物

Aso-2 サイクルの活動は複雑であったらしく, その活動史には不明な点がかなり残されている。 竹田図幅地域内には Aso-2B 火砕流, Aso-2T 降下スコリア層, Aso-2TL 降下軽石層が分布する。 これらのサブユニットと これまでわかっている Aso-2 サイクル全体の噴出物との関係は 以下のとおりである(第 43 図)。

第 43 図 Aso-2 サイクルの噴出物の各サブユニットの関係。
Schematic relation between sub-units of the Aso-2 eruption cycle.

Aso-2 サイクルの噴出物の主体は下位の Aso-2A, 上位の Aso-2B の2つの火砕流であり, さらに阿蘇カルデラの西壁および西側斜面には Aso-2A よりも下位に 二次流動溶結凝灰岩 Aso-2R(小野・渡辺, 1974)が分布する。 カルデラ東壁には Aso-2A の下位に薄い降下スコリア層 Aso-2V があり, また, Aso-2B の上位には厚い降下スコリア層 Aso-2T がある。 Aso-2A・2B 火砕流はカルデラ壁から遠ざかるにしたがい薄くなり, とくに Aso-2A 火砕流は急激に薄化して本図幅地内には達しておらず, また, Aso-2B 火砕流は図幅地域の西半部までに分布する。 Aso-2T 降下スコリア層は東方には Aso-2B 火砕流よりも遠くまで分布し, 竹田市街地付近にも分布しているが, そこでは Aso-2T の直下に白色の降下軽石層 Aso-2TL がある。 この軽石層は, 降下スコリア層(Aso-2T)以外との関係は明らかでないが, Aso-2A 火砕流に伴なう Aso-2 サイクルの初期の噴出物の一つであるらしい。

本図幅で Aso-2 火砕流(A2)として塗色されているものは Aso-2B 火砕流である。 Aso-2T 降下スコリア層は 図上では Aso-2 と Aso-3 間の降下火砕物(A2-3)に一括されている。 Aso-2TL 降下軽石層は薄く, 図には表現できないが, 分布は Aso-2T に伴なっている。

[ VI.2.4.1 ] Aso-2B 火砕流(A2)

名称・分布・層位・層厚 : 本火砕流は小野(1965)の「カルデラ壁東部の Aso-Ⅱ」の上半部にあたる。 この火砕流は 本図幅の西半部地域の大谷川をはじめ 稲葉川・玉来川・山崎川などの各河川の峡谷底近くに露出し, その東限は玉来の西約 2.5 kmにある。 Aso-2B 火砕流は分布の各地で Aso-1 火砕流 [ A1 ] か, あるいは玉来川溶岩 [ At ] を覆っている。 分布および厚さを第 44 図に示す。

第 44 図 Aso-2 火砕流の分布と厚さ(m)。
Distribution and thickness in meters of Aso-2 Pyroclastic Flow.

岩相 : Aso-2B 火砕流はスコリア流であり, スコリア質火山灰の基質中に多孔質の本質岩塊をふくむ。 この図幅地域内では 基質・岩塊ともつねに黒色である。 一般に断面の下部は細粒火山灰のみからなり, 径の大きい岩塊は断面の上部に集る。 大谷川の上流のやや厚い断面では, 厚さ約 20 m のうち下部の 10 m は弱く溶結して幅広い柱状節理を生じている。 図幅内の他地域では溶結していないが, 一般に固くしまった感じがする。 本質岩塊は 無斑晶, よく発泡したスコリアで(見かけ比重 ~0.94), 外形に平行した内部の気孔の配列や表皮の亀裂など 牛糞状火山弾様の構造をもつことが多い。 ほとんどすべての岩塊は 径 1.2 mm から 2 cm 程度の灰白色の異質角礫を特徴的にふくむ。 それらが岩塊中で流状につらなっていることもしばしばある。

無斑晶安山岩スコリア(64AS89A)
産地 : 熊本県 阿蘇郡 一の宮町 滝室坂(阿蘇山図幅地域)
化学組成
SiO2 : 59.81 %(第 12 表の試料 C7)
斑晶 : 斜長石(1 % 以下)
石基
よく発泡し, 長円~雲形の気孔をもつ。 基地は褐色ガラスの中に柱状・棍棒状の晶子が密集して生じ, 一見 黒色・不透明の感を与える。 安山岩の石質破片を 1~2 % 含む。

[ VI.2.4.2 ] Aso-2T 降下スコリア層および Aso-2TL 降下軽石層 [ A2-3 に一括 ]

本図幅地域内に分布する Aso-2 サイクルの降下火砕物は 降下スコリア層 Aso-2T と降下軽石層 Aso-2TL とである。 この地層は 地質図上では次節の「Aso-2 と Aso-3 との間の降下火砕物(A2-3)」に含められ, 単独では図示されていない。

第 45 図 Aso-2T 降下スコリア層の厚さ(cm)。
Thickness of Aso-2T Scoria Fall in centi-meters.

Aso-2T 降下スコリア層の層厚の分布図を第 45 図に示す。 2T スコリア層のもっとも厚い断面は阿蘇カルデラの東壁の滝室坂にあり, そこでは Aso-2B 火砕流の直上に, 時間間隙を示す証拠なしに, 10 m の厚さの黒色安山岩質のスコリア層がのっている。 ここでは スコリア層の下半部は粒径が粗く, 上半部は下半部よりも細粒で, また, より細かい単位で より明瞭に成層している。 竹田図幅地域では 2T スコリア層は全体が薄く, かつ, 細かくなっているが, 上記の特徴は明らかに保存され, 竹田市街地では 厚さ約 2 m のうちの下半部には径 1~2 cm 程度のスコリアをふくんでいるが, 上半部では粒径は一般に数 mm 以下であり 細かく成層している。 スコリア層は分級がよく 非固結で ハンマーの先端でサラサラと崩れるが, 上部の数 10 cm は風化土化して固くしまっている。 本層のスコリアの化学組成は第 12 表の試料 C9 に示される。

Aso-2TL 降下軽石層は, 竹田市街地およびその付近において Aso-2T スコリア層の下位にあり, よく発泡した白色の軽石からなる。 2TL 軽石層は下位の厚い風化土層の上にのるが, 上位の 2T スコリア層との間には時間間隙の証拠は全くない。 2TL 軽石層の軽石は流紋岩質であり(第 12 表の試料 C4), 化学組成の類似から Aso-2A 火砕流に伴なう, Aso-2 サイクル初期の噴出物の一つと考えられる。

VI.2.5 Aso-2 と Aso-3 との間の降下火砕物(A2-3)

Aso-2 および Aso-3 の両サイクルのあいだには少くも4回の, より小規模な噴火サイクルがあり, 噴出中心より東方にある本図幅地域に降下火砕物をもたらした。 この時期の堆積物を観察できるのは Aso-3 火砕流の基底が露出している地域に限られ, おもに谷沿いの低地である。

前述したように, Aso-2 サイクルの活動では Aso-2B 火砕流の流出に引きつづいて大量のスコリアを降下堆積させ(Aso-2T), その活動を終了した。 Aso-2 よりも下位の岩層が露出し, それらを Aso-3 が覆っている竹田市街地では, Aso-2T から上位で Aso-3 サイクルに至るまでの降下堆積物のよい断面が観察される。 模式柱状図(第 46 図)に示されるように, Aso-2T の風化面上から Aso-3 サイクルの基底までの同地における厚さは約 5.5 m である。

第 46 図 Aso-2・Aso-3 両サイクル間の降下火砕物の竹田市街における標準柱状図。 2TL・2T : Aso-2 サイクル。 S・R・Q・P・O・U : Aso-2 と Aso-3 との間の各サイクル。 3W : Aso-3 サイクル。 3B : Aso-3B 火砕流。 Km : 九重火山の宮城火砕流層序。
Standard column of air-fall pyroclastics between Aso-2 and Aso-3 cycles at Taketa city. Pyroclastic falls ; 2TL・2T : Aso-2. S・R・Q・P・O・U : cycles between Aso-2 and Aso-3. 3W : Aso-3. 3B : Aso-3B Pyroclastic Flow. Km : horizon of the Miyagi Pyroclastic Flow from Kuju Volcano.

第 46 図にみられるように, Aso-2T 降下スコリア層のあと Aso-3W 降下軽石層までのあいだに S, Km, R, Q, P, O, U などのユニットが識別されるが, このうち Km 層は後述するように九重火山起源の宮城火砕流 [ Km ] の末端相であり, 他のユニットはすべて阿蘇火山起源の降下火砕物である。 これらのうち少なくとも S, R, Q, U と Aso-3W との各ユニットの前にはローム状の風化火山灰で示される時間間隙がある。 S, R, P, V の各層は白~黄白色の軽石層であり, O 層は灰色火山灰と黄白色細粒軽石との細互層である。 Q 層はきわめて分級のよい 中~細粒の黒色砂状のガラス火山灰からなる。 このガラス火山灰は, 液体マグマの発泡によって生じたカスプ形のガラス破片ではなく 緻密なガラスの粒状破片であって, 黒曜岩などのガラス岩体の破砕・放出による堆積物とみられる。 Q, P, O 各層のあいだには風化間隙はなく, 1噴火サイクルの産物とみられる。 白色の P 軽石層と黒色の Q 火山灰層との組合せはきわめて特徴的で, Aso-2T スコリア層とともに Aso-2 と Aso-3 との間のよい鍵層となる。 第 47 図および第 48 図に P・Q 両層の層厚分布図を示す。 測定点が偏在しているために 信頼できる等層厚線を画くことはできず, 噴出源が阿蘇カルデラの方向にあることが察せられる程度である。 P 軽石層の厚さにやや異常な値があるのは, 同層が複数のフォールユニットからなるために 風化した露頭で O 層との境界を誤認して測定したためかも知れない。

第 47 図 P 降下軽石層の厚さ(cm)。
Thickness of P Pumice Fall in centi-meters.

第 48 図 Q 降下火山灰層の厚さ(cm)。
Thickness of Q Ash Fall in centi-meters.

VI.2.6 Aso-3 サイクルの噴出物

Aso-3 サイクルの噴出物は, 噴出順に 降下軽石(Aso-3W) と火砕流(Aso-3A, 3B, 3C)のサブユニット群とからなり, 火砕流全体は compound cooling unit をつくる。 Aso-3A 火砕流 は本地域内では非溶結の軽石流が大部分であり, 一部の谷沿いの低地に分布する。 Aso-3B 火砕流 は無斑晶の安山岩質スコリア流であり, Aso-3 サイクル中でもっとも規模が大きい。 本地域では南西部で強く, 東部で弱く溶結している。 この火砕流はこの図幅地域よりさらに北東方へ大野川沿いに分布し, 同河口の東方の 坂の市町 さかのいちまち [ ← 大分市の東方の佐賀関半島の北岸 ] まで追跡されるので, 海に達したことは確実である。 Aso-3C 火砕流 は多斑晶の安山岩質スコリア流であり, 竹田図幅地域では北西部によく発達する。 しかし, Aso-3B と Aso-3C とのそれぞれの典型的な岩相が直接に重なることは少く, 大部分の地域では両者の間に中間的な岩相が存在し, これを Aso-3BC とよぶ。 この地域の各地点における模式的な断面を第 49 図に示す。

第 49 図 Aso-3 火砕流の柱状図。
Fence columnar profiles of Aso-3 Pyroclastic Flow.

Aso-3 火砕流は竹田図幅地域の中央部から北部に広く露出し, 火砕岩台地の主体を作っている。 これは Aso-3 火砕流がこの地域を広く一様に覆って堆積したことによるが, その基底面は必ずしも平坦ではなく, 埋積された地形面には起伏があって, その谷の多くは現在の河谷とほぼ同じ位置にあった。 降下軽石に引きつづいて噴出した Aso-3A 火砕流はまず谷沿いの低地に堆積し, ついで大量の Aso-3B 火砕流が広く地域を覆った。 Aso-3A が現在の谷に近い地域に分布し, 堆積当時の台地にむかって薄失する状況は多くの地点で観察される。 本地域の南西部は 祖母山山地の山腹斜面であったので, 下位の阿蘇火砕流によって埋積されていない基盤山地に Aso-3 火砕流がオーバーラップした地域, たとえば大谷川の上流の 百木 ももき ~小川付近 [ ← 越敷岳の北北西方~北方 3 km ] では岩相の水平的変化がいちじるしい。

Aso-3 火砕流のつくる地形はきわめて特徴がある。 10~40 m のほぼ安定した厚さがあり, 溶結して柱状節理が発達しているので, 遠望すると広く連続した崖にかこまれた広い台地をつくるかのようにみえる。 しかし, 台地は東流する数本の主な河川とその支流とによって東西方向に細く分割され, さらに, それらの主な流路から台地にむかって細い廊下状の小谷がほぼ等間隔に櫛の歯様に入りこみ, 広い台地面はほとんど残されていない(第 6 図)。

[ VI.2.6.1 ] Aso-3W 降下軽石層

Aso-3 火砕流の直下, すなわち Aso-2・Aso-3 両サイクル間の降下火砕物の累層 [ A2-3 ] の最上位にある降下軽石層は 上位の Aso-3 火砕流 [ A3 ] との間に時間間隙を示す証拠がなく, Aso-3 サイクルの最初期の噴出物と判断される。 これを Aso-3W 降下軽石層とする(第 46 図)。 薄いので地質図上には表現されていない。

本層は白~桃白~淡灰色の軽石からなり, 分級はよい。 図幅地域中央部の竹田市 大津留 おおつる [ 位置不明 ; 河原立の東北東方 1.5 km 強の門田の付近 ? ] では, 厚さ 65 cm のうちの下部 40 cm はやや細粒で 石質破片を多くふくみ, 細かく成層しており, 上部 25 cm は下部よりも粗粒で, 軽石の最大径は 3 cm で 石質破片は少ない。

測定された本層の厚さの分布は第 50 図にみられるように規則的とはいえない。 測定点が欠けているが, 南東方向に分布の主軸があるのかもしれない。 地域の中央付近に 周囲と不調和に厚さ 0 cm の地点があるが, ここでは, 後に Aso-3B 火砕流の項で述べるように, 同火砕流によって本層はとり去られたものと思われる。

第 50 図 Aso-3W 降下軽石層の厚さ(cm)。
Thickness of Aso-3W Pumice Fall in centi-meters.

[ VI.2.6.2 ] Aso-3A 火砕流(A3 の一部)

Aso-3A 火砕流の代表的な岩相は非溶結の軽石流であり, 図幅地域南西~中央部の大谷川や瀬口川~門田川沿いの 竹田市 百木 ももき [ ← 越敷岳の北北西方 3 km ] ・小川 [ ← 越敷岳の北方 3.5 km ] ・高山 [ ← 河原立の南方 2.5 km ] ・下津留 [ 読み方・位置不明 ; しもつる ? ] 入田 にゆうた [ ← 河原立の東北東方 4 km ] などや, 竹田市街の 北方 [ 北北東方 2.5 km ] の三宅付近などに露出する。 その他に, 図幅地域の南西隅に近い竹田市 二俣 [ ← 百木の南西方 1 km ] から高森町 永野 [ ← 二俣の南南西方 2 km ] 付近には緻密な溶結凝灰岩が分布する。

軽石流はよく発泡した大形の軽石と同質のガラス火山灰の基質とからなる。 一般に溶結してないが, 大谷川の上流の 陽目谷 ひなためだに 付近では下部が弱く溶結している。 色は軽石・基質ともに白色または桃白~黄白色の場合と帯紫灰褐色の場合とがある。 この両者が共存する地点は西隣の阿蘇山図幅地域の北東部の 山鹿 やまが にあり, そこでは, 後述する Aso-4A 火砕流の場合と同様に, 白色の軽石流が下位に 褐色のものが上位にあるが, ここでは中間部が露出していないので, 両者が画然と接しているのか 漸移しているのかわからない。 軽石は円味を帯び, 大形のものは径 30 cm 以上ある。 よく発泡し, みかけ比重の平均値は 0.55(n = 42, σ = 0.15)である。 大形の軽石は内部に大きい空隙をもつことが多い。 ごく少量の斜長石・普通輝石・紫蘇輝石・鉄鉱の小形の斑晶をふくむ。 暗褐色の軽石の空隙には, しばしば, 赤褐~銅赤色で六角薄板状の赤鉄鉱の微晶が気相晶出によって着生している。

高山から入田までの瀬口川~門田川沿いでは 非溶結の Aso-3A 火砕流の上に 強溶結の Aso-3B 火砕流がのり, 後者の基底に小規模のオーバーハングがみられる(第 51 図)。 入田から竹田市街へ向かう県道沿いでは 門田川から離れるに従って Aso-3 火砕流の基底が上昇し, それとともに Aso-3A 火砕流が薄失する状態が観察される。

第 51 図 Aso-3 火砕流の断面。 竹田市 出合 [ ← 河原立の南南東方 2.5 km ] の西方の発電所付近の瀬口川の南岸。
Schematic profile of Aso-3 Pyroclastic Flow along the south side of the Seguchi River.

