11007_1955

5万分の1地質図幅説明書

大垣

(京都 第 7 号)

通商産業技官 礒見博

地質調査所

昭和 30 年


目次

I. 地形
II. 地質
II.1 概説
II.2 大滝層
II.3 大石層
II.4 梅谷層
II.5 粕川層
II.6 春日層
II.7 北部丘陵地帶の古生層
II.8 南宮山塊の古生層
II.9 赤坂石灰岩
II.10 火成岩岩脈
II.11 第四紀層
III. 応用地質
III.1 石灰岩
III.2 鉄鉱
III.3 地下水
文献

Abstract

1 : 50,000 地質図幅説明書 (昭和 29 年稿)

大垣

(京都 第 7 号)


大垣図幅の野外調査は昭和 25 年度に実施された。 本図幅地域の西部の池田山塊の古生層については, 関武夫氏の研究が発表されている。

本調査にあたり, 関武夫氏から多くの有益な御意見をうかがうことができた。 また, 赤坂石灰岩については小沢儀明氏の論文を引用した。

本説明書中の応用地質の地下水に関する記事は 本所の村下敏夫技官によって記載された。

I. 地形

本図幅に含まれる地域は濃美平野の北西周縁部である。

池田山塊と呼ばれる西部の地域は, 西隣の「近江長浜」図幅の中央部を占める伊吹山塊と並行して, 南北に走る嶮しい山岳地帶である。 池田山塊に一般に発逹する NNE - SSW 方向の谷や稜線は, 古生層の走向に支配されたものであり, 大石の谷・大滝の谷・粕川等の大きい谷は断層に支配されて生じたものである。 池田山塊の東端は NNW - SSE に走る顕著な断層崖で限られ, その下方には扇状地が発逹している。

図幅の南西部に位置する垂井町と, 西隣図幅の関ヶ原とを結ぶ東西方向の低地帶をへだてて, 池田山塊と相対立して, その南方に南宮山塊がある。 この山塊はさらにその南西側の牧田川流域の低地帶をへだてて, 南隣図幅の養老山塊と相対立する。 上記の2低地帶はいずれも著しい断層帶であり, 南宮山塊はその北東側と南西側とを断層で切られて孤立する一地塊である。

図幅北西部の揖斐町の西方で, 揖斐川によって池田山塊から分かたれる図幅北部の丘陵地帶は, 美濃山地が漸次南に高度を減じて濃美平野にのぞむ南端部である。 この地帶は多くの断層によってさらに小地塊に分かれている。 これら各小地塊は不規則な輪廓を持って沖積平野に囲まれ, 明らかに沈降地形を示している。 藪川はこの丘陵地帶の中央部を貫ぬいて南流する。 藪川以西の地塊は NE ないし NNE の方向性を持っている。 藪川のすぐ東の2地塊はいずれもそれらの南部では NNE - SSE の方向にのび, 北部では N - S の方向に転じ, さらにその北方図幅外ではふたたび NNE - SSW の方向に転じている。 最も東方の岐阜市北郊の小地塊は, いずれも E - W にのびている。

上に述べた北部丘陵地の各小地塊では, 山陵にはほとんど常にこれと方向を一致してチャートが露出しており, これから明らかなごとく, この丘陵地帶の地形は古生層の地質構造に完全に支配されている。

II. 地質

II.1 概説

山地および丘陵は主として古生層からなる。 古生層は褶曲し, 多くの断層によって切られている。

II.1.1 池田山塊の古生層

池田山塊の古生層は一般に NNE - SSW の走向を有する。 この山塊は, その中央部を東西に走る大断層により2分されて, その両側地塊では構造を全く異にする。 すなわち南部の地塊では古生層は一般に東に傾斜し, 西から東へ中部石炭系・下部二疊系と漸次新しい地層が露出する。 北部の地塊では, 大局的にみれば古生層は西に傾斜し, 東から西へ下部二疊系・中部二疊系・上部二疊系と順次新しい地層が露出する。

池田山塊の古生層は, 関武夫の論文 1) によると, 下位から, 大滝層(中部石炭紀)・梅谷層・粕川層(中部二疊紀)および春日層に4分される。 従来大滝層とされていた地層中から中部石炭紀の化石のほかに, 下部二疊紀の化石が発見された。 したがって, 従来の大滝層を 狹義の大滝層(中部石炭紀)と大石層(最下部二疊紀)とに2分する必要が生じた。 要するに, 池田山塊の古生層は下位から次のごとく区分される。

大滝層(中部石炭紀)
大石層(下部二疊紀)
梅谷層
粕川層(中部二疊紀)
春日層

大滝層は大石層と断層で接する。 梅谷層は粕川層と断層で接していて, 両者の関係ははっきりしない。

II.1.2 北部の丘陵地帶の古生層

北部の丘陵地帶を構成する古生層は, 砂岩・粘板岩およびチャートからなる。 この古生層は化石を産しないために, 池田山塊の古生層と対比することはできないが, チャートを多量に含む点では春日層に類似している。

II.1.3 南宮山塊の古生層

本図幅南西部の南宮山塊を構成する古生層は, 塊状砂岩と粘板岩とからなり, その岩相は梅谷層まはた粕川層上部に類似している。 この地層は ENE - WSW の方向の軸をもって褶曲している。

赤坂石灰岩 : 池田山塊の東南端の赤坂町の丘陵(金生山と呼ばれる)は, 二疊紀の石灰岩のみからなる。 この赤坂石灰岩は池田山塊の古生層とは断層で境されている。

火成岩岩脈 : 古生層を貫ぬいて斜長斑岩および玢岩の岩脈がある。 岩脈は池田山塊南西に密集している。

第四紀層 : 南宮山塊の北東部の山麓には, 主として砂質粘土からなる軟らかい地層が小範囲に露出している。 この地層は, 当地域外の西方に模式的に露出している洪積世古期 (ないしは鮮新世最新期)の牧田層に属する。 古生層の山地の麓には, 扇状地堆積物の礫層が発達している。 冲積層は, 砂・砂利・粘土等からなり, 本図幅地域の大半をしめる濃美平野を構成する。

