14078_1972
地域地質研究報告
5万分の1図幅
福岡(14) 第 78 号
地質部 片田正人
地質部 長浜春夫
地質部 松井和典
地質部 服部仁
地質部 礒見博
昭和 47 年
地質調査所
目次 I. 概説 II. 先第三紀江ノ島層 III. 先第三紀花崗岩類 IV. 第三紀南瀬層 V. 第三紀菰崎層 VI. 第三紀大屋層 VII. 未区分第三系 VIII. 細粒閃緑岩および玢岩 IX. 地質構造 参考文献 巻末図版(PLATES) Abstract
地域地質研究報告
5万分の1図幅
(昭和 47 年稿)
福岡(14) 第 78 号
この図幅地域の地質調査は, 第三系地域を長浜が, 先第三系地域を片田・松井・服部・礒見がそれぞれ分担した。
また, 元 三菱鉱業株式会社 崎戸礦業所 技師の菰田正俊氏・ 元 平島中学校 教諭の阪口和則氏および 地質調査所 技官の一色直記氏からは, 野外調査に対する協力と, 貴重な助言・批判をいただいた。 平島郵便局長の山崎光二氏からは調査上の便宜をいただいた。 報告書を完成するにあたって, 以上の方々に厚く感謝の意を表する。
なおこの図幅内の江ノ島・黒鳥を含めた相ノ島帯の変成作用に関しては, 片田・他(1972)に詳しく記載してある。
この地質図幅地域は, 九州とその西域の五島列島のほぼ中間に位置し, 長崎県 西彼杵 郡 崎戸 町 江ノ島・ 平 島の東部と, いくつかの小島や岩礁群を含んでいる。 これらのうち, 中央の江ノ島, その西方の 黒 島と東方の 色瀬 ・ 大立 島・ 小立 島には先第三系が分布し, その他の島々には第三系が分布する。
先第三系は, 相ノ島 帯と呼ばれる地帯(礒見・他, 1971)の分布岩の一部であって(第 1 図), 熱変成作用をうけた火砕岩類を主とする江ノ島層(橘, 1961)と, 花崗岩類からなる。 相ノ島帯に属する堆積岩類は, この図幅を南西にはずれた相ノ島にも露出し, そこには, 熱変成岩類としては最も高変成度の岩石が見られる。 花崗岩類はこの地域から西杵彼半島の西岸にかけて露出が点在する。 そして両地域の中間地帯の海底にも, かなり広く分布するものと推定されている。
江ノ島層は, 橘(1961)の述べたように, 北九州・西中国に分布する白亜紀前期の関門層群に相当するものであろう。 また相ノ島における黒雲母ホルンフェルスの全岩の K-Ar 年代は 81 m.y. である(SHIBATA, 1968)。 江ノ島層に対する熱変成作用もおそらく同時期と推定される。 また西彼杵半島の北西端の, 高帆 山付近の花崗岩の黒雲母の K-Ar 年代は 88 m.y.である(河野・植田, 1966)。
第三系は, 江ノ島の南方に散在する 南瀬 などの諸岩礁に分布する堆積岩類 [ ← 南瀬層 ? ] と, 図幅西端の平島から江ノ島の北西方の諸岩礁にかけて分布する堆積岩類 [ ← 大屋層 ? ] に, 大きく2分類される。 前者はおそらく古第三系であり, 後者は新第三系である。 新第三系は, 本図幅の西方の五島列島の新第三系の東北東延長であり, 五島帯に属している(礒見・他, 1971)。 そして相ノ島帯と五島帯の間には, 相ノ島断層が東北東 - 西南西に走っているものと推定される。
| [ 岩脈 ] | P | 玢岩 | |
| D | 細粒閃緑岩 | ||
| 第三紀 | [ 未区分 ] | ht | 砂岩 |
| 大屋層 | ot | 泥岩・砂岩・凝灰岩・凝灰角礫岩および石炭 | |
| 菰崎層 | kt | 泥岩・砂岩・礫岩および凝灰角礫岩 | |
| 南瀬層 | mt | 砂岩・礫質砂岩および礫岩 | |
| 先第三紀 | 花崗岩類 | G2 | 黒雲母花崗岩 |
| G1 | 黒雲母角閃石花崗閃緑岩 | ||
| 江ノ島層 | e3 | 珪長質火砕岩類・礫岩およびシルト岩 | |
| e2 | 安山岩質火砕岩類 | ||
| e1 | 安山岩質火砕岩類・溶岩流および岩脈 |
江ノ島は, 熱変成作用を受けた火砕岩類・火山岩類と, それを貫ぬく少量の花崗岩類からなる。 前者は江ノ島層と呼ばれるもので(橘, 1961), 江ノ島の西方 3 km の黒島に分布する岩石も江ノ島層の一部と見なされる。