Aso-3A 火砕流が独立の岩相として認められない多くの地点では, Aso-3B 火砕流の基底部に Aso-3A 火砕流のものと思われるきわめて発泡のよい軽石塊が Aso-3B 火砕流の本質スコリアと混在して見いだされる。 Aso-3A 火砕流に引きつづいて噴出した Aso-3B 火砕流が 流走中に Aso-3A 火砕流の軽石をとりこんだものであろう。

Aso-3A 火砕流の強溶結相 は図幅地域の南西部の二俣の東の谷壁および その南方の永野の北東の県道沿いに露出する。 この溶結凝灰岩は 小野(1965)が 「Aso-Ⅱ・Ⅲ 間の火砕物質」のうち「竹田市の南西部の二俣付近に分布するもの」 としたものにあたる。 この岩石は 灰赤色~帯紫青灰色の基質中に強く扁平化した本質レンズをふくむ溶結凝灰岩である。 本質レンズは光沢のある黒色ガラスであるが, 基質は脱ガラス化し, 岩石は著しく硬い。 本質レンズは斜長石の斑晶をきわめて少量ふくむ。 この溶結凝灰岩は [ 二俣の東北東方 1 km の ] 滝部 たきべ の北方で祖母山火山岩類 [ S3-d ? ] の急崖を覆っているが, 基底面の緩傾斜なところでは 基盤との間に Aso-2・Aso-3 両サイクルの間の降下火砕物(P・Q 層など)をはさんでいる(第 52 図)。

第 52 図 祖母山火山岩類の急斜面を覆う Aso-3 火砕流。 竹田市 百木の南方。
Aso-3 Pyroclastic Flow lying over the steep slope of Sobo-san Volcanic Rocks (SB).

この溶結凝灰岩は, 岩相や層位関係からみて, 阿蘇カルデラの南東壁の 洗川 そそがわ 付近や, [ 洗川の南方(阿蘇カルデラの外)の ] 高森図幅地域の柳谷付近に露出するものと同じユニットである。 柳谷付近の溶結凝灰岩中の本質レンズの化学組成は Aso-3A の非溶結部中の2個の軽石の化学組成とほとんど同じであった(第 12 表の試料 D1)。 上記のように 層位・化学組成からみて このユニットが Aso-3A 火砕流の一部であることは確実であるが, 百木付近の非溶結の軽石流とどのような関係にあるのかはわかっていない。

輝石含有流紋岩溶結凝灰岩(64TM2)
産地 : 熊本県 阿蘇郡 高森町 柳谷の国道傍(高森図幅地域)
化学組成
SiO2 : 68.50 %(第 12 表の試料 D1)
斑晶 : 斜長石・普通輝石・紫蘇輝石・鉄鉱
基質
本質レンズ, ガラス破片とも褐色で, 極細粒に結晶化している。 それらは著しく扁平化し, 本質レンズ中には微褶曲状の流線がみられ, ガラス破片は境界が不鮮明となり, 二次流動(小野・渡辺, 1974)のあったことを示している。 レンズ中には球形の気孔が多い。

[ VI.2.6.3 ] Aso-3B 火砕流(A3 の一部)

本火砕流は 小野(1965)の「Aso-Ⅱ」のうち 竹田市の西部から東方海岸までの部分にあたる。 Aso-3 火砕流の主体をなすサブユニットであり, 図幅地域の中央部から西部に広く露出し, その他の地域では Aso-4 火砕流が削剥された下に露れる。 本火砕流は安山岩質のスコリア流であり, 図幅地域の南西部から中央部にかけては下部が強く溶結しているが, 竹田市街付近から東方までは非溶結か, あるいはごく軽微に溶結している。

非溶結の部分は, 基質は灰褐色~褐色であり, 濃褐色~黒色の無斑晶安山岩質の比較的発泡のよい本質スコリアをふくむ。 石質破片には おもに非変質の安山岩からなる異質の岩片と, 後述する黒色ガラスの本質(~類質)物質とがある。 この火砕流はほとんど非溶結の場合でも基質はやや重くしまった感じがあり, ハンマーの先端でサラサラ崩れる感じではない。 中~弱溶結相は灰黒色の基質に黒色の本質レンズをふくむ。 強溶結相は基質・本質レンズとも黒色の緻密なガラスからなる。 風化面ではガラスは褐色を帯び, 光沢を失っているが, 新鮮な破面では黒色で光沢がある(第 53 図)。 ガラスに亀裂が多く走るため ハンマーで叩くとボロボロに砕けて手標本をとりにくい。 脱ガラス化はこの図幅地域では大谷川の上流にかぎられているが, そこでは溶結凝灰岩は著しく硬い。 図幅南西隅に近い大谷ダムの上流の右岸では 気相晶出作用により溶結凝灰岩は灰色で軟弱な岩石となり, 本質岩塊中の気孔には斜方輝石の肉眼的針状結晶が着生している。

第 53 図 Aso-3B 火砕流の強溶結部。 本質レンズはかなり扁平なものと, 円味を帯びた あまり扁平化してないものとが混在する。 竹田市 次倉 [ の東方 500 m の ] 井伏から河原立へ下る道傍。
Dense welded tuff of Aso-3B Pyroclastic Flow.

Aso-3B火砕流中には 黒色で光沢のあるガラスの岩塊・火山礫が特徴的にふくまれる。 このガラスは緻密であるか, あるいはやや発泡しており, 無斑晶安山岩質である。 火砕流の基底近くには径数 10 cm 以上のものも多くふくまれるが, このように大形のものは非溶結相中でも扁平な長円体形であり, 塑性変形し得る程度の粘性であったことを示している。 一方, 強溶結相中でもやや円味を帯びており, 著しく扁平化している普通の本質レンズよりも高粘性で低温であったことがわかる。 おそらく, この噴火のとき 地下に活動をおこしたマグマよりもやや低温の部分があって, それが火砕流中にとりこまれた本質(~類質)物質であろう。

本火砕流の溶結凝灰岩には 一般的な垂直方向の柱状節理の他に 横臥した放射状の特徴的な節理が弱溶結部に発達していることがある(第 54 図)。 冷却の過程で等温面が単純な平面ではなくなったためと思われるが, その理由は明らかでない。

第 54 図 Aso-3B 火砕流の溶結部の節理。
Joint in Aso-3B Pyroclastic Flow.

竹田市街地付近では, 厚さ約 25 m のうち その下半はほとんど非溶結であり, 上半部は弱く溶結して幅広い柱状節理をつくることが多い(第 55 図)。 そのため台地の端はほぼ垂直の崖でかぎられ, しばしばその下部はわずかにオーバーハングしている。

第 55 図 Aso-3B 火砕流。 下部約 10 m は非溶結で, その上から溶結し始め, 柱状節理があらわれる。 左下は下位の降下火砕物。 T : Aso-2T 降下スコリア層。 竹田市 竹田高校のグラウンド。
Aso-3B Pyroclastic Flow at Taketa city. Lower 10 meter section is not welded. T : Aso-2T Scoria Fall.

岩塊の濃集部 : Aso-3B 火砕流の基底部には石質岩片が濃集していることがある。 その著しい例は図幅地域中央部の次倉から河原立に下る路傍で観察される。 ここでは火砕流の基底部約 4 m に岩塊が濃集しており, この部分は基質の火山灰が少量のために溶結していない。 岩塊には 前述した黒色無斑晶安山岩ガラスの本質(~類質)岩塊, 類質軽石, 異質安山岩岩塊などがある。 この中に成層軽石層の径 120 cm に達する岩塊が含まれている。 きわめてもろい成層した降下軽石層が崩壊しないでそのままふくまれていることは, この岩塊の移動距離が小さかったことを示す。 大形の石質岩塊を多量にふくむこの火砕流が 流走中に直下の降下火砕堆積物(Aso-3W およびその下位の Aso-2 以後の堆積物)を侵食して 火砕流中にとりこんだものであろう。 これらの岩塊の間をうめる基質の部分にも 降下軽石層から分離したらしい軽石がみいだされる。

無斑晶安山岩(本質レンズ)(61TD12B)
産地 : 竹田市 魚住ダム [ ← 竹田の南方 1.5 km の魚住付近 ? ] の上流側の左岸
化学組成
SiO2 : 63.27 %(第 12 表の試料 D5)
斑晶 : 斜長石・普通輝石・紫蘇輝石・鉄鉱(総量 0.5 % 以下)
石基
無数の球形の気孔をもつ。 基地は淡褐色から褐色までのさまざまな段階の濃淡の色調を示し, これらを切って 脱ガラス化によるアルカリ長石(?)の鳥の尾状の結晶(長さ最大 0.3 mm)が成長している。
無斑晶安山岩溶結凝灰岩(70TD676)
産地 : 竹田市 入田 にゅうた [ の北西方 1 km 弱の ] 篠尾の東
斑晶 : 斜長石・普通輝石・紫蘇輝石・鉄鉱・燐灰石
基質
著しく扁平化したビトロクラスティック組織で, やや肉厚のカスプ~厚板形のガラス破片からなる。 結晶化していない。 ガラスには本質レンズ・ガラス破片双方とも淡褐色・澄明なものと, やや濃い褐色のものとがあり, 1破片内でそれらが明確な境によって接していることがある。 双方ともに複屈折は認められないが, 屈折率は濃色のものの方が高い。

[ VI.2.6.3 ] Aso-3C 火砕流(A3 の一部)

本火砕流は 小野(1965)の「Aso-Ⅱ・Ⅲ 間の火砕物質」のうち 「滝室坂 F 点における上位の火砕流」にあたる [ 以下の [注] 参照 ] 。 Aso-3C 火砕流は多斑晶の安山岩スコリア流である。 図幅地域内では北西部で厚く, 南部では薄い傾向がある。 東には薄くなり, Aso-3B 火砕流の頂部にわずかに多斑晶質のスコリアを認める程度となる。

[注]
同報文に記載された「滝室坂 F 点にみられる2火砕流のうちの下位のもの」は Aso-3A の1員である。

本質岩塊は発泡のあまりよくないスコリア(平均比重 = 1.4)であり, 長さ 30 cm 以下で, 長円体形または短いリボン形をしたものが多い。 岩塊の内側がより多く発泡し, 表皮にはパン皮状の亀裂があるなど, 岩塊ができてから発泡したことを示す火山弾様の構造をもつものがある。 スコリアは長さ 2~3 mm の斜長石の斑晶を多量(約 20 %)にふくみ, その他に長さ 5 mm 以下の輝石の柱状良晶をふくむことがある。 阿蘇火砕流中には, Aso-4B 火砕流の一部に斑晶の多い本質岩塊がある他には このように多量の斑晶をふくむ本質岩塊はなく, きわめて特徴的である。

本質岩片の大部分は 第三紀火山岩の異質岩片であるが, その他にきわめてまれに, 白色の花崗岩様の岩片を含む。 この岩石は石英モンゾナイトに近い岩質の微文象石英閃緑斑岩であり, 本火砕流に特徴的な類質岩片である。

Aso-3B 火砕流との関係 : Aso-3B 火砕流は無斑晶または斑晶の少ない安山岩スコリア流であり, Aso-3C 火砕流は多斑晶の安山岩スコリア流である。 両者の関係は地点により 明瞭に接している場合と, 中間的な岩相をはさみ 漸移的に変化している場合とがある。 図幅地域中央西部の 野鹿 のが [ ← 恵良原 えらはる の北西方 2 km ] の北では Aso-3C 火砕流の基底に角礫が濃集し, それが Aso-3B 火砕流の上面にのっている。 それより南の山崎川・大谷川・瀬口川沿いの恵良原・次倉・高山付近では Aso-3B 火砕流は強溶結の垂直の崖をつくり, その上に緩傾斜の弱~非溶結の部分があって(第 51 図), そのうちの下半部は 無斑晶スコリアと多斑晶スコリアとが混在する中間的な岩相(Aso-3BC)であり, 上部は多斑晶スコリアからなる Aso-3C である。 図幅地域中央部の国道 57 号線沿いよりも北の地域では Aso-3 火砕流は下部の Aso-3B から上部の Aso-3C まで漸移し, 露頭面では途中に不連続が認められない1段の崖をつくっている。

VI.2.7 Aso-3 と Aso-4 との間の降下火砕物(A3-4)

Aso-3サイクルの終了後 Aso-4サイクルまでに多数回の噴火サイクルがあった。 現在 これらの活動の産物としては火山灰・軽石などの降下堆積物のみが認められる。 本地域は噴出口の東側に位置するためにこれらの火砕物質が厚く分布しており, その柱状断面にはさまれる風化土層から, 少くも 11 回の噴火サイクルがあったことが知られる。

この堆積物が保存されているのは Aso-3 火砕流の台地上で 上位の Aso-4 火砕流の削剥されている場合と, Aso-4 火砕流の台地を刻む峡谷の谷壁の Aso-4 の下位とである。 Aso-4 火砕流の下面が露出していない図幅地域の西部・東部および 急斜面のため降下堆積物が保存されていない南部の祖母山山地では ほとんどこの堆積物をみることができない。

前述したように, 図幅地域の西部では Aso-3 火砕流のつくる台地は多数の小谷によって切られているために 広い面は残されていないが, 小谷の間の尾根の頂部は台地面の残りであって, そこに Aso-3・Aso-4 両サイクル間の降下堆積物をのせている。 Aso-3 火砕流の頂部は一般に著しく風化して 褐色の土壌が厚く形成されており, また, その上にのる降下堆積物の中にも著しく粘土化した層準がある。 そのため, 上位を Aso-4 火砕流が覆っているときは これらの粘土層が不透水層を形成して そこから取水できるので, Aso-3 上面の 降下火砕物をのせる平坦面には 志土知 しとち [ ← 城原 きばる の南南西方 3 km ] ・馬脊野 [ ← 馬背野 ませの ? ; 河原立の北西方 1 km 強 ] ・次倉・ 篭目 かごめ [ ← 百木の北東方 1.5 km ] などの部落がつくられている。

Aso-3 の上面から Aso-4 の下面まで, 両サイクル間の降下堆積物の連続した断面が観察できる地点は多くない。 しかし, その中のいくつかの鍵層を利用して部分的な断面でも単層を識別できることが多い。 代表的柱状図とその位置図とを第 56 図と第 57 図に, また, いくつかのフォールユニットまたはフォールユニット群の層厚分布を第 58 図 a~e に示す。 測定点の分布が偏っているために 第 58 図に画かれた等層厚線は十分信頼できるとはいえないが, それらの主軸が阿蘇カルデラ内の, 現在の中央火口丘群よりも南方に指向していることは共通している。

第 56 図 Aso-3 と Aso-4 との間の降下火砕物の柱状図。
Columnar sections of air-fall pyroclastics between Aso-3 and Aso-4 cycles.

[ 第 56 図に関する注意書き ]
柱状図の凡例に関する記載は省略する。

第 57 図 第 56 図の柱状図の位置図。 破線は柱状図の配列を示す。
Localities of columnar sections in the Figure 56. Broken lines show arrangement of columns in the Figure.

第 58 図 Aso-3 と Aso-4 との間の降下火砕物の厚さ(cm)。 a : A 層, b : B 層, c : C 層, d : D 層, e : B~M 層。
Thickness of the air-fall pyroclastics between Aso-3 and Aso-4 cycles in centi-meters. a : A layer, b : B layer, c : C layer, d : D layer, e : B~M layers.

Aso-3 と Aso-4 との間の降下火砕物を 下・中・上部の3部分に大きく区分することができる。 図幅中央西部の荻町 野鹿 のが [ ← 恵良原の北西方 2 km ] 付近では合計の層厚は約 20 m であり, そのうち下・中・上部はそれぞれ 8・7.5・4.5 m の厚さである。

下部はほとんど全層にわたって褐色土壌化しており, その中に数層の赤褐~黄褐色の軽石層が痕跡化して認められる。 中部は数層の風化土層をはさむ白色の軽石層, 黄褐・灰褐・褐・灰・黒など種々の細粒火山灰などの互層である。 軽石はほぼ原形のままの場合と, 粘土化して空隙がつぶれて扁平化している場合とがある。

上部は, 下位から, 厚い黄白色の軽石層(D), 灰・紫灰・黒・白などの細粒火山灰・軽石の細互層(C), 黒色(および暗灰色)ガラス火山灰層(B), 厚い黄白色軽石層(A)に区分される(第 59 図)。 A 層の最上部に風化土壌がみられることを除いて, これらの層の中間には風化層準がなく, D~A は1噴火サイクルの産物である。 軽石は一般に新鮮である。

第 59 図 Aso-3 と Aso-4 間の降下火砕流の上部の A~D 層。 スケールは 1 m。 竹田図幅地域東端近くの緒方町 鮒川 [ ← 緒方の南西方 1 km 弱 ] (第 56 図の TD160)。
Upper part of the air-fall pyroclastics between Aso-3 and Aso-4 cycles near the eastern margin of the Taketa district. The scale is 1 meter long.