古生層対比表

II.2 大滝層

大滝層は池田山塊の南西部, 岩手村大石の谷と府中村大滝の谷との奥に分布する。 主として千枚岩質粘板岩からなり, ときに厚さ 1 m 以下の細粒砂岩の薄層を挾む。 大滝層は全般的に著しく擾乱を受けており, 砂岩層が切断されて円礫状になり, 破碎された粘板岩中に挾み込まれていることがしばしばある。 また, 大滝層中には, チャート・輝綠凝灰岩および石灰岩が含まれる。 チャートと輝綠凝灰岩とは通常相伴ない, 両者は複雑に混り合って厚さ数 m 内外のレンズをつくる。 チャートは輝綠疑灰岩を伴なうときは, 赤色・綠色・靑灰白・灰白色等種々の色調を呈するが, 伴なわないときには靑灰色または灰白色である。 輝綠凝灰岩とチャートとを伴なった石灰岩は普通は灰白色であるが, 輝綠凝灰岩と密接する部分はやや赤色をおびることがある。 石灰岩の厚さは普通数 m 以下であるが, 大石の谷の石灰岩レンズは厚く, 20 m 内外の層厚を有する。 これらの石灰岩は, 程度の差はあっても, 破碎されており, 極端な場合には 石灰岩・輝綠凝灰岩および チャートの小角礫(径 4~5 cm 以下)の密集した礫岩状の産状を呈する。 しかしこの礫岩状の岩石は, 輝綠凝灰岩の細かい破片を稀に含んだ石灰岩に移化する場合も見られる。 小角礫中にも, 石基状を呈する比較的大きな石灰岩角礫中にも, 紡錘虫および珊瑚の同一の化石が含まれている。 石灰岩がこのように角礫岩状を呈するのは, 生成とほとんど同時期に破壊作用を受けたためであろう。

Loc.1 : 岩手村大石の谷
Fusulinella biconica (HAYASAKA)
Clisaxophyllum awa MINATO
Nagatophyllum satoi OZAWA
Chaetetes sp.
Loc.2 : 府中村大滝の沢(西側の露頭)
Fusulinella biconica (HAYASAKA)
Lithostrotion cf. somaense YABE and HAYASAKA
Loc.3 : 府中村大滝の沢(東側の露頭)
Fusulinella biconica (HAYASAKA)
Loc.4 : 大石の沢と大滝の沢との分水嶺
Fusulinella sp.

大滝層の地質時代は, 上記の化石の示すように中部石炭紀である。 なお紡錘虫と珊瑚とは明らかに同一の石灰岩塊中に共存している。

大滝層中には, 輝綠凝灰岩を伴なわないで灰白色石灰岩の径 1~2 m の小レンズもみいだされる。

この型の石灰岩は礫岩状を呈することがなく, その含有化石はストロマトポロイドと蘚虫類のみである。

大滝層の走向は一般に NNE - SSW で, 傾斜は 50~60゚ E である。

II.3 大石層

大石層は, 大滝層と走向傾斜をほぼ同じくして, その東方に, すなわち岩手村大石部落附近と府中村大滝部落附近とに分布する。 主として粘板岩と砂岩との互層からなる。 互層には粘板岩と砂岩との厚さそれぞれ数 cm の細互層もあれば, 厚さ数 m の粘板岩と 1 m 位の砂岩との粗い互層もある。 全般的にいえば, 下位では粘板岩が著しく優勢であるが, 上位になるにつれ砂岩の量を増し, 最上部では粘板岩と砂岩とがほぼ同じ割合を占める。 また砂岩の粒度は下部では細粒であるが, 上部では中粒である。 大石層はチャートに乏しく, 次に述べる大石の沢の含化石石灰岩の上位にある。 靑灰色チャート層(厚さ約 10 m)を除いては, ごく僅かである。

大石層は全体としては大滝層ほど強い擾乱を受けていない。 その互層は明瞭な成層面を示す。 一般に 60゚ 内外の角度で東に類斜するが, 逆に西傾斜の部分もあって, 大石層はかなり複雑に褶曲するものと思われる。

大石層と大滝層との関係および大石層の地質時代 : 岩手村大石の沢では, 中部石炭紀の大滝層の礫岩状石灰岩(Loc.1)と密接してそのすぐ東に, 下部二疊紀の紡錘虫をおびただしく含む石灰岩(厚さ±10 m, Loc.5)が露出している。

Loc.5 : 岩手村大石の沢の石灰岩の含有化石。
Schwagerina krotowi (SCHELLWIEN)
Schwagerina sp. cf. gregaria (LEE)
Pseudofusulina vulgaris var. globosa (SCHELLWIEN)
Pseudofusulina cf. ambigua DEPRAT
Staffella rotunda SAURIN

中部石炭紀の石灰岩を含む地層は輝綠凝灰岩を挾み, 下部二疊紀の石灰岩を含む地層は輝綠凝灰岩を含まない。

また, 前者のチャートには赤色または綠色のものもあるが, 後者のチャートは靑灰色または灰白色である。 しかし, その他の点では両層とも粘板岩を主体としており, 岩相上余り著しい差異を示さない。 けれども, ここでは中部石炭系と下部二疊系とが直接していて上部石炭系を欠き, 両者の問に著しい地質時代の間隙がある。 そして下部二疊系である大石層は, 一般に中部石炭系よりも擾乱を受けることが少ないのに, ここでは下部二疊系も中部石炭系と同じ程度に, 局部的に強く擾乱を受けている。 したがって, 両層の関係は断層と推定される。

大滝の沢の奥では, 輝綠凝灰岩やチャートを伴なう中部石炭紀の石灰岩 -- Loc.2 および Loc.3 -- が, 東西約 600 m の間隔をおいて露出し, その中間, すなわち西側の中部石炭紀の石灰岩(Loc.2)と密接して, その東に下部二疊紀の石灰岩(Loc.6)を含む粘板岩層が露出している。

Loc.6 : 府中村大滝の沢 ... の石灰岩の含有化石
Schwagerina krotowi (SCHELLWIEN)
Triticites sp.