江ノ島の分布岩は, 一般に, 走向は N 20~40°E で西へ 20~50°傾斜している。 しかし南東海岸では地質構造は乱れ, 逆に傾斜した地層もみられる。 地層は岩相の差と上下関係によって, 3層(e1, e2, e3)に区別することが出来る。
下部層(e1) は島の南東部を占め, 熔岩流, 岩脈および火砕岩類( [ 巻末図版の ] PLATE I - 1)からなる。 熔岩流には, 斜長石斑晶のきわめて顕著なものと, 顕著でないものとが存在する。 岩脈としては幅数 10 cm ないし 3 m 程度の, 細粒質のものが数多く見られる(PLATE III - 1)。 熔岩流と岩脈は, いずれも主として安山岩質である。 また [ 江ノ島の南北中央・東端の ] アボ鼻の南方には細粒斑糲岩々脉がみられる。 火砕岩類の礫は最大径数 10 cm に達し, 円磨度・淘汰度はきわめて低い。 礫の大半は安山岩, 一部は珪長質火山岩である。 熔岩流とその直上位の凝灰岩との境界をみると, 凝灰岩は凹凸のある熔岩流の表面にアバットしているから, この地層は水中で堆積したものであろう。
[ 江ノ島の東西中央を南北に分布する ] 中部層(e2) は安山岩質ないし珪長質火山岩の火砕岩類が主体で, 岩脈と思われるものはみいだされず, 熔岩流らしい岩石は少量しか認められない。 そして, 上位にいくにしたがって, 比較的細粒で層理のよく発達した凝灰岩が多くなる。
上部層(e3) は島の北西部を占め, 最も細粒の地層である(PLATE I - 2)。 凝灰岩が多く, そのほかに礫岩や凝灰角礫岩から成っている。 凝灰岩には級化層理, 斜層理などが発達する(PLATE II - 1)。 礫岩の淘汰度と円磨度は比較的高く, 礫の大きさは径 10 cm 以下である。 礫のほとんどは, 珪長質火山岩である。 ここで珪長質火山岩といったのは, 肉眼的に乳白色まれに淡青緑色を呈する火山岩類で, 変成作用のため詳しい岩質は不明であるが, 下部層の熔岩流や岩脉に比較してより珪長質のものと推定される。 熔岩流や岩脈は認められない。 また少数例ではあるが, 炭質物や砕屑性の白雲母を含む暗灰色のシルト岩が凝灰岩と互層している。
江ノ島層は全体として水中の火山性堆積物であるが, 下部層から上部層へと, 次第にその性質を変えている。 初期(下部層)の時代には火山活動が盛んで, 安山岩質の熔岩流と岩脈とで特徴づけられ, そこが火山活動の中心地域であったことを示す。 中部層の時期には, この地域の火山活動はあまり盛んでなく, 上部層の時期にはこの傾向はさらに強くなる。 そして火山岩は岩質をかえて, 珪長質のものが多くなる。 上部層の砕屑性白雲母は火山岩以外の岩石からもたらされたものであろうし, 炭質物を含むシルト岩の存在は後背地における植生の存在を暗示する。 おそらく, この時期の堆積物は, 火山活動そのものによる堆積物よりも, 火山岩体が風化・削剥・運搬されて堆積したものが多くなったと考えられる。
黒島の分布岩は, 下位から, 泥質岩・凝灰岩・礫岩互層 -- 安山岩質凝灰角礫岩(PLATE III - 2)-- 凝灰岩類互層が みられる。 凝灰岩類は珪長質であり, 礫岩や泥質岩(シルト岩)を伴うから, 江ノ島最上部層(e3)と対比される。
以上の江ノ島層はすべて熱変成作用を受けている。 最も変成度の弱い地域は黒島および, 江ノ島の北西岸の上部層(e3)で, 最も高変成度の地域は [ 下部層(e1)が分布する ? ] その南東海岸である。
黒島では, 緑泥石・黒雲母・角閃石・緑れん石・曹長石質斜長石が生じている。 しかし再結晶鉱物は微細, かつ少量で, 原岩の構造はほとんどそのまま保たれている。 ただし有色鉱物は残っていない。
江ノ島の北西岸では, ほぼ上記と同様の変成度であるが, 南東へ行くにつれて, 再結晶の程度は次第に上り, 緑泥石の量を減じ, 中部層(e2)の中間あたりで単斜輝石が生ずる。 南東海岸では, 肉眼的には岩石本来の組織は保たれているが, 鏡下では比較的大型の斜長石結晶を除いて一般にはほぼ完全に再結晶している。
また低変成部では, ときに方解石・エピドートなどを主とする径数 10 cm に達する団魂が顕著に発達する。