第 58 図 a~d にみられるように, B・C・D 各層の厚さは地理的に規則的な変化をして等層厚線を画くことができるのに, A 層の厚さの変化は著しく不規則である。 しかし, A 層の最上部に風化土層があるもののみをとると厚さの変化は規則的であり, 風化土を欠いて直ちに Aso-4 火砕流の下面に接している地点の A 層の厚さ (第 58 図 a に括弧に入れて示してある)は 期待される厚さよりも薄い。 これは後に Aso-4 火砕流の項で述べるように, また Aso-3 火砕流の例と同様に, A 層の頂部が Aso-4 火砕流によって侵食された結果と思われる。

以上の観察から次のような噴火史が推定される。 Aso-3 サイクルの終了後に長い休止期をおいて軽石・火山灰の放出が始まり, くり返し下部層を堆積させたが, それらは比較的小規模であり, それらの間隔は比較的長かった。 その後, 中部層の堆積の時代には1回の噴出量は大きく, 噴火間の時間間隔は減少した。 D~A 層を堆積させた噴火は Aso-3 と Aso-4 との間では最大の噴火サイクルであった。 A 軽石の噴出後, A 層の上面に最大の厚さ 55 cm(竹田市街の南方の 小高野 こだかの [ 位置不明 ] ; TD118 [ この記号の意味不明 ] )の風化土が形成されたのち, Aso-4 火砕流が流出してこの地域を覆った。

VI.2.8 Aso-4 火砕流

Aso-4 火砕流は阿蘇火砕流群のうちでは最も新しいサイクルの噴出物である。 下位の火砕流を覆い, それらよりも遠方まで露出が発見されており, 現在の分布は最も広い。

名称 : 本火砕流(および以下の Aso-4A, Aso-4B)は小野(1965)の「Aso-Ⅲ(Aso-ⅢA, Aso-ⅢB)」にあたる。 これまで各地で記載されたもの, たとえば 芹川 せりかわ 火山砕屑流(小野, 1963), 新期阿蘇溶岩(首藤(1953); 宮本ほか(1962); 有明海研究グループ(1965)など), 八女 やめ 粘土層・鳥栖ローム(郷原ほか, 1964), 宇部・秋吉・矢田各火山灰層(高橋・河野(1968); 亀山(1968))など, いずれも Aso-4 火砕流に属する。 また, 遠方で確認された分布, たとえば延岡・人吉・天草下島・福岡の南方の安徳(MATUMOTO, 1943), 北九州の各地(浦田, 1962), 佐世保・伊万里市など北西九州(渡辺, 1975), 山口県下の各地(亀山(1968); 高橋・河野(1968); 満塩(1971))などはすべて Aso-4 火砕流である。 松本(1952 ; p. 5)は阿蘇溶岩(火砕流)の大々的な噴出は3回であり, 2回目のものが最も遠方に達したとしているが, その2回目が Aso-4A 溶結凝灰岩に, また3回目が Aso-4B と台地上の非溶結の Aso-4A とにそれぞれ相当する。

構成 : Aso-4 サイクルの活動の噴出物は火砕流堆積物のみであり, 降下火砕物はこれまで発見されていない。 Aso-4 火砕流は, この地域では 下位の Aso-4A 火砕流と上位の Aso-4B 火砕流とに2分される。 それらはともに複数のフローユニットからなり, 全体として compound cooling unit をつくる。 Aso-4A 火砕流はこのサイクルの噴出物の大部分を占め, 構成粒子の種類と粒度組成, 溶結度, 色, 結晶化などによって多様な岩相の変化を示し, 複雑な構成をもつ。 Aso-4B 火砕流は主に強溶結の溶結凝灰岩からなる。 しかし, このような多様なみかけ上の変化に拘らず, Aso-4 火砕流の大部分は角閃石と紫蘇輝石とを主要鉄苦土珪酸塩鉱物とする流紋岩であり, 角閃石の斑晶の存在によって, 普通輝石・紫蘇輝石の斑晶組合せをもつ Aso-1・Aso-2・Aso-3 各火砕流と 野外で識別することができる。

異質角礫 : Aso-4 火砕流は異質石質破片を包有している。 この図幅地域では異質角礫の 90 % 以上は輝石安山岩を主とし, 角閃石安山岩と流紋岩とを少量まじえる火山岩類であり, これらは 阿蘇カルデラのカルデラ壁に露出している (鮮新世後期~)更新世前期の先阿蘇火山岩類(小野, 1965)と思われる。 この他に少量の変質火山岩, 古生界, 塩基性・超塩基性岩などの基盤岩を含む。 塩基性・超塩基性岩は 角閃石斑れい岩・角閃片岩・角閃石岩・輝岩・ダンかんらん岩などからなり, 少量ではあるが [ 以下の [注] 参照 ] , これらの異質角礫を含むことは Aso-4 火砕流の特徴の一つである。

[注]
カルデラの西縁地域では塩基性・超塩基性岩が異質角礫の 10~30 % を占めることがある。

地形 : Aso-4 火砕流は本地域の火砕岩分布地の全域にきわめて特徴的な分布をしている。 地域西部の波野・荻台地は Aso-4B 火砕流が広く覆い, その下位に非溶結の Aso-4A 火砕流がある。 この台地を深く刻む峡谷も Aso-4A 火砕流によって埋積されており, ここでは強く溶結している。 図幅地域中部の Aso-3 火砕流が広く露出している区域では, Aso-4A 火砕流の, 台地上の非溶結部と谷埋めの溶結凝灰岩とは侵食によって切断され, 尾根上と谷底とに別々の露頭群をつくっている(第 60 図)。 地域東部の台地では Aso-4 火砕流が削剥された部分に下位の地層が露出している。

第 60 図 Aso-4A 火砕流の台地上の非熔結部と谷埋めの溶結部および Aso-4B 火砕流の関係を示す模式図。
Schematic fence diagram showing Aso-4A Pyroclastic Flow, its plateau-forming non-welded and valley-filling welded portions, and Aso-4B Pyroclastic Flow.

[ 第 60 図に関する注意書き ]
凡例に関する記載は省略する。

Aso-4 火砕流は, Aso-3 火砕流までに形成された火砕岩台地が 現在の地形と似た程度まで開析されたあとに流出したものらしい。 そのため, Aso-4 火砕流の上面は平坦な台地面を形成しているが, 基底面には著しい起伏があり, 現在の主な河川の流路沿いには Aso-4 火砕流の強溶結相が分布しており, その基底面は現河床面よりやや下にあることが多い。 台地上にある Aso-4 は非溶結のことが多いが, 谷を埋積した部分は強く溶結している。 その結果生じた溶結凝灰岩の葉理面は基底面に平行なので, 谷壁では川に向かって傾斜し, 河床ではほぼ水平である。 火砕流の流出直後にはその表面はほぼ平坦であったはずであるが, 溶結が進行すると, 台地上の非溶結の部分はほとんど変化がないのに, 河谷沿いの厚い断面では圧密による表面の沈下量が大きく, 旧河谷沿いに表面の沈降が生じ, そのために, 新たに作られる水系は旧河谷の流路を再現する。 Aso-4 火砕流は, 埋積した谷が深く 谷埋めの部分での溶結が強いために流路の再現は正確であり, 且つ, その流路はかたい溶結凝灰岩によって側壁を保護され, その葉理に沿って削剥されるために, 一旦 作られた流路の平面形は永く保存される傾向がある(小野, 1965)。 現在の谷沿いに 硬い Aso-4 の溶結凝灰岩が連続しているのは 空中写真でも明瞭によみとれる(第 61 図)。 Aso-4火砕流が埋積した谷をこのようにして復元すると, 現在の主な河谷のほとんどが Aso-4 噴火当時にあった谷に位置しており, また, それ以外には谷がなかったことがわかる。

第 61 図 竹田市街の北東方の空中写真。 Aso-4A 火砕流の溶結部(斜線部分)は谷沿いに, 非溶結部は丘陵地に分布する。 [ 写真の中央やや左の ] 法師山および [ 写真の ] 上縁の山地 [ = 大野山地 ] は基盤岩からなる。
Air-photo to the north-east of Taketa city. Welded part along valleys (hatched area) and non-welded part in hills are identified. Mountains along the upper margin and at the central part (H) are composed of basement rocks.

Aso-4 火砕流堆積物の平均表面傾斜を復元した地形から求めると, Aso-4B 火砕流については カルデラの縁の滝室坂 [ ← 本図幅の西隣の阿蘇山図幅地域内 ] から竹田市 戸上 とうえ [ ← 下荻岳の北東方 3 km の菅生の東方 ? ] までの約 16 km について 1°30' であり, Aso-4A 火砕流については 戸上から犬飼町 [ ← 本図幅の北東隣の犬飼図幅地域内 ] までの約 33 km に対して 31' であった。 これらの数値は両火砕流の流走時のみかけ粘性の低さを示すものであろう。

[ VI.2.8.1 ] Aso-4A 火砕流

Aso-4A 火砕流の大部分は紫蘇輝石角閃石流紋岩の火砕流であり, その一部に紫蘇輝石流紋岩のフローユニットがある。 以下には Aso-4A 火砕流を 異質角礫火砕流 [ A4P としている ] 軽石流 [ A4P ] 溶結凝灰岩 [ A4W ] に分けて記載する。

この地域では Aso-4A 火砕流の下部には異質角礫に富む特異な火砕流があり, これを異質角礫火砕流とよぶ。 その上位に台地をつくる大規模な軽石流がある。 この軽石流は谷埋めの部分や低地で緻密な溶結凝灰岩に移過する。 この軽石流および溶結凝灰岩は 東方には河川沿いに海岸に達しているが, 西方へは薄化してカルデラの縁では事実上薄失し, 下位の異質角礫火砕流と上位の Aso-4B 火砕流とが直接に接している。

異質角礫火砕流 : 多量の異質石質角礫を含む非溶結の火砕流である。 小野(1965)の「Aso-Ⅲ 最下部の角礫堆積物」にあたる。 地質図上では 次節の軽石流(A4P)に含めて表現されている。 異質角礫の多いことと ガラス火山灰の少ないこととが特徴であり, その著しい場合には, 多量の異質角礫が 少量の本質白色軽石粒と斜長石・角閃石などの結晶砂とからなる基質中にあって, 異質角礫が全量の 70 % を占める。 ガラス火山灰が少ないために 全く非溶結であり, ハンマーの先端でザラザラと崩れる。 軽石は白色で よく発泡し, 角閃石・斜長石を含み, 上位の白色の軽石流中のものとよく似ている。

この火砕流が分布するのは台地部であり, 非溶結の軽石流の基底にある。 一般に, 西方の阿蘇カルデラに近い方に厚く, 且つ 異質角礫の粒径も大きいが, 層厚・粒径ともに分布は不規則であり(第 62 図), 一露頭内でも厚さが変化することが珍しくない。

第 62 図 Aso-4A 異質角礫火砕流の厚さと最大粒径(どちらも単位は cm)。
Thickness and maximum diameter of the block of Aso-4A Accidental Block Flow.

この火砕流堆積物には 異質角礫・軽石・基質の混合比・粒径などのちがいによる粗い成層構造(第 63 図), foreset bedding 状の粗い斜交層理, 扁平な礫の示す覆瓦構造などが観察されることがあり, これらの堆積構造は 原地形面の下方に向く流れの方向あるいは 阿蘇カルデラから遠ざかる方向を示している(第 64 図)。 また, この堆積物中には, Aso-3B 火砕流の項に記載したのと同様に, 下位の成層降下火砕物や風化土などの脆い岩塊が 崩壊しないまま包有されていることがあり(第 65 図), 下位の風化土の割れ目に本層の角礫が入りこんで 風化土層の表面が浮き上がっている場合も発見された。 これらのことは この火砕流が下位層を侵食することがあったことを示している。

第 63 図 Aso-4A 火砕流の基底部。 写真の最上部は非溶結軽石流の基底部。 中上部は異質角礫火砕流で粗く成層している。 下半部は Aso-4 と Aso-3 間の降下火砕物の最上部, A・B 層と C 層の上半部。 A 層の上面は異質角礫火砕流によって削られている。 竹田市 長迫 ながさこ [ 位置不明 ; 次倉の南方 1 km ? ] の南西(第 56 図の TD90)。
Top : basal part of Aso- 4A Pyroclastic Flow. Upper-middle : crudely-bedded accidental block flow. Lower half : A, B and upper part of C air-fall pyroclastic layers between Aso-3 and Aso-4 cycles.

第 64 図 Aso-4A 異質角礫火砕流。 右上から左下へ(ハンマーの柄の方向に)粗い斜層理がみえる。 上位の非溶結軽石流の基底には厚さ 40 cm の細粒部分があり(淡色にみえている), 軽石が少なく ほとんどガラス火山灰のみからなる。 スケールの長さは 1 m。 竹田市 二俣の東の県道の傍。
Aso-4A Accidental Block Flow (lower) and non-welded pumice flow (upper). Accidental block flow has crude cross-layering shown by the grip of the hammer. At the base of the non-welded pumice flow is a fine-grained layer, almost free of pumice.

第 65 図 Aso-4A 異質角礫火砕流。 異質角礫が圧倒的に多く, 基質は少ない。 右下の成層岩は下位の降下軽石層を削ってとりこんだ岩塊(160 × 130 m)。 第 64 図と同じ露頭。
Aso-4A Accidental Block Flow, mostly composed of accidental angular blocks with minor portions of ashy matrix. A layered block at the bottom-right is a scraped-off block of the underlying air-fall pumice layer.

第 66 図 Aso-4A 火砕流の基底部。 上部は非溶結の白色軽石流。 中央(スケールの上)はレンズ状の異質角礫火砕流。 下部は Aso-4 と Aso-3 との間の降下火砕物 A・B・C・D 層。 2つの火砕流はそれぞれ下位層をとっているようにみえる。 荻町 井戸 いど [ 位置不明 ; 馬背野の東方 ? ] の東(第 56 図の TD617 付近)。
Non-welded white pumice flow and a lenticular layer of accidental block flow of Aso-4A, on underlying pyroclastic layers A~D. Both of pyroclastic flows seem to have eroded underlying beds respectively.

第 66 図に示す例のように, 本火砕流の層厚の変化に拘らず上位の軽石流の基底の細粒部が連続することや, 本火砕流中では軽石は白色であるのに上位の軽石流は暗色の軽石からなる例からみて, この火砕流は上位の軽石流とは別の独立した火砕流である。 姶良カルデラにおける亀割坂角礫層(荒牧, 1969)などと同様に, 細粒ガラス火山灰が分離して取除かれた特異な組成の火砕流なのであろう。

紫蘇輝石角閃石流紋岩軽石(68ME501A3)
産地 : 大野郡 清川村 砂田の北西の県道傍(三重町図幅地域)
化学組成
SiO2 : 68.82 %(第 12 表の試料 E4)
斑晶 : 斜長石・褐緑色角閃石・紫蘇輝石・鉄鉱
石基
無色ガラス(屈折率 n = 1.511)からなる。 よく発泡し, 気孔は管~長孔形である。

軽石流(A4P): 図幅地域内に広く分布し, 台地上の Aso-4A 火砕流の主体をなす。 台地部分での厚さはほぼ 30 m であるが, 図幅地域の南西部では厚く, [ 図幅地域南西隅の北東方 2.5 km の ] 大谷ダム付近では 55 m, 高森町 河原, 味鳥 みどり のボーリング(第 37 図の柱状図 B1)では 66 m であった。

軽石流は発泡のよい軽石と同質のガラス火山灰の基質とからなる。 軽石および基質の色は 純白色から灰色を経て帯紫灰褐色の暗色のものまでの著しいはばがある。 軽石は長孔形の気孔を主とし, よく発泡し, みかけ比重は 0.49(n = 73, σ = 0.10)である。 軽石の径は 20~30 cm 以下のものが多いが, まれには 1 m に達するものもある(第 67 図)。 数 % 以下の石質破片を含む。

第 67 図 Aso-4A 火砕流の非溶結の軽石流。 ハンマーの上のスケールは 1 m。 竹田市 戸上の南西。
Non-welded pumice flow of Aso-4A. The scale on the hammer is 1 meter long.

白色の軽石と暗色の軽石との分布は規則性がある。 白色の軽石は図幅地域の西部で 軽石流の下部に限られる。 基底部では純白色であるが, 上方へ Aso-4B 火砕流に近づく程 暗色に変化する。 また東方に向かって白色の部分は次第に薄くなり, 中部以東では基底部から暗色の軽石のみとなる。

この軽石流中には 平均粒径の異なる軽石が層状にならんで粗い成層構造が示されることがあるが, それ以外には軽石流の内部にフローユニットの境を示す明らかな証拠はない。

軽石流中には レンズ状あるいは不規則なポケット状に異質角礫の濃集部がみられることがある。 周囲の軽石・基質が暗色であるのに, このような角礫の濃集部に異質角礫とともに白色の軽石が見出されることは, この軽石流が下位の異質角礫層をまき上げて とりこんだことを示している。 また, 軽石流中に 石質破片がほぼ垂直のパイプ状に濃集している 「吹きぬけパイプ」構造のみられることがあり, その部分だけ酸化鉄によって赤く着色されている場合もある。

暗色の軽石, とくに西部地域に産するものには 軽石の気孔中に 気相晶出の赤鉄鉱の微小結晶が付着していることがある。 赤鉄鉱は銅赤色の六角薄板状の自形結晶であり, まれに径 1.5 mm 程度のものもあるが, 一般には 0.5 mm 以下である。 この赤鉄鉱は白色の軽石中に見出されたことはない。 白色の軽石と暗色の軽石とでは 鏡下で両者のガラスがそれぞれ無色および淡褐色で澄明であること, 化学組成では暗色のものの方が Fe の酸化度の大きいこと, 暗色の軽石のガラスの方が磁性が強いこと, および上記の赤鉄鉱の存否以外には岩石記載的性質や発泡度などに差は認められない。 以上のことから 両者は同質の軽石であったが, 暗色の軽石は白色のものより高い温度領域にあった時間が長く, 脱ガラス化の萠芽期の状態にあるものと考えられた(小野ほか, 1972)。

紫蘇輝石角閃石流紋岩軽石(68ME501B5)
産地
大野郡 清川村 砂田の北西の県道傍(三重町図幅地域),
前出の紫蘇輝石角閃石流紋岩軽石(68ME501A3)と同じ露頭の上部。
化学組成
SiO2 : 68.46 %(第 12 表の試料 E5)
斑晶 : 斜長石・褐緑色角閃石・紫蘇輝石・鉄鉱
石基 : 褐色のガラス。 気孔は長孔形である。

溶結凝灰岩(A4W): Aso-4A 火砕流のうち 谷を埋積した部分あるいは低地に広く分布する。 図幅地域東部の低地または台地の下部では溶結部の厚さは 20 m 程度と思われる。 峡谷部は Aso-4 火砕流によって厚く埋積されている。 削剥によって溶結部の厚さの測定は困難であるが, 神原 こうばる 川・奥岳川などでは 80 m 以上ある。

溶結凝灰岩の下部は本質レンズが少なく, ガラス質であり, 基底の数 m 上から大形のレンズを多く含み, 脱ガラス化が始まる。 Aso-4 火砕流によって埋積された谷の河床は現河床よりやや低かったため 峡谷底における基底面はほとんど観察することができないが, 谷壁にあたる斜面上の基底は随所でみることができる。 竹田市 千引 せんびき [ ← 竹田の北方 1 km ] の南方における例を以下に示す(第 68 図)。

第 68 図 Aso-4A 火砕流の溶結部。 下半部は本質レンズをあまり含まない細粒・緻密なフローユニット(A・B), 上半部は大形のレンズを含む別のフローユニット(C)。 緻密なレンズに比べて 基質はより多孔質なので, [ C ? は ] 湿って暗色を帯びている。 竹田市 千引の小採石場。
Two flow units of welded Aso-4A Pyroclastic Flow. The lower unit is finer and denser than the upper unit. Matrix of the upper unit is less dense than included large lenses(lighter-colored).

