07089_1955

5万分の1地質図幅説明書

男体山

(新潟 第 89 号)

通商産業技官 河田清雄

地質調査所

昭和 30 年


目次

I. 地形
II. 地質
II.1 概説
II.2 秩父古生層
II.3 塩基性岩~超塩基性岩
II.3.1 閃緑岩~斑粝岩(Dh)
II.3.2 橄欖岩(Pe)
II.4 花崗岩類
II.4.1 花崗閃緑岩(Gd1)
II.4.2 花崗岩(Gb1)
II.4.3 花崗岩(Gb2)
II.5 石英斑岩ないし花崗斑岩類
II.5.1 石英斑岩(Qp2)
II.5.2 石英斑岩(Qp1)
II.5.3 石英斑岩(Qp3)
II.6 石英玢岩(Qp0)
II.7 岩脈類(その1)
II.7.1 松脂岩(P)
II.7.2 変朽安山岩(Pr1)
II.8 変朽安山岩(Pr2)
II.9 流紋岩類
II.9.1 流紋岩(R1)
II.9.2 流紋岩(Rs)
II.9.3 流紋岩(R2)
II.9.4 足尾斜長流紋岩(R3)
II.9.5 流紋岩(R4)
II.9.6 流紋岩(R5)
II.9.7 流紋岩(R6)
II.10 岩脈類(その2)
II.10.1 玢岩(Po)
II.10.2 安山岩(Ap)
II.11 第四紀火山岩類
II.11.1 錫嶽熔岩(Sw)
II.11.2 四郎嶽熔岩(Sh)
II.11.3 三ヶ峯熔岩(Mt1,Mt2)
II.11.4 袈裟丸山熔岩(Ap5)
II.11.5 庚申山熔岩(Ap3)
II.11.6 皇海山熔岩(S)
II.11.7 金山熔岩(T1)
II.11.8 太郎山熔岩(T2)
II.11.9 白根火山噴出物(S1,S2)
II.11.10 男体火山噴出物(N1~N4)
II.12 段丘堆積物(ta)
II.13 男体浮石層(Np)
II.14 追具浮石層(Op)
II.15 岩屑堆積物(dd)
II.16 湿地堆積物(sd)
II.17 崖錐堆積物(tg)
II.18 冲積層(a)
III. 応用地質
III.1 概説
III.2 鉱床
III.3 温泉
文献

Abstrct

1 : 50,000 地質図幅説明書 (昭和 29 年稿)

男体山

(新潟 第 89 号)


本図幅は 1951 年 7 月から約 160 日間の野外調査を実施して完成したものである。 図幅地域北西部の片品川支流沿岸(片品村)地域一帯, および足尾町松木沢上流部の野外調査には, 大沢穠が参加して共同調査を行った。 また図幅東部の男体山周辺の火山の野外調査には, 日光火山群を研究中の東京大学理学部地質学教室山崎正男氏の協力を得, その調査資料の提供を受け, 益するところが多大であった。

I. 地形

図幅の北東部から中央部一帯にかけての地域と, 中禅寺湖の周辺とは, 日光および奥日光国立公園の一部を占め, 本邦有数の景勝の地として広く知られている。

図幅地域の大半は火山岩類によって構成されており, 著しい火山地形の特徴を示し 顕著な山稜の大半は日光火山群に属している。

日光火山群は那須火山帯の一員と考えられ, 帝釈山塊と足尾山塊との中間に噴出したものである。 同火山群中この地域に分布するものは, 東から大真名子山の一部と 太郎山・(男体山)・山王帽子山・三岳等の東西に連なる一連の山々と, ほヾこれに直交する 温泉ケ岳・金精山・白根山・錫ケ嶽等 2,000 m を超える一連の峻峯とである。 これらの山岳は, 東は隣接の日光図幅地内の鬼怒川をへだてて高原山に, 西は片品川をへだて隣接の追貝図幅地内の武尊山に相対している。

太郎山・山王帽子山・三岳等の東西に連なる山々は, いずれもほヾ同質の岩石からなるトロイデ式火山で, 太郎山を除いては頂上に明らかな火口は認められない。 太郎山がほヾ独立円錐形で急傾斜をもって聳立しているのに対して, 山王帽子山および三岳は塊状の緩傾斜の山々から形成されている。 これら諸火山はいずれもやゝ開析されてはいるが, その原形を比較的よく留めている。 またこの附近にはこれら諸火山から噴出した熔岩によって, もとの溪谷が遮断された結果, 切込・苅込および湯ノ湖等の湖沼を生じた。

温泉ケ岳からほヾ南北に走る山稜の一部を頂点として, 西方に拡がる白根山は本図幅地内の最高峯をなし, 標高 2,600 m に達する。 山頂部には爆裂火口のあとが見られ, その附近では急峻なる熔岩峯を形成し, 西方へ向うにつれて漸次なだらかな傾斜を示している。 特に塋塚山(1,884.8 m)附近から西方へ向って仁加又沢に沿って延びた山稜は, なだらかな熔岩台地を形成している。 菅沼の西方にある八丁滝は白根山熔岩の押し出しによって生じ, 菅沼を初め, 丸沼・大尻沼等の堰止湖が形成された。

図幅地域の東端に聳立する男体山は, この地域で唯一のコニーデ式火山である。 山体の東部は広く日光区幅地内に拡がっている。 山座は比軟的小さいが, 山容は日光火山群中で最も美しい富士型を示している。 頂上には噴火口のあとが深いすり鉢形をなしており, ほヾ円形を示す火口壁は爆発のため北方が欠けて, 馬蹄形となっている。 北流して御沢に注ぐ湯殿沢が火口瀬となり, 7合目以上の山頂部はきわめて急峻であるが, 山腹以下は緩傾斜となり, 俗に薙と呼ばれる放射状の崩壊谷を生じ, その先端において急傾斜の扇状地を形成している。 薙の主要なものにはそれぞれ名称がつけられ, 南東へ向うものに深沢, 南へむかって中禅寺湖に達するものに観音薙・古薙等がある。 いずれも侵蝕が著しく, 降雨の際には多量の土砂を流出する。

中禅寺湖および赤沼は, いずれも男体山熔岩の噴出により塞止められて生じた堰止湖で, 赤沼は四周の山地から流出する砂礫により早く埋められ, 戦場ケ原の一隅を占めていたのが, 現在では湿原からすでに草原に移化しつゝある。

以上の火山群に較べ, 地形上やゝ趣を異にする諸火山が, 図幅地域内の各所に分布する。

すなわち西部の三ケ峯, 南部の皇海山・庚申山等で, いずれも標高 2,000 m に達する。 これら諸火山は古期岩類からなる基盤の上に, 広範囲に熔岩を流出し, 皇海山を除いては比較的緩傾斜の起伏に富んだ地形を示し, 著しく開析されている。

皇海山は図幅地域南部の最高峯で, 急峻な山塊を形成し, 深い溪谷に蝕刻されて壯年期の地形を呈している。

地域北部の温泉ケ岳から中央部を南北に走る主要な山稜を挾んで, その東西に広く拡がる地域には, 上記の第四紀火山の基盤をなす岩類が分布し, 侵蝕が著しく, かなり急峻な晩壮年期地形を示している。 これらの山岳に刻まれた溪谷は, 山頂部附近の露岩の崩壊による堆積物で埋まり, 降雨の際には多量の土石流を流出し, 中禅寺湖西端はこの種土石流に埋められて, 千手ヶ原の低湿地帯を生じている。

図幅地域の南東にあたる渡良瀬川の源流地帯は, 花崗岩類や古生層等からなり, 侵蝕・削剝が著しいが, 特に松木沢を中心としたその周辺部は, 足尾銅山の煙害のため樹木が枯死し, 露岩が聳立して, 著しい悪地形を呈している。 したがって松木・久蔵・仁田元等の各河川は, 大雨の際土石を流出し, 下流に被害を及ぼすため, 目下3河川の合流点に堰堤が建設されつゝある。

II. 地質

II.1 概説

本地域には, 火成岩類の基盤である古生層の分布はきわめて小範囲に限られており, 図幅地域の大部分は火成岩類によって構成され, 特に火山岩類が広く分布している。

古生層は本図幅南隣の足尾図幅地内に広範囲に発達する秩父古生層の延長で, NE - SW の方向性を示している。

図幅地域に現われる火成岩類は, 閃緑岩~斑粝岩・橄欖岩・花崗岩~花崗閃緑岩・ 花崗斑岩・石英斑岩・石英玢岩・流紋岩および安山岩であって, ほヾこの順序で貫入または噴出したものと推定される。 花崗閃緑岩および石英斑岩のあるものは古生層を貫ぬき, これには接触変成作用を及ぼしている。 また石英斑岩のあるものは斑粝岩~閃緑岩を貫ぬいて, 接触部で変質を与えている。 以上の深成岩および半深成岩類の貫入の後に, 断層運動が行われ, さらに地盤の隆起・侵蝕が行われた後, 新第三紀から現世に亘って激しい火山活動が行われ, 各種の流紋岩類, その上に火山原形の失われている旧期安山岩質噴出物, やゝ原形を留めている太郎火山噴出物が累積し, さらに有史以後にも活動している男体山および白根山が形成された。 これらのほか, 安山岩類・玢岩類およびガラス質の岩脈が現われており, ガラス質岩石および変朽安山岩は, 主として古生層と花崗閃緑岩中にみいだされ, 安山岩および玢岩は, 主として流紋岩を貫ぬいている。

また火山に囲まれた低地には, 火山砕屑物や土砂が堆積している。

II.2 秩父古生層

本層は図幅地域南東端に近い渡良瀬川の源流附近一帯に小規模に分布する。 本層は南隣の足尾図幅地内に広範囲に発達する秩父古生層の延長であって, その構造および岩相も全く同じ傾向を示している。

