10084_1961

5万分の1地質図幅説明書

付知 つけち

(金沢 第 84 号)

通商産業技官 河田清雄

地質調査所

昭和 36 年


目次

I. 地形
II. 地質
II.1 概説
II.2 古生層
II.3 火山角礫岩類
II.4 流紋岩類
II.5 花崗斑岩
II.6 苗木・上松花崗岩
II.6.1 粗粒黒雲母花崗岩
II.6.2 斑状黒雲母花崗岩
II.6.3 細粒~中粒状黒雲母花崗岩
II.6.4 微細粒黒雲母花崗岩(アプライト質花崗岩)
II.6.5 苗木・上松花崗岩中のペグマタイト
II.7 酸性火成岩類相互の関係と岩石命名
II.7.1 酸性火成岩類相互の関係
II.7.2 岩石命名について
II.7.3 酸性火成岩類の分析表
II.8 岩脈類
II.9 新第三系(瀬戸層群)
II.10 玄武岩類
II.11 崖錐堆積物
II.12 段丘堆積物
II.13 冲積層
III. 応用地質
III.1 金属鉱床
III.1.1 タングステン鉱床
III.1.2 その他のタングステン鉱床
III.1.3 銅・鉛・亜鉛鉱床
III.1.4 その他の銅・鉛・亜鉛鉱床
III.1.5 漂砂鉱床
III.2 非金属鉱床
III.2.1 珪石
III.2.2 螢石
III.2.3 石材
文献

巻末図版

Abstract

1 : 50,000 地質図幅説明書 (昭和 34 年稿)

付知 つけち

(金沢 第 84 号)


本図幅の野外調査は昭和 31~32 年(1956~1957 年)度にわたって実施された。 この地域は従来ペグマタイトに富み, 放射能鉱物を産する苗木花崗岩の産地として著名であったが, 全般的な調査, 研究としては, 野田勢次郎 4) が行なった以後みるべきものがなかった。 その後, 柴田秀賢による苗木地方の研究 10) が行なわれ, 石英斑岩・花崗斑岩および花崗岩などの酸性岩類による火成活動の有様が ほゞ明らかにされた。 本図幅の作成にあたってこれらの資料 4), 10) を参考にした。 また図幅地域内の諸鉱床については主として五十嵐技官が, 当時同鉱床の調査を行なった 浜地・五十嵐・坂巻各技官による調査資料を利用してとりまとめた。

I. 地形

本図幅地域は, 岐阜県東部のいわゆる東濃山地の一部に位置している。 この地域はきわだって急峻な山岳地帯でもないが, また平坦な丘陵地でもなく, だいたい海抜 1,000 m 内外の壮年期後期の山地が大部分を占めている。 このような地形の傾向は 図幅地域の大部分を占める流紋岩・花崗斑岩の構成する山地に著しい。

図版 1 笠置山山麓に発達する崖錐地形。
A : 笠置山北西山麓
B : 笠置山北東山麓

流紋岩・花崗斑岩の山地

流紋岩の山地は図版 1A, B に代表されるようなゆったりした高度 1,000 m 内外, 径約 4 km の孤立した山塊をつくっているのが通例である。 このような山塊の間はかなり広く開けた河川によって開析され, 山塊と山塊とを結ぶ鞍部は海抜 700~800 m の定高性をもっている。 こころみに第 1 表に各山塊の最高峯と各山塊との間を結ぶ鞍部の高さを示した。

第 1 表 山塊・鞍部の高度分布

山塊 高度
1) 三界山 1,595.5 m
2) 二ッ森山 1,223.3 m
3) 高時山~寒陽気山 1,146 m
3') 笠置山 1,127.9 m
4) 箱岩山~鹿遊び 1,080.1 m
5) 手掛岩山 1,003.4 m
6) 新巣山 しんすやま 984.0 m
7) 捨薙山 すてなぎさん 983.2 m
8) 高峯山~松山(妻籠図幅) 944.7 m
9) 権現山 911 m
10) 無反山 むそれやま 888.5 m
11) 権現山 866.8 m
鞍部 高度 両側の山塊
(1) 切越峠 866 m 2) - 3)
(2) 新巣 しんす 柿反上 かきぞれかみ 797 m 3) - 7)
(3) 越道峠 794 m 3) - 6)
(4) 遠ケ根峠 793 m 2) - 4)
(5) 胡摩草峠 790 m 4) - 9)
(6) 蛭川峠 743 m 3') - 4)
(7) 大明神~小笹 690 m 3) - 5)
(8) 大野峠 666 m 7) - 10)
(9) 切井~町切 630 m 4) - 11)

流紋岩山地の特色ともいうべきものは, その山腹から山麓にかけて緩斜面を形成して発達する崖錐堆積物の存在である。 笠置山の東麓・北西麓の崖錐はそのもっとも代表的なものである(図版 1A, B 参照)。

花崗岩山地

この図幅地域の花崗岩山地は2つの特色ある山地に分けられる。 その1つは, 図幅地域の南東部, 苗木から蛭川村にかけての一帯である。 この地域では低い丘陵性の山地が発達しており, 大規模な崖錐の発達することはない。 このような崖錐の発達の相違は流紋岩と花崗岩との風化, 分解の様式の違いによるものであろう。 すなわち花崗岩は風化を受けると, 節理に沿って大きなブロックに分かれた後, ただちに砂粒になるのに反し, 流紋岩はやはり節理に沿って, はじめに 1 m 内外の角礫になるが, そののち分解しがたくそのままの形を保つからであろう。

花崗岩の形成する第2の山地は, 阿寺断層の北東側にみられる。 この部分は, 地形学的に傾動地塊といわれている阿寺山脈の前面をなす部分であって, かなり急峻な地形を示し, 数多くの崩壊地がみられ苗木~蛭川の低い丘陵地とは著しく異なっている。

古生層山地

古生層山地は図幅地域の南西隅にみられるが, これもまた他の山地に較べて特色ある地域となっている。 すなわち, この山地は高度 700~900 m の間にあって起伏の比較的小さな, いわば準平原の遣物がもっともよく残されているところである。

河谷

本図幅地域の山地を幅広く開析して, 多くの河川が流れる。 そのなかでもっともめだったものは, 図幅地域東部を南北に貫流する付知川であり, 最大のものは図幅地域南東隅にわずかにみられる木曾川である。 図幅地域の北東部を北西 - 南東に走る付知川中流部の谷は, いわゆる阿寺断層の断層谷である。 この河谷の形成は, 少なくとも鮮新世にまでさかのぼるものであって, 本図幅地域内から東に隣接する妻籠図幅地域内にかけて, この阿寺断層谷を埋めて流れた鮮新世の玄武岩の熔岩流が残存している。 現在この谷には, 主として妻籠図幅地域内で, 坂下川・川上川の2つの河が熔岩台地の両側を平行して流れている。 同様に古い歴史をもった河谷は付知川の下流部である。 付知川の下流部の東岸には, 鮮新世の礫層である瀬戸層群の一部が南北約 12 km にわたって細長く分布している。 その分布および岩相からみて, この礫層は鮮新世当時すでに存在した付知川の河谷に堆積したものであろう。 これに反して, 木曾川が現在の流路をとったのは比較的新しく, 鮮新世の礫層の堆積後その北縁近くに流路をきめたものである。

段丘

段丘は形成の歴史の古い付知川の下流部にもっとも系統的に発達している。 鮮新世の礫層が, すでにこの河谷を埋めた堆積段丘の堆積物の性格をもっているのであるが, その後も継続的な隆起に伴なって侵蝕段丘の形成が行なわれた。 段丘面は下野の鮮新統の堆積面を除いて, 上位の馬場・植苗木・並松上段の段丘面, およびそれ以下の段丘群にほゞ大別される。 段丘礫層の厚さはいずれも薄く, 5 m 以下で多くは 2~3 m にすぎない。 段丘礫層が鮮新世礫層の上に重なる部分では, 良好な露頭を除いて両者の識別は困難である。

付知川の中流部, 阿寺断層の断層谷の部分にも広い段丘面が存在し, その上に細長い付知の町がのっているが(図版 2 参照), これと下流部の段丘とを関連づけることは困難である。 おそらく段丘の形成に関与した地殻運動の性質が, 両地域で幾分異なっていたのであろう。 木曾川に沿っては南北両岸に, その下流の祝平・御所平などの段丘面が鮮新統を切って発達している。

図版 2 付知川西岸の段丘と後背山地(付知川東岸の沼付近から撮影)

II. 地質

II.1 概説

中部地方の西南日本内帯においては領家帯・非変成古生層帯・飛騨帯の3帯は, ほぼ NE~SW 方向にのびて帯状に配列し, 中部地方内帯での主要な構造を決定しているが, 中生代末期(白堊紀 ?)に活動した 酸性火成岩類(流紋岩~石英斑岩・花崗斑岩・苗木・上松花崗岩)は, 前者にほゞ斜行しており, なかでも流紋岩は, これとほゞ直交する NW - SE 方向にのび 飛騨帯と領家帯にわたって広大な分布を示している [ 以下の [注] 参照 ]

[注]
中部地方の内帯に広く分布する酸性火成岩類(流紋岩類)は, 岐阜県東部の恵那山付近から北西ないし北北西方向に伸びており, その北の端は富山・岐阜の兩県の県境に達しており, 岐阜県大野郡白川村の北方までは連続する岩体として確かめられている。 しかし白川村の北方の富山県西礪波郡西赤尾付近から北にかけては, いわゆる「太見山層群」と呼ばれる酸性火山岩, および同碎屑岩類があり, 現在その間の関係は明らかにされていない。 中部地方の内帯に広く発達する酸性火成岩類(流紋岩類)の占める総面積は 約 4,000 km2 に達している。

本図幅地域は, 酸性火成岩類が領家帯の花崗岩類に接する地域近くにあたり, 広大な分布を占める流紋岩の岩体の南東縁辺部に相当する。 図幅地域の南西方において, 古生層は, その一部が現われるに過ぎず, 図幅地域の外に広く分布しており, この地域での基盤を形成している。 古生層は主として粘板岩と砂岩との互層からなり, チャートの薄層を挾有する。 この地域での一般走向は, NE - SW であるが, 北西方に向かうにつれて漸次 NNE - SSW の傾向を示すようになる。

本図幅地域には中生代末期(白堊紀 ?)に入って著しい酸性火成岩類の活動がおこり 古生層を破って流紋岩が噴出し, 花崗斑岩や花崗岩などの貫入が行なわれた。

火成活動の先駆をなす流紋岩は, 一部で古生層を破って貫入しているが, その基底部または内部に阿寺層をはじめとする火山砕屑物を含む堆積岩を伴なっている。 したがって従来「石英斑岩」の名で呼ばれてきたこの岩体は, 流紋岩とその火山砕屑岩類からなる火山岩類で, 熔結凝灰岩と呼ばれるべき岩相のものが多くみいだされている。

流紋岩中には, 一部に岩脈状の優白色石英斑岩が現われることがあるが, 本岩は花崗斑岩の周縁相に類似しており, 一部では移化するものと考えられる。 本図幅地域内にはこの種の石英斑岩の分布はまれである。

花崗斑岩は流紋岩にやゝおくれて, ストック, ボスまたは岩脈として貫入した。 貫入した周辺の流紋岩に対して与えた熱変成作用は花崗岩の場合ほど著しくない。

図幅地域内に分布する花崗岩は, 苗木・上松花崗岩で, 中津川市苗木地区の周辺に発達するものは細粒~中粒である。 このほかに粗粒のものや斑状のものがあり, これらは野外で漸移する。 苗木付近の細粒の花崗岩中には晶洞ペグマタイトがしばしばみいだされる。 苗木・上松花崗岩は, 流紋岩および花崗斑岩を貫ぬいており, 流紋岩に対しては広い範囲にわたって熱変成作用を与えている。 これはルーフ状に拡がる上位の流紋岩に対して, 花崗岩が低角度の貫人形態を示すためである。

流紋岩 … 花崗斑岩 … 花崗岩に至る火成活動は, ほゞ一連のものであるが, 火山活動にはじまり, 深成活動に終る過程の各火成岩類が, それぞれ密接に相伴なって分布しており, その地質時代は白堊紀の末期頃と考えられている。 以上の酸性火成岩類のすべてを貫いて珪長岩の岩脈が認められるが, その時代は明らかでない。

図幅地域南西隅の古生層中の石英斑岩の岩脈は, 流紋岩の活動の末期頃に貫入したものと考えられるが明らかでない。

また阿寺断層に沿って発生する石英安山岩の岩脈の時期も明らかでないが, 瀬戸層群堆積以前のものと考えられる。

鮮新世の頃に至り, 図幅地域の南東方の中津川市周辺が堆積盆地化し, 種々の陶土原料を含む夾亜炭層や, 砂礫層からなる陸成の瀬戸層群が広く堆積した。 本図幅地域では, 主として付知川や木曾川の古い流路に沿った低地帯に堆積し, それらは瀬戸層群全体からみればその周辺の北縁部に相当する。 瀬戸層群の堆積の末期には, 阿寺断層谷に沿って坂下町上野付近を中心に玄武岩の噴出があった。 またこの頃には 付知川の西岸地域では流紋岩や花崗岩からなる後背山地から崩壊物が供給され, 急速に押し出されて崖錐を形成した。 この崖錐堆積物は, この地域の瀬戸層群と類似した外観を示している。

第四紀に至り, 形成の歴史の古い付知川に沿って段丘礫層が発達した。 また流紋岩からなる山地には, これらの崩壊により崖錐が形成され, 特異な地形を示している。 この崖錐は, 付知川の西岸に発達する崖錐で, 瀬戸層群に類似した外観を示すものに較べ, その時期は新しいものである。