Aso-3 火砕流を覆う最下部には厚さ 5~20 cm の非溶結部がある。 これは比較的分級のよい黄灰色のガラス火山灰であり, サラサラして, 一見 オガクズ様である。 この火山灰は上方へ急激に溶結し, 溶結度が増すにつれ 灰色~暗灰色と濃色になり, 基底から約 3 m でみかけ比重が 2.3 以上の強溶結相に達する。 基底から厚さ 3 m の範囲には本質レンズはきわめて少なく, また斑晶および石質破片も少なく, 細粒・均質である(第 68 図の A)。 それよりも上では本質レンズの量・大きさともに急激にふえ, 長さ 15 cm, 厚さ 1 cm の著しく扁平化したレンズを緻密な黒色ガラスの基質中に含む(第 68 図の B)。 [ 第 68 図の上半部の ] C では溶結度がやや低下し, 長さ 60 cm, 厚さ 10 cm の著しく大形の本質レンズを含むが, 扁平化の程度は低くなる。 この露頭 [ = 第 68 図の写真の露頭 ] では これらの溶結凝灰岩はガラス質であるが, 厚い断面の下部にあたる河床部では基底を除いて脱ガラス化して著しく硬い岩石となる。

強溶結相 は その下部には黒色・光沢のあるガラス質岩が残されているが, その他の部分は一般に基質が脱ガラス化している。 しかし, そのときでも 本質レンズのみはガラスのまま残っていることが多いので, 脱ガラス化によって暗灰色~明灰色となった基質中に ガラス質(黒曜石)レンズが肉眼的に目立つ岩相となる(第 69 図)。

第 69 図 Aso-4A 火砕流の緻密な溶結凝灰岩。 基質は脱ガラス化のため灰色で, 黒色の本質レンズがよくみえる。 緒方町 原尻 はらじり 原尻の滝 [ ← 緒方の西方 2.5 km 弱 ] の上流の緒方川の河床。
Dense welded tuff of Aso-4A Pyroclastic Flow. Black essential lenses in gray, devitrified matrix.

上部の 弱溶結相 は 濃褐色の基質中に暗褐色の本質レンズを含む。 この岩相は図幅地域東部の台地の下部に広く分布する。 節理が少なく加工し易いために, 小規模に採石されて利用されることが多い。

谷埋めの強溶結相の上部には弱溶結相があったはずであるが, 神原川・奥岳川沿いを除いては 侵食されて, あまり残されていない。 稲葉川沿いの竹田市 平田, 久住川沿いの竹田市 福原 [ ← 城原 きばる の西方 2 km ] などで観察された例では, このような部分は著しい 気相晶出作用 を受けて 多孔質の脆い岩石となっている。 侵食され易く, 露頭を作りにくい岩石なので, 一般に観察の機会が少ない。 旧河道に沿ってこのような岩相が分布したとすれば, このことも前述した [ 「地形」の小項目で述べた ] 水系の再現の1要因となったであろう。

「軽石流」の項で述べたような異質石質破片のレンズ状, ポケット状あるいはパイプ状の濃集部は, 溶結凝灰岩中にも見出される。 このような部分には溶結材料としてのガラス火山灰が少ないので, そこだけが非溶結のまま残されている。

溶結凝灰岩には, 一般に, 冷却面に垂直な柱状 節理 が発達している。 基底面が傾斜しているときには それに対して垂直に, 基底から離れるに従って鉛直方向に近づく( [ 巻末の ] 第 Ⅳ 図版 1・2)。 基底面に平行な板状節理が顕著に発達することもある。 峡谷を埋めた溶結凝灰岩には, 一定の高さだけに, その上下の鉛直方向の柱状節理とは不連続な 放射状あるいはカリフラワー状の細かい節理ができていることがある。

第 70 図 節理面に浮出した本質レンズ。 基質よりも粘性の小さい本質レンズが 内部から押出されたもの。 Aso-4A 火砕流の強溶結部。 竹田市街の南東の大野川 滑瀬 ぬめりぜ 橋の北西側。
Essential lenses protruded out of the joint surface. Less viscous lenses were squeezed out from more viscous matrix. Valley-filling dense welded tuff of Aso-4A Pyroclastic Flow.

谷を埋めた強溶結部の特定の節理面には, 本質レンズが周囲よりも盛上って突出していることがある(第 70 図)。 これは, 節理による開放空間に向かって 本質レンズ部が周囲よりも低粘性のために 塑性流動によって内部から押出されたものである [ 以下の [注] 参照 ] 。 この現象は 冷却による柱状節理面にはなく, それよりも先に生じたらしい特定の節理面のみにみられる。 この節理系は 深い谷埋めに伴う溶結岩体の変形によって生じたものらしい。

[注]
アリゾに州立大学の M. SHERIDAN 教授の教示による。 この現象を渡辺(1976b)は「本質レンズのしぼり出し」とよんだ。
紫蘇輝石流紋岩溶結凝灰岩(弱溶結相)(64TD165-2)( [ 巻末の ] 第 Ⅴ 図版 1)
産地
竹田市 千引の小採石場の火砕流の基底から 20 cm の高さ(第 68 図の A の下部)
斑晶 : 斜長石・紫蘇輝石・鉄鉱
基質
この標本は溶結の最初期を示し, 薄板型のガラス破片は屈曲し 互いに接着しあっているが, かなりの空隙を残している(みかけ比重 = 1.33, 空隙率は約 45 %)。 ガラスは淡褐色・ 澄明 ちょうめい [ = 澄みきって明るいこと ] である。
紫蘇輝石流紋岩溶結凝灰岩(強溶結相)(64TD165-11)( [ 巻末の ] 第 Ⅴ 図版 2)
産地 : 上記に同じ。 火砕流の基底から約 6.5 m の高さ(第 68 図の B の中部)。
斑晶 : 斜長石・紫蘇輝石・鉄鉱
基質
この標本は Aso-4A 火砕流のうちでも最も緻密に溶結した部分にあたる。 斑晶量は 15~20 %, 石質破片は約 5 % 含まれる。 ガラス破片は著しく扁平化し, 密着して 各破片の境界はわずかに条線状に認められるのみであり, 全体がほとんど均質な淡褐色のガラスとなっている。 石質破片や結晶の両側は pressure shadow となるため, そこではガラス破片はあまり扁平化せず, また, ガスの濃集によって ここから脱ガラス化が始まっている。
紫蘇輝石角閃石流紋岩溶結凝灰岩(強溶結相, 脱ガラス化)(63TD123)( [ 巻末の ] 第 Ⅵ 図版 1)
産地 : 竹田市 久保 [ ← 下荻岳の北北東方 5 km ] の南方の玉来川の川岸
斑晶 : 斜長石・緑色角閃石・紫蘇輝石・鉄鉱
基質
ガラス破片はすべで, 本質レンズは一部を残して 脱ガラス化している。 ガラス破片は心部が濃褐色で, 淡褐色の外縁が輪郭を作っている。 濃色部にはほとんど複屈折が認められないが, 淡色部では針状結晶が外縁に垂直に並び, アクシオライト結晶化の初期の状態を示している。 本質レンズは 溶結前の軽石の構造をわずかに条線状に残すのみで ほとんど均質なガラスとなっており, 球状の気孔を内部にもつものもある。 さらに 気孔の周囲から脱ガラス化し 気孔内に気相晶出鉱物(鱗珪石)などを生じているもの, 緻密なガラスから微球顆状に脱ガラス化したもの などのさまざまな状態のものを含んでいる。
紫蘇輝石流紋岩溶結凝灰岩(気相晶出帯)(67TD368C)
産地 : 竹田市 平田 [ ← 竹田の西方 4 km 弱 ] の西方の県道の北側の小採石場
斑晶 : 斜長石・紫蘇輝石・鉄鉱
基質
この標本は谷埋めの溶結凝灰岩が 気相晶出作用を受けた部分である。 ガラス破片はやや扁平化しているが, 原形をよく残し, 破片の外縁から内側に向かって櫛の歯状にサニディンの針状結晶がならぶ アクシオライト構造をみせている。 本質レンズには 内部にガラスを残しているものもあるが, 大部分は脱ガラス化し, 軽石の繊維構造はそれらを通じて残っている。 脱ガラス化した部分には クリストバライトの微小球(径 0.1 mm 以下)状の集合と, それからサニディンの針状結晶が放射状にのびるウニの殻伏の特徴的な結晶集合がみられる。

[ VI.2.8.2 ] Aso-4B 火砕流(A4B)

Aso-4B 火砕流の堆積物は角閃石の斑晶の目立つ流紋岩溶結凝灰岩である。 波野・荻台地の上部をつくり, 台地の周囲に絶壁を連ねて露出している(第 71 図)。 この台地における平均の厚さ 20 m である。 波野・荻台地をとりまいて, 竹田市街の西方の 古城 ふるしろ [ ← 竹田の西北西方 2 km ] , 玉来の南方の田井 [ ← 河原立の東南東方 3 km ] 付近などに Aso-4B 溶結凝灰岩の断片的露出がある。 これらはいずれも数~10 m 以下の厚さしかなく, 薄失直前の状態を示している。 さらに, 田井の南方の倉木 [ ← 河原立の南東方 4 km ] 付近では Aso-4A 軽石流の最上部はわずかに溶結し, Aso-4B 溶結凝灰岩への移過相を示すものと思われる。

第 71 図 Aso-4B 溶結凝灰岩の崖。 崖から台地表面までは阿蘇火山中央火口丘の降下火山灰 [ Ac ] 。 崖の下は Aso-4A の非溶結軽石流 [ A4P ] 。 荻町 吉野 [ ← 恵良原の南方 1 km 強 ] から 恵良原 えらばる 方面をみる。
Cliff of Aso-4B Welded Tuff. Surface of the plateau above the welded tuff is a thick cover of air-fall ash [ Ac ] from central cones of Aso Volcano. The slope below the cliff of Aso-4B welded tuff is made of non-welded pumice flow of Aso-4A [ A4P ] .

Aso-4B 火砕流はカルデラの東側のみに分布し, 波野・荻台地に最もよく発達している。 カルデラの東縁の滝室坂・箱石峠などでは厚さ 5 m 程度であり, 南北両側に向かって薄化する。 カルデラの中心部より西側では分布が発見されていない [ 以下の [注] 参照 ]

[注]
渡辺(1976a)によると, カルデラ西側には ここで述べたAso-4B 火砕流にあたる岩相はなく, それよりもさらに後に噴出したらしい安山岩質スコリア流が分布している。

Aso-4B 火砕流には ところにより 3 枚以上のフローユニットが認められる。 この火砕流は全般にわたって溶結し, 露頭では柱状節理の発達する一連の崖となっているが, 注意すると その中に板状節理あるいは剥理状を呈するフローユニット界が認められることがあり, それによってこの火砕流が複数のフローユニットからなることがわかる。

Aso-4B 溶結凝灰岩は非溶結の Aso-4A 軽石流 [ A4P ] の上にのっているが, その境には厚さ数 m の漸移部があって, 上方に次第に溶結度を増しており, 両者の境界を明確な一線で示すことはできない。 この漸移部の上は黒色・緻密なガラス質溶結凝灰岩であり, 本質レンズは著しく扁平化している。 さらに上方には, 溶結度は低下して 本質レンズの扁平度が減少し, レンズの内部および周囲に気孔がみられるようになり, 同時に岩石の色は次第に淡色となって, 基質の色は褐色に, 本質レンズは暗灰~灰色に変化する。 最上位の 1 m 程度は やや多孔質の溶結凝灰岩であり, 酸化して基質は橙赤~練瓦色となり, その中に灰白色の本質レンズを含む。 この岩相の上位は つねに阿蘇火山中央火口丘起源の降下火山灰 [ Ac ] に直ちに覆われ, 上部の非溶結相はこれまで見出されていない。 この最上部の溶結凝灰岩はやや多孔質ではあるが脆くはなく, 固く接着されている。 また, 上部の溶結凝灰岩中の本質レンズ中の気孔はすべて球形であり, 扁平化する以前の軽石中の気孔とは明らかに異なり, 溶結後に形成されたものである。 これらのことは, この溶結凝灰岩はかなりの高温で溶結し, 溶結のために大きな荷重を必要としなかったことを暗示している。 最上部の溶結凝灰岩が強く酸化して 冷却時に堆積物の表層にあったことを示すことを考えあわせると, この溶結凝灰岩には上部の非溶結相が始めから(ほとんど)なかったものと思われる。

Aso-4B 火砕流の最上部には安山岩の本質レンズが含まれる(第 11・12 表の F5)が, この火砕流のかなりの部分の本質レンズは 岩石記載学的には Aso-4A のものと区別できない(第 11・12 表および LIPMAN(1967))。 Aso-4B 火砕流のかなりの部分のマグマが Aso-4A 火砕流のマグマと殆んど同様の組成であるのに 台地上で両火砕流に著しい溶結度のちがいがみられるのは, Aso-4A 火砕流の大量の流出によって 噴出口付近の放出速度が減少し 噴煙柱が低くなったために, より高温の Aso-4B 火砕流が発生したことを示すのであろう。 おそらく, 噴火前のマグマ溜りの中には Aso-4A で代表される流紋岩質マグマが上位にあり, 下位に ごく少量しか地表には噴出しなかった安山岩マグマ (上述の F5 および渡辺(1976a))があって, Aso-4B のマグマは 流紋岩マグマのうち 安山岩マグマに接する付近にあったものなのであろう。

紫蘇輝石角閃石流紋岩溶結凝灰岩(66TD307D1)
産地 : 竹田市 戸上の東の国道傍
斑晶 : 斜長石・緑褐色角閃石・紫蘇輝石・鉄鉱
基質
ガラス破片は扁平化し, 接着して, その境界は条線状の痕跡となっているのみであるが, その条線を切って 溶結後に生じた円形の気孔が無数にみられる。 ガラスは無色で, 多くのトリカイト状の晶子が生じている。 気孔内には気相晶出による短柱状のアルカリ長石が着生している。
普通輝石紫蘇輝石角閃石流紋岩溶結凝灰岩(気相晶出帯)(64TD252C1)( [ 巻末の ] 第 Ⅵ 図版 2)
産地 : 直入郡 荻町 桜町の南の山崎川 車橋 [ ← 岩戸車橋 ? ] の下
斑晶 : 斜長石・緑褐色角閃石・紫蘇輝石・普通輝石・鉄鉱
基質
全体が脱ガラス化しているが, 褐色の部分と無色の部分とがパッチ状に組合って不均質である。 褐色の部分では扁平化したビトロクラスティック組織が認められるが, 無色の部分は粗粒に結晶化し, もとのビトロクラスティック組織は全く失われている。 本質レンズは粗粒の結晶集合からなり, 空隙に富んでいる。 空隙には鱗珪石・アルカリ長石・斜方輝石などの気相鉱物を生じている。

VI.2.9 中央火口丘 降下火山灰(Ac)

分布 : 図幅地域西部の Aso-4B 火砕流 [ A4B ] の台地表面を広く覆う(第 72 図)ほか, 中央部の火砕岩台地でも Aso-4 火砕流の表面が保存されている島状の平坦面上に分布している。

第 72 図 Aso-4B 溶結凝灰岩 [ A4B ] の上にのる 成層した阿蘇火山中央火口丘 降下火山灰。 溶結凝灰岩の下は Aso-4A の非溶結軽石流 [ A4P ] 。 荻町 今村 [ ← 恵良原の南方 2 km ] の東。
Stratified air-fall ash layers from central cones of Aso Volcano on the welded tuff of Aso-4B [ A4B ] . Lower slope is made of non-welded Aso-4A [ A4P ] .

