11047_1955

5万分の1地質図幅説明書

三河大野

(京都 第 47 号)

通商産業技官 齊藤正次

地質調査所

昭和 30 年


目次

I. 地形
II. 地質
II.1 概説
II.2 結晶片岩類
II.2.1 通説
II.2.2 阿多古帯
II.2.3 舟着帯
II.2.4 鎮玉帯
II.2.5 石神帯
II.3 秩父古生層
II.3.1 分布および構造
II.3.2 都田層
II.3.3 井伊谷層
II.4 角閃岩
II.5 輝緑岩および斑糲岩
II.6 橄欖岩および蛇紋岩
II.7 伊平層
II.8 領家変成岩類
II.9 花崗質岩類
II.9.1 黒雲母花崗岩
II.9.2 黒雲母角閃石花崗閃緑岩
II.9.3 黒雲母角閃石花崗岩
II.10 中央線破砕岩類および河内層
II.10.1 火成岩源破砕岩類
II.10.2 河内層および水成岩源破砕岩類
II.11 設楽第三紀層
II.11.1 礫岩砂岩層
II.11.2 砂岩頁岩互層
II.12 設楽火山岩類
II.12.1 三輪流紋岩類
II.12.2 七郷流紋岩類
II.12.3 鳳来寺流紋岩類
II.12.4 石英安山岩類
II.12.5 安山岩類
II.13 設楽堆積盆地の火山活動および地質構造
II.14 巣山層
II.15 洪積層および冲積層
II.15.1 古期洪積層
II.15.2 新期洪積層
II.15.3 冲積層
III. 応用地質
III.1 鉛
III.2 マンガン
III.3 ニッケル
III.4 滑石および石綿
III.5 陶石
III.6 蝋石
III.7 石灰石
III.8 石材
文献

Abstract

1 : 50,000 地質図幅説明書 (昭和 29 年稿)

三河大野

(京 都 第 47 号)


本図幅の野外調査に際しては, 本所所員上村不二雄が調査を援助した。 また説明書の作成に際しては, 東京大学理学部の久野久教授に閲読を乞い, 種々の御助言を賜わった。

I. 地形

この地域には ENE から WSW に山脈が走っており, その北側は愛知県に属して豊川の水系で刻まれ, 南側は静岡県に属して遠江平野および浜名湖に面する。 この山地は赤石山地の南西延長である。 海抜 500~600 m の高さを保ち, 概して平頂の山稜を連ね, 特に秀峰を持たない。 山地には, 岩層の走向にほゞ一致し, あるいは地質構造線に沿って ENEに走る谷と, またこれらとほゞ直交する谷とが発達しており, 交通に便を与えている。

豊川の北岸にあって図幅の北西隅を占める山地は, いわゆる三河高原の一部であって, 海抜 500~600 m の等高性を示し, かつての準平原化を窺わしめる平頂部が, 図幅地域西縁の 荒原 あわら 附近などでみられる。

図幅地域の北半中央部には, 第三紀層からなる低いやゝ盆地状の地形がある。 たゞしその中央には, 第三紀火山岩からなる鳳来寺山その他の急峰が, 標高 600 m 内外を示して多数蟠踞している。 しかし火山体は侵蝕によって原形を留めていない。

豊川の河谷は, 日本で重要な地質構造線の1つである中央(構造)線に沿っている。 しかし東部では, 中央線は豊川から離れた南の山中を走っている。 そこでは, 大きな河谷はないが, 小山峰が乱立して地形が乱れ, 全体として高さの低い地帯を生じている。

II. 地質

II.1 概説

中央(構造)線が地域内を WSW から ENE に 新城 しんしろ - 大野 - 浦川町 河内 こうち を通り, これを境にした両側において地質は著しく相違する。

中央線の南側には, 広く西南日本外帯において観られる種々の古期岩層, すなわち三波川・御荷鉾などと呼ばれる結晶片岩類, 秩父古生層・角閃岩・輝緑岩・斑糲岩・蛇紋岩などの塩基性変成岩ないし火成岩, いわゆる時代未詳の中生層に属する伊平層などが分布し, 外帯特有の帯状構造を示して配列している。

中央線の北側には, 領家変成岩類・花崗質岩類などを基盤として設楽第三紀層が, またこの堆積に引続いて噴出した設楽火山岩類が観られる。 これらは北隣図幅にかけて分布する 第三紀のいわゆる設楽堆積盆地に属するものである。

中央線に沿っては, かなり幅の広い圧砕帯があり, 古期岩層が著しく破砕されている。 なお圧砕帯には, やゝ非破砕の河内層が挟み込まれている。 また破砕岩類を不整合に覆って巣山層が一部に分布する。 河内層および巣山層はともに地質時代は明らかでない。

中央線の活動には少なくとも2つの時期のものが認められる。 その1つは上記の圧砕帯によって示され, その時期は領家変成, また, おそらく結晶片岩類の変成後, 設楽第三紀層堆積前である。 他の1つは 中央線附近の地質分布を劃然と支配している断層群によって示され, その時期は設楽火山岩類の噴出の末期である。

第四紀層としては洪積世の河成礫層が注意をひく。 冲積層はあまり広く分布していない。

第三紀以前の古期岩類については, 中央線を境にして異なる側に分布するものの間の時代, その他の関係は不明である。 これらの岩類を便宜上, 外帯・内帯・中央線圧砕帯に分布するものの順序に記述する。

II.2 結晶片岩類

II.2.1 通説

この図幅と東隣の秋葉山図幅とが接する附近を NNW に走る線を境にして, 結晶片岩類の地域は構造上北東・南西の2つの地帯に大別される。 両地帯を構成する岩類は, それぞれ変成相に特徴がある。

北東地帯は本図幅には一部だけを現わし, 東隣図幅から北方にかけて天竜川流域に広く分布する。 そこでは全体として南北に走る帯状構造がみられる。 岩石の変成は南西地帯に較べて全般的に著しい。 この地帯は構造上さらに西から東へ 阿多古 あたご 竜山 たつやま の2帯に区分されるが, 本図幅地域では阿多古帯の一部だけが小範囲を占めて現われている。

南西地帯は, この図幅の結晶片岩類地域の大部分を占め, 西南日本外帯に広く観られる ENE に走る帯状構造を示している。 岩石の変成は北から南に弱くなり, すなわち北部には変成の著しい結晶片岩が現われ, 中軸部やそれ以南にかけては, 千枚岩質のものが多く, さらに南には, 非変成の秩父古生層が連なる。 なお, 中軸部以南から秩父古生層の地帯にかけては, 輝緑岩ないし斑糲岩,橄欖岩ないし蛇紋岩が多く現われている。 南西地帯は, 帯状構造に沿った3帯, すなわち順次北から 舟着 ふなつき 鎮玉 しずたま および石神帯に構造的に分けられる。 そして, 各帯を構成する岩相には, それぞれかなりの特徴が認められる。

II.2.2 阿多古帯

阿多古帯は, 図幅地域北東隅の吉沢附近と, その南方の熊平附近との2地区に分かれて分布し, この間は断層関係にある。

吉沢地区にはおもに黒色片岩, 僅かに緑色片岩が分布する。 岩石の片理は概して走向 NW, 傾斜 W である。 黒色片岩は石墨・絹雲母による強い光沢をもち, 一部ではやゝ珪質である。 山戸金 やまつね 附近には, 曹長石の斑状変晶, すなわち点紋を微かにもつものがあるが, 一般には点紋を生じていない。

熊平地区では, 点紋緑色片岩・点紋黒色片岩・石英片岩および無点紋片岩類が層状に繰り返す。 片理面は全体として北西に傾斜するが, 緩傾斜に波打っていて, 個々の場所では方向も不規則である。 点紋緑色片岩は, 曹長石のほかに 緑簾石・斜黝簾石・陽起石・緑泥石・方解石などを種々の割合に含み, 輝石や普通角閃石を含まず, 原岩の組織を残さない。 点紋黒色片岩は, 曹長石のほかに石墨・絹雲母・石英によっておもに構成される。 石英片岩は堅硬であっておもに石英からなるが, 炭質物や絹雲母をもかなり含み, また石英には粗粒のものが少なくなく, おそらく砂質岩が変成されたものと思われる。 熊平の西方には紅簾石石英片岩の転石が存在する。 無点紋片岩類は吉沢地区のものと大差ない。

吉沢地区にも熊平地区にも, 蛇紋岩の小岩体がみられる。 これらの蛇紋岩は蛇紋石類・透角閃石・滑石などの変成鉱物のみからなり, 橄欖石などの原鉱物を残していない。 また両地区に滑石片岩も介在する。

熊平地区の北限には E – W に走る断層がある。 断層の北側の地塊は見掛上東へ移動し, 南側の熊平地区に相当する点紋片岩類を生じている部分は, 東隣図幅地内の白倉附近に分布し, その西側に吉沢地区の黒色片岩を主とする部分の延長がみられる。

II.2.3 舟着帯

舟着帯は中央線の南に接して長く分布する。 構成岩類は ENE に延びた帯状に配列する。 東端すなわち図幅北東隅では, この方向性が次第に南へ転じて NW – SE になり, 東側の阿多古帯の方向性と一致してくる。

舟着帯は構成岩質によって北・中央および南の岩帯に細分される。 北および中央岩帯では変成が著しい結晶片岩が, 南の岩帯では千枚岩が多い。

北岩帯は豊川に沿って分布し, 緑色片岩と黒色片岩との互層からなる。 岩石の片理は一般に南へ傾斜する。 緑色片岩は 陽起石緑簾石曹長石片岩・ 緑簾石緑泥石方解石曹長石片岩・ 緑簾石普通角閃石曹長石片岩などであって, またこれらのなかには藍閃石をも含むものがある。 黒色片岩は炭質物・絹雲母・曹長石・石英などからなる。 この岩帯の結晶片岩には肉眼では点紋がみられないが, 鏡下では曹長石の微斑状変晶がしばしば認められる。 また, この岩帯から紅簾石片岩が報告 5) されている。 要するに, この岩帯の岩石は阿多古帯のものにやゝ似た性質を帯びている。

中央岩帯は緑色片岩を主とし, 石英片岩・珪質黒色片岩・黒色片岩および僅少の石灰岩を伴なう。 北岩帯とは断層関係にあり, 岩石の片理はおもに北へ傾斜する。 緑色片岩には, 角閃石を主成分とするもの, すなわち角閃石片岩ないし角閃岩が多いのが特徴である。 角閃石は緑色普通角閃石に属し, 結晶の周辺や劈開に沿う部分は青緑色に変化し, 一部ではさらに藍閃石化している。 角閃石が大きな斑状変晶に生長し, 点紋状を呈することがある。 その他の緑色片岩は緑簾石緑泥石曹長石片岩などである。 稀にはこの種の緑色片岩に輝石を含むことがある。 石英片岩は緑色片岩に密接に伴なわれ, その附近では緑色片岩中に石英脈が多く, 黒色片岩もやゝ珪質である。 その他の黒色片岩では, 他の岩帯のものに較べて特記すべき性質は認められない。

南岩帯は中央岩帯の見掛上の下位に連続し, 黒色片岩ないし千枚岩を主とし, 緑色片岩ないし千枚岩, 僅少の石灰岩を伴なう。 黒色片岩ないし千枚岩はおもに泥質岩源であるが, 一部には淡灰色やゝ粗粒で, 板状の片理を示す砂岩源の片岩もある。 緑色片岩ないし千枚岩は緑簾石・緑泥石・陽起石・曹長石などからなり, またこれらからなる基質中に砕片状の輝石を疎らに含むことが少なくない。

II.2.4 鎮玉帯

鎮玉帯は結晶片岩類地域の中軸部を占め, 北の舟着帯とは断層で境される。 構成岩類は千枚岩質である。 部分的に岩相をやゝ異にし, また岩石の片理は場所によって方向が相違して, 岩層は規則正しい帯状には分布しないことからみて, 鎮玉帯内の地質構造は錯雑しているものと思われる。 なお, 橄欖岩・蛇紋岩・輝緑岩・斑礪岩などの大小の岩体が多数出現し, 鎮玉帯はこれらによって多分に特徴づけられている。

鎮玉帯の大部分を占める代表的な岩層は, 黒色千枚岩に緑色千枚岩を厚薄の層状に頻繁に挟むものであり, 鎮玉村東黒田・別所・渋川・川宇連などにかけて模式的に露われている。 黒色千枚岩は微細な炭質物・絹雲母・曹長石・石英からおもに構成され, またこのなかに 石英および集片双晶を示す斜長石のやゝ大形の残晶が散点することがある。 片理は波状に彎曲し, あるいは細かに褶曲していることが多い。 緑色千枚岩は緑簾石・陽起石・緑泥石・曹長石などの微晶からなり, この間に輝石や斜長石のやゝ大形の破片を含む。 輝石は単斜輝石で, 多くは無色であるが, 稀には微かに菫色を帯びる。