第 1 図 後期中生代火成岩類分布図

地質構造について

本図幅地域の地質構造線の方向を代表するものは, NW - SE 方向である。

この図幅地域内に現在認められる断層は, 北東部で流紋岩と花崗岩の両者をほゞ直線的に切る阿寺断層, 南西部において古生層と流紋岩との境界の一部を画する断層, ならびにこの北方で流紋岩と花崗斑岩とを切る赤河断層などがあげられる。 なかでも阿寺断層は, この地域の地質構造の性格を決定する主要な断層である。 すなわち, 中部地方の内帯に広く分布する流紋岩の全体の伸びの方向が, この断層方向にほゞ一致しており, また阿寺断層の位置が, 流紋岩体のほゞ中央内部に当ることなどから考えて, 流紋岩の活動に関与した構造運動の方向を示すものではないかと推定される。 しかしこの断層は, 流紋岩と花崗岩との両者を切ることから, 花崗岩の形成された後のものであるが, この断層谷に沿って石英安山岩の岩脈が発達することや, 玄武岩の噴出がみられること, および坂下町の近傍で段丘礫層が, この方向の断層により切られているのが岡山俊雄により確かめられていること [ 同氏の談話による ] などから, この断層によって示されるような構造運動は, その後も引き続いて行なわれたものと考えられる。 このほか NW - SE 方向の断層に直交する NE - SW 方向の断層もみられるが, 著しいものではない。 また流紋岩や花崗岩中には E - W, N - S の2方向の断層が発達する。 この断層は, ほゞ直線的でその落差は著しくない。 この地域の鉱床は主として E - W 方向に配列しており, しかも断層地帯に鉱床が分布することなどから, この断層は花崗岩の形成ならびに鉱床の成因に関連のあるものと考えられる。

図版 3A 阿寺断層により軽度の角礫化を蒙った流紋岩(小野沢北西方)

図版 3B 阿寺断層によりもめた花崗岩(苗木・上松花崗岩)と流絞岩の接触部。 花崗岩・流紋岩はともに角礫化し, 流紋岩の一部は粘土化している(小野沢北西方)。
Gr : 花崗岩, RhI : 粘土化した流紋岩, RhII : 角礫化した流紋岩

II.2 古生層

瀬戸・多治見付近を中心に岐阜県東部(いわゆる東濃地方)に発達する古生層は, この地域の基盤を形成する。

図幅地域内にはこの古生層の一部が分布するが, 化石がみいだされないので詳細な層序を明らかにすることは困難であるが, 下部二畳紀に相当するものと考えられている。 地層は粘板岩・砂岩およびチャートからなる。

粘板岩

本層は主として暗灰色~黒色を呈し, 砂岩・チャートおよび珪質板岩の薄層を挾むことがある。 板状の節理は著しいが, 層理は明瞭でない。 局部的に千枚岩質となり擾乱することがある。

砂岩

粘板岩中にしばしば約数 100 m の厚層として発達することもあるが, 数 m~数 10 m の薄層として分布することが多い。

暗灰色~灰色を呈し, 細粒~中粒で層理は不明瞭であり非常に堅硬である。

チャート

チャートはこの地域では厚層として発達することが比較的まれである。

不規則な塊状をなすものと薄い板状との偽層理の発達したものとがある。 灰黒色を呈し, まれに乳白色や赤褐色を呈することがある。

この地域の古生層はいずれも N 40~60°E の走向を示し, ほとんど直立に近い傾斜を示すことが多いが, NW または SE に約 70°の傾斜を示すこともある。

なお流紋岩と接する地域の古生層は, 断層によって著しく破曲され, 一部では一般走向と逆行する NW 方向の走向を示している。

II.3 火山角礫岩類

本岩は流紋岩の基底部, またはその内部に発達する。

本図幅地域では二ッ森山周辺のものと, 図幅南西縁部のものとに大別される。

二ッ森山周辺のものは, その付近に基盤の古生層がみいだされないことから, 流紋岩の基底部ではなく, 岩体内部の夾みではないかと考えられる。 また図幅南西縁部では, 基盤の古生層が広く分布しており, これら基盤の存在からみて流紋岩の基底部に発達するものと考えられる。

模式地の阿寺川の下流部では, 礫質の岩石と, 礫を含まない少量の細粒堆積物との互層である。 これらの構成物質には流紋岩に由来するものと, 古生層に由来するものとがあり, これらの組み合せと粒度により 礫岩・火山円礫岩・凝灰角礫岩などの礫質岩石と 砂岩・黒色頁岩・凝灰岩などの岩相があり, それらは頻繁に移化している。 また, これに類似した地層で阿寺層と呼ばれるものがある [ 以下の [注] 参照 ] 。 その模式地は5万分の1地質図幅「上松」の阿寺川下流部およびその周辺地域である。

[注]
5万分の1地質図幅「上松」において, 片田正人・礒見博が阿寺層と命名した。

二ッ森山周辺部のもの

礫質部の優勢な礫岩を主として, 礫の大部分は古生層のチャート・砂岩・粘板岩を主とし, このほかに少量の流紋岩の礫が混在する。 礫の大きさは直径約 2~3 cm のもの, および約 1 cm のものが大部分を占め, まれに数 10 cm 以上のものが含まれる。 礫の分級度はきわめて悪く, 礫の形状も亜円礫で, みごとな円礫はほとんどみられない。 基質を構成する物質は ほとんど古生層のチャート・砂岩・粘板岩の小破片や, これらの分解して生じた炭質物からなり, このほか流紋岩から由来した凝灰質物を含んでいる。

古生層から由来した物質に富むため, 全体的に黒味を帯びており礫の膠結度は良好である。 礫質部が優勢なために, 走向・傾斜を測定することが困難であるが, 測定し得た範囲では北方に向かって 10°内外の緩傾斜を示すものと思われる。 二ッ森山西方ではその厚さは数 10 m 内外と推定されるが, このほかのものはいずれも 10 数 m の薄層と考えられる。

図幅地域南西部のもの

この地域のものは, 主として火山角礫岩からなる。 その代表的な火山角礫岩は, 西隣の金山図幅地内の下油井, およびその南方の飛騨川の東岸で, こゝでは古生層を覆って流紋岩の基底部に発達する(図版 4 参照)。 本図幅地内の阿寺層は, ほゞこれの延長に相当するものの一部と考えられる。

図版 4 阿寺層(火山角礫岩)とその上位の流紋岩。 流紋岩は熔岩として火山角礫岩の上にのっている(金山図幅下油井駅南方)。
Rh : 流紋岩, V.B. : 火山角礫岩

図版 5 火山角礫岩の拡大部分。 この部分の礫は主としてチャートで, マトリックスは古生層の粘板岩や砂岩の破片と凝灰質物からなる(金山図幅下油井駅南方)

基盤の古生層のチャート・砂岩・粘板岩の角礫とその破片からなり, 少量の流紋岩・の礫を含む火山角礫岩といってよい岩相である(図版 5A, B 参照)。 礫は稜角のある不定形のものが多くを占め, 亜円礫も含まれる。 大きなものでは数 cm 大に達するが, 多くのものは数 mm 大である。 基質は古生層のチャート・砂岩・粘板岩の細粒破片やその分解物および凝灰物質からなり, 下油井南方の火山角礫岩では, 下部は古生層から由来した物質が主で, 上部に向かうにつれて 流紋岩から由来した火山性物質(凝灰質物・流紋岩礫)が増加する傾向がある。 図幅地域南西部の火山角礫岩は, 小規模であるためにこのような傾向は明らかでない。

なお図幅地域南西部では, 流紋岩が一部で古生層を貫いており, 角礫岩の一部は貫入の際に生じた貫入角礫岩に相当するものであるかも知れない。

II.4 流紋岩類

図幅地域内の大半を占めて広く発達する流紋岩は, 岐阜・富山両県の県境に近い岐阜県大野郡白川村の北方から, 飛騨地域を経て美濃高原に達しており, その岩体の伸びは, ほゞ NW - SE 方向を示している。 図幅地域内の流紋岩は, この大きな岩体のほゞ南東端部に相当する一部分である。 流紋岩は, 図幅地域の南西隅で, 多治見方面から岐阜県東部(東濃地方)にかけて発達する古生層の一部と 断層で境されるが, 八百津町福地(旧福地村)の蔵橋から, その南東方の篠原に至る道路のカッティングでは, 流紋岩が古生層中に貫入している。 本図幅地域内では, 流紋岩が古生層に接する部分が少ないために, 流紋岩の活動様式についての全貌を明らかにすることが困難である。 しかし, 1958~1959 年に相ついで出版された地質図幅「上松」・「妻籠」, ならびに現在調査済の「加子母」・「下呂」・「萩原」などの地質図幅調査により, 広大な岩体を形成する流紋岩の古生層に対する関係がほゞ明らかになった。 以上の調査から判明したことは, 上松図幅地域内(木曾地方)では流紋岩は古生層よりも上位にあって, 古生層を不整合に覆って分布することが知られている。 これに対して下呂図幅や萩原図幅地域内(飛騨地方)では, 流紋岩と古生層との境は, 断層破砕帯で, 流紋岩はこのようなところに貫入したことが認められる。

広大な岩体を形或する流紋岩の岩体のなかでも, 木曾地方と飛騨地方では, 基盤の古生層に対する関係がまったく相反するような形態を示していることに注目される。

本岩に対しては従来「石英斑岩」という名称が用いられてきたが, 次に示すような諸点から流紋岩と呼ぶこととした。 なお詳細は岩石命名の項でのべる。

本岩は, 本図幅地域において, ⅰ) その基底部付近または岩体の内部に, 砂岩・黒色頁岩および火山砕屑岩類からなる, いわゆる阿寺層またはその相当層が発達する。 ⅱ) 局部的ではあるが, 石基に著しいガラスを含む流理構造の著しい岩石(ガラス質熔結凝灰岩)が発達する。 ⅲ) 岩体のほゞ全面にわたって,古生層のチャート・砂岩・粘板岩の破片を多数捕獲しており, これらの捕獲岩は一部のものを除きいずれも変成作用をほとんど蒙っておらず, 地下浅処で機械的に取り込んだものと考えられる。

しかしながら, 本図幅地域内では, 流紋岩を貫く花崗斑岩や花崗岩があり, 流紋岩の一部は, これらによる熱変成作用を蒙り, 結晶質になっているため, いわゆる流紋岩にみられる特徴は少ないが, 岩質的には斑状流紋岩あるいは熔結凝灰岩と呼ぶのが適当である。

図版 6 流紋岩の露頭とそのなかにみられる古生層の捕獲岩(右下方)(東白川村大口)

図版 7 流紋岩の露頭と節理(加子母図幅佐見)

[ II.4.1 ] 流紋岩の野外における観察

色と岩相

流紋岩は通常は2次的変質作用や鉱化作用による変質を蒙っており, その表面は種種雑多な色を呈することが珍らしくない。 風化面では淡褐色や灰白色を示すことが多いが, 新鮮な面では青味を帯びた淡緑色(俗に青石(あおいし)と呼ばれる)である。 しかしそのほかしばしば暗灰色を示すこともある。 本図幅地域内の流紋岩の色と岩質との間には次のような関係が認められる。

淡緑色から青緑色~暗緑色に至るにつれて, 石英とカリ長石に乏しくなるが, 逆により基性の斜長石(中性長石程度)を多く含む安山岩質となる。 このような岩石中には多くの場合, 輝石(単斜輝石)が含まれる。 また灰黒色~暗灰色などの黒色を呈するものでは, その石基がガラスに富む傾向がある。 このほか花崗岩類によって熱変成作用を蒙り再結晶したものでは, それぞれのもつ元の色よりも優白色となる傾向がある。

流理構造

図幅地域内の流紋岩のある部分は, 花崗岩類による熱変成作用を蒙っているために 流紋岩類特有の流理構造のみられることはまれである。

しかし局部的には著しい部分があって, このような部分では 灰黒色のガラスと 灰白色の珪長質鉱物あるいは有色鉱物による縞状の流理構造が発達しており, いわゆるガラス質熔結凝灰岩とでもいうべき岩相を示す。

捕獲岩

図幅地域内の流紋岩にかぎらず, この地域の流紋岩中にはほとんど全域にわたって 古生層のチャート・砂岩・粘板岩などの捕獲岩片を含むが, とくに流紋岩と古生層との接触部付近には多量に含まれる傾向がある。 これらの捕獲岩のなかには熱変成作用を蒙り, ホルンフェルス化したものもあるが, 大部分は未変成に近い状態のものが多い。

節理

本岩に認められる主要な節理は, 一般に垂直方向と水平方向とに間隔の大きな割れ目を生じて発達することが多く, この地域の花崗岩類の節理に類似している。 したがって火山岩特有の柱状節理や板状節理を示すことはまれである。

岩質

流紋岩は 斑晶として石英・斜長石・カリ長石のほかに 有色鉱物として黒雲母・角閃石を含み, まれに輝石を含むことがある。 場所によりその粒度や斑晶鉱物の量に変化があり, 斑晶の少ない珪長岩質岩相のものから, 斑晶に富むいわゆる過晶質(パーセミック)の斑状流紋岩に至る 種々の岩相が野外においてみいだされる。 石基は珪長質~ガラス質であり, 場所により, その結晶粒度には変化があらわれる。

石英安山岩

石英安山岩は, 広大な流紋岩中に局部的にあらわれる。 野外で流紋岩との関係は明らかではないが, 漸移するものと考えられる。 一般に青味を帯びた緑色~暗緑色を呈し, 斑晶には斜長石が多く, 黒雲母・角閃石・輝石のほかに少量のカリ長石と石英を含有している。

流紋岩は花崗斑岩および花崗岩に接する付近では接触変成作用を蒙り, 再結晶作用が著しいホルンフェルス状岩石となっている。 とくに屋根(ルーフ)状に広く拡がる上位の流紋岩に対して, 花崗岩が下部から広く貫入している場合には, 広い範囲にわたって変成域が形成されており, 数 100 m~1 km の幅をもつことがある。 変成作用を蒙った岩石は, 優白色となり, 鱗片状の黒雲母の小さなクロットを生じ, 石基は著しく再結晶しており, 未変成の流紋岩とは野外でも識別し得ることが多い。