層位・層厚 : 本層はこの地域内で冲積層 [ a ] を除く最も新しい地質単位である。 厚さは図幅地域西縁付近では 20 m 以上あり, 東方へ次第に薄くなるが, 図幅中央東部の木野 [ ← 竹田の南南東方 5 km ] 付近でもなお数 m 以上ある。

岩相 : 本層の大部分は褐色のローム状風化火山灰である。 図幅地域西部では, その中に 10~100 cm ごとに風化した黄白色軽石層, 赤褐色スコリア層などをはさみ, 本層が無数のサイクルの降下堆積物の累層であることを示している。 図幅南西隅地域では Aso-4 火砕流の直上の この火山灰層の最下位に, 厚さ 170 cm に達する 例外的に厚い白色軽石層がある。

本火山灰層を構成する単層群は 2~3 の侵食間隙によって大きく区分されるらしいが, 今調査ではそれらの区別をしていない。

時代 : 阿蘇火山の中央火口丘群の活動は Aso-4B火砕流の流出後, いいかえれば現カルデラの形成後にあまり時間をおかずに始まったものと思われる。 カルデラの底の西部の長陽村 黒川 [ ← 京都大学 火山研究所の西方 ] では, 中央火口丘群の中の比較的初期の流紋岩溶岩が 姶良カルデラ起源の ATn 火山灰(~22,000 14C 年)に覆われている (町田・新井, 1976)。 また, 田村(1967)は阿蘇火山からの冲積世の降下火山灰を研究し, 上位から 阿蘇 a 層から d 層までの4層を識別した。 その報告から, 少なくとも阿蘇 a 層と阿蘇 c 層(4,630 ± 160 14C 年)とは 本図幅地域にも分布していると判断される。 したがって, 堆積物としての中央火口丘火山灰の全体の時代は 更新世 最後期から完新世にわたることになる。

VI.3 九重 くじゅう 火山噴出物

九重火山は北・北西隣の久住・宮原両図幅地域にまたがって分布する火山群であり, 中心部には急峻な溶岩ドームと小成層火山とが集合し, その南・南西・北側に火砕流・泥流などの堆積物からなる緩傾斜の裾野がある。 竹田図幅地域にある九重火山噴出物は 宮城 みやぎ ・下坂田両火砕流と稲葉川泥流とであり, 分布は広くない。 しかし, これらの九重火山噴出物と阿蘇火山噴出物とは第 9 表に示されるような層序関係にあり, 両火山の活動が長期にわたって平行して行われていたことを確実に示している。

宮城・下坂田両火砕流(および宮原図幅地域の 飯田 はんだ 火砕流)はいずれも角閃石デイサイトの軽石流であり, 岩相が似ているために野外においてそれらを識別することはきわめてむずかしく, むしろ阿蘇火山噴出物との層位関係から判別されている。 宮城火砕流と下坂田火砕流とはそれぞれ Aso-3 火砕流の層位的に上と下とにあるが, Aso-3 と接していない地域ではどちらとも判別しがたい。 たとえば本図幅北縁の白丹町~無田口付近 [ ← 城原 きばる の西方 3~5 km ] のものは 一部は宮城火砕流であることが判明しているが, 一部には下坂田火砕流が混在しているかもしれない。 なお, 小野(1963)が久住図幅地域において久住軽石流としたものは, 少なくとも宮城火砕流・下坂田火砕流を含むことが今調査で明らかになったので, 久住軽石流の名称は使わないことにする。

VI.3.1 宮城 みやぎ 火砕流(Km)

分布・層位・層厚 : 図幅地域北西部付近に主な分布があり, その他に玉来川沿いに小分布がある。 Aso-2 火砕流と Aso-3 火砕流との中間(降下軽石層「R」と「S」との中間)の層準にあり (第 46 図), 竹田市(旧 宮城村) 炭竈 すみかまど [ ← 城原の南西方 2 km 強 ] 付近にその層位関係を示す露頭が多い(第 73 図)。 図幅地域北西隅付近では厚さは 30 m 以上あるが, 稲葉川以南では 3~10 m の厚さである。

第 73 図 Aso-2・Aso-3 両火砕流にはさまれる宮城火砕流。 降下火砕層 P・Q・2T がみえる。 竹田市 刈小野 かりおの [ ← 宮城の北西方 500 m ] の西方。
Miyagi Pyroclastic Flow between Aso-2 and Aso-3 Pyroclastic Flows.

この火砕流が図示できる程度の厚さで分布しているのは 玉来川沿いの向山田 [ ← 漆迫の北西方 500 m ] 付近までである。 しかし, Aso-2 および Aso-3 両サイクル間の降下火砕物の保存のよい地域, たとえば竹田市街地では, その R および S 軽石層の中間のローム状風化火山灰中に 本火砕流起源の角閃石・黒雲母を含む軽石粒, あるいはそれらの分離結晶が含まれており, 本火砕流と阿蘇火山噴出物との関係を確定させている。

岩相 ; 本火砕流は 白色あるいは淡桃色の非溶結の軽石流である。 基質と軽石との量比, 軽石の大小のちがいなどによる成層構造がみられることがある。 軽石は発泡がよく(見かけ比重~0.75), まれに径 20 cm のものもあるが, 数~10 cm 以下のものが多く, 円味を帯びている。 純白色で, 長孔形の気泡と斑晶の有色鉱物の平行配列とによる流理のみえるものが多い。 角閃石と少量の黒雲母の斑晶とを含む。 角閃石は黒色, 光沢があって, よく目立ち, なかには長さ 1 cm に達する大形結晶もある。 角閃石の結晶には 周囲のガラスの発泡・膨張によって破断され, 無数の小形の劈開片からなるクロット状の集合となっているものがしばしばみられる。

黒雲母紫蘇輝石角閃石デイサイト軽石(72TD814-5)
産地 : 竹田市 炭竈の西方
斑晶 : 斜長石・石英・緑色普通角閃石・紫蘇輝石・鉄鉱・黒雲母
石基 : 無色ガラス

VI.2.2 下坂田 しもさかた 火砕流(Ks)

分布・層位 : この火砕流は 図幅地域北縁西部に分布し, 上坂田 [ ← 宮城の北方 500 m ] ~下坂田付近の稲葉川北岸の丘陵をつくり, 南側から遠望すると白色の崖をつらねている。 この火砕流が流出したのは Aso-3 火砕流より後で, Aso-3 と Aso-4 との間の降下火砕物中の下部の層準の一時期である(第 74 図)。 この図幅地域内では 下坂田から 深迫 ふかさこ [ ← 下坂田の北西方 1.5 km ] に向かう道路沿いで本火砕流が Aso-3 火砕流 [ A3 ] を覆っているのが観察されるが, Aso-4 火砕流と接している露頭は発見されなかった。 厚さは約 30 m ある。

第 74 図 下坂田火砕流の層準を示す柱状図。
Columnar sections showing the horizon of Shimo-sakata Pyroclastic Flow.

岩相 : 軽石を含む白色, 無層埋の火山灰流堆積物であり, 多量を占める基質のガラス火山灰中に それぞれ全量の数 % 以下の軽石・石質破片を含む。 ほとんど非溶結であるが, 大きい露頭では その上部に弱い柱状節理の発達が認められ, 軽微な溶結が行なわれたことを示している。 軽石は白~淡灰色で, 前項の宮城火砕流 [ Km ] のものより暗色である。 ときに径 15 cm 程度のものも含まれるが, 一般には径数 cm 以下で, 円味を帯びている。 発泡度はやや良く(見かけ比重~0.9), 長孔状の気泡がある。 長さ数 mm の黒色・光沢のある角閃石の斑晶を含む。 灰色, 粗粒砂岩状のオートリスを伴う。 石質破片は角閃石安山岩が多く, 輝石安山岩も少量含まれている。

黒雲母紫蘇輝石角閃石デイサイト軽石(72TD813-2)
産地 : 竹田市 下坂田の北西の深迫へ向う道路傍
斑晶 : 斜長石・緑色普通角閃石・紫蘇輝石・鉄鉱
石基 : 淡褐色ガラス

VI.3.3 稲葉川 いなばがわ 泥流(Ki)

分布・層位・層厚 : 図幅地域北縁西部の 稲葉川および久住川沿いに段丘状をなして点々と分布する。 これまでに発見された最も東の分布は 国鉄 豊後竹田駅の南側の大正公園下の稲葉川の右岸にある。 この堆積物は Aso-4 火砕流を切る谷を埋積しており, 阿蘇火山中央火口丘 降下火山灰 [ Ac ] を除き この図幅地域内で最も新しい地質単位である。 川沿いに細長く分布するのみであるが, 層厚は厚いところで 20 m をこえる。

岩相 : この堆積物は 安山岩の大小さまざまの亜円礫~角礫と砂質の基質とからなり, 非固結, 無層理である。 礫は九重火山起源の角閃石安山岩であり, 色・結晶度ともさまざまである。 礫径は数 10 cm 以下のものが多いが, ときには約 2 m に達するものも含まれる。 基質は火山岩源の黄灰色の砂であり, あまり土化していない。

この堆積物は 北隣の久住図幅(小野, 1963)において火山扇状地礫層として記載されたものの一部で, 河谷に沿って分布するものに連続する。 これは九重火山のドーム群の崩壊によって発生し, 稲葉川および久住川の河谷を流下した泥流による堆積物である。

図幅地域北縁の 白丹 しらに 付近には 前述したような多様な礫質の岩相のもののほかに, 次のような岩相がある。 その礫の大部分はガラス質角閃石安山岩の亜円礫であり, 基質はサラサラした火山灰で, 淡紅色を呈し, 高温酸化をうけたらしい。 この岩相の部分は泥流ではなく熱雲起源であるのか, あるいは熱雲が流下の途中から泥流に変ったものの堆積物であるかも知れない。

VI.4 冲積層(a)

本図幅地域内には 冲積層はあまり発達していない。 一部の河谷沿いの低地に冲積層が図示してあるが, それらは溶結凝灰岩の平坦な河床上に薄くのっている砂礫層である。

VII. 応用地質

VII.1 錫・亜鉛・硫化鉄などの非鉄金属鉱床

竹田図幅地域のなかの鉱産のうち 生産実績のあるのは, 南部の祖母・傾山地域に分布する新第三紀花崗岩類に成因的関係を有する 錫・亜鉛・硫化鉄などの非鉄金属鉱石で, 豊栄鉱山をはじめいくつかの鉱山が探鉱または開発された。 それらは鉱脈および接触交代鉱床であるが, 各型式はたがいに移化し, 鉱化作用の順序などもかなり共通している。

竹田図幅の南に接する三田井図幅地域にある 尾平 おびら (大分県 緒方町), 土呂久 とろく (宮崎県 高千穂町)および 見立 みたて (宮崎県 日ノ影 ひのかげ 町)などの古くから知られた鉱山も同じ鉱床区に属している。

[ VII.1.1 ] 豊栄 ほうえい 鉱山(大分県 大野郡 緒方町 上畑)

国鉄 豊肥本線 豊後竹田駅または緒方駅のそれぞれから南方 20 km にあり, 傾山の北斜面の急峻な地形にいくつかの鉱床露頭がある。 このうち主として採掘されたのは1号坑および大切坑によって開発される1号鉱床で, そのほか2号・槍立・嘉五郎・観音・大名・檜山および銀じきなどの鉱床があるが, 補助的出鉱源にとどまっている。

豊栄鉱山は旧称を 九折 つづら 鉱山とよび, その沿革は古く江戸時代にさかのぼり, そののち大正~昭和期を通じてごく小規模に稼行されたにすぎないが, 昭和 26 年に蔵内正次氏が硫化鉄鉱を目的としてやや積極的に開発した。 すなわち昭和 25~27 年の硫化鉱需要期間に約 8,700 t を採掘, 一たん休止したが, 昭和 31 年に蔵内金属鉱業(株)を設立して ① 大分県 工鉱課による試錐探鉱補助による下部鉱量確認, ② 2,000 t / 月の処理の亜鉛鉱を主とする全泥浮選工場設置 により本格的操業に入った。 昭和 33 年に錫鉱の品位が向上したので 比重選鉱を主体とする設備に切りかえ, 以後 1.5~3.0 万 t / 年の採掘規模で亜鉛・硫化鉄・錫の3種の精鉱を出荷して 今日に至っている(第 75 図)。

第 75 図 豊栄鉱山の 2,000 t / 月の処理の浮遊および比重選鉱工場。
Floatation and gravity dressing plant of the Hoei Mine.

昭和 25 年以降の採掘量は約 30 万 t で, そのほとんどが1号鉱体による。 そのなかの精鉱量は亜鉛鉱 22,700 トン, 硫化鉄鉱(主として黄鉄鉱)90,900トンおよび錫鉱 4,500 トンであるから, 粗鉱中の 1 / 3 強が金属鉱物となり, 濃集度の高い鉱床ということができる。 生産量の詳細は第 14 表のとおり。

第 14 表 豊栄鉱山の生産量(1956~1972 ; 選鉱場稼働期間)。
Production of Hoei Mine (1956~1972)

採掘粗鉱 選鉱精鉱
採掘粗鉱量
t
Zn
%
S
%
Sn
%
Cu
%
亜鉛精鉱
t(Zn %)
硫化鉄精鉱
t(S %)
錫精鉱
t(Sn %)
銅精鉱
t(Cu %)
[ 第 14 表に関する注意書き ]
精鉱中の含有金属量は以下の通り。
亜鉛 : 11,335 t, 錫 : 2,102 t, 銅 : 25 t, 硫化鉄鉱中の硫黄 : 37,192 t
この表のほかに 1950~1952 の期間に以下を出鉱した。
硫化鉄 : 8,725 t(S : 33.1 %), 亜鉛 : 99.8 t(Zn : 11.5 %)

豊栄鉱山は 秩父帯の一部にある古期の火成岩・変成岩・シルル紀層などよりなる構造帯 (黒瀬川構造帯)を母岩とする鉱床群で, 各鉱床の地質環境はつぎのとおりである。

シルル紀 九折層の石灰岩層 [ ls ] を交代する鉱床 : 1号坑・2号坑
圧砕花崗岩 [ G ] 中の網状~鉱染鉱床 : 嘉五郎坑・槍立坑
超塩基性岩 [ U ] 中の脈状鉱床 : 銀じき・観音滝坑
祖母山火山岩 [ S* ] 中の脈状鉱床 : 檜山坑

第 76 図 豊栄鉱山1号鉱床付近の地質および鉱床分布図(宮久, 1974)。
Geology and distribution of ore bodies of the No. 1 deposit of Hoei Mine (MIYASHITA, 1974).

[ 第 76 図に関する注意書き ]
地質図の凡例に関する記載は省略する。

第 77 図 豊栄鉱山1号鉱床の走向断面図。
Profile along the strike of the No. 1 deposit of the Hoei Mine.

[ 第 77 図に関する注意書き ]
地質の凡例および鉱石の品位に関する記載は省略する。

1号鉱床は石灰岩層を交代するスカルン~高温熱水性の錫・亜鉛・硫化鉄鉱床で, ほぼ同1層準のいくつかの石灰岩層を母岩とする中部鉱体・ 北部鉱体・ 蛍石鉱体・ 東第1鉱体および東第2鉱体などからなる(第 76・77 図)。 それらをあわせた開発範囲は, 水平延長が石灰岩層の走向である北西 - 南東方向に約 250 m, 上下延長がほぼ 150 m である。 露頭は小規模にすぎないが, その直下の4号坑で黄鉄鉱を主とする筒状鉱体となり, その下部の1号坑から さらに 15 m 下位の大切坑レベルでは 閃亜鉛鉱を多量に賦存する 30 m × 150 m の水平的ひろがりをもつ優勢な鉱体となった。 これが中部鉱体で, 大切坑レベル以下でしだいに錫石の含有が多くなり, -30 m, -45 m, -60 m, -75 m の各レベルにはいくつかの錫富鉱部が出現している。

この中部鉱体は -75 m 以下ではいくつかに分岐してしだいに劣化するが, それとともに北西方および南東方にやや性質のことなる鉱体が出現する。 北西のもの, すなわち北部鉱体は磁硫鉄鉱を主とし, 少量の銅鉱および錫鉱を伴い, 最大幅 20 m で北へむかってその走向をしだいに北東に変えながら続いている。 北東延長は超塩基性岩 [ U ] の盤際にそう脈状鉱床となる。 中部鉱体と北部鉱体の接合部付近に蛍石の巨晶の濃集する特異なレンズ状鉱体がある。 南東のものは径 15 m ていどの2個の筒状鉱体で, 錫・亜鉛・硫化鉄鉱からなり, 脈石として菱マンガン鉱を顕著に伴ない, それぞれ上下に長く延長する。

これらの各鉱体群の母岩の石灰岩 [ ls ] は断続しつつもほぼ1つの層準に属している。 その北方延長は北東方向へ, 南方は南東から東方へ弯曲してゆるい褶曲構造をなし, 鉱体の水平分布もそれにしたがっている。

いずれの鉱体においても 金属鉱石は石灰岩を直接交代することが多く, スカルンに伴うものはむしろ少い。 鉱床をつくる鉱物のうち 金属鉱物として最も多いのは, 下部においては磁硫鉄鉱, 上部においては黄鉄鉱であり, 鉄閃亜鉛鉱がそれに次ぐ。 優勢な鉱化部分は石灰岩の残存も少なくなっているが, その反面, 方解石・苦灰石および クトナホラ石 CaMn(CO3)2 などの炭酸塩脈石鉱物が多量に存在する。

第 15 表 豊栄鉱山1号鉱床の鉱物晶出の順序

鉱化期および鉱化作用の性質 晶出鉱物
第 Ⅰ 期(母岩石灰岩のスカルン化) 灰鉄ざくろ石・灰鉄輝石・珪灰石
第 Ⅱ 期(硼素鉱化) 斧石・ベスプ石・電気石・石英
第 Ⅲ 期(初期金属鉱化~塊状鉱石の形成) 磁硫鉄鉱・黄銅鉱・鉄閃亜鉛鉱・方鉛鉱・自然蒼鉛
第 Ⅳ 期(中期金属鉱化~晶洞性鉱石の形成)
  a. 黄鉄鉱鉱化 黄鉄鉱・白鉄鉱・硫砒鉄鉱
  b. 錫および亜鉛鉱化 錫石・黄錫鉱・閃亜鉛鉱・マラヤ石・石英
第 Ⅴ 期(後期金属鉱化)
  a. アンチモンおよび錫鉱化 ヘルツェンベルグ鉱・フランキ鉱・毛鉱
  b. 脈石鉱物の大量晶出 蛍石・苦灰石・クトナホラ石・菱マンガン鉱・絹雲母・菱鉄鉱
第 Ⅵ 期(不毛方解石晶出) 方解石