本層は砂岩・粘板岩およびチャートからなる。 地層は一般に NE - SW の走向を示し, 70~80°内外の急傾斜で褶曲をくり返している。 また小規模な断層も各所にみられ, それらは N 30°E~N-S 性の方向を示している。 粘板岩は局部的に著しく千枚岩質となり, また仁田元・松木の両谷では, 一部に菫青石黒雲母ホルンフェルスが認められる。

また図幅北西部の香沢と大滝川の合流点附近では, 古生層と推定されるが, 時代未詳の砂岩および粘板岩からなる層理を示す水成岩が, 石英斑岩(Qp3)中に捕獲されている。

本図幅地域の古生層からは化石は発見されない。

粘板岩 : 本岩は黒色を呈し非常に緻密なもの, やゝ砂質で砂岩に近いもの, 最も緻密で珪質を帯びチャートに移化するもの, の3種に分けることができる。 これら粘板岩は一般に剝理性が著しく, 局部的に千枚岩質となり, 層理面と剝理面は概して一致している。 図幅北西部の石英斑岩(Qp3)中に捕獲された粘板岩は, 黒色, 緻密であって, 層理を示す。

砂岩 : 本岩は黒色で堅硬なものと, やゝ灰黒色を呈し粗鬆なものとが認められる。 前者は主として硬砂岩に属し, 粘板岩中長径数 m 内外のレンズ状に挾まれる。 後者は主として粘板岩と互層して分布するが, 粘板岩に較べて劣勢である。 これら砂岩中には不規則な節理がしばしばみられる。

チャート : 本岩は灰白色ないし灰黒色を呈し, 局部的に淡赤褐色を呈することがある。 堅硬, 緻密で, しばしば粘板岩の薄層を挾有するほか, 灰黒色の緻密な珪質粘板岩を伴なっている。 チャートには比較的塊状のものと, 1単位の厚さ 2 cm 内外で薄い板状を示すものとがあり, 後者には小規模ではあるが著しい褶曲が認められる。

石灰岩 : 本岩は足尾町の松木附近において花崗閃緑岩中に捕穫岩として分布するが, 図幅地域の南西端赤城根村の源公平東方約 1 km においても, 流紋岩中に捕獲岩塊として認められる。

松木沢においては, 幅約数 m 内外の不規則な塊状をして花崗閃緑岩に捕獲され, 花崗閃緑岩および半花崗岩質岩脈により貫ぬかれ, 接触変成作用により珪灰石に変質しており, 局部的に柘榴石等のスカルン鉱物を生じている。

源公平東方に分布するものは, 幅約数 10 cm 内外の脈状またはレンズとして露出し, 延長数 m 以内の小規模なもので, 2, 3カ所に認められる。 一般に灰色を呈し, やゝ結晶質である。

これら石灰岩はいずれも熱変質を蒙り, 化石がみられないため, その時代を決定することは困難であるが, 便宜上古生層として取扱った。

II.3 塩基性岩~超塩基性岩

図幅地域の北西端に分布する塩基性岩~超塩基性岩は, 斑粝岩および橄欖岩等からなり, 岩体の延長部は北隣の燧嶽図幅地内の戸倉附近から, 片品川沿いに北方に発達している。

本図幅地域のみでは, これら岩類の時代を明らかにすることはできないが, 戸倉の南方数 100 m の片品川の東岸において, 本岩は時代未詳(古生層~中生層と思われる)の粘板岩を貰ぬいて, これに軽度の接触変成作用を与えている。 また南西隣の沼田図幅地内の岩室附近では, 斑粝岩および蛇紋岩等からなる塩基性岩~超塩基性岩が, 古生層および岩室累層(下部ジュラ系)の堆積後に迸入したことが, 木村達明の研究 1) から知られている。

II.3.1 閃緑岩~斑粝岩(Dh)

本岩は図幅地域の北西端において, ほヾ南北方向に伸びた細長い岩体として発達する。 岩体の北の縁辺部は北隣の燧嶽図幅地内に拡がっている。

本岩は片品村の上小川の北東において石英斑岩(Qp3)に貫ぬかれ, 岩体の東縁は流紋岩類によって覆われている。

一般に青緑色を呈する中粒程度の岩石であるが, その粒度は局部的に変化することがあり, また有色鉱物の量にも多少の変化が認められる。 岩体の大部分は角閃石斑粝岩からなり, 亜灰長石・角閃石および透輝石等を主成分鉱物として含んでいる。 また岩体の一部では閃緑岩質岩相を示し, これら両者は野外において移化している。 また本岩は風化作用および圧砕作用等により, 局部的に蛇紋岩様のものに2次的に変化している。

斑粝岩中には一般に片状構造および片麻状構造が認められ, 特に上小川の附近では NW - SE の方向性を示し, さらに北方の車沢では局部的に E - W 性となり, 一般には N 60~70°E の方向性を示している。

上小川附近の本岩を鏡下で見ると, 斜長石・角閃石を主成分鉱物とし, 少量の燐灰石や磁鉄鉱を含んでいる。

斜長石は亜灰長石程度で卓状を示し, 軽度の累帯構造を示すものがある。 一般に微細な絹雲母を生じたり, また緑簾石によって置き換えられたりしている。

角閃石は緑色の柱状を示し, 微細な鉄鉱物等を包有している。 燐灰石や磁鉄鉱等は不規則な粒状結晶として含まれる。 一般に緑泥石化作用を著しく蒙っている。

車沢附近のものを鏡下でみると, 斜長石・透輝石・角閃石を主成分鉱物とし, そのほか少量の燐灰石を含んでいる。

斜長石は亜灰長石程度で, 卓状ないし不規則形を示し, 概して汚濁している。

透輝石は無色に近く, 僅かに淡褐色を帯びる程度で, 短柱状ないし不規則な粒状を示す。 その一部は角閃石に置き換えられている。 角閃石は淡褐色を呈し, 柱状を示す。 また無色の針状を呈する角閃石も少量含まれる。 そのほかに斑粝岩中には緑色角閃石を含むものや, 斜長石のソーシュライト化したものが認められ, 緑泥石化の著しいものがある。

閃緑岩質岩石を鏡下で検すると, 斜長石および角閃石を主成分鉱物とし, 少量の燐灰石を含む。

斜長石は曹灰長石程度で, 卓状ないし不規則形を示し, 一般にソーシュライト化している。 角閃石は緑色を呈し柱状を示す。 その一部は緑泥石に変質している。

II.3.2 橄欖岩(Pe)

本岩は図幅地域の北西端に分布する斑粝岩体中に, 南北に細長く伸びたレンズ状の岩体として露出する。 これら橄欖岩は斑粝岩を貫ぬいて迸入したものである。

一般に淡黄色を帯びて蠟感を有する柔軟な部分と, 黒色で非常に堅硬, 緻密な部分とが錯綜しており, ところにより微弱な片理を示すことがある。 基地はしばしば特有の紋様を呈する。

肉眼で輝石類の明瞭に認められる輝石橄欖岩と, 蛇紋岩化の程度により岩相変化があるが, 蛇紋石の網状細脈を生じたヅン橄欖岩とが, 野外において認められる。

鏡下では橄欖岩のほかに透角閃石を含み, そのほか少量の尖晶石や滑石を含む。 また単斜輝石を有するものがあり, 単斜輝石の多くは変質して角閃石を生じている。

橄欖岩は一般に蛇紋石化作用を蒙り, 不規則な網状の蛇紋石を生じている。 透角閃石は無色で針状または小柱状を呈している。 尖晶石は稀に少量含まれ, 緑色を帯びた褐色を呈し, 黒色不透明の鉄鉱物に縁取られている。

II.4 花崗岩類

本図幅地域には岩相・産状を異にする3種の花崗岩ないし花崗閃緑岩が分布するが, これら岩体は断層で接するか, あるいはその他の火成岩体によりへだてられており, それらの火成活動の相互の関連性, あるいは迸入時期の順序を明らかにすることは困難である。

花崗閃緑岩(Gd1)は古生層を貫ぬき, 岩体の縁辺部には細粒のモンゾニ岩質花崗閃緑岩が分布し, さらにモンゾニ岩質花崗閃緑岩から花崗閃緑岩または閃緑岩に移化する。 一般に黒雲母・角閃石等の有色鉱物に富み, 花崗岩類中で最も塩基性の岩相を呈する。

花崗岩(Gb1)は一般に粗粒で斑状構造が著しく, 半花崗岩質岩石を多量に伴なっている。

また花崗岩(Gb2)は細粒の石英閃緑岩質岩石を伴ない, 岩体の一部において花崗斑岩質岩相を示す。

II.4.1 花崗閃緑岩(Gd1)

本岩は足尾町の北部松木附近から北西に延びて, 大平山附近の山地を構成し, さらに西方へ延びて栃木・群馬両県を画する山稜に達している。 本岩は松木附近において秩父古生層を貫ぬき, これに接触変成作用を与え, 本岩より後に貫入した石英斑岩(Qp1)とは一部において断層で接している。 岩体の南北両側は石英斑岩(Qp1, Qp2)にそれぞれ貫ぬかれているが, 接触部での変成作用は認められない。 本岩の主体をなすものは花崗閃緑岩であるが, 岩相の変化に富み, モンゾニ岩質花崗閃緑岩や閃緑岩等の部分がある。 モンゾニ岩質花崗閃緑岩は古生層との接触部に近いところに認められ, 閃緑岩は大平山の山頂部附近に局部的に分布する。