鎮玉帯のうち北側の上新戸から田沢附近, また古久蔵附近では, 緑色千枚岩が少なくて, 黒色千枚岩が多く, そのうちには片状砂岩の薄層が挟まれ, 岩相は舟着帯の南岩帯とあまり差がない。 この片状砂岩は淡灰色で板状の片理を示し, 片理面には線構造を現わし, 鏡下では細粒質の基質中に, 大形の残晶として, 波動消光を示す石英や双晶面の彎曲した斜長石が認められる。

鎮玉帯の南西部の 谷沢 やざわ 附近には, 片理の弱い片状粘板岩や珪岩など, 非変成の古生層に近い岩相が露われている。

II.2.5 石神帯

石神帯は図幅地域東縁の観音山の北方および南方の2地区に分かれている。 岩石の片理は概して ENE の走向を示し, 南方地区の西半部では北に傾斜し, その他では南に傾斜する。 構成岩は泥質岩源の黒色千枚岩を主とし, 片状砂岩をやゝ頻繁に挟み, 緑色千枚岩に乏しい。 岩石の変成度は低く, 南方地区, しかもその南西部の都田川沿いでことに低い。 南方地区では, 片理の走向に沿って東北東に, すなわち秋葉山図幅の石神方向に進むと, 漸次変成度を高める。

黒色千枚岩は黒色ないし光沢の鈍い暗灰色を呈し, 鏡下では微粒の炭質物・絹雲母・石英からなり, このほかにやゝ大形の石英粒を片理とやゝ無関係に散含する。 都田川附近では岩石は片理が弱くて, 片状粘板岩様である。 片状砂岩は緑灰色ないし淡灰色を呈する。 観音山北方地区のものは, 明らかな板状片理を示し, 片理面には線構造を現わすが, 南方地区, ことに都田川附近のものは, 片理が弱くて砂岩組織を保っている。 いずれも鏡下では微細な絹雲母・炭質物・石英などからなる基質のうちに, 波動消光を示す石英や, 絹雲母化を受けているが集片双晶が明らかな斜長石の大粒を, 多量に含むのがみられる。

観音山南方地区では, 東半と西半とで傾斜方向が違うので, 見掛上の上下の違いはあるが, 石神帯の岩類は南側の秩父古生層の井伊谷層に連なる。 すなわち, この境附近で, 石神帯の片状岩類はチャートを挟み始めて, ついに井伊谷層に移過する。

II.3 秩父古生層

II.3.1 分布および構造

結晶片岩類の南には, 秩父系あるいは漠然と秩父古生層といわれる非変成水成岩層が, 帯状に分布する。 図幅地域の中部以西では 古生層は断層によって北側の輝緑岩ないし斑糲岩体と境され, これを介して北方の結晶片岩類の変成帯と区劃されている。 この断層は, 図幅地域の中部以東では火成岩体のなかを通り, 図幅地域の東端部では結晶片岩類の石神帯を切り, すなわち変成帯内を通過する。 したがって断層は帯状構造や変成帯とは少しく斜交し, これらの成立よりも遙かに後期のものであろう。 断層は一直線上に並ぶ谷をつくって地形にも明瞭に現われていて, 断層面は急角度をもつものと思われる。 図幅地域の東部において, 結晶片岩類の石神帯の南限が非変成古生層と接する箇所には, 少なくとも重要な構造線はない。

古生層の走向は一般に ENE である。 図幅地域の南東隅に向斜状構造があって, その北翼の部分を除けば傾斜は一般に北である。 たゞし, 本層には小褶曲や走向断層が随所にみられるので, 真の構造は複雑であると推察される。

古生層は見掛上の下位から都田層と井伊谷層 [ 以下の [注] 参照 ] とに分けられる。 両層は整合関係にある。

[注]
地質図上の「伊井谷層」は「井伊谷層」と訂正する。

II.3.2 都田層

都田層はおもに粘板岩および砂岩からなる。 模式地は図幅地域南東隅の都田川に沿うところとする。 厚さは見掛上 900 m 以上に達する。

粘板岩は暗灰色ないし黒色を呈し, 層理を明示するものが多い。 軟弱なものとやゝ珪質, 堅硬なものとがある。 砂岩は厚さ 10 数 m ないし数 10 cm をもって粘板岩中に互層し, あるいは径数 10 cm の角張った塊となって粘板岩中に取り込まれている。 暗灰色, 細粒ないし中粒, 層理不明瞭, 堅硬であるが裂開に富む。 都田層は井伊谷層に近づくと, 少しずつチャートを加える。

図幅地域南東隅で古生層が向斜状構造を呈する所では, その中軸には井伊谷層が分布し, 南翼には都田層が, 北翼には結晶片岩類の石神帯の片状岩類が, それぞれ井伊谷層の見掛上の下位に整合に露われている。 したがって, 石神帯の片状岩類は都田層と同層位にある。 そして, 石神帯を構成するものは, 泥質岩源の千枚岩と片状砂岩とであって, 緑色千枚岩に乏しく, これらの原岩は都田層の構成岩と一致する。 要するに 石神帯の片状岩類は都田層の変成相とみるのが, 層位上からも岩質上からも妥当である。

II.3.3 井伊谷層

井伊谷層では, チャート・石灰岩および, いわゆる輝緑凝灰岩が相随伴するのを特徴とし, 粘板岩は多いが砂岩は少ない。 この様子は, 南隣図幅の井伊谷から本図幅の三嶽を経て, 川名に至る附近でよく窺われる。 井伊谷層の見掛上の厚さは 2,000 m 以上と算出される。 都田川に沿う所では, 都田層の最上部は砂岩を漸減して, 粘板岩中にチャートを加え, 遂に厚いチャートと少しく輝緑凝灰岩とを含むに至り, 井伊谷層に連続するのが観察される。

チャートは厚薄の層をなして, 野外で最も顕著に露出する。 多くは灰白色であるが, 輝緑凝灰岩の附近では赤褐色のこともある。 無層理塊状のもの, 割目に富み小塊に崩れ易いもの, 数 cm 幅の縞状層理をもつもの, 脈石英を網目状にもつものなどがある。

石灰岩は見掛上数層準に現われるが, とくに輝緑凝灰岩層に随伴する傾向がある。 厚さ 100 m 以上, 延長 1 km 以上に達するものがある。 岩石は灰白色ないし暗灰色であり, 結晶質で化石を含まない。

いわゆる輝緑凝灰岩は緑色・赤褐色・紫褐色などを呈し, 層状をなして多数介在する。 同一層を追跡した場合, ある部分は層理を明示し, 軟弱で, あるいは泥質物を混えたりして, 明らかに凝灰岩であるが, 他の部分は堅硬, 塊状, 緻密で, 鏡下では輝緑岩質を呈し, 火成岩であることが少なくない。 井伊谷層地域には別に輝緑岩ないし斑糲岩の貫入岩体もあり, かような塩基性岩類の種々のものの識別は, 野外でも鏡下でも容易ではない。

凝灰岩である部分は, 微細な緑簾石・緑泥石・蛇紋石・絹雲母, その他無定形塵状物からなり, またこれらからなる基質のなかに輝石の破片を点々と含むこともある。 赤褐色, 紫褐色のものでは赤鉄銃の粉状物が瀰漫している。 火成岩の部分の岩質は後に輝緑岩ないし斑粝岩の項で記載するものと, ほとんど識別し難い。

粘板岩は暗灰色ないし黒色を呈し, また輝緑凝灰岩質物を混えて赤褐色を帯びることもある。 明瞭な層理を示すものと, 層理不明瞭で小片に崩れ易いものとがある。

井伊谷層内を走向に沿って東へ辿り, 図幅地域の東端附近から図幅地域外に至ると, 岩石は次第に片理を示してくる。

II.4 角閃岩

本図幅において角閃岩として示すものは, 緑簾石角閃岩(epidote amphibolite)であって, 結晶片岩類地域の舟着帯などでみられる角閃片岩と構成鉱物をほゞ等しくし, たゞ肉眼的に塊状にみえるものである。

角閃岩は結晶片岩類地域の処々に現われているが, 最も顕著には, たとえば図幅地域中央部の じょう 山から 浅間 せんげん 山に亘って広く分布するもののように, 地域北部の変成の著しい地帯, すなわち舟着帯の附近に現われる。 舟着帯のうち中央岩帯は角閃片岩によって特徴づけられているが (「II.2.3 舟着帯」参照), これと城山 - 浅間山角閃岩体とは, 片状の部分が多いか, 塊状にみえる部分が多いか, の相違があるだけであって, 浅間山の北東では明瞭な境を示すことなく相連なっている。

角閃岩は青緑色ないし暗緑色を呈し, 塊状あるいは少しく片状である。 角閃石が大きな結晶に生長していて, 岩石が点紋状ないし斑状を呈することもある。 成分鉱物としては, 角閃石を主とし, 緑簾石・黝簾石・緑泥石・曹長石・ リューコクシン・チタン石・鉄鉱物などが少し含まれる。 肉眼では塊状にみえる岩石でも, 鏡下では角閃石が一定方向に配列していることが多い。 角閃石は帯褐緑色の普通角閃石に属し, 結晶の周辺や劈開面から青緑色に変質し, またあるものではさらに藍閃石化されている。

角閃岩中には, 方解石・斜長石・曹長石・石英・パンペリ石(pumpellyite)などのなかの2, 3種からなる細脈が走っていることがある。

城山 - 浅間山岩体でみるに, 周辺部には片理が特に著しく生じており, かつ岩体の外廓は 周囲の結晶片岩類の片理と協和状(concordant)であるところが多いが, 幅の膨れた全形からみて, 角閃岩の大部分は塩基性の貫入岩体から変成されたように思われる。 この塩基性火成岩が出現した時代は, 結晶片岩類を生じた変成作用以前もしくはこれと同時である。

II.5 輝緑岩および斑粝岩

こゝに輝緑岩および斑糲岩としたものは, 多少変成されてはいるが, 輝石を多量に含み, もしくは初成の角閃石や斜長石を残すなど, 塩基性火成岩としての性質を保有し, かつ一般に塊状を呈するものをいう。 比較的微晶質のものを輝緑岩とし, 比較的粗晶質のものを斑糲岩とするが, 両者は密接に相随伴することが多い。

輝緑岩および斑糲岩は, 結晶片岩類の低変成度の地域から非変成古生層の地域にかけて多く現われる。 すなわち, 結晶片岩類と秩父古生層との境附近に, 帯状をなして最も広く分布し, このほか, 千枚岩類からなる鎮玉帯や古生層の井伊谷層地域にも処々に現われる。 たゞし稀には, 変成作用がやゝ著しい舟着帯や, 城山 - 浅間山などの角閃片岩・角閃岩などの一部にも, 周囲との関係は明らかでないがみいだされる。

結晶片岩類と秩父古生層との境に広範囲の分布を示すものでは, 例えばその東部を横断する都田川に沿って観察されるように, 大部分は塊状の輝緑岩ないし斑糲岩からなるが, 処々に緑色片岩や, あるいは蛇紋岩化された部分を含んで, 複雑な様子を示している。 また, この岩体や, そのほかの小岩体においても, 周辺部が千枚岩化していることがある。 この千枚岩化はごく周辺部だけに限られ, かつ結晶片岩類と接する側に主としてみられ, 非変成古生層に接する所では顕著でないのが通例である。

塊状の輝緑岩および斑糲岩は, 草緑色ないし暗緑色を呈し, 特に徴密なもの以外では, 肉眼でみえる程度の輝石を点々と含む。 鏡下でも片理は認められないことが多い。

岩種として次のように種々のものが認められる。

結晶片岩類地域でも, 古生層地域でも最も普通に観られるものは, 緻密質の輝石輝緑岩および中粒ないし粗粒質の輝石斑糲岩である。 両者は移化し, また一部では斑糲岩が輝緑岩を貫ぬく。 輝緑岩は細粒の輝石によっておもに構成され, 斑礪岩は大形の輝石を多量に有する。 両種ともに, 輝石の間隙は 黝簾石~緑簾石・透角閃石~陽起石・緑泥石~蛇紋石・ チタン石・リューコクシン・曹長石・鉄鉱物などの微晶の集合物, ないしはソウシル石質物で塡められている。 初成の斜長石はまったく認められないことが多い。 輝石は透輝石質であって, 多くは無色, 一部は淡褐色に汚れ, また稀には淡い菫褐色を帯びる。 結晶は自形ないし半自形を呈し, 周辺からウラル石ないし透角閃石に変化していることが少なくない。 斑糲岩中の輝石には異剥石裂開が発達したものが多い。 図幅地域南西部の金山の南東麓などでは, 異剥石が径数 cm に及ぶ巨晶に成長したものがある。

他の岩種としては次のものがある。 図幅地域南西隅の瓶割峠の南方や, 図幅地域南東部の西久留米木附近の岩体の一部, また図幅中央の阿寺附近の角閃岩として一括図示した一部から得た標本は, 角閃石をも含み, 角閃石輝石斑糲岩に属する。 角閃石は普通角閃石であって, 鏡下で褐色ないし帯緑褐色を呈し, 輝石との関係はその周辺に, あるいはそのなかに, または離れて晶出していて, 一定でない。 角閃石の周辺が緑色普通角閃石・陽起石・藍閃石に変化したものもある。