これらの造鉱床鉱物の晶出順序をまとめると第 15 表のようになる。 鉱化作用はこのように数回の上昇鉱液からの晶出によって進行したが, それぞれの晶出期については下部から上部へ, または中心部から周辺部への累帯配列が認められることがある。 しかしそれよりも, 晶出期のことなる鉱物が重複して分布する現象がいちじるしいため, 1号鉱体の全体としてはむしろテレスコープ化現象の方がめだっている。

硫化鉄鉱は初期には磁硫鉄鉱を主とするが, 中期および後期の鉱化作用では 磁硫鉄鉱の白鉄鉱化とともに 鉱体中心部に粗粒の黄鉄鉱が晶出して硫化鉄の富鉱部をつくる。 硫化鉄鉱物の挙動に対応して, 亜鉛鉱も初期は Cu - Fe - S 系鉱物を包有する鉄閃亜鉛鉱, 中期のそれは黄錫鉱と密接に共生する閃亜鉛鉱で, ともに鉄の含有量は多い。 錫の大部分は錫石として存在し, 一部は黄錫鉱, へルツェンベルグ鉱およびフランキ鉱などの硫化錫鉱物および くさび石族の特殊な錫鉱物であるマラヤ石などである。 錫の品位分析は鉱石を酸処理して硫化鉱物を溶解し去った試料についで行なうので, 第 14 表のそれは錫石のみに由来する品位である。 この平均品位が多年にわたって 1~2 % を維持したのは錫鉱山として出色の存在であろう。

一方, 黄錫鉱は上部にやや濃集しており, 開発の初期の 2 年間に銅精鉱として Cu 5 % ていどの鉱石を約 500 トン出荷したのは, 黄錫鉱・黄銅鉱・閃亜鉛鉱の3者の混合精鉱であった。 これは黄錫鉱が鉱石として売鉱された珍しい実例といえよう。

鉱石中にはそのほかの金属も含まれ, たとえばある試錐岩芯の標本分析につぎの例がある(大分県 工鉱課による)。

Au : 0.3 g / t, Ag : 30.3 g / t, Cu : 0.47 %, Pb : 0.24 %, Zn : 8.55 %, Fe : 31.26 %, Sn : 0.07 %, S : 28.45 %

脈石鉱物として通常知られる石英と方解石のほかで1号鉱体に多いのは苦灰石系の鉱物, すなわち, 苦灰石 CaMg(CO3)2 - 鉄苦灰石 Ca(Mg,Fe)(CO3)2 - クトナホラ石 CaMn(CO3)2 である。 淡紅~淡クリーム色のクトナホラ石は方解石と見誤られるが, 1号鉱体に多量に分布している。 このほか周辺部には菱マンガン鉱も多い。

豊栄鉱山に属するそのほかの前述のような鉱床は, 形態はことなっていても 造鉱床鉱物やそれらの晶出順序は共通し, ただ1号鉱床の鉱化期のそれぞれいずれかの時期のものが卓越している。 すなわち, 嘉五郎坑, 槍立坑および檜山坑は錫石(ただし低品位鉱)が, 銀じきは方鉛鉱(含銀)が, また観音滝坑は硫化鉄鉱がそれぞれに主要鉱石となる。 銀じきから観音滝へつづく超塩基性岩を母岩として 脈状鉱床は消長しながらもよく連続している。 脈幅は数 cm~数 10 cm であるが, 鉱液上昇通路として超塩基性岩の断裂構造が重要な役割りをなすことを知る。

[ VII.1.2 ] 勇ガ鶴 ゆうがつる 鉱山(大分県 大野郡 緒方町 滞迫 たいさこ

豊栄鉱山の北東ほぼ 2 km にあり, 窓鋪 まどじき (錫)および勇ガ鶴坑(亜鉛)の2鉱床からなって, 豊栄の支山である。 窓鋪は明治以前に大阪の枡屋某が採掘し, 磨鉱~椀汰 [ 意味不明 ] によって錫鉱を得たという旧坑があるが, 近年採掘されたことはなく, 1965 年に剥土探鉱がなされたのみである。 勇ガ鶴坑は明治 39 年に河村亀四郎によって, また大正年間にファーブルブラント合資会社によって, いずれも亜鉛鉱を目的に開坑されたが, あまりにも立地条件わるく放棄され, 以後今日まで再開されたことがない。

両鉱床はともに祖母山火山岩 [ S* ] に属する輝石安山岩を母岩とし, 地質はきわめて単純である。

窓鋪は奥岳川の右支流の一つである勇ガ鶴谷の上流の右支谷にあり, 海抜 1,000~1,100 m の高所にほぼ東西に走る1条の鉱脈がある。 露頭下 500 m の位置までは自動車を通ずるが, それからはただひとすじの山道があるのみの きわめて不便な場所である(第 78 図)。

第 78 図 勇ガ鶴鉱山の窓鋪の露頭の平面図。
Outcrop of the Madojiki Vein, a cassiterite-bearing tourmaline - quartz vein, of the Yu-ga-tsuru Mine. Host rock is pyroxene andesite.

鉱床は錫石を含む電気石 石英脈で硫化物にとぼしく, ごく少量の黄鉄鉱と硫砒鉄鉱を伴う。 走向 N 65~75°E, 傾斜 65~70°の鉱体のうち 下盤側がとくに正規鉱脈(regular vein)の状況を示し, 上盤は安山岩中に平行状細脈集合または網状脈として石英や電気石が入りこんでいる。 脈幅は西方で 4 m ていどを示すが, 東方上部は縮小して 0.5~0.7 m となる。 どの部分も母岩の珪化はいちじるしい。 これらの性質は豊栄鉱山付近のものと異なり, むしろ尾平鉱山の錫鉱脈群に類似している。

窓鋪鉱脈は露頭部の走向延長 210 m が確かめられているが, その東方はなお緒方・三重の両町界の尾根をこえて三重町側へのびている。 また上下は比高 130 m の間に連続している。 採取された 17 個の試料の錫品位は 0.05~1.58 %, 平均 0.44 % である。

勇ガ鶴坑は窓鋪の南方にあって, 深い渓谷によりへだてられ, 急斜面を横にたどるただひとすじのコースがあるのみの きわめで不便な位置にある。 鉱床は暗灰色~灰緑色の輝石安山岩中の N 80°W, 80°S の1条の鉱脈である。 その平均脈幅は 0.4~0.6 m にすぎないが, 閃亜鉛鉱を主とするやや高品位の鉱石からなる。 そのほかに方鉛鉱, 硫砒鉄鉱, 磁硫鉄鉱および黄鉄鉱などの金属鉱物を伴い, また一部に石英および菱マンガン鉱をみとめる。

平林武(1912)の報告によれば, 閃亜鉛鉱を主とする鉱石の分析値の一例は Zn : 41.20 %, Ag : 0.0266 % である。 閃亜鉛鉱は含鉄種(マーマタイト)であって, 微細な磁硫鉄鉱およびマッキナウ鉱の粒子を包有している。

古く開発された坑道は上下2つあり, 上部坑は東向きに鉱脈を追って 80 m 掘進, またその下方 25 m の下部坑は南向きの立入れで 20 m 掘進, 未着鉱である。

[ VII.1.3 ] 内ノ口 うちのくち 鉱山(大分県 大野郡 緒方町 湯ノ迫 ゆのさこ

この鉱山も豊栄鉱山に合併されてその支山となっているが, 古くは豊栄よりも内ノ口の名称が著名であった。 すなわち, 明治~大正年間に大阪鋪および松ノ木鋪が含銀方鉛鉱を目的に開発され, 美麗な結晶鉱物の産地としても知られていたのである。

内ノ口鉱山も海抜 700 m 付近の高所にあり, 湯ノ迫谷の上流の右岸, 轟岳の 7 合目に位置している。 湯ノ迫部落までは緒方駅または牧口駅から自動車を通ずるが, それより徒歩ほぼ 2 時間を要する。

付近は勇ガ鶴と同じく, 祖母山火山岩類 [ S* ] の後期噴出物である輝石安山岩 [ S-ap ? ] およびその火山砕屑岩 [ S-at ] からなる。

主脈の松ノ木舗は走向ほぼ WNW で北傾斜する幅約 1 m の硫化物を主とする鉱脈である。 鉱石鉱物は方鉛鉱を主目的としたが, そのほかに閃亜鉛鉱・磁硫鉄鉱などを多く伴う。 方鉛鉱は 2,000 g / t ていどの銀を含むいわゆる銀鉛鉱である。 閃亜鉛鉱はマーマタイト種の黒色結晶からなる。 これらのほか 石英および菱鉄鉱を脈石として伴うが, とくに菱鉄鉱は結晶面がいちじるしく弯曲するとともに多数集合し, ばらの花状をなす特異な標本をみとめる。

鉱脈母岩は黄鉄鉱の鉱染がいちじるしく, また, しばしば大小の黄鉄鉱脈が母岩の安山岩中に生じている。 鉱脈の上部は酸化帯となり, 粘土中に白鉛鉱(俗称「ナマリシロコ」)を含み, かって多産したという。

[ VII.1.4 ] とどろ 鉱山(大分県 大野郡 清川村 左右地 さうち

奥岳川の右支流の轟谷をさかのぼり, さらに西南にわかれる 伊毛 いげ 谷の左岸の山地にあって, 緒方駅から南方に直距離 9 km に位置する。 上述の内ノ口鉱山とは約 2 km をへだてるが, 古くから両者ともに銀鉛鉱を目的に稼行され, 古記録によれば 1677 年に発見されて, 竹田(岡)藩の直営であったという。 たとえば 19 世紀初頭の豊後国志に以下のように記されている。

内口山, 轟山並びに傾山の北に在り, 山中洞穴多し。 蓋し皆廃坑なり. 相伝う往時この地, 白銀・鉛・錫, 多く出て, 山中市をなす。 数頃の間, 居民の屋跡なお存す。 且つ古墳墓多し。 今旧坑に入りて錫を採る。 皆上品なり。 但し得るところ僅々のみ。

調査当時は地元の佐保栄氏が小規模に探鉱作業中であった。

現在みられるのは 伊毛谷斜面の水抜坑と, それより西に山嶺をこえたところにある鉱脈露頭および それに開坑する1坑から5坑にいたる5つの旧坑である。 露頭は粘板岩ホルンフェルス中の走向 N 58°E, 傾斜 30~50°N の鉱脈で, 厚さ 20 cm の石英脈を中心に, その両側がセリサイト化および黄鉄鉱化をうけた鉱化帯からなる。 2坑は脈にそって南に掘下り, ほぼ 25 m で中段の水平坑道を展開している。 それまでの間はセリサイト化母岩中に石英および硫化物が網状に入り, かつ粘土化と褐鉄鉱化を伴う鉱化~変質帯で, 中段坑では石英脈をみとめる。 3坑および4坑は2坑の東方にある掘下りで, 下部はかなり採掘されているという。 5坑は走向 N 45°E, 傾斜 75°S の石英脈を追って掘進するが, 途中で EW 系の脈と交叉するところに白色粘土を混える軟弱な石英質鉱石をみとめ, 方鉛鉱を伴う銀黒類似の部分は含銀品位が高いといわれる。

水抜坑はホルンフェルス中を屈曲しつつほぼ西へむかう水平坑道で, WNW 系(南に緩傾斜)の脈と NNE 系(西に急傾斜)の脈とが交叉しつつ連続している。 脈質は石英・粘土・黄鉄鉱の3者からなる。

[ VII.1.5 ] 大白谷 おおしろたに 鉱山(大分県 大野郡 三重町 大白谷)

東隣の三重町図幅の 中津牟札 なかつむれ 川の上流の左岸にあり, 豊肥線 三重町駅から約 23 km で大白谷部落へ, それより 1 km で坑口付近に到達する。 べつに牧口駅から清川村の轟をへて大白谷に至るコースもあり, その途中の中山 [ 位置不明 ] 付近からわかれる旧林用軌道跡をたどれば大白谷鉱山の露頭直上に達する。

鉱山の歴史は明らかでないが, 明治年間に銅鉱を目的として短期間操業し, そののちはほとんど開発されたことがない。

鉱山付近は祖母山火山岩類 [ S* ] の安山岩の溶岩 [ S-ap ] ・火砕岩 [ S-at ? ] および流紋岩質溶結凝灰岩 [ S3-dwt ? ] などのメンバーと, それに貫入する花崗斑岩 [ Yp ] の岩脈とからなるが, 鉱床分布地付近のせまい範囲に古生層 [ ssl ? ] が分布する。 この古生層は花崗斑岩にとりこまれた捕獲岩体のように見えるが, その実態は未解明である。

鉱床は 火山岩・斑岩・古生層の3者いずれをも母岩として ほぼ東西に走る厚さ 1 m 以下の1条の鉱脈であるが, 古生層中にあってはスカルン化帯に移化している。 西方上部から東方下部へむかって1坑~3坑の3個の坑道が開かれ, それぞれ坑内では南傾斜の脈を追って掘下っているというが, 坑口埋没して不明である。 上部の鉱石中には孔雀石・珪孔雀石・赤銅鉱・緑鉛鉱・藍銅鉱などの二次鉱物がみとめられ, また, 下部のそれは黄銅鉱・閃亜鉛鉱・方鉛鉱などで, スカルン質のところは灰鉄輝石とともに磁鉄鉱を含む。

大白谷鉱山と前掲の勇ガ鶴鉱山の中間は 渓谷がいくつにも派生して広範囲に祖母山火山岩類が分布し, その中に数多くの鉱床露頭がある。 それらのうちの勇ガ鶴鉱山の窓舗に近い西方の高所は電気石石英脈群, 東方の斜面は硫化物脈群が多く, 窓舗を中心として周辺へむかい 高温帯から低温帯に移る水平的鉱石帯状配列の現象として把握される。 地表部に花崗岩体の露出はないが, 金属鉱物探鉱促進事業団による深部試錐で 花崗岩体の潜在をつかんだことは前述のとおりであり, このような貫入花崗岩体に起しする鉱化と その帯状分布であることが推定できる。

鉱床のほとんどは未開発であるが, そのうちただ1カ所, 大白谷鉱山の南西方 1.5 km の銀じきと称する旧坑は走向 N 80°E, 傾斜 80°S, 脈幅 0.3~0.4 m の硫化物鉱脈を掘進している。 黄鉄鉱・閃亜鉛鉱・方鉛鉱などをみとめるが, 明治 33 年に白山鉱山として出鉱記録があるのはこの鉱床ではないかと考えられる。 すなわち, 2.1 トンの精鉱から銀 3.3 kg, 鉛 588 kg を得ているので, 小規模ながら含銀方鉛鉱を産出したことを知る。

なお, 上述の構造ボーリングにおいても, 上下を通じて細脈をなす金属鉱物は数多く見出された。


そのほかの竹田図幅地域内における非鉄金属の鉱山として, 緒方町 土岩部落の西方 1 km の花崗斑岩 [ Yp ? ] の中の鉱染状閃亜鉛鉱鉱床は亜鉛を目的に, また同町 小原 おばる ~中野 [ ← 烏岳の北方 1 km ] 間の峠付近, および竹田市 緩木 ゆるぎ 山付近のいずれも祖母山火山岩類 [ S* ] の中にある石英脈は金を目的に, それぞれ探鉱されたことがある。

VII.2 マンガン鉱床

マンガン鉱床は図幅地域の東端に近い秩父帯北部帯に二, 三の既知鉱床があり, 層状~レンズ状形態をなし, チャートを母岩とするなどの 本邦古生層中のマンガン鉱床に共通する性質を有している。

吉村(1952)は古生層中のマンガン鉱床をいくつかの形式に分類したが, それらのうち, 母岩としてチャートのほかに塩基性火山岩(または凝灰岩)の存在も顕著な 富里型 - 穴内型 - 北見型の系列と, 主としてチャートのみに伴なわれる 真名子型(一部は大和型および加蘇型)とが識別されることをのべた。 両グループはその地質の環境と鉱石の性質がかなり異なっている。 この地域にあるマンガン鉱床は前者のグループに属し, いずれも塩基性火山噴出物との随伴が見られる。

なお, マンガン鉱床は 竹田図幅地域から東へこえて三重町および臼杵の両図幅地域に多数分布している。 吉村(1952)はこれらを臼杵地域とよんで, 類似鉱床タイプからなる鉱床区とした。

[ VII.2.1 ] 御岳 おんたけ 鉱山(大分県 大野郡 清川村)

轟部落の南方にあり, 大白谷へむかう道路の主として東側の山地にいくつかの坑口がある。 これらは 御岳山(三重町図幅地域)を中心に発達する犬鳴 - 駒石 - 河原内の鉱床群の西端にあたり, いずれも一連のものである。 古くから開発されたが, 合計精鉱量はほぼ 1,500 トンにとどまっている。