モンゾニ岩質花崗閃緑岩(細粒状岩石) : 本岩は松木附近にきわめて小範囲に分布する。 古生層との接触部における本岩は, 暗灰色細粒のやゝホルンフェルス様の岩石で, 局部的に網状のアプライトの細脈によって貫ぬかれている。

鏡下では斜長石・加里長石・透輝石・紫蘇輝石・黒雲母および角閃石からなり, きわめて少量の石英を含んでいる。

斜長石は曹灰長石程度で, 自形, 柱状のものが多いが, なかには粒状で間隙を充塡しているような形状のものがある。 一般に微細な包有物によりやゝ汚染されているが, 自形, 柱状のもののなかには累帯構造を示すものがある。 加里長石はそのほとんどが微斜長石であって, そのほか少量の正長石も含まれる。 微斜長石は主としてモザイク状またはこれよりやゝ大きな不規則形で, 間隙を充塡したような形状を示し, 特有の格子状構造が認められる。 加里長石の量は斜長石に較べて僅少である。

透輝石は短柱状を示し, 黒雲母や磁鉄鉱の小粒状結晶を包有している。 また結晶の外縁はしばしば淡緑色の角閃石によりふち取られている。 紫蘇輝石は短柱状または不規則な他形で, 少量含まれる程度である。

黒雲母は赤味を帯びた褐色で, 小さな板状または鱗片状で基地中に散点している。 石英は少量で他の構成鉱物の間隙を充塡している。

モンゾニ岩質花崗閃緑岩(細粒ないし中粒状岩石) : 本岩は前記の細粒のモンゾニ岩質花崗閃緑岩に続いて, 上流部へむかって約 300 m の間に露出するが, 有色鉱物の量を減じ, かなり急激に花崗閃緑岩に移化している。

鏡下では 斜長石・加里長石・石英・透輝石・紫蘇輝石・黒雲母および角閃石を主成分鉱物とし, ほかに少量の燐灰石を含んでいる。 前述の細粒状岩石に較べて, 花崗岩質組織が著しい。

斜長石は中性長石ないし曹灰長石程度で, 自形, 柱状ないし卓状を示し, 概して清澄である。 加里長石は間隙充塡の形状を示し, 斜長石や輝石類の小粒を包有することがある。

石英も間隙を充塡した形状を示し, 一般に清澄であるが, 微細な包有物を含み, やや汚濁したものも認められる。

透輝石は紫蘇輝石に較べて多量に含まれるが, これら輝石類はいずれも自形に近い短柱状である。 しばしば淡緑色の角閃石のリムを生じていることがある。 角閃石は緑色で自形, 柱状を呈する。 黒雲母は赤味を帯びた褐色で, 板状ないし鱗片状を呈する。

花崗閃緑岩 : 本岩は岩体の主部をなして広く分布し, 一般に灰色ないしやゝ黒味を帯びた灰色を呈し, 中粒の岩石である。

鏡下では斜長石・加里長石・石英・角閃石および黒雲母等からなる。

斜長石は灰曹長石ないし中性長石程度で, 卓状を示し, 一般に変質を蒙り, 絹雲母の微細な結晶を生じて汚染されている。 加里長石は間隙を充塡した形状を示し, 黒雲母や斜長石の小粒結晶を包有している。 また一部にカオリンを生じている。 加里長石と斜長石との接触部附近には, 小規模なミルメカイトがみられる。

石英も他形で間隙を充塡しており, 微細な塵埃状の包有物を含んでいる。

角閃石は緑色で自形, 柱状である。 黒雲母は褐色で板状を呈する。 本岩に較べて大平山附近の閃緑岩には, 石英および加里長石がみられない。

II.4.2 花崗岩(Gb1)

本岩は中禅寺湖の北西岸にあたる高山附近一帯を構成し, 岩体の南の縁辺部は千手ケ原の南東にあたる中禅寺湖畔に分布する。 岩体の東縁は男体山の熔岩によって被覆されている。

中禅寺湖畔の白岩の南において, 本岩は石英斑岩と接して露出するが, 接触部附近における本岩は, やゝ斑状組識の著しい花崗斑岩質岩相を示すようになり, 花崗岩と石英斑岩との本来の関係は, この地域内では明らかにすることができない。

本岩は優白質の粗粒の岩石で, 斑状組織は比較的顕著で, 局部的に加里長石は淡紅色を呈することがある。

本岩体中にはしばしば不規則な岩塊状をなして, 多量の半花崗岩(ap)がみられる。 半花崗岩は灰白色, 細粒の珪長質基地からなり, 鱗片状の黒雲母を含む。

花崗岩を鏡下でみると, 斜長石・加里長石・石英および黒雲母からなり, 副成分鉱物として少量の燐灰石や磁鉄鉱を含む。

斜長石は灰曹長石程度で, 卓状ないし柱状を示し, 累帯構造が顯著である。 概して清澄であるが, 一部では鱗片状絹雲母の小晶が生じている。 加里長石は不規則な間隙充塡の形状を示し, 葉片状曹長石を含むペルト石構造の認められるものがある。 また一部にはカオリンを生じている。

石英は間隙充塡の不規則形を示し, 概して清透である。

黒雲母は板状を示し, その多くは緑泥石に変質している。

II.4.3 花崗岩(Gb2)

本岩は平滝川の上流および東村奈良の北方に分布し, 流紋岩および安山岩類によって覆われている。

本岩の主体は優白質中粒の花崗岩であるが, ところにより花崗斑岩質の部分や細粒の石英閃緑岩質の部分があって, それらは花崗岩に移化している。 このほかアプライトの細脈が僅かに認められる。

花崗岩はかなり優白質で,中粒~粗粒であり, 有色鉱物として小さな板状の黒雲母を含み, これはしばしば風化作用により酸化して赤褐色に変色している。

細粒閃緑岩質岩石(fd) : 本岩は主として岩体の南西縁辺部にみられる灰黒色, 細粒の岩石で, 花崗岩体の近くでは局部的に斑伏斜長石や針状の角閃石を生じている部分がある。 本岩は火成源の塩基性岩石が, 花崗岩の変成作用を蒙って生じた変輝緑岩ないし細粒閃緑岩質岩石である。 本岩中には多量の角閃石を含むが, 花崗岩に接近するにつれて角閃石の量を減じ, 逆に黒雲母が増加し花崗岩質岩石に移化する。 鏡下で検すると斜長石・加里長石・角閃石を主成分鉱物とし, ほかに少量の黒雲母や石英を含む。

斜長石は柱状ないし卓状を示し, 中性長石程度である。 卓状を示すもののなかには, 中核部は鱗片状の絹雲母を生じ, 汚濁しているが, 外廓部は比較的酸性の新鮮なリムをもつものがある。 加里長石は斜長石に較べて少量で, 不規則な形状を示し, その多くは汚染されている。 また一部には微細なペルト石構造を示すものがある。

角閃石は緑色の柱状で多量に合まれる。 中核部が褐色で, 外廓部に緑色を呈するものが含まれる。

黒雲母は小さな板状で, その多くは緑泥石に変質している。

本岩は部分的にオフィテック組織を示し, 輝緑岩質組織を呈する。

花崗岩 : 本岩は中粒, 優白質であるが, 黒雲母の酸化のため, しばしば全体が赤褐色に汚染されている。 鏡下では石英・加里長石・斜長石および黒雲母等を主成分鉱物とし, そのほか少量の燐灰石や磁鉄鉱を含んでいる。

石英は概して清澄であるが, なかには微細な包有物を含むものがある。

加里長石は典型的なペルト石構造を示し, なかには微細な微斜長石様の組織を示すものがある。 いずれも間隙充塡の形状を示し, その一部にはカオリンが生じている。 ペルト長石は特に大きな結晶として広い部分を占めている。 斜長石は灰曹長石程度で, 柱状および卓状を示し, なかには累帯構造を示すものがある。 また一部に小鱗片状の絹雲母を生じている。

黒雲母は褐色で, 板状ないし鱗片状, 一部は緑泥石化している。 また燐灰石の小粒を包有している。

II.5 石英斑岩ないし花崗斑岩類

本図幅地域に分布する石英斑岩~花崗斑岩類は, 産状ならびに岩質により3種に大別することができる。 すなわち, 図幅地域南東部の中禅寺湖畔以南に広く現われる石英斑岩(Qp2), 足尾町松木沢上流に分布する石英斑岩(Qp1) および図幅地域北西部の大滝川沿岸に分布する石英斑岩(Qp3)である。

石英斑岩(Qp2)は岩相の変化に富み, その大部分は石英斑岩であるが, 花崗斑岩および一部に流紋岩質の噴出岩相を示すものが認められ, これら各種の岩石は野外において明瞭に移化するものと, その関係を明らかにすることのできないものとがあり, 複雑な産状を示している。 したがってこの岩体は花崗斑岩から流紋岩質岩石にいたるまでの, 各種岩相を含む一大酸性岩体として注目される。

石英斑岩(Qp1)もやゝ岩相の変化に富む石英斑岩を主体とし, 局部的に僅かに流紋岩質岩石が認められ, 全般的に石英斑岩(Qp2)に類似する。

石英斑岩(Qp3)は上述の2つの岩体に較べてその分布が狭く, 岩体の一部は花崗斑岩に移化しており, 局部的に細粒の岩石が認められる。

これら3種の岩体は近接した地域に分布するが, ほかの火成岩類により相互にへだてられており, 明瞭な関係を野外で認めることができない。 しかし花崗岩(Gb1)と石英斑岩(Qp2)とは, 中禅寺湖の南西岸において相接して露出するが, 白岩の南方において, 花崗岩(Gb1)は石英斑岩(Qp2)との接触部の近くで, 斑状構造の著しい花崗斑岩様の岩石が生じており, 野外においてその関係を明らかにすることができない。