図幅地域南西部の福津の東方, その東方の陣座峠および図幅地域東縁部の長沢附近から採取した標本は, 有色鉱物として角閃石を持ち, 輝石を含まない。 たゞし福津のものは緑色角閃石からなり, 片状を呈して角閃岩に属し, この地帯にも角閃岩が稀には混在することを意味する。 長沢のものは, そのうちの角閃石は緑色角閃石であるが, 斜長石を残し, かつ岩石は片状でなく, 斑糲岩構造を呈する。 陣座峠のものでは角閃石ば褐色普通角閃石であり, 周辺から緑色角閃石に変化しており, かつ岩石は片状でなく斑糲岩質である。 後2者は角閃石斑糲岩として角閃岩とは区別される。

特別の岩種としてさらに次のものがある。

エジリン斑粝岩 : 図幅地域南東部の 兎荷 とつか の北方に示した小岩体は, この岩石からなる。 岩石は中粒閃緑岩質で, 斜長石を多量に持ちあまり変成されていない。

主成分 : 斜長石・エジリン
副成分・2次成分 : 緑泥石・緑色雲母・緑簾石・燐灰石など

エジリンは末端が尖った長柱状を呈し, X = 緑色, Z = 帯緑黄色の多色性を示し, C ∧ Z ≒ 90°である。 中心部に緑色雲母, 周辺に緑泥石を生じている。 斜長石はほゞ中性長石に属し, 変質して汚濁しているが, 集片双晶を明らかに残している。

エジリン輝石含有チタン輝石斑粝岩 : 図幅地域南東隅において都田川を横断している小岩体は本岩からなる。 岩石は暗緑色を呈しやゝ片状で, 多少変成されている。

主成分 : 斜長石・チタン輝石・エジリン輝石
副成分・2次成分 : ソウシュル石・緑泥石・黒雲母・透角閃石・チタン石など

斜長石はソウシュル石化されているが, 形骸を留める。 チタン輝石は淡董色を呈し, 少し多色性を示し, 波動消光を示す。 エジリン輝石は微晶かつ少量で, 単独に現われ, またはチタン輝石の周辺に附着している。 緑色を呈し, C ∧ Z ≒ 58°の消光角を示す。 緑泥石は多量であって輝石を交代し, あるいは岩石中を走る条をなす。 黒雲母は褐色を呈し, 2次成分と思われる。

チタン輝石エジリン角閃石斑粝岩 : この岩種は図幅地域南縁近くの西牧附近に小岩体として露出する。 岩石は緑色で, やゝ片状を呈する。

主成分 : 斜長石・角閃石・エジリン・チタン輝石
副成分・2次成分 : 緑泥石・方解石・リューコクシン・燐灰石・チタン鉄鉱・黄鉄鉱など

斜長石は多量に存在し, 汚濁している。 角閃石は長柱状の粗晶であり, 赤褐色を呈する特徴ある種類のものである。 C ∧ Z ≒ 8°の消光, X = 淡緑褐色, Y = 赤褐色, Z = 濃赤褐色の特徴ある多色性を示す。 チタン輝石は少量である。 淡菫色を帯び, 弱い多色性を示し, 複屈折が少ない。 結晶の外辺は緑泥石で交代されている。 エジリンは小形の単独粒として, あるいは角閃石やチタン輝石の囲りに附随する。 C ∧ Z = 88°の消光, X = 帯青緑色, Y ≒ Z = 帯褐淡緑色の多色性を示す。

これらの岩種はアルカリ岩質であるのを特徴とする。 いままでのところでは, いずれも古生層の井伊谷層地域だけにみいだされている。 ほかの一般の輝緑岩ないし斑糲岩に較べて斜長石を残し, 有色鉱物も原結晶形を保有し, 岩石の変成が著しくない。

以上述べてきた種々の輝緑岩ないし斑糲岩が出現した時代は, 遅くとも結晶片岩類の変成末期である。

II.6 橄欖岩および蛇紋岩

橄欖岩および蛇紋岩は結晶片岩類地域の中軸部以南に, 大小多数の岩体として現われる。 これらの岩石の分布する所は, 森林の成長が不良であって, 灌木林・草地などであることが多い。

橄欖岩は黒色・暗灰色などを呈し, 緻密, 堅硬である。 主成分が橄欖石のみのもの, 単斜輝石を加えるもの, また一部にはさらに斜方輝石をも含むものがある。 単斜輝石は多くは透輝石質普通輝石, またはこれに裂開が発達した異剥石であるが, 図幅地域北東部の川宇連の南を西流する小沢の小岩体でみられるように, 稀にはチタン輝石のこともある。 輝石には劈開に沿って磁鉄鉱の微粒が多量に包有されることがある。

橄欖岩は種々の程度に蛇紋岩化作用を蒙り, 次第に緑灰色・灰色などに変色し, 脂感を生じて軟弱になり, また著しく割目を生じて崩落し易くなる。 蛇紋岩化作用による変成鉱物としては, クリソタイル・アンチゴライト・水滑石・透角閃石・ 滑石・黝簾石・鉄鉱類・スピネル ? などが認められる。

図幅地域南東部の獺淵の北や, 北東部の熊村の北西では, 橄欖岩~蛇紋岩体の一部には, 白色の基質中に緑色の斑紋を持つ岩石ないしは白色の岩石を伴なう。 これらの成分鉱物はおもに透輝石質輝石である。

橄欖岩~蛇紋岩は単独の岩体として結晶片岩類や変成緑色岩類のうちに, 明瞭な境をもって出現することが多い。 しかし, 例えば獺淵の岩体では東縁が斑糲岩ないし輝緑岩に移化する。 また熊村北西の岩体は東西に数 km も延長し, 幅は数 10 m 程度の細長い一続きのものであるが, 部分によって橄欖岩~蛇紋岩であり, または前記の白色岩や淡灰緑色斑糲岩である。 最後に挙げた斑糲岩は, 橄欖石や蛇紋石類を含まず, 前章で記載した輝石斑糲岩と岩質上差がない。 これらのことからみて, 橄欖岩は,少なくとも一部は輝緑岩ないし斑糲岩に伴なって貫入したものといえる。

II.7 伊平層

本層は 結晶片岩類地域と秩父古生層地域との境にある 輝緑岩および斑糲岩の分布地帯中に, 楔状の地塊をなして構造的に介在する。 おもに粘板岩および砂岩からなり, 礫岩・チャートおよび僅少の石灰岩を含む。 ENE の走向を示し, 一部は南へ, 多くは北へ急角度に傾斜する。

粘板岩は黒色である。 層理が明瞭なもの, 粘板岩劈開に富むもの, 無数の割目に富み小屑片に崩れるものなどがある。 砂岩は不規則なレンズ状をなして粘板岩中に介在する。 灰色, 中粒ないし細粒, 硬砂岩質であって, 黒色珪質頁岩やチャートの細角片を含むことが多い。 堅硬であるが縦横の裂開に富む。 明らかな層理はもたない。 礫岩は砂岩に伴なって稀に現われ, 厚さ数 m 以下で, 横にもあまり連続しない。 礫は多くは径 5 cm 以下の円礫であり, チャート・珪質砂岩などを主とする。 基質は砂質である。

伊平層のチャートは厚さ数 cm 以下をもって, 粘板岩や砂岩中に介在する。 伊平の北東の本層の北縁部には, かなり厚いチャートが存在する部分がある。 この部分は, あるいは古生層が構造的に介在しているものかもしれない。 石灰岩は伊平の北西において厚さ 1 m ほどに露出する。 灰白色で, 無化石である。

伊平層は岩相が秩父古生層とは相違し, 秋葉山図幅に分布するジュラ系を含む光明層群に似ているので, 中生代のものと思われる。

II.8 領家変成岩類

領家変成岩類は図幅地域の北西部に分布する。 おもに黒雲母片岩ないし黒雲母ホーンフェルスからなり, 黒雲母片麻岩および石英片岩を伴ない, 僅少の透輝石片岩を含む。 これらは厚薄の互層をなして現われ, 地質図には, 特に発達している岩石を代表にして分布を区分してある。 岩層の走向はほゞ E – W, 傾斜は多くは北である。

黒雲母片岩は, 黒雲母を主とする黒褐色ないし紫褐色部と, 石英および長石を主とする淡色部とが, 数 m ごとの厚さで縞状を呈するものである。 図幅地域北西隅の出合の南約 2 km には, 縞目が厚さ 1 cm 以上に達する部分がある。 黒雲母ホーンフェルスは, やゝ緻密質, 塊状で縞目が不分明である。 黒雲母片麻岩は中粒ないし細粒で, 石英・長石に富み全体として淡灰色を呈し, そのうちに黒雲母を点々と含み, 花崗岩片麻岩様の外観をもつ。 石英片岩は珪質であって, 灰白色ないし淡灰色を呈し, あるものは細粒, 緻密で片理を示し, あるものは中粒, 塊状で片理に乏しい。

透輝石片岩を除く上記の岩類を構成する鉱物は, 石英・カリ長石・斜長石および黒雲母を主とする。 たゞし, これらの相対的の量には岩種によって差がある。 黒雲母片麻岩および石英片岩には白雲母もかなり含まれる。 副成分としては 燐灰石・柘榴石・ジルコン・金紅石・電気石・方解石・鉄鉱物などがある。 鏡下の組織は, 岩種によって細粗の差はあるが, 変質寄木状(granoblastic)であり, 歪力や破砕作用を受けた様子を帯びない。

石英は粒状, 他形である。 カリ長石は他形で, 新鮮である。 斜長石は半自形ないし他形で, 灰曹長石ないし中性長石に属する。 黒雲母片麻岩の斜長石には, 中心部は汚濁した石灰質斜長石で, その外側は明瞭な境をもってソーダ質斜長石で取り囲まれているものがある。 黒雲母は濃赤褐色~淡黄褐色の強い多色性を示す種類である。

透輝石片岩は図幅地域北西隅の 捧夫 ぼうぞれ 附近で得られたが, その分布範囲はよくわかっていないので図示してない。 岩石は帯緑暗灰色を呈し, 細粒, 緻密, 堅硬で, やゝ片状である。 鏡下では細粒の変質寄木状組織を示し, 石英, 少量の中性長石およびカリ長石のほかに多量の透輝石粒が認められる。 岩石を切って葡萄石・方解石・石英からなる細脈が走っている。

II.9 花崗質岩類

花崗質岩類は領家変成岩類に伴なって分布する。 これを 黒雲母花崗岩・ 黒雲母角閃石花崗閃緑岩 および黒雲母角閃石花崗岩の3種に区別する。

II.9.1 黒雲母花崗岩

本岩と領家変成岩との接触面は出入の多い不規則な形を示している。 岩石は粗粒ないし中粒で, 優白色を呈し, 黒雲母を点々と含む。

主成分 : 石英・正長石・斜長石・黒雲母・白雲母
副成分 : 柘榴石・電気石・燐灰石・ジルコン

石英は最も多量に存在する。 正長石は常に他形であり, 石英を斑点状, 放射状あるいは蠕虫状に包含することが少なくない。 斜長石は正長石とほゞ等量に存在する。 灰曹長石ないし中性長石に属する。 自形ないし半自形であって, 集片双晶は示すが, カールスバッド双晶は示さない。 中心部が汚濁して石灰質であり, これと明瞭に境されて外側が新鮮でソーダ質であることが少なくない。 また正長石と直接する部分では, 自形輪廓を失っていることが多い。 黒雲母は各長石類よりも多量に含まれている。 暗褐色~淡褐色のやゝ強い多色性を示す。 白雲母は少量である。

II.9.2 黒雲母角閃石花崗閃緑岩

本岩と領家変成岩との接触部は出入が多く, かつ漸移関係を示している。 岩石は中粒ないし細粒で, 暗灰色ないし帯緑灰色を呈し, 部分的に不均質である。 シュリーレンに富む。

主成分 : 石英・斜長石・正長石・角閃石・黒雲母
副成分・2次成分 : 柘榴石・燐灰石・ジルコン・緑泥石

石英・斜長石は最も多く含まれ, 正長石は少ない。 斜長石には汚濁した石灰質の中核を持つものが多い。 角閃石は帯緑褐色を呈する。 黒雲母は褐色~淡褐色の多色性を示す。

鳳来寺村 みね 附近には地質図のなかで本岩に含めたもののうちに, 閃緑岩質のものが小範囲に分布する。 この岩石は中粒, 暗灰色で, おもに斜長石・角閃石・黒雲母からなり, 少量の石英を含み, 鏡下では閃緑岩ないし斑糲岩としての組織を示す。

斜長石は自形である。 カールスバッド - アルバイト双晶を示すものがあり, また汚濁した石灰質の中核がソーダ質の外套で囲まれたものが多い。 角閃石は緑褐色~淡緑褐色の多色性を示す。 黒雲母は少量であって, 暗黄褐色~黄褐色の多色性を示す。 石英は他鉱物の間隙を充している。 正長石は認められない。

II.9.3 黒雲母角閃石花崗岩

本岩は出入の少ないかつやゝ明瞭な境をもって領家変成岩類を貫ぬく。 岩石はやゝ粗粒ないし中粒で, 優白色を呈し, 黒雲母・角閃石の中・粗晶を多量に点々と含む。 不規則形状のシュリーレンや, まったく変成された円味のある形の捕獲岩塊に富むが, 岩石自体は大体において均質である。