[ II.4.2 ] 流紋岩の鏡下での観察

淡青緑色流紋岩

斑晶 : 石英・カリ長石・斜長石・黒雲母・角閃石・(普通輝石)
石英は自形の複六方錐を示すものがあり, なかには融蝕形を示すものも認められる。 結晶内部に小さな亀裂を生じ, 破片状となって基質中にしばしば散点する。 カリ長石は半自形の卓状を示すことが多く, ペルト石構造が顕著である。 一般に2次的変質作用により結晶の全面にわたってカオリンを生じている。 微斜長石構造は認められない。 斜長石は灰曹長石~中性長石で自形柱状を示す。 普通, 累帯構造を示すが, 2次的変質作用により絹雲母の繊維状結晶を生じたり, 炭酸塩鉱物や緑泥石に置き換えられていることがある。 黒雲母は板状または長く伸びて撓曲した形状を示し, 多くの場合緑泥石に変質している。 角閃石は半自形柱状で緑色を呈するものが含有される。 普通輝石は完全な形を示して含まれることはほとんどなく, 結晶の外縁部は淡青緑色角閃石や, 緑色の雲母などによりとりかこまれたものが認められる。 普通輝石は黒雲母や角閃石とともに熱変質作用を蒙り易く, 安定な形では残り得ないものと思われる。 流紋岩は2次的変質作用を蒙り, 緑簾石や炭酸塩鉱物などを生じることが珍しくない。
石基 :
細粒状ないしは隠微晶の珪長質鉱物からなり, 緑泥石化した鱗片状の黒雲母などが含まれることがある。 また部分的には淡褐色のガラス質からなるものがあり, 種々の程度に脱ガラス化しており, 漠然とした不規則な形で細粒状の珪長質鉱物が生じている。 捕獲岩を包有する部分では(図版 15 [ 所在不明 ] 参照), チャート・砂岩・粘板岩などがほとんど原岩の組織を残したまゝで認められるが, 一部には軽度の再結晶作用が認められ, 絹雲母や黒雲母が生じていることがある。

第 2 図 および 第 3 図 古生層の捕獲岩(砂岩)を包有する流紋岩。 捕獲岩(砂岩)は熱変成作用により再結晶しており一部では黒雲母を生じている。 図版 Ⅰ に示すように 流紋岩中には 斑晶のこわれて生じた破片または捕獲岩中のゼノクリストではないか と考えられるような石英・斜長石・カリ長石などの破片が基質中に散点することがある。
Q : 石英, pl : 斜長石, kf : カリ長石, ss : 砂岩(捕獲岩)

流理状構造を示す流紋岩

斑晶 : 石英・カリ長石・斜長石・黒雲母
石英は六角の自形断面を示すものがあるが, 多くは石基により融蝕されている。 カリ長石は自形柱状でぺルト石構造が著しい。 2次的変質によりカオリンを生じている。 斜長石は自形柱状である。 2次的変質により炭酸塩鉱物を生じていることが多い。 黒雲母は板状結晶として含まれるが, ほとんど緑泥石に変質している。
このほか緑簾石がみいだされることがある。 付知町の西方の新巣山の北方では転石中に黒色のガラスに富む, ガラス質流紋岩がみいだされた。 本岩を鏡下でみると石基は淡褐色のガラス質物からなり, 著しい流理構造を示す。 本岩と, そのほかの斑状流紋岩との関係は不明である。
石基 :
半透明~淡褐色のガラス質物を主体とし, 隠微晶の珪長質鉱物からなる部分がある。 部分的に脱ガラス化したところでは, 石英などの晶出した微粒状の結晶が認められる。 ガラス質の部分には著しい流理構造が発達し, 斑晶鉱物の周りを取り巻いたような形状を示している。 また微粒状球顆構造の認められることがある。

第 4 図 古生層の捕獲岩(粘板岩・チャート)を包有する流理構造を示す流紋岩 (噴出岩相を示すもの)。
kf : カリ長石, pl : 斜長石, Q : 石英, sl : 粘板岩, Ch : チャート, ss : 砂岩

石英安山岩

斑晶 : 斜長石・石英・(カリ長石)・黒雲母・角閃石普通輝石
斜長石は中性長石程度で自形柱状を示し, 累帯構造が著しい。 斜長石の一部は2次的変質作用を蒙り, 亀裂に沿って緑泥石を生じている。 石英は自形状であるが, 融蝕されていることが珍しくない。 石英はまれに含有される。 カリ長石は一般に含まれないが, 一部の石英安山岩中にわずかに認められる。 半自形状で, ぺルト石構造が認められる。 黒雲母は熱変成作用を蒙った結果, 再結晶作用により生じたものと考えられ, 主として鱗片状の小集合体として基質中に散点するほか, イルメナイトの結晶の周りに成長することがある。 黒雲母は一般に淡い色で, X = 淡いクリーム色, Y, Z = 黄味を帯びた褐色である。 角閃石は半自形の柱状を示す緑色角閃石のほか淡青緑色のものが含まれるが, これは, 主として普通輝石の結晶の外縁部または内部に生じており, 変成作用に関係するものであろう。 普通輝石は半自形で柱状を示し, 結晶の外縁部から内部に向かって 淡緑色~淡青緑色の繊維状角閃石によって置き換えられており, 完全な単晶として含まれることがない。 いわゆるウラライト化作用を激しく蒙っている。
以上のほかに燐灰石や鉄鉱などが含まれる。 本岩は花崗斑岩に近接して現われるため, 花崗斑岩の貫入により軽度の熱変成作用を蒙ったものと考えられる。
石基 :
細粒状または隠微晶質の珪長質鉱物からなり, 緑泥石や黒雲母の鱗片状結晶が含まれる。 石基の粒度は場所により異なるが, 花崗岩や花崗斑岩に近接した地域のものは, 熱変成作用により種々の程度に再結晶している。

第 5 図 普通輝石角閃石黒雲母石英玢岩。 普通輝石の外縁部は淡緑色の繊維伏角閃石を生じている。
au : 普通輝石, B : 黒雲母, Q : 石英, pl : 斜長石

熱変成作用を蒙った流紋岩

斑晶 : 石英・カリ長石・斜長石・黒雲母・(角閃石)
石英は最大径 2~3 mm の斑状を示し, 微細な包有物に富んでいる。 カリ長石は半自形の卓状または不規則な斑状を示し, ペルト石構造が発達するが, 微斜長石特有の格子構造は認められない。 結晶の全面にわたりカオリンを生じている。 斜長石は自形の柱状を示し, 変質が著しく結晶の全面にわたり繊維状の絹雲母を生じている。 黒雲母は 0.5 mm 大の長さの板状または鱗片状で, しばしばクロットを形成するほか, 角閃石と共生している。 ジルコンの微晶を包有して著しいハローをつくることがある。 黒雲母の色は変成作用の程度によりそれぞれ異なるが, X = 淡黄色, Y, Z = 赤味がかった褐色を呈することが多い。 変成度の著しくないところでは, 緑泥石から黒雲母に変化する過程の緑色を帯びた淡褐色のものが認められる。 また元来の黒雲母が再結晶作用を蒙らずに, 細長く撓曲した形で緑泥石化した状態のものも認められる。 角閃石は場所により含まれる場合と含まれない場合とがある。 角閃石は最大 0.5 mm 程度の長さをもつ半自形, 柱状のもの, および原鉱物を置き換えて生じたレピドブラスティックな形状を示すものなどがあり, 緑色または青味を帯びた緑色を呈する。 本岩中に現われる角閃石の多くは 変成作用の結果元来の普通輝石・角閃石などが再結晶作用により生じたものと考えられる。
石基 :
完晶質で細粒の石英・カリ長石・斜長石からなり, 鱗片状の黒雲母や繊維状の絹雲母などが含まれる。 石基の粒度は変成作用を著しく蒙ったものほど粗くなり, 等粒状のモザイク構造を示し, その粒度は 0.1 mm 大にまで発達する(第 7 図参照)。

以上が変成作用を蒙った流紋岩中に現われる主要な鉱物であるが, このほかに, 普通輝石・白雲母・トパーズなどが含まれることがある。

第 6 図 A 付知町北東。
h : 角閃石, B : 黒雲母

第 6 図 B 花崗岩による熱変成作用を蒙った流紋岩中にみられる角閃石と黒雲母の共生関係 (黒雲母は再結晶作用により生じたもの)。
h : 角閃石, B : 黒雲母

第 6 図 C 花崗岩による熱変成作用を蒙つた流紋岩中にみられる レピドブラスティック組織を示す角閃石。
h : 角閃石

第 7 図 花崗岩による熱変成作用を蒙り再結晶してモザイク組織を示す流紋岩(細ガ谷付近)。
kf : カリ長石, pl : 斜長石, Q : 石英, B : 黒雲母

蛭川村薬研山付近の流紋岩は花崗岩の貫入を受け, 熱変成作用を蒙り, 一部はグライゼン化しており, この部分には絹雲母やトパーズを生じている。 鏡下ではトパーズは, 長さ 0.3 mm 程度半自形状で, 特有の劈開を示すことがある。

第 8 図 花崗岩による熱変成作用を蒙って再結晶した流紋岩中にみられるトパーズ (グライゼン化作用による)(薬研山)。
t : トパーズ, pl : 斜長石, B : 黒雲母, Q : 石英

福岡村の見佐島付近で, 花崗岩と流紋岩との接触部付近の流紋岩中には緑色スピネルがみいだされる。 本岩の斑晶や石基は前述のものとほとんど同様である。 スピネル(ヘルシナイト)は累帯構造を示す斜長石の, やゝ汚染して淡緑色の雲母を生じている中核部の部分に, 繊維状の絹雲母に囲まれたような形で生じている。

第 9 図 花崗岩との接触部付近の流紋岩の斜長石の中核部にみられるスピネル。
pl : 斜長石, B : 黒雲母, sp : スピネル, Q : 石英

II.5 花崗斑岩

花崗斑岩は, ストック, ボスまたは岩脈として流紋岩を貫いている。 また苗木・上松花崗岩に近接した地域にあらわれる傾向があり, 流紋岩・花崗斑岩・花崗岩の3者は, 野外で密接な関係を示すような分布を示している。

花崗斑岩は地域により, また岩体ごとに多少岩相を異にする傾向があり, とくに有色鉱物の量, 斑状組織の程度, 粒度に変化が認められる。 したがって斑状の花崗岩ないし花崗閃緑岩質のものから, 優白質の石英斑岩質にいたるまでの各種のものが含まれる。

苗木・上松花崗岩に近接してあらわれる花崗斑岩のうち, 付知川の河畔に沿って露出する部分は, 黒雲母・角閃石など有色鉱物の量や, 基質の粒度などからみて, 花崗岩に類似しており, 苗木・上松花崗岩の周縁相とでもいうべき岩相を呈している。

花崗斑岩は, 通常やゝ青味を帯びた淡青緑色~淡灰色を呈し, 完晶質の基質をもち, 石英・長石類とともに角閃石・黒雲母を含んでいる。 とくに長石類(斜長石・カリ長石)は長径 1~3 cm に達する柱状の自形を示し, 著しい斑状組織を呈する。

花崗斑岩は, 古生層のチャート・砂岩・粘板岩などの破片を捕獲岩として包有することはほとんどない。 しかしながら, 角閃石や黒雲母からなる輝緑岩質の基性包有物を含むことがある。

図版 8 花崗斑岩中に捕獲された輝緑岩質岩石。
A 輝緑岩質岩石中には斜長石化作用による斜長石を生じている (付知川知原橋下流 200 m 東岸)。
B 石英斑岩と花崗斑岩との接触部。 この露頭では 花崗斑岩(Gp)が石英斑岩(Qp)中に permeate [ 浸透 ] しているようにみえる(付知川知原橋下流 200m 東岸)。
Db : 輝緑岩質岩石, Gp : 花崗斑岩, Qp : 灰白色石英斑岩

花崗斑岩は, 流紋岩を貫く部分で, 流紋岩に対して著しい熱変成作用を与えることはまれである。 しかしながら花崗岩に貫かれた場合には, 花崗斑岩は著しい熱変成作用を蒙り, 再結晶しており, 優白色となる傾向がある。

花崗斑岩の鏡下での観察

斑晶 : 石英・斜長石・カリ長石・黒雲母・角閃石
石英は斑状を呈し, 普通, 長さ 2 mm 程度であるが, 4 mm 以上に達するものもある。 斜長石は灰曹長石程度で, 半自形の卓状を示す。 累帯構造を示すが, 2次的変質により繊維状の絹雲母を生じている。 カリ長石は長さ 5 mm にも達する自形卓状で, 大型の斑晶を形成する。 石英や斜長石および黒雲母の小晶をポイキリティックに包有することがある。 ぺルト石構造を示すが, 2次的変質作用が著しくカオリンを生じている。 黒雲母は板状結晶を示しており, その多くは緑泥石に変質している。 角閃石は他形で, 緑色~緑褐色である。 鏡下でみられる角閃石の多くは, 熱変成作用により緑泥石などから2次的に生じた淡青緑色を示すものである。
石基 :
完晶質で, 粒状の石英(0.03~0.08 mm)と短冊~小柱状に伸びてはいるが, やゝ丸味を帯びた形の斜長石(0.3~0.5 mm) およびその間隙を充填したような形のカリ長石からなり, 鱗片状の黒雲母などを含む。 石基の粒度は場所により変化が認められる。 とくに花崗岩に近接して現われる花崗斑岩は, 熱変成作用を蒙り石基も再結晶作用によりモザイク状を呈する。