石英斑岩類は古生層を貫ぬき, 局部的に接触部に軽度の変質を与えている。

II.5.1 石英斑岩(Qp2)

本岩は図幅地域の南東部に広く分布し, 日光・鹿沼・足尾の隣接諸図幅地内に, この延長部と思われる同種の岩石が認められる。

石英斑岩は, 古生層を貫ぬき, 一部では断層で接している。 また花崗閃緑岩(Gd1)をも貫ぬいているが, これに対する変質作用は認められない。 本図幅地内において岩体の大部分を構成し, 灰黒色ないし淡青緑色の堅硬, 緻密な珪長質石基をもち, 斑状で, 石英・長石類および黒雲母のほか, まれに角閃石を含むことがある。 斑晶として石英はきわめて顕著であるが, 一般に小粒状を呈する。

この種類の岩石のうち, 狸窪から阿世潟にかけての中禅寺湖畔, ならびに社山の附近に分布するものは細粒の斑状岩で, 主塊に較べて著しく斑晶に富み, 石英のほかに斜長石の小斑晶を多量に含み, 黒雲母および角閃石にも富む。 本岩の分布はきわめて小規模であるが, 岩体中の随処に現われる。

花崗斑岩質岩石は局部的に分布し, 灰白色または淡青緑色の珪長質石基ないし花崗岩様基地をもつ斑状の岩石で, 一般に斑晶は顕著である。 石英・長石類・黒雲母および角閃石等からなり, 石英の斑晶は径 3 mm に達するものがあり, しばしば集合斑晶を形成することがある。 加里長石・斜長石はしばしば長径 2 cm にも達する斑状結晶となり, 著しい斑状構造を呈する。 花崗斑岩質岩石中にも, その斑晶の量においてかなりの差があり, また斑状構造の顕著なものと, 比較的弱いものとがある。

流紋岩質岩石は阿世潟峠および見晴茶屋附近に小範囲に分布する。 阿世潟峠のものは灰黒色ないし淡褐色を呈するガラス質の緻密な石基からなり, 石英・斜長石および黒雲母を含む。 本岩は風化作用による2次的変質作用により緑泥石を生じ, 淡緑色を呈することがある。 見晴茶屋附近においては, 風化作用による変質が特に著しく, 灰白色ないし白色の脆弱な岩質を呈する。 斑晶は石英以外にほとんど認められない。

本岩体の内部において岩相を異にするこれら各種の岩類 (花崗斑岩・石英斑岩・流紋岩)の相互関係を, 野外において明らかにすることはきわめて困難である。 花崗斑岩(Gp1)は岩体間の各処に局部的に現われるが, 富士見茶屋・金山茶屋等の附近では漸次移化するものではなく, 明瞭に急激な移り変わりを示している。 また西ノ湖の西方においては, 石英斑岩は局部的に淡青緑色の基地をもち, 長径 1.5 cm に達するパーサイトの斑晶を含む花崗斑岩に移化している。 流紋岩質岩石は地形的高所を占めて分布し, 阿世潟峠においては, 見掛上明らかに石英斑岩の上にのっており, 岩体形成の末期に噴出したものと考えられる。

石英斑岩 : 鏡下では斑晶は斜長石・石英・加里長石および黒雲母等からなり, まれに少量の角閃石・燐灰石および褐簾石を含むことがある。

斜長石は灰曹長石程度で, 卓状を呈し軽度の累帯構造を示す。 絹雲母の微晶を生じ, やゝ暗色に汚染されていることが多い。 加里長石は斜長石および石英に較べてやゝ少量である。 一般に卓状を示すが, カオリンを生じ淡褐色に汚染されていることが多い。

石英は自形に近いもの, または破片状を示すもの等のほかに融蝕形のものがあり, 概して清透である。

黒雲母は板状または鱗片状として含まれ, 一般に緑泥石化が著しい。 角閃石の含まれるのは局部的である。 緑色を呈し短柱状を示すもののほか, 小さな破片状のものも認められる。

石基は非常に微細な石英および長石類の集合体からなり, 多くは隠微晶質である。

花崗斑岩 : 鏡下では斜長石・加里長石・石英・黒雲母等からなり, 角閃石を含むことがある。

斜長石は灰曹長石程度で, 卓状を呈し軽度の累帯構造を示す。 概して2次的変質を蒙り, 鱗片状絹雲母の微晶を生じ, 汚染されていることが多い。

加里長石は斜長石に較べて少量である。 概して卓状を示し, カオリン等を生じ汚染されている。

石英は自形に近い形状を示すものがあるが, 多くは円味を帯びた形状である。 一般に清透であるが, 微細な包有物に富むものがある。

黒雲母は小さな板状または鱗片状を呈し, 多量に含まれる。 その多くは緑泥石に変質している。 角閃石は緑色のものと淡褐色のものとがあり, 局部的に含まれる。 その多くは柱状を示すが, 小さな破片状のものも認められる。

石基は細粒の石英・加里長石および斜長石等の集合体からなり, 微花崗岩質組織を呈する。

流紋岩質岩石 : 鏡下では斑晶は斜長石・石英および黒雲母等からなる。 見晴茶屋附近のものにおいては変質が著しく, 有色鉱物はほとんど認められない。

斜長石は灰曹長石程度で, 卓状を呈し, 軽度の累帯構造を示す。 変質を蒙って絹雲母や炭酸塩鉱物を生じていることがある。

石英はやゝ円味を帯びた形状を示すものおよび融蝕形のものがあり, 概して清透である。

黒雲母は板状を呈し, そのほとんどが緑泥石に変質している。

石基は淡褐色のガラスからなり, 流理構造が顕著である。

II.5.2 石英斑岩(Qp1)

本岩は図幅地域南部の松木沢を中心に, その南北両側の山地一帯に広く分布し, またその西方栗原川上流部に局部的に露出する。 古生層および花崗閃緑岩を貫ぬいており, 松木沢の中流部では花崗閃緑岩と断層で接し, この部分では小規模な破砕粘土帯を形成している。

本岩中にはやゝ岩相を異にするものが認められるが, 一般に暗灰色または淡青緑色で, 風化作用等により著しく灰白色となることがある。

斑晶は石英・斜長石を主とし, そのほか黒雲母を含む。 また局部的に角閃石を含むことがある。

石基は概して珪長質ないしガラス質である。

松木沢の中流部では, 風化作用による2次的変質を蒙って灰白色となり, 黒雲母および角閃石等が分解して汚染されている。 仁田元沢の一部では, 転石中に多量のガラスを含むガラス質流紋岩が認められ, 本岩中にはしばしば黒色のガラスが細長く蚯蚓状に含まれ, 流理構造が著しい。

松木沢中流部のもの : 鏡下では斑晶は石英・斜長石・加里長石からなる。

石英は自形に近い形状を示すものが多いが, なかには不規則な破片状を呈するものが認められる。 微細な包有物を含むものが多く, なかには石基の弯入が認められるものがある。

斜長石には卓状を示すものは少なく, 多くは破片状で, 一般に著しく変質し, 絹雲母や炭酸塩鉱物を生じている。

加里長石は卓状またはそれに近い形状をもち, 暗色に汚染し, カオリンを生じている。

有色鉱物は変質が著しいので, その原形を認めない。

石基は珪長質の隠微晶からなるものと, やゝこれより結晶度の高い細粒の石英・長石からなるものとがあり, 一般に暗色に汚染されていることが多い。

三沢のもの : 鏡下では斑晶は石英・斜長石・加里長石・黒雲母からなり, まれに少量の燐灰石を含む。

石英はやゝ円味を帯びた不規則な形状を示し, 微細な包有物を含む。

斜長石は変質が著しいので, その本来の性質は決め難い。 一般に柱状または破片状を示し, 炭酸塩鉱物を生じている。

加里長石は卓状またはそれに近い形状を示し, やゝ暗色に汚染され, カオリンを生じている。

黒雲母は板状ないし鱗片状で, ほとんど緑泥石に変質している。

このほか少量の緑簾石の小粒結晶を認める。

石基は細粒の石英・長石からなり, 局部的にやゝ粗粒のモザイク状を示すことがある。

仁田元沢のもの : 鏡下では斑晶は石英・斜長石・加里長石・黒雲母からなり, 緑簾石を多量に生じている。

石英は円味を帯びた形状のものと, 破片状のものとが認められ, 微細な包有物を多量に含む。

斜長石は卓状または破片状で, 著しく変質し, 緑簾石を生じ, また暗色に汚染されている。

加里長石は卓状または破片状で, カオリンを生じている。

黒雲母は板状または鱗片状で, ほとんど緑泥石に変質している。

石基は淡褐色で珪長質の隠微晶からなる。

II.5.3 石英斑岩(Qp3)

本岩は図幅地域北西部の白根温泉附近を中心として, 片品川の1支流大滝川に沿って分布している。 岩体は大滝川を挾んでその南北両側において, 新期火山岩類により被覆されているが, 岩体の南西縁においては斑粝岩を貫ぬいている。 またその附近の香沢と大滝川との合流点近くでは, 古生層と推定される時代未詳の水成岩を捕獲している。 本岩は灰白色の珪長質石基をもつ岩石で, 石英・長石等の小粒斑晶は顕著であるが, 有色鉱物に乏しく, 僅かに黒雲母を含有するほか, 緑泥石の鱗片状小晶や緑簾石等を含んでいる。 風化作用により2次的変質を著しく蒙り, しばしば灰白色を呈することがある。 赤沢附近における本岩は, 有色鉱物の分解による汚染のため, 赤褐色を呈することがある。

