11106_1979

地域地質研究報告
5万分の1図幅

京都(11) 第 106 号

江住 えすみ 地域の地質

新潟大学 理学部 立石雅昭
大阪府立 阪南高校 別所孝範
和歌山大学 教育学部 原田哲郎
京都大学 理学部 久富邦彦
地質調査所 海洋地質部 井内美郎
大阪府立 東住吉高校 石上知良
京都大学 理学部 公文富士夫
和歌山県立 大成高校 中屋志津男
大阪府立 山本高校 坂本隆彦
同志社大学 工学部 鈴木博之
京都大学 理学部 徳岡隆夫

昭和 54 年

地質調査所


目次

I.		地形
II.		地質概説
III.		牟婁層群
III.1		松根 - 平井断層以北の牟婁層群
III.1.1		安川累層
III.1.2		打越累層
III.1.3		合川累層
III.2		松根 - 平井断層以南の牟婁層群
III.2.1		和深累層
III.2.2		三尾川累層
III.2.3		下露累層
III.3		産出化石と地質時代
III.4		堆積構造と古流系
III.4.1		松根 - 平井断層以北の古流系
III.4.2		松根 - 平井断層以南の古流系
III.5		礫岩および砂岩
III.5.1		礫岩
III.5.2		砂岩
IV.		熊野層群および田辺層群
IV.1		熊野層群
IV.2		田辺層群
IV.3		熊野層群および田辺層群の砂岩
V.		岩脈
V.1		古座川弧状岩脈
V.2		火砕岩岩脈
V.3		石英斑岩岩脈
V.4		変質帯
VI.		第四系
VII.		地質構造
VII.1		牟婁層群の地質構造
VII.2		熊野層群および田辺層群の地質構造
VIII.		応用地質
VIII.1		鉱床
VIII.2		温泉
IX.		枯木灘海岸の地質
文献

Abstract

図版

[ 図の目次に関する注意書き ]
括弧 "()" で囲んだ説明は写真を示す。
第 40・41 図は 「VIII. 応用地質」の項のあと・「IX. 枯木灘海岸の地質」の項の直前に示した。
図の目次

第 1 図		紀伊半島の四万十累帯の構造区分
第 2 図		江住図幅およびその周辺地域の地質総括図
第 3 図		牟婁層群の柱状図の位置図
第 4 図		牟婁層群の柱状図
第 5 図		(打越累層)
第 6~10 図	(合川累層)
第 11 図	(和深累層)
第 12~14 図	(三尾川累層)
第 15~20 図	(下露累層)
第 21 図	(合川累層)
第 22 図	(三尾川累層)
第 23 図	(和深累層)
第 24 図	江住図幅および田並図幅地域の牟婁層群の古流系
第 25 図	牟婁層群の礫岩の礫種構成
第 26 図	牟婁層群の砂岩の鉱物組成
第 27 図	熊野層群および田辺層群の柱状図
第 28 図	(牟婁層群と熊野層群の不整合)
第 29・30 図	(古座川弧状岩脈)
第 31 図	戎島地質図
第 32 図	(酸性火砕岩岩脈)
第 33 図	(海岸段丘)
第 34 図	(海岸段丘礫層)
第 35 図	(河岸段丘と火山灰層) 
第 36 図	江住図幅および田並図幅地域の地質構造図および地質断面図
第 37 図	(合川累層の褶曲)
第 38 図	周参見背斜軸部の小褶曲
第 39 図	天鳥露頭地質図

第 40 図	那智勝浦図幅の西部地域の地質図
第 41 図	田並図幅地域の地質図

第 42 図	枯木灘海岸地質概念図および模式断面図
第 43 図	枯木灘海岸の地質凡例
第 44 図 A~J	枯木灘海岸の地質

図版の目次

第 Ⅰ 図版	牟婁層群の生痕化石
第 Ⅱ 図版	牟婁層群のフリッシュをなす砂岩泥岩互層
第 Ⅲ 図版	天鳥露頭のスランプ褶曲・砂岩岩脈および生痕化石
第 Ⅳ 図版	礫岩・厚層砂岩と堆積構造
第 Ⅴ 図版	牟婁層群・田辺層群の砂岩顕微鏡写真
第 Ⅵ 図版	火成岩類の顕微鏡写真

付図 江住図幅および田並図幅地域の観察地点図。
化石の産地, 古流向の測定地点, 礫種構成・砂岩組成の検討地点および写真撮影地点を示す。

[ 付図に関する注意書き ]
この図は地質図と同様な, 本研究報告書に添付された印刷物である。

本研究報告で図の中あるいは地名のあとにつけられた2文字の記号 "[A-H][Ⅰ-Ⅶ]" は, 以下のような付図の上の「グリッドの記号」の組合せによって 地質図の上の「位置」を示している。
西から東に付けられた東西方向の8コのグリッドの記号 A~H :
A~H で江住および田並図幅地域の東西方向の全体をカバーしている。
北から南に付けられた南北方向の7コのグリッドの記号 Ⅰ~Ⅶ :
Ⅰ~Ⅵ が江住図幅地域の, Ⅶ が田並図幅地域の南北の範囲を示している。

地域地質研究報告 (昭和 54 年稿)
5万分の1図幅

京都(11) 第 106 号

江住 えすみ 地域の地質


紀伊半島の四万十累層群に関する地質図幅調査ならびに地域地質研究報告としては, 古くは 鈴木達夫による 7.5 万分の1「田辺」および同「御坊」図幅がある。 その後, 5万分の1地質図幅「 動木 とどろき 」・「新宮」・「 阿田和 あたわ 」・「那智 [ ← 那智勝浦 ? ] 」・「 田並 たなみ 」が出されてきた。 著者らを含む「紀州四万十帯団体研究グループ」は 1960 年代から紀伊半島の四万十累層群の研究をおこなってきた。 本図幅地域に関連した研究については, 原田ほか(1963), HARATA(1964), 徳岡(1966), 紀州四万十帯団体研究グループ(1972・1973・1975・1979), 立石(1976)などで 各地の層序と構造が検討されてきた。 また, HARATA(1965), TOKUOKA(1967・1970), 紀州四万十帯団体研究グループ(1968・1972・1976・1979)や 立石(1977), TATEISHI(1978)では フリッシュや礫岩, 砂岩などの堆積学的および堆積岩石学的研究がおこなわれている。 さらに, 地質構造については 鈴木(1973・1975)によって報告されてきた。 また, 本図幅地域の北に隣接する「 栗栖川 くりすがわ 」図幅地域については すでに 鈴木ほか(1979)によって報告されている。

本報告は, 紀伊半島の四万十帯に関する図幅調査の一環として 昭和 52 年度に地質調査所から 原田と徳岡が委嘱をうけ, 上記の研究グループがこれまで得てきた資料をもとに, 若干の補足調査をおこなってまとめたものである。 東に隣接する那智勝浦(那智)図幅地域の西部, および南に隣接する田並図幅地域の牟婁層群についても 従来よりやや詳しい資料が得られたので, [ 後述する「VIII. 応用地質」の項のあと・「IX. 枯木灘海岸の地質」の項の直前に それらの2地域の ] 地質図(第 40・41 図)を示し, 本報告中で記載した。 また, 本図幅地域および [ 本図幅の ] 南の田並図幅地域の海岸沿いに分布する牟婁層群については, その層序と構造ならびに堆積学的・構造地質学的な検討が詳しくなされているので, 7,500 分の1の地質図(第 44 図 A~J )として示し, [ 後述する「IX. 枯木灘海岸の地質」の項で ] 簡単に記述した。

本報告に記述した化石の産地, 古流向の測定地点, 礫種構成と砂岩組成の検討地点および図や図版に関連した地点などは 巻末に [ 独立した印刷物の ] 付図として一括して示してある。

本報告をまとめるにあたり 「紀州四万十帯団体研究グループ」に参加された各位に厚く感謝の意を表します。 また, 砂岩の検鏡にあたっては 谷口純造 氏と米沢敏泰 氏の協力を得た。 生痕化石の写真については 吉松敏隆 氏に提供して頂いた。 地質調査所の水野篤行 課長には貝化石について御教示頂き, 同所の一色直記 技官には原稿についての御意見をいただいた。 また, 群馬大学の新井房夫 教授には火山灰の鑑定をして頂いた。 これらの方々に厚く御礼申し上げます。

I. 地形

本図幅地域には [ 図幅地域北東隅から西南西方 8 km 強の ] 大森山 おおもりやま (841 m)を最高峰とする山頂高度が 400~700 m の山なみがつらなり, その間を [ 図幅地域北西隅から東方へ 6 km の 合川 こうがわ 貯水池から南西方に流れる ] 日置 ひき 川とその支流の じょう 川, 宮城 みやしろ 川, 将軍 しょうぐん 川および 前の川 まえのかわ , ならびに [ 図幅地域北東隅から西方へ 2.5 km の 中番 なかばん 付近から南に流れる ] 古座 こざ 川とその支流の 三尾 みと 川, 佐本 さもと 川, 添野 そえの 川および平井川が流れている。 また, [ 本図幅地域の ] 西南部は海 [ = 太平洋 ] に臨んでいる。

主要な山地を連ねた稜線は 岩相分布や地質構造に規制されている。 大森山と [ その南西方 1.5 km の ] 将軍山 [ 748 m ] の稜線, および その西対岸 [ = 将軍山の西麓を南北に流れる将軍川の西対岸 ? ] の稜線, 将軍川の南に連なる尾根筋, [ 将軍山の西南西方 10 km 強の ] 善司ノ森山 ぜんじのもりやま [ 591 m ] から西へ [ 善司ノ森山の西南西方 3 km 強の ] 485 m の三角点を連ねる尾根筋は 牟婁 むろ 層群の 打越 うちこし 累層の厚い砂岩 [ U ] の分布に一致している。 また, [ 図幅地域中央付近の ] 西野川 [ 北北東方 2.5 km の位置にある 西野谷川 の ] 源流の 686 m の三角点を中心とする尾根筋から 西 [ ← 西南西 ] 法師峠 ほうしとうげ をへて 重善岳 じゅうぜんだけ [ 607 m ] , さらに [ その南方の ] 周参見 すさみ 川の北にのびる尾根筋, [ 西野川の南方 3 km の ] 洞山 ほらやま [ 515 m ] から東西にのびる稜線, [ 洞山の南東方と南方の各 3.5 km の ] 冷氷山 ひえごおりやま [ 408 m ] 大山 おおやま [ 544 m ] 周辺の尾根などには いずれも 牟婁層群 三尾川 みとがわ 累層の厚い砂岩 [ M3 ? ] が分布している。 [ 図幅地域の ] 東部の [ 図幅地域北東隅から南南西方 4.5 km の ] 笠置山 かさぎやま [ 638 m ] やその南の 549 m の三角点 [ 位置不明 ] には中新統の 熊野 くまの 層群 [ Ku1 ? ] が, また, [ 図幅地域の ] 西北部の 447 m の三角点 [ 位置不明 ] から 小舟峠 おふねとうげ [ ← 図幅地域北西隅から南東方 5 km ] 付近, および [ 図幅地域の ] 西北部の尾根には同じく中新統の 田辺 たなべ 層群 [ Tb1 ? ] が分布する。 [ そして, 図幅地域の ] 東南部 [ の古座川町 蔵土 くろず から 一雨 いちぶり の付近 ] に分布する弧状岩脈 [ Py と Gp ] は 突出した岩峰や尖頭状の地形をなしている。

河川の流路も岩相と地質構造に大きく規制されているが, 断層は地形的な特徴を残していない。 日置川とその支流の宮城川, 将軍川, 前の川は 一部流路を除いて ほぼ地層の一般走向に平行して流れている。 古座川の支流の三尾川や佐本川, および 周参見 すさみ 川とその支流, ならびに [ 周参見川の支流の ] 太間 たいま [ ← 図幅地域北西隅から南南東方 8 km 付近を南西に流れる ] も地層の一般走向と平行である。 古座川は 下流では弧状岩脈の分布およびそれに伴う断層に沿って [ 東方に ] 流れ, 中・上流は 牟婁層群の 下露 しもつゆ 累層の泥岩および泥質フリッシュ [ S5 ] の優勢な地域を [ 南方に ] 流下する。 これらに対して, 日置川の支流の城川, [ 古座川の支流の ] 三尾川と佐本川のいくつかの支流, および [ 古座川の支流の ] 添野川と平井川は 地層の一般的走向に直交して流下している。 弧状岩脈に伴う断層を除くと, 牟婁帯第1級の断層である 松根 まつね - 平井 ひらい 断層をはじめとするいくつかの逆断層などは, いずれも地形的にそのあとをとどめていない。

[ 図幅地域の ] 西南部の海岸線は 西北西 - 東南東に走るが, その方向は海岸近くの断層の方向と一致する。 また, この方向は酸性火砕岩岩脈 [ Py ] の「のび」の方向とも一致している。 海岸に沿っては 海食崖がよく発達するが, この海食崖は牟婁層群の三尾川累層の厚い砂岩 [ M1 or M3 ] からなっていて, 南紀 枯木灘 かれきなだ 海岸の荒々しい景観をつくっている。

本図幅地域は 紀伊山地の現在まで引続く隆起運動を反映して 河川の下刻作用がさかんで, 山なみは低いながらも急峻で V 字谷が各所にみられる。 大部分の地域は山地で占められ, わずかに日置川沿いと古座川沿い, ならびに一部の支流沿いに小規模な河岸段丘と沖積地がみられるのみである。 また, 海岸沿いには 狭い海岸段丘とわずかな沖積地が発達している。

II. 地質概説

本図幅地域は紀伊半島の南部に位置し, 西南日本外帯に帯状に分布する四万十累帯中のもっとも南部の地帯を占めている。 紀伊半島の四万十累帯は 御坊 ごぼう - はぎ 構造線と 本宮 ほんぐう 断層によって 北から 日高川 ひだかがわ 帯, 音無川 おとなしがわ 帯, 牟婁帯に分けられる(第 1 図)。 日高川帯には主として上部白亜系からなる日高川層群が, 音無川帯には始新統の音無川層群が分布する。 牟婁帯には漸新統ないし下部中新統の牟婁層群が分布する。 これらの地層群は 全体として 後期白亜紀から前期中新世まで西南日本外帯に発達していた四万十地向斜の堆積物であり, 一括して四万十累層群とよばれている。 日高川層群は泥質岩が優勢で, 緑色岩類や放散虫チャートを挟有する優地向斜 [ eugeosyncline(ユー地向斜); 深海で形成された地向斜 ] 性堆積相を示す。 音無川層群はフリッシュ型砂岩泥岩互層が優勢で, まれに薄い緑色岩類や緑色泥岩, および赤色泥岩を伴っている。 牟婁層群は主としてフリッシュ型砂岩泥岩互層からなり, 劣地向斜 [ miogeosyncline(ミオ地向斜); 大陸縁辺部で形成された地向斜 ] 性堆積相を示す。

第 1 図 紀伊半島の四万十累帯の構造区分。 本宮断層より南が牟婁帯で, 松根 - 平井断層によって2つに分けられる。 括弧 "()" で囲んだものは5万分の1図幅名。
Tectonic division of the Shimanto Belt in the Kii Peninsula (see Fig. 1 in English abstract).

牟婁帯は 本図幅地域の北部を東北東 - 西南西に走る松根 - 平井断層によって 北と南のブロックに分けられる。 どちらの牟婁層群も岩相から3つの累層に分けられ, これらはほぼ対応するが, 北と南のブロックでは岩相が幾分ちがうので それぞれ別個の累層名がつけられている。 松根 - 平井断層の北の牟婁層群は 下位から 安川 やすかわ 累層, 打越 うちこし 累層, 合川 こうがわ 累層に分けられる。 南の牟婁層群は 下位から 和深 わぶか 累層, 三尾川 みとがわ 累層, 下露 しもつゆ 累層にわけられる。 本図幅地域には安川累層の下部層を除く全層準が分布している。

[ 松根 - 平井断層の ] 北のブロックの牟婁層群の本図幅地域での積算層厚は 5,000~6,000 m である。 安川累層の上部層は 泥岩および泥質フリッシュ [ 以下の [注] 参照 ] , 打越累層は 厚層の砂岩と砂質フリッシュ, 合川累層は 泥岩, フリッシュ, 礫岩, 含礫泥岩および砂岩からなる。

[注]
牟婁層群の大部分は砂岩と泥岩の有律的互層からなっている。 これらの地層の多くは 以下のような特徴をもつ。
  1. 砂岩層は下位の泥岩層の上に明瞭な境をなして重なり, 上位の泥岩層には漸移的に移行し,
  2. 砂岩層には級化部, 平行葉理部, 斜交葉理部の規則的な発達がみられ、
  3. さらに, 流痕などの底痕がよく発達する。
このような特徴をもつ砂岩と泥岩の互層は その岩相名として 広く フリッシュ型砂岩泥岩互層 とよばれている。 本報告では この種の互層をフリッシュと略称し, 砂岩と上位の泥岩までを単層として扱う (たとえば「20~50 cm に成層する」, または「単層の厚さ 10~30 m」という場合には, この砂岩と泥岩を組合せた厚さをさす)。 これらのフリッシュで その単層において砂質部が 40~60 % を占めるものを「 等量フリッシュ(normal flysch) 」, 砂質部がこれより優勢なものを「 砂質フリッシュ(sandy flysch) 」, 劣勢なものを「 泥質フリッシュ(muddy flysch) 」とよぶことにする。

[ 松根 - 平井断層の ] 南のブロックの牟婁層群は 積算層厚が 5,500~8,500 m である。 和深累層は 泥岩と泥質フリッシュを主とし, 三尾川累層は 厚層の砂岩と砂質フリッシュが優勢で, その中部に泥岩と泥質フリッシュを伴う。 下露累層は 泥岩, フリッシュ, 砂岩, 礫岩, 含礫泥岩などからなっている。

構造的にみると, 松根 - 平井断層以北の牟婁層群は 牟婁帯の第1級の構造である合川複向斜の軸部と南翼を構成している。 松根 - 平井断層以南の牟婁層群は [ 図幅地域中央付近の ] 佐本断層や [ 図幅地域南東部・南端付近の ] 安指 あざし 断層, [ 佐本断層の東側でそれに直交する ] 七川 しちかわ 断層などによるブロック化が顕著であり, また, [ これらの断層の ] 間に [ 図幅地域南西部の ] 周参見背斜, [ 図幅地域南東部の安指断層の北西の ] 和深背斜などの褶曲構造がみられる。 古座川沿いの七川断層に沿っては 弧状岩脈が見られるが, この断層の内側(東側)のブロックは外側(西側)に対して落ちこんでいる。

図幅地域の東部には下部および中部中新統の熊野層群 [ Ku1, Ku2 ] が, 西北部には同じく田辺層群 [ Tb1, Tb2 ] が それぞれ牟婁層群を傾斜不整合でおおって分布している。 両層群とも 基底は砂岩 礫岩層にはじまり, 上位にシルト岩へと移化していき, 全層厚は 2,000 m から 3,000 m に達する。 [ ただし, ] 本図幅地域では 両層群とも 下部の約 300 m が見られるにすぎない。

花崗斑岩 [ Gp ] と流紋岩質凝灰岩 [ Py ] からなる弧状岩脈が [ 図幅地域南東隅から北~北東方 4~7 km の ] 古座川沿いに見られる。 また, [ 図幅地域南西部の ] 海岸に沿っては 流紋岩質の火砕岩岩脈 [ Py ] が牟婁層群を貫いて断続的にみられ, さらに, 図幅東部 [ ← 図幅地域の東端から 2 km 程度までの地域 ] には 南北性の石英斑岩岩脈 [ Qp ] が 牟婁層群および熊野層群の中に貫入している。 これらの酸性火成岩類の岩脈は [ 本図幅の北東隣の新宮図幅地域に分布する ] 熊野 くまの 酸性火成岩類の活動に関連して形成されたものと推定される。

第四系は 段丘堆積物と沖積層が海岸および河川沿いに小規模に発達している。 海岸段丘は 主として海抜 30~50 m の平坦面をなし, 厚さ 2~5 m 前後の砂礫を主とする堆積物からなる。 河岸段丘は 比高 10 m 前後と 20~40 m の2段の面が認められ, 厚さ 2~5 m の砂礫および泥からなっている。 沖積層は 厚さ 3~7 m で, 礫, 砂および泥からなっている。

本図幅地域を中心とした紀伊半島南部の層序と地史を第 2 図に概念的に示す。

第 2 図 江住図幅およびその周辺地域の地質総括図。
Summary of stratigraphy and geologic history of the quadrangle district and its environs (see Fig. 2 in English abstract).

[ 第 2 図に関する注意書き ]
この図に示した後期白亜紀(?)の日高川層群, 始新世(?)の音無川層群, および 牟婁層群の安川累層の下部層(Y1 層)は 本図幅地域内には露出しない。

[ 地質図の凡例 ]

第四紀 冲積層 a 礫・砂および泥
段丘堆積物 t 礫・砂および泥
第三紀 岩脈 Qp 石英斑岩
Gp 花崗斑岩
Py 酸性火砕岩
中期

前期
中新世
熊野 くまの 層群 Ku2 シルト岩
Ku1 砂岩および礫岩
田辺 たなべ 層群 Tb2 シルト岩
Tb1 砂岩および礫岩
前期
中新世

漸新世
四万十 しまんと
累層群
牟婁 むろ
層群
松根 まつね - 平井 ひらい 断層 以北
合川 こうがわ 累層 K5 泥岩優勢の砂岩泥岩互層(泥質フリッシュ)
K4 礫岩, 含礫泥岩, 砂岩および泥岩
K3 砂岩泥岩互層(フリッシュ)
K2 砂岩および礫岩
K1 泥岩(礫岩を挟む)
打越 うちこし 累層 U 砂岩および
砂岩優勢の砂岩泥岩互層(砂質フリッシュ)
cg 礫岩
ms 泥岩
安川 やすかわ 累層(上部層) Y2 泥岩および砂岩泥岩互層 (フリッシュ)
松根 まつね - 平井 ひらい 断層 以南
下露 しもつゆ 累層 S6 泥岩, 含礫泥岩および礫岩
S5 泥岩および
泥岩優勢の砂岩泥岩互層(泥質フリッシュ)
S4 礫岩, 含礫泥岩および泥岩
S3 泥岩優勢あるいは等量の砂岩泥岩互層
(泥質あるいは等量フリッシュ)
S2 砂岩, 砂岩優勢の砂泥互層(砂質フリッシュ)
および礫岩
S1 泥岩, 泥岩優勢の砂泥互層(泥質フリッシュ)
および含礫泥岩
三尾川 みとがわ 累層 上部層 M3 砂岩および
砂岩優勢の砂岩泥岩互層(砂質フリッシュ)
中部層 M2 砂岩泥岩互層(フリッシュ)および泥岩
下部層 M1 砂岩および
砂岩優勢の砂岩泥岩互層(砂質フリッシュ)
和深 わぶか 累層 上部層 W2 泥岩および
泥岩優勢の砂岩泥岩互層(泥質フリッシュ)
下部層 W1 砂岩泥岩互層(フリッシュ)および砂岩
含角礫泥岩

III. 牟婁 むろ 層群

本宮断層より南に分布する地層については, 鈴木達夫(1939)は 7.5 万分の1「御坊」図幅で牟婁統と呼び, 松下(1953)は牟婁層群とよんだ。 村山(1954)は新宮図幅で東牟婁層群, 水野(1957)は那智図幅で紀南層群と呼んだ。 原田ほか(1963), 水野・今井(1964)および HARATA(1964)では牟婁層群と呼ばれている。 その後, 紀州四万十帯団体研究グループ゚によって本地域の調査がすすめられてきた。 その間の経緯については 5万分の1図幅 栗栖川地域の地質研究報告(鈴木ほか, 1979)に示されている。 本報告では 中屋・紀州四万十帯団体研究グループ(1977)に従い, 松根 - 平井断層 以北の牟婁層群を 下位より 安川累層, 打越累層, 合川累層に3分し, 以南の牟婁層群を 下位より 和深累層, 三尾川累層, 下露累層に3分して層序を記載する。 牟婁層群の柱状図の作成地点および地質柱状図を第 3 図および第 4 図に示す。

第 3 図 牟婁層群の柱状図の位置図。
Locality map of columnar sections of the Muro Group.