主成分 : 石英・斜長石・正長石・角閃石・黒雲母
副成分・2次成分 : 燐灰石・ジルコン・緑泥石・チタン石・鉄鉱物

石英および斜長石が最も多い。 正長石は僅かしか存在しない。 斜長石は自形ないし半自形で, カールスバッド - アルバイト双晶を示す。 灰曹長石ないし中性長石に属し, 緩やかな累帯構造を示すが, 前述の他岩種に観られるような汚濁した石灰質中核を有するものはない。 角閃石は緑禍色の普通角閃石に属する。 黒雲母は褐色~淡褐色の多色性を示す。

II.10 中央線破砕岩類および河内層

中央線の附近には, 互に並走する断層群がある。 中央線破砕岩類は, これらの断層に挟まれた細長い, しかし幅 1 km 以上に及ぶ部分もある地帯を占めて露出する。 破砕岩類には火成岩起源のものと, 水成岩起源のものとがある。 また, この地帯には, 水成岩層のあまり破砕されていない部分が挟み込まれている。 この地帯は中央線の劇しい摺動運動によって生じた圧砕帯そのものであって, その地質構造は極端に錯乱しているので, 各岩層の詳細な分布や, 相互の本来の関係は究め難く, 地質図には各岩層の概略の分布だけを示した。

破砕岩類は種々の程度の圧砕(cataclastic)構造を示す。 平行ないし平行に近い圧砕面に富み, 打撃や風化によってその面から解離, 崩壊するものが少なくない。 一部では土状, 角礫状あるいは圧砕円礫状に破砕されていて, 脆く崩れ易い。

II.10.1 火成岩源破砕岩類

新城から大野に至る問には, 花崗岩ないし石英閃緑岩が圧砕されたものがおもに分布する。 圧砕作用が著しくない部分が多く, すなわち, 石英・長石・黒雲母・角閃石などの初成鉱物が残っていて, 深成岩構造を残し, 石英が波動消光を示し, また絹雲母・緑泥石などの 2次鉱物を少し生じている程度のものがしばしば観られる。 新城の東端などのものは, 北方に分布する領家型花崗質岩が圧砕されたものとみなされる。

大野以東・図幅地域北東端に亘る間に, 水成岩源のものと錯雑して分布する火成岩源破砕岩類も, 多くは花崗岩ないし石英閃緑岩から生じたものであって, 著しい展砕(mylonitic)構造を示すものが多い。 すなわち, 片麻状, 破砕斑状, 緻密縞状などを呈する。 石英を除く成分鉱物は著しく分解されて, 絹雲母および緑泥石を生じ, 岩石は全体として灰色ないし緑灰色を呈することが多い。 石英および分解を免がれた長石はモルタル構造・眼球構造, レンズ状, 細粉状などを呈する。 石英の波動消光が著しい。 また石英が再結晶して部分的に集まり, 寄木状を呈することがある。 著しく展砕された岩石は細粒物のみからなり, 珪質水成岩などに由来したものと区別し難い。

II.10.2 河内層および水成岩源破砕岩類

図幅地域北東隅の浦川町河内の北東約 1.5 km の県道に, 幅 10 数 m の露出をなして, 砂岩・粘板岩の互層がある。 この互層は圧砕があまり著しくなく, 水成岩層としての性状を残している。 これを河内層とする。 砂岩は灰色, 堅硬, 中粒であり, 粘板岩は黒色で厚さ 10 数 cm 以下の薄層として, 不規則に砂岩中に挟まれている。 岩層はやや擾乱されているが, 成層面を示す。 この露出から北に向うと, 岩層は次第に強く破砕されている。 露出の南では, 断層をもって緑色結晶片岩と接する。

図幅地域北東部の七郷村六田沢附近にも, 砂岩粘板岩互層が分布する。 こゝのものは少し片状を呈するが, 砂岩あるいは粘板岩としての性質を残す。 隣接する結晶片岩類は, この図幅地内で変成が特に著しい地帯のものであるのと較べて, 少なくともそれとは岩相を異にする。 分布の北東部では岩層は次第に強く圧砕されている。 分布の両側では角閃片岩とおそらく断層をもって接している。

これらの2ヵ所に露出する水成岩層は, 圧砕帯内に介圧し, 互に隔絶して分布するが, 六田沢のものも河内層として取扱う。 河内層は時代不明であるが, 岩質上設楽第三紀層よりは古期のものと推察される。

地質図上に河内層と同色に示した範囲のうち, 上述の2ヵ所を除いた大部分には著しく圧砕された岩石が分布する。 その一部は河内層の圧砕されたものであるが, むしろ大部分は原岩層が確かでない。 例えば, 七郷村黒沢附近には, 河内層から由来したとはみなされない著しく珪質な圧砕岩が露出する。 大野東方の睦平南方には, おそらく黒色結晶片岩が圧砕されてできたと思われるものがある。 なお, 火成岩が著しく圧砕されたものには, あたかも珪質水成岩の圧砕されたもののような外観を呈するものが少なくないので, 水成岩源破砕岩類の分布範囲として示した地域内に, このようなものが混在するおそれが多分にある。 水成岩源破砕岩類は, 鏡下で観察すると, 砂岩構造などを残すこともあるが, 一般には, 細粉化された石英のほかに, 少量の絹雲母・緑泥石・炭質物などからなる。 岩石は一般に割目に富んで崩れ易く, 手頃な大きさの標本も得難いほどであって, 薄片に作りにくゝ, 充分には検鏡されない。

中央線破砕岩類は, 設楽第三紀層とほとんど常に断層で接するが, 七郷村巣山の北方では, 第三紀層に覆われるところがある(「II.11.1 礫岩砂岩層」参照)。 したがって中央線破砕岩類を生じた活動は, 領家変成およびおそらく三波川変成以後, また河内層の堆積以後, そして設楽第三紀層堆積以前である。 巣山附近では, 中央線破砕岩類は巣山層に被覆されているが(「II.14 巣山層」参照), 巣山層の時代は明らかでない。

中央線破砕岩類の分布を劃する断層群は, 中央線附近の両側の地質分布をも著しく支配していて, これも中央線活動の1つを示すものであるが, 設楽第三紀層・設楽火山岩類の主要部および巣山層を切っていて, 圧砕岩類の生成よりも遙かに後のものである。 これらの断層は急角度の正断層または逆断層であり, 断層は直線状に連なる谷をつくって, 地形上にもしばしば現われている。 断層面には 1~2 m の幅をもって断層角礫や粘土を生じている。 断層から数 m 以内では結晶片岩や第三紀層などが部分的に擾乱されているが, この擾乱部は, 中央線破砕岩類で示される幅の広い圧砕帯とは別個のものである。 坪井誠太郎 [ 以下の [注] 参照 ] は中央線の活動に関して, Median Mylonitization Zone と Median Dislocation Line とを区別することを提唱しているが, この図幅地域の砕圧帯と断層群とは, それぞれこれらに該当する。

[注]
坪井誠太郎 : 杉山隆二氏の諭文に対する附言, 地質学雑誌,Vol. 46,1939. p. 188.

II.11 設楽第三紀層

設楽第三紀層は図幅地域の北部中央に分布する。 本層の基盤は主として領家変成岩類および花崗質岩類からなる。 本層が中央線破砕岩類を覆うのが, 一局所ではあるが窺われる。 結晶片岩類を覆う所は露出していないが, 本層の礫岩には結晶片岩の礫をも含んでいる。

設楽第三紀層の層序が模式的に観られるのは, 分布地域西部の鳳来寺村 玖老勢 くろぜ 附近である。 そこでは第三紀層は東方に単斜し, 厚さは約 600 m であり, 下位から砂岩礫岩層および砂岩頁岩互層に分けられ, その最上部では凝灰質となり, 上限は設楽火山岩類基底部の凝灰岩によって覆われる。

分布地域の東部では本層は厚さがきわめて薄くなる。

設楽第三紀層は動植物化石を産出し 2), 12), 23) [ 以下の [注] 参照 ] , 時代は中新世とされている。 化石は特に北隣図幅地域内に多く知られているが, 本図幅地内でも砂岩頁岩互層から稀に介化石を産し, 次の2種を採取した(地質調査所 大山桂技官 鑑定)。

玖老勢東方 : Acila erongata NAGAO and HUZIOKA
門谷 かどや 附近 : Pecten kimurai YOKOYAMA
[注]
納富重雄 : 7万5千分の1 設樂 図幅読明書

設楽第三紀層は, 大野の東西では部分的に構造が乱れているが, 全般的にみて設楽堆積盆地の中心に向かって 20~40°をもって傾斜している。

次に本層の岩質について記載する。

II.11.1 礫岩砂岩層

第三紀層の下部はおもに砂岩からなり, 基底部に礫岩ないし礫質砂岩を伴なう。 これらの部分の厚さは玖老勢附近では約 100 m である。

砂岩は細粒ないし中粒, アルコーズ質である。 下部のものは層理に乏しく, 上位のものは泥質の葉層を次第に増して層理を示す。 礫岩ないし礫質砂岩は, アルコーズ質の基質中に, 領家変成岩類・花崗質岩類・硬砂岩・珪質粘板岩・チャート, また例えば飯田線大海駅附近でみられるように結晶片岩などの礫を有する。 アルコーズであるために, ことに風化したものでは, 基盤の花崗質岩類に酷似し, その間の不整合面が確認し難いことがある。 大海東側の 寒狭 かんさ 川岸で観られる不整合の附近では, 礫岩は花崗質岩の径数 m の巨塊を含む。

設楽第三紀層が中央線破砕岩類を覆うと思われる露出は, 七郷村巣山の北約 2 km でみられる。 そこでは小流の河床に, 流紋岩質物の小塊を含む砂岩と, 火成岩源の破砕岩類との連続露出があり, 垂直の露出面がないので確実な被覆面は観られないが, 両者の間に断層は認められない。 なお, この附近では, 設楽第三紀層はきわめて薄く, 基底部から凝灰質であり, 北方数 10 m ですでに上位の火山岩類が現われている。

II.11.2 砂岩頁岩互層

礫岩砂岩層は上位に向うと, 頁岩の夾みを増して砂岩頁岩互層に移り変わる。

本互層の下部では砂岩が優勢で, 上部では砂岩・頁岩が相半ばする。 互層全体の厚さは玖老勢附近では約 500 m である。

砂岩および頁岩はそれぞれ厚さ数 m 以下, 最も多くは数 10 cm 以下であるが, 一部には 10 m 以上の厚層をなすこともある。 砂岩は灰色, 中粒ないし細粒である。 最下部のものはやゝアルコーズ質, 最上部のものは凝灰質を帯びる。 チャート・花崗岩・閃緑岩などの細円礫を部分的に含んで, 礫岩に移り変わることがある。 頁岩は黒色ないし青灰色を呈し, 層理をよく示す。 風化すれば灰白色に変じ, 玉葱状に割れる。 たゞし, 厚層をなす頁岩には無層理で細角片に崩れるものがある。 最上部の頁岩は凝灰質である。

II.12 設楽火山岩類

設楽火山岩類を区分して, 三輪流紋岩類・七郷流紋岩類・鳳来寺流紋岩類・石英安山岩類および安山岩類とする。

II.12.1 三輪流紋岩類

三輪流紋岩類は設楽堆積盆地の中央に広く分布する。 凝灰岩および凝灰角礫岩を主とし, このほかに熔岩・岩頚などを含む。

大野の北西および北東において, 本岩類が設楽第三紀層を覆うのが観察される。 両岩層の境附近には, 第三紀層の砂岩や頁岩と三輪流紋岩類の凝灰岩との互層, あるいは砂泥質物と凝灰質物との混合した岩相が現われる。

大野から北へ槇原に亘る間の三輪川に沿うところには, 本岩類の下部が分布し, 下位から火山砕屑岩・熔岩, ふたゝび火山砕屑岩の順序に重なる規則性が窺われる。 しかしこれから上位の本岩類の主部では, 火山砕屑岩と熔岩や岩頚などの流紋岩とが錯雑していて, 噴出順序の規則性を求め難い。

三輪流紋岩類の構造は以上のように複雑であるが, 凝灰岩や凝灰角礫岩には層理を示す部分があり, これらの方向を綜合すると, 本岩類は分布の周辺部では, 分布の中心に向かって 20~30°に傾斜する傾向が察せられる。

本岩類に属するものは, 流紋岩も火山砕屑岩も, ともに緻密質であり, 淡灰色を呈し, あるいは広範囲に変質して灰白色を呈し, 風化面は褐色に汚れているのを特徴とする。

熔岩および岩頸 : 熔岩および岩頚をなす流紋岩は明らかな斑晶を有することもあるが, 多くは斑晶に乏しくてリソイダイト質である。 リソイダイトは一般に珪質岩様ないし燧石様を呈し, きわめて堅硬であり, 強い打撃によってはじめて介殻状断面を生じて割れる。 塊状で諸方向の割目をもつもの, 流状構造を示すもの, 密な板状節理あるいは流状構造とほゞ直交する柱状節理を示すもの, などがある。 また色・組織などを異にする別の流紋岩を取込んだ角礫状流紋岩も少なくない。 流紋岩の構成鉱物および組織は次の通りである。