花崗岩類は, 江ノ島の [ 南端部付近の ] 蛭子 島, および色瀬・大立島・小立島などに分布する。 岩質的にみると, 蛭子島のものは, 斜長石 > カリウム長石であって花崗閃緑岩(G1)である。 しかし他の岩質は, カリウム長石 > 斜長石の花崗岩(G2)であり, 一部にべグマタイト質ないしアプライト質の部分が発達する。
蛭子島の黒雲母角閃石花崗閃緑岩(G1)は比較的細粒で片理は発達せず, ときに最大径 1 m 以上の細粒 苦鉄質捕護岩が散在する。 鏡下で観察すると, 組織は全般的にやや半深成岩様で, 斑晶と石基の区別が若干認められる。 軽い変質作用をうけていて, 角閃石の緑泥石化作用や斜長石の絹雲母化作用などがみられる。 岩体の周辺部では, 壁岩中に電気石を含むアプライト脉が, 花崗岩体中には輝水鉛鉱を含む石英脉が発達する。
つぎに, 花崗岩(G2)から成る大立島・小立島・色瀬は, 江ノ島の東方で北西 - 南東にのびる線上に, ほぼ 2 km の間隔をおいて並んでいる。 中間の大立島がもっとも大きく, その長径は北西 - 南東方向に約 800 m, 幅は約 400 m である。 北西部には海抜約 80 m の小高い丘があり, 無人灯台が設置されている。 大立島全体に共通な節理系は, N 70°E, 45~80°S を示し, 北西端の海岸に面した絶壁には, その節理系に沿ってえぐられた海食洞が発達する。
小立島は直径約 150 m 以下の小島である。 南側斜面は, N 80°E, 60°S の節理系によって作られた絶壁となっている( [ 巻末図版の ] PLATE IV - 1)。 この節理系にほぼ直交し, 北へ傾斜する別の節理系が, 島の頂上(海抜約 53 m)から北方に向けて発達する斜面に一致している。 そしてこの2つの節理系によって, 小立島を北西方からみるとピラミッド型になっている。 北西の色瀬は, ほぼ東西に並んだ2つの主な瀬からなる。 全体の距離は 400 m くらいである。 東側の瀬は, 径 70 m で小立島を小さくしたようなピラミッド型をしており, 高さは 20 m 程度である(PLATE IV - 2)。 100 m くらい間隙をおいて, 西方の瀬がある。 東西方向に約 200 m に及ぶこの細長い瀬は, 低く平坦である。 西は N 20°W 方向の節理系に沿って切断されるが, 冠水域はさらに広がっており, 西端にもう1つのきわめて小さい瀬が頭を出している。
大立島は, 桃色を帯びた中粒黒雲母花崗岩からなり, 電気石を含む幅 30 cm 以上のアプライト脈が発達する。 島の中央部西側斜面の一部には, 細粒の暗灰色相がみられる。
小立島は, 中粒黒雲母花崗岩からなり, 不規則な形状を呈するペグマタイトが散在している。 このペグマタイトは脈状となることはまれで, むしろアメーバ状で, その内部には必らず小さな空洞があって自形の石英やカリウム長石などがみられる。
色瀬は, 海抜が低く, また平坦のため, たえず海水をかぶり, いちじるしく風化している。 桃色カリウム長石と黒雲母の斑晶状結晶が目立ち, 大立島・小立島に較べると, やや粗粒である。
江ノ島の北東海岸の岩脉は電気石を含む幅 3 m ほどのペグマタイトであり, 同質岩石の小岩脉(図示していない)が東岸のアボ鼻にも露出する。 また幅 1 m 弱のアプライト脉が, 南東岸に露出している。
本層(mt)は [ 江ノ島の南方の ] 船瀬 ・ 大亀瀬 ・ 小亀瀬 ・南瀬・ 三ツ瀬 ・ 一ツ瀬 ・ 横曽根 および江ノ島の西方の 三瀬 に露出している。 しかし分布地域の大部分は海域である( [ 巻末図版の ] PLATE V - 1・2, VI - 1・2, VII - 1)。
本層の下限および上限は海域のため不明である。 しかしこれらの岩礁に分布する本層全体の岩相および地質構造から推定すると, 東隣図幅内の崎戸 松島炭田に発達する 古第三紀の寺島層群に相当するものではないかと考えられる。 もしそうだとすると, これらの地層は, 江ノ島層および この地域から東方海底に広く分布するといわれる花崗岩類上に不整合に堆積したものらしい。 礫岩は花崗岩類の礫を多数含み, 砂岩は花崗岩類が崩壊した砕屑物そのままの組成で, 鉱物もほとんど磨耗していない。 そのために注意してみないと一見して花崗岩か砂岩か区別しにくいほどである。