[ 第 3 図に関する注意書き ]
太い点線は柱状図の作成ルートを示す。
丸で囲んだ番号 ①~㊷ は第 4 図の柱状図の番号である。
位置図に示されている地質層序の記号の意味は以下の通り。
W1・2 : 和深累層, M1~3 : 三尾川累層, S1~6 : 下露累層,
Y1・2 : 安川累層, U : 打越累層, K1~5 : 向川累層

第 4 図 牟婁層群の地質柱状図(柱状図の位置は第 3 図参照)。
Columnar sections of the Muro Group.

[ 第 4 図に関する注意書き ]
柱状図に示された層序の名前や地質の凡例に関する記載は省略する。
以下の丸で囲んだ番号 ➀~㊷ の合計 42 本の柱状図が示されている。
松根 - 平井断層 以北
➀ : 川原谷~市鹿野,
➁ : 滝谷, ➂ : 沼田谷, ➃ : 平尾谷, ➄ : 城~大附, ➅ : 槇尾谷,
➆ : 北谷, ➇ : 宮城川~中ノ郷谷, ➈ : 中ノ俣~大瀬, ➉ : 前ノ川,
⑪ : 円谷, ⑫ : 添野川~将軍川, ⑬ : 将軍川の源流, ⑭ : 平井川~玉ノ谷,
松根 - 平井断層 以南 かつ 佐本断層 以北
⑮ : 天鳥, ⑯ : 白鳥~西ノ浜, ⑰ : 曲利, ⑱ : 曲利の南方,
⑲ : 大附~出谷, ⑳ : 大附~重善嶽, ㉑ : 宮城川林道~西栗垣内, ㉒ : 中野川の上流,
㉓ : 添野川の上流, ㉔ : 谷川, ㉕ : 添野川, ㉖ : 親谷川 [ ← 大屋谷 ] ~惣谷,
㉗ : 平井, ㉘ : 平井の南方, ㉙ : [ 西川 ] 宮ノ平~平野,
佐本断層 以南
㉚ : 江住川, ㉛ : 下防己,
㉜ : 矢鱈坂~大山, ㉝ : 佐本, ㉞ : 黒川~洞山, ㉟ : 田鶴平~小節川, ㊱ : 福井谷,
㊲ : 田並川, ㊳ : 添ノ郷谷, ㊴ : 本谷, ㊵ : 有田川, ㊶ : 立向川, ㊷ : 美里谷

[ III.0 ] 那智図幅地域の西部および田並図幅地域の牟婁層群について

牟婁層群は 本図幅の東の那智図幅(水野, 1957)の西部地域および南の田並図幅(水野・今井, 1964)地域にも分布している。 今回の本図幅調査に際し, これらの地域の牟婁層群についても 従来よりやや詳しく調査・検討したので, これらの地域の地質図を 末尾 [ ← 後述する「VIII. 応用地質」の項のあと・「IX. 枯木灘海岸の地質」の項の直前 ] に第 40・41 図として示す。 なお, [ これらの地域の ] 地質の記載については 本図幅内の対応する各項目中にのべられている。

III.1 松根 - 平井断層 以北の牟婁層群

松根 - 平井断層の北側には 全層厚 5,000~6,000 m の牟婁層群が分布する。 岩相をもとに 下位より 安川累層, 打越累層, 合川累層の三つの累層に分けられる。 安川累層および打越累層の模式地は [ 本図幅の ][ 隣 ] の栗栖川図幅内であるが, 合川累層の模式地は本図幅内に設定される。 栗栖川図幅地域内では 安川累層は 塊状砂岩および泥岩からなる下部層(Y1 層)と 成層泥岩およびフリッシュからなる上部層(Y2 層)に分けられるが, 本図幅内では上部層(Y2 層)のみが分布する。 打越累層は 主として塊状砂岩と砂質フリッシュからなる一様な岩相 [ U ] である。 合川累層は泥岩, 砂岩, フリッシュ, 礫岩, 含礫泥岩, 砂岩などの多様な岩相からなり, K1 層から K5 層に細分される。

III.1.1 安川 やすかわ 累層(Y2)

安川累層の Y2 層は松根 - 平井断層に接して その北側に, 北東 - 南西ののびをもって細長く分布する。 [ 将軍山の南東麓~西麓の ] 添野川の源流から将軍川に至る林道沿いで良く観察される(第 4 図の ⑫)。 ここでは 主として 5~10 cm に成層したシルト質泥岩 あるいはレンズ化した砂岩を含む泥質フリッシュからなり, 5~30 cm に成層した等量ないし砂質フリッシュをしばしば伴う。 また, 下部に含礫泥岩を伴う。 この含礫泥岩からは 比較的保存のよい Portlandia watasei を数個体 産した。 本層は 下限を断層によって断たれるが, 層厚は 500 m 以上である。

[ 図幅地域北東部の ] 平井川(第 4 図の ⑭)および古座川沿いでは あまり露出がよくないが, 主として泥岩と泥質フリッシュからなる。 ときに細礫礫岩や砂質フリッシュを挟む。

III.1.2 打越 うちこし 累層(U [ 以下の [注] 参照 ]

[注]
地質図の凡例では 打越累層には 砂岩および砂質フリッシュの地層(U)だけではなく, 泥岩(ms)と礫岩(cg)の地層も含まれる。 ただし, 泥岩層は善司ノ森山の北方 1.5 km の 小附 こつき の南方に分布しているが, 礫岩層は見あたらない。

打越累層は [ 図幅地域北東部の ] 平井川の上流域から将軍川の流域と 宮城 みやしろ 川の流域をへて, [ 図幅地域南西部の ] 周参見川の支流の沼田谷に至る 東北東 - 西南西の「のび」をもった地域に分布する。 また, [ 図幅地域北西隅付近の ] 玉伝 たまで の北方にも合川複向斜の北翼をなして小面積を占めて露出する。 [ 打越累層は ] 安川累層(Y2)に整合に重なる。 東部の大森山周辺では 塊状砂岩と砂質フリッシュの卓越した一様な岩相 [ U ] からなり, 積算層厚は 2,300~2,500 m である。 西部 [ ← 図幅地域中央やや北西 ] 宮城谷 みやしろだに 以西でも 主として塊状砂岩と砂質フリッシュ [ U ] からなるが, その中部に比較的連続する泥岩層 [ ms ] を挟む。 西部での本累層の積算層厚は 1,300 m 以上である。 代表的な岩相を第 5 図に示す。

第 5 図 打越累層の厚層をなす塊状砂岩。 将軍川 [ 沿いの大瀬の南西方 1 km ] 土泥 どどろ 付近(CⅡ)。
Thick-bedded massive sandstone in the Uchikoshi Formation.

[ III.1.2.a ] 大森山 おおもりやま 周辺の打越累層(U)

[ ← 図幅地域東北部 ] の大師山から平井川の上流, 大森山, 将軍山をへて 将軍川の上流から中流にかけて分布する。 [ 大森山の南方の ] 添野川の源流から将軍川に至る林道沿い(第 4 図の ⑫)では % 峠 [ 名称および位置不明 ; 将軍山の南方 2 km の付近にある峠 ? ] を越えたところで, 安川累層(Y2)の泥岩層に整合に重なる 1~3 m に成層した細粒砂岩にはじまる。 将軍川向斜に至る下部は 主として 50~250 cm に成層した細粒~中粒の灰白色砂岩と, 10~50 cm に成層した砂質フリッシュからなる。 将軍川の中流域および前ノ川の南東には 本層の中・上部が分布する(第 4 図 の ⑪ と ⑬)。 ここでは層厚 2~5 m の塊状, ときに葉理構造のみられる 泥岩片の多い中粒~粗粒の灰白色砂岩が卓越する(第 5 図)。 この砂岩には まれに層厚 40~100 cm の細礫~中礫からなる複成礫岩がレンズ状にはさまれる。 また, 20~50 cm に成層した砂質フリッシュがしばしばはさまれ, [ 将軍山の西南西方 4 km の ] 栃尾付近の川沿いでは黒色, 堅硬の塊状泥岩 [ ms ] がみられる(第 4 図の ⑪)。 この泥岩層は西および東へ尖滅する。

[ 図幅北東部の大師山の西方 1.5 km の ] 平井川沿い(第 4 図の ⑭)でも 本層の下部と中部がみられる。 最下部は 10~20 cm に成層した砂質フリッシュと泥質フリッシュを主とし, 上位にいくにつれ 砂岩と等量ないし泥質フリッシュの互層, さらに 20~250 cm に成層し, 平行葉理の発達した細粒ないし中粒の砂岩が優勢になる。

将軍川 [ の上流 ] 沿いの 土泥 どどろ 付近, 将軍山の西の川 [ = 将軍川 ] 沿いの砂質フリッシュには フルートキャスト [ flute cast ] などの流痕が発達する。

当地域の打越累層は 積算層厚 2,300~2,500 m である。

[ III.1.2.b ] 宮城谷 みやしろだに 以西の打越累層(U)

[ 善司ノ森山の北東方 4 km の ] 宮城谷から西へ 槇尾 まきお 谷, 城川 じょうかわ 沿いをへて [ 善司ノ森山の西方 1 km の ] 平尾谷, [ 善司ノ森山の南西方 10 km 弱の図幅地域西端付近から北東方に延びる ] 沼田谷にかけて分布する。

城川沿いの 大附 おおつけ から 小附 こつけ の北にかけて 本層の岩相がよく観察される(第 4 図の ⑤)。 大附の近くで背斜をつくる堅硬な塊状泥岩 [ ms ? ] にはじまり, 下部は 主として 10~60 cm に成層した砂質フリッシュと, 50~250 cm に成層した塊状の細粒砂岩からなる。 この背斜軸 [ = 大附の南の背斜軸 ? ] の南には 10~20 cm に成層した等量フリッシュが挟在している。 小附周辺の中部には 厚さ 250~300 cmの泥岩層 [ ms ] が発達する。 この泥岩層は 灰緑色で, 不規則な形状で連続性の悪い葉理をもった 2~3 cm の泥岩と, 同じく 2~3 cm に成層した黒色泥岩とからな。 .灰緑色の泥岩の中には放散虫化石が含まれている。 小附の北方の上部は 50~250 cm に成層した細粒ないし中粒の砂岩, あるいは薄い泥岩を挟む砂質フリッシュからなる。 層厚は 1,300 m 以上である。

[ 城川の ] 東の槇尾谷(第 4 図の ⑥)では [ 打越累層の ] 中・上部がみられ, 主として砂質フリッシュと塊状砂岩からなる中部の泥岩層は 小附と同様の岩相で, 厚く発達する。 さらに 東の中ノ郷谷, 宮城谷(第 4 図の ⑧)でも中・上部が見られ, 主として 1~4 m の厚層, 塊状の灰白色砂岩と, 30~60 cm に成層した砂質フリッシュからなる。 上部の砂岩中には まれに細礫ないし中礫の礫岩を伴う。 小附から槇尾谷にみられる中部の泥岩層 [ ms ] は 中ノ郷谷および宮城谷の上流では 砂岩や砂質フリッシュを挟むようになり, また, その層厚を減ずる。 さらに宮城谷の源流では尖滅している。

城川より西では 砂質フリッシュと塊状砂岩を主とする。 中部の泥岩層 [ ms ] は 平尾谷(第 4 図の ④)では小附と同様の岩相を示す。 ここでは 150 m の層厚で, 西 [ ← 南西 ] の沼田谷(第 4 図の ③)では薄くなり, さらに西へは尖滅する。 [ 図幅地域西端付近から北東方に延びる ] 沼田谷では全体にフリッシュが多くみられる。

宮城谷の本累層の上部の厚層砂岩および砂質フリッシュには, フルートキャストやグルーブキャスト [ groove cast ] などの流痕がよく発達している。

III.1.3 合川 こうがわ 累層(K1~5)

合川累層は [ 図幅地域北西部の ] 前ノ川流域から 市鹿野 いちかの および [ 図幅地域北西隅から南方 3 km 弱の合口( 宇津木 うつぎ )で日置川に合流する ] 城川 じょうがわ の下流域にかけて分布し, 合川複向斜の軸部をなしている。 下位の打越累層とは整合である。 前ノ川流域および 大瀬から市鹿野へ至る林道でよい露出が見られ, ここを模式地とする。 合川累層は岩相によって K1~5 層に区分される。 K1 層は泥岩からなり, K2 層は砂質フリッシュと塊状砂岩を主とし 礫岩を伴う。 K3 層はフリッシュと成層泥岩からなり, K4 層は礫岩, 泥岩, 含礫泥岩および砂岩を主とする。 K5 層では泥質フリッシュと成層泥岩が優勢である。 本累層の上限は不明であるが, 全層厚は 2,500 m 以上である。 代表的な岩相を第 6~10 図に示す。

第 6 図 合川累層の K1 層の塊状泥岩。 [ 図幅地域北端・東西中央やや西の ] はら の道路沿い(DI)。
Massive mudstone in the Kōgawa Formation (K1)

第 7 図 合川累層の K2 層の礫岩がつくる崖。 [ 図幅地域北西隅から東南東方 7.5 km の ] 北谷 きただに の南の宮城川沿い(CⅡ)。
Thick-bedded conglomerate of the Kōgawa Formation (K2).

第 8 図 合川累層の K3 層の泥質フリッシュ。 [ 将軍山の西北西方 4 km の ] 九川 くがわ の西の道路沿い(CI)。
Muddy flysch in the Kōgawa Formation (K3)

第 9 図 合川累層の K4 層の礫岩。 [ 将軍山の西方 5 km の ] 大瀬 おおせ の北方の道路沿い(CI)。
Conglomerate in the Kōgawa Formation (K4).

第 10 図 合川累層の K5 層の砂岩泥岩互層。 泥質部には薄い砂岩層を挟む。 市鹿野から大瀬への道路沿い(BⅠ)。
A view of rhythmic alternations of sandy flysch and muddy flysch in the Kōgawa Formation (K5).

K1 層 : [ 将軍山の北西方 3 km の ] 前ノ川流域の はら 付近, [ 将軍山の西南西方 5 km 強の ] 将軍川の 竹垣内 たけがいと から [ その南西方 2 km 弱の ] 宮城谷 みやしろだに 城川 じょうがわ 流域をへて 太間川 たいまがわ に至る [ 北東 - 南西に延びた ] 地域 および 市鹿野の北方に分布する。 原の周辺では黒色塊状泥岩(第 6 図)であるが, 竹垣内から西方では 上部に成層泥岩と単層の厚さ 5~10 cm の泥質フリッシュを伴う。 城川流域では珪化作用をうけて硬化している。 市鹿野の北方では 塊状の黒色泥岩を主とするが, 下部に成層泥岩や泥質フリッシュおよび砂質フリッシュを薄く挟んでいる(第 4 図の ①)。 層厚は 原と城川で 250 m, 太間川で 100 m, 市鹿野の北方では厚くなり, 500 m である。

K2 層 : K1 層の西側に K1 層とほぼ同じ地域に分布する。 原では単層の厚さ 30~100 cm の砂質フリッシュと塊状中粒砂岩を主とし, 下部に中礫~大礫の円礫からなる厚さ 40 m の礫岩層が挟在している(第 4 図の ⑩)。 [ 将軍山の西南西方 7 km の ] 北谷 きただに の南の宮城谷林道沿いでは この礫岩層が 320 m の厚さに発達し, 礫径も大きくなり, 巨礫を含む(第 7 図)。 この礫岩層は西に急激に厚さを減じる。 [ 図幅地域北西隅から南東方 8 km の ] 槇尾谷 まきおだに では 塊状砂岩中の3層準に中礫~大礫を主とする厚さ 10~20 m の礫岩層が挟まれる。 さらに 西の城川以西では 礫岩層は消滅し, K2 層は主として中粒塊状砂岩と単層の厚さ 20~100 cm の砂質フリッシュから構成され, まれに等量フリッシュを含むようになる。 市鹿野の北の K2 層は, 塊状粗粒砂岩と中礫~大礫からなる厚さ 40 m の礫岩とからなる(第 4 図の ①)。 ここでも礫岩層は西方へ薄くなる。 本層の厚さは 前ノ川から城川にかけての地域で約 400 m, 太間川で 300 m, 市鹿野の北方で 200 m である。

K3 層 : [ 将軍山の西北西方 4 km の ] 前ノ川流域の 九川 くがわ から [ 将軍山の西方 5 km の ] 将軍川の 大瀬 おおせ にかけての地域, [ 善司ノ森山 ぜんじのもりやま の北西方 3 km の ] 城川の 矢野口 やのくち 付近から [ その南西方 3 km 弱の ] 太間川にかけての地域 および 市鹿野付近に分布する。 九川では 単層の厚さ 20~60 cm の砂質フリッシュ および 単層の厚さ 15~30 cm の等量フリッシュが優勢で, 泥質フリッシュおよび成層泥岩を伴い, まれに礫岩, 含礫泥岩および砂岩が挟まれる(第 8 図 および 第 4 図の ⑩)。 槇尾谷から矢野口にかけての地域では 泥質フリッシュと成層泥岩がやや優勢である。 太間川では 下部は砂質フリッシュが優勢であり, 上位にゆくにつれて次第に泥質フリッシュおよび成層泥岩が優勢となる(第 4 図の ② と ④)。 市鹿野付近では 主として泥質フリッシュと成層泥岩からなり, 等量フリッシュや砂質フリッシュを伴う。 九川および北谷の本層の泥岩中からは二枚貝化石が発見される。 本層には各種の底痕がよく見られる。 K3 層の厚さは 前ノ川で約 800 m, 大間川で約 900 m である。

K4 層 : [ 合川貯水池の東南東方 1 km の ] 前ノ川の 小硲 こだに 周辺, [ その南南東方 2 km の ] 大瀬の北方, 合川貯水池周辺および [ 善司ノ森山の北西方 3.5 km の ] 城川沿いの じょう 周辺に分布する。 模式地の大瀬の北方では 礫岩を主とし, 泥岩, 含礫泥岩, 塊状砂岩および砂質フリッシュを伴う(第 4 図の ⑨)。 礫岩は中礫ないし大礫の円礫からなる厚さ数 m ないし 10 m の複成礫岩で, しばしば含礫泥岩を伴う(第 9 図)。 小硲および合川貯水池では 礫岩, 塊状砂岩および砂質フリッシュからなる。 城周辺では まれに成層する塊状で中粒ないし細粒の砂岩が優勢で, 砂質フリッシュを伴い, 礫岩はみられない(第 4 図の ⑤)。 ここでは 砂岩は変質作用を受けて白色化している。 大瀬の北方の含礫泥岩からは二枚貝化石を産出する。 本層の厚さは 大瀬で約 500 m, 城で 230 m である。

K5 層 : 合川貯水池から市鹿野をへて 城川沿いの小川 [ ← 図幅地域北西隅から南方 3 km 強 ] にかけての広い地域に分布し, 合川複向斜の軸部をなしている。 大瀬から市鹿野に至る林道沿いを模式地とする。 ここでは 単層の厚さ 10~30 cm の泥質フリッシュと成層泥岩とが非常に優勢で, まれに等量フリッシュや砂質フリッシュを挟む。 一部に 砂質フリッシュと泥質フリッシュが数 m 単位で互層する岩相がみられる(第 10 図)。 城川沿いの小川付近の本層も 泥質フリッシュと成層泥岩が優勢で, まれに等量フリッシュ, 砂質フリッシュおよび砂岩を挟んでいる。 [ 合川貯水池の南方 2 km の ] 北谷峠付近の泥岩からは二枚貝化石を産する。 本層の上限は不明であるが, [ 合川貯水池の南南東方 3 km の ] 北谷の奥での本層の厚さは 500 m 以上に達する。

III.2 松根 - 平井断層 以南の牟婁層群

松根 - 平井断層以南の牟婁層群は 佐本 さもと 断層, 安指 あざし 断層, 七川 しちかわ 断層などの断層によってブロック化されたいくつかの地域にわかれて分布している。 本地域の牟婁層群は, 岩相からみて, 下位より 和深累層, 三尾川累層, 下露累層に分けられる。 すでにのべたように, 松根 - 平井断層以北の それぞれ対応する累層とは 岩相を幾分異にする。 和深累層は 主として泥岩および泥質フリッシュからなり, 下部層(W1)と上部層(W2)に分けられる。 三尾川累層は 厚層砂岩と砂質フリッシュを主とし, 泥岩および泥質フリッシュを挟有する。 岩相から 下部層(M1), 中部層(M2), 上部層(M3)に3分される。 下露累層は泥岩, 砂岩, 各種フリッシュ, 礫岩および含礫泥岩などの多様な岩相からなり, S1 層からの S6 層までに細分される。 松根 - 平井断層以南の牟婁層群の全層厚は 5,500~8,500 m である。

III.2.1 和深 わぶか 累層(W1・2)

本図幅地域南部の 見老津 みろず から [ その東方 6 km 強の ] 和深, さらに和深から [ その北北東方 5 km 強の ] 三尾川 みとがわ 流域にかけて分布し, 和深背斜の両翼をなしている。 和深背斜の南翼は安指断層によって断たれている。 また, 古座川沿いの弧状岩脈の北のブロックにも分布する。 見老津から [ その東方 4 km の ] 里野 さとの 間の海岸沿いにも 断層によってくり返し, 小面積をしめて分布する。 本累層の下限は 背斜をなすため明らかでない。 全層厚は 1,100~1,300 m 以上である。 [ 和深累層は ] フリッシュ層および厚層砂岩からなる下部層(W1)と 泥岩および泥質フリッシュからなる上部層(W2)とに分けられる。 W1 層は本図幅地域内ではわずかしか分布しない。 本層の模式地は 田並図幅内の 西地 にしぢ [ 以下の [注] 参照 ] 付近から [ 和深から北に延びる ] 県道 和深 - 三尾川線沿いとする。 代表的な岩相を [ 巻末の ] 第 Ⅱ 図版の 1・2 と第 11 図に示す。

[注]
本図幅地域内と南隣の田並図幅地域内のそれぞれに地名「西地」がある。
和深 西地(本図幅地域内):
本図幅地域内の「和深」の国鉄 和深駅の北西方 500 m 弱の位置の地名
田並 西地(本図幅の南隣の田並図幅地域内):
本図幅地域南東隅から西方 2.5 km の 田子田 たごた の南方 2.5 km 弱にある
田並図幅地域内の「田並」の国鉄 田並駅の北西方 500 m 強の位置の地名
[ 後に示す ] 第 41 図(田並図幅地域の地質図)によると 田並 西地には和深累層は分布していないので, ここに記されている「和深累層の模式地の西地」は本図幅地域内の和深 西地だと思われる。

第 11 図 和深累層の W2 層の成層した泥岩層。 和深の北方の 矢鱈坂 やたらざか (FⅥ)。
Bedded mudstone in the Wabuka Formation (W2).