ここでも下部二疊紀の石灰岩を含む粘板岩層は輝綠凝灰岩を含まず, かつかなり擾乱を受けている。 また中部石炭系と下部二疊系との境界と推定される部分に断層が見られる。

註)
これら両化石産地のすぐ近傍, くわしくいえば尾根の北側の大瀧の沢に面した山腹に, チャートと砂岩との小豆粒大の小円礫を砂質の基質中に含んだ礫岩の転石 (径 7 cm 位の小さいもの)がたゞ1個だけ発見された。 この転石は中部石炭系と下部二疊系との間の不整合を暗示するかも知れない。 けれどもこの例外的の転石を除けば, このあたりには粘板岩の転石が散乱しているのみであり, 上記の礫岩転石の出所は不明である。

要するに, 大石層は下位の大滝層と断層で接する。 大石層はその下部にしか化石を含まないが, 全体としても下部二疊紀の地層と考えられる。

II.4 梅谷層

模式地の梅谷層

池田山塊南部の府中村梅谷の東方の地域に, 塊状の砂岩と薄い粘板岩との互層が広く露出している。 この地層は梅谷層と呼ばれ, その西方に分布する大石層の上に整合に重なる。 梅谷層は粗粒の岩石(塊状砂岩)で特色づけられる互層であり, 下位の大石層は細粒の岩石(粘板岩)で特色づけられる互層であって, 両者の岩相の変化は全く漸移的である。 梅谷層の砂岩は厚さ数 m ないし 10 数 m で, 中粒または粗粒であり, しばしばそのなかに黑色粘板岩の角礫を含む。 角礫には径数 cm 位のものもあるが, 一般に径 2~3 cm 位の小さいものが多い。 粘板岩は一般に砂岩よりも薄い。 梅谷層中には一般にチャートが少ないが, 上部には 厚さ 1~2 m 以下の 靑灰色または灰白色のチャートの薄層がかなり発達している。

梅谷層は大石層と同じく, 一般に NNE - SSW の走向を有し, 東に傾斜するが, 西傾斜の部分もあり, かなり複雑に褶曲し, また走向断層で切られているのも観察される。 梅谷層の中部と推定される部分, すなわち靑野北方の東海線のトンネルの東口に, 厚さ 1.5 m の暗灰色の石灰岩が存在する。 この石灰岩は蘚虫類・ストロマトポロイドおよび腕足介の破片を含むのみで, その地質時代は明らかでない。

梅谷層の最上部に介在するチャートは, 一部分が石灰質になっている。 この珪質石灰岩は化石を含まない。

梅谷層は最下部二疊紀の大石層の上に整合に重なる事実以外には, その地質時代を明らかにする資料は得られない。

北部の梅谷層

池田山塊の北部地塊の東部に位する池田山近傍に, 砂岩・粘板岩の互層が露出する。 本互層はその岩相が模式地の梅谷層の岩相と酷似するので, 梅谷層に対比しえられる。 一般に砂岩が粘板岩よりも遙かに優勢である。 砂岩は塊状粗粒で, そのなかに粘板岩の角礫を含む。 この梅谷層に相当する地層は褶曲し, 多くの正断層や衝上断層によって切られているが, NNE - SSW の一般走向を示している。 傾斜は南部の模式地の梅谷層と反対に, 一般に西傾斜である。 本層は全く化石を産しない。

II.5 粕川層

模式地の粕川層

池田山塊北部の粕川の沿岸に露出する主として粘板岩・砂岩の互層から成る地層は, 粕川層と呼ばれる。 下部では粘板岩が優勢であり, そのなかに時に厚さ 2~3 m 以下の細粒ないし中粒の砂岩を挾有する。 漸次上位に砂岩の量を増し, 上部では中粒ないしは粗粒の砂岩が優勢となり, 層厚数 m 位の砂岩と粘板岩との粗い互層が普通である。 岩相だけについていえば, 粕川層下部は大石層に, 上部は梅谷層に類似している。 粕川層のほぼ中部に靑灰色または灰白色のチャートが発逹し, 粕川の北岸では厚さ 10 m 以上に達する。

粕川層の下部に当る図幅地域北端の小島村室には, 中部二疊紀の紡錘虫を含む石灰岩が露出する。 本石灰岩は層厚 100 m 以上に逹する。 普通は灰白色を呈するが, 暗灰色の部分もある。 この石灰岩の下底にチャートの薄層を伴なうことがあるが, 輝綠凝灰岩の夾みはない。

Loc.7 : 小島村室の石灰岩の含有化石
Pseudofusulina japonica (GÜMBEL)
Neoshwagerina craticulifera (SCHWAGER)

以上の化石は中部二疊紀古期の地質時代を示す。

模式地の粕川層の走向は一般に NNE - SSW で, 傾斜は 50~60゚ W を示し, その東側に分布する梅谷層と思われる地層と断層で接する。

東方に露出する粕川層

池田山塊の北部地塊の東南端すなわち本郷村小寺の西方には, 砂岩と粘板岩との互層が露出する。 この地層は粕川層上部に相当するものと思われる。 本層中に黑色, 泥質の不純な含化石石灰岩が厚さ 2 m 内外の小レンズとして含まれている。

Loc.8 : 池田町小寺西方 ... の石灰岩の含有化石
Mizzia velebitana SCHUBERT
Codonofusiella paradoxica DUNBAR and SKINNER
Neoschwagerina margaritae DEPRAT

以上の化石は中部二疊紀新期の地質時代を示す。 この石灰岩を含む粘板岩には, 小豆粒大の砂岩そのほかの小円礫をまばらに含むことがある。

この粕川層上部と思われる地層は, 一般走向 NNE - SSW, 傾斜 50゚ W 内外, 西側に分布する梅谷層と思われる互層とは断層で接する。

要するに粕川層はその下部が中部二疊紀古期に, 上部が中部二疊紀新期に属し, 全体として中部二疊紀の地層である。 粕川層と梅谷層との層位関係はわからない。

池田山塊の二疊系の対比について

下部二疊紀の大石層の紡錘虫化石はその最下部に含まれ, 上部からは地質時代を示す化石はみいだされない。 大石層はさらに上位の無化石の梅谷層に整合に覆われる。 したがって大石層の含化石層準の上位には, 著しい厚さの無化石層が重なっている。