鉱山付近は輝緑凝灰岩 [ bv ? ] (~緑色千枚岩 [ ph ] )とチャート [ ch ] の互層からなり, 鉱床はチャート, とくに塊状チャートを母岩とする塊状~レンズ状形態で, 緑色岩および塊状チャートは鉱床に接するところで赤色となっている(いわゆる赤盤化)。 鉱石は淡紅~淡灰褐のばら輝石を主とし, ブラウン鉱・ 白色菱マンガン鉱(白タンマン)および 褐色菱マンガン鉱(あずきタンマン)などを伴う珪マン~炭マン鉱石である。

[ VII.2.2 ] そのほかのマンガン鉱山

轟部落の南西方 1 km に轟マンガン鉱山がある(前述の轟鉱山とはべつ)。 付近は緑色岩 [ bv ? ] ・粘板岩 [ psl ? ] およびチャート [ ch ] などの互層を主とし, 鉱床はチャートまたは緑色岩(輝緑岩)中にある。 付近にある新第三紀の花崗斑岩 [ Yp ] の岩脈による熱変成をうけて鉱石は変質し, テフロ石・ばら輝石およびアラバンド鉱などを生じている。

御岳鉱山のマンガン鉱床の南西方延長は伊毛谷に出現し, その右岸(左岸には前述の新第三紀鉱脈からなる轟鉱山がある)のチャート中に露頭を有し, べつの鉱山として探鉱された(鉱山名不詳)。

VII.3 非金属鉱床

図幅内に陶石とかんらん岩とが分布している。 両者はともに法定鉱物ではないが, ここにのべておく。 ただし, 採掘出鉱の実績はない。

陶石は 清川村の轟の西方から 緒方町の湯ノ迫にかけてのびる花崗斑岩 [ Yp ] 岩脈の一部に生じている。 やや硬質(珪質)であり, 白色化とともに酸化鉄の褐色汚染をかなり伴うので, 利用可能の部分は地表で見るかぎりでは多くない。

かんらん岩は, 地質の項でのべたとおり, 竹田図幅地域南縁部の豊栄鉱山付近から 三田井図幅地域にかけて分布する超塩基性岩体 [ U ] のかなりの部分を占める。 最も良質のものは苦土かんらん石を主とする淡緑灰色のダンかんらん岩であるが, そのほかに蛇紋岩や滑石化部分もある。 鏡検および X 線粉末法試験などによると, 構成鉱物は苦土かんらん石(F), 蛇紋石(S)および滑石(T)の3者からなるが, それぞれの消長によって F 型, FS 型, FT および FST 型の4岩型にわけることが出来る。 苦土成分(MgO)は 43~49 %, 灼熱減量は 2~4 % ていどで, 国内で採掘されている北海道の幌満岩体や四国の東赤石岩体にほぼ準ずる品質である。 また, 肉眼的にダンかんらん岩と認められる塊状のもの(上記の4岩型のいずれか)は 耐火度 SK 30 以上を示し, 最高は SK 36 に達する。 好ましくない成分として 石灰(CaO)は少く, それは鉱物学的には輝石の少ないことによる。 しかしその反面, 微細な鉄鉱物を包有し, 酸化鉄(FeO および Fe2O3)は 8 % 以上となるものが多い。

かんらん岩の利用は, 最も高級な用途が ① 鋳鋼用の造形砂(いわゆるオリビンサンド)で, 次いで ② 耐火材・炉床材があり, また, 製鉄~製鋼用としての大量利用には ③ 均熱炉の炉床材および ④ 高炉製銑溶材などがある。 この地区に賦存するもののうち 苦土かんらん石を主とするダンかんらん岩は 充分に ① の目的に使用可能であり, ② にも向けることが出来る. しかし, ③ と ④ については, 大量廉価な各地の蛇紋岩にくらべて 採掘や搬出の立地条件がやや劣るようである。

VII.4 石材・砕石

Aso-4A および Aso-4B 火砕流の溶結部 [ A4W および A4B ] が しまっていて 且つ 硬すぎず 加工し易いので, 各所で小規模に採石され 間知 けんち その他に利用された。

大野川層群の黒色頁岩 [ R1 ? ] が 緒方町 大久保 [ ← 竹田の東方 4 km ] 付近で採取され, 路面にしくバラスとして使用されている。

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QUADRANGLE SERIES
SCALE 1 : 50,000

Kagoshima (15) No. 23

GEOLOGY OF THE
TAKETA
DISTRICT

By Koji ONO, Yukio MATSUMOTO, Michitoshi MIYAHISA, Yoji TERAOKA and Nobukazu KAMBE (Written in 1976)


Abstract

The Taketa district is located in the central part of Kyushu. Geologically it belongs to the Inner Zone of South-west Japan in the north and the Outer Zone in the south.

It is topographically and geologically divided into two areas. The northern area, occupied by plateaus and hills, consists mainly of pyroclastics of the Aso Volcano with other volcanic rocks of Middle Miocene to Pleistocene age, underlain by the Upper Cretaceous Ono-gawa Group and the Asaji Metamorphic Rocks which belong to the lnner Zone of South-west Japan (Fig. 8 [ in the Japanese text ] ). The southern area is occupied by dissected high mountains, the Sobo - Katamuki Mountains, and composed of the Miocene Sobo-san Volcanic Rocks with acid intrusive rocks underlain by the Paleozoic and Mesozoic rocks belonging to the so-called Chichibu Terrane which is a major geotectonic belt in the Outer Zone of South-west Japan. Stratigraphy in the district is summarized in the Table 16.

Table 16 Stratigraphic relations of rocks in the Taketa district.

Area →
Age ↓
Outer zone of South-west Japan Inner zone of South-west Japan
Chichibu Terrane Samba-gawa Terrane
Ōno-gawa Graben

[ Legend on the geological map ]

Cenozoic Quaternary Holocene Alluvium a Sand and gravel
Aso Volcano,
central cones
Air-fall ash Ac Volcanic ash
(mainly of pyroxene andesite)
Late
Pleistocene
Aso Vlocano,
pre-caldera
stage
(A)
and
Kujū Valocano
(K)
Inaba-gawa
Mud-flow
Ki Loose deposit of ash and block
(mainly of hornblende andesite)
Aso-4B
Pyroclastic Flow
A4B Welded tuff
(pyroxene - hornblende rhyolite)
Aso-4A
Pyroclastic Flow
A4P Non-welded deposit of vitric ash and pumice
(hypersthene - hornblende rhyolite)
A4W Welded tuff
(hypersthene - hornblende rhyolite)
Air-fall pyroclastics
between
Aso-3 and Aso-4
A3-4 Bedded deposit of pumice and ash
(of pyroxene rhyolite)
Shimo-sakata
Pyroclastic Flow
Ks Non-welded deposit of vitric ash and pumice
(biotite - hypersthene - hornblende dacite)
Aso-3
Pyroclastic Flow
A3 Vitric ash, scoria and pumice or welded tuff
(pyroxene andesite and pumice or
welded tuff)
Air-fall pyroclastics
between
Aso-2 and Aso-3
and below Aso-2
A2-3 Bedded deposit of pumice and ash
(mainly of pyroxene rhyolite)
Miyagi
Pyroclastic Flow
Km Non-welded deposit of vitric ash and pumice
(biotite - hypersthene - hornblende dacite)
Aso-2
Pyroclastic Flow
A2 Non-welded deposit of ash and scoria
(pyroxene andesite)
Tamarai-gawa
Lava
At Pyroxene andesite
Aso-1
Pyroclastic Flow
A1 Welded tuff
(pyroxene rhyolite)
Early
Pleistocene
Takajō-machi Pyroclastic Flow T Non-welded deposit of vitric ash and pumice
(hornblende - biotite rhyolite)
Shimo-ogi-dake Lava Og Biotite - hornblende dacite
Kawara-date Pyroclastic Rocks Oa Lapilli tuff and tuff breccia
(pyroxene andesite and
pyroxene - hornblende andesite)
(shown only in the geologic profile F - H)
Imaichi Pyroclastic Flow I Welded tuff, partly non-welded
(pyroxene rhyolite)
Tertiary Pliocene Hira-ishi Gravel Bed H Gravel, sand and mud
Kozono Pyroclastic Flow Oz Non-welded deposit of vitric ash and pumice
(hornblende - biotite rhyolite)
Ōwatari Lava Ow Pyroxene andesite
Miocene Ōno
Volcanic Rocks
Miyake-yama
Pyroclastic Flow
Om Welded tuff
(olivine - pyroxene rhyolite)
Neogne acid intrusive rocks Yg Biotite granite
Yp Granite porphyry and quartz porphyry
Ygd Fine-grained granodiorite
Yf Felsite
Sobo-san
Vlocanic
Rocks
Late
volcanic
rocks
6th Stage S6-dt Andesite to dacitic tuff breccia
S6-d Dacite lava
4~5th Stages S-ap Porphyritic pyroxene andesite lava
S-at Andesitic tuff breccia
S-aa Aphyric pyroxene andesite lava
Early
volcanic
rocks
3rd Stage S3-dt2 Dacitic tuff breccia
S3-dwt Dacitic and rhyolitic welded tuff
s3-d
s3-d'
Rhyolite and dacite lava,
with tuff breccia (S3-d')
S3-dt1 Dacitic tuff breccia
2nd Stage S2 Lithoidite
1st Stage S1-dt Dacite tuff and tuff breccia
S1-dwt Dacitic welded tuff
Mitate Formation M Conglomerate with sandstone
Mesozoic Cretaceous Ōno-gawa
Group
t Acid tuff
Shiba-kita
Formation
S Sandstone and shale
(shown only in the geologic profile A - E)
Oku-kawara-uchi
Formation
O1 Sandstone with conglomerate and shale
Ryō-zen
Formation
R2 Sandstone with shale and conglomerate
R1 Shale
R1 Conglomerate and sandstone with shale
Cretaceous formation at Yu-no-sako Yu Sandstone, shale and conglomerate
Tsuchi-iwa Formation Ts Sandstone and shale with conglomerate
Ultra-basic rocks U Peridotite, serpentinite and pyroxenite
Paleozoic Asaji Metamorphic Rocks Aj Metamorphosed basalt lava and tuff,
sandstone and shale
Permian

Carboniferous ?
Upper Paleozoic formations
in the Chichibu Terrane
ls Limestone
ssl Sandstone and clay-slate
ch Chert
psl Phyllitic clay-slate and sandstone
bv Green phyllite and diabase
ph Banded phyllite
Silurian Tsuzura Formation ls Limestone
Tz Clay-slate, sandstone, rhyolite and acid tuff
(thermally metamorphosed)
Pre-Silurian ? G Cataclastic granite
Basic metamorphic rocks B Amphibolite, pyroxenite and shistose gabbro

Pre-Cenozoic rocks in the Chichibu Terrane are the Upper Paleozoic formations with older rocks as tectonic lenses, namely basic metamorphic rocks, cataclastic granite and the Silurian Tsuzura Formation, and with the intercalations of two probable Cretaceous formations, the Tsuchi-iwa Formation and the formation at Yu-no-sako.

Basic metamorphic rocks and cataclastic granite

Basic metamorphic rocks are mainly amphibolite with pyroxenite and schistose gabbro. Cataclastic granite is ranging from adamellite to granodiorite in composition and shows cataclastic texture in a more or less degree. They crop out in a narrow belt, so-called Kurose-gawa Structural Belt trending in a ENE - WSW direction, associated with the Silurian formation. These rocks are possibly pre-Silurian, though the basic metamorphic rocks are fault-bounded on the Paleozoic formations and the contact relation of the granite with the Silurian formation is obscured due to thermal metamorphism by the Neogene granite.

Tsuzura Formation (Silurian)

The Tsuzura Formation occupies a narrow belt of about 1.5 km wide in the drainage area of the Tsuzura river and is composed of clay-slate, sandstone, limestone, rhyolite and acid tuff. These rocks are metamorphosed to hornfels by the Neogene acid intrusive rocks. This formation is always bounded on the Paleozoic fomation by serpentinite bodies probably invaded along faults. This formation is correlated to the Silurian by the fossils such as Dania tsuzuraensis NODA.

Upper Paleozoic formation in the Chichibu Terrane

Generally the Chichibu Terrane is divided into three belts, namely the Northern, the Middle and the Southern Belts. The first two distribute in this district.

The distributions of the Upper Paleozoic formations are divided by the Neogene volcanic rocks into two areas, namely the Kiyo-kawa area and the Tsuzura area in the south-eastern part of this district.

In the Kiyo-kawa area there are distributed the Paleozoic formation belonging to the Northern Belt and the Middle Belt. In the Northern Belt the fomations are mainly composed of green phyllite derived from basic tuff, diabase, black phyllitic clay-slate and sandstone accompanied with chert and limestone. These formations are correlated to the Chin-nan-zan Belt in the north-eastern Usuki district by the similarities in rock facies and the tectonic setting and accordingly their geologic age probably is Early Permian or older.

In the Middle Belt the formations are mainly composed of sandstone, clay-slate and limestone. They are correlated to the Tsukumi Belt in the Usuki district by the similarities in rock facies and the tectonic setting and their geological age probably is Permian.

In the Tsuzura area there are distributed the Paleozoic formations of the Northern Belt. They are mainly composed of hornfels derived from banded phyllite and are probably correlated to the Chin-nan-zan Belt.

Ultra-basic rocks

The distributions of the ultrabasic rocks in the Chichibu Terrane are divided into two areas separated by the Neogene volcanic rocks. The greater part of ultrabasic rocks is serpentinite in the eastern area, and dunite is distributed more abundantly than serpentinite in the western part. They occur as lenticular or sheet-like bodies cutting the Upper Paleozoic formations, older rocks in the Kurose-gawa Structural Belt as the Silurian Tsuzura Formation and probably the Early Cretaceous Tsuchi-iwa Formation. They are thermally metamorphosed by the Neogene acid intrusive rocks.

Besides above, a body of serpentinite and pyroxenite, probably associated with the Asaji Metamorphic Rocks, is found to the north-east of Taketa underlying younger volcanic rocks.

Asaji Metamorphic Rocks

The Asaji Metamorphic Rocks, derived from the Paleozoic formations, are mainly distributed to the north and north-east of this district. They had been probably metamorphosed regionally in a low grade, and then, suffered from contact metamorphism by the Early Cretaceous granite plutons. Metamorphosed lavas and tuffs of basalt with sandstone and shale crop out in two small areas near the northern border of the Taketa district.

Tsuchi-iwa Formation

The Tsuchi-iwa Formation is distributed in the upper drainage area of the Oku-take river and is composed of shale and sandstone with minor conglomerate. Most of sandstone are fine- to medium-grained and alternate with shale in various manners. The conglomerate contains pebbles of chert, sandstone, clay-slate, acid volcanic rock and leucocratic granite. This formation is considered to be the Lower Cretaceous.

Cretaceous formation at Yu-no-sako

The Cretaceous formation is distributed in a narrow belt at Yu-no-sako near the northern border of the Chichibu Terrane. This is composed of sandstone, shale and conglomerate and is bounded with the surrounding older rocks by faults. The sandstone is mainly medium-grained and the conglomerate contains pebbles of clay-slate, chert and sandstone. The formation is assumed to be the upper Lower Cretaceous.

Ōno-gawa Group

The Ōno-gawa Group is a thick marine sequence of Cenomanian to Santonian age, and forms an asymmetrical synclinorium plunging to the north-east in the Ōno-gawa Graben which is bounded by the Usuki - Yatsushiro Tectonic Line on the South, and the Taketa, Sashu and other faults on the north(Fig. 8 [ in the Japanese text ] ). It shows remarkable lateral changes in litho-facies and thickness, and comprises four sub-groups.

In this map area there sporadically crop out the upper part of the Lower-most Sub-group, the Ryō-zen Formation, and the lower part of the Lower Sub-group, the Oku-kawara-uchi Formation(Figs. 15 and 16 [ in the Japase text ] ).

The Ryō-zen Formation is divided into two members. Both the members become finer in lithology and increase in thickness south-ward. The R1 member below is composed of sandstone and conglomerate with thick beds of fossiliferous shale. From the shale beds are obtained Mesopuzosia pacifica MATSUMOTO, M. indopacifica (KOSSMAT), Subprionocyclus neptuni (GEINITZ), Otoscaphites puerclus (JIMBO), Inoceramus hobetsensis NAGAO & MATSUMOTO, Pterotrigonia datemasamunei (YEHARA)and many other pelecypods. The R2 member above is made up mainly of sandstone with frequent intercalations of shale, and contains Inoceramus teshioensis NAGAO & MATSUMOTO. Acid tuff layer occurs at three horizons in the formation.

The O1 member exposed in this district is the lowest part of the Oku-kawara-uchi Formation, and consists of sandstone with minor conglomerate and shale.

In the Ryō-zen Formation are recognized Inoceramus hobetsensis and I. teshioensi zones. These fossils and associated ammonites indicate Upper Turonian. The overlying Oku-kawara-uchi Formation yields no fossils diagnostic of age.

The conglomerate of the both formations contains cobbles to granules, rarely boulders, of many kinds of igneous, sedimentary and metamorphic rocks, among them igneous rocks, especially granitic and acid volcanic rocks, being predominant. The metamorphic rocks include crystalline schists and gneisses which may have been derived mostly from the Ryoke metamorphic zone.

The sandstone composition is shown in Fig. 18 [ in the Japanese text ] . The lateral change of sedimentary facies and the paleo-current pattern suggest that the Ōno-gawa sedimentary basin was filled with the clastics derived mainly from the source area to the north.

Mitate Formotion

The Mitate Formation rests unconformably on the Silurian Tsuzura Formation in a limited area. It consists mainly of boulder-bearing cobble and pebble conglomerate. This formation is probably of Paleogene.