斑晶 : 石英・斜長石(少量)・黒雲母(稀)
石基 :
石英・アルカリ長石およびガラスからなり, 組織は微晶質, 隠微晶質, ガラス質など

岩石は一般に変質していて, 方解石・絹雲母・曹長石・赤鉄鉱などが生じている。

凝灰岩および凝灰角礫岩 : 凝灰岩の標式的なものは素焼白色土器様の外観を呈し, リソイダイトに較べて軟弱である。 これが広く分布する所では, 河川の河床一面に平坦な岩盤を露呈する。 その好例は三輪川の処々で観られ, この川は「板敷川」とも呼ばれるほどである。 そしてリソイダイトや安山岩類の岩脈が貫ぬく所では, その部分だけが河床に突出して奇景をつくる。 凝灰岩を検鏡すると, 微晶ないし隠微晶質の珪長質物によっておもに構成され, このうちに流紋岩・石英などの微片を点々と含むのが観られる。 凝灰岩はしばしば硬く変質していて, かような部分は肉眼でも鏡下でもリソイダイトと識別し難いことがある。

凝灰角礫岩は上記の凝灰質の基質中に, リソイダイトその他白色の流紋岩の拳大以下の角礫を有するものである。 変質硬化したものは角礫状流紋岩と区別し難い。

槇原北東の谷などでは, 凝灰岩あるいは凝灰角礫岩であるのに, 火山岩にみられると同様な柱状節理や板状節理を示し, 累積時はかなりの高温にあったと推測されるものがある。

II.12.2 七郷流紋岩類

本岩類は三輪流紋岩類の分布の南東縁に沿って, 東北東に長く分布する。 分布の南西端では三輪流紋岩類の上に載り, 分布の南側の七郷村細川・大島附近では直接に設楽第三紀層を覆い, 北側は断層で断たれている。 細川の北東から大島方面の基底部には, 流紋岩質の凝灰角礫岩ないし凝灰岩が薄く存在するが, 本岩類の主部はほゞ均質な流紋岩の厚い熔岩からなる。 たゞし熔岩のうちに凝灰角礫岩が少し挟まれている。

基底部の凝灰角礫岩などには層理が発達し, これは設楽第三紀層の層理とほゞ一致して北北西に傾斜する。 また熔岩には流状構造が認められることが多く, これも全域を通じて概して北北西に 20~40°傾斜する。

熔岩 : 熔岩は灰色ないし灰緑色を呈し, 一般に流状構造を示す。 多くは斑状であって, 主として石英からなる斑晶を多量に有し, また三輪流紋岩類に由来すると思われる白色の岩石や, 砂岩・頁岩の破片および流状構造に沿って引き延ばされた緑色の斑紋を多量に含む。

斑晶 : 石英・斜長石(少量)・黒雲母(稀)・柘榴石(少量)
石基 :
多くはガラス質ないし隠微晶質であって流状構造を示す。 一部は石英・アルカリ長石などからなり微粒質
2次鉱物 : 緑泥石・方解石・絹雲母など

長石は新鮮である。 有色鉱物はまったく緑泥石化してることが多く, これらの一部には輝石の仮像と思われるものもある。

凝灰角礫岩および凝灰岩 : 基底部のものは灰白色ないし白色を呈するが, 三輪流紋岩類のものに較べて緻密さに欠けている。 白色の流紋岩質岩石や第三紀水成岩の小角礫を含む。 熔岩中に介在するものは緑色の斑紋に富む。

II.12.3 鳳来寺流紋岩類

本岩類は三輪流紋岩類の西縁部を被覆し, 次節に述べる石英安山岩類を伴なって鳳来寺山の山体を構成し, それから北へ長く分布する。 熔岩・凝灰岩・凝灰角礫岩などからなり, これらの多くはガラス質であることを特徴とし, 熔岩には松脂岩というべきものが少なからず存在する。

熔岩には流状構造が, 火山砕屑岩には層理がしばしば観られ, これらは部分的には種々の方向に傾斜するが, 全体としてみると, 岩体の中・下部では東ないし東北東に 20~40°をもって傾斜して, 下位の第三紀層の傾斜とおゝむね一致し, 岩体の東部を占める上部では水平に近い。

本岩類の基底, 例えば鳳来寺山西麓の門谷附近では, 設楽第三紀層の砂岩頁岩互層は凝灰質を帯び, これを整合に覆って, 鳳来寺流紋岩類の基底の凝灰角礫岩が厚さ数 10 m をもって露出する。 これから上の本岩類の主部, 例えば門谷から鳳来寺登山道を登って鳳来寺堂宇に達し, さらに山稜に亘る上下数 100 m の間には, 種々の性質の流紋岩熔岩が何枚も厚く重なり, その間処々に火山砕屑岩を挟んでいる。 熔岩のうちには松脂岩があり, とくに最下部および最上部の2層準に顕著である。 なお上部の松脂岩の附近には, 石英安山岩の熔岩も介在する。 本岩類の上部, 例えば鳳来寺山稜以東は, ガラス質の凝灰岩ないし凝灰角礫岩によっておもに構成され, 処々に松脂岩その他の流紋岩熔岩を薄く挟む。 この部分は東側では直接に三輪流紋岩類の上に載っている。

鳳来寺山などにみられるものに類似したガラス質流紋岩は, 鳳来寺村大草・吉村などで, 領家変成岩類あるいは花崗質岩類を貫ぬく小岩脈をなしている。

以下, 鳳来寺流紋岩類の各岩石につき記載する。

熔岩 : 熔岩には流状構造が発達していることが多く, 露頭を遠望すると堆積岩の層理に似ることがある。 また流状構造にほゞ直交する節理に富み, しばしば直立した急崖をつくり, 鳳来寺山はその奇勝で有名である。

熔岩には種々のものがあって, 不均質である。 最も多くみられるのは斑晶に乏しく, 白色ないし淡緑白色を呈し, かつ多孔質のガラス質岩石である。 ガラスが緻密質となり, 松脂岩というべきものも少なくない。 松脂岩にも種々のものがある。 すなわち, 色には緑色・青緑色・飴色・褐色・黒色など, 光沢にはガラス様・真珠様・石鹸様・タイル様など, また組織には緻密塊状, 真珠岩裂開を示すもの, 縞状などがあって, すこぶる雑多である。 上述のような種々のガラス質のもののほかに, 白色ないし淡灰色でリソイダイト質のもの, 多量の斑晶を点々と含むもの, リソイダイト・頁岩などの破片を含む角礫質のものなども少し存在する。 玖老勢駅から北東へ, 687 m 三角点に至る小路における熔岩の基底部には, 多斑晶流紋岩, 白色多孔質のガラス質流紋岩, 緻密なガラスからなる松脂岩が, それぞれ厚さ数 cm ずつに繰り返して縞状に重なるのがみられる。

以上の種々の流紋岩の鏡下の観察を綜合すると, 次の通りである。

斑晶 :
石英(最も多量)・斜長石・正長石(少量)・ 鉄苦土鉱物(黒雲母あるいは紫蘇輝石)・柘榴石(稀)などからなるが, 一般に斑晶は少ない。
石基 :
無色のガラス(多孔質のもの, 緻密で流状構造・真珠岩裂開を示すものなど)・ 石英・アルカリ長石・微球果(microspherulite)などからなる。 多くはガラス質であるが, 一部は微粒質, 珪長質などを呈する。 ガラス中には, 緑泥石・沸石などの微細な球状体が散在することがある。

鳳来寺山の熔岩の下部の流紋岩, 例えば玖老勢の東方の松脂岩は鉄苦土鉱物として黒雲母を含むが, 熔岩の上部, 例えば鳳来寺堂宇附近の松脂岩は紫蘇輝石を含む。 輝石を含む松脂岩の附近には石英安山岩が分布する。 石英安山岩は常に紫蘇輝石を含み(「II.12.4 石英安山岩類」参照), その石基は部分的には著しくガラス質のこともあり, このようなものはたゞ多量の斑晶を有することが松脂岩と相違する。 本図幅では, 松脂岩はいずれも岩質上鳳来寺流紋岩類のうちに一括し, 石英安山岩類から区別してある。 しかし, 上記の岩質からみて上部に分布する松脂岩には, むしろ石英安山岩類と成因上近縁を有するものがあると推測される。

鳳来寺山流紋岩については, 化学分析その他の研究が報告 19) されている。

凝灰岩および凝灰角礫岩 : 鳳来寺山の西麓などでみられる基底部の凝灰角礫岩ないし凝灰岩は, 緑灰色, 粗粒, 軟質である。 凝灰角礫岩は花崗質岩・砂岩・頁岩, 白色多孔質のガラス質流紋岩などの角礫を含む。

鳳来寺山の山稜以東などでみられる 上部の凝灰角礫岩ないし凝灰岩は灰白色を呈し, 一部は緻密質, 多くは著しく多孔質である。 淡緑色, 褐色などのガラス質物その他の外来物を含み, これらは厚さ数 cm 以下のレンズ状をなし, 岩石の層面に沿って引き伸ばされた形に介在することが少なくない。 凝灰角礫岩はガラス質その他の流紋岩の径数 10 cm にも達する岩塊を多量に含む。

上部の凝灰角礫岩および凝灰岩では, 硬軟の部分が層状に重なっていて, 侵蝕によって硬い部分をいたゞいた卓状, 古塔状などの特異な形の露岩を生じている。

II.12.4 石英安山岩類

石英安山岩類は鳳来寺流紋岩類の上半部に介在する熔岩および火山砕屑岩として, また三輪川畔の柿平附近では, 三輪流紋岩類または七郷流紋岩類を貫ぬく大きな2つの岩脈として現われる。

鳳来寺山の南東中腹の行者越附近には, 石英安山岩が熔岩として分布し, その基底に薄い凝灰角礫岩層を伴なう。 この岩体は鳳来寺流紋岩類の熔岩を覆い, 一部では三輪流紋岩類の上に載り, そして上方は鳳来寺流紋岩類の上部の松脂岩によって覆われる。 基底の凝灰角礫岩は流紋岩および緑色に変質した岩石からなる角礫を多量に含み, 層理を示す。 この層理および熔岩にみられる流状構造は, ともに北東に傾斜する。

鳳来寺堂宇附近には, 松脂岩のなかに介在する薄い熔岩として石英安山岩がある。 そこの鐘楼の裏ではこの石英安山岩の上面が砕塊状を呈し, これを松脂岩の熔岩が覆い, また砕塊の間をも塡めている露出があって, この石英安山岩が岩脈ではないことがわかる(第1図)。 この石英安山岩は松脂岩の直下では結晶質の石基を有するものであるが, 下方では石基が著しくガラス質となる。

第1図 鳳来寺鐘櫻裏における石英安山岩と松脂岩との関係

玖老勢北東の山腹にも, 松脂岩の下底部に当って石英安山岩がある。 流状構造および柱状節理を示し, これらの方向性と岩体の分布の形からみて, 上下の流紋岩類の構造とほゞ平行に東へ緩斜する熔岩と推定される。 岩体の基底部に当ると思われるところには, 東方に緩斜する薄い凝灰岩層がみられる。

鳳来寺山北方の東斜面にも石英安山岩が分布するが, その現出状態は未詳である。

三輪川畔の柿平附近の2つの岩体のうち, 西側のものは分布の形からみて急斜する岩脈と思われる。 鉄道の切割やその南対岸の県道に, 石英安山岩と三輪流紋岩類との連続露出があるが, この部分では 岩石が珪化・カオリン化,黄鉄鉱による鉱染などの変質作用を受けていて, 接触面は不鮮明である。 東側の 高土 たこうど 山附近の岩体も岩脈と思われるが, 詳しい現出状態は不明である。

石英安山岩類の岩質は, 熔岩・岩脈あるいは個々の分布によって多少相違し, 例えば石基が結晶質のもの, ガラス質のもの, あるいは岩石が新鮮なもの, 緑泥石化などの変質を受けたもの, などがあり, これらの相違によって岩石は灰色・灰褐色・紫灰色・黒色・灰緑色などを呈する。 しかしいずれも斜長石と有色鉱物とからなる大形の斑晶を多量に含み, かつ有色鉱物は輝石である点で一致する。 造岩鉱物は次の通りである。

斑晶 : 斜長石・紫蘇輝石および石英
石基 : 珪長質, ガラス基流晶質あるいはガラス質

斜長石は斑晶中で通常最も多量であって, 長径 1 cm に達する卓状の粗晶のこともある。 紫蘇輝石は柱状を呈し, X = 微菫色, Z = 微緑色の弱い多色性を示す。 行者越および柿平附近のものは, 有色鉱物はまったく緑泥石化されている。 石英は一般には少ないが, 行者越附近のものでは斑晶のなかで最も多い。