池田山塊の北部にのみ分布する中部二疊紀の粕川層は, 南部に分布する大石層・梅谷層と断層で境されているので, それらの間の層位関係は不明である。 しかし岩相上だけからは, 粕川層下部は大石層に全く類似する。 また粕川層上部は梅谷層に類似するが, 梅谷層の砂岩が粘板岩角礫を含むのに対し, 粕川層上部の砂岩はこれを含まないことが, 両層の間の唯一の差異としてあげられる。 したがって粕川層下部と粕川層上部との間の全く漸移的な岩相変化は, 大石層と梅谷層との間の岩相変化と非常に類似する。

大石層・梅谷層・粕川層の層位関係については2つの場合が考えられる。

第1の場合 (粕川層下部を大石層の上部に, 粕川層上部を梅谷層に対比する場合)には, 下部二疊系と中部二疊系とがいわば連続的の1つの沈積輪廻を示すことになる。

第2の場合(粕川層を梅谷層の上位の地層と考える場合)は 大石層は下部二疊系の下部を, 梅谷層は下部二疊系の上部を代表することになり, 下部二疊系だけで1つの沈積輪廻を示し, 中部二疊系の粕川層はもう1つの沈積輪廻を示すことになる。 この場合には, 下部二疊系は非常に厚い層厚を持つことになる。

以上の2つの場合のいずれが正しいかは, 大石層上部と梅谷層とから地質時代を明示する化石が発見されるまで, 決定できない。 上記の2つの場合を図示すれば次のようになる。

中部二疊系 Neoschwagerina 帶    梅谷層 粕川層上部    粕川層上部
大石層 粕川層下部 粕川層下部
下部二疊系 Parafusulina 帶 梅谷層
Pseudoschwagerina 帶 大石層
(第1の場合) (第2の場合)

II.6 春日層

西隣の近江長浜図幅地域内には, 靑灰色または灰白色のチャートを主とする厚い地層が分布する。 このチャートで特色づけられる地層を春日層と呼ぶ。 春日層は粕川層の上位に整合に重なる。 春日層からは化石を産しない。 大垣図幅では, 春日層はその西北隅の春日村に小範囲に分布するのみである。 春日層は中部二疊紀の粕川層の上位の地層であるから, その地質時代は上部二疊紀であろう。

II.7 北部丘陵地帶の古生層

無化石層(砂岩・粘板岩・チャート)

1) 揖斐町附近から藪川の西岸におよぶ丘陵を構成する古生層の走向は, 西部では E - W であり, 東方に向うにつれて ENE - WSW になる。 傾斜は約 50゚ N を示す。 この地域の古生層の下部は, 最高 400~500 m の層厚を有する。 靑灰色, 黑色または白色のチャートからなり, その上位には砂岩・粘板岩の互層が発逹している。 この互層には厚さおのおの数 cm から数 m に至る細・粗各種の互層が見られる。 互層のうちでは一般に砂岩が優勢であるが, 下部から上部へと減少する傾向を示す。 この砂岩は粗粒で, 特に比較的下位の層準に含まれるものは, 小豆粒大砂岩やチャートの小円礫を含むことがある。 古生層の最上部は粘板岩・砂岩およびチャートの互層からなる。 この部分の砂岩は中粒ないし細粒であり, その厚さも薄く 1~2 m 以下の薄層をなすことが多い。 全般的にみれば最上部では粘板岩が優勢である。 粘板岩層中にはしばしば層厚 10 cm 位の靑灰色ないしは灰白色のチャートが, 不規則な間隔で互層として挾まれている。 このようなチャートと粘板岩との互層は, 厚さ 1~2 m から数 m に逹するチャート層に移化する。

2) 藪川の東岸の2つの丘陵を構成する古生層の走向は, 南部では NNE - SSW であり, 北部では NNW - SSE で, 東に凸面を向けた弧状の構造を呈する。 傾斜は約 60゚ W である。 この古生層の下部は, 砂岩・粘板岩およびチャートからなる。 一般に粘板岩は砂岩よりも薄くて 2~3 m の厚さを有し, 砂岩の層厚は数 m 程度のことが多い。 チャートは靑灰色または灰白色で, その層厚は 10 m 内外のことが多い。 全般的にいえば, 下部は砂岩とチャートとで特色づけられる。 上部はほとんど無層理で, 粗粒ないし中粒のみからなる。 粘板岩やチャートは少なく, 時に 1 m 以下の薄い夾みとして砂岩中に介在するのみである。 これらの2丘陵の南方に孤立する彌勒寺の小丘陵も, ほとんど粗粒の塊状砂岩のみからなり, 前記の2丘陵の古生層の上部層に岩相が類似している。

3) 図幅の東北端, 岐阜市北郊の東西に延びた3つの小丘陵は, 厚さ数 100 m におよぶ靑灰色または灰白色チャートから主に構成される。 走向はほゞ E - W で, 傾斜は約 60゚ S である。 この厚いチャートは, 藪川以西の丘陵に露出する古生層の下部に相当すると考えられる。

以上の3区域の北部丘陵地帶の古生層は, 化石を産しない。 岩相だけによって池田山塊の古生層と比べれば, 厚いチャートを含むことから, 春日層に類似している。

石山石灰岩

藪川西岸の石山には厚さ 100 m 内外の石灰岩が露出している。 石灰岩は腐泥質の黑色石灰岩を主とし, そのなかに多くの紡錘虫を含む。 石灰岩の下部は灰白色, 珪質の結晶質石灰岩である。 さらに下位には灰白色の割れ目に富んだ珪質粘板岩, および灰白色または靑灰色のチャートが発逹している。 これらの岩石は部分的に石灰質となっているが, 石灰質の部分はクリノイド以外の化石を含まない。

Loc.9 : 富秋村石山 ... の石灰岩の主な含有化石
Schubertella giraudi (DEPRAT)
Neoschwagerina craticulifera (SCHWAGER)
Neoschwagerina margaritae DEPRAT
Yabeina katoi (OZAWA)
Cancellina nipponica OZAWA
Verbeekina verbeeki GEINITZ
Pseudofusulina japonica (GUMBEL)