船瀬および大亀瀬は面積 25 m2 以下の小島で凪ぎの干潮時以外は上陸できない。 これら2つの瀬は, 厚さ数 m の顕著な礫岩からなり, 風化すると紫赤色~赫色となり, 崎戸 松島炭田の寺島層群 赤崎層に特有の色調を示す。 礫は主として, 安山岩・花崗岩・黒色凝灰岩・黒色粘板岩・チャートなどの円~亜円礫からなり, 大きさは径数~30 cm におよぶ。 膠結物は同質の砂粒からなっている。 大亀瀬に分布する地層の走向は N 10°W で, 傾斜 10°W であるが, 船瀬では無層理である。
小亀瀬には厚さ約 13 m のアルコース質含礫粗粒砂岩が露出する(第 2 図)。 その下部は灰白色のアルコース質含礫粗粒砂岩~中粒砂岩である。 中部は珪化木を含むアルコース質灰白礫質粗粒砂岩~暗灰色細粒砂岩で, 砂岩層中には斜層理がみられる。 上部は主として灰白色含礫粗粒砂岩からなる。 含礫砂岩層中の礫の大きさは船瀬や大亀瀬のそれと較べて小さく, 径 2~5 cm 位のものが多い。 礫種は花崗岩を主とし, わずかに黒色珪岩・赤紅色チャート・硬質砂岩・変成凝灰岩などを伴う。 砂岩は一般に灰白色を呈し, 粗粒であるが, 細~中粒の部分を含み, 粒度は不均質で淘汰が悪く, 平面型の斜層理が発達する。
南瀬は海抜 18.6 m あって, この付近では最大の瀬である。 分布する地層の厚さは 30 余 m で, おもに, 砂質礫岩・砂岩・礫岩からなる(第 2 図)。 本層はアルコース砂岩を主体としている。 礫岩または礫質砂岩層中の礫としては, 主として花崗岩類の円~亜円礫(最大径 20 cm)が最も多く, まれに黒色変成安山岩や凝灰岩の小礫を含んでいる。 また, 珪化木の, 長さ 70 cm におよぶものを含んでいる。 砂岩層中には平面型斜層理が発達する。
地層の走向は N 20~30°W で, 傾斜は 10~15°W である。 三ツ瀬は南瀬の南方 1 km 余にある小さな瀬で, 灰白色のアルコース粗粒砂岩からなり花崗岩類の礫を含み, 斜層理の発達もみられる。 地層の走向は N 35°W で, 傾斜は 6°W である。
一ツ瀬および横曽根は三ツ瀬の南東 600 m 余にある瀬で, 3 月末の大潮以外には海上にはあらわれない。 横曽根は, 今回の調査中, 3 月末の大潮に際しても高波のため上陸することが出来なかった。
一ツ瀬は灰白色アルコース質含礫粗粒砂岩からなり, 主として花崗岩の礫を散点的に含有する無層理の地層である。 三瀬は江ノ島の西方約 1300 m にある瀬で, これも 3 月末の大潮時の凪ぎの日以外は上陸がむずかしい。 灰白色アルコース粗粒砂岩からなり, 花崗閃緑岩礫をわずかに含んでいる。 地層の走向は N 80°E で, 傾斜は 11°N である。
本層(kt)は南西から北東へ 名乗瀬 ・菰崎・小島(以上西隣図幅内)・ 元ノ瀬 を経て 先ノ瀬 に至る海岸地帯に分布している( [ 巻末図版の ] PLATE VII - 2, Ⅷ - 1・2, PLATE IX - 1)。
本層の下限は海域のため不明であるが, 上限は次項でのべる大屋層によって不整合に覆われているものと考えられる。 主として砂岩からなり, 薄い泥岩・礫岩・凝灰岩と炭層をわずかに挾んでいる(第 3・4 図)。
本層の最下部の約 40 m の砂岩中には二枚の凝灰角礫岩の薄層を挾み, 珪化木・貝化石を産出し, 斜層理や砂管も認められる。 この上に厚さ約 30 m の泥岩層が重なる。 この泥岩層の上部には貝化石や植物化石も産出する。 その下部は幅数 m の細粒閃緑岩および玢岩により貫かれ, 接触部は弱い変成作用を受けている。
本層中部の約 100 m は主として砂岩層からなる。 この砂岩層の下半部は灰白色の細~中粒砂岩層である。 上半部は斜層理の発達の多い砂岩層で, 3枚の薄い礫層・1枚の炭層・1枚の凝灰角礫岩を挾む。
最上部の約 25 m は砂質泥岩と斜層理の発達のいちじるしい中粒砂岩からなり, また, 矢坪でみられるように 漣痕 [ ripple mark ] も発達する。 下限は凝灰角礫岩層の下底で境とする。