熱変成作用を蒙った花崗斑岩

斑晶 : 石英・斜長石・カリ長石・黒雲母・角閃石(白雲母)
石英は 2~3 mm 程度の大型斑晶を形成する。 また微細な包有物を含むことがある。 斜長石は灰曹長石程度で長さ 2~3 mm の自形柱状である。 結晶の全面にわたって繊維状絹雲母を生じていることが多い。 カリ長石は長さ 5 mm 程度の, ほゞ自形卓状に近い形状を示す。 石英・斜長石・黒雲母の小晶を包有することがある。 2次的変質によりカオリンを生じている。 ペルト石構造を示すが, 微斜長石特有の格子状構造はみられない。 黒雲母は種々の厚さの小板状~鱗片状結晶を示し, その色は X = 淡黄色, Y, Z = 明かるい褐色であるが, なかには淡緑色の緑色黒雲母が含まれることがある。 黒雲母のなかには 角閃石を置き換えて生じたもの(第 10 図参照)が角閃石の外形を示して, 種々の方向に配列していることがある。 本岩中の黒雲母は熱変成作用により再結晶して生じたもので, 変成作用の程度により, その色や形態に種々の変化がみられる。 角閃石は本来緑色~緑褐色の自形柱状を示すが, 熱変成作用により緑泥石から生じたものでは緑色~淡青緑色を示し, 繊維状の集合体をつくることがある。 花崗岩に近接した地域では, 角閃石は黒雲母の集合体によって置き換えられていることがある。 白雲母は蛭川村の太田の西方に露出する花崗斑岩中にみられる。 本岩は微文象組織を呈し, 斜長石中に白雲母の小板状~繊維状結晶を多数生じている。 本岩はグライゼンなどによる気成の変成作用を蒙ったものと考えられる。
石基 :
再結晶作用が著しく, 石英・斜長石・カリ長石などからなるモザイク状組織を示す。 その粒度は 0.1 mm 程度に達するものがある。 そのほか鱗片状の黒雲母や繊維状の絹雲母が含まれる。 また微文象組織を呈するものがある。

第 10 図 花崗岩による熱変成作用を蒙った花崗斑岩中にみられる 角閃石から再結晶した黒雲母花崗岩との接触部では 角閃石は消失して黒雲母を生じている(奈良井南方)

II.6 苗木・上松花崗岩

本岩は, その北端部は上松町の北方から, ほゞ NNE - SSW の方向に不規則な形をもって連なり, 「上松」・「妻籠」・「付知」および 7万5千分の1「恵那山」地質図幅地域の北部にまでまたがって分布している。 全体としてみた場合, 中部地方の内帯に広く発達する流紋岩(NW - SE 方向)の南東端部に位置する [ 以下の [注] 参照 ]

[注]
苗木・上松花崗岩は, 長野県(木曽)の上松町から, 岐阜県(美濃)の苗木町にかけて広く発達する一連の岩体で, 従来苗木・上松花崗岩と呼ばれている。

本岩は「上松」・「妻籠」の両地質図幅地内で, 木曾駒花崗岩を貫き, その境界は常に明瞭であるが, 「妻籠」図幅地内で伊奈川花崗岩と接する時は, 伊奈川花崗岩はしばしば著しく優白色で, 本岩との識別が困難である場合が多く, 本岩の生成に伴ないその影響を広範囲にわたって蒙ったものと考えられている [ 以下の [注1] 参照 ] 。 本岩は流紋岩や花崗斑岩に対して, 相対的に高度の低い位置に露出しており, 流紋岩とは多くの場合低角度の貫入面で接しており, ルーフ・コンタクトにより広い範囲に熱変成作用を与えている。 したがってこの地域では斑状黒雲母花崗岩, およびアプライト質黒雲母花崗岩などからなる 周縁相(上部相 : 浅部相)が広く発達している。 いわゆる苗木型花崗岩と呼ばれる細粒~中粒黒雲母花崗岩は, 本図幡地内の花崗岩の大部分を占めている。 苗木周辺は古くから稀元素鉱物を胚胎するペグマタイト鉱床を産することで有名である。 苗木・上松花崗岩は本図幅地内では次の3種の岩相が識別される [ 以下の [注2] 参照 ]

1. 粗粒黒雲母花崗岩
2. 斑状黒雲母花崗岩
3. 細粒~中粒状黒雲母花崗岩
[ 4. ] 微細粒黒雲母花崗岩(アプライト質花崗岩))
[注1]
「妻籠」地質図幅で山田直利・村山正郎により報告されている。
[注2]
柴田秀賢 10) によれば以下の3種に分類されている。
粗粒黒雲母花崗岩(毛呂窪型)
斑状黒雲母花崗岩(城山型)
細粒黒雲母花崗岩(苗木型)

図版 9 A と B 苗木花崗岩にみられるみごとな柱状節理(付知川美恵橋付近)

II.6.1 粗粒黒雲母花崗岩

「上松」・「妻籠」の両図幅地内では苗木・上松花崗岩の主部を構成するものであるが, 本図幅地内では中津川市山ノ田の南東方, および付知町の東方の一部に現われる。

優白色で塊状である。 石英とアルカリ長石に富み, 石英は透明淡褐色~灰色で, 粒状ないし自形状の数 mm の斑晶状をなし, アルカリ長石は, ときに 2~3 cm の斑状の結晶をなす。

黒雲母は径 1~3 mm の独立した自形の結晶として散在することが多いが, ときにはそれらが集合してクロット状を呈する。

本岩相中には主として脈状のアプライトおよびペグマタイトが発達するが, 不規則な塊状および晶洞状のものはまれである。

粗粒状黒雲母花崗岩

主成分鉱物 : 斜長石・石英・カリ長石・黒雲母
副成分鉱物 : 褐簾石・ジルコン・燐灰石・鉄鉱

斜長石は普通, 黒帯構造を示し, An 20 % ないしそれ以上の中核部をもち, 外側はよりソーダ質の外套部がとりかこんでおり, カリ長石と接する部分ではミルメカイトを生じている。 カリ長石はほゞ自形の卓状を示し, 長さ 5 mm 程度に達する大型の斑晶を形成することがある。 結晶の外縁部は多くの場合不規則で, 多少のいりこみを生じている。 結晶の内部や外縁部では, 石英や斜長石の小晶をポイキリティックに包有することがある。 ペルト石構造が発達し, なかには微斜長石特有の格子状構造を示すものがある。 黒雲母は種々の厚さの板状結晶として産し, 長さ 2~3 mm に達する。 X = 淡黄色~淡黄褐色, Y, Z = 暗褐色~緑褐色を示すが, 結晶の外縁部でカリ長石と接する部分には, 屈折率の低い淡緑色の雲母とみみず状の石英とからなる反応縁をしばしば生じている。 また黒雲母中にはジルコンやが簾石の小晶を包有し, 著しいハローを生じている。 石英はほかの成分鉱物の間隙を充填しており, 微細な包有物に富んでいる。

II.6.2 斑状黒雲母花崗岩

本岩は「妻籠」・「上松」の両図幅地内では, 花崗岩体の周縁相として出現する。 本図幅地内では苗木南東方の城山を中心とした地域に出現するほか, 花崗岩が流紋岩と接する付近の周縁部にも現われる。 したがって本岩は苗木・上松花崗岩の浅部相~周縁相を代表する1岩相と考えられる。

本岩は, 斑晶状の石英や長石による顕著な斑状構造を示す部分や, あまり斑状構造の著しくないアプライト質の部分が不規則に生じ, 均質でない。 黒雲母は鱗片状で, 均質に点在することがなく, 小さなクロットをつくる場合が多い。

本岩は晶洞状のアプライトやペグマタイトに富んでおり, 細粒~中粒黒雲母花崗岩とは狭い範囲で漸移している。

斑状黒雲母花崗岩

主成分鉱物 : 斜長石・石英・カリ長石・黒雲母
副成分鉱物 : 褐簾石・ジルコン

斑状組織を示し, 斑晶と基質の部分とが明らかに識別される。

斜長石は半自形の卓状で, 普通, 累帯構造を示し, 中核部は An 20 % ないしそれ以上の曹灰長石であり, 外套部はよりソーダ質で新鮮である。 カリ長石は長さ 5 mm 以上に達するものがあり, 肉眼では自形の卓状を示すようにみられるが, 鏡下では結晶の外縁部は入り込みの多い不規則な形状を示し, 石英や斜長石の小晶をポイキリティックに包有する。 ペルト石構造が著しく発達するが, 微斜長石特有の格子状構造は普通認められない。 基質の一部を形成する粒状不定形のカリ長石には, 斑状のカリ長石ほど著しいぺルト石構造はみられない。 石英のうち斑晶を形成する大型のものには割れ目を多く生じており, 微細な包有物に富む。 黒雲母は褐色種で板状結晶を示し, 結晶の外縁部でカリ長石と接する場合には淡緑色の雲母を生じ, 石英とともにミルメカイト状組織を形成することがある。 たゞし粗粒状の黒雲母ほど著しくない。 ジルコンの小晶を包有し, ハローが著しい。 基質は粒状の石英・斜長石および間隙を充填したような形のカリ長石からなり, 鱗片状の黒雲母が含まれる(図版 Ⅶ 参照)。

II.6.3 細粒~中粒状黒雲母花崗岩

本図幅地内に分布する花崗岩の大半はこの種の岩相によって代表され, 苗木の周辺に広く分布し, いわゆる苗木花崗岩の主体を形成する。 本岩の特徴は, 塊状ないし晶洞状のペグマタイトが全般的に, かつ漸移的に存在することであり, 細粒ないし中粒であり, むしろ粗いアプライトといってよい岩相を示している。

ほゞ自形の石英とカリ長石とが平均 2~3 mm の等粒状組織を構成し, 斑状組織を示すことがない。 石英は特徴ある灰色を示し, 斜長石はカリ長石に較べ少量である。 黒雲母は径 1 mm 内外の鱗片状で, 通常クロットをつくることなく散点している(図版 Ⅷ 参照)。

細粒~中粒状黒雲母花崗岩

主成分鉱物 : カリ長石・石英・斜長石・黒雲母
副成分鉱物 : 燐灰石・ジルコン・鉄鉱

本岩は斜長石・石英に較べてカリ長石が著しく多量に含まれる。 石英および斜長石は 2 mm 内外でカリ長石は 3 mm 程度の大きさを示し, ほゞ等粒状組織を示すのが特徴で, 斑状組織を示すことがない。 カリ長石は半自形の卓状であるが, 結晶の外縁部は入り込みの多い形を示し, ほかの成分鉱物の間隙を充填したような形を示すことが珍しくない。 ペルト石構造が著しく発達している。 斜長石は半自形の卓状で通常は累帯構造を示し, 中核部は An 20 % ないしそれ以上で外套部は新鮮なよりソーダ質のことが多い。 石英は粒状で, 斜長石およびカリ長石とともにほゞ等粒状組織を形成する。 黒雲母は普通, 褐色種で板状を示し, クロットをつくらず散点する。 X = 淡黄色~クリーム色, Y, Z = 明かるい褐色~淡緑褐色で, 粗粒黒雲母花崗岩の場合と同じく淡緑色の反応縁を示すことが多い。 ジルコンや褐簾石の小晶を包有する部分では, 著しいハローを示している(図版 Ⅷ 参照)。

第 11 図 A : 細粒~中粒黒雲母花崗岩(苗木花崗岩), B : 細粒黒雲母花崗岩中にカリ長石のパッチを生じた部分, C : カリ長石のパッチや石英の集合した斑状を示す斑状花崗岩。 A, B, C はいずれも不規則ではあるがかなり明瞭な境で移化している(苗木の城山の西方石切場)

II.6.4 微細粒黒雲母花崗岩(アプライト質花崗岩)

本岩は細粒~中粒黒雲母花崗岩(苗木花崗岩)が, 流紋岩や花崗斑岩と接する付近に局部的に現われる岩相である。

径 1 mm 以下の石英およびアルカリ長石の等粒状組織からなり, 斑状組織を示すことはない。 黒雲母は 1 mm 以下の小鱗片状を示して散点している。 本岩はアプライトと野外で識別することが困難であり, 移化するものと考えられる。

微細粒黒雲母花崗岩(アプライト質黒雲母花崗岩)

主成分鉱物 : カリ長石・石英・斜長石・黒雲母・(白雲母)
副成分鉱物 : 燐灰石・ジルコン・鉄鉱

カリ長石は 0.5~1 mm の半自形ないし不規則な形状を示し, そのうちのあるものはほかの成分鉱物の間隙を充填したような形を示している。 一般にぺルト石構造が著しく発達している。 斜長石は 0.3 mm 程度の長さをもつ半自形の卓状で, 累帯構造は著しくない。 結晶内部に虫喰状の石英によって置き換えられた部分がある。 石英は主として他形粒状を示す。 黒雲母は普通, 褐色種で小さな板状を示す。 X = 淡黄色~クリーム色, Y, Z = 明かるい褐色を示し, ジルコンの小晶を包有する部分では著しいハローを呈する。 結晶の外縁部で淡緑色の雲母を生じることがあるが, その程度は粗粒状黒雲母ほど著しくない。 白雲母は福岡村の下野西方見佐島において, 流紋岩と接する花崗岩のアプライト質岩相中に板状結晶として産する(図版 Ⅸ 参照)。

第 12 図 苗木花崗岩と花崗斑岩の接触関係(知原橋下流約 1 km 付知川東岸の小さな沢)。 角閃石は変成作用により黒雲母の集合体になってもとの角閃石は消失している。 細粒黒雲母花崗岩とアプライト質花崗岩は漠然とした形で移化する。
Gb : 細粒黒雲母花崗岩, Ap : アプライト質花崗岩, Gp : 黒雲母花崗斑岩

II.6.5 苗木・上松花崗岩中のペグマタイト

晶洞状またはポケット状ペグマタイト

図幅地内の苗木・上松花崗岩中でも, とくに細粒~中粒の花崗岩や, 斑状花崗岩中にはペグマタイトが普遍的に発達している。 これらペグマタイトは主として晶洞ペグマタイト(druse-pegmatite), またはポケット状ペグマタイトであり, 苗木周辺の八幡・浅間山・山ノ田および福岡村植苗木・若山などにもっとも良く発達している。