以上の化石は中部二疊紀を指示する (赤坂石灰岩の Nn, Nc, Nc および Ng 帶に相当する)。

石山石灰岩は E - W の走向をもち, 30~40゚ N に傾斜する。 本層と西側に分布する無化石古生層とは, 断層で境されており, 層位関係はわからない。 しかし, 石山石灰岩の下位には, なお粘板岩とチャートからなる厚い地層が発逹している。 この下位の地層とその西側の揖斐町附近の無化石層とは, 岩相上著しい差異を示さない。 したがって, 石山石灰岩は西側の無化石古生層の一員であるのかもしれない。 石山石灰岩の黑色腐泥質の岩相は, 赤坂石灰岩の中上部のそれに類似し, 産出化石も同一であることは注目に値する。

II.8 南宮山塊の古生層

南宮山塊を構成する古生層は, 塊状砂岩と粘板岩との互層からなる。 互層は厚さ数 m ないし数 10 m の粗い互層が普通である。 砂岩は粗粒または中粒で, 概して砂岩層の方が粘板岩層よりも厚い。 一般に北東方向の褶曲軸をもって褶曲を繰り返している。 このような塊状砂岩で特色づけられる地層は, 四隣の図幅内にも広く分布しているが, どこからも化石は発見されない。 岩相だけからいえば, この地層は梅谷層または粕川層上部に類似している。

II.9 赤坂石灰岩

大垣市西北方の赤坂町の丘陵(金生山)は石灰岩のみからなり, そこでは中部二疊紀の層序が模式的にみられる。 石灰岩の大部分は黑色腐泥質で, その成層面は比較的はっきりしている。 小沢儀明は産出化石(主として紡錘虫)の研究に基づいて, 赤坂石灰岩の層序を上位から次のように明らかにした (カッコ内の文字は, 小沢の用いた化石帶の記号である)。

Ⅳ. Yabeina globosa 帶(Ng)
12) -- 大里石灰岩 : 押しつぶされた化石を含む
11) -- 黑色塊状石灰岩 : 保存の良い化石を含む
(Ng)帶の主な化石 :
Sumatrina annae VOLZ
Yabeina globosa (YABE)
Yabeina katoi (OZAWA)
Neoschwagerina minoensis DEPRAT
Waagenophyllum akasakensis YABE
Mizzia velebitana SCHUBERT
Ⅲ. Neoschwagerina margaritae 帶(Nm)
10) -- 黑色石灰岩 : 主に Neoschwagerina margaritae を含む
9) -- 暗色石灰岩 : Neoschwagerina colaniae が多い
(Nm)帶の主な化石 :
Neoschwagerina margaritae DEPRAT
Neoschwagerina colaniae OZAWA
Verbeekina verbeeki (GEINITZ)
Mizzia velebitana SCHUBERT
Ⅱ. Neoschwagerina craticulifera 帶(Nc)
8) -- 黑色石灰岩 : Pseudodoliolina および Pseudofusulina を含む
7) -- 暗灰色石灰岩 : Pseudodoliolina が密集する
6) -- 暗灰色石灰岩 : Pseudofusulina japonica が多い
5) -- 暗色石灰岩 : Neoschwagerina craticulifera が多い
(Nc)帶の主な化石
Neoschwagerina craticulifera (SCHWAGER)
Pseudofusulina japonica (CüMBEL)
Pseudodoliolina ozawai YABE and HANZAWA
Ⅰ. Cancellina nipponica 帶(Nn)
4) -- 暗灰色石灰岩 : (Nc)と(Nn)との漸移帶
3) -- 灰色石灰岩
2) -- 淡灰色石灰岩
(Nn)帶の主な化石 :
Cancellina nipponica OZAWA
Neoschwagerina simplex OZAWA
Verbeekina verbeeki (GEINITZ)
Pseudofusulina granum-avenae (ROEMER)
Leptodus richthofeni KEYSER
紅縞帶
1) -- 紅縞石灰岩 : やや結晶質の石灰岩
産出化石 :
Pseudofusulina granum-avenae (ROEMER)
P. ambigna (DEPRAT)

Ng 帶は中部二疊紀の最上部であり, Nn 帶は中部二疊紀の最下部を代表するものと考えられる。

最下位の紅縞帶は, おそらく下部二疊系上部に属すると思われる。 けれども, 藤本治義 17) は金生山南側の石切場の転石中から, 以下の化石を発見した。

Pseudoschwagerina schellwieni (HANZAWA)
Pseudofusulina vulgaris (SCHELLWIEN)

これらの化石は明らかに最下部二畳紀の紡錘虫である。 したがって赤坂石灰岩中にも, 最下部二疊系が発逹するであろうと推定された。

第1表 赤坂石灰岩の化石

赤坂石灰岩は 30~40゚ W に傾斜し, 東から西へと順次上位の地層が重なっている。 しかし, 金生山の東端に, 西に傾斜する軸面をもつ傾倒背斜構造があって, 金生山に露出する石灰岩は, この背斜の西翼部のもののみで, 石灰岩の下底はみられない。

赤坂石灰岩は, 西側に広く分布する石灰岩に非常に乏しい梅谷層と, 断層で境している。 赤坂石灰岩の最上部の化石が総て押しつぶされているのは, この断層に関係があるであろう。 地質時代を同じくする両相が, 著しく異なった岩相を示して相接する事実に対しては, 中国地方で提起されていると同様に, 石灰岩相の古生層は 非石灰岩の古生層の上に押し被せているものの1断片であろうと説かれている。

赤坂石灰岩の頂上には, 本石灰岩に由来する径 10 cm 内外の石灰岩角礫が, 不整合に石灰岩層を蔽っている。 石灰岩角礫は完全に固結しており, その生成時代は洪積世であろう。 赤坂地方ではこの石灰岩角礫は 更紗 さらさ と呼ばれている。

第1圖 赤坂石灰岩断面圖(小沢, 1927 8) による).
Ch & SS : 梅谷層(砂岩 粘板岩およびチャート)
Ng : Yabeina globosa 帯
Nm : Neoschwagerina margaritae 帯
D : Pseudodoliolina 帯
Nc : Neoschwagerina craticulifera 帯
Nn : Cancellina nipponica 帯
B : 紅縞石灰岩
Lb : 石灰岩角礫(更紗石灰岩)