なお本層から坂口和則(1961)は下記の化石を報告している。
その他 Ophiuroidea も産出する。
本層(ot)は平島に広く分布し, 火山砕屑物・砂岩・泥岩などの特徴ある互層である。 全体を通じて非常に凝灰質で, 火山砕屑物が優勢である(第 3 図)。 上位の地層との関係は見られないが, 下位の菰崎層を不整合に覆うと推定される [ 以下の [注] 参照 ] 。 本層中には Bellamya などの淡水棲貝化石を産出する。
本層の最下部の約 60 m は 主として凝灰角礫岩・凝灰岩・中粒砂岩・泥岩などの互層からなり, その上部に炭層 [ 以下の [注] 参照 ] があり, ほぼ中部に珪化木を産出する。
|
水分
(%) |
灰分
(%) |
揮発分
(%) |
固定炭素
(%) |
発熱量
(Cal.) |
全硫黄
(%) | 補正純炭に対する | 灰の色 | 粘結性 | |
| 固定炭素 | 発熱量 | ||||||||
| 2.60 | 23.88 | 29.08 | 44.44 | 5310 | 0.23 | 60.45 | 7420 | 鮮赤(褐) | 非粘結 |
本層中部の約 140 m は主として斜層理の発達した細~中粒砂岩で, わずかに礫岩・泥岩・炭層を挾む。
最上部層約 80 m は, 平島の西部~北部の海岸に分布するが, この図幅中には露出しない。 主として凝灰角礫岩・凝灰岩・砂岩・泥岩などの互層からなり, Bellamya などの淡水貝や淡水魚などの化石を産出することがいちじるしい特徴である。 砂岩は灰白色の細~中粒で斜層理の発達をみる。
また本層からは下記の淡水貝化石が産出する。
なお, 菰崎層・大屋層の分布する平島全体の化石産地などを第 5 図に示す。
江ノ島の北東約 13 km の海上に唯一つ点在する 帆上ノ瀬 には, 層準未詳の第三系(ht)がある( [ 巻末図版の ] PLATE IX - 2)。 これは厚さ 10 m の泥岩偽礫の多い灰白色中~粗粒砂岩層であり, この砂岩層は何枚かの岩脈により貫かれている。 地層の走向は N 55°E で, 傾斜は 10°NW である。
この層準未詳の第三系は岩相および推定される地質構造から察すると, 北西九州 佐世保層群中の 深月 層に相当するものではないかと考えられる。
なお岩脈には安山岩質のものと石英安山岩質のものがあり, 安山岩質のものは, 後述の平島に分布する玢岩に似ている。
なお図幅北東部の 伏瀬 は, 瀬の上に灯台が構築されている。 しかしその周辺の岩石は一年中ほとんど海上に露われることがない。 岩質は砂岩らしいが層準は不明である。
平島には, 第三系を貫ぬく2種類の岩脈が分布している。 とくにこの図幅を外れる平島の西部には, かなり大規模な岩脈が露出する。
岩脈は主として外観によって, 便宜的に, あまり斑状でない細粒閃緑岩(D)と, 斑状の玢岩(P)に2分した。
細粒閃緑岩は, 細粒・均質の岩体である。 鏡下で観察すると, 斜長石・単斜輝石・斜方輝石・鉄鉱・黒雲母・角閃石および 微文象組織を示す長石・石英から成る。 有色鉱物の一部は緑泥石化作用をうけている。
玢岩は斑状・細粒の岩石である。 斑晶は斜長石と, 変質して方解石および粘土鉱物化した不明鉱物から成る。 石基は, 斜長石・単斜輝石・石英および変質した不明鉱物からなっている。
本地域の大部分の地域は海域にあたるために, その構造の詳細を明らかにすることはできない。 しかし これを周辺地域の地質から大観すると, すでに述べたように, 江ノ島と平島との間の海底をほぼ NE - SW 方向に走ると推定される相ノ島断層によって, 南東の相ノ島帯と北西の五島帯に大別される(第 1 図)。
この断層より南東の相ノ島帯には先第三系および古第三系が分布し, 北西の五島帯には新第三紀の佐世保層群および野島層群相当層が分布する。
相ノ島帯の堆積岩類は, 一般に N 20~40°E の走向を示し, これはほぼ五島列島の配列方向と一致する。 傾斜は 30°以上の急傾斜が多い。
江ノ島の南方の南瀬および その付近に分布する古第三紀の堆積岩の走向は N 10~35°W, 傾斜はゆるく 10°W である。