II.12.5 安山岩類

安山岩類は多数の岩脈ないし貫入岩床をなして, 設楽第三紀層・ 種々の流紋岩類・ 石英安山岩類ならびにより古期の種々の岩層を貫ぬく。 岩脈ないし岩床は, とくに設楽堆積盆地の西半部をほゞ南北に走る地帯に群集して, 岩脈群(dyke swarm)を形成している。 またその西方の領家変成岩類および花崗質岩類の地域にも処々に出現し, また岩脈群の東方にも散見され, 南方の中央線圧砕帯にも現われる。

岩脈・岩床は, これが貫入した断層面や設楽第三紀層の層面によって, 方向が支配されたものもあるが, 多くはほゞ南北に走り, そして岩脈群の中軸およびそれ以東に位置するものはほゞ直立し, これから西方に現われるものほど次第に低角度をもって東に傾く傾向があり, 西方の領家変成岩類などの地帯のものも, 変成岩の層面などと無関係に緩く東へ傾斜する。 岩脈・岩床の厚さは数 10 m 以下であって, 薄いものでは数 10 cm に過ぎない。 図幅地域の北西縁には図上でかなり広い幅を示しているものがあるが, 岩脈と地形斜面との傾斜がほゞ一致するからであって, これも厚いものではない。 岩脈・岩床は延長方向には長く続き, 例えば鳳来寺山の西側には, 延々数 km に亘って追跡されるものがある。

岩脈・岩床には, その両壁にほゞ直交する柱状節理が発達し, 壁に接する部分には壁と平行な板状節理がみられる。 また柱状節理とぼゞ直交する流状構造もある。 これらの様子はおゝむね規則正しいので, ある露出において節理や流状構造から, その岩脈の大体の方向を予測して誤りのないことが多い。

安山岩類が両盤に与えた変成作用は一般に顕著でないが, 図幅の北縁外の萩平の西の鉄道切割では, 岩床の両盤の第三紀層の頁岩が数 m に亘って硬化している。 玖老勢から南へ田代に至る県道の峠では, 岩床によって上盤の水成岩層が押し上げられている。

安山岩類は侵蝕に抗してしばしば馬背状に突出する。 鳳来寺山西麓の設楽第三紀層からなる丘陵地では, 山稜部が安山岩類の岩床によって占められることが少なくない。 緩傾斜の岩脈・岩床では柱状節理が直立しているので, 絶壁が生じていることが多い。

安山岩類には安山岩質のもののほかに, 玄武岩質のものも包括する。 多くは斑状で, 緻密な石基中に斜長石の斑晶を多量含む。 肉眼では無斑晶質のものもあるが, これも鏡下でみると微斑晶を有することが多い。

斑晶 : 斜長石・有色鉱物(普通輝石・紫蘇輝石および時に橄欖石)
石基 :
斜長石・アルカリ長石・ 有色鉱物(輝石・橄欖石・稀に緑色角閃石)・ガラスなどからなり, 間粒質, 塡間質, 毛氈質, ガラス基流晶質, 粗面岩質あるいはガラス質を呈する。

有色鉱物の各種は同一標本に常に共存するのではない。 別に外来結晶と思われる石英および汚濁した正長石が, 他形を呈して斑晶状に少量散在する。

安山岩類は新鮮な部分では暗灰色ないし黒色を呈するが, 自己変質を受けた部分の方が多くて, その程度によって 帯緑灰色・淡灰色から灰白色・淡紅白色・白色などに変色している。 したがって変質の著しいものは, あたかも酸性岩のようにみえる。 しかし, 斑晶の長石の形状が明瞭にみられ, 石英を欠くことによって, この地方の流紋岩類とは識別される。 また同一の岩脈または岩床において, 白色から暗色に移り変わるのがみられることもある。 暗色の岩石でも鏡下では新鮮なものは少なく, 斜長石の曹長石化, 有色鉱物の緑泥石化, 黄鉄鉱の散在などがみられる。 白色に変わったものでは岩石全体がさらに炭酸塩化, 絹雲母化, カオリン化などの作用を受けている。 極端に変化したものでは, 原岩の斑状構造は残っているが, 構成鉱物はまったく分解して, 方解石・絹雲母・玉髄質石英・アルカリ長石・ 黄鉄鉱・褐鉄鉱などの2次鉱物だけからなる。 このようなものには陶石として採取される部分がある。

II.13 設楽堆積盆地の火山活動および地質構造

各種の火山岩類の分布・噴出の順序・地質構造などに基づき, 設楽堆積盆地の火山活動を次のように分類する。

前期 三輪流紋岩類の噴出
中期 七郷流紋岩類の噴出
鳳来寺流紋岩類の噴出
石英安山岩類の噴出
後期 安山岩類の貫入

三輪流紋岩類は最初の旺盛な火山活動によるものであって, この活動を前期とする。 この期の噴出物は堆積盆地の中央に広く分布し, かつ錯雑した累積状態を示すことからみて, その噴出孔はおそらく数多く不規則に散在していたと思われる。

次に噴出した七郷流紋岩類と鳳来寺流紋岩類とは, ともに前期の噴出物を取り巻いて分布し, そして分布の内側では三輪流紋岩類を覆うが, 外側では三輪流紋岩類を欠いて直接に設楽第三紀層を覆うので, 前期の噴出物の周辺に弧状に並んで生じた噴出孔から噴出したものと推測される。 七郷・鳳来寺両流紋岩類は互に隔離して分布し, 流紋岩の性質にも少し差異はあるが, 上述のように現出状態が一致しているので, おそらく相呼応して噴出したものであろう。 石英安山岩類は岩脈としても現われているが, 鳳来寺流紋岩類の上半部に熔岩として介在し, 同一火山体の一部を占める。 以上のことからみて, 七郷・鳳来寺両流紋岩類および石英安山岩類の活動を一括して中期とする。

前期および中期の火山岩類は, 少数の岩脈をなすものを除けば, 設楽第三紀層の分布地域内に限って現われ, したがって同一堆積盆地に属する。 そして噴出には多少の前後はあるが, これらが第三紀層を直接に覆う関係はおのおのが整合的であり, また大野附近の岩層分布からみて, 各火山岩類に覆われる第三紀層の層準には相互に著しい差はない。 したがって, これらの火山活動は水成岩層の堆積と時代の間隙なく, またすべて短期間に相次いで行われたものであり, 噴出の時代は中新世であろう。

北に接する7万5千分の1「設楽」図幅地内では, 第三紀層は向心構造を呈しており, また本図幅地内でも設楽第三紀層は, 全体として堆積盆地の中心に向かって傾斜しているので, 両図幅を通じると1つの盆地構造(basin structure)がほゞ完結される。 前期および中期活動の火山岩類は, この第三紀層に取り囲まれて分布し, かつ火山岩類自体も全体として堆積盆地の中心に向かって傾斜する。 したがって, 火山岩類も盆地構造に参与していて, この構造が完成されたのは中期火山活動後であるといえる。

前期および中期の火山活動は, その終り頃には中性岩をも噴出したが, おもに酸性岩を出し, そして一部には岩脈も生じたが, 大部分は熔岩および火山砕屑岩を累積したのに対し, 次期の火山活動を示す安山岩類は中性ないし塩基性であり, そして本図幅区域ではもっぱら岩脈および岩床として貫入している。 この安山岩類の活動を後期とする。

安山岩類の岩脈あるいは岩床が群集している岩脈群地帯は, 堆積盆地の西半部に偏在し, かつほゞ南北に直走していて, 中期の噴出物およびそれ以前の岩層が示す盆地構造とは, ほとんど無関係である。 また多くの岩脈あるいは岩床も南北に走り, かつ岩脈群地帯の中軸部に位置するものでは傾斜が垂直に近く, そして西に位置するものほど緩く東へ傾斜する傾向がある。 これらのことを綜合すると, 地下に存在する南北方向に延びた岩漿溜のようなものを仮定し, 安山岩類の岩脈あるいは岩床はこれから放散されたかの様子に配列していて, 盆地構造を生じた運動とは, 機構上関係づけ難い。 要するに後期の火山活動は盆地構造の完成後に生じたものである。

設楽第三紀層および火山岩類の地域の南限附近には, 中央(構造)線活動の1つを意味する (「II.10.2 河内層および水成岩源破砕岩類」参照) 東北東に走る断層群がある。 この断層群は中期噴出物やそれ以前の岩層を切っている。 またこれらが走る附近では設楽第三紀層などの構造が乱れていて, 例えば, 大野の北を走る断層は, 大野北側では落差を減じて第三紀層に背斜状構造を生ぜしめ, 全般の盆地構造に局所的な波曲をつくっている。 一方, これらの断層群には安山岩類の岩脈が貫入しているところがあり, 断層に近接する第三紀層などが破砕, 擾乱されている場合にも, 岩脈はまったく乱されていない。 したがってこれらの断層活動, すなわち中央線の活動の1つは, 中期火山活動後, 後期火山活動前, すなわち盆地構造の完成と時期をほゞ同じくするものといえる。 なお, 断層の間には中央線破砕岩類を挟み込んでいるところが多いので, その附近の第三紀層の下にも中央線圧砕帯が潜在していると推察される。 この地方に盆地構造が生じたのに際し, かように特殊な基盤の地帯に, 断層群や部分的な構造の乱れを生来せしめたのであろう。

II.14 巣山層

本層は七郷村巣山附近において, 中央線圧砕帯上に位置する。 東側では中央線圧砕岩類および結晶片岩類を被覆し, 北側では急傾斜の逆断層によって中央線圧砕岩類と, また南側では急傾斜の正断層によって角閃岩と接する。

本層はほとんど礫岩のみからなり, 一般に無層理であるが, 巣山の東方などでは礫質砂岩・赤色砂あるいは泥土を薄く挟み, 偽層理を示す。 地層の傾斜が明らかでないので厚さは不明であるが, 巣山の南西の七滝附近では, 谷底から山上まで上下 100 m 以上に亘って礫岩が露出する。

礫岩は礫が密集し, 膠結物は少ないが, 岩石は堅く膠結されている。 礫は人頭大以下で, 大小のものが混り淘汰は不良であるが, よく水磨された円礫であることが多い。 礫の岩種は 硬砂岩・珪質粘板岩・チャート・花崗岩・閃緑岩・石英斑岩・ 黒雲母片麻岩・黒雲母片岩・ホーンフェルス・種々の結晶片岩などのほかに, やゝ角張った礫として角閃岩および中央線破砕岩類があり, この地方ならびに背後地に分布する種々のものを混じえる。 膠結物は砂質物のほかに, おそらく緑色片岩や角閃岩から由来したと思われる鉄分に富む泥質物を多く混え, これが酸化されて礫岩の露出面は赤褐色ないし紫褐色を呈することが多い。 本層の分布の北部では中央線破砕岩類の礫が多く, 膠結物には砂質物が目立ち, 岩石はやゝ弱く膠結されている。 南部では角閃岩の礫が多く, 膠結物には鉄分が多く, 岩石は堅く膠結されている。 かように礫岩の岩質は, それぞれの側の基盤岩によって顕著に支配されているので, 南北両側の断層の落差はいずれも大きくないと推定される。

巣山層はその分布および岩相からみて, 中央線上に生じた古い河谷の堆積物であろう。 化石を産出しないので, 時代は詳らかでない。 設楽第三紀層とは隔離しているので, 関係はたしかでないが, 巣山層の構成物には 設楽第三紀層や火山岩類に由来するものは未だみいだされていない。 本層の分布の南北を限る断層は, むしろ小さな滑りであるので, この地方の他の断層活動と比較して時代を考証するには足りない。

II.15 洪積層および冲積層

洪積層および冲積層は, いずれも河成堆積物であって, 未膠結の礫・砂および粘土からなる。 洪積層は古期および新期の2つに分けられる。

II.15.1 古期洪積層

南隣地域に広域を占める三方ケ原を構成する洪積層の延長が, 図幅地域の南東隅に分布する。 また図幅地域南西部の豊川流域や八名村富岡附近にも古期洪積層が分布する。 三方ケ原に続くものと, 豊川流域などのものとは山地によって隔てられていて, 相互の関係は直接には不明であるが, 分布の高さがほゞ一致し, 構成物の性質に似たところがあるので, 一括して取扱う。 すなわち, いずれも海抜 40 m から最高 100 m 強の問に堆積平坦面を残し, また構成物は河成の円礫を主とし, 酸化されて赫色を呈する砂および粘土を混える。 基盤の山地に接する附近では, 礫は角張り, 崖錐の性質を帯びる。 岩層の厚さは, 図幅地域南東部のものでは 70 m 以上に達するところもあるが, 富岡附近および豊川流域のものでは 10 数 m 以下である。

II.15.2 新期洪積層

本層は豊川流域において, 古期洪積層から 10 m 内外の下方に階段地形をつくって分布する。 新城附近では, 階段は数 m ごとの数段をつくって冲積平地に低下する。 上流の大海附近では, 河川は階段面から直接に深さ 10 数 m 以上の懸崖をつくって峡谷中を流れ, 洪積層は懸崖の上端の数 m の部分だけに観られ, その下方には基盤岩が露出する。 さらに上流の大野附近でも, 河川は同様な峡谷をつくっているが, 階段面には第三紀層が直接に露出し, 洪積層はほとんど存在しない。 大野より上流には階段面はほとんどみられない。