[ III.2.1.a ] 和深背斜付近の和深累層(W1・2)

[ 国鉄 江住駅の西南西方 1 km 弱に河口がある ] 江須之川 えすのかわ [ 江住駅の東側に河口がある ] 江住川から [ その東方 5 km の和深に河口がある ] 和深川 [ 以下の [注] 参照 ] , さらに [ 和深の北北東方 5 km 強の ] 三尾川の流域にかけて分布し 和深背斜をなすが, その南翼は安指断層によって断たれているために分布がせまい。 下部層 [ W1 ] は 本地域 [ の和深の付近 ] にのみ みられるが, わずかに分布するにすぎない。

[注]
本図幅地域内には 以下の位置を太平洋への河口とする2本の「和深川」がある。
すさみ町の和深川 : 図幅地域南西隅から北東方 3.5 km の すさみ町 口和深 くちわぶか に河口がある。
串本町の和深川 : 国鉄 江住駅の東隣の和深駅がある 串本町 和深に河口がある。
地質図によると すさみ町の和深川流域には和深累層の分布はなく, また, 和深背斜の軸は串本町 和深を通っているので, ここに記されている「和深川」は串本町 和深に河口がある方だと思われる。

下部層(W1 層): 和深背斜の軸部を形成する。 [ 本図幅の ] 南の田並図幅内の 西地 [ ← 本図幅地域南端の国鉄 和深駅の北西方 ] 周辺では 厚さ 10~50 cm に成層した砂質フリッシュや 5~20 cm に成層した等量フリッシュ, および 80~300 cm の細粒~中粒砂岩が発達し, ときに薄い細礫礫岩を挟む。 上部では 厚さ 10~50 cm の砂質フリッシュを主とし, 厚層砂岩や泥岩を挟む。 本図幅地域では [ 和深の北東方 1 km の ] 小河口 おごくち で 厚さ 2 m に成層し, 細粒砂岩を挟むフリッシュがみられる。 フリッシュは 厚さ 10~20 cm の砂質フリッシュや 5~15 cm の泥質フリッシュからなる。 W1 層の層厚は [ 本図幅の南隣の ] 田並図幅地域では 230 m 以上であるが, 本図幅地域では上部の約 160 m のみがみられる。

田並図幅内の [ ← 本図幅地域南端の国鉄 和深駅の北西方の ] 西地周辺のフリッシュには フルートキャスト [ flute cast ] やグルーブキャスト [ groove cast ] などの流痕や漣痕, および生痕がよく発達している。

上部層(W2 層): 模式ルートの和深 - 三尾川線沿い(第 4 図の ㉜)では, 主として 5~10 cm に成層した黒色泥岩(第 11 図)と 5~15 cm に成層した泥質フリッシュからなる。 泥質岩の卓越する本層の中・上部には 礫岩と含礫泥岩, 1~2 m に成層した細粒砂岩および砂質フリッシュが挟在している。 礫岩層は 1~3 m の厚さで, 中礫からなる複成礫岩である。 この礫岩層は東側の [ 三尾川 ] 下地 しもじ [ ← 和深の北東方 6 km ] から 里川 さとがわ [ ← 和深の北方 3 km ] をへて [ 南西側の ] 宇の平見 うのひらみ [ ← 和深の西方 3 km ; 里野の南方 500 m ] まで途切れながらも連続して追跡される。 里野以西では 泥質フリッシュを主とし, 塊状砂岩や砂質フリッシュ, まれに礫岩を挟む。 県道 和深 - 三尾川線から里川の集落へ至る支道沿いには大型の荷重痕がみられ, 「 乳岩 ちちいわ 」とよばれている( [ 後述する「III.4 堆積構造と古流系」の項で示す ] 第 23 図 [ を参照のこと ] )。 W2 層の厚さは約 900~1,100 m である。

[ W2 層の分布域の南西部の ] 見老津と里野の間の海岸沿いに 断層でくり返し分布する和深累層は 黒色塊状の泥岩, あるいは成層した泥岩および泥質フリッシュであり, W2 層と考えられる。 見老津港の南に分布する本層からは 二枚貝化石を比較的多く産する。

[ III.2.1.b ] 古座川ブロックの和深累層(W2)

[ 図幅地域南東隅の北~北西方 7 km の位置にある古座川の北東側(= 古座川ブロック ?)には ] 和深累層の上部層(W2)のみが露出する。 蔵土 くろず から 洞尾 うつお をへて 立合川 たちあいがわ 流域に分布する。 立合川沿い(第 4 図の ㊶)で その岩相がもっともよく観察される。 ここでは 主として 5~20 cm に成層した暗灰色泥岩, もしくは 薄い灰白色の細粒砂岩ないしシルト岩を伴った泥質ないし等量フリッシュからなる。 しばしば細粒ないし中粒の塊状砂岩や砂質フリッシュ, まれに厚さ 2~4 m の中礫礫岩および含礫泥岩を挟む。 蔵土の周辺でも 7~35 cm に成層した泥質ないし等量フリッシュがよく観察される。 下限を断層 [ = 安指 あざし 断層 ? ] で断たれているが, 本層の層厚は 850 m 以上である。

III.2.2 三尾川 みとがわ 累層(M1~3)

三尾川累層には厚く成層した砂岩, あるいは塊状の砂岩と砂質フリッシュが厚く発達する。 三尾川の支流の 小節川 こぶしがわ [ ← 洞山 ほらやま の東南東方 3.5 km ] 比曽原川 ひそはらがわ [ ← 洞山の南南東方 2.5 km ] の流域, 大鎌 おおかま [ ← 洞山の南南西方 3 km 弱 ] から 上防己 かみつづら [ ← 洞山の南西方 4 km ] にかけての地域, [ 洞山の東方 6 km の ] 久留美谷 くるみだに から [ その南東方 4 km 弱の ] 立合川 たちあいがわ にかけての 古座川ブロック [ = 古座川の東側のブロック ][ 洞山の北東方 6 km の ] 添野川 そえのがわ 流域, [ 洞山の北方 2 km 弱を西から東に流れる ] 佐本川 さもとがわ の支流の 栗垣内川 くりがいとがわ [ ← 洞山の北西方 3.5 km ][ 洞山の北方 3 km の ] 西野川 [ の北北西方 2.5 km を南流する西野谷川 ] の流域, [ 洞山の西南西方 6 km 以上の ] 周参見川流域, さらに, すさみ町の 里野 さとの から 口和深 くちわぶか までの海岸沿いに広く分布する。 また, 図幅東北部の親谷川 [ 以下の [注] 参照 ] にも小規模に分布する。 和深累層の上に整合に重なり, 岩相から 下部層(M1), 中部層(M2), 上部層(M3)に分けられる。 下部層(M1)および上部層(M3)は 主として厚層砂岩と砂質フリッシュからなる。 中部層(M2)はフリッシュと泥岩からなる。 全層厚は 2,000~2,700 m である。 本累層の模式地を三尾川の支流の小節川と比曽原川沿いとする。 代表的な岩相を第 12~14 図に示す。

[注]
以下の理由により 「図幅東北部の親谷川」は「図幅地域北東隅付近の大屋谷」の誤りである。
国土地理院の地図では「親谷川」ではなく「大屋谷」になっている。
古座川町 松根の古座川との合流地点で大屋谷に掛かっている橋の名前が「親谷橋」である。

第 12 図 三尾川累層の M2 層の泥質フリッシュ。 大鎌の道路沿い(EⅤ)。
Muddy flysch in the Mitogawa Formation (M2).

第 13 図 三尾川累層の M3 層の砂質フリッシュ。 [ 洞山の東北東方 4 km の ] 福井谷の佐本川沿い(FⅣ)。
Sandy flysch in the Mitogawa Formation (M3).

第 14 図 三尾川累層の M3 層の中の礫岩。 口和深の西の海岸(AⅤ)。
Stratified conglomerate intercalated in the Mitogawa Formation (M3).

[ III.2.2.a ] 三尾川流域の三尾川累層(M1~3)

三尾川の支流の小節川と比曽原川から西へ 江住川 [ ← 図幅地域南端付近の江住に河口がある ] および 小河内川 おかうちがわ [ ← 洞山の西方 4.5 km の 小河内 おかうち から南流する ; 以下の [注] 参照 ] にかけて, さらに東方の福井谷 [ ← 洞山の東北東方 4 km ] の周辺に分布する。 [ 下部層の ] M1 層 は比曽原川沿い, [ 中部層の ] M2 層は 滝又谷 たきまただに [ ← 洞山の南東方 2 km の滝又の付近 ; 南流して比曽原川に合流する ][ 上部層の ] M3 層は福井谷でもっともよく観察される。 本地域での層厚は約 2,000 m である。

[注]
地質図の上には 小河内 こごうち と記されているが, これは 小河内 おかうち の誤りである。 小河内川についても同様。

下部層(M1 層): 比曽原 [ ← 大洞山の南東方 8 km ] から大鎌にかけてよく観察される(第 4 図の ㉞ )。 下部および中部は 1~4 m に成層した中粒~粗粒の砂岩層からなり, ときに砂質フリッシュや泥岩を挟む。 中部には 5~10 m, ときにはそれ以上の厚さに発達する中礫礫岩を少なくとも3層準に挟む。 上部は 10~50 cm に成層した砂質フリッシュが優勢で, 10~30 cm の等量フリッシュおよび 5~15 cm の泥質フリッシュを伴う。 中部と上部のフリッシュには フルートキャストやグルーブキャストなどの流痕がよく発達する。 大鎌の東では Paleodictyon [ = ハチの巣状の模様の生痕化石 ] が観察される。 比曽原川沿いでの本層の厚さは約 1,100 m である。

東の小節川沿い(第 4 図の ㉟)では 砂岩および砂質フリッシュからなる。 西の里川 [ ← 洞山の南南東方 5 km 弱 ] ~大山ルート(第 4 図の ㉜)では 和深累層 [ W2 ] の上に整合に重なるのが観察される。 ここでは M1 層の下部のみが分布し, 砂岩および砂質フリッシュが優勢である。

江住川沿い(第 4 図の ㉚)でも本層はよく観察される。 下部・中部は 1~3 m に成層した細粒~中粒の塊状砂岩からなり, 中部には 2 m 前後の中礫礫岩を挟む。 上部は 10~50 cm に成層した砂質フリッシュからなる。 さらに, 西の 針箱 はりばこ 峠から 香の塔 こうのとう 峠では 塊状砂岩と砂質フリッシュを主とし, 礫岩, 含礫泥岩, 泥岩を挟む。

中部層(M2 層): 比曽原川の支流および滝又谷から 洞山 ほらやま へ至るルート(第 4 図の ㉞)でよく観察される。 下部・中部は 主として 5~25 cm に成層した泥質ないし等量フリッシュからなり, 成層泥岩を伴う(第 12 図)。 上部は堅硬な塊状黒色泥岩を主とし, 中粒の塊状砂岩をまれにはさむ。 ここでの層厚は 1,300 m である。 東の小節川沿い(第 4 図の ㉟)では層厚を減じ, 700 m となる。 ここでは 下部は泥質ないし等量フリッシュを主とし, 砂質フリッシュをはさむ。 上部は塊状, ときに成層する黒色泥岩からなる。

M2 層は西の大鎌からコカシ峠にかけても広く分布する。 ここでは 5~15 cm に成層した泥岩, および薄く成層した細粒砂岩ないしシルト岩を伴う泥質フリッシュからなり, まれに 10~50 cm に成層した砂質フリッシュを伴う。 層厚は 650 m である。 さらに西の小河内川では 泥質フリッシュと成層泥岩を主とし, 含礫泥岩, 含角礫泥岩, 砂岩および砂質フリッシュを伴う。

上部層(M3 層): M3 層は福井谷でもっともよく観察される。 ここでは 主として 100~250 cm に成層した細粒~中粒砂岩と, 5~30 cm あるいは 50~80 cm に成層した砂質フリッシュからなる(第 13 図)。 ときに 3~5 m の中粒砂岩や, まれに泥岩を伴う。 厚く成層した砂岩はしばしば泥岩片を含み, また, 平行葉理がよく発達している。 砂質フリッシュには フルートキャストやプロッドキャスト [ prod cast ] , グルーブキャストなどの流痕がよく発達する。 層厚は 750 m である。 西の小節川や大鎌の北の谷では 主として厚層, 塊状の砂岩と砂質フリッシュとからなるが, ときに泥岩や泥質フリッシュを挟む。 滝又谷の奥では, M2 層の泥岩層の上に 塊状の中粒砂岩が整合に重なるのが観察される(第 4 図の ㉞)。

[ III.2.2.b ] 古座川ブロックの三尾川累層(M1~3)

久留美谷から本谷の上流をへて 美里谷 みさとだに の上流, さらに [ 本図幅の東隣の ] 那智勝浦図幅の 山手 やまて にかけて分布する。 北を断層 [ = 佐本断層の東延長 ? ] で断たれる。

下部層(M1 層): 主として細粒~中粒の塊状砂岩からなり、 しばしば 5~20 cm に成層した砂質フリッシュ, 5~15 cm に成層した泥質フリッシュ, および泥岩を挟む。 添之郷谷 [ 読み方不明 ; そえのさとだに ? ] (第 4 図の ㊳)や本谷(第 4 図の ㊴)では 厚さ 2~5 m の中礫礫岩がみられる。 本層の層厚は 650~750 m である。

中部層(M2 層): 主として塊状, 黒色のシルト質泥岩からなる。 久留美谷では まれに泥質フリッシュと砂質フリッシュ, および中礫礫岩を伴う。 層厚は 300~400 m 以上である。

上部層(M3 層): 久留美谷の上流と古座川沿いの 真砂 まなご 周辺に分布する。 真砂では 塊状砂岩と砂質フリッシュを主とし, 細礫~中礫の礫岩をはさむ。 久留美谷では 砂質フリッシュと塊状砂岩を主とし, 泥質ないし等量フリッシュをしばしば伴う。 層厚は 750 m 以上である。

[ III.2.2.c ] 添野川 そえのがわ 流域の三尾川累層(M3)

[ 東から ] 平井川, 添野川, 谷川にかけて 主として添野川背斜の南翼をなして分布する。 [ 添野川背斜の ] 北翼は断層によって断たれているために分布がせまい。 砂質フリッシュと厚層砂岩からなる。 添野川沿い(第 4 図の ㉕)で岩相がよく観察される。 砂質フリッシュは 5~40 cm の砂質部と 2~5 cm の泥質部, あるいは 20~100 cm の砂質部と 5~10 cm の泥質部のつみ重なりからなる。 これらのフリッシュ層には 級化層理や葉理がよくみられ, 流痕, 漣痕, および生痕がよく発達している。 とくに [ 洞山の北東方 5.5 km の ] 仮屋口 [ 読み方不明 ; かりやぐち ? ] 付近ではフルートキャストやグルーブキャストなどの流痕の発達した砂質フリッシュが よくみられる( [ 巻末の ] 第 Ⅱ 図版の 1)。 ここでは まゆ型の生痕や Paleodictyon [ = ハチの巣状の模様の生痕化石 ] もみられる。 本層には まれに 5~25 cm の等量フリッシュや 3~10 cm の泥質フリッシュ, および泥岩が挟在する。 とくに 西方の谷川沿い(第 4 図の ㉔)では 泥質フリッシュや泥岩がしばしば挟まれる。

本地域の三尾川累層は, 周囲を断層によって囲まれたブロックをなすために 正確な層序対比は困難であるが, 岩相からみて [ 三尾川累層の上部層である ] M3 層に相当する。 層厚は 1,800 m である。

[ III.2.2.d ] 周参見 すさみ 背斜の両翼の三尾川累層(M1~3)

周参見川沿いから [ 洞山の西方 4 km の ] 住木谷 すむぎだに をへて [ 洞山の北方 3 km の ] 西野川 [ の北北西方 2.5 km を南流する西野谷川 ] の源流部にかけてみられる。 北を松根 - 平井断層, 南を佐本断層によって断れた狭長な地域に 周参見背斜をなして分布する。 [ 三尾川累層は下・中・上部層である ] M1・M2・M3 層に分けられ, 全層厚は約 2,000 m である。

下部層(M1 層): [ 図幅地域西端の ] 周参見周辺, [ 図幅地域南西隅から北東方 9 km の ] 市原から [ その南方 3 km 程度の位置の ] 和深川の 上流, さらに住木谷から [ その北北東方 3 km 弱の ] 西栗垣内 にしくりがいと にかけて分布する。 主として中粒ないし粗粒, ときに礫まじりの塊状の灰白色砂岩からなる。 市原付近の周参見川沿い, および市原から南東へ入る谷では 細粒~中粒の塊状砂岩がよく露出している。 また, 市原では細礫礫岩や礫まじりの砂岩がしばしばみられる。 市原から和深川の上流にかけては 泥質フリッシュや砂質フリッシュを挟む。 [ 西栗垣内の西を南流する ] 栗垣内川(第 4 図の ㉑)では [ 周参見背斜の ] 背斜軸部は主として 10~30 cm に成層した砂質フリッシュからなり, 上部には 1~4 m の中粒砂岩や 厚さ 2 m の中礫礫岩を挟む。 砂質フリッシュには底痕が発達する。 層厚は 700 m 以上である。

中部層(M2 層): [ 洞山の北方 3 km の ] 中野川や 西野川 [ ← 西野谷川 ] から [ 洞山の西方 5 km の ] 出谷 [ 読み方不明 ; いずたに ? ] の北方をへて 周参見川の中流域, さらに [ 周参見の北東方 500 m の ] 沼田谷や [ 周参見の南方 2.5 km の ] 大串 おおぐし 周辺に分布する。 口和深 くちわぶか 向斜の南翼にも分布する。

中野川や 西野川 [ ← 西野谷川 ] 流域(第 4 図の ㉒)では, 暗灰色の塊状泥岩と 3~10 cm に成層した泥質ないし等量フリッシュを主とする。 しばしば砂質フリッシュや細粒ないし中粒の塊状砂岩を伴う。 全体に小褶曲が発達し 層厚の判定は困難であるが, 約 700 m と推定される。

出谷の北方では珪質・塊状の泥岩からなり, 白色化した塊状砂岩を挟む。 層厚は約 500 m である。

周参見川の中流域では 軸部を断層で断たれた背斜 [ = 周参見背斜 ] をなしている。 その南翼(第 4 図の ⑱)では 2~5 cm に成層した暗灰色泥岩ないし泥質フリッシュと 5~20 cm に成層した砂質フリッシュを主とする。 中部に層厚約 100 m の砂岩を挟む。 砂岩中には 1~2 m の厚さの中礫礫岩が挟在している。 背斜の南翼での本層の厚さは約 350 m 以上である。 北翼(第 4 図の ⑰)では 主として泥質フリッシュからなり, 泥岩と砂質フリッシュを伴う。 厚さは 250 m 以上である。 [ 周参見背斜の南東方の ] 口和深向斜の南翼では 成層泥岩と泥質フリッシュからなり, 層厚を著しく減ずる。

上部層(M3 層): 添野川と 西野川 [ ← 西野谷川 ] の源流部から 重善岳 じゅうぜんだけ [ 図幅地域西端付近の周参見の東方 2.5 km の ] 下戸川 しもとがわ にかけての地域と, 口和深向斜の軸部をなして分布する。

[ 重善岳の南方 2 km の ] 出谷から [ 重善岳の北西方 2 km の ] 大附 おおつき に至る道路沿い(第 4 図の ⑲)では 主として 1~5 m の厚さの中粒ないし粗粒, ときに礫まじりの塊状砂岩からなる。 中礫礫岩や泥岩を伴う。 上部には厚さ約 100 m の泥岩を伴う。 層厚は 1,100 m 以上である。

[ 重善岳の ] 南西方の広瀬谷や下戸川沿いでは 塊状の砂岩や砂質フリッシュからなり, [ 周参見の東南東方 1.5 km の ] 曲利 まがり の北西の道路沿いでは 中部に厚さ 5~10 m の中礫礫岩を数枚挟む。 重善岳から中野川源流にかけては 塊状砂岩を主とし, しばしば中礫礫岩を伴う(第 4 図の ⑳~㉒)。 さらに東の添野川の源流では 砂質フリッシュおよび塊状の砂岩からなり, 最上部に礫岩を伴う。

口和深向斜の軸部では [ 口和深の北西方の ] 白島 しらじま から西ノ浜にかけての海岸沿い(第 4 図の ⑯)で M3 層がよく観察される。 下位より 10~40 cm に成層し 漣痕や底痕の発達した砂質フリッシュ, 49~50 cm に成層した中粒砂岩, 礫岩と粗粒砂岩の互層(厚さ 200 m)からなる。 礫岩は 3~10 m に成層し 中礫を主とするが, ときに大礫を含む(第 14 図)。 礫岩の上位には 80~150 cm に成層し 平行葉理の発達した細粒砂岩, 5~25 cm に成層した砂質フリッシュ, さらに, 5~15 cm に成層した泥質フリッシュが重なる。 全体としてみると, 本地域のM 3 層は 下部では上方粗粒化, 上部では上方細粒化をなすとみなされる。 層厚は約 1,000 m である。

[ III.2.2.e ] 海岸地域( 口和深 くちわぶか 里野 さとの )の三尾川累層(M1~3)

[ 三尾川累層は ] 口和深から里野にかけて 南北性の断層でずれながらも, ほぼ海岸線にそって東西に走る断層の南に分布する。 層厚は全体で 1,500 m である。

上部層(M1 層): [ 見老津 みろづ の西方 2 km 弱の ] 陸の黒島 おかのくろしま の対岸から東の地域に分布する。 和深累層の W2 層 [ 上部層 ] に整合に重なり, 厚さは約 500 m である。 [ 見老津の南東方 1.5 km の ] 江須崎 えすざき (一部は [ 本図幅の南隣の ] 田並図幅内)では 下部は 30~150 cm に成層した砂質フリッシュを主とし, 泥質フリッシュや厚層砂岩を伴う。 中部は 厚さ 1~3 m, ときに 5 m に達する中粒ないし粗粒砂岩を主とし, 砂質フリッシュや泥質フリッシュを伴う。 また, 層厚 3~4 m の礫岩を挟有する。 厚層砂岩にはしばしば細礫が含まれ, また, 平行葉理や斜交葉理がよく発達する。 上部は 泥岩や礫岩, 含礫泥岩のスランプ層からなり, 砂岩やフリッシュを伴う。 中部の厚く成層した砂岩は 北西の長井周辺 [ ← 見老津の北西方 500 m ] , 東の 宇の平見 うのひらみ , さらに [ その南東方 1 km 強の ] 田並図幅内の 三崎 さんざき にもよく発達する。 下部や中部の砂質フリッシュや泥質フリッシュには各種の流痕がよく発達する。

中部層(M2 層): 陸の黒島の対岸と [ 口和深の南西方 500 m の ] 和深崎に分布する厚さ 5~20 cm の泥質ないし等量フリッシュ, 10~30 cm の砂質フリッシュからなり, 層厚は 50~100 m である。 黒島谷 [ 位置不明 ; 陸の黒島の対岸の黒島橋の谷 ? ] では 砂岩がレンズないし小さなブロックとなって入る泥質フリッシュがみられる。 フリッシュには生痕や流痕が発達している。

下部層(M3 層): 陸の黒島の対岸より西に分布する。 [ 口和深の南東方 1.5 km の ] 天鳥 あまどり の西方の海岸(第 4 図の ⑮)でよく観察される。 層厚は 800 m 以上である。 下部は厚い塊状, 中粒~粗粒の砂岩を主とし, 礫岩を挟む。 中部は 15~80 cm の砂質フリッシュと 5~20 cm の等量フリッシュからなる。 上部は 2~15 cm の泥質フリッシュと成層した黒色泥岩からなる。 全体として顕著な上方細粒化を示す。 中部のフリッシュ層には著しいスランプ褶曲が発達している( [ 巻末の ] 第 Ⅲ 図版の 1)。 また, これらのフリッシュには生痕や流痕がよく観察される。

III.2.3 下露 しもつゆ 累層(S1~6)

下露累層は [ 図幅地域北東部の ] 古座川の上流の下露・西川地域, [ 図幅地域中央から東に延びる ] 佐本川流域および [ 図幅地域南東部の ] 安指 あざし 断層以東に分布する。 三尾川累層 [ M3 ] の上に整合に重なり, 泥岩・フリッシュ・砂岩・礫岩・含礫泥岩などの多様な岩相を示し, S1~6 に分けられる。 古座川上流の下露・西川地域で全層準がみられるので, この地域を下露累層の模式地とする。 S1 層は泥岩, 泥質フリッシュおよび含礫泥岩, S2 層は塊状砂岩と砂質フリッシュおよび礫岩からなり, S3 層は泥質ないし等量フリッシュ, S4 層は礫岩, 含礫泥岩および泥岩, S5 層は泥岩と泥質フリッシュ, S6 層は成層泥岩, 含礫泥岩および礫岩からなる。 下露累層の積算層厚は約 3,000 m に達する。 代表的な岩相を第 15~20 図に示す。

第 15 図 下露累層の S1 層の含礫泥岩。 [ 図幅地域北東隅付近の ] 中番 なかばん の林道入口(HⅠ)。
Pebbly mudstone in the Shimotsuyu Formation (S1).