平島に分布する新第三紀の地層の走向・傾斜は, 古第三紀の地層の走向がほぼ南北方向であるのに対して, ほぼ東西方向の走向を示している。 すなわち N 50~80°E で, 傾斜は 5~15°W である。
以上のように, 相ノ島断層の両域を比較すると, 分布岩や地質構造に大きな違いがあり, 断層の両側には著しい落差が推定される。 北西側の落下の顕著な断層が, 佐世保炭田 相ノ浦の西方で, 佐々川断層から分岐して南西方向に延びている。 相ノ島断層は, 上記の事実から推定した断層であったが, その後, 地質調査所の北西九州海域 音波探査結果(中條・他, 末公表)からも確認されている。
QUADRANGLE SERIES
SCALE 1 : 50,000
Fukuoka (14) No. 78
By Masato KATADA, Haruo NAGAHAMA, Kazunori MATSUI, Hitoshi HATTORI & Hiroshi ISOMI (Written in 1972)
The quadrangle area is situated between the Nishi-sonogi peninsula of north-west Kyushu and the Goto islands (Fig.1), and includes Eno-shima, the eastern part of Hira-shima and other many islets or reefs. Hira-shima belongs geologically to the Goto belt which is characterized by the Neogene sedimentary and volcanic rocks, while the other islands belong to the Aino-shima belt which is characterized by the pre-Tertiary pyroclastic or sedimentary rocks and granitic rocks. The pre-Tertiary rocks are unconformably covered by the Tertiary sedimentary rocks. An important fault, which is named Aino-shima fault, is presumed to exist between the Goto and the Aino-shima belt.
| [ Dykes ] | P | Porphyrite | |
| D | Fine-grained diorite | ||
| Tertiary | [ unclassified ] | ht | Sandstone |
| Ōya Formation | ot | Mudstone, sandstone, tuff, tuff breccia and coal | |
| Komo-saki Formation | kt | Mudstone, sandstone, conglomerate and tuff breccia | |
| Minami-se Formation | mt | Sandstone, conglomeratic sandstone and conglomerate | |
|
Pre-
Tertiary | Granitic rocks | G2 | Biotite granite |
| G1 | Biotite - hornblende granodiorite | ||
| Eno-shima Formation | e3 | Felsic pyroclastic rocks, conglomerate and siltstone | |
| e2 | Andesitic pyroclastic rocks | ||
| e1 | Andesitic pyroclastic rocks, lava flow and dyke |