新期洪積層は砂利・砂などからなり, 赫色に酸化されていることはほとんどない。

II.15.3 冲積層

本層は河川に沿って存在するが分布は広くない。 新城町附近で最も広いが, 豊川は冲積地から数 m の崖をつくって下方を流れ, その崖の下部には基盤岩が露出していて, そこでも冲積層は厚くない。 たゞし豊川が本図幅地を離れる附近から下流では, 冲積層は広く厚く発達している。

III. 應用地質 [ 以下の [注] 参照 ]

[注]
本図幅の地質図が印刷された後に判明した事項をも伴せて記述する。
以下の説明で * 印付きのものは地質図中に位置が記入されていない。

本図幅地内に賦存する有用鉱物のうち, 経済的に重要なものは陶石と石灰岩とである。

III.1 鉛 *

図幅地域中央部の七郷村睦平から南へ山吉田村阿寺に至る峠の北側に旧坑がある。 旧坑口附近に方鉛鉱および黄銅鉱を含む鉱石塊が少し散在しているが, 旧坑は崩壊していて鉱床の性状は不明である。

III.2 マンガン

秩父古生層地域の三嶽山の北西斜面にマンガン鉱を採取した旧坑がある。 鉱床は井伊谷層のチャートと輝緑凝灰岩との境にある。 坑口から数 m の先は崩壊していて入坑できないが, いわゆる狸掘式の坑道であることからみて, 鉱床は小さなポケット状鉱体の集まったものらしい。 鉱石は栗色マンガン鉱と酸化マンガン鉱とからなり, 珪質物をかなり含んでいる。

III.3 ニッケル

図幅地域南西部の山吉田村中平 9) および舟着村吉川の南の2ヵ所に, 蛇紋岩を露天掘した跡がある。 蛇紋岩体は 橄欖岩の部分をほとんど残さないまでに著しく変成された状態にあって, 軟弱で脂感があり, 緑色を呈する部分を含む。 鉱床は蛇紋岩全体に 1,000 分台の低品位のニッケル分を含む形式のものであって, ニッケル分が特にやゝ濃集して高品位を示すものはなく, 平時では経済価値に乏しい。

III.4 滑石および石綿

図幅地域北東隅の浦川町 山戸金 やまつね 附近および北東縁の熊村の東側において, 小規模に滑石が採取されている。 両所とも結晶片岩類の阿多古帯に属する。 山戸金の鉱床は滑石片岩のうち, 特に滑石に富んで軟弱な部分である。 熊村東側のものは, 蛇紋岩中に透角閃石および滑石を生じた部分である。 透角閃石は長さ 2~3 cm の繊維状を呈し, 石綿として採取されている。

III.5 陶石

図幅地域北西隅の鳳来寺村出合に, 設楽火山岩類の安山岩類の岩脈が陶石化した部分があり, 「鳳来寺陶石」と呼ばれてやゝ著名である。

この地の安山岩の岩脈は巴川を南北に横断し, 領家変成岩類のなかを走る。 変成岩類が北へ傾斜するのと関係なく, 岩脈は 20~50°をもって東へ傾斜する。 岩脈は巴川の南では急傾斜であるが, 北では緩傾斜であって, 山稜の東西両斜面とその東の河床との3条の露頭を示す。 岩脈の厚さは 10 数 m である。 延長は 2 km 以上も続くが, 陶石化しているのは, このうち巴川に臨む南北の部分だけである。

陶石化した安山岩は, 白色を呈し素焼陶器様の外観を示す。 斑晶はおもにカオリンに変化し, 石基は 玉随質石英・カオリン・絹雲母・アルカリ長石などの 微晶ないし隠微晶質物からなる。 品質が良くない部分は褐鉄鉱および硫化鉄を多少含む。 陶石脈には柱状節理を示す部分がある。 その横断面をみるに, 半ば陶石化した部分では, 第2図のように節理面には褐鉄鉱が滲出して被膜をなして附着し, 節理面に近い内部は白色の品質の良い陶石になっているが, 中心に向うと次第に灰色を帯びて陶石化が充分でなく, かつ黄鉄鉱の微粒を加えることがある。 この様子からみて陶石として品質のよいものは, 安山岩の自己変質作用のほかに, 地表の風化作用も加わって生じたものと思われる。 なお, 陶石脈は地下の部分では露天掘が困難になるばかりでなく, やがて色も灰色を帯びて, 黄鉄鉱を増し, 陶石化が不完全となり, 品質を低下する。

第2図 陶石脈の柱状節理の横断面

鳳来寺陶石は, 陶石としてはやゝ堅すぎ, 粘着性も乏しいとされ, 高級ではない。 戦後国産陶石の不足に際して本格的に採掘されるに至ったものである。 昭和 23 年には従業員 60 名内外をもって稼行し, 月産 300~500 t をみた。 採掘は露天掘によって行われ, 産出物は手割りによって褐鉄鉱の多い部分などを除去し, かつ肉眼によって級別され, 山元から貨物自動車によって玖老勢駅に搬出されて, 名古屋などの陶磁器工場に送られていた。

鳳来寺陶石については, 鉱床調査・顕微鏡観察・化学分析・X 線検査・ 熱的性質の研究・水性試験などの結果が報告 10), 11), 17) されている。

出合の南西約 4.5 km の作手村地内の安山岩岩脈 * にも, 陶石化された部分があり, また長篠村吉村にも同様な岩脈 * があるが, 未開発である。

III.6 蝋石 *

七郷村巣山の北東 1 km 余, 中央線圧砕帯に, 片麻岩状を呈する石英閃緑岩質圧砕岩を母岩として, 不純な蝋石が網状脈なして鉱染体をなして賦存する。 蝋石を検鏡すると 石英粒の間をおもに葉蝋石からなる鱗状微晶が塡しているのが観られる。 純白で蝋触感を有する良質鉱を試験したところ, 焼上りは大体に白く, 耐火度は SK30 強である [ 以下の [注] 参照 ] 。 このような良質鉱の量は多くない。

[注]
共立原料株式会社において行った試験の結果, 同社の蜂須賀榮治氏からの書信による。

同様な蝋石は, 巣山から西へ細川南方に亘る中央線圧砕帯中の処々に, 転石として見られるので, 調査すれば新しい露頭をみいだす可能性はある。

なおこの蝋石鉱床については, 地質調査所月報 25) に記載してある。

III.7 石灰石

秩父古生層の井伊谷層には, 石灰原料として品質純良の石灰岩が, 大小の岩体をなして含まれ, その量は莫大である。 このうち図幅地南縁部にあって輸送の便を有する岩体は, 採掘されて石灰製造などに供せられている。 また都田村鷲沢の北側山中からは, 索道によって都田駅まで搬送されている。

III.8 石材

鳳来寺流紋岩類の基底の凝灰角礫岩には, 塊状を呈して堅さが切取りおよび加工に適するものがあり, 鳳来寺村副川の東方で採取されている。 石臼などに加工されて地方的に利用される。

飯田線槇原駅前には三輪流紋岩類のリソイダイトの山地が聳立する。 このリソイダイトはきわめて硬質であり, しかも割目に富んで容易に拳大以下の手頃な割石となり, かつ輸送に至便であるので, 土木用材料として多量に採取されている。

文献

1) 三浦宗次郎 :
20 万分の1地質図幅「豊橋」および説明書, 地質調査所, 1893
2) 石川成章 :
三河設楽第三紀及其附近地質報告, 地質学雑誌,Vol. 6, 7, 8, 1899,1900,1901
3) Bunjiro Kotô :
On the Volcanoes of Japan, 地質学雑誌,Vol. 23, 1916
4) 納富重雄 :
三河設楽第三紀地域に領布する石英粗面岩について, 地学雑誌,Vol. 34, 1922
5) 篠田恭三 :
三河地方に産する紅簾片岩, 地質学雑誌,Vol. 38, 1931
6) 大塚彌之助 :
西南日本中央構造線と長崎三角地域とに関する二,三の考察, 地震研究所彙報,第13号,第2冊, 1935
7) 小出博 :
天竜川流域の三波川系結晶片岩, 東大農学部演習林報告,24, 1937
8) 堀越義一・片野豊夫 :
静岡県峯ノ沢鉱山附近の地質鉱床概報, 地質学雑誌,Vol. 47, 1940
9) 木下亀城 :
ニッケル資源(内地), 学術振興会第 58 小委員会綜合報告,第5号, 1945
10) 大島敬義・上野三義 :
愛知県南設楽郡鳳来寺陶石調査, 地質調査所速報,No. 12, 1947
11) 窯業原料協会 :
窯業原料,第2集, 1949
12) 林唯一 :
愛知県設楽第三紀層より出たクモヒトデ, 鉱物と地質,Vol. 3 , 1949
13) 浅井宏 :
愛知県雨生山斑糲岩体に伴われるローソン石藍閃石岩について(講演要旨), 地質学雑誌,Vol. 55, 1949
14) 浅井宏 :
愛知県雨生山の斑糲岩に伴われるロヂン岩様岩石について, 地団研札幌支所報,No. 5, 1949
15) 浅井宏 :
愛知県雨生山塩基性火成岩体(講演要旨), 地質学雑誌,Vol. 56, 1950
16) 浅井宏 :
愛知県雨生山近傍の橄欖岩体のエヂリン輝石, 地団研札幌支所報,No. 9, 1950
17) 大島敬義 :
陶石, 日本鉱産誌,B III,東京地学協会, 1950
18) 斎藤正次 :
設楽第三紀層及び火山岩類の南縁に於ける中央構造線(講演要旨), 地質学雑誌,Vol. 56, 1950
19) 河野義礼 :
本邦産玻璃質岩石の研究, 地質調査所報告,No. 134, 1950
20) 槇山次郎 :
日本地方地質誌 -- 中部地方, 浅倉書店, 1950
21) 吉田新二・鈴木重人 :
愛知県設楽第三紀層の地質構造(講演要旨), 地質学雑誌,Vol. 57, 1951
22) 吉田新二・鈴木重人 :
愛知県設楽第三紀層の地質構造(講演要旨), 地質学雑誌,Vol. 58, 1952
23) 林唯一 :
鳳来寺山附近の地質(講演要旨), 地質学雑誌,Vol. 58, 1952
24) 嘉藤良次郎 :
設楽盆地東部の地質構造(講演要旨), 地質学雑誌,Vol. 59, 1953
25) 斎藤正次 :
愛知県七郷村巣山に見出された蝋石鉱床, 地質調査所月報,Vol. 5,No. 12, 1954

EXPLANATORY TEXT OF THE GEOLOGICAL MAP OF JAPAN Scale, 1 : 50,000

MIKAWA-ONO

Kyōto, No. 47

By MASATSUGU SAITO (Written in 1954)


Abstract

GEOLOGY

The Median Line which divides, tectonically, Southwest Japan into the Outer and Inner Zones traverses the area mapped from northeast to southwest. To the south of the line occur the crystalline schists, the Paleozoic and probably Mesozoic strata, and the metamorphosed basic to ultrabasic igneous rocks, all being characteristic of the Outer Zone. Zonal distributions of rocks and intensely folded structures prevail in the area similarly in other regions of the Outer Zone. To the north of the Median Line crop out the granitic rocks and their related metamorphic complex, characteristic of the Inner Zone. The Median Line is indicated by a broad cataclastic zone and by parallel faults.

The older rocks mentioned above are covered by the Tertiary sediments and volcanics, and the Quaternary deposits.

Crystalline Schists

The crystalline schists belong to the so-called Sambagawa and Mikabu metamorphic complex.

They consist of black- or green-colored tectonites. The black-colored rocks are usually graphite-sericite-quartz schist or phyllite, and are derivatives mostly from pelitic sediments, but partly from psammitic ones. The original sedimentary textures are observable in some slightly metamorphosed rocks. The green-colored rocks are constituted chiefly of chlorite, epidote, actinolite, calcite and albite in varying proportions, and contain hornblende, sporadically. They are derivatives from basic igneous or pyroclastic rocks. Some weakly metamorphosed parts carry pyroxene and soda-lime feldspar, which are the relict minerals of the original rocks. In case of special metamorphism, both of the black and green schists carry large, rounded or eye-shaped porphyroblasts of albite, which give spotted appearances in hand specimen.

The terrain of the crystalline schists is tectonically divided into the Atago, Funatsuki, Shizutama and Ishigami zones, which are composed of more or less characteristic rocks, respectively.

The Atago zone is in the northeastern corner of the area mapped. Quite different from the regional trend of other zones, rocks in this zone bear NW or NE and dip to the west. Dominant rocks are spotted schists and quartz schists, as well as non-spotted but remarkably metamorphosed schists, the remainders being small lenses of schistose limestone, serpentine and talc schists. Most of the green schists, either spotted or not, contain no hornblende or pyroxene.

The Funatsuki zone lies adjacently in the south of the Median Line and extends with east-northeast trend. This zone is lithologically divided into the northern, central and southern belts. The northern belt consists of black schists and green schists, which appear megascopically non-spotted, but bear microscopic porphyroblasts of albite, sporadically. The central belt is in fault contact with the northern belt and consists dominantly of amphibole schist, and subordinately of quartz schist, black schists, green schists and a little limestone. The southern belt lies apparently under the central belt and consists of black schists or phyllites, intercalated with green schists or phyllites and a little limestone.