第 16 図 下露累層の S2 層の厚く成層した砂岩。 [ 図幅地域北東隅から南西方 4 km の ] 惣谷 [ 読み方不明 ; そうたに ? ] の北の橋の下(GⅠ)。
Thick-bedded sandstone in the Shimotsuyu Formation (S2).

第 17 図 下露累層の S3 層の褶曲した泥質フリッシュ。 惣谷の道路沿い(GⅠ)。
Folded muddy flysch in the Shimotsuyu Formation (S3).

第 18 図 下露累層の S4 層の礫岩。 [ 図幅地域北東隅から南東方 7 km の ] 平井川から下露への道路入口(GⅡ)。
Conglomerate in the Shimotsuyu Formation (S4).

第 19 図 下露累層の S5 層の成層泥岩。 [ 図幅地域北東隅から南南西方 4 km の ] 古座川支流の中井谷(HⅡ)。
Bedded mudstone in the Shimotsuyu Formation (S5).

第 20 図 下露累層の S6 層に挟まれる礫質砂岩。 [ 図幅地域北東隅から南方 7 km 弱の ] 尾添谷 おぞえだに (HⅢ)。
Pebble bearing sandstone intercalated in the Shimotsuyu Formation (S6)

[ III.2.3.a ] 古座川の上流地域の下露累層(S1~6)

古座川本流の七川貯水池より上流部の平井川沿い, 添野川の上流, さらに東の那智勝浦図幅の 小川 こがわ の上流域 [ ← 図幅地域北東隅から南方 4.5 km の 笠置山 かさぎやま の東方 4 km 強の 田川 たがわ 付近 ] にかけて分布する。 S1~5 層は古座川沿いによく発達するが, S6 層はその東の笠置山から [ その南方 2.5 km の ] 大桑 おおくわ [ ← 大桑 おおぐわ ? ] にかけての地域にのみ分布する。

S1 層 : 古座川の上流の 中番 なかばん 付近と添野川流域でみられる。 中番付近(第 4 図の ㉖)では 親谷川 [ ← 大屋谷 ] 入口で 三尾川累層 [ M3 ] に整合に重なる厚さ 50 m の含礫泥岩に始まる [ 第 15 図 ] 。 5~10 cm に成層した暗灰色泥岩と 5~20 cm に成層する泥質フリッシュを主とし, 15~60 cm に成層する砂質フリッシュを挟む。 親谷川 [ ← 大屋谷 ] 入口の含礫泥岩からは Yoldia sobrina, Venericardia cf. orbica, Acila kusiroensis [ ← これらは二枚貝化石 ] およびサメの歯を産した。 層厚は約 350 m である。 添野川流域では まれに砂岩の薄層やレンズを含む泥岩からなる。 下部には 10~30 cm に成層した泥質フリッシュや 30~50 cm に成層した砂質フリッシュを挟む。

S2 層 : 古座川沿いに 惣谷向斜 [ 読み方不明 ; そうたに向斜 ? ] の両翼をなして分布し, 添野川沿いにも小規模に分布する。 古座川沿いでは 厚さ 7 m の中礫礫岩をはさむ灰白色の塊状砂岩にはじまる。 この砂岩は中粒ないし極粗粒で, 泥岩片を多く含む。 惣谷向斜両翼での本層は 主として 1~4 m の厚さの細粒なしい中粒の灰白色砂岩からなり (第 16 図), 下部に 5~25 cm に成層した砂質フリッシュや 3~15 cm の泥質フリッシュを, また, 中部には含礫泥岩を挟む(第 4 図の ㉖)。 層厚は約 200 m である。 添野川地域では 塊状の中粒砂岩にはじまり, 10 m 以上の厚さの中礫礫岩, 塊状の中粒ないし粗粒砂岩の順に重なる。

S3 層 : 古座川沿いに惣谷向斜をなして分布する。 厚さ 5~10 cm に成層し, 小褶曲した泥質フリッシュ(第 17 図)からなる。 層厚は 50 m である。 [ 惣谷の南方 500 m の ] 宇井の北方の惣谷向斜の南翼にもわずかに分布する。

S4 層 : 古座川沿いの惣谷および平井川沿いの惣谷向斜の両翼, さらに [ 添野川沿いの ] 中村から宇井にかけての [ 南西 - 北東に延びる ] 断層の南に分布する。 主として礫岩と含礫泥岩からなり, 泥岩, 砂質フリッシュ, 塊状砂岩をはさむ(第 4 図の ㉗ と ㉘)。 砂質基質の礫岩は含礫泥岩中に 1~3 m の層をなし, ときにはレンズ状をなす(第 18 図)。 宇井, 西川, 平井の含礫泥岩からは貝化石を産する。 層厚は約 360 m である。

S5 層 : 古座川の上流, 成川 なるかわ , 下露周辺に広く分布する。 平井川沿いにも惣谷向斜の軸部に小規模に分布する。 那智勝浦図幅の 宇筒井 うづつい 川, 小川 こがわ 沿いにも分布する。 下露周辺(第 4 図の ㉙)では 塊状あるいは 2~5 cm に成層した黒色泥岩が厚く発達する (第 19 図)。 ときに泥質フリッシュを挟有する。 中井谷 [ ← 下露の北東方 3 km 弱 ] や小屋野 [ ← 下露の西方 1 km ] 周辺では 2~6 m の中礫礫岩を挟む。 佐田 [ ← 下露の南南西方 2 km 弱 ] 周辺から小屋野にかけては 各種フリッシュや 厚層をなす中粒ないし粗粒砂岩がしばしば伴われる。 層厚は約 1,000 m と推定される。

平井川沿い(第 4 図の ㉘)では S5 層の下部がみられる。 主として黒色塊状 あるいは 成層した泥岩からなり, 細粒砂岩もしくはシルト岩を伴う泥質フリシュや 砂質フリッシュを挟む。 那智勝浦図幅の宇筒井川や小川沿いでは成層泥岩を主とし, まれに泥質フリッシュ, 礫岩, 含礫泥岩, 砂岩を伴う。

S6 層 : 笠置山の中腹から大桑にかけて分布し, さらに東の那智勝浦図幅の宇筒井川流域にもみられる。 笠置山の南西(第 4 図の ㉙)では 主として 3~10 cm に成層したシルト質泥岩からなり, 礫岩, 含礫泥岩, 塊状砂岩をしばしば伴う。 下部には砂質フリッシュと泥質フリッシュを挟む。 大桑周辺では成層泥岩からなり, しばしば礫岩や含礫泥岩, まれに礫まじり塊状砂岩を伴う(第 20 図)。 那智勝浦図幅の字筒井川沿いでも 主として成層した黒色泥岩と泥質フリッシュからなり, 礫岩, 含礫泥岩, 塊状砂岩, 砂質フリッシュを伴う。 本層の上限はみられないが, 層厚は 500 m 以上である。

[ III.2.3.b ] 佐本川 さもとがわ 流域の下露累層(S1~3)

[ 洞山の西方 4 km の ] 獅子目 ししめ 峠から [ 洞山の東北東方 4 km の ] 福井谷の北にかけて S1, S2 および S3 層が分布する。 三尾川累層 [ M3 ] に整合に重なる。 上限は佐本断層に断たれて明らかでないが, 層厚は 1,400 m 以上である。

S1 層 : 福井谷から西の 中防己 なかつづら まで 佐本川の南に分布する。 福井谷(第 4 図の ㊱)では 厚さ 70 m の黒色の塊状泥岩からなり, 同様の岩相は中防己までよく連続する。

S2 層 : S1 層の北側に分布する。 福井谷の北では 泥岩片を多く含む塊状, 中粒ないし極粗粒砂岩からなり, しばしば厚さ 2~5 m の細礫ないし中礫礫岩や厚さ 30~40 m の泥岩層を挟む。 層厚は約 400 m である。 [ 洞山の北東方 3 km の ] 田鶴平 たずだいら の南では しばしば砂質フリッシュを挟み, また, 底痕が発達している。 [ 洞山の北方 2.5 km の ] 佐本周辺では塊状砂岩を主とし, 礫岩や泥岩を挟む。

S3 層 : 佐本川に沿って分布する。 主として成層した黒色泥岩からなり, 中部には 1~3 m に成層した細粒ないし中粒砂岩, 厚さ 2~5 m の中礫礫岩および含礫泥岩を挟む(第 4 図 ㉝ と ㉟)。 獅子目峠付近では 3~10 cm に成層した泥質フリッシュないし泥岩が発達する。 上限は断層に断たれて明らかでないが, 層厚は 750 m 以上である。

[ III.2.3.c ] 安指 あざし 断層以東の下露累層(S2~6)

[ 図幅地域南東部の ] 安指断層の東には 南の田並図幅地域も含めると 層厚 2,800 m におよぶ下露累層が分布する。 [ 本図幅の東隣の ] 那智勝浦図幅の西南部にも狭い範囲を占めて本累層が分布する。 S1 層は本地域では露出せず, また, S2 層は [ 本図幅の南隣の ] 田並図幅内にのみ みられる。

S2 層 : [ 後に示す第 41 図(田並図幅地域の地質図)によると ] 田並図幅内の安指向斜の両翼および [ その東方 2.5 km の ] ナゴ島背斜の軸部に分布する。 その岩相は 横島 よこしま 双島 そうしま でよく観察される。 S2 層は含礫泥岩, あるいは細礫ないし中礫礫岩にはじまり, 厚く成層した塊状砂岩, 5~50 cm に成層した砂質フリッシュ, 3~10 cm に成層した泥質フリッシュないし成層泥岩の順に重なる 上方細粒化のサイクルが少なくとも2つ認められる。 各サイクルの基底は下位の泥岩もしくは泥質フリッシュを 4~10 数 m 削りこんでいる。

S3 層 : 安指向斜およびナゴ島背斜, [ その東方 500 m の ] 野𣷓 のうなぎ 向斜をなして 江住・田並図幅の両域にかけて分布する。 さらに, 那智勝浦図幅の西南隅にもわずかに分布する。 主として 3~10 cm に成層する泥質フリッシュと 5~40 cm に成層した等量フリッシュからなる。 ときに 15~30 cm に成層した砂質フリッシュや塊状の細粒砂岩を挟む。 安指向斜の軸部にあたる 田子郷 たこごう 付近では塊状の黒色泥岩を伴う。 等量フリッシュや砂質フリッシュの砂質部にはリップル斜葉理がよく発達している。 層厚は 350 m である。

S4 層 : 安指向斜をなして 田子郷から田子田にかけてみられる。 その延長は [ 本図幅の東隣の ] 那智勝浦図幅の 潤野 うるの [ ← 本図幅の南東隅から北方 4 km の 一雨 いちぶり の東方 1.5 km ] に達する。 さらに, [ 田子郷 たこごう の南方の ] 田並図幅の 中ノ平見 なかのひらみ から [ その西方 1 km の ] 田子 たこ の海岸にかけて分布する。 本層は 主として成層した黒色泥岩からなり, しばしば厚さ 1~5 m の中礫礫岩と厚さ 2~4 m の含礫泥岩を伴う。 また, 東の有田川沿い(第 4 図の ㊵)や [ 本図幅地域の南東隅から北方 3 km の ] 鶴川から [ 本図幅の東隣の那智勝浦図幅地域内の ] 潤野 うるの にかけての地域では, シルト質泥岩の基質中に砂岩の小さな角礫が無秩序に含まれた含角礫泥岩を伴う。 層厚は有田川沿いで約 100 m である。 本層は 田並図幅内では中ノ平見付近の波食台に好露出がみられ, 主として砂岩や泥岩, ときに礫岩の角礫ないしは亜角礫を泥質基質中に無秩序に含んだ含角礫泥岩からなっている。 含角礫泥岩が浸食をうけた特異な景観 [ 以下の [注] 参照 ] は 原田ほか(1963)や紀州四万十帯団体研究グループ(1968)によって 「サラシ首」と呼ばれている。 本層の中部には斜交葉理が発達し, 浅海型の生痕を多産する粗粒砂岩や, 2~5 m の厚さの円磨された中礫ないし大礫からなる礫岩が挟まれている。

[注]
水野・今井(1964)による5万分の1「田並図幅」説明書の図版 31~33 を参照。

S5 層 : [ 峯ノ山の南南西方 1.5 km の ] 姥山 うばやま [ 419 m ] から [ 峯ノ山の東方 2 km の ] 立合 たちあい にかけて 峰ノ山 みねのやま [ 482 m ] をとりまいて分布する。 また, [ 峯ノ山の北東方 1.5 km の古座川沿いの ] 弧状岩脈 [ Py と Qp ] の北側にも小規模に分布する。 [ 本図幅の南隣の ] 田並図幅地域では [ 本図幅地域内の田子郷の南南西方の ] 田子の周辺にみられる。 有田川沿い(第 4 図の ㊵)では 主として成層した黒色泥岩あるいはシルト岩からなり, 中部に泥質フリッシュを伴う。 まれに細粒ないし中粒の塊状砂岩や砂質フリッシュ, 等量フリッシュを伴う。 層厚は約 1,000 m である。 田並図幅の田子周辺の波食台では わずかに成層したシルト質泥岩を主とし, まれに含角礫泥岩をはさむ。

S6 層 : 峰の山周辺にほぼ水平に近い層をなして分布する。 また, 弧状岩脈の北側にも 小規模に分布する。 本層の下部は 主として含礫泥岩や中礫礫岩をしばしば挟む 中粒ないし粗粒の塊状砂岩からなり, 中・上部は ときに中礫礫岩や含礫泥岩を挟むシルト岩ないし泥岩からなる。 本層の上限は明らかでないが, 層厚は 600 m 以上に達する。

III.3 産出化石と地質時代

本図幅地域の牟婁層群には 16 地点 [ Loc. 1~16 ] から二枚貝あるいは巻貝などの化石を産し, また各種の生痕化石が多産する。

生痕化石はとくに海岸地域のフリッシュによくみられ, Helminthoidea, Spriorhaphe, Megagrapton, Terebellina, Nereites, Zonarites 型などである(紀州四万十帯団体研究グループ, 1976・1979)。 代表的な生痕化石を [ 巻末の ] 第 Ⅰ 図版に示す。

貝化石のほとんどは 牟婁層群の上部層である合川累層と下露累層の 含礫泥岩もしくは泥岩から産する。 下部層である安川累層と和深累層からは それぞれ1ないし2地点で産するにすぎない。 中部層にあたる打越累層ではこれまでに発見されておらず, 同じく中部層の三尾川累層では [ 図幅地域南東隅から北北西方 8 km の ] 立合川の上流(Loc. 9 ; H Ⅳ)の砂岩中から二枚貝の破片が発見されたのみである。 これまでに発見された化石について以下に示す。 [ 以下で Loc. 1~16 と表記した ] 化石産地の番号 [ = 1~16 ][ 記号「 × 」とともに ] 付図に示されている。

松根 - 平井断層 以北
安川累層 [ Y2 ]
Loc.1 : 添野川の上流(EⅡ)の含礫泥岩
Portlandia watasei
合川累層
K3 層
Loc.2 : 九川 くがわ (DⅠ)の泥岩
Costacallista ? sp.
Loc. 3 : 下平 しもだいら (CⅠ)の含礫泥岩
Acila sp.
Loc. 4 : 北谷(CⅠ)の含礫泥岩
Venericardia akagii Kanehara, Venericardia akagii, Portlandia semiovata Uozumi
K4 層
Loc.5 : 下平の北(CⅠ)の含礫泥岩
Glycymeris sp.
K5 層
Loc. 6 : 北谷峠(BⅠ)の泥岩
Portlandia watasei
松根 - 平井断層 以南
和深累層 [ W2 ]
Loc. 7 : 見老津(CⅥ)の塊状泥岩
Portlandia watasei, Neilonella sp., Acila brevis, Acila ashiyaensis, Lucinoma nagaoi, Solemya sp.
以上の他に 三尾川(Loc. 8 ; GⅤ)では 含礫泥岩から二枚貝化石の破片が得られている。
三尾川累層 [ M1 ]
立合川の上流(Loc. 9; HⅥ)で 砂岩から二枚貝化石の破片を産した。
下露累層
S1 層
Loc. 10 : 中番(HⅠ)の含礫泥岩
Yoldia sobrina, Venericardia cf. orbica, Acila kusiroensis
この他にサメの歯(1個)
S3 層
Loc. 11 : 便田 びんだ (GⅥ)の含礫泥岩
Portlandia sp., Venericardia tokunagai, Costacallista cf. shikokuensis
ほかに 追川谷 [ ← 追郷谷 おいごうたに ? ] (Loc. 12 ; DⅣ)や獅子目峠(Loc. 13 ; DⅣ)では含礫泥岩から二枚貝化石の破片を産した。
S4 層
Loc. 14 : 宇井(GⅠ)の含礫泥岩
Portlandia watasei
Loc. 15 : 西川(GⅡ)の含礫泥岩
Portlandia watasei
Loc. 16 : 平井(GⅡ)の含礫泥岩
Portlandia watasei, Yoldia saitoi, Venericardia sp.
[注]
上記の Loc. 1~16 の化石の記載者は以下の通り。
Loc. 1・10・14・15・16 : 紀州四万十帯団体研究グループ(1972)
Loc. 2 : MATSUMOTO(1966)
Loc. 7 : 紀州四万十帯団体研究グループ(1976)
Loc. 11 : 原田ほか(1963)
Loc. 3・4・5・6・8・9・12・13 : 本報告ではじめて記載されたものである。

水野(1973)は本図幅地域や栗栖川・田並図幅地域から産出した貝化石を検討し, 牟婁層群の地質時代を漸新世後期ないし中新世前期としている。

III.4 堆積構造と古流系

本図幅地域の牟婁層群は 主として各種のフリッシュからなり, 礫岩, 砂岩, 泥岩, あるいは含礫泥岩を伴っている。 礫岩や砂岩, フリッシュには種々の堆積構造が発達している。 礫岩や砂岩の堆積構造については, 海岸地域でみられるものを中心に 立石(1977), TATEISHI(1978)がまとめている。 礫岩は塊状を呈するものの他に 級化層理や成層構造が認められるものも多い(第 14 図)。 また, 多くの礫岩にはファブリックが観察される( [ 巻末の ] 第 Ⅳ 図版の 4)。 この礫岩のファブリックから礫を供給した流れの方向が復元されている。 単層の厚さ 1~3 m, ときに 10 m に達する厚く成層した砂岩には composite bed(DZULYNSKI and WALTON, 1965)をなすもの, 全体として塊状を呈するが, 最上部に平行葉理が発達し 塊状部からこの部分にかけて級化がみられるもの, さらに, 全体に葉理構造が発達したもの などのいくつかのタイプが認められる。 厚い砂岩層にはときに皿状構造( [ 巻末の ] 第 Ⅳ 図版の 2)がみられる。

フリッシュ層は一般に単層の厚さ 3~50 cm, ときに 80 cm に達し, これらが厚さ数 10 m から 100 m 以上にわたって整然とした重なりを示す( [ 巻末の ] 第 Ⅱ 図版の 1・2)。 これらのフリッシュ層には ときに scour-and-fill 構造 [ = 浸食された窪みや溝を堆積物が埋めた構造 ] やチャネル構造がみられる(第 21 図)。 フリッシュをなすそれぞれの単層には種々の内部・外部堆積構造が発達する。 フリッシュの砂質部には平行葉理や斜交葉理がよく発達する。 地層の上面には漣痕が, 下面には種々の底痕がみられる。 底痕には流痕(第 22 図)と荷重痕(第 23 図)および生痕がある。 単層の下面にみられる流痕には flute cast, groove cast をはじめ, current crescent cast, brush cast, bounce cast, prod cast, longitudinal obstacle scour mark, ridge and furrow mark(HARATA(1965); DZULYNSKI and WALTON(1965))などがある。

第 21 図 合川累層の K5 層にみられるチャネル構造。 市鹿野から下露への道路沿い(BⅠ)。
Channel structures found in the Kōgawa Formation (K5).

第 22 図 三尾川累層の M1 層の砂質フリッシュの 砂岩層の底面にみられるカレント クリーセント キャスト。 江須崎(CⅥ)。
Current crescent marks on the bottom of sandy flysch bed in the Mitogawa Formation (M1).

第 23 図 乳岩。 和深累層の W2 層の厚い砂岩層の底面にみられるロード キャスト。 里川への林道沿い(FⅥ)。
Chichi-iwa (bust rock). Load casts found on the bottom of thick-bedded sandstone in the Wabuka Formation (W2).

フリッシュをなす地層に発達する これらの流痕から牟婁層群の古流系を検討した。 まれに礫岩や厚層砂岩にみられる流痕もあわせて検討した。 紀州四万十帯団体研究グループ(1970・1972・1976・1979)による古座川流域と海岸沿い, 立石(1976)による太間川沿いの資料をも加えて, 本図幅および田並図幅域における古流向を付図ならびに第 24 図に示す。 流向は一次補正値で示されている。 また, 多数の古流向が測定される地域では 代表的な値が示されている。 つぎに, 各累層ごとの古流系についてのべる。

第 24 図 江住図幅および田並図幅地域の牟婁層群の古流系。
Paleocurrent map of the Muro Group in the Esumi and Tanami quadrangles.