斑粝岩との接触部附近においては, 本岩はより珪長質となり, 灰色を呈し有色鉱物に乏しい。

滝見橋の西方に小範囲に分布する花崗斑岩(Gp2)は, 灰白色または淡青緑色を呈し, 石英・長石・黒雲母および角閃石等の斑晶が著しい。 特に長石は長径 2 cm にも達する柱状または卓伏の斑晶となり, 著しい斑状構造を呈する。

石英斑岩 : 白根温泉附近のものを鏡下でみると, 斑晶は石英・斜長石・加里長石および黒雲母からなり, 2次的鉱物として緑簾石や方解石を生じている。

石英はやゝ稜角をもつ自形状結晶のものが多く, なかには円い融蝕形を示すものがある。 一般に清透である。

斜長石は灰曹長石程度で, 卓状もしくは破片状を示し, 暗色に汚染されているものが多く, 絹雲母を生じている。

加里長石は不規則な形状を示し, 常に暗褐色に汚染されている。

黒雲母は小さな板状を呈し, ほとんど緑泥石に変質している。 また鱗片状のものも認められる。

このほか副成分鉱物として燐灰石や磁鉄鉱の小粒状結晶を含む。

石基は珪長質の隠微晶からなる。

花崗斑岩 : 仁加又沢のものを鏡下でみると, 斑晶は石英・斜長石・加里長石・角閃石および黒雲母等からなる。

石英は自形に近い形状を示し, 概して清透である。

斜長石は灰曹長石程度で, 卓状に近い形状を示し, 一般に絹雲母や方解石を生じている。

加里長石は卓状を示し, やゝ淡褐色に汚染され, カオリンを生じている。

角閃石は緑色で柱状を示す。 多くは緑泥石に変質している。

黒雲母は小さな板状ないし鱗片状で, これも緑泥石に変質している。

II.6 石英玢岩(Qp0)

本岩は 千手ケ原の北側の花崗岩からなる山塊から連続する1つの小丘をなして露出し, その南方および東方松崎附近の石英斑岩中にも, 小範囲を占めて数カ所に分布する。

花崗岩との接触部は小規模な断層により境し, 小規模な断層破砕帯を伴なっている。 石英斑岩(Qp2)中における本岩は, 小規模な貫入岩体と考えられる。

本岩は暗青緑色のきわめて堅硬, 緻密な石基をもつ斑状岩で, 肉眼で斜長石の斑晶が顕著に認められる。

鏡下にみると本岩は斜長石・加里長石・角閃石・黒雲母および少量の石英からなる。

斜長石は卓状ないし柱状に近い形を示し, 一般に暗褐色に汚染されている。 その成分は中性長石程度と観察される。

加里長石は卓状に近い形状を示し, 一部にカオリンを生じている。

角閃石は緑色で柱状を示し, 一部緑泥石に変質している。

黒雲母は板状を示し, その大半は緑泥石に変質している。

石英は不規則な小粒状結晶として, まれに含まれる程度である。

石基は微細な珪長質の物質からなり, やゝ暗色に汚染され, 黒雲母や緑泥石の小粒を含んでいる。

II.7 岩脈類(その1)

II.7.1 松脂岩(P)

本岩は松木沢において花崗閃緑岩を貫ぬいて岩脈状をなしている。 この岩脈は幅約 60 cm 内外の1 本の主脈と, さらにこれを切って迸入した幅約 20 cm 内外の支脈とからなる, 一種の複合岩脈である。

主脈は暗灰色で樹脂光沢をもつ緻密なガラス質岩で, 支脈はやゝ青緑色を帯びた同種のガラス質岩である。 2本の岩脈の接触部附近は, 暗黒色の緻密なガラス質を呈している。

本岩は浅野五郎によって発見され, その後久野久により詳細な岩石学的研究が行われている。

本岩は中性長石・鉄橄欖石・斜方鉄珪輝石・柘榴石・ピジョン輝石, および磁鉄鉱を斑晶とするピジョン輝石 含有柘溜石斜方鉄珪輝石鉄橄欖石石英安山岩 である。

石基はガラスからなり, 少量の灰曹長石および鉄橄欖石を含み, まれに単斜輝石が認められる [ 以下の [注] 参照 ]

[注]
本岩の記載は久野久による岩石学的研究資料による。

なお本岩と構成鉱物において多少異なるが, これと同種の岩石が松木沢の花崗閃緑岩中に, さらに久蔵沢の古生層中に, いずれも岩脈状をなして分布する。

II.7.2 変朽安山岩(Pr1)

本岩は足尾町の北部, 松木・仁田元・久蔵の各沢において, 古生層を貫ぬく岩脈として出現する。 またこれと同種の岩石は, 花崗閃緑岩中にも岩脈として認められる。 岩脈の分布は仁田元沢において特に著しく, こゝでは古生層の粘板岩中に 10 本内外の岩脈を数える。

これらの岩脈は概して S - N ないし N 30°E の方向性をもつ, 幅約 1~3 m 程度のものであるが, なかには数 m 以上のものも認められる。 またその形状も単なる岩脈状のもののほか, 不規則な網状を示すものもある。

一般に青緑色を呈し, 緻密な基地をもち, 斜長石や緑泥石の斑晶が認められる。 なお各岩脈はそれぞれ岩質を多少異にしており, 風化等の2次的作用により表面が黄褐色を呈することがある。 また岩脈中には両側の岩石に対して, ほヾ直角に一種の柱状節理が発達することがある。

本岩を鏡下でみると, 一般に変質が著しく, 斜長石および角閃石を主要な斑晶とし安山岩質組織を呈する。

斜長石は灰曹長石程度で, 卓状ないし短柱状を呈し, 緑泥石を生じていることが多い。

角閃石は柱状ないし不規則形を示す緑色角閃石で, 小粒状の燐灰石を包有するものが多い。

緑泥石は不規則な形状を示すものが多く, なかには板状のものも認められる。

まれに石英を含むことがあり, 石英は円味を帯びた形状を示し, 概して新鮮である。

方解石および炭酸塩鉱物は, しばしば斜長石や角閃石を置き換えている。

石基は微細な拍子木状斜長石と鉄鉱物を多量に含む。 隠微晶質の珪長質石基からなるものと, やゝ粗粒の長石・石英からなるものとがあり, このほか少量のガラスを含むことがある。

II.8 変朽安山岩(Pr2)(凝灰角礫岩を含む)

本岩は男体山の北麓梵字滝の東方約 500 m に当る御沢中に認められ, 男体山熔岩との関係は不明で, 噴出時期は明らかでない。

暗緑色の緻密な岩石で, 本岩の晶洞中にはしばしば沸石を産する。

斜長石・緑泥石および凝灰質物からなり, 2次的変質が著しいために, 鏡下での詳細な観察は困難である。

II.9 流紋岩類

流紋岩類の噴出時期はこの地域では明らかでないが, 隣接する塩原図幅(75,000 分の1)地内では, 緑色凝灰岩類と互層をなしているので, 中新世の頃に噴出したものと推定される。

本地域に分布する流紋岩類をその産状と岩質により, 次の7つに分けたが, これらは主として黒雲母を含む流紋岩であるが, 一部には角閃石を含むガラス質流紋岩や, アルカリ長石を含む粗粒状の岩石が認められる。

II.9.1 流紋岩 (R1)

本岩は図幅地域の南西端に分布し, 西隣の追貝図幅地内の片品川の東側にいたるまで, 広い地域を占めて発達する。

本岩は東村奈良の北方においては花崗岩を貫ぬいており, その他の地域では流紋岩や安山岩等によって被覆されている。

淡灰色ないし淡褐色を帯びた緻密な珪長質ないしガラス質の石基を有する岩石で, 一般に石英および長石等の斑晶に乏しく, また有色鉱物も含まれることが少ない。 風化作用等の2次的変質により著しく灰白色となることがあり, また局部的に凝灰岩質岩石を伴なうことがある。

本岩中には局部的にしばしば多量の捕獲岩がみいだされる。 すなわち奈良の西方においては, 花崗岩や粘板岩および輝緑岩質岩石等の捕獲岩が, 本岩中に多数散点しているのが認められる。 これらの捕獲岩は径数 10 cm に達する不規則な塊状のものから, 小豆大のものにいたるまでの各種の大きさのものを含み, その形状も多様である。 また栗原川の源公平の東方において, 本岩は粘板岩および幅数 10 cm, 延長約数 m に達する比較的大きな石灰岩塊を捕獲している。

鏡下では斑晶は石英・斜長石・加里長石からなり, 少量の黒雲母を含んでいる。

石英は融蝕形ないし不規則な粒状を示し, 概して清透である。

斜長石は変質が著しいので, その成分の判定は困難であるが, 灰曹長石程度で, 鱗片状の絹雲母を多量に生じている。

加里長石は自形卓状または不規則な形状を示し, カオリンを生じている。

黒雲母は板状または鱗片状を示し, 緑泥石に変質している。

石基は淡褐色のガラス質物からなり, 局部的には珪長質の隠微晶が認められる。 2次的鉱物として黝簾石の小晶をしばしば含むことがある。

また花崗岩を捕獲するものでは, これの石英・斜長石・加里長石等からなる等粒状組織が認められる。

II.9.2 流紋岩(Rs)

本岩は図幅地域北西, 片品村白根温泉の南方において, 石英斑岩(Qp3)および斑粝岩を覆って露出する。

一般に灰白色を呈する堅硬, 緻密な珪長質の基地からなり, 斑晶に乏しい。 外観は水成岩の薄い層理に似た厚さ 2 mm 内外の縞状構造を示し, これは局部的にしばしば著しい撓曲や傾斜を示している。