The Shizutama zone is in the central part of the crystalline schists terrain, and is in a fault relation to the Funatsuki zone. That the structure of this zone is complicated is displayed by varying tends of rocks from place to place. The alternation of black phyllites and green phyllites is the common lithologic type. The green phyllites usually contain angular fragments of pyroxene and soda-lime feldspar in the schistose matrix of epidote, chlorite, albite and other substances.

The Ishigami zone occurs at the eastern margin of the area mapped. In this zone, weakly metamorphosed rocks, such as black phyllites, schistose clayslates, schistose sandstone and a little green phyllites, show a regular trend of ENE. They are separated from the crystalline schists of other zones by the bodies of diabase and gabbro, or by means of faults, but, on the south, they grade into the non-metamorphic Paleozoic Iinoya formation.

Chichibu Paleozoics

Non-schistose strata lithologically assigned to the so-called Chichibu Paleozoics lie in a zone south of the crystalline schists terrain.

They are classified into the Miyakoda formation consisting of clayslate and sandstone, and the Iinoya formation consisting of clayslate, chert, limestone, "Schalstein" (basic tuff mixed with diabasic massive rocks), and a little sandstone. The limestone is crystalline and barren of fossils.

The Chichibu Paleozoics are, for the most part, bounded from the crystalline schists by a fault. In the eastern part of the Paleozoic terrain, however, there is a synclinal structure, in which the Miyakoda formation is exposed in the southern limb and the schistose rocks of the Ishigami zone is in the northern limb, both being conformably overlain by the Iinoya formation occurring in the axial part. So, it is inferred, stratigraphically, that the rocks of the Ishigami zone are schistose equivalents of the Miyakoda formation. The Miyakoda formation, which is mostly pelitic, partly psammitic and nearly non-igneous, would be appropriate for the original sediments from which the schistose rocks of the Ishigami zone are derived.

Amphibolite

Amphibolite in this area belongs to epidote amphibolite. It occurs mostly in the northern zones of the crystalline schists where the metamorphisms are not weak. The rock is more or less schistose, and is constituted chiefly of green hornblende and subordinately of albite, epidote, chlorite, leucoxene and other minerals. Peripheries of some crystals of hornblende have been altered to bluish green amphibole and further to glaucophane.

The amphibolite is regarded as sym-metamorphic or pre-metamorphic as compared with the crystalline schists.

Diabase and Gabbro

Diabase and gabbro are closely related with each other. They occur commonly in the weakly metamorphosed zones of the crystalline schists terrain such as the Shizutama zone, and in the non-metamorphic Paleozoic terrain. The largest body is seen between the crystalline schists and Paleozoic terrains.

The rocks are dense diabasic or granular gabboric in appearance ; these two are commonly in transition, but some of the gabbroic rocks cut the diabasic ones. Under the microscope, they are more or less metamorphosed. Common type has blastoporphyritic augite or diallage scattered in the aggregate of secondary minerals such as zoisite, serpentine, leucoxene and occasional tremolite. Some of the rocks contain hornblende as blastoporphyritic crystals. Plagioclase has almost wholly disappeared in the above-noted type.

Some of the gabbroic rocks found as minor bodies in the Paleozoic terrain contain aegirine, titaniferous augite and reddish brown hornblende. In this alkalline type, plagioclase remains fresh or is slightly altered.

The diabase and gabbro are mainly massive, but locally schistose at the peripheral portion that is particularly in contact with the crystalline schists. So, the rocks may be, at latest, not later than the completion of the metamorphism of the crystalline schists in age.

Peridotite and Serpentine

Peridotite is composed of olivine and subordinate pyroxene, and has been more or less altered to serpentine. These two rocks crop out as large or small, lenticular or irregularly shaped bodies throughout the crystalline schists terrain, especially in and near the Shizutama zone. The age of occurrence is not clear, but the intrusion of some of the rock bodies, at least, is intimately related to that of the diabase and gabbro.

Idaira Formation

The Idaira formation occurs in a wedge-shaped block which is tectonically inserted in the diabase and gabbro. This formation consists of clayslate and sandstone, intercalated with a little conglomerate, chert and limestone, and is barren of fossils. The formation is tentatively assumed to be Mesozoic in age because of the lithologic similarities to the Mesozoic Kōmyō group, known in the easterly adjacent Akihasan sheet map.

Ryōke Metamorphics

The Ryōke metamorphics include biotite schist, biotite hornfels, biotite gneiss, quartz schist and a little amount of diopside schist. These rocks, except for the diopside schist, are constituted chiefly of quartz, potash feldspar, plagioclase, biotite and occasional muscovite in varying proportions and show granoblastic textures. The diopside schist abundantly carries diopside instead of mica.

The metamorphics show ENE strikes and northward dips, generally.

Granitic Rocks

The granitic rocks are of the type related with the Ryōke metamorphics. They comprise biotite granite, biotite-hornblende granodiorite and biotite-hornblende granite. Their mutual relations are unclear because of the separated occurrences.

Biotite granite shows zigzag boundaries with the Ryōke metamorphics. It is constituted principally of quartz, orthoclase, plagioclase, biotite and muscovite. Orthoclase is xenomorphic and includes granular, radially arranged or worm-shaped crystals of quartz. Some crystals of plagioclase show dusty calcic cores sharply surrounded by clear sodic mantles.

Biotite-hornblende granodiorite shows zigzag and transitional boundaries to the Ryōke metamorphics. It is mostly granodioritic, but partly dioritic in appearance. The chief components are quartz, plagioclase, orthoclase, hornblende and biotite. Most crystals of plagioclase show dusty calcic cores and clear sodic mantles.

Biotite-hornblende granite is intruded into the Ryōke metamorphics with smooth and sharp boundaries. The rock is generally homogeneous, though it considerably carries xenoliths or "Schlieren". The principal constituents are quartz, plagioclase, orthoclase, hornblende and biotite. Crystals of plagioclase show gradual zonings from calcic to sodic outwards, but have not any dusty calcic cores sharply defined.

Cataclastic Rocks on Median Line

Mylonite, loose friction breccias and other cataclastic rocks contributed by the shearing movements of the Median Line are exposed in belts, which lie between parallel faults and are not rarely more than a kilometer wide. These rocks are derived from either acidic intrusive rocks or sedimentary rocks. Slightly cataclastic parts of sedimentary strata, which are named the Kōchi formation, crop out in some portions of the belts.

The Kōchi formation is made up of sandstone intercalated with clayslate. It shows bedding planes, but gradually passes into the cataclastic rocks. From the lithological characters, the formation is assumed to be older than the Tertiary Shidara formation.

Some of the cataclastic rocks are derived clearly from the granitic rocks which are related with the Ryōke metamorphics ; and the cataclastic belt is covered by the Tertiary Shidara formation. So, the cataclastic phase of the movements of the Median Line is post-Ryōke and pre-Shidara in age. The parallel faults which bound the cataclastic belts indicate another later phase of the movements indifferent to the cataclastic phase, because the faults cut the Shidara formation.

Shidara Tertiary Formation

The formation covers the Ryōke metamorphics, the granitic rocks as well as the cataclastic rocks along the Median Line. It usually contacts with the crystalline schists by means of faults, but stratigraphic break between them is indicated by the presence of the schists-pebbles in the conglomerate of the Shidara formation.

The thickness of the Shidara formation is large in the western part of the exposed area, but is exceedingly small in the eastern part. In the western part, basal 100 meters is of conglomerate and sandstone containing arkosic materials in abundance, and it is followed by 500 meters consisting of alternating beds of sandstone and shale which become tuffaceous upwards.

A number of fossils including molluscs and plants have been informed from the northerly neighboring district and the formation has been assigned as Miocene in age.

Dipping at 20 - 40°, the formation forms a basin structure, central part of which is occupied by the overlying Shidara volcanics.

Shidara Volcanics

The sedimentation of the Shidara formation was succeeded by volcanisms without time break.

The Miwa rhyolites which spread over the central part of the volcanic area are of the first volcanism. They occur dominantly as pyroclastics and subordinately as lava flows or necks, which are disorderly piled and are probably out of many volcanic centers scattered. The rocks are lithoiditic for the most part and are bleached white by alteration in large extent.

The next volcanism contributed the Nanasato rhyolites , the Hōraiji rhyolites and the dacites . They occur as a whole in an arc-shaped extension, and cover the Miwa rhyolites on the inner side of the arc, but rest directly upon the Shidara formation on the outer side. Their eruptive vents are formed presumably on a circular belt along the periphery of the preceeding volcanic area.

The Nanasato rhyolites rest on the southeasten periphery of the Miwa rhyolites. They consist of lava flows accompanied by a little pyroclastics at the base and other horizons. The lava is homogeneous and porphyritic in main.

The Hōraiji rhyolites rest on the western periphery of the Miwa rhyolites. They consist of manifold successions of lava flows and pyroclastic layers. The rocks are heterogeneous and most of them are glassy, pitchstone being included in a considerable amount. Ferromagnessian minerals of the rocks are usually biotite, but a part of pitchstone that crops out in the upper part of the rhyolites carries orthopyroxene instead of biotite.

The dacites appear partly as dykes, but mostly as lava flows and pyroclastics which occur in association with the upper half of the Hōraiji rhyolites. The rocks are porphyritic. Ferro-magnesian minerals are orthopyroxene, and groundmass is usually microcrystalline, but occasionally glassy.

At all places where any of the Miwa, Nanasato or Hōraiji rhyolites rest on the Shidara formation there are no stratigraphic breaks and no large differences of the stratigraphic horizons from each other. It may be regarded that all rhyolites and the associating dacites are successively erupted in a short time after the deposition of the Shidara formation and are Miocene in age. Beddings of the pyroclastics as well as flow structures of the lava seen in all rhyolites and dacites incline generally to the center of the volcanic area, and this feature implies that these volcanics partake in the same basin structure together with the Shidara formation.

Penetrating the dacites, the rhyolites, the Shidara formation and other older rocks, the andesites including basaltic and trachyandesitic varieties occur as many dykes and sheets. The rocks are usually porphyritic, and are constituted chiefly of plagioclase, augite, hypersthene and sporadic olivine. When fresh they show a dark color, but they have turned light grey to white in large extent by deuteric actions.

The dykes and sheets of andesites are narrow in width, but are persistent along strikes. They swarm in a zone lying in the western half of the Shidara basin. Most of them have north-south strikes, parallel to the general trend of the dyke swarm zone. Those occurring in the eastern wing of the zone have very steep inclinations, and those exposed in the western wing show eastward dips with the smaller inclinations in the more west. The structural bearings of the dykes and sheets, above noted, are quite indifferent with the basin structure of the preceeding volcanics and sediments : the eruptions of the andesites are after the completion of the basin structure.

Parallel faults which mean the later phase of the Median Line movements run through the southern part of the Shidara basin. The Shidara formation, the rhyolites and the dacites are cut by the faults, but the andesites are intruded along the fault planes. This phase of the Median Line movements is therefore, regarded as contemporaneous with the basinal depression of the Tertiary area.

Suyama Formation

This formation lies on the cataclastic zone of the Median Line and is probably deposited in a valley generated on the Median Line. It consists almost wholly of conglomerate, strongly indurated and ill-stratified. Pebbles of conglomerate are well rounded, but ill-sorted. They include various kinds of older rocks distributed in the mapped area as well as the hinterland, but contain no rocks inferable to be supplied from the Shidara formation or volcanics. The geologic age of formation is not decided.

Diluvium

The Diluvium is of fluviatile deposits consisting of gravel, sand and, lay. It is divided into the older which shows flat terrace surfaces 40 - 100 meters above sea level, and the younger which occurs more than 10 meters below the older.

Alluvium

The Alluvium is present in narrow areas along the rivers.

ECONOMIC GEOLOGY

Of the mineral resources, porcelain stone and limestone are economically important.

Manganese

Small pockets of manganese ores are present between chert and "Schalstein" of the Paleozoic Iinoya formation near Mitake-san in the southeastern part of the mapped area. The ores consist of manganese carbonate and oxide mixed with quartz.

Nickel

Some parts of serpentine occurring in the southwestern part of the area were once mined for nickel ores. Nickel is, however, not concentrated, but is dispersed throughout the rocks in very low grade far less than 1 %.

Talc

Talcose parts of serpentine and soft, pure parts of talc schist occurring in the Atago zone of the crystalline schists are mined on small scales at two places in the northeastern corner of the area.

Porcelain Stone

A part of the andesite dyke of the Shidara volcanics exposed at the western corner of the area has been heavily bleached by deuteric action and additionally by weathering, and is used as porcelain stone. The primary minerals of the rock have been entirely decomposed to minute substances such as calcedonic quartz, alkali-feldspar, sericite, kaoline and limonite.

Limestone

Limestone of the Paleozoic Iinoya formation is pure in lime and is very large in amounts. Some of the limestone bodies having facilities of transportations are quarried to produce lime powders.


昭和 30 年 12 月 15 日印刷
昭和 30 年 12 月 20 日発行
著作権所有 工業技術院 地質調査所