III.4.1 松根 - 平井断層 以北の古流系

安川累層 : 分布が限られていて かつ 泥質な岩相を呈するため 流痕はほとんどみられず, 古流向は測定されていない。

打越累層 : 流痕は将軍川や 宮城川 みやしろがわ 沿いでよく発達するが, 平井川および 城川 じょうがわ 以西では余りみられない。 全体として東ないし北北東からの流れが卓越している。 将軍川沿いの本層の中部では東南東ないし東北東からの流れが多い。 宮城谷 みやしろだに 沿いの中部では北ないし北北東からの流れがみられ, 上部では東からの流れが卓越する。 一部に北西や西からの流れもみられる。

合川累層 : 流痕は前ノ川沿いでよく発達し, 市鹿野から大瀬への林道沿いでもみられる。 城川沿いにはほとんど発見されない。 全体としてばらつきが大きいが, 北西からの流れと北東ないし東北東からの流れが卓越する。 K2 層では 前ノ川沿いの はら [ ← 図幅地域北端・東西中央やや西 ] で西北西および北北西からの流れがみられ, 太間川 たいまがわ の上流では北ないし北東からの流れがみられる。 K3 層では 北東および東北東からの流れが 前ノ川沿いの 九川 くがわ および太間川の上流でみられる。 K4 層では東北東から, K5 層では西からの流れが認められる。

III.4.2 松根 - 平井断層 以南の古流系

和深累層 : 流痕は本図幅地域にはほとんどみられないが, [ 本図幅の南隣の ] 田並図幅の海岸沿いには良く発達している。 東北東からの流れが卓越し, 一部に東南東からの流れがみられる。

三尾川累層 : さまざまな方向からの流れがみられるが, 測定された流痕の地理的位置と層準を考慮すると つぎのような傾向が認められる。 三尾川流域のブロックでは M1 層では東北東からの流れ, M3 層では北北東ないし北西からの流れが卓越する。 添野川ブロックの M3 層では南西ないし西南西からの流れが卓越する。 海岸沿いの地域では 見老津より東では南東からの流れが卓越し, それより西では北東からの流れが支配的で, 一部に南からの流れがみられる。

下露累層 : 本図幅地域では流痕があまりみられず, 佐本川流域の S2 層を除くと ほとんど発見されていない。 佐本川の S2 層では北西からの流れが多い。 いっぽう 田並図幅の海岸沿いの地域には流痕がよく発達している。 ここでは S2 層では南東からの流れが卓越し, 北東および南西からの流れもみられる。 さらに, S3 層では南西および北東からの流れがみられる。

III.5 礫岩および砂岩

III.5.1 礫岩

牟婁層群にはしばしば砂質基質の礫岩が挟在している。 どの礫岩も 砂岩(ワッケ [ wacke ] ないしアレナイト [ arenite ] 型)・ チャート・ 酸性火山岩類・ 花崗岩・ 石灰岩・ 頁岩・ オーソコォーツァイト [ orthoquartzite ; 正珪岩 ] などの礫からなる複成礫岩である。 礫の多くは細礫ないし中礫で, ときに大礫や巨礫を含む。 礫のほとんどは円礫ないし亜円礫からなる。 オーソコォーツァイト礫にはよく円磨されたものが多い。 これに対して, チャート礫には亜角礫ないし亜円礫が多い。 石灰岩礫や頁岩礫には 同時侵食礫と考えられる不規則な形状や破片状のものも見られる。

松根 - 平井断層 以北の牟婁層群では 礫岩は 安川累層ではごくまれに, また, 打越累層では上部の数層準にみられるにすぎないが, 合川累層にはよく発達する。 打越累層では, 将軍川中流域の上部層の塊状砂岩に細礫ないし中礫の礫岩が 40~100 cm のレンズ状あるいは不規則な形で含まれている。 合川累層では K2 層と K4 層に礫岩が発達している。 とくに, 北谷の南の宮城川沿いの K2 層では, 厚さ 320 m にわたって 巨礫を伴う中礫ないし大礫礫岩がみられる。 この礫岩層は西方に次第に尖滅する。 大瀬の北の K4 層では 中礫ないし大礫からなる厚さ数 m~10 m の礫岩がよく発達する。 これらも南西方向に尖滅する。

松根 - 平井断層 以南の牟婁層群では 各累層に礫岩がみられるが, とくに三尾川累層と下露累層によく発達する。 和深累層 [ W2 ? ] では 厚さ数 m, 最大で 7 m に達する細礫ないし中礫を主とする礫岩がまれにみられる。 三尾川累層の下部層 [ M1 ] では, [ 洞山の南南東方 2.5 km の ] 比曽原川 ひそはらがわ 沿いの大滝付近や古座川ブロックの添之郷谷で 2~5 m ときに 10 数 m に達する大礫を含む中礫礫岩がみられる。 三尾川累層の上部 [ M3 ] では, [ 周参見の南方の ] 白島トンネル付近の海岸や 図幅中央部の松根 - 平井断層に沿った南側などの各地に 2~10 数 m の 巨礫を含む中礫ないし大礫礫岩が発達する。 下露累層では S2・S4・S6 層に礫岩がよく発達する。 それらの多くは 2~4 m, ときに 10 数 m の厚さの中礫礫岩で, まれに大礫を含んでいる。

牟婁層群には 泥質基質の礫岩 および 細礫ないし中礫が泥岩中に散在する含礫泥岩, および 砂岩や泥岩の角礫が泥岩中に含まれる 含角礫泥岩 [ 以下の [注] 参照 ] がしばしば発達する。 泥質礫岩や含礫泥岩は 牟婁層群の上部層である合川累層や下露累層によくみられる。 また, 下部層である和深累層にもまれにみられる。 これらの礫岩でも 含まれる礫の種類や円磨度は 砂質基質の礫岩の場合と殆んど変らない。 含角礫泥岩は下露累層にみられる。 この含角礫泥岩は「サラシ首層」(紀州四万十帯団体研究グループ, 1968)とよばれている。 同様の礫岩は まれに三尾川累層にもみられる。 角礫は牟婁層群自身に由来する砂岩や泥岩 および泥質フリッシュや礫岩などからなっている。

[注]
地質図の凡例に記されている 牟婁層群の属している 和深累層よりも古い「層序記号なしの含角礫泥岩」は, ここに記されている「含角礫泥岩」と同じものか ?

第 25 図 牟婁層群の礫岩の礫種構成(田並図幅地域を含む)。
Composition of conglomerates in the Muro Group (Esumi and partly Tanami quadrangles).

[ 第 25 図に関する注意書き ]
この図には各地点の礫の以下の9種類の礫種の構成(個数の量比)が図示されている。
砂岩(Sandstone), チャート(Chert), 酸性火山岩類(Acid volcanic rocks),
石灰岩(Limestone), 頁岩(Shale), 花崗岩類(Granitic rocks),
オーソコォーツァイト(Orthoquartzite), 石英岩類(Quartz rocks),
その他(Undifferentiated rocks)
礫は以下の 41 地点(①~㊶)で採取したものである。
松根 - 平井断層 以北(合川向斜の南翼)
合川累層の K4 層
㊶ : 谷ノ口(CⅠ), ㊵ : C33(CⅠ), ㊴ : C4(CⅠ), ㊳ : 大瀬(CⅠ)
合川累層の K3 層
㊲ : C32(DⅠ), ㊱ : C31(DⅠ)
合川累層の K2 層
㉟ : 九川(DⅠ), ㉞ : 宮城川(CⅡ)
松根 - 平井断層 以北(合川向斜の北翼)
合川累層の K3 or K5 層
㉝ : 市鹿野橋(AⅠ)
松根 - 平井断層 以南
下露累層の S6 層
㉜ : 尾添谷(HⅢ), ㉛ : 水呑大師(GⅤ),
下露累層の S4 層
㉚ : 平井川(GⅡ)
下露累層の S3 層
㉙ : 添谷(GⅠ), ㉘ : 平野(EⅢ), ㉗ : 大谷(DⅣ)
下露累層の S2 層
㉖ : 福井谷(FⅢ)
三尾川累層の上部層(M3 層)
㉕ : 高浜(BⅥ),
㉔ : 和深川の北(AⅤ), ㉓ : 西ノ浜(AⅤ), ㉒ : 白島(AⅤ), ㉑ : 立野(AⅣ)
三尾川累層の下部層(M1 層)
⑳・⑲ : 添之郷谷(GⅣ), ⑱・⑰ : 里川(EⅤ)
和深累層の上部層(W2 層)
⑯・⑮ : 三尾川(FⅤ)
海岸地域(口和深~江住)
三尾川累層の下部層(M1 層)
⑭ : 江須崎の南西(DⅦ), ⑬ : Loc.498(CⅥ), ⑫ : 長井(CⅥ),
⑪ : 三崎(EⅦ), ➉ : 江住の西(DⅥ), ➈ : 江須ノ川(DⅥ),
➇ : 江須崎の北(CⅦ)
和深累層の上部層(W2 層)
➆ : Loc.259(EⅥ)
田並図幅地域
下露累層の S3 層
➅ : 野𣷓(GⅦ)
下露累層の S2 層
➄ : ナゴ島Ⅰ(GⅦ), ➃ : 双島Ⅱ(GⅦ),
➂ : 横島(FⅦ), ➁ : Loc.155(FⅦ)
和深累層の下部層(W1 層)
➀ : Loc.211(EⅦ)
礫の構成の肉眼観察による実測は以下の文献による。
➀~⑥ : 紀州四万十帯団研グループ(1970)
➆~⑭ : 紀州四万十帯団研グループ(1976)
㉒~㉕ : 紀州四万十帯団研グループ(1979)
㊱・㊲・㊴・㊵ : 徳岡(1966 ; オーソコォーツァイト礫を数 % 程度含む)
㉟・㊳・㊶ : 鈴木(未発表)
⑮~㉑・㉖~㉞ : 本図幅

砂質基質の礫岩について 礫種構成を検討した結果を南の田並図幅地域も含めて第 25 図に示す。 このなかには 海岸地域についての 紀州四万十帯団研グループ(1970・1976・1979)の代表的な資料も含まれている。 検討された礫岩の位置は [ 丸で囲んだ番号 ➀~㊶ で ] 付図に示されている。 これらの結果は 任意の露頭で径 1 cm 以上の100(~300)個の礫を数えたもので, 礫種は 砂岩・ チャート・ 酸性火山岩類・ 花崗岩類・ 頁岩・ 石灰岩・ 石英岩(脈石英など)およびオーソコォーツァイトに大別されている。 一般的にいって, 本図幅および田並図幅地域の牟婁層群では 酸性火山岩類が どこでももっとも多く含まれ, チャートや砂岩がこれにつぐ。 花崗岩類やオーソコォーツァイトの礫は 量は少ないが, どこでも普遍的に含まれている。 層準や地域ごとのちがいはそれほど明瞭ではないが, おおよそ次のような傾向が認められる。 すなわち, 酸性火山岩礫は 三尾川累層に比べて上位の下露累層(および合川累層)でやや少ない。 これに対して, オーソコォーツァイト礫は 和深累層・三尾川累層で少なく, 下露累層でやや多くなっている。 地域ごとのちがいとしては, 石灰岩礫は松根 - 平井断層 以北 および海岸地域と田並図幅地域には普遍的に含まれているが, これらの中間の地帯では殆んど含まれていない。 また, オーソコォーツァイト礫は田並図幅地域および本図幅の海岸地域では比較的多く含まれるが, より北方の地域ではかなり少ない。

III.5.2 砂岩

1 m 以上の厚さの塊状砂岩 187 試料について [ 鉱物組成を ] 検討した。 これらのうち6試料は 砂岩頁岩互層の砂質部からのものである。 検討方法は 栗栖川図幅地域(鈴木ほか, 1979)と同じで, カリ長石を染色した薄片についてモード組成を計測した。

第 26 図 牟婁層群の砂岩の鉱物組成。
A [ 上図 ] : 石英(Q), 長石(F), 岩片(RF)の比 [ の三角ダイアグラム ]
B [ 下図 ] : 石英(Q), 斜長石(P), カリ長石(K)の比 [ の三角ダイアグラム ]
Mineral composition of sandstones in the Muro Group (and partly Kumano and Tanabe Groups).
Q : quartz, F : feldspahr, RF : rock fragments, P : plagioclase, K : K-feldspar

[ 第 26 図に関する注意書き ]
A と B には それぞれ 以下の2コの三角ダイアグラムを左右に並べている。
左 : 松根 - 平井断層 以北の合川・打越・安川累層と田辺層群の砂岩の鉱物組成。
右 : 松根 - 平井断層 以南の下露・三尾川・和深累層と熊野層群の砂岩の鉱物組成。

牟婁層群の砂岩は 石英 : 30~67 %, 斜長石 : 6~41 %, カリ長石 : 1~16 %, 岩片 : 2~17 %, 基質 : 4-20 % の組成の範囲にある。 これらの砂岩の組成を第 26 図に示す。 また, それぞれの試料の石英とカリ長石の量は 付図に [ カリ長石の量 石英の量 のように ] 示されている。

砂岩は 中~粗粒のものが多く, 粒子は亜角~亜円で 中程度の淘汰度を示す。 石英粒子は 単一の結晶からなるものが多いが, 2 個以上の結晶からなるものも 10~20 % を占める。 単結晶の石英粒子のうち 30~40 % は波動消光を示すが, 著しい波動消光を示すものは少ない。 カリ長石には パーサイト構造やマイクロクリン双晶がしばしば認められる( [ 巻末の ] 第 Ⅴ 図版)。 カリ長石には 透明感の強い新鮮なものが多い。 部分的に炭酸塩に置換されているものもみられる。 斜長石は しばしばアルバイト双晶をしており, まれにペリクリン双晶しているが, 双晶していないものも多い。 カールスバド双晶や累帯構造を示すものは非常にまれである。 多くの場合, 多少とも風化・変質しており, セリサイトやカオリンが生じている。 岩片には 流紋岩質岩・ 花崗岩質岩・ 泥岩・ チャート・ 細粒砂岩・ 石英安山岩質ないし安山岩質岩・ 結晶片岩様岩・ ホルンフェルスなどが認められる。 主に隠微晶質の石英からなる粒子が比較的多く, まれに破片状斑晶や流理構造がみられ, これらの大部分は流紋岩質岩と推定される。 花崗岩質岩は 石英や斜長石・カリ長石が 2~3 個以上集まった等粒状の粒子で, 微文象構造をもつことがある。 ややひきのばされた石英や長石からなる片麻岩状の岩片もみられる。 流紋岩質ないしは安山岩質岩の岩片には ハイアロピリティックまたは ピロタキシティックな組織をもつ粒子もまれに認められる。 結晶片岩様岩石は 細長く引伸ばされた石英が一定方向に並んでいるもので, 細長いセリサイトを含むことも多い。 重鉱物には セリサイト化した白雲母・ 強く変質した黒雲母・ ジルコン・ 電気石・ スフェン・ ざくろ石・ 緑レン石・ 燐灰石・ 金紅石・ 磁鉄鉱・ 赤鉄鉱などが鏡下で認められる。 これらは量的に少ない。 その他に, 同時侵食礫と考えられる泥岩パッチや自生的な形態を示す黄鉄鉱, 二次的と考えられる緑泥石が含まれていることがある。 基質は 主に粘土鉱物と隠微晶質石英とからなるが, まれに 一部が炭酸塩からなるものもある。

本図幅内の牟婁層群の砂岩には 層準の違いによる鉱物組成の差はほとんど認められない。 しかし, 地理的な位置を考慮すると, 松根 - 平井断層以北の砂岩は 以南のものに比べて 石英がやや少なく, 長石と岩片とがわずかに多いという傾向がある。 このようなちがいは [ 本図幅の北隣の ] 栗栖川図幅地域の砂岩組成を考慮に入れると より明らかとなる。

つぎに層準ごとの砂岩組成の特徴をのべる [ 以下の [注] 参照 ]

[注]
本図幅内では 松根 - 平井断層の北と南での砂岩の鉱物組成のちがいは小さいので, 断層以北の [ 安川・打越・合川累層の ] ものは 以南の同層準 [ = 和深・三尾川・下露累層 ] のものに含めて一括しておく。 詳しくは第 26 図 [ の左と右の三角ダイアグラム ] に示されている。

[ III.5.2.1 ] 和深累層(および安川累層)

砂岩の発達が不良であることと 分布域が狭いために 試料数が少ない(江住図幅内の9個, 田並図幅内の3個のみ)。 石英 : 35~65 %(48.4 %) [ 以下の [注] 参照 ] , 斜長石 : 14~28 %(17.7 %), カリ長石 : 1~15 %(9.4 %), 岩片 : 4~15 %(8.5 %), 基質 : 5~23 %(12.2 %)である。 上位の三尾川累層の砂岩と比較すると カリ長石が少し少ないが, [ 本図幅の北隣の ] 「栗栖川」図幅地域内でみられた安川累層と打越累層ほどの差はない。

[注]
括弧 "()" の中は平均値を示す。 以下についても同様。

[ III.5.2.2 ] 三尾川累層(および打越累層)

検討した砂岩試料の大半は本累層である(136 試料)。 石英 : 30~67 %(48.9 %), 斜長石 : 11~41 %(16.3 %), カリ長石 : 1~16 %(13.1 %), 岩片 : 2~15 %(9.2 %), 基質 : 5~18 %(9.3 %)である。 [ 本図幅の北隣の ] 栗栖川図幅地域内の 打越累層と比較すると 石英が多く, 岩片がやや少ない。 また, 松根 - 平井断層以南の三尾川累層では 北東側ではやや岩片と長石が多く, 南西側では これらが減り, 石英が多くなる傾向がうかがわれる。

[ III.5.2.3 ] 下露累層(および合川累層)

試料は 39 個で [ 本図幅の南隣の ] 「田並」図幅地域内のものが2個含まれている。 石英 : 31~64 %(48.0 %), 斜長石 : 11~41 %(18.2 %), カリ長石 : 3~15 %(11.2 %), 岩片 : 1~14 %(9.3 %), 基質 : 4~23 %(10.6 %)である。 下露累層内での層準による違いは認められない。

IV. 熊野 くまの 層群および 田辺 たなべ 層群

本図幅地域の東縁部には下部および中部中新統の熊野層群が, 西北隅にはこれと同時代の田辺層群が, いずれも牟婁層群を顕著な傾斜不整合に覆って分布している。 熊野層群は 東の那智勝浦図幅内に広く分布し, 詳しく記述されている(水野, 1957)。 田辺層群も これと同様に 西の周参見図幅および北西の田辺図幅内に広く分布している。 両者は いずれも全層厚 2,000~3,000 m で, 岩相もよく似ていて, 下半部は泥質岩を主とし 上半部は砂質岩を主とする海成層であるが, 一部に夾炭層を伴う。 本地域には いずれも基底部に近い部分が分布するにすぎない。

IV.1 熊野 くまの 層群(Ku1, Ku2)

本図幅の東縁部に 熊野層群の基底部が4つの地域に小規模に分布している。 これらは 水野(1957)の下里砂岩シルト岩部層の下部に相当する。 ここでは 基底礫岩および砂岩からなる Ku1 層と 砂質シルト岩およびシルト岩からなる Ku2 層に区分される。 Ku1 層は [ 図幅地域南東隅から北北西方 5.5 km の ] 立合川付近で急激に岩相変化し, それ以南の図幅東南隅の 風吹山 かぜふきやま [ 281 m ] 付近では 基底礫岩や砂岩は発達が悪くなり, 砂質シルト岩とシルト岩の互層となっている [ 以下の [注] 参照 ][ 図幅地域北東隅から南西方 3.5 km の ] 井谷での柱状図を第 27 図に示す。

[注]
地質図では Ku1 層は基底礫岩および砂岩からなる岩相を示しており, [ 分布の「幅」を北から南へ次第に狭めて ] 南へ薄くなるように表現されているが, 実際には南へ岩相変化すると考えられる。

第 27 図 熊野層群および田辺層群の柱状図。
Columnar sections of the Kumano and Tanabe Groups.

[ 第 27 図に関する注意書き ]
この図には以下の合計3地点の地質柱状図が示されている。
熊野層群 : 井谷(HⅠ)
田辺層群 : 玉伝の北西の谷(AⅠ), 熊谷 [ ← 熊ノ谷 ] の北(AⅡ)

Ku1 層 : 最下部には まれに大礫をも含む基底礫岩層がみられる。 礫はよく円磨されていて ほとんど砂岩からなり, 基質の砂との識別が難しいものもある。 基底礫岩は上位の塊状砂岩へと漸移する。 砂岩層は厚層をなし, 塊状無層理で, まれに成層する。 下部は中粒砂岩からなるが, 上方へ細粒化し 細粒砂岩となる。 本層の厚さは 井谷で 140 m, [ 笠置山の西南西方 5 km 弱の ] 上地の北東で 50~80 m, [ 笠置山の南南西方 2.5 km の ] 大桑で 140 m, 立合川の東で約 30 m, 図幅東南隅の風吹山付近では 本層に相当する岩相はみられず, 砂質シルト岩とシルト岩の互層へと岩相変化している。

Ku2 層 : Ku1 層の細粒砂岩から 上方に次第に細粒化し, Ku2 層の砂質シルト岩へと移化する。 さらに上方に細粒化し, シルト岩となる。 シルト岩層は 20~40 cm の厚さで よく成層しており, 細粒砂岩の薄層をラミナ状に挟む。 まれに数 m の厚さの細粒砂岩層を挟んでいる。 シルト岩からは まれに保存不良の貝化石を産する。 本層の上限は図幅地域ではみられないが, 厚さは 300 m 以上である。

牟婁層群との不整合関係 : 牟婁層群は複雑に褶曲しており, 一般に急傾斜をなす。 これに対して, 熊野層群は 10~30°の傾斜で ゆるやかな褶曲構造をなす。 このように 両者の構造のちがいは明瞭であるが, 牟婁層群が主として泥岩からなり 低角の傾斜をなす地域では, 不整合の確認はそれほど容易でない。 牟婁層群との不整合関係は大桑の南の谷で観察される(第 28 図)。 ここでは, 牟婁層群は走向が N 50°E, 傾斜が 80°N の泥岩で, その上をほぼ東西走向で南へ 10°傾く熊野層群の厚い砂岩層が覆っている。 砂岩層の基底部には 円磨された中礫からなる厚さ 10~15 cm の基底礫岩がみられる。 大桑の東の谷でも不整合関係が確認される。 その他の場所では 不整合面はみられないが, 松根の東の谷, 井谷, [ その南東方の ] 中井谷の東, 立合川などでは 上述のような両層群の関係から 不整合関係が容易に判定される [ 以下の [注] 参照 ]

[注]
[ 後述する「VIII. 応用地質」の項のあと・「IX. 枯木灘海岸の地質」の項の直前に載せた ] 第 40 図に示した那智勝浦図幅西部の熊野層群の分布は 水野(1957)のそれとほぼ一致しているが, [ 小川 こがわ 沿いの ] 椎平 しいだいら および 山手 やまて 付近で異なっている。

第 28 図 牟婁層群と熊野層群の不整合関係を示す露頭。 大桑の南の谷(HⅢ)。
A photograph showing unconformable relation between the Muro and Kumano Groups. The basal pebble bearing conglomerate overlies steeply dipping bedded sandstones of the Muro Group.