II.10 火成岩岩脈

古生層を貫ぬいて斜長斑岩および玢岩の岩脈がある。 これらの岩脈は池田山塊南西に密集している。

斜長斑岩

池田山塊南部の府中村大滝の北方では, 斜長斑岩が大石層を貫ぬいている。 岩脈はほぼ大石層の走向に近い N - S に走り, 約 2 km の距離に亘って延長する。 大滝部落北方の名所「不破滝」はこの岩石にかかる滝である。 岩脈は「不破滝」附近では厚さ 10 m 位で, 南北両端に向って次第に厚さを減少する。

岩石は珪長質石基中に斜長石の斑晶をもつ。 斑晶をなす斜長石の内部には絹雲母が散点している。 有色鉱物としては, 角閃石を交代したと考えられる綠泥石が斑晶として, あるいは石基中に少量みられる。

玢岩

池田山塊南部の岩手村大石の北方には, 大滝層と大石層とを貫ぬく玢岩の岩脈が多い。 岩脈はいずれも厚さ 1~2 m 程度で, ほぼ地層の成層面に並行に貫入したものが多い。

岩石には斜長石・石英の斑晶を含んで有色鉱物の少ないものから, 斜長石・石英の斑晶を欠き, 有色鉱物に富んだ煌斑岩質のものまである。 有色鉱物としては, 長性状の自形を呈する褐色の普通角閃石を主とし, そのほか無色の単斜輝石が少量みられる。 構成鉱物は一般に変質を受け, 斜長石は絹雲母や炭酸塩鉱物等に交代され, 輝石または橄欖石を交代したと考えられる 綠泥石または蛇紋石から成る仮像がみられる。 角閃石は有色鉱物の少ない岩石においては, 綠泥石に交代されたものが多いが, 煌斑岩質のものにおいては比較的新鮮である。

II.11 第四紀層

牧田層

南宮山塊の北麓の宮代村南宮神社附近には, 淡靑灰色の砂質粘土からなるほとんど水平な地層が, 扇状地堆積物(礫層)の下位に小範囲に露出している。 この砂質粘土層中には, 炭質物の厚さ 10 cm 位の薄層が挾まれている。

本層は南宮山塊の西方に広く分布する牧田層の一部である。 牧田層の地質時代は洪積世最古期, または鮮新世最新期である。

扇状地堆積物

垂井町附近およば池田山塊の東麓等には, 扇状地を構成する礫層が分布しており, 東方に次第に傾斜を減じて遂に冲積平野に移る。

冲積層

砂利・砂・粘土等からなる冲積層は, 広大な濃美平野を構成する。 本図幅地域内では, 大垣市附近は地下水が特に豊富で, 工業立地上極めて有利な地位を占めている。

III. 応用地質

III.1 石灰岩

赤坂石灰岩は鉄道輸送の便に惠まれており, この地は日本有数の石灰岩産地である。 昭和 28 年度の年産額は 506,297 t に逹する。 採掘に便利な金生山の南側と東側とには, 到る所に採石場がある。

図幅地域北部の石山の石灰岩も鉄道輸送の便(名鉄線)に恵まれており, その北部(北隣の図幅地域内)ては大規模に採掘されている。 しかし, 本図幅地域では石山石灰岩の南部に, 小規模の採掘場があるのみである。

図幅地域北西端の小島村室の石灰岩は, 輸送の便に恵まれないため, ごく小規模に採掘されているにすぎない。

III.2 鉄鉱

赤坂石灰岩の頂上近くに, 石灰岩の凹みを埋めた赤鉄鉱の鉱床があり, 露天掘が行われている(赤坂鉱山)。 28 年度の産額は 7,945 t である。 鉱石の品位は鉄 53 % 内外である。

III.3 地下水

水理の概要

大垣市附近は, 濃尾平野西部に拡がっている大垣自噴帶の北半部を占めており, 低温でかつ水量および水質ともに優れている自噴性被圧面地下水が広く分布し, 飲用・灌漑用・工業用に, 著しく高度に利用されている。

平野部の地下水は, 主として揖斐川・藪川・長良川の地表水によって涵養されており, 河川水の滲透量の最も少ない時でも, よく1日あたり 2,000,000 m 3 に相当する水が供給される。 別に西方にも地表水の滲透地帶が認められるが, 自噴井によって求めた圧力面勾配は, おおむね北から南に向って傾いている。

自噴井戸の深度は 5~200 m で, 工業用井戸は主に 12~16 吋のものが多く, これ以外の大部分のものは孔径 2~3 吋程度の小孔径のものが占めている。 自噴量は深度 30 m 以淺の小孔径の井戸で, 冬季 0.5 l / sec 程度以下, 70 m 以深の丼戸で, 同じく 1~8 l / sec, 最大 10 l / sec の程度で, 揖斐川流域の自噴量が最も多い。 これらは夏季に 130~50 % 程度増量する。

大垣市附近の自噴井戸の総数は現在約 15,000 本で, 大垣自噴帶全体の井戸数のほゞ 1/2 に相当する。 また大垣市街地で排水される被圧面地下水の総量は, 1日約 130,000~160,000 m 3 で, 河川水滲透量の 10 % 弱である。

自噴帶以外の地区では, ほとんど手押ポンプによって淺い自由面地下水, あるいは自噴するに至らない被圧面地下水を利用している。

第2図 鑿井柱状図

第3図 水埋地質図

帶水層の分布

鑿井地質断面によると, 大垣市附近の地表近くには, 厚さ数 m の貝殻混りの砂層を挾む礫質の冲積層があり, 揖斐川流域に最も厚く, 最大 55 m 程度に逹する。 この下位には厚さ 50~80 m の礫と粘土との互層が分布し, その比較的上部には 2~3 m 程度の浮石層があって, 岐阜市および愛知県木曾川町で深度 30~40 m と記録される。 また下部には埋木と貝殻を混える層がある。 礫層は東部および西部では数 m の厚さで粘土層と互層するが, 中央部では 15~20 m 程度の厚さまで発逹する。