鏡下では斑晶に乏しく, 基地は微細な石英および長石からなる珪長質隠微晶石基で, ガラスおよび多量の球顆を含んでいる。

斑晶の石英および長石は少量含まれる程度で, 不規則な形状を示し, 塵埃状の微細な包有物を多量に含んでいる。

有色鉱物は鱗片状の緑泥石を少量含む程度である。

II.9.3 流紋岩(R2)

本岩は図幅地域の南西部から北方へかけて広く分布し, 花崗岩を局部的に貫ぬき, あるいは覆って現われ, 安山岩類によって覆われている。 本岩は局部的に流紋岩質凝灰角礫岩を伴なう。

流紋岩はやゝ黒味を帯びた灰色の珪長質ないし凝灰質の基地をもつ岩石で, 石英・斜長石等の小粒斑晶を多量に含んでおり, 特に石英は径 2 mm に達するものがある。 有色鉱物は概して少なく, 鱗片状黒雲母および緑泥石等を少量含む。

本岩は野外において岩相の変化に富み, 斑状構造の著しいもの, あるいは流理構造を示すもの等が局部的に現われる。 一般に風化による2次的変質作用を著しく蒙り, 灰白色となり, 凝灰岩様の外観を呈することがある。

鏡下では斑晶は石英・斜長石, 少量のアルカリ長石および黒雲母からなる。

石英は自形に近い形状を示すものも認められるが, 概して円味を帯びた形状のものが多く, そのなかには融蝕形を示すものがある。 非常に微細な包有物を含むことが多い。

斜長石は柱状であるが, なかには破片状の結晶として含まれることがある。 一般に変質を蒙り, 絹雲母や炭酸塩鉱物を生じているので, その本来の性質は知り難い。

アルカリ長石は半自形の卓状形で, 一般に清透である。

黒雲母は板状または鱗片状で, ほとんど緑泥石に変質している。

石基は淡褐色に汚染されたガラス質物または珪長質の隠微晶からなり, ガラス質の部分では流理構造を呈する。

流紋岩質凝灰角礫岩は平滝川に沿う柴平から平滝附近にかけての地域と, 図幅地域南西部の砥沢附近において, 流紋岩中にそれぞれ幅約数 100 m にわたって分布する。 流紋岩と凝灰質角礫岩との接触部は, 野外においては明らかでない。

本岩中に含まれる角礫は, 径数 mm 程度から拳大にいたるまでの各種の大きさの, やゝ角張った礫を主とし, 礫の間隙は灰白色ないし淡緑色の凝灰質物によって膠結されたものである。 礫は流紋岩を主とし, まれに粘板岩や花崗岩を含む。

II.9.4 足尾斜長流紋岩(R3)

本岩は隣の足尾図幅地内に広く分布し, 本地域内では松木南方において, その岩体の一部が僅かに認められるに過ぎない。

足尾図幅地内において, 本岩は備前楯山を中心とし, 長径約 4 km, 短径約 3 km に達する漏斗状の噴出岩体を構成し, その周縁部には貫入角礫岩体を形成しており, その幅は数 10 m に達するところもある。

本地域における本岩は灰白色を呈する珪長質の基地をもち, 石英・斜長石および黒雲母等の斑晶を有する。 風化作用による2次的変質作用を蒙り, 白色の脆弱な岩質を呈することがある。 また古生層の砂岩や粘板岩の小片を包有することがある。

鏡下では斑晶は主として石英・斜長石・黒雲母からなり, そのほか少量の褐簾石・磁鉄鉱・黝簾石および方解石を含む。

石英には稜角のある外廓をもつものと, 粒状で融蝕されたものとがある。 一般に微細な塵埃状の包有物を認めるが, 概して新鮮である。

斜長石は灰曹長石程度で, 柱状結晶および破片状として含まれる。 暗色に汚濁するもののほかに, 緑泥石・黝簾石および炭酸塩鉱物に変質しているものがある。

黒雲母は小さな板状として含まれるか, または鱗片状を示し, 緑泥石化が著しく, また黒色, 粉状の不純物を含有している。

石基はガラス質で, 放射状組織をもった球顆を多量に含み, 流理構造を有するものと, 石英および長石の微晶を含有する隠微晶質のものとがある。

II.9.5 流紋岩(R4)

本岩の分布はきわめて小範囲に限られ, 図幅地域の北西端に近い車沢の一部と, 片品村の上小川の北東とに露出する。 本岩は斑粝岩および石英斑岩を被覆しており, さらにほかの流紋岩により覆われている。

淡灰色ないし褐色を帯びた灰色を示す堅硬, 緻密な珪長質ないしガラス質の石基をもち, 流理構造による縞状組織が顕著である。

鏡下では石英・斜長石および加里長石等を斑晶として含み, 有色鉱物は緑泥石を少量含む程度である。

石英は不規則形を示し, なかには融蝕形を示すものも少なくない。 一般に清透である。

斜長石は卓状を示し, 一般に変質が著しいので。 その成分の判定は困難である。 淡褐色に汚染し, 微細な鱗片状絹雲母を多量に生じている。

加里長石は不規則な形状または卓状を示し, 淡褐色に汚染され, しばしばカオリンを生じている。

緑泥石は小さな板状および鱗片状を示し, おそらく黒雲母から変質したものと考えられる。

石基は珪長質の隠微晶からなり, 局部的に球顆状組織が顕著である。 また石英・長石等の結晶を含み, 比較的粒状組織の認められる部分もある。

II.9.6 流紋岩(R5)

本岩は図幅地域の北西端に近い赤沢山附近を中心に発達し, 岩体の北の縁辺部は北隣の燧嶽図幅地内に分布している。

岩体の西と南の縁辺部では, 斑粝岩および石英斑岩(Qp3)をそれぞれ被覆し, 四郎嶽溶岩によって覆われている。

岩質は灰白色を呈するやゝ粗粒の斑状岩で, 局部的に流理構造が認められる。 また本岩は風化作用等の2次的変質により緑泥石化を蒙り, 淡青緑色を呈することがある。

斑晶は比較的多く顕著で, 斜長石・石英および鱗片状黒雲母からなり, そのほか緑泥石がみられることがある。 特に石英は径 2~3 mm 位の大形の斑晶をつくることがある。

鏡下では石英・斜長石・アルカリ長石および黒雲母等を斑晶として含む。

石英は一般に不規則形を示すが, なかには自形に近い形状を示すものが認められる。 概して清透である。

斜長石は灰曹長石程度で卓状を示す。 累帯構造はさほど著しくない。

アルカリ長石はまれに含まれる程度で, 概して不規則形を示し清透である。

黒雲母は小さな板状ないし鱗片状で, その多くは緑泥石に変質している。

石基は淡褐色を示すガラスからなり, 局部的に流理構造が認められる。

II.9.7 流紋岩(R6)(同質凝灰岩(Rt)を含む)

本岩は図幅内の火山岩類中最も広い面積を占めて分布する。 すなわち北部の温泉ケ岳から金精峠・前白根山および錫ケ嶽等を連ねる, ほヾ NNE - SSW に走る山稜一帯を形成し, 花崗岩類や石英斑岩を広く被覆している,

一般に本岩は淡褐色または灰白色を帯びたガラス質物に富んだ石基からなり, 石英・斜長石および鱗片状黒雲母等の斑晶を多量に含んでいる。 特に石英は径 2 mm 程度の粒状結晶が寄り集まって集斑晶を作ることがある。 また黒色のガラス質物が不規則な縞状に配列して, 流理構造を呈することがある。

流紋岩中で金精峠から湯元温泉にいたる間に露出するものは, 温泉作用や風化作用により変質を著しく蒙り, 白色ないし灰白色となり脆弱である。

本岩体中には非常にガラスに富む黒色のガラス質流紋岩がしばしば認められる。 この岩石は 図幅地域の北東端に近い山王峠から西沢金山(燧嶽図幅内)にいたる道路上と, 千手ケ原の北西にあたる大岳附近の沢の一部とにおいて認められる。 これら岩石は数 m ~数 10 m にわたって露出するが, 流紋岩体との接触部は概して不明瞭で, 山王峠においては漸移している。

本岩中にも石英・斜長石・黒雲母および角閃石の斑晶が多量に含まれる。

以上の諸岩石のほか, 本岩体中には流紋岩質凝灰岩が一部においてみられる。 すなわち錫ケ嶽から千手ケ原にむかって流下する沢の一部に分布しているが, 流紋岩との境は野外において明らかでない。

本岩は灰白色ないし淡緑色を呈する凝灰質物からなり, やゝ粗鬆である。 石英や斜長石がまれに斑状をなして認められるほか, 黒色のガラスや緑泥質物が不規則な細長い縞状に配列し, 流理構造を示すことがある。 またまれに粘板岩様の小さな破片を含むことがある。

流紋岩 : 鏡下では斑晶は石英・斜長石・黒雲母等からなり, 少量のアルカリ長石を含んでいる。

石英は半自形または破砕した断片状のものが多く, なかには融蝕形を示すものがある。 概して清透である。

斜長石は灰曹長石程度で, 卓状を示し概して清透である。 一部は変質を蒙り方解石を生じていることがある。

アルカリ長石は自形柱状または半自形であって清透である。

黒雲母は黒褐色を呈し柱状を示すが, なかには細長く伸びて撓曲したものがある。

石基は淡褐色のガラスからなり, 流理溝造が著しい。 また局部的に放射状の組織をもつ球顆状構造が認められる。 きわめてまれに褐簾石の小晶を含むことがある。

ガラス質流紋岩 : 鏡下では石英・斜長石のほかに, 黒雲母や角閃石を含む。

石英は亀裂を生じ, 破片状を示すものが多く, まれに明瞭な結晶形が認められる。

斜長石は灰曹長石程度で, 累帯構造が著しい。

黒雲母は黒褐色を呈し, 板状または細長く伸びた形状を示す。

角閃石は緑色ないし淡褐色を呈し, 柱状を示す。 黒雲母より少量である。

石基は淡褐色のガラスからなり, 流理構造が著しい。

II.10 岩脈類(その2)