IV.2 田辺 たなべ 層群(Tb1, Tb2)

田辺層群は 本図幅の西北隅の日置川の両岸 および [ 城川沿いの 小川 こがわ ] 下村 [ ← 図幅地域北西隅から南方 3.5 km ] の山腹から山頂にかけて ごく小規模に分布し, 牟婁層群を顕著な傾斜不整合に覆っている。 牟婁層群は 走向が東北東 - 西南西で急傾斜の等斜褶曲をなし, これに対して田辺層群は 5~10°とゆるく傾斜することから, 両層群の不整合関係は明瞭である。 このような関係は 玉伝から北西の谷, 熊ノ谷から北へ入る支谷で認められる。 本図幅地域では 不整合面はみられないが, 西に隣接する周参見図幅の 久木 ひさぎ の北東の日置川河岸でよく観察される。 そこでは N 45°E・22°NW の牟婁層群の等量ないし砂質フリッシュの上に, 田辺層群の基底をなす粗粒ないし中粒の砂岩層が N 45°E・6°NW 傾斜で覆っている。 砂岩層中には細礫ないし中礫からなる礫岩層がレンズ状に挟まれている。

本地域の田辺層群は 基底礫岩および砂岩からなる Tb1 層, 砂質シルト岩およびシルト岩からなる Tb2 層に区分される。 代表的な柱状図を [ 先に示した ] 第 27 図に示す。

Tb1 層 : 玉伝から北西への谷では 約 20 m の塊状砂岩からなる。 風化して黄褐色を呈し, ごくまれに平行ラミナが認められる。 基底部は中粒砂岩であるが, 上方へ細粒化し、 また, 成層するようになる。 ここでは礫岩はみられない。 [ 玉伝の南方 3 km 弱の ] 熊ノ谷から北へ入る支谷では 約 40 m の厚さの塊状砂岩からなる。 ここでも礫岩は認められない。

Tb2 層 : Tb1 層の砂岩は上方へ次第に細粒化し, 本層の砂質シルト岩へと移化する。 本層は 5~20 cm の厚さでよく成層し, 下部はやや砂質であるが, 全体としてシルト岩からなる。 まれに細粒砂岩層を挟む。 玉伝の北西の谷では, 本層の最上部に 100 m 以上の厚さの成層した砂岩および塊状砂岩層が挟まれている。

IV.3 熊野層群および田辺層群の砂岩

熊野・田辺両層群の最下部の [ 牟婁層群に対する ] 不整合の直上の砂岩を, それぞれ 10 および4試料について鏡下でモード組成の計測を行なった。 本図幅地域内では 良好な試料を得るのが困難なため, その多くは 近接する地域のものを用いた。 熊野層群については すべて 30~100 cm に成層した細粒砂岩であり, 田辺層群は すべて塊状の細粒~極粗粒砂岩である.

両層群の砂岩検鏡結果は 牟婁層群のそれとともに 第 26 図に示した。 熊野層群の砂岩は, 牟婁層群に比べて 長石がきわめて多く 石英がきわめて少ないものと, 石英がやや少なく 岩片がやや多いもの との2つの集団にわかれる。 いっぽう, 田辺層群は, 牟婁層群に比べて 石英がやや多く, カリ長石が少ない。 両層群の砂岩は 牟婁層群の砂岩とは組成上, 明らかに異なる。

V. 岩脈

古座川沿いおよび海岸沿いに, 熊野酸性火成岩類の活動に関連していると考えられる火成岩岩脈や酸性火砕岩岩脈がみられる。 これらは牟婁層群あるいは熊野層群中に貫入している。 このような岩脈には 古座川に沿って延びる弧状岩脈, および南北方向によく連続する石英斑岩岩脈がある。

V.1 古座川 弧状岩脈 [ Py and Gp ]

[ 図幅地域南東部の ] 古座川の中流の 蔵土 くろず から 一雨 いちぶり にかけて, 西北西 - 東南東方向に 約 500 m の幅で 流紋岩質結晶凝灰岩 [ Py ] と黒雲母花崗斑岩 [ Gp ] からなる岩脈が連続する。 この岩脈は古座川沿いに 東の那智勝浦図幅域にも連続しており, 全体として南に凸の湾曲した円弧の一部をなしている。 水野(1957)および荒牧・羽田(1965)に詳しく記載されているように, 流紋岩質結晶凝灰岩と黒雲母花崗斑岩の2つの部分からなっている。

岩脈と母岩との接触部は 蔵土の南の谷でみられる。 ここでは, 花崗斑岩が南側の牟婁層群の W2 層 [ = 和深累層の上部層 ] と走向 N 80°W, 60~70°北傾斜で接している。 岩脈の大部分を占めるのは より北側に分布する流紋岩質結晶凝灰岩 [ Py ] である。 塊状無層理の凝灰岩で、 新鮮な露頭では暗灰色を呈するが, 風化しやすく, 青緑色からさらに褐色を呈することが多い。 露頭はしばしば数 10 m の高さの大きな崖をなし, また, 尖塔状に浸食から取り残された特異な地形をつくっている(第 29 図)。 ときに 風蝕によると思われる蜂の巣状の風化構造が崖にみられる(第 30 図)。 鏡下の観察では, 凝灰岩の結晶破片は 斜長石・石英・カリ長石(サニディン)と少量の黒雲母からなり, 最大 2.5 mm, 通常は 0.5 mm 前後のものが多い。 淡緑色化した本質レンズ(軽石)がかなり多く含まれている。 基質は緑泥石・珪長質鉱物・不透明鉱物からなり, 火山ガラス起源と考えられる。 基質は量的には少ない。 また, 少量の白雲母やジルコンが認められる。

第 29 図 朝日に映える一枚岩。 流紋岩質凝灰岩で弧状岩脈をなす(HⅤ)。
Ichimai-iwa. Rhyolitic pyroclastic dike exposing along the Koza River.

第 30 図 流紋岩質凝灰岩にみられる 蜂の巣 ハチノス 状の風化構造。 古座川沿いの一雨(HⅤ)。
A curious weathered-structure on the surface of rhyolitc pyroclastic dike along the Koza River

花崗斑岩 [ Gp ] は岩脈の南縁を占めて 細長く分布する。 相瀬 あいせ では 上記の凝灰岩との境界部が観察され, ほぼ垂直である。 両者の貫入の前後関係はわからない。 花崗斑岩は堅硬で暗灰色~灰白色を呈する。 鏡下での観察では, 斑晶は斜長石・石英・カリ長石(サニディン)と少量の黒雲母からなり, 通常は 0.6~3 mm のものが多い。 石基は完晶質・等粒で, 0.03~0.05 mm 程度の斜長石・石英・カリ長石・黒雲母からなる微花崗岩組織を示す。 まれにジルコンが含まれている。

V.2 火砕岩岩脈 [ Py ]

本図幅地域西南部の海岸に沿って, 流紋岩質結晶凝灰岩の小規模な岩脈が牟婁層群に貫入している。 また, 古座川沿いの弧状岩脈の南に位置する [ 峯ノ山の南の ] 水呑大師 みずのみたいし の東や 古座川の上流の西川および下露にも同じ岩質の岩脈がみられる [ ← 地質図では確認できない ]

海岸沿いの岩脈は 東は田並図幅内に位置する江須崎の基部 [ ← 図幅地域南端・東西中央やや西 ] から西へ, 戎島 えびすじま , 高浜, 天鳥 あまどり , 口和深, 白島 しらじま [ ← 図幅地域西端 ] へと, 全体として ほぼ海岸線に平行に西北西 - 東南東にのび, 断続的に分布している。 これらは いくつかの南北性の断層でずれている。 牟婁層群との接触部は戎島(第 31 図), 天鳥および高浜で観察される。 戎島では, 北東側は N 70~80°W, ほぼ垂直で [ 三尾川累層の下部層(M1)の ] 砂質フリッシュと接し, 南西側は N 50°W で南西に 60°傾斜した面と N 80°W でほぼ垂直の面との2つの面で境されている。 天鳥では 泥岩 [ ms ] との境界がみられ, 走向 N 80°W で 70°南へ傾斜した面をなし, この面には擦痕がみられる(第 32 図)。 高浜では N 15°W で ほぼ垂直の すべりを伴う境界面が観察される。 火砕岩岩脈は 中粒ないし極粗粒の石英, カリ長石および斜長石の結晶破片を多く含む凝灰岩で, 有色鉱物としては 黒雲母やザクロ石が含まれている。 白島では 結晶質凝灰岩に大規模な流状構造がみられる。 戎島, 天鳥, 口和深では 粗粒~極粗粒の凝灰岩中に泥岩, 砂岩あるいはフリッシュの大小の角礫が多量に含まれる含角礫凝灰岩がみられる。 含まれる角礫はほとんど変質をうけていない(第 32 図)。 戎島では 粗粒の凝灰岩, 含角礫凝灰岩のほかに 細粒の凝灰岩がみられる。 細粒凝灰岩の中には 緑色の小レンズが平行にのびているのが観察される。 戎島では 岩相の異なる凝灰岩が 同心円状に配列しており, 中心部から外側へ向かって 細粒凝灰岩, 中粒凝灰岩, 含角礫凝灰岩が分布している(第 31 図)。

第 31 図 戎島(CⅥ)の地質図。 酸性火砕岩岩脈の分布を示す。
The geologic map of Ebisu-jima. The Muro Group are intruded by acid pyroclastic dike which is forming dome-like structure.

[ 第 31 図に関する注意書き ]
地質図の凡例に関する記載は省略する。

第 32 図 BⅥ [ ← 天鳥 or 高浜のどちらか ] の酸性火砕岩岩脈。
写真下 : 三尾川累層の M2 層 [ = 中部層 ] の泥岩 [ ms ? ] との接触部が観察される。
写真上 : 牟婁層群の砂岩や互層のブロックを多く含む部分。
Acid pyroclastic dike intruding into the Mitogawa Formation (M2).
right [ ← lower photograph ] : A contact plane between M2 and dike,
left [ ← upper photograph ] : Acid pyroclastic dike containing abundant blocks of sandstone and alternation.

水呑大師の東や古座川の上流域にみられる小岩脈 [ ← 地質図上では確認できない ] も 主として中~粗粒の石英, 斜長石, カリ長石の結晶破片の多い結晶質凝灰岩であり, 砂岩や泥岩の角礫を含んでいる。

海岸および上記地域にみられる岩脈は 肉眼的にも, また岩質的にも 古座川弧状岩脈をなす凝灰岩によく似ている。 さらに, [ 本図幅の北東隣の新宮図幅地域内などに分布する ] 熊野酸性火成岩体の本体を構成する凝灰岩の大部分も これらと同様の凝灰岩からなっている(荒牧・羽田, 1965)。 本図幅地域内のこれらの岩脈は 熊野酸性火成岩類の活動に密接に伴ったものであることは明らかで, 露出する規模は小さいが, 古座川弧状岩脈の外側に さらに二重の弧をなすものと推定される。

V.3 石英斑岩岩脈 [ Qp ]

図幅地域の東部の 一雨の北から大桑周辺を経て さらに笠置山の北に至る, 北北西 - 南南東に雁行状にのびる幅 1~20 m の石英斑岩の岩脈群がみられる。 この岩脈群の南への延長方向には 那智図幅(水野, 1957)の文象斑岩岩脈, さらに串本図幅(広川・水野, 1965)の石英安山岩岩脈がある。 さらに 北への延長には 栗栖川図幅(鈴木ほか, 1979)の「八丁涸漉変質帯」がみられる。

これらの岩脈は 白~灰白色で 全体として強く変質している。 斑状組織を呈し, 斑晶としては自形の斜長石と半自形の石英, 自形のアルカリ長石および緑泥石化した苦鉄質鉱物の仮像が認められる。 長石は強く変質していて セリサイトやカオリンなどが生じている。 石基は球顆状を示し, 石英や長石, 緑泥岩および少量のくさび石などからなる。 数 10 cm の幅の より細粒な周縁相が認められる。

V.4 変質帯

図幅東北隅の 親谷川 [ ← 大屋谷 ] 周辺, 西部の城川沿いなどでは 砂岩が著しく白色化し 硬化している。 泥岩の一部も硬化し 白色化している。 鏡下の観察では 二次的に形成された石英や緑泥石が認められる。 同様の変質帯は北の栗栖川図幅地域でもみられ, 「八丁涸漉変質帯」(原田ほか(1967); 鈴木ほか(1979))とよばれ, 北北西 - 南南東方向にのびた明瞭な帯をなしている。 本図幅地域では 城川沿いでは南北性ののびが認められるが, 他の地域では 方向性は明らかでない。 前節にのべたように 八丁涸漉変質帯は石英斑岩岩脈と密接に関連していることから, これらの変質帯も地下に伏在する同様な岩脈の存在を予想させる。

VI. 第四系

本図幅地域には 広い段丘面や沖積平野はみられず, 見老津以東の海岸に海岸段丘と沖積平地が, また, 古座川やその支流, 日置川沿いなどに河岸段丘と沖積平地がみられるにすぎない。

海岸段丘は 海抜 30~50 m の平担面を形成し(第 33 図), 厚さ 2~5 m の 礫を主とし, 砂および泥からなる堆積層をもつ(第 34 図)。 河岸段丘は 古座川沿いの三尾川, 松の前, 下露から西川にかけて, 日置川沿いの 玉伝 たまで 周辺と市鹿野, 佐本川沿いの なか [ ← 佐本中 さもとなか ; 洞山の北北西方 2 km 弱 ] 周辺に発達する。 これらの地域では 比高 10 m 程度および 20~50 m の2段の平担面が認められ, 後者がより広い面をなしている。 堆積物は 厚さ 2~5 m で, 礫, 砂および泥からなる。 この他にも小規模な段丘堆積層がみられるところがある。 [ 洞山の南東方 4 km の ] 比曽原では 河床からの高さ 7 m のところに堆積層がみられ, 厚さ 30~50 cm の火山灰層 [ 以下の [注] 参照 ] が挟まれている(第 35 図)。

[注]
以下のデータにより [ 比曽原の火山灰層は ] 21,000~23,000 年前の姶良火山による AT 火山灰(町田・新井, 1976)と判定された(新井房夫による)。
Maximum Grain Size : 0.7 mm
Heavy Mineral Composition : Hypersthene, Augite, Hornblende, Magnetite
Volcanic Glass : Bubble wall type, Transparent
Volcanic Glass Refractive Index [ γ ] : Range = 1.4985~1.5005, Mode = 1.500±
Hypersthene γ(glass 付): Mode = 1.732±

第 33 図 枯木灘海岸にみられる海岸段丘。 見老津付近(CⅥ)。
A view of coastal terrace at Mirozu.

第 34 図 段丘礫層。 [ 図幅地域南端の和深の西方の ] 雨島の西の道路沿い(EⅥ)。
Coastal terrace deposit at Ameshima

第 35 図 海岸段丘礫層に挟まれる火山灰層。 比曽原の奥(EⅤ)。
A layer of volcanic ash intercalated in river terrace deposit at Hisohara.

[ 第 35 図に関する注意書き ]
ここには露頭写真と 以下の堆積層の説明が付いた そのスケッチが示されている。
腐植土 [ 露頭の最上部の 30 cm ? 程度 ]
亜角礫(大礫~中礫)
細粒砂
葉理の発達した細粒火山灰(黄褐色 ; 厚さ 10~15 cm)
塊状・中粒の火山灰(炭質物を含む ; 黄褐色 ; 厚さ 20~30 cm)
シルト質火山灰バンド(オレンヂ色)
細礫を含む中粒砂 [ 露頭の最下部の 30 cm ? 以上 ]

沖積地は 古座川や日置川沿い, および海岸沿いのいくつかの場所でみられる。 いずれも分布はせまい。 堆積物は厚さ 3~7 m で, 礫, 砂および泥からなる。

VII. 地質構造

本図幅地域は 中央部を北東 - 南西方向にのびる松根 - 平井断層によって, 大きく2つのブロックに分けられる。 北のブロックは [ 本図幅の ] 北の栗栖川図幅地域(鈴木ほか, 1979)にまで連続する合川複向斜の南翼を構成し, その東部には中規模の褶曲構造が多数存在する。 南のブロックは佐本断層, 安指 あざし 断層, 古座川弧状岩脈に伴う 七川 しちかわ 断層や海岸地域の東西性の断層などによって さらに多くの小ブロックに分けられる。 これらのブロックでは ブロックごとに地質構造の特徴 -- 特に褶曲構造の特徴や規模 -- が 若干異なっている(鈴木, 1975)。 周参見背斜, 和深背斜および安指向斜は南ブロックの構造を支配する第1級の褶曲構造である。

熊野層群・田辺層群は顕著な傾斜不整合関係で牟婁層群を覆い, 安定した構造を示している。 古座川弧状岩脈を境にして その内(東)側は外 [ 西 ] 側に対して最大で約 1,000 m 落ちこんでいる。

本図幅地域の地質構造図と断面図を第 36 図に示す。

第 36 図 江住図幅および田並図幅地域の地質構造図および地質断面図。
Tectonic map and cross sections of the Esumi and Tanami quadrangle districts.

[ 第 36 図に関する注意書き ]
地質構造図には4枚の地質断面図の位置を示す線も描かれている。
地質構造図や地質断面図に描かれた地質の凡例の記載の説明は省略する。

VII.1 牟婁層群の地質構造

本図幅地域の牟婁層群の地質構造については 紀州四万十帯団体研究グループ(1972・1973・1979), 鈴木(1975), 立石(1976)にのべられている。 これらを参考にして 主な断層と褶曲構造の特徴についてのべる。

松根 まつね - 平井 ひらい 断層 : 中番から平井, 添野川の上流, 大附 おおつけ を通り 周参見にのびる北東 - 南西の高角北傾斜の逆断層である。 断層あるいは断層破砕帯は 平井, 添野川の上流, 宮城谷の奥の林道, 上地の北東で観察される。 断層の両側の地層の分布状態からみると 断層による落差は北東ほど大きい。 破砕帯の幅も北東ほど広い。 南西の周参見付近では断層の落差はほとんどないと推定される。

安指 あざし 断層 : 田並図幅内の安指の南の海岸から北東にのび, 南平 なべら を通り 洞尾 うつお にのびる推定断層である。 この断層を境として牟婁層群の下部層の和深累層と上部層の下露累層が接しており, 地層の厚さから考えると 断層による落差は非常に大きいと推定される。 牟婁帯では第1級の断層であるが, その実態はあまり明らかでない。

佐本 さもと 断層 : 佐本川にそって福井谷の北から佐本を通り 住木谷 すむぎだに にのびる。 佐本の北と住木谷で破砕帯がみられる。 周参見背斜と和深背斜の間の向斜部が切れて逆断層となったものと考えられる。 佐本から北東へ, 中村を経て 西川へのびる断層は 佐本断層の分枝である。 [ 住木谷の西南西方 1.5 km の ] 雫の滝 しずくのたに から南へ [ すさみ町の ] 和深川の上流 [ ← 見老津の西北西方 2.5 km ] にのびる断層は 佐本断層の延長と考えられる。

古座川弧状岩脈に伴う断層群 : 古座川弧状岩脈の西端部から数本の断層が北ないし北西にのびている。 そのうち最大のものを 七川 しちかわ 断層とよぶ。 これらの断層沿いには断層面や破砕帯がよく観察される。 [ 七川断層の北端付近の ] 上地 かみじ [ 七川貯水池の ? ] 対岸の山腹には 破砕帯に沿って地すべりが発生している。 三尾川から 真砂 まなご にかけての古座川沿いでは いくつかの場所で断層に伴う鉱泉の湧出がみられる。 地質図および [ 後に示す ] 第 40 図(那智勝浦図幅の西部の地質図)から明らかなように, 古座川弧状岩脈を境として 熊野層群の基底の不整合面は大きく東西にずれている。 水平方向のずれがないとして計算すると, 基底付近の熊野層群の地質構造から 岩脈の内側 [ = 東側 ] が相対的に [ 外側(= 西側)に対して ] 約 1,000 m 陥没したと推定される。

海岸地域の東西性断層 : 口和深から和深川に沿って [ 見老津の北西方の ] 長井の北にのび, 長井で南北性の断層によって南にずれ, さらに見老津から江住を経て 里野へのびる東西方向の断層である。 この両側で地層の走向傾斜が大きく異なることや 地層の連続性が断れることから 断層の存在が推定される。 断層以南では, とくに見老津から江住にかけて, 南北方向の構造が顕著である。

合川 こがわ 複向斜 : 図幅地域の西北部に 北東 - 南西方向にのびる3本の等斜褶曲が存在し, 合川複向斜を形成している。 いずれの褶曲においても 軸面は 40~60°北に傾斜している。 市鹿野以東では 北側の2つの褶曲構造は 軸面が切れて断層になっている。 これら3つの褶曲構造は [ 本図幅の ] 北の栗栖川図幅地域に連続し, 北から 大峯 おおみね 向斜, 熊野川 ゆやがわ 背斜, 八丁坂 はっちょうざか 向斜とよばれる。 [ 図幅地域北西隅から南南東方 4 km の ] 上村付近および [ 図幅地域北西隅から南方 6 km 弱の ] コエ峠の東部には 規模の小さい褶曲構造がみられる(第 37 図)。

第 37 図 合川累層の K5 層にみられる小褶曲。 上村の道路沿い(AⅡ)。
A minor fold found in the Kōgawa Formation (K5).

将軍川 しょうぐんがわ 向斜および将軍川背斜 : 合川複向斜の南翼に発達する褶曲群のうち最大の褶曲構造で, 将軍川に沿って 竹垣内 たけがいと から将軍山の南にまで, 断層でずれながら 5 km 以上にわたって追跡される。 両者とも軸面はほぼ垂直で, 両翼とも中~高角に傾斜する対称褶曲である。

大森山 おおもりやま 向斜 : 将軍川の源流部の大森山から西北西にのびる向斜構造。 両翼が 30~55°傾斜する開いた褶曲である。

玉の谷 たまのだに 向斜 : [ 図幅地域北端付近の ] 平井川の上流に東西に 5 km 以上のびる向斜構造で, 西端は [ 本図幅の北隣の ] 栗栖川図幅内に達する。 軸面は 西部ではほぼ垂直であるが, 東へゆくにつれて北傾斜となり, [ 平井川の上流の ] 玉の谷では北翼が逆転した非対称褶曲となる。

周参見 すさみ 背斜 : [ 図幅地域南西部の ] 周参見から周参見川沿いに北東にのび, 住木谷 すむぎだに 西栗垣内 にしくりがいと を経て 西野川 [ ← 西野谷川 ] の上流まで 15 km 以上も連続する大きな背斜構造である。 周参見付近では軸面が垂直の対称褶曲であるが, 北東にゆくにつれ次第に非対称となり, 西栗垣内以東では南翼が逆転している。 背斜構造をなす [ 三尾川累層の ] M2 層 [ = 中部層 ] には多くの小褶曲がみられ, とくに佐本の北の地域でよく発達している。 [ 周参見の東南東方 1.5 km の ] 曲利 まがり の背斜軸部では 数 cm に成層したフリッシュ中に シュブロン型の小褶曲 [ = 軸部で折れ曲がり翼部が平坦な小褶曲 ] が発達している(第 38 図)。

第 38 図 周参見背斜の軸部付近に見られる小褶曲。 曲利の南の道路沿い(AⅤ)。
Minor folds found at axial part of the Susami Anticline.

添野川 そえのがわ 背斜 : 添野川から佐本の北方にかけての地域は 周囲を断層で囲まれたブロックをなしている。 このブロック内には高角 北傾斜の逆転層が広く分布している。 この背斜は ブロックの西北縁に沿って北東 - 南西方向にのびる軸面北傾斜の等斜背斜である。

和深 わぶか 背斜 : 牟婁帯の中の第1級の背斜構造で, 和深から北東に 南平 なべら の西にまでのび, 安指断層によって断たれている。 南翼の分布は狭いが, 北翼は佐本断層に至るまでの広い地域を占めている。 両翼ともゆるく傾斜する開いた対称背斜構造であり, 背斜軸部はゆるくうねった構造をなしている。 和深では背斜軸に沿って東落ちの断層がみられる。

安指 あざし 向斜 : 田並図幅内の安指の海岸から北東に 田子郷 たこごう を経て [ 峯ノ山の南南西方 1.5 km の ] 姥山 うばやま 付近までのびる向斜構造である。 両翼ともゆるく傾斜した 開いた対称褶曲である。 北東方向に次第に両翼の傾斜はゆるくなり, 姥山以北ではゆるい盆状構造に移化している。

海岸地域の褶曲構造 : 海岸地域の東西性断層より南のブロックには, 規模もタイプも異なるさまざまな褶曲構造がみられる。 天鳥 あまどり 向斜はその中で最大の構造で, 軸面が 30°北に傾斜する等斜褶曲である。 見老津と里野の間にみられる褶曲の多くは スランプ褶曲 [ =(海底)地すべりでできた褶曲 ] である可能性が強い。 天鳥向斜の北翼の [ 三尾川累層の ] M3 層 [ = 上部層 ] のフリッシュ中には 典型的なスランプ褶曲がよく発達している(第 39 図・ [ 巻末の ] 第 Ⅲ 図版)。

第 39 図 天鳥(BⅥ)の露頭(M3 層)の地質図( [ 巻末の ] 第 Ⅲ 図版の 1 参照)。
The geologic map of the area "Cliff Phoenix".