Sobo-san Volcanic Rocks and Neogene acid intrusive rocks

The Sobo-san Volcanic Rocks are large Miocene volcanic complex formed by a cycle of igneous activities together with Neogene acid intrusive rocks intruding into them. The Sobo-san Volcanic Rocks are divided into two : the early members, mainly of dacitic or rhyolitic lavas and pyroclastics, and the late members, mainly of andesitic lavas and pyroclastics with subordinate amounts of dacitic ones. The early members overlie unconformably the Mitate Formation and the Paleozoic rocks. The late members are distributed in depressions in older rocks or two calderas bounded by arcuate faults or acid dikes intruding into them. The Katamuki-yama Caldera is the better defined one, 9 km in the NW - SE and 6 km in the NE - SW directions, and another one, possible caldera, is a block including the peak of Sobo-san in the southern Mitai district (Fig. 8 [ in the Japanese text ] ). Recent two drill hole data revealed downthrows more than 850 meters and more than 1,000 meters respectively for these depressions.

The Sobo-san Volcanic Rocks are intruded by the acid intrusive rocks such as felsite, fine-grained granodiorite, granite porphyry - quartz porphyry and biotite granite, successively in the said order. Though a small body of the biotite granite is shown in the map, another body is found in the drill hole and both of them probably are satellites or cupolas of the Ōkue-yama Pluton, 21 m. K - Ar y., lying to the south-east of this district. The dike of granite porphyry bounding the Katamuki-yama Caldera on the north-east is a part of a large ring dike system 40 km by 20 km in the NW - SE and the NE - SW directions encircling the central Ōkue-yama Pluton. These acid intrusive rocks brought polymetallic ore deposits as skarns and veins.

Middle Miocene and Pliocene volcanic rocks and strata

The Ōno Volcanic Rocks are volcanic formations of the middle Miocene, 14 - 15 m. K - Ar y., and distributed mainly in the area to the north or northeast of the Taketa district. The Miyake-yama Pyroclastic Flow, the upper-most member of the Ōno Volcanic Rocks consists of dense welded tuff of two-feldspar rhyolite lying at the northern margin of the district. Two Pliocene volcanic members crop out near the northeast corner of the district : those are, the Kozono Pyroclastic Flow of biotite rhyolite, and the Ōwatari Lava of pyroxene andesitc. The Hira-ishi Gravel Bed is composed of gravel of boulder-size with intercalations of smaller-sized gravel, sand, and mud. The bed represents probably fan deposits which were brought out from the Sobo - Katamuki Mountains and accumulated at the foot of them in Pliocene age.

Early Pleistocene Volcanic Rocks

Early Pleistocene volcanic members in this district belong to those of calc-alkaline rocks which are distributed widely in central Kyushu. The Imaichi Pyroclastic Flow is a large-scale, mostly welded deposits of pyroxene rhyolite and came from the source possibly located to the north of the Taketa district. The Kawara-date Pyroclastic Rocks, consisting of lapilli tuff and tuff breccia of pyroxene andesite or hornblende - pyroxene andesite, underlie the Aso-1 Pyroclastic Flow and are found only in the drill hole at the center of the district. The Shimo-ogi-dake Lava, hypersthene-bearing biotite - hornblende dacite, forms a small peak in the pyroclastic plateau, and represents a lava dome which was not completely buried by the Aso Pyroclastic Flows. The Takajō-machi Pyroclastic Flow is a non-welded deposit of biotite rhyolite, found in the city area of Taketa, always underlying the Aso-1 Pyroclastic Flow.

Aso Volcano

The Aso Volcano, located to the west of this district, erupted voluminous pyroclastic flows four times, the Aso-1 to the Aso-4 in ascending order, in the late Pleistocene. The present shape of the caldera was formed following the outflow of the Aso-4 Pyroclastic Flow before more than 43,000 14C y. The Aso Pyroclastic Flows accompanied with air-fall pyroclastics of these four cycles with intercalations of air-falls and lava flows of other cycles collectively form pyroclastic plateaus surrounding the caldera. Many post-caldera central cones have been formed inside the caldera and one of them is still active.

Most part except the southern mountains in the Taketa district is covered by succession of pyroclastics and a lava flow from the Aso Volcano as shown in the Table 17. Deposits of the Aso-1 and -2 cycles and the Tamarai-gawa Lava crop out along valleys while those of the Aso-3 and -4 cycles form bulk of the pyroclastic plateau. The pyroclastic plateau was cut by valleys between each cycle to form a topography just like that as seen now, then later pyroclastic flow filled up the valleys and covered plateau surface, thus resulted in densely welded valley-fill facies and non-welded plateau-top facies as typically seen in the Aso-4 Pyroclastic Flow. Each of pyroclastic flows of the four cycles forms a multi-flow compound cooling unit with wide variety in lithology, mineralogy and chemistry. The rocks of the Aso-1 to -3 cycles are of pyroxene rhyolite and andesite while those of the Aso-4 are hypersthene - hornblende rhyolite with small amounts of pyroxene - hornblende andesite. The rocks are richer in alkalies, especially in K2O, compared with common Japanese calc-alkaline volcanic rocks(Tables 12 and 13 [ in the Japanese text ] ). Air-fall ash layers from the central cones cover the top of the pyroclastic plateau.

Table 17 Quaternary volcanic rocks in and around the Taketa district.

Aso Volcano Kujū Volcano
Aso Caldera and its western flank Taketa district Kujū district
[ note on the Table 17 ]
P : Pyroclastic.
Magnetic polarity
(N) : normal, (R) : reverse.
Formation names in parentheses are not distributed in the Takata district.

Kujū Volcano

The Kujū Volcano is situated to the north-west of this district and consists of a group of lava domes, small strato-volcanoes and surrounding pyroclastic plateaus, the margin of which reaches to the north-west corner of this district. The Miyagi and the Shimo-sakata Pyroclastic Flows, both of hornblende dacite, and the Inaba-gawa Mudflow in this district are alternating with the Aso Pyroclastic Flows (Table 17) showing the contemporaneous lives of two nearby volcanoes erupted magmas of different composition.

Alluvium

Thin and narrow alluvial deposits are distributed along some of rivers.

Economic Geology

Tin, zinc and iron sulphide

Veins and contact-metasomatic deposits of tin, zinc and iron sulphide and other metallic ores are formed related with the Neogene acid intrusive rocks and constitute a distinct mineral province in which are Obira, Mitate, Toroku and other mines in the neighboring district and Hōei and others in this district.

Hōei mine is located at Ogata-cho, Oita Prefecture. The mine has worked tin, zinc and iron sulphide up to the present. The Ichi-go(no. 1)ore body of the mine is a massive metallic deposit formed by replacement of the Silurian limestone bed. From this ore body, there have been found various kinds of ore and gangue minerals, such as cassiterite, stannite, pyrite, pyrrhotite, marmatite, kutnahorite, rhodochrosite, calcite, garnet, clino-pyroxene, axinite and wollastonite.

Manganese

Bedded or lenticular deposits of manganese ores are found in chert of the upper Paleozoic formations as those in other areas in Japan. Some or them were exploited and worked.

Non-metallic ores

Pottery stone has been formed in a dike of Neogene granite porphyry near Yunosako and Todoro but not worked yet.

Dunite occupies a good portion in bodies of ultrabasic rocks near the south border of the district. Some of them are high in MgO content(43 - 44 %)and in refractory grade (SK 30 - 60).

Stones

Welded tuffs of the Aso-4A and Aso-4B Pyroclastic Flows are quarried for building stone at many places but on a small scale for local use. Black shale of the Ōno-gawa Group is used for road metal.


図版

第 Ⅰ 図版

1. スケッチ / Sketch
So : 祖母山(三田井図幅地域), S : 障子岳(三田井図幅地域),
O : 大障子岩, M : 前障子岩(障子岩),
A : 阿蘇山の根岸岳および高岳(阿蘇山図幅地域)。

So : Sobo-san (Mitai district),
O : Ōshōji-iwa, M : Mae-shōji-iwa,
A : central cones of the Aso Caldera.
1. 写真 / Photograph
傾山より祖母山~大障子岩方面を望む。 障子岳から祖母山, さらに大障子岩, 前障子岩と続く稜線のすべて, およびその斜面の大部分は祖母山火山岩類の後期火山岩類からなる。 祖母山の左直下に尾平鉱山(三田井図幅地域)があった。

Sobo-san and nearby peaks viewed from Katamuki-yama. These mountains are mainly composed of the Late Volcanic Rocks of the Sobo-san Volcanic Rocks.
2. スケッチ / Sketch
U : 後傾山, H : 本傾山, M : 前傾山, F : 二ツ坊主, M : 三ツ坊主。

H : Hon-katamuki-yama (main peak of Katamuki-yama).
2. 写真 / Photograph
九折越より傾山岩峰群を望む。 これら岩峰群はすべて祖母山火山岩類の前期火山岩類からなる。

Peaks around Katamuki-yama viewed east~north-east from Tsuzura-goe(Mitai district). These peaks are composed of the Early Volcanic Rocks of the Sobo-san Volcanic Rocks.

第 Ⅱ 図版 祖母山火山岩類
Sobo-san Volcanic Rocks

1. 黒雲母石英デイサイト(SYK45-331)
第 Ⅰ 期火山岩類の石英デイサイト溶岩。 宮崎県 西臼杵郡 高千穂 土呂久の北方 2000 m の ボーリング岩芯の孔口深度 331 m(三田井図幅地域)。 ピロタキシティック~毛せん状組織を示す石基の中に 石英・斜長石(P)・カリ長石(K)および黒雲母の斑晶をみとめる。 十字ニコル。

Biotite dacite of 1st Stage (S1-d).
P : plagioclase, K : K-feldspar.
2. リソイダイト(5282806)
第 Ⅱ 期火山岩類のリソイダイト溶岩。 大分・宮崎県境の本谷山の西方 400 m(三田井図幅地域)。 著しい流理組織は粒度・構成鉱物の差によって生じており, 石英・斜長石・カリ長石・黒雲母などきわめて細かい石基からなる。 開放ニコル。

Lithoidite of 2nd Stage(S2).
3. 流紋岩質溶結凝灰岩(72072302)
第 Ⅲ 期火山岩類。 宮崎県 西臼杵郡 高千穂町 五カ所の南西 1700 m(三田井図幅地域)。 溶結組織を残した基地の中に斑状鉱物として石英(Q), カリ長石(K), 斜長石(P)がみとめられる。 また, おそらく黒雲母から変ったと思われる緑泥石がみとめられる。 さらに, 溶結凝灰岩のレンズであった部分が脱ガラス化して, 石英・長石の微細鉱物の集まりになっている。

Rhyolitic welded tuff of 3rd Stage(S3-dwt).
Q : quartz, P : plagioclase, K : K-feldspar.
4. 流紋岩質溶結凝灰岩(72072301).
第 Ⅲ 期火山岩類。 宮崎県 西臼杵郡 高千穂町 五カ所の南西 1700 m(崩野峠の南方 ; 三田井図幅地域)。 溶結組織を残した基地の中に斑状鉱物として石英(Q)の大晶がみとめられる。

Rhyolitic welded tuff of 3rd Stage(S3-dwt).
Q : quartz.

第 Ⅲ 図版 祖母山火山岩類と新第三紀酸性貫入岩
Sobo-san Volcanic Rocks and Neogene Acid Intrusive Rocks.

1. 普通輝石含有無斑晶質安山岩(68072814)
第 Ⅳ 期火山岩類の無斑晶質輝石安山岩溶岩。 緒方町 上畑, 標高 400 m。 ピロタキシティック組織を示す石基中に数少ない普通輝石(A)と斜長石の斑晶をみとめる。 開放ニコル。

Augite-bearing aphyric andesite (Saa).
A : augite
2. 祖母山火山岩類の第 Ⅲ 期火山岩類のデイサイト質溶結凝灰岩(上半部)と, その中に岩脈として貫入した新期酸性貫入岩類の珪長岩(下半部)との接触部(72050604)
竹田市 神原の上流の白水(第 34 図参照)。 開放ニコル。

Contact of dacitic welded tuff (S3-dwt ; upper half) and felsite dike (Yf ; lower half).
3. 黒雲母石英斑岩(KT72072714)
新期酸性貫入岩類。 緒方町 前障子岩の東方 350 m, 標高 1,350 m。 微文象組織~ミルメカイト組織をしばしば示す石基中に石英(Q), 正長石(O), 斜長石の大きな斑晶をみとめる。

Biotite quartz porphyry (Yp).
Q : quartz, O : orthoclase
4. 黒雲母花崗岩(M-66-401)
新期酸性貫入岩。 緒方町 上畑の南々西 1,000 m, 標高 390 m。 粗粒~中粒の花崗岩で, 石英(Q)は他形を示し, 正長石(O), 斜長石(P), 黒雲母(B)がみとめられる。 十字ニコル。

Biotite granite (Yg).
Q : quartz, O : orthoclase, P : plagioclase, B : biotite

第 Ⅳ 図版

1. Sketch
Pyroclastic flows in the Taketa city.
IM : Imaichi, 1 : Aso-1, 3 : Aso-3, 4 : Aso-4 Pyroclastic Flows.
1F : Aso-1 Pyroclastic Falls, 2T : Aso-2T scoria (Pyroclastic) Falls.
The 3 - 4 interface resembles the surface of Aso-3 in Fig. 55.
The slope of Aso-4 forms the valley wall of the Inaba River lying to the left.
1. 写真
竹田市街(竹田高校の旧グラウンド横)における阿蘇火砕流。 今市火砕流(IM)の侵食面の凹部に 降下軽石層(1F)を伴うレンズ状の Aso-1 溶結凝灰岩(1)があり, 側上方に尖減する。 上位へ Aso-2T 降下スコリア層(2T)と Aso-3(3)・Aso-4(4)火砕流とが重なる。 Aso-3 と Aso-4 との接触面は左方の画面外の稲葉川に向って傾き, 画面の上端では Aso-3 の節理に従って垂直である。 Aso-3 の 表面の地形は第 55 図と似ている。
2. Sketch
Profile of valley-filling Aso-4. The Monden River is to the left. The base of the Aso-3 is also dipping left-ward.
3A・3B・4A : pyroclastic flows of Aso-3A・Aso-3B・Aso-4A, respectively.
P・Q・R・S : pyroclastic falls between Aso-3 and Aso-4 (see Fig. 46).
3W : pumice fall of the Aso-3 cycle (see Fig. 46).
2. 写真
Aso-3 火砕流を覆う Aso-4 火砕流。
P・Q・R・S・3W : 降下火砕物,(第 46 図を見よ)。
3A・3B・4A : Aso-3・Aso-3B・Aso-4A 火砕流。
左方画面外に門田川。 Aso-4 の基底は以前の谷壁で Aso-3 の基底も同じ向きに傾く。 Aso-4 の柱状節理は基底面に垂直で上方へ鉛直に近づく。 Aso-3B 上部に横向きの柱状節理(第 54 図)。

第 Ⅴ 図版 Aso-4A 火砕流の溶結凝灰岩
Welded tuff of the Aso-4A Pyroclastic Flow

1. 紫蘇輝石流紋岩溶結凝灰岩(63TD165-2)
基底から 20 cm の弱溶結部。 竹田市 千引の小採石場。 空隙率は約 45 %。 ガラス質。

Hypersthene rhyolite welded tuff. Partially welded part at 20 cm above the basal contact. Porosity approximates to 45 %.
2. 上と同じ(63TD165-11)
同じ露頭の基底から 6.5 m の強溶結部。 ガラス質。 石質破片の傍の pressure shadow 以外では ガラス破片は密着して殆ど境界が見えなくなり, パーライトの割れ目がそれらを横断してのびている。

Same rock as above. Densely welded part at 6.5 m above the base. Glass shards are welded together and nearly homogenized except in pressure-shadows beside the lithic fragments.

第 Ⅵ 図版 Aso-4 火砕流の溶結凝灰岩
Welded tuff of the Aso-4 Pyroclastic Flow

1. 紫蘇輝石角閃石流紋岩溶結凝灰岩(63TD123)
強溶結部。 脱ガラス化。 竹田市 久保の南方。 レンズの状態は多様である(1・2 : 殆どガラス質, 3 : 微球顆状に脱ガラス化, 4 : 球形の気孔をもつ, 5 : 球形の気孔中に気相晶出の鱗珪石などがみえる)。 H : 角閃石

Hypersthene - hornblende rhyolite welded tuff of Aso-4A. Dense, devitrified. Note various lenses (1・2 : almost vitric, 3 : spherulitic, 4 : with spherical voids, 5 : spherical voids with tridymite, crystallized from vapor-phase).
2. 輝石角閃石流紋岩溶結凝灰岩(64TD252C1)
Aso-4B 火砕流の気相晶出帯。 萩町 桜町の南,の山崎川 車橋の下。 基質が濃色(細粒結晶化)の部分では扁平化したガラス破片の形がよく見えるが, 淡色(粗粒結晶化)の部分では原構造は消失している。 空隙(V)の多い部分には 気相晶出の鱗珪石(T)・アルカリ長石(F)・紫蘇輝石(O)。 L は石質破片。

Pyroxene - hornblende rhyolite welded tuff, Aso-4B, zone of vapor-phase crystallization. Note the disappearance of collapsed vitroclastic texture in the lighter-colored, coarsely devitrified portion. Vapor-phase minerals, inside the voids(V), are tridymite(T), alkali foldspar(F)and hypersthene (O). L is lithic fragment.

昭和 52 年 3 月 18 日 印刷
昭和 52 年 3 月 25 日 発行
著作権所有 工業技術院 地質調査所

(C) 1977,Geological Survey of Japan