大垣市内大垣公園の深度 255 m の鑿井資料によると, 礫と粘土との互層の下側 105 m 以下は一連の砂礫層であるが, 確実な不透水性基盤には達していない。 この砂礫層は自噴帶に一様に広く分布しているが, 杭瀬川以西には発逹していない。 地層の物理的性質および水質からすれば, 互層と下位の砂礫層とは類似した地層であり, おそらく関ヶ原町・垂井町附近に分布する 更新~鮮新統の地層と対比されるものと思われる。

本所事業として実施された電気探査の結果を勘案すれば, 上部の礫層と互層とは揖斐川流域において最も厚く, 互層および下位の砂礫層は北部では淺く, 主央部に向って深くなっており, 大垣自噴帶は南に開いた盆状構造の観を呈している。

大垣市附近において利用可能の帶水層は, 以下の3層である。

a. 深度 55 m 以淺に分布する厚さ 10~20 m の砂礫層
b. 深度 70~80 m 附近に分布する厚さ 10 m 程度の砂礫層
c. 深度 90~200 m 間に分布するほゞ一連の砂礫層

この地域では自噴井を深度によって 淺掘・中掘・深掘(または百間掘)と呼んで区別しているが, これらの自噴井はそれぞれ上述の帶水層に到逹している。

水温

大垣市附近の被圧面地下水の水温は, 淺掘・深掘ともに 13~15゚ C の範囲に入り, かつ年較差も 0.4゚ C 以下である。

淺掘は神戸町と大垣市街地中央部とを結ぶ線の東側, 揖斐川右岸にかけては N - S 方向に 13~13.5゚ C の低温を示しているが, その西側杭瀬川までは 13.8~14.5゚ C を, さらに杭瀬川以西では 15゚ C 前後をなしている。

中・深掘の水温は, 杭瀬川から長良川にかけての一帶で 13.5~14゚ C を, 杭瀬川以西および岐阜市附近では 14.5~15゚ C を示し, 大垣市附近より幾分高温になっている。

水質

大垣市附近の被圧面地下水は, 第2表に示すとおり, Ca, SiO2 をはじめ溶存成分が少なく, 水質は一般に良質である。 全域を通じて固形物総量は, 60~70 mg / l であるが, 岐阜市附近が僅かに多い。 なお全体として深度により認められる差はきわめて少ない。

第2表 濃尾平野北部の地表水および地下水の水質

種類 採取地 深度(m) pH 溶存酸素(cc / l) 遊離炭酸(mg / l) 過剰塩基(m. eq l) Cl - (mg / l) Fe +2 (mg / l) Ca +2 (mg / l) Mg +2 (mg / l) 全硬度 SiO2(mg / l) 固形物総量(mg / l)
揖斐川 杉野 - 7.0 7.78 1.5 0.420 3.5 0.00 6.8 1.3 1.25 11.2 60
長良川 岐阜 - 7.1 6.68 2.5 0.500 3.0 0.00 8.7 1.1 1.48 12.0 46
淺掘 大垣市立東中学校 38 7.0 5.00 1.0 0.536 5.0 0.00 7.1 3.4 1.78 17.2 66
中掘 大垣公園 80 7.3 5.89 1.1 0.680 4.0 0.00 9.1 2.3 1.80 15.6 56
深掘 大垣市立興文小学校 190 7.3 3.72 1.3 0.690 4.5 0.00 8.1 2.6 1.73 12.8 68
分析者 : 地質調査所 比留川貴・米谷宏

文献

引用文献

1) 関武夫 :
伊吹山附近秩父系の層序及び構造に就いて, 矢部教授還暦記念論文集,Vol.1, 1938
2) 藤本治義 :
赤坂・醒ヶ井地方産 Pseudoschwagerina 並に Pseudoschwagerina 帶の 地質時代の考察, 地質学雑誌,Vol.48, No.569, 1941
3) 村下敏夫・比留川貴・尾崎次男 :
濃美平野工業用水源地域調査報告(東海地域調査の第3報), 地質調査所月報,Vol.5, No.12, 1954

参考文献

1) 三浦宗次郎 :
20 万分の1「名古屋」図幅および説明書, 地質調査所, 1890
2) 脇水鉄五郎 :
美濃国赤坂金生山の石灰岩層, 地質学雑誌,Vol.9, No.102,104,105,108, 1902
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地質学上ノ見地ニ依ル江濃地震, 震災予防調査会報告,No.69, 1910
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On Three Brachiopod Species of the Subfamily Orthotetinae in the Fusulina-Limestone of Kinsyo-zan, Akasaka-mati, Prov. Mino, Japan, Mem. Fac. Sci. Agr., Taihoku Imp. Univ., Vol.6, No., 1932
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A New Gastropod Genus from the Permian of Japan, Mem. Fac. Sci. Agr., Taihoku Imp. Univ., Vol.22, No.2, 1939
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Stratigraphical and Paleontological Studies of the Later Paleozoic Calcareous Algae in Japan, 4, Sci. Report, Saitama Univ., Ser. B, Vol.1, No.2, 1953

EXPLANATORY TEXT OF THE GEOLOGICAL MAP OF JAPAN Scale 1 : 50,000

OGAKI

Kyōto, No. 7

by HIROSHI ISOMI (Written in 1954)


Abstract

GEOLOGY

The area of the "Ogaki" sheet map lies in the northwestern marginal part of the Nōbi alluvial plain, Central Japan. In the northern part of the mapped area are hills, in the western part a high mountainland (Ikeda mountainland) and in the southwestern part the Nangū mountainland, all these hills and mountainlands being composed of Paleozoic rocks.

The Paleozoic rocks of the Ikeda mountainland

The Paleozoic rocks of the Ikeda mountainland run NNE, and dip eastwards in the southern part, while westwards in the northern part. They are divided into five formations, as follows, in ascending order : Otaki formation (Middle Carboniferous), Oishi formation (Lower Permian), Umetani formation, Kasukawa formation (Middle Permian) and Kasuga formation.

Otaki formation (Middle Carboniferous)

The Otaki formation is composed of phyllitic clayslate and sporadical intercalations of chert and "schalstein" (basic pyroclastics). Small lenticules of limestone in this formation yield Middle Carboniferous fossils, such as Fusulinella biconica (HAYASAKA), Clisaxophyllum awa MINATO, and Lithostrotion sp..