[ 第 39 図に関する注意書き ]
この地質図の凡例の記載は省略する。

VII.2 熊野層群および田辺層群の地質構造

熊野層群および田辺層群は 本図幅地域内では 小面積を占めて分布するにすぎない。 熊野層群は 分布する地域ごとにいくらか走向傾斜を異にしている。 松根の東では東南東ないし東北東方向に 10~30°傾斜しており, 東西性の断層群で切られている。 大桑の南では東に開いたごくゆるい半盆状構造をなし, 立会川 [ ← 立合川 たちあいがわ ? ] 以南では南南西ないし南南東方向へ 15~25°傾斜している。 田辺層群は安定した構造を示し, 北ないし北西方向に 5~25°傾斜している。

VIII. 応用地質

本図幅地域には 有用な鉱物資源や石材はほとんど産しない。 [ 本図幅の北東隣の新宮図幅地域内に分布する ] 熊野酸性火成岩類の活動と関連した岩脈にそって温泉がいくつかの地点で湧出している。 石材としては [ 太平洋に面した ] 天鳥 あまどり (BⅥ)に砕石場があり, 土木工事用のバラスをとっている。 採取している岩石は牟婁層群 三尾川累層の M3 層 [ = 上部層 ] のフリッシュと塊状砂岩である。 その他, 古座川や日置川の河原では 砂利の採取が小規模に行なわれている。

ここでは, かつて採掘されていた鉱山と温泉について述べる。

VIII.1 鉱床

本図幅地域には現在 稼行している鉱山はないが, 過去にはごく小規模ながら稼行されていた金属鉱山がいくつかある。

蔵土 くろず 鉱山 : 古座川町 蔵土にあり, 和深累層の W2 層 [ = 上部層 ] の泥岩中に存在する走向 N 10~20°W, 傾斜 60~70°E の割れ目を充てんした鉱床である。 鉱石は黄鉄鉱・黄銅鉱よりなり, 少量の磁硫鉄鉱を伴う。 明治 35 年には銅鉱石 約 220 トンが採掘された記録がある(平林, 1956)。

久留美 くるみ 鉱山 : 古座川の支流の久留美谷を約 1 km 入った地点にあり, 三尾川累層の M3 層 [ = 上部層 ] の泥岩中の走向 N 10°W, 傾斜 80°E の割れ目充てん鉱床で, 黄銅鉱・黄鉄鉱・磁硫鉄鉱を産した(平林, 1956)。

宮の平 みやのたいら 鉱山 : 古座川町 宮の平 [ 以下の [注] 参照 ] に位置し, 三尾川累層の M1 層 [ = 下部層 ] の砂岩および泥岩中の割れ目充てん鉱床(走向 N 30°W, 傾斜 70°E)で, 含銅磁硫鉄鉱を少量産出した(平林, 1956)。

[注]
古座川町には地名「宮の平」が2カ所ある。
西川 宮の平 : 図幅地域北東隅から南西方 5 km(地質図上に地名の記載あり)
長追 宮の平 : 図幅地域南東隅から北西方 10 km 弱の「松の前」の北西方 500 m
地質図上に地名の記載がないが「休止鉱山」の記号があるので, 宮の平鉱山は「長追 宮の平」にあった と思われる。 なお, 第 3 図(牟婁層群の地質柱状図の位置図)によると, 第 4 図(牟婁層群の地質柱状図)の地点 ㉙(宮ノ平~平野)の「宮ノ平」は 「西川 宮の平」である。

下露 しもつゆ 鉱山 : 古座川町 下露の [ 北西方 1 km 弱の ] 五郎谷にあり, 下露累層の S5 層の泥岩中に胚胎する 走向 N 50°W, 傾斜 45°N の磁硫鉄鉱床である。 この鉱床はかつてベンガラ原料として稼行されたこともあるといわれている(平林, 1956)。

東良浦 [ 読み方不明 ; ひがしらうら ? ] 鉱山 : 串本町 雨島 [ ← 図幅地域南端の和深の西方 ] の北の小さな谷の奥に位置する。 鉱床は和深累層の W2 層 [ = 上部層 ] の砂質泥岩中に胚胎した割れ目充てん鉱床で, その走向は N 10~25°E, 傾斜は 65~80°W である。 鉱石は磁硫鉄鉱・黄銅鉱・黄鉄鉱からなり, その平均品位は Fe : 45 %, S : 26 %, Cu : 3 % であり, 小規模に稼行された(沢口ほか, 1959)。

この他にも, 三尾川の支流の 南平 なべら 川に磁硫鉄鉱・黄鉄鉱からなる割れ目(走向 NS~N 20°E, 傾斜 60~70°E)充てん鉱床がある(武市ほか, 1956)。 また, 将軍川の上流の将軍川背斜の軸部およびその南の 円谷 えんだに にも銅鉱床がある。 これらの鉱床のうち 下露鉱山と将軍川の鉱床を除けば いずれもほぼ NS 走向で, 熊野酸性火成岩類に関連した石英斑岩岩脈 [ Qp ] の方向とよく一致している。 これらの鉱床は 石英斑岩岩脈の活動に伴う鉱化作用によるものと考えられる。

VIII.2 温泉

海岸沿いに 天鳥 あまどり (BⅥ), 江住(DⅥ)の温泉があり, 古座川の中流の七川ダム湖畔に湯の花温泉(GⅢ)がある。 海岸沿いの2つの温泉は ボーリングで酸性火砕岩岩脈に泉源を求め, ポンプ揚水している。 また, 湯の花温泉も古座川沿いの弧状岩脈の延長部に位置し, ボーリングでこの岩脈に泉源を求めている。 弧状岩脈に伴う断層に沿っては, 三尾川から 真砂 まなご にかけての古座川沿い および [ その西方の ] 福井谷のいくつかの地点で鉱泉の湧出がみられる。


第 40 図 那智勝浦図幅西部地域の地質図。
The geologic map of the western part of the Nachi-katuura quadrangle.

第 41 図 田並図幅地域の地質図。
The geologic map of the Tanami quadrangle.

[ 第 40・41 に関する注意書き ]
これらの地質図の凡例に関する記載は省略する。

IX. 枯木灘 かれきなだ 海岸の地質

牟婁層群は紀伊半島の南部に広い面積を占めて分布し, 東では熊野層群, 西では田辺層群によって覆われている。 南紀の海岸地帯は枯木灘海岸とよばれているが, 日置川河口( [ 本図幅の西隣の ] 周参見図幅)から田の崎( [ 本図幅の南隣の ] 田並図幅)にかけての波食台や海食崖に 牟婁層群がみごとに露出している。 「紀州四万十帯団研グループ」はこの海岸地域の 5,000 分の1地質図を作成し, それにもとづいて堆積学的, 構造地質学的, 古生物学的研究を行なってきた(紀洲四万十帯団研グループ, 1969・1970・1973・1976・1979)。 枯木灘海岸地域は 地向斜堆積層の研究にとって重要な場所であるので, 本図幅および田並図幅地域の海岸線沿いの地質図および断面図を第 44 図 A~J に示す。 これらの地質図は紀州四万十帯団体研究グループ(1969・1973・1979)による地質図をもとに, その後の再検討の結果を加えたものである [ 以下の [注] 参照 ] 。 地質図には 紀州四万十帯団体研究グループ(1970・1976・1979)による 古流向と礫岩の礫種組成の検討結果も示されている。 海岸地域の模式的断面図を第 42 図に, 地質図の凡例を第 43 図に示す。

[注]
[ 第 44 図の ] I と J の地域の一部については甲藤ら(1975)の報告があり, 以下に述べるものとは異なった見解が示されている。

第 42 図 枯木灘海岸の地質概念図および模式断面図。
The index map of the geology of the Kareki-nada Sea-Coast and its generalized geologic cross-section.

[ 第 42 図に関する注意書き ]
第 42 図の模式断面図では第 43 図に示されている凡例を使っている。

第 43 図 枯木灘海岸の地質(第 44 図)の凡例 [ および 礫岩の礫種組成 ]
Legend for Fig. 44 [ and the composition of gravels of conglomerate ] .

[ 第 43 図に関する注意書き ]
礫岩の礫種組成では以下の8種類の礫種の構成(個数の量比)が円グラフで示されている。
1 : 砂岩(sandstone), 2 : オーソコーツァイト(orthoquartzite), 3 : 頁岩(shale),
4 : チャート(chert), 5 : 石灰岩(limestone), 6 : 花崗質岩(granitic rocks),
7 : 酸性火山岩類(acid volcanic rocks), 8 : その他(other rocks)
円グラフの下に記した数値はオーソコーツァイトの量比(Oq %)である( The numeral under the circls give the Oq % -- percentage of orthoquartzite gravels -- )。

第 44 図 A~J 枯木灘海岸の地質 [ 合計 10 地域それぞれの平面図と断面図 ]
The geology of the Kareki-nada Sea-Coast in the Kii Peninsula [ Plane and cross-section maps of each of the 10 regions ] .

[ 第 44 図 A~J に関する注意書き ]
A~J の合計 10 地域のおおよその位置(西端~東端)は以下の通りである。
A : 大串~口和深の和深川の河口, B : 和深崎~天鳥, C : 天鳥の東方の採石場~ 陸ノ黒島 おかのくろしま
D : 陸ノ黒島の東方~見老津の南方, E : 見老津の南方~江住の西方, F : 江住~里野の東方,
G : 雨島~和深, H : 和深~安指断層の南方, I : 安指向斜の北方~田子川の河口,
J : 江田~田ノ崎 [ J の地質図は東西の幅が狭いので 江田と田ノ崎は北端と南端 ]
A および C~J のそれぞれに, 付図に示された実測地点での礫種構成を示す円グラフが挿入されている。
断面図の下の矢印は層序的上位を示す( The arrows under each section indicate stratigraphic top respectively )。

以下に 枯木灘海岸の牟婁層群の層序と構造の概要と, A~J の [ 地域の ] ブロックごとの地質の特徴についてのべる。

層序の概要 : 海岸線沿いには和深累層(W1, W2), 三尾川累層(M1, M2,M3)および下露累層(S2, S3, S4, S5)が露出する。

W1 層 [ = 和深累層の下層部 ] は和深背斜の軸部に小面積を占めて分布するにすぎず, 砂質フリッシュと塊状砂岩を主とし, 等量フリッシュと泥質フリッシュを伴う。 層厚は 230 m 以上である。 W2 層 [ = 和深累層の上層部 ] は和深背斜の両翼に比較的広く分布し, さらに [ 江住の南西方の ] 御待崎 おまちざき 背斜の両翼に 断層で繰り返しながら小面積を占めて露出する。 W2 層は泥質フリッシュと成層泥岩からなり, 中部に塊状砂岩ないし砂質フリッシュを挟む。 御待崎背斜の軸部と見老津の W2 層は硬質の珪質泥岩で, 見老津では貝化石を産する。 層厚は 150~500 m である。

M1 層 [ = 三尾川累層の下部層 ] 陸の黒島 おかのくろしま と里野の間の地域に広く分布し, W2 層に整合に重なる。 M1 層の下部は砂質フリッシュを主とし, 中部は厚層砂岩を主とし, 砂質フリッシュと泥質フリッシュ, まれに礫岩を伴う。 上部は塊状砂岩とフリッシュを主とし, ときに礫岩を挟む。 M1 層はしばしばスランプ層をなしている。 厚さは 800 m である。 M2 層 [ = 三尾川累層の中部層 ] は図幅西端部の大串と陸の黒島周辺および和深崎に狭い範囲を占めて露出する。 泥質フリッシュおよび成層泥岩からなり, 厚さは 50~200 m である。 陸の黒島, 沖の黒島では泥岩中に砂岩の角礫を多量に含む含角礫泥岩である。 M3 層 [ = 三尾川累層の上部層 ] は M3a および M3b 層に細分される。 M3a 層は厚い塊状粗粒砂岩で, しばしば礫岩をはさむ。 M3b 層は下位より砂質フリッシュ, 等量フリッシュ, 泥質フリッシュの順に重なり, 最上部は成層泥岩となる。 M3a および M3b 層は全体として顕著な上方細粒化を示す。 層厚は 800 m 以上である。

下露累層は安指断層以東に分布する。 S1 層を欠き, S2~5 層が分布する。 S2 層は安指向斜の両翼とナゴ島背斜の軸部に分布し, 礫岩, 含礫泥岩, 砂岩およびフリッシュからなる。 S3 層はヒラ島から田の崎にかけての地域および安指向斜の軸部に分布し, 泥質フリッシュ, 成層泥岩および等量フリッシュを主とし, 砂質フリッシュおよび砂岩を伴う。 S3 層には ヒラ島以東で顕著なスランプ構造が発達する。 S4 層は 中平見 なかひらみ 付近にのみ分布する。 本層は主として砂岩, ときに泥岩, 礫岩およびフリッシュの多くの角礫を無秩序に含む含角礫泥岩からなり, 波食台におけるその特異な浸食形態から「サラシ首層」とよばれている。 上半部は 1~2 m に成層し, 含有する礫の径が小さい含角礫泥岩からなる。 S5 層は 田子 たこ 付近に小面積を占めて分布するにすぎない。 弱く成層した泥岩ないしシルト岩からなり, 含角礫泥岩を伴っている。 田子崎 たごさき の砂質シルト岩からは 現地性の貝化石を比較的多く産する。

地質構造の概要 : 長井 [ ← 見老津の北西方 500 m ] 以西と里野 [ ← 見老津の東方 4 km ] 以東の地域では 一般走向は北東 - 南西で 内陸部の牟婁層群と同じであるが, 長井~里野の間の地域では 一般走向が南北方向であり, 他の地域と大きく異なっている。 長井以西の地域では天鳥向斜がもっとも大きな褶曲構造で, その北翼は 図幅西端の周参見背斜の南翼に相当する。 長井と里野の間の地域は褶曲構造からみても特異である。 [ 長井と里野の間の江住の南西方の ] 御待崎 おまちざき 以東には低角西傾斜の逆転層があり, 以西では高角東傾斜の逆転層が広く分布する。 したがって, 御待崎背斜は形態的には扇状褶曲と解される [ 以下の [注] 参照 ][ 江住の西南西方 1.5 km の ] 江須崎の西には顕著なスランプ地帯が広く露出している。 里野以東の構造は単純で, ゆるく開いた和深背斜と安指向斜からなる。 ヒラ島以東には大小のスランプ褶曲がみられる。 ナゴ島背斜, 野𣷓 のうなぎ 向斜も中規模のスランプ褶曲と考えられる。

[注]
このような流動褶曲は牟婁帯の他の地域にはみられない。 [ 形態が扇状褶曲的な ] 御待崎背斜は大規模なスランプ褶曲と考えられる。

つぎに, 第 44 図 A~J にしたがって 各 [ 地域の ] ブロックごとの地質の特徴について簡単にのべる。

A 地域 : 大串の海岸には M2 層がスランプ層をなして分布し, その南の 白島 しらしま 対岸から口和深にかけて M3 層が顕著な上方細粒化相を示して分布する。 全体は周参見背斜の南翼に位置する。 白島付近の礫岩層 [ 地点 ㉒ ] にはオーソコォーツァイト礫が 10 % 程度含まれる。 白島の岩脈は細粒~粗粒の凝灰岩からなり, 規模の大きい複雑な流状構造が発達している。

B 地域 : 口和深の北方の断層で切られていて, ふたたび M3a 層が転倒した向斜構造をなして露出する。 この向斜構造の南翼に断層があり, その南に M2 層が断層にはさまれて分布する。 スサミリッチランドより東は M3a 層および M3b 層が広く分布し, 天鳥向斜の北翼を構成している。 地層はリッチランド付近では低角南傾斜の正順層であるが, 向斜軸に近づくにつれて高角となり, リッチランドの東で逆転して 高角北傾斜となり, さらに向斜軸付近では低角北傾斜の逆転層となり, その傾斜が著しく変化する。 天鳥向斜の軸面は 30~50°北に傾斜する。 北翼の M3b 層の砂質フリッシュには数層準にスランプ褶曲帯がみられる。 もっとも典型的なスランプ褶曲が天鳥露頭で見られる( [ 巻末の ] 第 Ⅲ 図版)。 このスランプ褶曲の軸部には フリッシュの砂質部が放射状の砂岩岩脈となって泥質部を貫いている( [ 巻末の ] 第 Ⅲ 図版の 2)。 スランプ褶曲から復元された古斜面は北傾斜である。 向斜軸部の成層泥岩や泥質フリッシュにも小規模なスランプ褶曲がみられる。 スサミリッチランド付近の砂岩には南からの古流向がみられる。 いっぽう, その南の砂質フリッシュには北東からの軸流を示す古流向が多数存在する。 また, この付近のフリッシュには Terebellina [ = フサゴカイ科の海産動物 ] などの生痕が多産する。 和深崎の火砕岩岩脈には多量の砂岩と泥岩の中礫~巨礫からなる角礫が含まれ, ときには径 10 m に達するフリッシュのブロックがとり込まれている。

C 地域 : M2, M3a, M3b 層が分布する。 断層や褶曲によって複雑になっているが, 全体としてみると 地層はゆるい北傾斜を示し, 天鳥向斜の南翼を構成している。 M2 層は東端部と 陸の黒島 おかのくろしま 沖の黒島 おきのくろしま に分布し, 泥質フリッシュと成層泥岩を主とする。 泥岩中には [ 有孔虫の ] Cyclammina sp. を産する。 陸の黒島と沖の黒島の M2 層には 大小の砂岩やフリッシュのブロックが多量に含まれる。 高浜の南の断層で囲まれたブロックに分布する泥質フリッシュは, 岩相からみて M3b 層と推定される。 [ C 地域の西端の ] 天鳥の砕石場のフリッシュ層には典型的なスランプ褶曲がみられる。 高浜の砂質フリッシュには流痕が多くみられ, 北東からの軸流を示している。 いっぽう, [ C 地域の ] 東端部の M2 の砂質フリッシュには南東からの側方流が少数ながら存在する。 [ C 地域の西端の ] 天鳥の海岸の火砕岩岩脈には 砂岩と泥質フリッシュの巨礫が多く含まれている。 いっぽう, [ 高浜の南方の ] 鳥糞島 とりくそじま の岩脈は縁辺部は流状構造をもつ細粒の凝灰岩からなり, 内側は中礫大の泥岩片を多量に含む粗粒の塊状凝灰岩からなる。 砂岩や泥岩のブロックは少ない。

D 地域 : 見老津港の南の塊状珪質泥岩からなる W2 層を除けば, すべて M1 層が分布する。 W2 層は断層で囲まれたブロックをなしていて, 貝化石を産する。 M1 層は 長井付近を境として 東西で構造が異なる。 西の地域では東西走向で整然としている。 長井付近の逆転層の構造的位置はよくわからない。 長井より東の地域の M2 層はスランプ層をなしている。 見老津駅付近では砂岩のレンズ化が著しく, それより南ではスランプ褶曲が発達する。 戎島 えびすじま には火砕岩岩脈がみられる(第 31 図)。 その南半部は同心円状の流理構造をもつ凝灰岩からなり, 中心から外側へ 細粒凝灰岩, 中粒凝灰岩, 中~大礫の角礫を含む凝灰岩の順に配列している。 北半部は黒色泥岩や砂岩の巨礫を含む含角礫凝灰岩で, 最大径 70 m に達する泥岩のブロックを含んでいる。 この北の小岩礁には淡緑色で縞状の流状構造をもつ極細粒凝灰岩が露出する。

E 地域 : W2 層は [ E 地域の東部の ] 御待崎背斜の軸部に分布し, [ その西方の ] 江須之川と [ 東方の ] 江住の西部に断層でくり返し露出するほかに, [ E 地域の西部の ] 見老津の南の断層ブロックにもみられる。 以上の地域以外には M1 層が広く分布する。 地層の一般走向は南北である。 御待崎背斜の西では 地層は高角東傾斜で逆転しており, 東では高角西傾斜で逆転している。 江須崎に分布する M1 層の下部および中部は整然としているが, それより西の M2 層の上部は大規模なスランプ帯をなしている。 ここでは, 泥質フリッシュ中に砂岩や砂質フリッシュの大きなレンズやブロックが散在している。 ブロック化した砂岩には複雑に流動した葉理がみられる。 無秩序にみえるが, 砂岩ブロックの多い部分は連続して追跡され, ブロックの上下判定をすることによって スランプ帯が褶曲していることがわかる。 この褶曲もスランプ褶曲と考えられる。 江須之川の東には 断層によって M1 層がくりかえして分布する。 江須崎のフリッシュには底痕が豊富に見られ, 南ないし南東からの古流向を示す。 ここには生痕化石が多産する。 M1 層の数層準に挟在する礫岩層には酸性火山岩類の礫が多く, オーソコォーツァイト礫は 5~9 % [ 以下の [注] 参照 ] 含まれている。 江須崎の基部には凝灰岩岩脈の細脈がみられる。

[注]
ただし, [ E 地域の東部の地点 ➉ の ] 江住の西では [ オーソコォーツァイト礫は ] 30 % 含まれる。

F 地域 : W2 層は ほり崎付近と里野以東に広く分布するほか, 三崎 さんざき の東に狭く露出している。 M1 層は 平見 ひらみ から三崎にかけてみられる。 里野以東は単純な同斜構造を示すが, 里野以西はきわめて複雑な構造をもっている。 江住から平見にかけての W2 層と M1 層下部は 非常にゆるく傾斜した逆転層をなしている。 江住からほり崎にかけての地域では この逆転層がさらに小褶曲をしていて, アンチフォーム状向斜 [ = 山状の構造になっている向斜 ] やシンフォーム状背斜 [ = 谷状の構造になっている背斜 ] がみられる。 この逆転層は [ D 地域に軸部がある ] 御待崎背斜の東翼がはり出した横臥褶曲と考えられる。 三崎付近の M1 層の中部も断層によってブロック化していて, 複雑な構造を呈する。 西のブロックには東西性の軸をもつ開いた背斜構造がある。 三崎から東のブロックは 東にゆるく傾斜した逆転層をなしており, 東端の W2 層の泥質フリッシュとともに 東に傾斜する軸面をもった転倒褶曲の西翼を構成すると考えられる。 これらの構造は すべて大規模なスランプ構造であるとみなされる。 三崎と里野の西には砂岩やシルト岩の角礫や亜角礫を多量に含む含角礫泥岩がみられるが, これらも 同様に 一種のスランプ堆積物であろう。

G 地域 : 熊谷以東にW1 層, 以西に W2 層が分布する。 構造は単純であり, 東端にゆるく開いた和深背斜があり, 本地域はその西翼をなす。 [ G 地域の西部の ] 雨島には小さな向斜と背斜がある。 この地域にはスランプ構造はほとんどみられない。 W1 層のフリッシュには流痕が多くみられ, 東からの古流向を示す。