晶洞ペグマタイトは一般に不規則形またはレンズ状であり, その伸長の方向は不規則である。 晶洞の大きさにしたがってその成分鉱物の大きさにも変化が認められる。 通常, 晶洞の周囲には幅約数 cm 程度のやゝ灰色を帯びた細粒の部分があり, さらにこの内側の文象組織の著しい部分を経て晶洞へと移行している。

晶洞を構成する主要な鉱物は 石英(煙水晶~黒色水晶)・ 正長石・ 曹長石・ 黒雲母・ チンワルド雲母・ 鱗雲母・ 電気石・ 螢石・ 黄玉・ 緑柱石・ 苗木石・ ジルコンなどであるが, この他に柴田秀賢によって, 灰重石・ 菱沸石・ 束沸石・ 濁沸石・ 方解石・ 玉滴石・ 鉄橄欖石・ 鉄直閃石・ サマルスク石・ フェルグソン石・ 褐簾石・ ガドリン石・ 金緑石などの諸鉱物が記載されている。

脈状ペグマタイト

この種のペグマタイトは, 主として粗粒状黒雲母花崗岩中にみいだされ, 細粒~中粒状花崗岩中にはほとんどみられない。

したがって図幅地内にはみるべきものはない。

II.7 酸性火成岩類相互の関係と岩石命名

II.7.1 酸性火成岩類相互の関係

本図幅地域内の流紋岩・ 石英斑岩(優白色で岩脈状のもの)・ 花崗斑岩・ 花崗岩などの酸性火成岩類については, すでに地質概説の項で簡単にふれたが, 各岩体相互間の接触部における観察をもとに酸性火成岩類相互の関係について, とりまとめてみると次の通りである。

流紋岩の本体は本図幅地域内での酸性火成岩類中, 最古のものである。

本岩の主塊は, 淡青緑色を呈する斑状岩で, 斑晶や, その破片および古生層の捕獲岩片に富んでおり, 基質の一部には熔結したものが認められる。 本岩は, 優白色で, やや粗粒の斑状組織の著しい石英斑岩によって貫かれる。 この石英斑岩は, 花崗斑岩の周縁相としてあらわれるものに類似しており, 一部では移化するものと考えられる。

花崗斑岩は, ボス, ストックまたは岩脈として流紋岩中に貫入しており, 優白色石英斑岩とは, ほゞ同時期のものと考えられる。

付知川の知原橋下流約 200 m の東岸で, 優白色石英斑岩と花崗斑岩との接触関係が認められる。 石英斑岩は淡灰色で, 幅約 10 数 m の岩脈状を示し, N 80°W 方向に伸びている。 その岩脈状の形態からみれば, 花崗斑岩を貫いているようにみられるが, 接触部における両者の境は複雑な入り込みを生じており直線的でない(図版 8 B 参照)。 また接触部では花崗斑岩の部分に, 黒雲母や角閃石による微弱な片状組織が認められ, 反応縁あるいは混成現象によると思われる縞状の組織が発達することがある。 また鏡下の観察によれば, 石英斑岩と花崗斑岩の境界部で, 花崗斑岩中の小板状黒雲母が境に沿って配列する傾向がある。 このような事実から, 石英斑岩は 花崗斑岩中にとり込まれた岩脈状の捕獲岩と考えるほうが好都合のように思われる。 両者はともに 苗木・上松花崗岩から由来したと思われる アプライトおよびペグマタイトの小岩脈によって貫かれている(図版 10 参照)。 しかも両者は花崗岩による著しい熱変成作用を蒙って著しい再結晶作用を受けている。 したがってこのような影響により両者の関係を明らかにすることはより困難であるが, ほとんど同じ時期のもので, 石英斑岩は花崗斑岩よりやゝ早く貫入したものと考えられる。 なお本図幅地域内では 貫入したと考えられる優白色の石英斑岩の分布がきわめて少ないので, 便宜上花崗斑岩中に包括した。

図版 10 A と B 花崗斑岩を切るアプライト脈(付知川知原橋下流 200 m 東岸)。
Ap : アプライト, Gp : 花崗斑岩

花崗岩は, 流紋岩・優白色石英斑岩・花崗斑岩のすべてを貫いており, これらに対してそれぞれ熱変成作用を与えている。

知原橋下流約 1 km の付知川東岸では花崗斑岩を貫いており, その接触部では細粒のアプライト質岩相を呈する。

II.7.2 岩石命名について

本図幅地域に広く発達する「石英斑岩」 [ 以下の [注] 参照 ] については, かつて飛騨地方とその周辺を調査した坂市太郎(1888)や, 20 万分の1地質図幅調査に従事した野田勢次郎・佐藤伝蔵などにより 「石英斑岩」の名称で呼ばれてきたが, 河合正虎(1957)は5万分の1地質図幅「荒島岳」の調査により, 福井・岐阜両県の境に近い九頭竜川支流の面谷川付近に発達する, ほゞこれと同種の岩石に対して流紋岩と呼び, その地名を冠して面谷流紋岩と命名した。 本図幅地域内の「石英斑岩」と面谷流紋岩の直接の関係は不明であるが, いずれも中部地方の内帯に発達し, 凝灰岩や凝灰角礫岩または火山角礫岩などの地層を挾んでおり, 地表に溢流した部分の多いことなどから, ほゞ同様の岩体と考えられる。

[注]
従来使用されてきた名称に対して「石英斑岩」を用いる。

本図幅地域の「石英斑岩」は, 美濃高原から, 飛騨山地に続く広大な岩体を形成するものの一部に相当する。 本図幅調査後, ひき続いて行なわれた 5万分の1地質図幅「加子母」・「下呂」・「萩原」などの調査結果から, 広大な岩体を形成する「石英斑岩」は 主として流紋岩・熔結凝灰岩・凝灰岩などからなることが明らかとなった。 このような酸性火山岩類を包括する岩石名として 流紋岩類という名称を使用することとし, 中部地方の美濃高原から飛ぞ山地に至る広大な岩体に対して 「濃飛流紋岩類」と命名することを提称する。

なお本図幅地域内の流紋岩類は, 花崗岩類による熱変成作用を蒙り, 再結晶作用が進み, 外観上, 結晶質の石英斑岩に類似した岩相を示す場合が少なくない。

II.7.3 酸性火成岩類の分析表

図幅地域内に発達する流紋岩・花崗斑岩・花崗岩の3者は, 相互に密接な関連性をもって露出しており, その地質時代も中生代末期(白堊紀)と考えられている。 したがって, ほゞ同時代の活動に属するこれらの岩類について, その化学成分がどのような関連性をもつか明らかにしたいと考えて, 数個の資料について分析を行なった(分析者 : 山田貞子)。 なお, 花崗斑岩および粗粒状黒雲母花崗岩については, 分析資料として適当なものがないので除外した。

No. T 145 T 141 T 174a T 165 T 65 T 95 T 203 T 303
岩石名 細粒黒雲母花崗岩(周縁相) 斑状黒雲母花崗岩 細粒黒雲母花崗岩 花崗岩により熱変成作用を蒙った流紋岩 普通輝石角閃石黒雲母石英安山岩 角閃石黒雲母(ガラス質)流紋岩 角閃石黒雲母流紋岩 角閃石黒雲母流紋岩
SiO2 70.12 75.04 76.99 71.10 64.33 74.35 69.08 74.22
TiO2 0.12 0.13 0.04 0.25 0.65 0.14 0.34 0.15
Al2O3 12.48 12.81 12.34 14.23 15.48 12.87 14.91 13.08
Fe2O3 0.55 0.49 0.36 1.16 1.34 0.78 1.22 0.47
FeO 1.15 1.26 0.81 1.56 4.57 1.15 2.26 1.55
MnO 0.02 0.04 0.03 0.11 0.03 0.03 0.04 0.03
MgO 0.16 0.14 0.07 0.46 1.57 0.22 0.71 0.33
CaO 0.98 1.08 0.55 2.46 3.61 1.23 3.16 1.27
Na2O 3.14 3.25 3.34 3.45 3.00 3.04 3.48 3.33
K2O 4.46 4.62 4.72 3.66 3.92 4.37 3.30 4.33
P2O5 0.06 0.05 0.01 0.08 0.18 0.05 0.10 0.06
H2O + 0.45 0.62 0.46 0.96 0.86 0.87 1.03 0.67
H2O - 0.08 0.10 0.01 0.16 0.24 0.20 0.26 0.22
Total 99.77 99.63 99.73 99.64 99.78 99.30 99.89 99.71
備考 花崗岩との接触部 CO2 アリ。 古生層中の粘板岩の破片を含む 構成物中のチャート破片を含有する
産地 恵那市毛呂窪 苗木城山 御所平 付知町北東 笠置山付近 白川町柿坂上 白川町切井 白川町黒川

第 13 図 苗木・上松花崗岩および流紋岩・花崗斑岩中の黒雲母の屈折率 (苗木・上松花崗岩および花崗斑岩の一部は「上松」図幅内の資料を使用した)

II.8 岩脈類

本図幅地域の岩脈類は, 大別して酸性および塩基性の2種に分けられる。 酸性岩脈は石英斑岩・珪長岩・石英安山岩・流紋岩などからなり, 石英斑岩は主として広く発達する流紋岩体の縁辺部に, 古生層や花崗斑岩を貫いて分布する。 また珪長岩は流紋岩や花崗岩を貫いている。 以上の岩脈のうち, 図幅地域南西縁部で古生層を貫いているものは, 流紋岩の活動の末期に流紋岩の本体から派生したものであるかも知れないが明らかでない。

石英安山岩および流紋岩はほとんど同質のもので阿寺断層谷に沿った地域に, ほゞ同時期に活動したものと考えられ, 流紋岩および花崗岩を貫いている。 本岩の活動は阿寺断層によって示されるような構造運動に関連しているものと考えられる。

塩基性岩脈は橄欖石玄武岩で, 花崗岩を貫いている。 本岩はその性質上 坂下町の上野付近に発達する玄武岩熔岩とほゞ同質のものであり, 同時期に活動したものと考えられるので, 便宜上, 玄武岩の項に一括した。

黒雲母石英斑岩

本岩は図幅地域中央部の花崗斑岩を貫く岩脈として発達する。 いずれも幅数 m の小さな岩脈で, ほゞ E - W 性方向を示している。

本岩は黒褐色の緻密な岩石で, 石英および長石類の斑晶が顕著である。

鏡下では, 斑晶は石英・カリ長石・斜長石・黒雲母などで, 石英はほゞ自形を示しているが, カリ長石や斜長石はカオリンや絹雲母などによって置き換えられている。

黒雲母は鱗片状の集合体となっており, おそらく, 花崗岩類の影響により生じた2次的のものと考えられる。 一般にはげしく変質し緑泥石様鉱物となっている。

石基は, 完晶質で石英・長石類からなり, モザイク状を示している。

本岩は, 全体的に著しい変質を蒙っている。

珪長岩

本岩は付知川西岸の福岡村北林およびその北方で, 流紋岩および花崗岩を貫く幅数 m~10 数 m の岩脈として発達する。

灰白色を呈する緻密な岩石で, 斑晶に乏しいが, まれに石英や長石類の斑晶を認めることができる。 有色鉱物として黒雲母がまれに認められる。

鏡下では斑晶は石英・カリ長石・斜長石のほか少量の黒雲母を含む。 石基は微粒状完晶質の珪長質鉱物からなる。

黒雲母石英安山岩

本岩は図幅地域北東部の阿寺断層谷に沿った地域に, 数 m~数 10 m の幅をもつ岩脈状の小貫入岩体として, 石英斑岩および花崗岩を貫いている。 本岩は阿寺断層の北側に当る宮脇付近に数ヵ所と, 阿寺断層の南側に当る小野沢の南方に1ヵ所認められる。

宮脇付近の岩脈はほゞ N 30°E 方向に伸びるが, 小野沢南方のものは明らかでない。

本岩は灰白色の細粒の岩石で, 肉眼で黒雲母の鱗片状結晶が認められる。

鏡下では斑晶は斜長石と黒雲母とからなる。 斜長石は中性長石程度で, 自形柱状を示し, 累帯構造が著しい。 一般に新鮮で透明である。 黒雲母は小板状結晶で, X = 淡黄色, Y, Z = 暗褐色で, 多少緑泥石化している部分があり, その部分には黒褐色の鉄鉱物を生じていることがある。

石基は隠微晶質~細粒状の珪長質鉱物からなる。

宮脇付近のものには, 斑晶の斜長石・黒雲母のほかに繊維状で, ときに放射状集合体を形成する沸石が含まれる。 石基は短冊状の斜長石や, 緑泥石化した鱗片状黒雲母および2次的に生じた織雄状沸石などからなり, さらに間隙を充填する珪長質鉱物がある。

黒雲母流紋岩

本岩は阿寺断層に沿った小野沢の北東方に, 花崗岩を貫く数 m の幅をもつ小岩脈として分布する。 その伸びの方向は明らかでない。 本岩の一部はちょうど阿寺断層の走る位置に露出しており, 流紋岩や花崗岩とともに断層により破砕されている。

本岩は淡青色を帯びた灰白色の緻密な岩石で, 肉眼で斜長石や黒雲母の斑晶が認められる。 鏡下では斑晶は斜長石・石英・カリ長石・黒雲母からなる。

斜長石は灰曹長石程度で, 自形柱状を呈し, 累帯構造を示している。 一般に新鮮で透明である。

石英はほゞ自形で, なかには融蝕形を示すものがある。 一般に微細な包有物に富んでいる。 カリ長石は少量含まれ自形柱状を呈し新鮮で透明である。 黒雲母は自形で小板状を示し, X = 淡黄色, Y, Z = 暗緑褐色である。

石基は短冊状斜長石や緑泥石化した小鱗片状黒雲母, および細粒状の珪長質鉱物からなる。

II.9 新第三系(瀬戸層群)