This formation crops out only in the southern part of the Ikeda mountainland and has general strike of NE.

Oishi formation (Lower Permian)

This is composed of predominant clayslate and subordinate sandstone in alternation. Small limestone lenses in this formation contain some lower most Permian fusulinids such as Staffella rotunda SAURIN, Schwagerina krotowi (SCHELLWIEN) and Pseudofusulina spp.

The strike is NNE, the dip being 60゚ E. This formation crops out in the southern part of the Ikeda mountainland and is in fault relation with the Otaki formation distributed in the west.

Umetani formation

This formation grades lithologically from the underlying Oishi formation, and consists of predominating massive sandstone and subordinate clayslate. Age-indicating fossils are not found.

This formation crops out to the east of the underlying Oishi formation in the southern part of the Ikeda mountainland. The strata, which may be correlated lithologically with this formation, crop out in the northern part as well.

The strike is NNE, the dip generally being 60゚ E in the southern part (the type locality) of the Ikeda mountainland, and 60゚ W in the northern part.

Kasukawa formation (Middle Permian)

The lower part of this formation consists of thick clayslate intercalated with sandstone, and the upper part consists of thick sandstone and thin clayslate in alternation. A limestone lens in the lower part contains middle Permian fusulinids such as Neoschwagerina craticulifera (SCHWAGER) and Pseudofusulina japonica (GÜMBEL).

An easterly isolated outcrop, which corresponds to the upper part of the Kasukawa formation, includes a small limestone lenticule. This limestone contains such younger middle Permian fusulinids as Codonofusiella paradoxica DUNBAR and SKINNER, and Neoschwagerina margaritae DEPRAT.

The Kasukawa formation crops out only in the northern part of the Ikeda mountainland and shows the general strike of NNE and dip of 60゚ W.

Kasuga fromation

At the westerly adjacent area, a thick cherty bed, named the Kasuga formation, covers the Kasukawa formation conformably. Exposures of this formation are seen in the northwestern part of the area mapped.

The Paleozoic rocks in the northern hills

Most of the Paleozoic rocks in the northern hills are composed of clayslate, sandstone, and chert. They are non-fossiliferous. The abundance in chert is characteristics as in the Kasuga formation. The strata run from west to east, and dip northwards or southwards with inclinations of about 50゚.

At the central part crops out a limestone ("Ishiyama" limestone) from which abundant middle Permian fusulinids, including Cancellina nipponica OZAWA, Neoschwagerina craticulifera (SCHWAGER), N. margaritae DEPRAT, Yabeina Katoi (OZAWA), Verbeekina verbeeki GEINITZ and Pseudofusulina japonica (GÜMBEL) are found. Unfortunately, this limestone is in fault contact to the neighbouring non-fossiliferous Paleozoic strata.

The Paleozoic rocks in the Nangu mountainland

Mt. Nangū, situated at the southeastern part of the mapped area, is composed of alternating beds of massive sandstone and subordinate clayslate. The rock facies are similar to those of the Umetani formation or the upper part of the Kasukawa formation. These non-fossiliferous strata are folded with the axis of NE.

Akasaka limestone

The Akasaka limestone, situated at the southeastern end of the Ikeda Mountainland, yields abundant Permian fossils (refer the fossil-list "第1表" in the Japanese text).

This limestone is subdivided in descending order as follows :

Middle Permian
Yabeina globosa (Ng) Zone
Neoschwagerina margaritae (Nm) Zone
Neoschwagerina craticulifera (NC) Zone
Cancellina nipponica (Nn) Zone
Lower Permian

The Lower Permian in the Akasaka limestone is rather uncertain. Below Nn zone, is still developed a crystalline limestone, named the Benijima limestone, containing Pscudofusulina granum-avenae (ROEMER) and P. ambigua DEPRAT.

The Benijima limestone may represents the upper horizon of the Lower Permian. Exposures of Lower Permian, older than the Benijima limestone, are not found actually. However, a boulder, which contains Pseudoschwagerina and Pseudofusulina vulgaris, was once found in a quarry of Akasaka. This discovery suggests the existence of the lower horizon of Lower Permian in the Akasaka limestone.

The Akasaka limestone constitutes an isoclinal anticline with westward inclination of less than 40゚, though most part of the eastern wing is not exposed. The limestone is in fault contact to the synchronological Permian rocks without limestone, the Umetani formation, which is extensively exposed to the west. The remarkable lithological contrast between the synchronological strata and the fossiliferous limestone is explained as follows : The limestone facies is presumably a fragment of decke thrust over the non-limestone facies.

Diagrammatic Section across the Akasaka Limestone (after Y. Ozawa, 1927).
Ch & SS : sandstone & chert (Umetani formation)
Ng : Zone of Yabeina globosa
Nm : Zone of Neoschwagerina margaritae
D : Pseudodolina horizon
Nc : Zone of Neoschwagerina craticulifera
Nn : Zone of Cancellina nipponica
? : "Benijima" limestone
Lb : Limestone breccia

Dyke rocks

A dyke of plagiophyre occurs in the Oishi formation and some dykes of porphyrite cut various Paleozoic strata.

Quaternary deposits

Makita formation : Small outcrops of silt at the northern foot of Mt. Nangū are extensions of the Plio-Pleistocene Makita formation, which is typically developed to the west of the mapped area. The Makita formation is of non-marine deposits, intercalating a very thin layer of coaly matter.

Gravel bed : Gravel beds occur in alluvial fans, along the fault cliffs of the mountainlands, facing to the alluvial plain. The fault cliff, running NNW along the eastern margin of the Ikeda mountainland, is the most conspicuous.

Alluvium : Alluvium deposits, composed of sand, gravel and clay, constitute the wide plain in the central part of the area mapped.

ECONOMIC GEOLOGY

Limestone

The Akasaka limestone, with facility of railway transportation, is one of the most important quarried limestones for lime powder in Japan. The annual production in 1954 is 506,297 tons.

Other limestones are quarried on small scale.

Iron Ore

A small hematite bed occur in a trough on the limestone hill of Akasaka. The annual production in 1953 is 7,945 tons.


昭和 30 年 7 月 22 日印刷
昭和 30 年 7 月 27 日発行
著作権所有 工業技術院 地質調査所