The pre-Tertiary Eno-shima Formation crops out in Eno-shima and Kuro-shima, and is thermally metamorphosed by the plutonism of late Cretaceous. The formation is stratigraphically divided into three members. The lower member [ e1 ] is abundant in andesitic lava flows and dykes. The middle member [ e2 ] consists mainly of andesitic or more felsic pyroclastic rocks, and the upper member [ e3 ] , of felsic tuffs or clastic sediments. The geological age may be the early Cretaceous.
In Eno-shima the formation is intruded by biotite - hornblende granodiorite and minor pegmatite or aplite dykes. Biotite granite accompanied with aplite dyke and pegmatite pocket is exposed in Kodate-jima, Ōdate-jima and Iro-se, all to the east of Eno-shima.
The presumably Paleogene sediments, named Minami-se Formation, are exposed in many reefs to the south and west of Eno-shima, and consist mostly of arkose sandstone and conglomerate. The sandstone is strongly immature. The conglomerate includes the pebbles of granitic and volcanic rocks. The volcanic rocks of pebbles are identified with the rocks of the Enoshima Formation, and the granitic rocks with granites mentioned above.
The Neogene sediments in Hira-shima are divided into lower Komo-saki and upper Ōya Formations. They are probably in an unconformable relation. The Komo-saki Formation consists of alternation of mudstone and sandstone with subordinate conglomerate and pyroclastic rocks. The Ōya Formation consists of alternation of mudstone, sandstone and pyroclastic rocks. This formation is characterized by the predominance of tuffaceous sediments and rarely contains thin coal seam. It is also noticed that molluscan fossils of fresh-water environment, such as Bellamya, are yielded in this formation.
昭和 47 年 10 月 3 日 印刷 昭和 47 年 10 月 9 日 発行 著作権所有 工業技術院 地質調査所 (C) 1972,Geological Survey of Japan