愛知県の西部や, 岐阜県東部の東濃地方一帯は低い丘陵地からなり, 基盤の露出しているところも多いが, 処々中新世の瑞浪層群が覆っており, さらにその上には分布の広い砂・礫・粘土からなる鮮新世の堆積層が発達する。 この地層は岩相, 分布などの点から, 瑞浪地域で土岐砂礫層などと呼ばれているものと一連の地層である。 これらの地層を総括して, 瀬戸層群(槇山, 1950)と呼び, 本地域のものは北東端部に相当し, 瀬戸層群全体からみれば, その周縁相に当る。 中津川市の市街地の周辺地区では瀬戸層群は, 下部礫層・夾亜炭層・上部砂礫層の3層に区分されるが, 本図幅地内では一部に夾亜炭層がみられるほかは全部が上部砂礫層であり, 苗木地方を中心として付知川の東岸地域に広く発達する。

夾亜炭層

本層は中津川市の市街地の周辺にかなり連続して分布するが, 本図幅地内では, わずかに福岡村の小池付近に小規模に分布している。 多くの場合, 直接基盤岩類を被覆する。 本層は蛙目粘土・木節粘土・亜炭層・白粘土・磨砂および砂層の互層からなり, その厚さは不明であるが, 「妻籠」図幅地内では 20 m 程度あるものと報告されている。 亜炭は炭化の進まない木質亜炭であるが, かつて稼行されたことがある。 白粘土および木節粘土は, 現在も中津川市近郊の各所で稼行されている。 本層の上部は一般に礫のまじった砂層が多く, ところにより上部砂礫層と移化することがある。 本層は水平に近い緩傾斜を示している。

本図幅地域と「妻籠」図幅地域との境に当る中津川市山ノ田川駅東方の, 陶土採掘場の亜炭層からはすでに「妻籠」地質図幅説明書に記載されたような, 植物化石が発見されているが, 本図幅地内の亜炭層からは鑑定にたえるような植物化石はみいだされない。

上部砂礫層

本層は直接基盤岩類を覆って発達する。 本図幅地内では流紋岩・花崗斑岩・花崗岩の礫を主材とし, これに玄武岩などが加わることがあるが, 礫の種類や量に変化がみられるのは, 後背地の岩石の性質を反映するものである。 比較的淘汰のよい径 10 cm 以下の円礫ないしは亜円礫を主とし, 流紋岩や花崗岩の分解した砂質物で充填される。 膠結度は良好であり, 多くの場合, 礫と基質部とは一致した割れ目を示し, 礫層は全体として灰色がかった黄褐色を呈する。 厚さは数 10 m である。

本層は福岡村の北方下野付近では花崗岩を直接被覆し, 玄武岩熔岩に覆われる。 しかし玄武岩熔岩に覆われる付近の礫層中には玄武岩の礫が, 花崗岩や流紋岩の礫にまじって入っていることから, 瀬戸層群の上部砂礫層が堆積する末期には, すでに玄武岩の一部は噴出していたものと推定される。

図版 11 流紋岩と瀬戸層群(上部砂礫層)および玄武岩の関係(小野沢南方)。 瀬戸層群の礫のなかには玄武岩の礫も含まれており, さらに玄武岩熔岩が瀬戸層群を覆っている。 概念的に示すと次のようなインターフインガーの関係になる(下図)。
Rh : 流紋岩, S : 瀬戸層群, B : 玄武岩

II.10 玄武岩類

図幅地域東部の坂下町上野付近を中心に, その主体は阿寺断層谷に沿って, ほゞ NW - SE 方向に伸びており, 比較的起伏の少ない台地を形成している。 熔岩の南西末端部は, 「妻籠」図幅地内の坂下町, 坂下の近傍にまで達している。 また本岩と同種の玄武岩が, 岩脈として北方の川上村で,苗木・上松花崗岩を貫いて発達している。

玄武岩からなる台地の北部に当る上野付近では, 高度約 450 m の面で流紋岩およびこれを覆う瀬戸層群の上部砂礫層を被覆しているが, 南東部にゆくにつれて漸次高度を減じ 400 m 以下となる。

本岩は上野の北方のもっとも厚いと考えられるところで, 100 m 程度の厚さをもつものと推定される。 一般に板状節理が顕著に発達し, 寺尾洞や上野付近では部分的に同質の火山礫凝灰岩が発達する。

田瀬坂付近に発達する瀬戸層群の上部砂礫層中には, 流紋岩や花崗岩の礫にまじって玄武岩の礫が認められることから, 玄武岩の一部は上部砂礫層の堆積の末期にすでに噴出したものと考えられる。

本岩は暗褐色~灰色を帯びた褐色を呈し, 細粒で緻密な橄欖石玄武岩である。

斑晶は橄欖石を主とし, 微斑晶として普通輝石および少量の斜長石を含む。

石基は短冊状の斜長石・ 粒状の単斜輝石・ 柱状の斜方輝石・ 少量の橄欖石および磁鉄鉱を主とし, 完晶質で, 有色鉱物や斜長石の間だを珪長質鉱物が充填している。 久野久の分類によれば Ⅲb に相当する。

田瀬坂のものは, Ⅲd に相当し斑晶は橄欖石からなり, 微斑晶として少量の斜長石・普通輝石および磁鉄鉱を含む。

石基は短冊状の斜長石・ 単斜輝石・ 斜方輝石(単斜輝石と平行連晶する)および磁鉄鉱からなり, 斜長石や有色鉱物の間だは珪長質鉱物や淡褐色のガラスが充填している。

田瀬坂付近の瀬戸層群の上部砂礫層中に含まれる玄武岩の礫は, 橄欖石またはこのほかに普通輝石・斜長石などの斑晶を含む橄欖石玄武岩であり, この地域に分布する玄武岩と類似している。

川上村で花崗岩を貫く岩脈として発達する玄武岩は, その幅約 10 数 m で, NW 方向に伸び岩脈の延長は 100 数 10 m にわたって追跡することができる。 岩脈の先端部は分岐しており, 岩脈の縁辺部では細粒, 緻密な周縁相を生じている。

岩脈のほゞ中央部は橄欖石玄武岩で, 斑晶は橄欖石からなり, 石基は短冊状の斜長石・単斜輝石・少量の橄欖石などからなり, その間隙を珪長質鉱物が充填している。 なお少量のアルカリ長石・クリストバル石がみいだされる。 久野久による火山岩分類の Ⅲb に相当する。

周縁部は普通輝石橄欖石玄武岩である。 斑晶は橄欖石・普通輝石・斜長石からなり, 捕獲結晶として少量の石英が含まれる。 石基は短冊状斜長石・単斜輝石・少量の橄欖石および磁鉄鉱などからなる。 玄武岩の岩脈に貫かれた花崗岩のうち, 接触部の花崗岩の一部は熱変成作用を蒙り, 石英は再熔融してガラス質となり, その一部はクリストバル石~鱗珪石らしき珪酸鉱物に変化し, アルカリ長石はサニジンとなり, 黒雲母は黒色のオパサイト様鉱物に変質している。

II.11 崖錐堆積物

本堆積物は後背山地から供給された岩塊・礫・砂および分解して生じた粘土からなり, 基盤岩類を直接被覆して発達する。

付知川の西岸や笠置山の東側の斜面では, 崖錐堆積物の下部層は, 灰白色~赤褐色のやゝ粘土化した基質をもち, 流紋岩・花崗斑岩・花崗岩の礫からなり礫の膠結度も良好で, 外観上瀬戸層群の上部砂礫層と類似している。 したがってこの下部層は瀬戸層群の上部砂礫層の堆積時期と, ほゞ同時代に後背山地から押し出されて堆積したものと考えられる。 上部層は下部層と同種の礫からなり, 礫は径数 cm~数 10 cm に達する巨礫を含み, 巨礫のあるものは凸出しており, 基質の膠結度は比較的弱い。 下部層および上部層は局部的に移化しており, 区分が困難なために便宜上一括した。

なお崖錐堆積物中の礫は後背山地の地質により, 場所により礫の種類や量に変化がある。 流紋岩山地の山麓部にはとくに崖錐堆積物の発達が著しく, 笠置山の北側および東側の斜面には, 本層が広く河谷を埋めて堆積し, 典型的な崖錐地形を形成している(図版 I A, B 参照)。

また図幅地域北部の東白川村神付付近では, 断層の交錯する地域に崖錐地形が発達する傾向がある。

II.12 段丘堆積物

木曾川およびその支流の付知川などの河川に沿って発達し, 付知川に沿った美濃福岡の付近では少なくとも3段の面が識別されるが, そのほかの地域ではおのおのの段が整って発達することがなく, また各段の発達も明瞭でない。 本層は基盤ならびに瀬戸層群を削って堆積したものである。 本層は流紋岩・花崗岩の円礫を主材とし, このほかには古生層や玄武岩の礫が含まれることがある。 とくに木曾川に沿った地域の段丘堆積層中には, 古生層の礫が多くなる傾向がある。

礫は径数 cm~10 数 cm の円礫~亜円礫で, 基質は砂および粘土からなり, 膠結度は場所により多少異なるがほゞ良好である。

図版 12 付知川西岸の花崗岩と花崗岩を不整合に覆う段丘礫層。 花崗岩中には流紋岩の岩塊が捕獲岩としてとりかこまれている(付知広屋林付近)。
Rh : 流紋岩, Gr : 花崗岩

図版 13 瀬戸層群を不整合に覆う段丘礫層(美濃福岡北方)。
Tg : 段丘礫層, S : 瀬戸層群(上部砂礫層)

図版 14 Tg : 礫丘礫層, S : 瀬戸層群(上部砂礫層)

II.13 冲積層

木曾川・付知川およびその支流の河川に発達する。

III. 応用地質

この地域は, 放射能鉱物やペグマタイトで著名な苗木花崗岩が広く分布しており, 苗木石・恵那石をはじめとする放射能鉱物や錫石が, 苗木花崗岩の発達する地域の漂砂鉱床中にみいだされる。 また苗木花崗岩による鉱化作用には著しいものがあり, 流紋岩・花崗斑岩と接する花崗岩の縁辺部付近から流紋岩および花崗斑岩中にかけて, タングステンをはじめ銅・鉛・亜鉛などの各種鉱床がほゞ系統的に分布している。

III.1 金属鉱床

III.1.1 タングステン鉱床

苗木型黒雲母花崗岩の北西縁に沿って, いくつかのタングステン -(錫)- 石英脈が発達し, 恵比寿・遠ガ根両鉱山のような著名鉱山がある。

恵比寿鉱山

位置および交通 : 恵比寿鉱山は岐阜県恵那郡蛭川村にあり, 有名な苗木砂鉱地帯の北西縁にあたる。 恵那市(旧大井町)北方約 10 km, 中央本線大井駅よりバスの便がある。

沿革および現況 : 当鉱山は明治時代から採掘されており, 現在はタングステンと副産物として蒼鉛を回収している。

鉱業権
権者 : 恵比寿鉱山(株), 東京都中央区新川 2-2
鉱種 : Au, Ag, Cu, Bi, Sn, Zn, W, MO, U, Th
鉱区番号 : 岐阜県採登第 131,655 号
産額
年度 重石精鉱量(t) 品位 WO3(%) 粗鉱量(t) 品位 WO3(%)
昭和 27 4,087 69.0 9,208 0.3
28 35,485 68.0 16,280 0.2
29 25,817 68.0 11,811 0.22
30 17,511 68.0 6,962 0.24
31 31,177 68.0 10,393 0.3
32 32,560 69.0 8,580 0.4

蒼鉛の産額について詳しい資料はないが, たとえば昭和 30 年 4 月~12 月に 279.5 kg(Bi : 99.95 %)産出し, 重石精鉱の約 2 % に当る。

地質 : 恵比寿鉱山は苗木型細粒黒雲母花崗岩と, 流紋岩との接触部に, 両岩にまたがって胚胎するグライゼン化を伴なうタングステン - 石英脈である。 湊山坑においては古生層が見られるが, 流紋岩に貫かれ(古生層は流紋岩の捕獲岩かも知れない), さらに花崗岩に貫かれている。 本山坑では一部に花崗斑岩が見られるが, 坑内の観察だけからは, 流紋岩と花崗斑岩との関係は不明瞭である。

鉱床 : 鉱床は著しいグライゼン化作用を伴なうタングステン石英脈である。 当鉱山では脈幅 1 cm 以上のタングステン - 石英脈は 10 数条認められるが, 重要な脈は湊山坑では3号𨫤, 本山坑では1号𨫤・回生𨫤・東天𨫤・大昭和𨫤である。

鉱脈の走向は E - W ないし N 60°W で, 傾斜は本山坑では南方, 湊山坑では北方に急斜する場合が多い。 一般に走向方向への連続性に乏しく, 本山坑1号𨫤系のように en echelon 関係で 回生𨫤・東天𨫤・大昭和1・2・3号𨫤のような鉱脈群を形成する。

各鉱脈の走向・傾斜およびその規模などは第 1 表 [ 第 2 表 ? ; 所在不明 ] に示した。

当鉱山では断層は少なく, N - S 系のものが2, 3見られるにすぎない。 いずれも鉱脈を切っているが, 断層による鉱脈の転位は最大数 m の規模である。

母岩の変質 : 母岩は黒雲母花崗岩と流紋岩で, 鉱脈付近はいずれも強烈なグライゼン化作用をうけているが, 石英脈から母岩に向かって, 肉眼的にも顕微鏡的にも次の3帯に区分できる。

白色雲母帯(白地 : 石英・白雲母・黄玉)
褐色雲母帯(黒地 : 石英・褐色雲母・白雲母・蛍石・黄玉)
緑色雲母帯(緑色雲母・白雲母・石英・蛍石・黄玉)

石英脈 : 上記変質帯の中心部に石英脈が発達し, 多数の鉱石鉱物を含有する。 現在まで知られている鉱石鉱物は, 鉄マンガン重石・ 輝水鉛鉱・ 蒼鉛鉱物(自然蒼鉛・輝蒼鉛鉱・蒼鉛華・その他)・ 錫石・ 灰重石・ モナズ石・ 砒鉄鉱・ 硫砒鉄鉱・ 黄銅鉱・ 閃亜鉛鉱・ 黄鉄鉱・ 方鉛鉱であり, 脈石鉱物に, 石英・白雲母・黄玉・蛍石が認められている。