II.10.1 玢岩(P0)

本岩は図幅地域西部に広く分布する流紋岩中に岩脈として認められる。 岩脈は幅 1 m 内外のものから数 m 以上に及ぶものがあり, それぞれ岩質を多少異にしている。

図幅地域南西端の栗原川沿岸に分布するものは, 暗緑色ないし淡緑色を呈し, 斑状組織が著しく, 斜長石および黒色, 柱状の有色鉱物を含む。

鏡下では斑晶は斜長石・角閃石・普通輝石および石英等からなる。

斜長石は中性長石程度で, 卓状ないし柱状を示す。 一般に2次的変質を蒙り, 緑泥石や炭酸塩鉱物を多量に生じ, 暗色に汚染されていることが多い。

角閃石は緑色を示し, その多くは柱状を呈するが, 不規則な破片状を示すものが認められる。 普通輝石は角閃石よりやゝ少量含まれ, 柱状ないし短柱状を呈しほとんど無色である。

石英はやゝ円味を帯びた不規則な形状を示してまれに含まれる。 微細な包有物を含むが概して清透である。

石基は細粒の石英・加里長石および小さな短冊形の斜長石等の集合体からなり, 鱗片状の緑泥石や小粒状の黒褐色鉄鉱物を多量に含む。

II.10.2 紫蘇輝石普通輝石安山岩(Ap)

本岩は金精山の東方数 100 m の地点において, 黒雲母斜長流紋岩を貫ぬいているほか, 図幅地域南東部の古生層中にも岩脈として出現する。 金精山附近の本岩脈は幅数 m 内外で, ほヾ東西方向に伸びている。

暗灰色の堅硬, 緻密な石基をもつ斑状岩で, 斜長石や輝石類を少量認めうる。

鏡下では斑晶は斜長石・普通輝石・紫蘇輝石および少量の石英からなる。

斜長石は曹灰長石程度で卓状を示し, 累帯構造の著しいものがある。

普通輝石・紫蘇輝石はともに短柱状を示し, 紫蘇輝石には多色性を示すものがある。

石英は円味を帯びた形状を示すものが多く, 融蝕形を示すものも認められる。 一般に微細な包有物を含んでいる。

石基は微細な拍子木状斜長石と, 鉄鉱物を含む淡褐色のガラスとからなる。

II.11 第四紀火山岩類

本図幅地域に広く分布する火山岩中で, 安山岩類を主とする火山噴出物は 花崗岩・石英斑岩および流紋岩類を基盤とする諸火山から噴出されたものであり, 現在では火山の原形をとヾめぬ火山や, 白根火山・男体火山のような有史時代の噴出にかゝる火山を構成している。

II.11.1 錫嶽熔岩(Su)

本岩は図幅地内の中央分水嶺の背稜部を占めており, 削剝を著しく蒙り, 3ヵ所に分かれて露出し, その範囲はきわめて狭い。 本岩の生成は侵蝕のため, 原形をほとんど知ることができない点からみて, 男体山・白根山等の諸火山から噴出した安山岩類よりも, やゝ古く噴出したものと推定される。

本岩は暗灰色, 細粒, 緻密な輝石安山岩である。 一般にガラスに富み, なかには流理構造の顕著なものが認められる。 またいわゆるオートリスに富む。 これら捕獲岩は灰黒色を呈し, 径 1 cm 内外の楕円体または不規則な形状を示し, いずれも脆弱である。

本岩を鏡下でみると, 斑晶は斜長石・紫蘇輝石および普通輝石からなり, 紫蘇輝石と普通輝石とはほヾ等量含まれ, まれに石英の斑晶を含んでいる。

斜長石は曹灰長石程度で, 卓状または柱状を示し, 概して清透で, 一部に累帯構造が認められる。

紫蘇輝石は柱状を示し, 磁鉄鉱の小粒を包有する。

石基はやゝ淡褐色を帯びたガラスからなり, 微細な鉄鉱物によって満たされており, 一部には流理構造も認められる。

II.11.2 四郎嶽熔岩(Sh)

図幅地域の北西端に分布する四郎嶽熔岩は, 燧嶽図幅内の四郎嶽を火山活動の中心として噴出し, 流下した熔岩の一部である。

この火山は日光周辺の男体山・太郎山等に較べて, 著しく侵蝕を蒙り, 火口のあとを初めとして, その原形を明らかにすることができない。

本岩は灰黒色の細粒, 緻密な輝石安山岩で, 一般に流理構造を呈し, 灰白色のガラス質物が蚯蚓状に細長く伸びた形状を示すことがある。 本岩中には捕獲岩がしばしばみいだされる。 捕獲岩は淡緑色ないし淡褐色の凝灰質物からなり, いずれも不規則な形状を示し, 径 1 cm 内外である。

鏡下では斜長石・普通輝石・紫蘇輝石の斑晶を有し, まれに石英を含む。 紫蘇輝石は普通輝石に較べて少量である。

斜長石は曹灰長石程度で卓状を示し, 概して清透で, 不定形のガラスの小粒を包有している。

普通輝石・紫蘇輝石はともに柱状で, 普通輝石中にはしばしば黒色の鉄鉱物の小粒を包有している。

石英は融蝕形を示し, その周辺には微細な珪長質鉱物が集合している。

石基は微細なガラスの集合からなり, そのなかに黒褐色の鉄鉱物が散点している。

II.11.3 三ケ峯熔岩(Mt1,Mt2)

三ケ峯の西方一帯に分布する本岩は, かって三ケ峯および沼ノ上山附近を火山活動の中心として噴出し, 流下した熔岩と考えられるが, 著しく侵蝕をうけ, 現在では火山の原形をとヾめないので, かっての火山の規模および形態を明らかにすることは困難である。

熔岩は大別して 灰黒色の細粒, 緻密な紫蘇輝石普通輝石安山岩と, 灰黒色のやゝ斑晶に富む橄欖石含有普通輝石紫蘇輝石安山岩とに分けられる。 前者は沼ノ上山附近を構成する熔岩で, 後者は三ケ峯山附近とその南西方の尾根とに分布し, 前者より後に噴出したものと考えられる。

橄欖石含有普通輝石紫蘇輝石安山岩を鏡下で検すると, 斑晶は斜長石・普通輝石・紫蘇輝石および橄欖石からなる。

斜長石は曹灰長石に属し, 卓状ないし柱状を示す。 一般に汚染されている。

普通輝石および紫蘇輝石はともに短柱状を呈する。

石基は間粒状組織を示す。

紫蘇輝石普通輝石安山岩を鏡下でみると, 斜長石・普通輝石・紫蘇輝石および少量の石英の斑晶をもつ。

斜長石は曹灰長石程度で卓状を示し, しばしば累帯構造を呈する。 普通輝石や磁鉄鉱の小粒を包有することがある。

普通輝石は柱状を示し, しばしば磁鉄鉱の小粒を包有している。

紫蘇輝石は普通輝石に比較して少量で, いずれも短柱状である。

石英は稀に含まれ, 融蝕形を呈し清澄である。

石基は淡褐色のガラスからなり, 局部的に流理構造を示す。

II.11.4 袈裟丸山熔岩(Ap5)

袈裟丸火山は南隣の足尾図幅地内の袈裟丸山を主峰とする円錐型火山であって, 群馬・栃木両県の分水嶺を形成している南北の山稜に, かっての火口をもつものと推定される。 同火山は南西へ向かって放射状に走る緩やかな起伏を示す山稜からなり, 全体として円錐型火山の原形をとヾめてはいるが, 山体の侵蝕は甚だしく, 非常に開析されている。 足尾図幅においては化学分析ならびに岩質により2種の熔岩に分類されたが, これら熔岩は外観すこぶる類似し, 野外において明瞭な関係を決めることはできない。 本図幅地内に分布する熔岩は, 灰黒色ないし灰色を呈し緻密であるが, 時に多孔質となり, 淡褐色を呈する。

鏡下では斑晶は斜長石・紫蘇輝石・普通輝石および磁鉄鉱からなる。

斜長石は曹灰長石ないし亜灰長石程度で, 卓状を呈し, 累帯構造を示す。 一般に鉄鉱物の小粒を包有し, やゝ暗色に汚染している。

紫蘇輝石は短柱状を示し, 多くの場合数個の結晶体が集合して, 1つの斑晶を形成する。 結晶の外廓には粒状輝石の縁がみられる場合がある。

普通輝石は柱状を示し, まれに双晶がみられる。 微細な鉄鉱物を包有することがある。

石基は微細な短冊状斜長石が網状, または一定方向に配列しており, その間隙を粒状の輝石・磁鉄鉱およびガラスが塡めて, ガラス基流晶質ないし毛氈状である。

II.11.5 庚申山熔岩(Ap3)

庚申山火山は, これに接する皇海山・裂裟丸山と相前後して噴出した成層型の火山である。 侵蝕の著しく進んだ現在では, かっての火山の形態ならびに規模を明らかにすることは困難であるが, 庚申山頂附近を中心として噴出したものと推定される。