H 地域 : 船波 ふななみ [ ← 舟波漁港の北 ? ] の南の南北性断層を境として岩相が大きく異なり, これより西には W2 層が, 東には下露累層の S2, S3 層が分布する。 W2 層には 軸面がゆるく南東に傾斜した等斜褶曲状のスランプ褶曲軸が数本存在し, 全体として和深背斜の南東翼を構成する。 S2 層中では, 砂岩の巨礫ブロックを含む礫岩と含礫泥岩層が下位の泥質フリッシュを削りこんでいる。 この泥質フリッシュの下位の砂岩にみられるスランプ性転倒褶曲は, この削りこみの際の引きずりによって形成されたと考えられる。 S2 層の礫岩層には 礫のオリエンテーションとインブリケーションが観察され, それから復元された古流向は 流痕の示す古流向とほぼ一致する。

I 地域 : 田子 たこ の断層以西には S2 層および S3 層が安指向斜をなして分布し, 以東には S2, S3, S4, S5 層が北西傾斜の同斜構造をなして広く分布する。 [ I 地域の西部の ] 横島 よこしま の S2 層には 下位の地層を 10 数 m 削りこむチャネル構造や フリッシュに特徴的な各種の堆積構造がよく観察される。 [ I 地域の東部の ] ナゴ島の S2 層は 全体として逆転しており, シンフォーム状背斜構造 [ = 谷状の構造になっている背斜構造 ] をなす。 [ I 地域のやや東部の ] 双島 そうしま の S2 層には 東ないし南東からの古流向を示す流痕と礫岩ファブリックがみられる。 [ I 地域の東部の ] ヒラ島以北の S3 層には しばしばスランプ構造がみられる。 また, ヒラ島では波面状の表面形態をもつ砂岩岩脈が観察される。 [ 双島の北方の ] 田子の浦レストランから [ その西方 1 km 弱の ] 田子崎 たござき にかけては S4 層が分布している。 S4 層は さまざまの大きさの砂岩, 泥岩, フリッシュ, まれに礫岩の角礫を大量に含む含角礫泥岩で, 含まれる礫は ほとんどが下位の牟婁層群に由来している。 ときに流動した葉理をもつ砂岩や礫岩の亜円礫も含まれている。 中平見 なかひらみ の隧道付近では 含まれる礫は角礫から亜角礫となり, 同時に浅海性のサンドパイプをもち, 斜交層理の発達する砂岩層が挟まれる。 これより上位では 礫径が小さくなり, かつ 0.5~1 m の厚さで弱く成層するようになる。 S4 層の含角礫泥岩は 一種の rock-fall 型のスランプ堆積物(DOTT, 1963)と考えられる。 S5 層は主として成層するシルト質泥岩からなっており, ときに含角礫泥岩を挟む。 田子崎の S5 層の砂質シルト岩中には貝化石を比較的多く産する。 本地域の S2 層の礫岩層には オーソコォーツァイト礫が他地域に比較して多く, 15~20 % 含まれる。

J 地域 : S2 層がナゴ島背斜の軸部に小面積を占めて露出する以外は S3 層が広く分布し, 全域がスランプ帯をなしている。 スランプ層の上下判定によって数本のスランプ褶曲軸が確認される。 ナゴ島背斜および 野𣷓 のうなぎ 向斜, さらにその南の2本の褶曲もスランプ褶曲である。 中新統下部および中部の熊野層群は スランプした牟婁層群を傾斜不整合に覆う。 基底礫岩の発達はよくないが, この不整合は北の内陸地域に広く追跡することができる。

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QUADRANGLE SERIES
SCALE 1 : 50,000

Kyōto (11) No. 106

GEOLOGY OF THE
ESUMI
DISTRICT

By Masaaki TATEISHI, Takanori BESSHO, Teturō HARATA, Kunihiko HISATOMI, Yoshio INOUCHI, Tomoyoshi ISHIGAMI, Fujio KUMON, Shizuo NAKAYA, Takahiko SAKAMOTO, Hiroyuki SUZUKI and Takao TOKUOKA (Written in 1979)


Abstract

GENERAL REMARKS

In the Kii Peninsula, the Shimanto Belt is divided into three zones from north to south, that is, the Hidakagawa(Cretaceous), the Otonashigawa(Eocene ?)and the Muro(Oligocene to early Miocene)Zones. The sheet-map area occupies the southern part of the Muro Zone (Fig. 1). The Muro Zone is subdivided into two parts, that is, northern part and southern part, by the Matsune - Hirai Fault, which runs through in ENE - WSW on northern part of this sheet map.

Fig. 1 Stratigraphy aroung the Esumi District.

The Muro Group in the northern part attains to 5,000 to 5,800 m in total thickness, and is divided into the Yasukawa, Uchikoshi and Kōgawa Formations in ascending order. On the other hand, the Muro Group in the southern part attains to 5,500 to 8,500 m in total thickness, and is divided into the Wabuka, Mitogawa and Shimotsuyu Formations in ascending order.

The Kumano and Tanabe Groups of early to middle Miocene overlie the Muro Group unconformably. Dikes of acid pyroclastic rocks, granite porphyry and quartz porphyry, activated in the later stage of Kumano - Tanabe deposition time, are found in several places. The stratigraphy of the sheet-map area is summarized in Fig. 2.

Fig. 2 Tectonic division of the Shimanto Belt in the Kii Peninsula.

[ notes on Fig. 2 ]
The following stratigraphic divisions with "*" in Fig. 2 are not out-cropping in this reported area.
Hidakagawa Group (Cretaceous),
Otonashigawa Group (Eocene),
Layer "Y1" of the Yasukawa Formation in the Muro Group (Oligocene to Early Miocene)
The following abbreviations of litho-facies are used in Fig. 2.
cgl : conglomerate, ss : sandstone, ms : mudstone, bg. : bearing,
sdy alt. : alternation of more sandstone and less mudstone,
mdy alt. : alternation of less sandstone and more mudstone,
alt. : alternations of sandstone and mudstone

[ Legend on the geological map ]

Quarternary Alluvium a Gravel, sand and mud
Terrace deposits t Gravel, sand and mud
Tertiary Dikes Qp Quartz porphyry
Gp Granite porphyry
Py Acid pyroclastic rock
Middle

Early
Miocene
Kumano Group Ku2 Siltstone
Ku1 Sandstone and conglomerate
Tanabe Group Tb2 Siltstone
Tb1 Sandstone and conglomerate
Early
Miocene

Oligocene
Shimanto Super-group Muro Group North of the Matsune - Hirai Fault
Kōgawa
Formation
K5 Alternation of sandstone and mudstone
rich in mudstone (muddy flysch)
K4 Conglomerate,
pebbly mudstone, sandstone and mudstone
K3 Alternation of sandstone and mudstone (flysch)
K2 Sandstone and conglomerate
K1 Mudstone (intercalating conglomerate)
Uchikoshi
Formation
U Sandstone and
alternation of sandstone and mudstone
rich in sandstone (sandy flysch)
cg Conglomerate
ms Mudstone
Yasukawa
Formation
(Upper Member)
Y2 Mudstone and
alternation of sandstone and mudstone (flysch)
South of the Matsune - Hirai Fault
Shimotsuyu
Formation
S6 Mudstone, pebbly mudstone and conglomerate
S5 Mudstone and
alternation of sandstone and mudstone
rich in mudstone (muddy flysch)
S4 Conglomerate, pebbly mudstone and mudstone
S3 Aletrnation of sandstone and mudstone
rich in mudstone and / or
that in equal proportion
(muddy and / or normal flysch)
S2 Sandstone,
alternation of sandstone and mudstone
rich in sandstone (sandy flysch)
and conglomerate
S1 Mudstone,
alternation of sandstone and mudstone
rich in mudstone (muddy flysch)
and pebbly mudstone
Mitogawa
Formation
Upper
Member
M3 Sandstone and
alternation of sandstone and mudstone
rich in sandstone (sandy flysch)
Middle
Member
M2 Alternation of sandstone and mudstone (flysch)
and mudstone
Lower
Member
M1 Sandstone and
alternation of sandstone and mudstone
rich in sandstone (sandy flysch)
Wabuka
Formation
Upper
Member
W2 Mudstone and
alternation of sandstone and mudstone
rich in mudstone (muddy flysch)
Lower
Member
W1 Alternation of sandstone and mudstone (flysch)
and sandstone
Angular fragments bearing mudstone

MURO GROUP

The Muro Zone is divided into the northern part and the southern part by the Matsune - Hirai Fault.

The Muro Group in northern part is divided into the Yasukawa, Uchikoshi and Kōgawa Formations in ascending order. Its total thickness in this mapped area is 5,000 to 5,800 m.

Although the Yasukawa Formation is subdivided into two members (SUZUKI et al., 1979), the lower member (Y1) is not distributed in this mapped area. The upper member (Y2 ; 500 m +) is exposed in narrow zone north of the Matsune - Hirai Fault, and is composed of bedded mudstones and alternations of less sandstone and more mudstone.

The Uchikoshi Formation is distributed extensively along the Hirai - gawa, Shōgun-gawa, Miyashiro-gawa, Jō-gawa and Taima-gawa, and furthermore in the northwestern part of this mapped area. It overlies conformably the Yasukawa Formation, and consists mainly of thick monotonous sequence (2,300 to 2,500 m) of thick-bedded sandstones and alternations of more sandstone and less mudstone. Mudstone layers exist more in the middle part ot the Uchikoshi Formation.

The Kōgawa Formation is distributed in the northwestern part of the mapped area, constituting the Kōgawa Synclinorium. It overlies the Uchikoshi Formation conformably and attains to 2,800 m in total thickness. Lithologically, it can be subdivided into five members, that is, the K1, K2, K3, K4 and K5 Members in ascending order. The K1 Member (250 to 500 m) consists of mudstones in the lower part and alternations of less sandstone and more mudstone in the upper part. The K2 Member (200 to 400 m) is composed of thick-bedded sandstones and pebble- or cobble-sized conglomerates. The K3 Member (800 to 900 m) consists of various types of altemations of sandstone and mudstone in the lower part, and mudstones in the upper part. The K4 Member (230 to 500 m) consists of conglomerates, pebbly mudstones, thick-bedded sandstones, mudstones and alternations of more sandstone and less mudstone. The K5 Member (500 m +) consists of mudstones interbedded with alternations of less sandstone and more mudstone in the lower-most and in the middle part.

The Muro Group in the southern part attains to 5,500 to 8,500 m in total thickness, and is divided into the Wabuka, Mitogawa and Shimotsuyu Formations in ascending order.

The Wabuka Formation is distributed in both wings of the Wabuka Anticline, and is 1,200 m in thickness. It is subdivided into the lower member (W1) and the upper member (W2). The W1 Member outcrops scarecely in this mapped area, distributed mainly in the southern "Tanami" sheet-map area. It is composed of various types of alternatioms of sandstone and mudstone, and thick-bedded sandstones, intercalating pebble conglomerates. The W2 Member (900 to 1,100 m) consists of bedded mudstones and alternations of less sandstone and more mudstone, intercalating pebble conglomerates and thick-bedded sandstones.

The Mitogawa Formation is exposed extensively along the Mito-gawa, Koza-gawa, Nakano-gawa and Susami-gawa, and also along the coast. It overlies comformably the Wabuka Formation. It attains to 2,000 to 3,000 m in total thickness, and is subdivided into the lower (M1), the middle (M2)and the upper (M3) members. The M1 (550 to 750 m) and the M3 (750 to 1,100 m) Members consist of thick-bedded sandstones and alternations of more sandstone and less mudstone, intercalated with pebble conglomerates. The M2 Member (300 to 1,300 m) is composed of alternations of less sandstone and more mudstone in the lower part, and bedded mudstones in the upper part.

The Shimotsuyu Formation is exposed along the Koza-gawa, Hirai-gawa and Samoto-gawa, and also in the east of the Azashi Fault. It overlies conformably the Mitogawa Formation. It is 2,500 to 3,000 m in total thickness, and is subdivided into the S1, S2, …, S6 Members in ascending order. The S1 Member(70 to 350 m)consists mainly of massive mudstones, intercalating pebbly mudstones. The S2 Member (200 to 400 m)is composed of thick-bedded sandstones and pebble conglomerates, and the S3 Member (150 to 750 m) consists of bedded mudstones and alternations of less sandstone and more mudstone, intercalated sometimes with pebbly mudstones. The S4 Member (360 to 400 m) consists of mudstones, pebbly mudstones and angular-fragments bearing mudstones. The S5 Member (1,000 m) consists of mudstones and alternations of less sandstone and more mudstone, finally the S6 Member (600 m +) consists of conglomerates, pebbly mudstones and mudstones.

Fossils and Geologic Age of the Muro Group

Some molluscan fossils have been discovered at 16 localities. In the northern part, these are Portlandia watasei in the Yasukawa Formation, and Costacallista ? sp. in the Kōgawa Formation. In the southern part, these are Portlandia watasei, Neilonella sp., Acila brevis, Acila ashiyaensis, Lucinoma nagaoi, Solemya sp. in the Wabuka Formation, and Yoldia sobrina, Yoldia saitoi, Venericardia cf. orbica, Venericardia tokunagai, Acila kusiroensis, Costacallista cf. shikokuensis in the Shimotsuyu Formation. Based on these fossils, the geologic age of the Muro Group is inferred as Oligocene to early Miocene.

Sedimentary Structures and Paleocurrents

Various kinds of sedimentary structures are observed in conglomerates, thick-bedded sandstones and alternations of sandstone and mudstone. Based on current marks developed in flysch-type alternations of sandstone and mudstone, paleocurrent system was analyzed. In the northern part, the north-eastern longitudinal currents are predominant, and the northern lateral currents are subordinate. On the other hand, in the southern part, the north-easten or eastern longitudinal currents are predominant, and the north-western and southern lateral currents are subordinate. Especially the southern currents are observed dominantly in the coast area.

Conglomerates and Sandstones in the Muro Group

Conglomerates are often intercalated in the Muro Group, especially in the Kōgawa Formation, the Mitogawa Formation and the Shimotsuyu Formation. These conglomerates are generally granule- to pebble-sized, and rarely contain cobble- to boulder-sized clasts. These are in tens centi-meters to several meters, ranely up to 10 meters in thickness, and contain abundantly clasts of acid volcanic rocks, sandstone and chert, and commonly of orthoquartzite, granitic rocks and shale. Limestone clasts are contained in conglomerates in several places. Orthoquartzite clasts are contained more in the coast area than in the other area.

On the basis of examination of mineral composition, the thick-bedded sandstones are composed of grains of quartz (30 to 67 %), plagioclase (6 to 41 %), K-feldspar(1 to 16 %) and rock-fragments (2 to 17 %), and matrix (4 to 20 %). The sandstone in the southern part is richer in quartz content than in thc northern part.

KUMANO AND TANABE GROUPS

The Kumano and Tanabe Groups overlie unconformably the Muro Group. The Kumano Group is exposed in the eastern part of the mapped area and the Tanabe Group is exposed in the western part of it. These groups are assigned to early to middle Miocene by fossil evidences. In the mapped area, only the basal part of these groups (300 m +) are exposed, being composed of conglomerates and sandstones in the lower part, and of siltstones in the upper part.

DIKES OF ACID IGNEOUS ROCKS

The arcuate dike composed of granite porphyry - rhyolite tuff complex is exposed along the Koza-gawa. Rhyolite pyroclastic dikes are exposed in several places along the coast line. These rhyolite pyroclastic rocks are crystal tuffs and contain abundant coarse-grained quartz, plagioclase and K-feldspar. Various sized angular clasts of mudstone and sandstone are involved in them. The quartz porphyries intrude into the Muro Group and the Kumano Group in the eastern part of the mapped area. These dikes are extended in N - S trend. These igneous rocks are supposed to relate in origin with the Kumano Acid Igneous Rocks cropping out extensively in the east of the mapped area.

QUARTERNARY

Terrace and Alluvium are exposed narrowly along the coast line and the rivers. These are composed of gravels, sands and muds. A volcanic ash layer is intercalated in terrace deposit outcropped along the Hisohara-gawa.

GEOLOGIC STRUCTURE

The sheet-mapped area is divided into the northern and southern parts by the Matsune - Hirai Fault running through in ENE - WSW trend. This is a reverse fault dipping steeply to the north. The Muro Group in the northern part forms the Kōgawa Synclinorium, which is a first-order folding structure in the Muro Belt. Some second-order folding structures are developed in its southeast wing. The southern part is subdivided into several blocks by the Samoto Fault, the Azashi Fault, the Shichi-kawa Fault, etc. The Samoto and Azashi Faults are reverse faults, dipping steeply to the north or north-west. The Susami Anticline, the Wabuka Anticline and the Azashi Syncline are first-order folding structures in the southern area. Minor folds are frequently observed, especially in the coast area. The Kumano and Tanabe Groups overlie the Muro Group with remarkable unconformities, being scarcely deformed.

ECONOMIC GEOLOGY

No workable mines exist in this sheet-map area, however, there are several abandoned mines, which once produced small quantities. Most of them are ore deposits filled the cracks in sandstones and mudstones of the Muro Group. There are hot spas related to activity of the Kumano Acid Igneous Rocks in several places.

GEOLOGY OF THE WESTERN PART OF THE "NACHI-KATSUURA" QUADRANGLE AND THE "TANAMI" QUADRANGLE

Geology of the "Nachi-Katsuura" Quadrangle in the east and the "Tanami" Quadrangle in the south of this sheet-map was reported by MIZUNO (1957) and MIZUNO and IMAI (1964) respectively. These districts have been reexamined. The geologic maps are additionally included in the report.

GEOLOGY OF THE COASTAL DISTRICT

The Muro Group is well exposed along the coast from Tano-saki Cape (in the "Tanami" Quadrangle) to the mouth of the Hiki River (in the "Susami" Quadrangle). Stratigraphy, geologic structure and sedimentology of the Muro Group in the coastal area have already been examined in detail by Kishū Shimanto Research Group (1969, 1970, 1973, 1976 and 1979). Additional detailed geological information(maps and sections) about the coastal area in this sheet-map and also in the "Tanami" Quadrangle map area also included in this report.


図版

第 Ⅰ 図版 牟婁層群にみられる生痕。
Trace fossils in the Muro Group.

  1. 砂質フリッシュの下面にみられる Nereites。 江須崎の南端(DⅦ)の三尾川累層の M1層。
    Nereites in sandy flysch of M1 member of the Mitogawa Formation (Esu-zaki).
  2. 砂質フリッシュの下面にみられる Helminthoida。 天鳥(AⅥ)の三尾川累層の M3 層。
    Helminthoida in sandy flysch of M3 member of the Mitogawa Formation (Amadori).
  3. 砂質フリッシュの下面にみられる生痕(N 型)。 宇の平見(DⅥ)の三尾川累層の M1 層。
    Trace fossil (N type) in sandy flysch of M3 member of the Mitogawa Formation (U-no-hirami).
  4. 泥質フリッシュの下面にみられる Spirorhaphe (スケールは 5 cm)。 天鳥(BⅥ)の三尾川累層の M3 層。
    Spirorhaphe in muddy flysch of M3 member of the Mitogawa Formation (Amadori).

第 Ⅱ 図版 牟婁層群のフリッシュ。
Flysch facies of the Muro Group.

  1. 三尾川累層の M3 層の厚層砂岩の砂質フリッシュ。 写真の右側が上位。 仮屋口(FⅢ)。
    Thick-bedded sandstones and sandy flysch of M3 member of the Mitogawa Formation (younging toward right)at Kariya-guchi.
  2. 和深累層の W1 層の砂質フリッシュ。 和深海岸の和深背斜の軸部(EⅦ)。
    Sandy flysch of W1 member of the Wabuka Formation (axial part of the Wabuka Anticline at Wabuka).

第 Ⅲ 図版 天鳥(AⅥ)のスランプ褶曲と生痕。
Slump folds of the Muro Group outcropping at Cliff Phoenix (Amadori).

  1. スランプ褶曲の遠景。 地層は全体として逆転している。 矢印は次の図の位置を示す。
    A distant view of Cliff Phoenix Two slump zones are observed. Whole strata are overturned (white arrow indcates the position of the next photograph).
  2. スランプ褶曲層中の砂岩岩脈。 砂岩単層から上下にのびている。 写真の下側が層位上の上位である。
    Sandstone dikes extruding up and downward from a sandstone bed in slump zone.
  3. 砂質フリッシュの下面に多産する Terebellina。 管の長さは 7~10 cm。
    Terebellina found on the bottom of sandy flysch bed in slump zone.

第 Ⅳ 図版 礫岩と砂岩の堆積構造。
Sedimentary structures found in conglomerate and thick-bedded-sandstone of the Muro Group.

  1. 厚く成層した中粒砂岩。 pillar structure や皿状構造がみられる。 白鳥(AⅤ)の三尾川累層の Ma 層。
    Pillar and dish structures found in thick-bedded, medium-grained sandstone at Shira-shima. M3 member of the Mitogawa Formation.
  2. 上の写真の砂岩中の皿状構造。
    A close view of dish structures.
  3. フリッシュを削りこんでいる中礫礫岩。 ナゴ島(GⅦ)の下露累層の S2 層。
    Channel structure found in S2 member of the Shimotsuyu Formation at Nago-jima.
  4. 上の写真の礫岩にみられる覆瓦構造。 スケールは層面に平行におかれている。
    Clast fabrics showing imbricated structure found in channeling conglomerate. A close-up of the previous photo. The scale shows the trend of bedding plane.

第 Ⅴ 図版 牟婁層群および田辺層群の砂岩の顕微鏡写真(直交ニコル ; スケールは 1 mm)。
Photo-microgrphs of sandstones in the Muro and Tanabe Groups (All photographs are taken under the crossed nicols ; Each scale is 1 mm in length).

  1. 和深累層の中粒砂岩 (Q : 石英, K : カリ長石(マイクロクリン), P : 斜長石)。
    Medium-grained sandstone of the Wabuka Formation (Q : quartz, K : K-feldspar (microcline), P : plagioclase).
  2. 三尾川累層の中粒砂岩 (Q : 石英, K : カリ長石, R : 岩片)。
    Medium-grained sandstone of the Mitogawa Formation (Q : quartz, K : K-feldspar, R : rock fragment).
  3. 下露累層の中粒砂岩 (Q : 石英, P : 斜長石)。
    Medium-grained sandstone of the Shimotsuyu Formation (Q : quartz, P : plagioclase).
  4. 田辺層群の細粒砂岩。
    Fine-grained sandstone of the Tanabe Group.

第 Ⅵ 図版 火成岩類の顕微鏡写真(スケールは 1 mm)。
Photomicrographs of igneous rocks (Each scale is 1 mm in length).

  1. 古座川弧状岩脈の花崗斑岩 (Q : 石英, Bi : 黒雲母 ; 直交ニコル)。
    Granite - porphyry (Q : quartz, Bi : biotite ; crossed nicols).
  2. 古座川弧状岩脈の結晶質酸性凝灰岩 (E : 軽石片, P : 斜長石 ; 開放ニコル)。
    Acid crystal tuff (E : pumice, P : plagioclase ; opened nicols)
  3. 大桑で採取された 球顆構造を示す石英斑岩 (Q : 石英, P : 斜長石 ; 直交ニコル)。
    Quartz - porphyry with spherulitic texture picked at Ōkuwa (Q : quartz, P : plagioclase ; crossed nicols).
  4. 戎島で採取された 結晶質酸性凝灰岩 (Q : 石英, P : 斜長石, L : 泥岩片, Bi : 黒雲母 ; 開放ニコル)。
    Acid crystal tuff picked at Ebisu-jima (Q : quartz, P : plagioclase, L : mudstone fragment, Bi : biotite ; opened nicols).

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(in Japanese with English Abstract, 6 p. )

昭和 54 年 12 月 3 日 印刷
昭和 54 年 12 月 7 日 発行
著作権所有 通商産業省 工業技術院 地質調査所

(C) 1979,Geological Survey of Japan