現在, 鉄マンガン重石・錫石・蒼鉛鉱物が回収されている。

遠ガ根鉱山

位置および交通 : 遠ガ根鉱山は岐阜県恵那郡蛭川村遠ガ根にあり, 恵比寿鉱山の北西方約 2 km に位置する。 蛭川村和田よりバスの便がある。

沿革および現況 : 当鉱山は明治時代から断続的に採掘されてきたが, 昭和 32 年 6 月以降休山中である。 調査当時(昭和 31 年 10 月)は タングステン鉱と亜砒酸(鉱山内に精錬所があった)を回収していた。

鉱業権
権者 : 竹内正吉, 恵那郡蛭川村 78 ノ 3
鉱種 : Au, Ag, Cu, Bi, Sn, W, MO, As
鉱区番号 : 岐阜県採登 217
産額
年度 重石精鉱量(t) 品位 WO3(%) 粗鉱量(t) 品位 WO3(%)
昭和 27 8,996 65.0 6,356 0.2
28 10,417 65.0 6,378 0.3
29 3,190 64.3 2,673 7.1
30 3,950 65.0 3,063 0.16
31 7,120 65.0 5,275 0.2
32 500 65.0 603 1.2

たゞし昭和 32 年度は 6 月分まで, その後休山にいたった。 砒鉱の生産額は不明であるが, 調査当時は亜砒酸 15~20 t / 月前後であった。

地質 : 当鉱山は流紋岩, および花崗斑岩中に胚胎する鉄マンガン重石 - 砒鉄鉱 - 石英脈数条からなる鉱床で, 付近に花崗岩の露出は認められない。 流紋岩と花崗斑岩は漸移する場合と, 明瞭な境界を有する場合とが観察されるが, 後者の場合でも, その前後関係は不明である。

鉱床 : 鉱脈の走向は N 60°E, E - W の2系統が認められ, 一般に南方に急斜する。 もっとも連続性に富む鉱脈は本𨫤で, N 60°E の走向を示し, E - W 系はいずれも本𨫤から分岐したもので連続性に乏しく, おもな採掘箇所は本𨫤および分岐点付近であった。 これら各𨫤はいずれも脈幅 10~15 cm の鉱脈 2 本, ないし数条平行するものに対して名付けられているものである。 坑内で認められる断層は鉱脈の走向にほゞ平行するものが多い。 斜交する場合でも水平的, 垂直的な転位は小さい。

母岩の変質 : 鉱脈の両側は珪化作用と緑泥石化作用が著しく, 恵比寿・福岡両鉱山にみられるグライゼン化作用はみられない。 当鉱山では一般に珪化作用が優勢で, 黄銅鉱・閃亜鉛鉱等硫化鉱物に富む鉱脈付近で緑泥石化, あるいは絹雲母化作用が強くなる傾向がある。

鉱脈 : 当鉱山の鉱脈は本𨫤を主脈とし, E - W 系脈を分岐した形態をとり, その造鉱脈鉱石鉱物の組み合せも異なっている。

本𨫤は鉄マンガン重石・砒鉄鉱および自然蒼鉛を主要鉱石鉱物とし, 少量の硫砒鉄鉱・磁鉄鉱を伴なう。 とくに砒鉄鉱を多量に含有する特異な鉱脈である。 脈石鉱物は石英・蛍石および少量の方解石からなる。 これに対し, E - W 系鉱脈群は本𨫤との分岐点付近では, 本𨫤と同様の鉱物組み合せを示すが, 数 m の不毛部(石英と蛍石のみからなる)を経て, 硫化鉱物を主とする組み合せになる。 こゝでは黄銅鉱・ 磁硫鉄鉱・ 硫砒鉄鉱・ 閃亜鉛鉱・ 方鉛鉱・ 黄鉄鉱および黄錫鉱(?)が認められ, 高温~中温型熱水性鉱床に普通にみられる組み合せを示す。 なお, E - W 系鉱脈に属する本坑中𨫤晶洞中から 紅色柘榴石・板状燐灰石・硫砒鉄鉱の良晶を産する。

福岡鉱山

位置および交通 : 福岡鉱山は岐阜県恵那郡福岡村下野にあり, 北恵那電鉄(中津川 - 付知)美濃下野駅北方約 500 m, 河岸段丘中腹にある。 交通至便である。

沿革および現況 : 当鉱山はタングステン鉱山として古くから開発され断続的に採掘が行なわれ, 戦時中はタングステン鉱のほかに緑柱石も回収された。 調査当時(昭和 31 年 9 月)は操業中で, タングステン精鉱と蒼鉛を生産していたが, その後休山に至った。

鉱業権
権者 : 山一鉱業(株), 東京都中央区八重洲 5-5
鉱種 : Au, Ag, Cu, Bi, Sn, Zn, W, Mo, U, Th, 蛍石
鉱区番号 : 岐阜県採登 257 号 および 試登 8021 号

地質 : 鉱床付近は細粒黒雲母花崗岩からなり, 苗木周辺の花崗岩体の北縁にあたる。 鉱床北端には流紋岩がルーフ・ペンダント状に分布し, 一部はさらに第三紀層に覆われる。 黒雲母花崗岩中には小ペグマタイトが散在している。

鉱床 : 鉱脈付近の母岩は弱いダライゼン化作用を受け, 恵比寿鉱山の白雲母化帯に類似する。 石英脈はグライゼンの中心部を占め脈幅約 15 cm である。 当鉱山の鉱脈は N 70~80°E, N 60°W の2系があり, 前者が主要鉱脈で数条の平行脈を形成し, N 60°W 系はスズノヒと呼ばれ, おもなものは2条である。 鉱石鉱物は一部グライゼンにも含有されている。

母岩の変質 : 上部は恵比寿鉱山白雲母化帯と類似するが, 顕微鏡下では石英・白雲母を主とし, 黄玉・蛍石はほとんど認められない。 グライゼンの幅は最大 80 cm 前後である。 下部では, これらグライゼンは緑泥石に移化し, 硫化鉱物に富む傾向がある。

鉱石鉱物 : 石英脈・グライゼンには次の諸鉱石鉱物が含有されている。 鉄マンガン重石・蒼鉛鉱物(蒼鉛華・ケヒリン石)・輝水鉛鉱・モナズ石。 このほか, 上部石英脈晶洞から緑泥石, スズノヒから錫石が産出し, 下部の緑泥石化の強い部分からコッフィン石様鉱物が X 線的に認められた。 恵比寿・遠ガ根両鉱山と異なり, 一般に硫化鉱物・砒化鉱物に乏しい。

III.1.2 その他のタングステン鉱床

薬研山・大博士付近

戦時中稼行された鉱山がいくつかある。 これらはいずれも恵比寿鉱山に類似すると思われるが, 入坑不能のものが多い。

宏和鉱山
高根鉱山
蛭川鉱山

八伏旧坑

福岡鉱山の対岸, 付知川右岸八伏部落にある。 福岡鉱山の走向延長方向にあたるが, 詳細は不明である。

III.1.3 銅・鉛・亜鉛鉱床

タングステン -(錫)- 鉱床帯の外縁の流紋岩地域に, 中温型熱水性鉱脈鉱床がいくつか発達し, 黒川・五加両鉱山のように戦前から戦時中にかけて, 銅を目的にかなりの規模で稼行された鉱山があるが, 現在いずれも休山中である。 なお黒川鉱山は, 昭和 32 年ウランを含有することが知られ, 現在採掘中である。

黒川鉱山

位置および交通 : 岐阜県加茂郡白川町黒川下ノ平にあり, 高山線白川口と恵那郡蛭川村とを結ぶバス経由地にあたり, 交通至便である。 鉱床は県道を挾んで両側にある。

沿革および現況 : 当鉱山は江戸時代の開発と伝えられ, 断続的に採掘せられてきたが, 戦時中もっとも隆盛をきわめ, 一時坑夫は数 100 人に及んだといわれる。 戦後休山していたが, 昭和 32 年放射能異常が発見され, 昭和 33 年以降原子燃料公社により採鉱が実施されている。

鉱業権
権者 : 春日井富貴子, 名古屋市北区志賀町 5 ノ 48
鉱種 : Au, Ag, Cu, Pb, Zn, 硫化鉄
鉱区番号 : 岐阜県試登 8300 号

地質および鉱床 : 当鉱山周辺はすべて流紋岩からなる。 鉱床は黒川を挾んで両岸にみられ, いずれも N 70~80°E の走向を有する割れ目充填鉱床である。 当鉱山には本坑・小鳥屋坑・豊平坑・南坑・横平坑の各坑があるが, おもに採掘稼行されたものは本坑である。 本坑は走向 N 80°E, 傾斜 60~70°N で走向方向に約 80 m, 傾斜方向に約 150 m, 脈幅 2~5 m にわたる富鉱体があり, かなりの出鉱量を記録したが, 他に見るべきものがなく, 本坑の採掘済の後は水没してこんにちに至った。

現在みられる鉱脈は坑内で 4 条で, 他に露頭が数ヵ所に見られる。

鉱石鉱物は磁硫鉄鉱・黄銅鉱を主とし, 硫砒鉄鉱・黄鉄鉱・閃亜鉛鉱・方鉛鉱を伴なう。 脈石鉱物は緑泥石・蛍石・石英である。

III.1.4 その他の銅・鉛・亜鉛鉱床

本図幅地域内には次の諸鉱山がある。 いずれも現在休山中である。

馬吉鉱山
五加鉱山
神付鉱山

III.1.5 漂砂鉱床(錫鉱および放射性鉱物)

苗木地方は, 古くから福島県石川地方と並んで稀元素鉱物の産地として知られているが, 本地方の錫鉱および稀元素鉱物, とくに放射性鉱物についてはペグマタイトよりも砂鉱が重要であり, 中津川市苗木町および恵那郡福岡村・蛭川村にわたって広く分布している。 本地方のペグマタイトは小規模で, 一部長石や石英を目的として採掘されたものは存在するが, 錫鉱あるいは放射性鉱物鉱床として取り上げるに適当なものは知られていない。

分布と産状

苗木地方の漂砂鉱床は, その源泉を苗木型細粒黒雲母花崗岩に仰いでいるため, 苗木型花崗岩体の露出範囲に限られている。 この花崗岩は一般に晶洞ペグマタイトに富むが, とくに浅間山・後山・鳶岩巣山・若山, および薬研山で著しい。 漂砂鉱床はこれらの山地に源を発する小河川の上流の凹所, あるいは中流流域にみられる。 その産状は次の通りである。

岩屑堆積物 : 流水の淘汰作用をあまりうけず, 山地と平地との間の緩傾斜部に発達する。 粘土と砂を主とし径 1 m に及び流紋岩の巨礫(角礫)を含み, 水晶や黄玉の結晶も比較的鋭い稜を残す。 品位は比較的低い。

現世河川堆積物 : 低地の川の流域に分布する砂礫層で, かなり充分な流水の淘汰作用を受けている。 苗木地方の砂鉱床ではもっとも重要な型で, 大部分がこの型に属する。 その代表的な層序は, 最上部は黒色表土(耕作土を含む, 10~20 cm), 中部に花崗岩質砂(約 1~1.5 m, 細粒粘土混じり細砂 → 中粒花崗岩質砂 → 粗粒花崗岩砂), 最下部に砂礫層(30~50 cm)が存在し 基盤となる花崗岩または第三紀層を不整合に被覆する。 砂礫層の礫は大部分流紋岩からなり, 全体の約 75~80 % を占める。 本層の礫・石英・黄玉はかなり磨滅し, 円味を帯びたものが多く, 比重の比較的大きく, 化学的に安定で, 砕けにくい鉱物が砂礫層中に濃縮して堆積したものであろう。

川砂 : 現在の川底に沈澱されつつある川砂で, 川水の速度あるいは水量によってその厚さは異なるが, 数 cm を超えるものはない。 しかし一般にその付近の流域に分布するものよりも品位は良好である。

第三紀礫層中のレンズ状花崗岩質砂 : きわめて小規模で, 厚さ 10 cm 程度で山鉱と呼称されるが, チタン鉄鉱が多く, 他の重鉱物はきわめて低品位である。

鉱物

本地方の砂鉱中に含有される鉱物は現在までに 25 種知られているが, そのうち放射性鉱物として認められるものは モナズ石・ 恵那石(ウラノトーライト)・ 苗木石(ジルコンの変種)・ フェルグソン石・ ジルコン・ ゼノタイム・ サマルスキー石・ 褐簾石等で, このうち量的にもっとも多いものはモナズ石で, これに次いで恵那石・苗木石が産出する。 放射性鉱物のほかには錫石・チタン鉄鉱・黄玉がかなり含有されている。 錫石は大正年間に上苗木・木積沢等で砂錫として採掘されたこともある。

III.2 非金属鉱床

III.2.1 珪石

チンノ峠の南西方の苗木花崗岩中の石英脈を稼行している。 脈の方向は明らかでないが, N 30~40°E 方向の節理が発達しており, ほゞこの節理に沿って採掘している。 脈の幅は 10 数 m と考えられるが, 延長は明らかでない。

III.2.2 螢石

三界山南方の岩倉沢において(岩倉鉱山)含蛍石石英脈中の蛍石を稼行したことがあり, また芝ガ瀬付近でもかつて稼行されたが, 現在はいずれも廃業しており, 規模の大きいものはみられない。

III.2.3 石材

苗木・上松花崗岩中には, 各処に石切場があって現在稼行中である。 石材の大部分を占めるものは細粒の苗木花崗岩であって, ペグマタイトなどによる小さな晶洞のない, ほゞ等粒のものが良質とされており, 浅間山周辺, 並松および蛭川村一ノ瀬付近が主要な産地である。 また北恵那電鉄山ノ田川駅の周辺では, 粗粒の黒雲母花崗岩を切り出されているが, 細粒岩相のものに較べて産出量が少ない。

文献

地質および地形

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4) 野田勢次郎 :
苗木附近砂錫採集地調査報告, 地質学雑誌,Vol.23,No,265, 1911
5) 門倉三能 :
美濃国苗木附近長石調査報告, 地質調査所報告,No.59, 1916
6) 門倉三能 :
美濃国苗木附近の長石, 地質学雑誌,Vol.28,No.332, 1916
7)(源):
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8) 杉山精一 :
岐阜苗木附近の鉱物(其二), 広島地学同好会報,IV-3, 1933
9) 柴田秀賢 :
美濃苗木産鉄橄欖石ペグマタイト(演旨), 地質学雑誌,Vol.43,No.513, 1936
10) 杉山精一 :
岐阜県産鉱物雑記(1),(2), 広島地学同好会報,VII-4,VIII-1, 1937
11) 柴田秀賢 :
美濃国恵那郡蛭川村薬研山産鉄リシヤ雲母黄玉晶腺中の礬土質鉱物(演旨), 地質学雑誌,Vol.44,No.525, 1937
12) 柴田秀賢 :
美濃国苗木のペグマタイト分化に就いて(予報), 地質学雑誌,Vol.45,No.537, 1938
13) 大森啓一 :
苗木産水晶に就いて, 地質学雑誌,Vol.45,No.537. 1938
14) 柴田秀賢 :
美濃国恵那郡蛭川村薬研山産鉄リシヤ雲母黄玉縞状晶腺中の礬土質鉱物, 地質学雑誌,Vol.46,No.545, 1939
15) 中沢次郎 :
岐阜県恵那郡炭田落合苗木坂本地区調査報告, 炭田調査会報告(地質調査所 燃料部 資料), 1948
16) 浜地忠男・堀内恵彦 :
岐阜県苗木地方ウラン調査報告 1,苗木町ロクガホッタ地区, 地質調査所月報,Vol.7,No.6, 1956
17) 浜地忠男 :
岐阜県苗木地方ウラン調査報告 2,恵比寿鉱山, 地質調査所月報,Vol.9,No.7, 1958
18) 早瀬一一 :
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19) 佐野浚一 :
岐阜県苗木地方物理探査報告, 地質調査所月報,Vol.9,No.7, 1958

巻末図版

図版 Ⅰ
古生層の捕獲岩片(砂岩)を含む流紋岩(東白川村)。
pl : 斜長石, kf : カリ長石, Q : 石英, s.s : 砂岩(捕獲岩)
図版 Ⅱ
花崗斑岩と石英斑岩との接触部(粒度の粗い方が花崗斑岩)。 兩者はともに花崗岩による熱変成作用を蒙り再結晶している(付知川知原橋下流 200 m 東岸)。
B : 黒雲母, pl : 斜長石, kf : カリ長石, Q : 石英
図版 Ⅲ
花崗斑岩と石英斑岩と接触の部から石英斑岩の部分。 再結晶した黒雲母の集合体が撓曲したような形状を示している。
B : 黒雲母, pl : 斜長石, kf : カリ長石, Q : 石英
図版 Ⅳ
花崗岩による熱変成作用を蒙った花崗斑岩。 角閃石の外形をそのまま残して黒雲母が鱗片状集合体を形成している(奈良井南方)。
B : 黒雲母, al : 褐簾石, pl : 斜長石, Q : 石英
図版 Ⅴ
花崗岩による熱変成作用を蒙った流紋岩(細ガ谷)。 石基が再結晶してモザイク状を示す。
B : 黒雲母, pl : 斜長石, kf : カリ長石, Q : 石英
図版 Ⅵ
花崗岩と花崗斑岩との接触部。 花崗斑岩は花崗岩により貫かれており熱変成作用を蒙り再結晶している。 なおこの部分では黒雲母を多量に生じ角閃石は消失している(付知川知原橋下流 1 km 東岸)。
B : 黒雲母(集合体), pl : 斜長石, kf : カリ長石, Q : 石英
図版 Ⅶ
斑状黒雲母花崗岩(苗木・城山)。
B : 黒雲母, pl : 斜長石, kf : カリ長石, Q : 石英
図版 Ⅷ
細粒~中粒黒雲母花崗岩(苗木花崗岩)(苗木)。
B : 黒雲母, pl : 斜長石, kf : カリ長石, Q : 石英
図版 Ⅸ
微細粒黒雲母花崗岩(アプライト質花崗岩)(蛭川村田原西方)

EXPLANATORY TEXT OF THE GEOLOGICAL MAP OF JAPAN Scale 1 : 50,000

TSUKECHI

Kanazawa, No. 84

By KIYOO KAWATA (Written in 1959)


Abstract

GEOLOGY

General remark

The mapped area lies in the eastern part of Mino district in the Inner Zone of central Japan. Topographically, this area consists of middle high class mountainland, and is divided into three units by the geological character. These units are composed rhyolite, granite and Paleozoic sediments, and they show individual spectacles. Especially the characteristic view is the slope of Mt.Kasagi surrounded by the talus. The materials of the talus are supplied from the rhyolite.

This area is occupied chiefly by acidic igneous rocks, and besides, Paleozoic formation, and basalt of Pliocene age are also present. The acidic igneous rocks are composed of rhyolite, granite porphyry and granite. Especially rhyolite is predominantly developed in this area. Rhyolite was erupted over the district and subsequently granite porphyry was locally intruded in it. The Naegi - Agematsu granite was intruded into both the rhyolite and the granite porphyry, and affected distinct thermal metamorphism to them. The final stage of these igneous activities is indicated by the various dyke rocks, such as felsite and quartz porphyry. All these igneous activities are assumed to have taken place in late Mesozoic period. In Pliocene the Seto group (upper sand and gravel bed) was deposited along the older Tsukechi-gawa (river), and at the same time, basaltic lava erupted to cover the rhyolite, granite and some parts of the Seto group. The fault system of this area is predominant in NW - SE trend, which is represented by the Adera fault valley. Besides, some faults have NE - SW, N - S and E - W trends.

Geologic sequence in this area is shown schematically in Table 1.

Table 1

PALEOZOIC

Paleozoic rocks, which are the oldest in the mapped area, are narrowly distributed in the southwestern corner of this sheet-map, although in the southwestern neighbouring area, Paleozoic rocks are extensively developed. The Paleozoic rocks in this area chiefly comprise thick layers of clayslate interbedded with sandstone, chert and cherty clayslate. The strata have the general trend of NE - SW and high angle inclination, but they are rather strongly disturbed by fissuring, fracturing and faulting.

MESOZOlC

Volcanic breccia

They are intercalated in rhyolite as nearly horizontal beds having about several 10 m in thickness, and also occur as small bodies along the boundaries of Paleozoic formation and rhyolite. They comprise volcanic breccia, tuff-breccia, tuff and volcanic conglomerate of rhyolite composition, but they contain abundantly angular pebbles of chert, sandstone, clayslate derived from the Paleozoic formation.

They seem to be correlated to the Adera formation along the Aderagawa (river) in the Agematsu sheet-map area.

Rhyolite

It is assumed that at least some parts of this rock were erupted over the surface. The rock is dark grey or bluish grey in colour on the fresh surface, and shows, in general, porphyritic appearance with the abundanse of quartz, plagioclase and potash-feldspar phenocrysts. When these phenocrysts increase, the rock sometimes shows persemic feature. The rhyolite contains abundant small fragments of chert and clayslate. Original mafic phenocrysts are assumed to be hornblende, biotite and rarely augite. The groundmass containing chiefly quartz and feldspar is generally cryptocrystalline, and sometimes shows evident flow structure or microspherulitic texture. When the rhyolite suffered from thermal metamorphism by the Naegi - Agematsu granite intrusion, mafic minerals were mostly converted into the aggregates of fine-grained acicular pale bluish green hornblende and scaly greenish brown or reddish brown biotite aggregates. Toward the contact, the texture of groundmass is recrystallized to be even-grained mosaic.

Granite porphyry

It always shows close association with the rhyolite, and occurs as boss or stock in this area. The rock is characterized by highly porphyritic and persemic appearances and dark greenish holocrystalline groundmass. The groundmass contains quartz and feldspar, 0.05~0.1 mm in size. Mafic minerals such as green hornblende and biotite are abundant. As potash-feldspar becomes poorer, the rock facies changes to granodiorite porphyry. Even when the granite porphyry suffered from metamorphism by Naegi - Agematsu granite intrusion, metamorphic feature is not so distinct as rhyolite.

Naegi - Agematsu granite

Naegi - Agematsu granite is intruded into rhyolite and granite porphyry in this area and the contact plane seems to have been formed almost low angle. Because of this intrusive form, wide metamorphic aureole is observed.

1) Coarse-grained biotite granite
It occurs as the main part of Naegi - Agematsu granite in the neighbouring Tsumago and Agematsu sheet-map area. But in this area, this granite is exposed locally. The rock is leucocratic and massive. Basic inclusion and basic schlieren are rare.
2) Porphyritic biotite granite
Porphyritic biotite granite is developed near Shiro-yama in Naegi district. The rock is characterized by highly porphyritic appearance due to quartz and potash-feldspar. Generally the rock is heterogeneous and abundant in pocket-like pegmatite or druse pegmatite.
3) Fine- to medium-grained biotite granite (Naegi type granite)
Fine- to medium-grained biotite granite is so-called Naegi type granite. It occurs as the main mass of granite in this area. Generally the rock is homogeneous and equigranular in texture consisting of quartz and potash-feldspar, and abundant in pocket-like pegmatite or druse pegmatite. Very fine-grained biotite granite (aplitic granite) occurs as the marginal facies of fine- to medium-grained biotite granite in this area.

Dyke rocks

1) Quartz porphyry
It is intruded into the Paleozoic sediment or granite porphyry in this area. These dykes have about several meters in width and their general trend is E - W and NW - SE. They show dark greyish or pale greyish in colour. The phenocrysts of these rocks are not so much, and most mafic minerals are decomposed. Generally, groundmass of these rocks is in cryptocrystalline texture composed of siliceous matter.
2) Felsite
It is intruded into the rhyolite and granite having about several meters in width. It shows white grey colour and the phenocrysts are very poor. Rarely quartz and biotite phenocrysts are found in the central part of this dyke.
3) Biotite rhyolite and biotite dacite
These rocks are intruded into the rhyolite and Naegi - Agematsu granite, and expose along the Adera fault valley in the northeastern part of this area. They show pale colour due to alteration. The phenocrysts of these rocks are poor, and show commonly cryptocrystalline groundmass.

NEOGENE TERTIARY

The Neogene Tertiary in this area corresponds to the eastern marginal part of the terrigenous Seto group. The Seto group is extensively distributed in the eastern Mino district, and was formed probably in Pliocene age. In this area, the Seto group is observed along the old Tsukechi-gawa (river), and covers unconformably acid igneous complex. The Seto group in this area lacks the lower gravel bed, and is divided into two facies.

Upper sand and gravel bed (40 m ±)
chiefly gravel of rhyolite, granite, arkose sand and small amount of basaltic pebbles
Lignite-bearing bed (5 m ±)
chiefly ceramic clay and lignite

Olivine basalt

It occurs along the Adera fault near Ueno in Sakashita town. Commonly, it covers the upper sand and gravel bed of the Seto group. The eruption of this basalt lava is at the end of deposition of the Seto group in late Pliocene. Generally the lava is homogenous augite-olivine basalt, and is 5~100 m in thickness. The groundmass of this rock consists chiefly of plagioclase, monoclinic and rhombic pyroxene, olivine and magnetite, with small amount of salic mineral.

The dyke-formed basalt is intruded into the Naegi - Agematsu granite in the northeastern part of this area. It shows dark gray colour, consisting chiefly of olivine, augite, plagioclase and small amounts of alkali-feldspar and cristobalite.

PLEISTOCENE

The talus gravel consists of angular boulders of rhyolite, granite porphyry and granite with arkose sand. The older talus gravel was cut by the terrace deposit along the Tsukechi-gawa, but almost talus gravel in this area was formed in the later period than the terrace.

Terrace deposits are distributed along the Tsukechi-gawa. Near Fukuoka village, three terrace planes can be distinguished at least.

Recent

Alluvium chiefly occurs along the Kiso-gawa (river) and Tsukechi-gawa and their tributaries.

ECONOMIC GEOLOGY

In the area mapped, several important metal deposits are found. They are Ebisu mine, Fukuoka mine and Togane mine. The last one was closed at present. In the area of Naegi granite, there are found radioactive minerals in Quaternary placer deposit.

Metallic ore deposits

Ebisu mine

The ore deposit is tungsten-quartz vein accompanied with greisen. At present tungsten and bismuth are worked, and the ore minerals are wolframite, scheelite, cassiterite, native bismuth, bismuthinite, molybdenite, arsenopyrite, lollingite, chalcopyrite and pyrite.

Fukuoka mine

The ore deposit is tungsten-bismuth-quartz vein accompanied with greisen in granite. Sulphide minerals such as chalcopyrite, pyrite and molybdenite are rarely found, and beryl occurs in the upper parts of some quartz-veins.

Togane mine

The ore deposit is tungsten-lollingite-quartz vein. It seems to have been metamorphosed by silicification and chloritization. The ore mineral comprises wolframite, lollingite, native bismuth, chalcopyrite, pyrite and magnetite.

Non-metallic ore deposits

Fluorite

The fluorite deposit is found at the lwakura mine in the northeastern area, but is now stopped mining.

Silica stone

The silica stone is found in Naegi - Agematsu granite near Chinno pass. It occurs as quartz vein which has about 20 m in width.

Building stone

Building stone is quarried from the Naegi - Agematsu granite near Naegi and Hirugawa districts.


昭和 36 年 3 月  9 日 印刷
昭和 36 年 3 月 15 日 発行
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