本火山の噴出物は凝灰角礫岩および熔岩からなり, 凝灰角礫岩の分布は広く, 特に庚申山頂から南東方一帯にかけて現われる。 熔岩は凝灰角礫岩に較べてその分布が狭い。

凝灰角礫岩は黒色ないし茶褐色を呈する石基中に, 斜長石斑晶を多量にもつ安山岩岩片が, 泥流様の火山灰および火山砂によって膠結されたものである。

熔岩は緻密で黒色ないし灰黒色を呈し, 斜長石の斑晶は時としてガラス光沢をもつ。

鏡下では斑晶は斜長石・紫蘇輝石・橄欖石および磁鉄鉱からなる。

斜長石は曹灰長石程度で卓状を示し, 単晶または数個の集合斑晶を形成する。 一般にやゝ暗色に汚染し, 軽度の累帯構造を呈する。

紫蘇輝石は短柱状で, 結晶の外廓にしばしば粒状輝石の縁をもつ。 包有物として微細な鉄鉱物を含む。

橄欖石はまれに含まれ, やゝ円味を帯びた自形状を示し, 結晶の一部は変質し, イディングス石様の鉱物を生じている。

石基は拍子木状斜長石・粒状輝石・磁鉄鉱等からなり, その間隙を淡褐色のガラスが充塡しており, ガラス基流晶質ないし間粒状組織を呈する。

II.11.6 皇海山 すかいやま 熔岩(S)

皇海山熔岩およびその他の同火山噴出物は, 本図幅地内の中央分水嶺の南端に近い皇海山(2,143.5 m)を, 火山活動の中心として噴出されたものである。

皇海山はその開析の状態から, これに連なる庚申山・袈裟丸山(足尾図幅地内)等の諸火山よりも やゝ新しい火山と推定される。

本熔岩には暗黒色のものと灰黒色を呈するものとがあり, いずれも輝石安山岩である。 暗黒色のものは堅硬, 緻密でやゝガラスに富み, 灰黒色を呈するものはやゝ斑状を呈する。 その他の火山噴出物は凝灰角礫岩ないし集塊岩で, 主として皇海山の基底部に近く分布する。

凝灰角礫岩および集塊岩の多くは, 皇海山熔岩と互層をなして分布し, 大規模に分布するものは認められない。 赤褐色ないし灰黒色を呈する火山灰および火山砂が, 径数 cm ~ 数 10 cm に達する安山岩片を膠結している。

鏡下では暗黒色, 緻密な熔岩は, 斑晶として斜長石・普通輝石・紫蘇輝石を含む。

斜長石は卓状を示し, その成分は中性長石ないし曹灰長石程度である。 概して清透で累帯構造を示すものがある。

普通輝石は一般に柱状を示し, 磁鉄鉱の小粒を包有することが多い。

紫蘇輝石は淡緑色ないし淡褐色の多色性を有し, 柱状を呈する。 柱状結晶の縁辺部に微粒の単斜輝石からなるリムを認めることがある。

石基は毛氈状ないしガラス基流晶質である。 またきわめて局部的に鱗片状, ないし小さな板状の黒雲母様の結晶が認められる。

灰黒色のやゝ斑状を呈する熔岩も, 鏡下ではその構成鉱物は上記のものとほとんど相違がなく, 石基が多少間粒状を呈する程度である。

II.11.7 金田熔岩(T1)

金田ドームは図幅地域の北東隅に近く位置する 金田峠の東方約 1 km の 2,020.4 m 高地を, その中心とする小規模なドーム状の火山であるが, その火口のあとは明らかでない。 このドームの熔岩の一部は北隣の燧嶽図幅地内に分布している。

ドームを構成する熔岩は太郎山・山王帽子山に分布する熔岩と, その外観が酷似しているが, 角閃石から変質したと思われるオパサイトをかなり多量に含む点から, 太郎山等の熔岩と区別した。 岩質は灰黒色を呈し, やゝ堅硬, 緻密な基地をもち, 斜長石の斑晶が顕著である。 また淡灰色のオートリスもしばしば認められるが, これはいずれも径 2 cm 内外の不規則な球状を示す。

本岩は橄欖石紫蘇輝石普通輝石石英安山岩であって, 鏡下では斑晶は斜長石・紫蘇輝石・普通輝石・橄欖石および石英からなる。

斜長石は曹灰長石程度で卓状を示し, 一般に清澄である。

紫蘇輝石・普通輝石は少量含まれる程度で, いずれも短柱状を呈する。

橄欖石は紡錘形に近い形状を示すもののほか, 不規則な形状のものも認められる。

石英はやゝ大きな斑状を呈し, 一般に新鮮である。 なかには融蝕形のものもある。

石基は短柱状の斜長石と小粒状の単斜・斜方両輝石からなる間粒状組織を示す。

II.11.8 太郎火山熔岩(T2)

大真名子山は男体山の北東にあたり, 隣の日光図幅地内の志津において男体山に接するトロイデ型火山である。 頂上には火口のあとがみられない。 一般に地形は急峻で, 本図幅地内にはその山体の一部が含まれるのみである。

太郎山・山王帽子山および三岳の諸火山は, 図幅地域の北東部にほヾ東西に配列するトロイデ型火山である。

太郎火山は男体火山よりやゝ早く噴出したほヾ円錘形に近い山容を保つ火山で, 頂上に近く火口のあとをとヾめている。 現在の火口は直径数 10 m で, 深さ 50 m に達し, 北側が高く峻険な熔岩壁を形成しており, 火口には火山灰や火山砂礫が積っている。 火口の東側には薙と称する崩壊谷を生じている。 太郎火山の裾野の発達は北方の鬼怒川方面に著しく, 日光火山群中の女峯火山と日光図幅地内で接している。

山王帽子山と三岳の両火山は山王峠を境としている。 これら両火山は太郎火山に較べて比較的小規模なものである。

これら3火山はいずれも同種の橄欖石を含む輝石安山岩からなり, 少量の石英を含んでいる。 これら諸火山の熔岩はすこぶる外観が似ており, 野外においてその識別は困難である。

熔岩は一般に灰黒色を呈する緻密な基地をもち, 斜長石の斑晶が顕著であるほか, 輝石類や橄欖石も認められる。 本熔岩中にはいわゆるオートリスが多くみいだされ, 特に太郎山に分布する熔岩中には多量に含まれる。 これらのオートリスは灰黒色ないし淡灰色を呈し, その多くは径 2 cm 内外の不規則な楕円体状の形状を示している。

湯ノ湖畔に分布する三岳の熔岩中には, 黒色の新鮮なものがあり, この熔岩は微粒でやゝ脆弱であり, 斜長石の斑晶はきわめて顕著である。 この附近では, 本熔岩中に径 2~3 cm 程度の不規則な形状を示す石英斑岩, ないし流紋岩の捕獲岩がしばしばみいだされる。 以下この地域の諸岩石の鏡下における観察を記す。

湯ノ湖畔の三岳熔岩は橄欖石紫蘇輝石普通輝石石英安山岩であって, 斑晶は斜長石・紫蘇輝石・普通輝石および橄欖石からなり, 少量の石英を含んでいる。

斜長石は曹灰長石程度で, 一般に卓状を示し, 累帯構造が著しい。 また微細な包有物を含み, やゝ暗色に汚染されているものがある。

紫蘇輝石・普通輝石はともに柱状形を示し, 鉄鉱物の小粒を包有している。

橄欖石は輝石類に較べて少量で, 不規則な形状を示し, 一部は暗赤褐色の鉱物を生じている。

石英はまれに含まれ, 不規則な円味を帯びた形状を示す。 一般に清澄である。

石基は微細な拍子木状斜長石・小粒状輝石・磁鉄鉱等の間隙をガラスが塡めており, ガラス基流晶質である。

太郎山頂のものは紫蘇輝石普通輝石石英安山岩であって, 斑晶は斜長石・普通輝石・紫蘇輝石および石英からなる。

斜長石は曹灰長石程度で, 柱状ないし卓状を示し, 一般に清澄で, 累帯構造が認められる。 包有物として小粒状の輝石を含むことがある。

普通輝石と紫蘇輝石は柱状ないし短柱状を示し, 黒褐色の鉄鉱物の小粒を包有している。

石英は新鮮で円味を帯びた形状を呈する。

石基はやゝ淡褐色に汚染され, ガラス基流晶質である。

II.11.9 白根火山噴出物(白根山熔岩・塋塚山熔岩)(S1,S2)

白根火山は群馬県の草津白根火山に対して, 俗に日光白根と呼ばれている。

本火山は有史以来たびたび活動したが, 現在では一応その活動を休止している。

記録 2) によれば, 寛永 2 年(1625)・慶安 2 年(1649)・ 明治 5 年(1872)・明治 6 年(1873)の数回にわたって活動し, 爆発により火山灰を降下させている。

火山の基盤は石英斑岩および流紋岩からなり, これら基盤岩類は第三紀中新世以前に貫入, あるいは噴出したものと推定される。 本火山の形成は第四紀初期で, 洪積期と推定されるが明らかでない。

白根火山は図幅地域中央部の北にあたる白根山を頂点とし, その北方ならびに西方に拡がる火山で, 五色山から前白根山の 2,377 m 高地を通って, 南南西方にめぐる稜線は, 五色湖を囲み白根火山の外輪山の外観を示しているが, 外輪山と決定する資料に乏しい。 この稜線によって囲まれる範囲は直径約 1 km で, 山稜は斜長流紋岩および古期安山岩から構成されている。

本火山には 地形的にそれぞれ特徴のあるいくつかのドームおよび楯状火山が認められ, これらが集合して生じた複式火山である。 すなわち奥白根山(2,577.6 m)と呼ばれる山頂部を中心に, 金精山・座禅山・五色山等はいずれもドーム状形態を示している。

山頂のすぐ西側に爆裂火口が認められ, 火口の周辺は厚い熔岩壁が聳立して特異な山容を呈している。 この爆裂火口は西方に開いて火口瀬となり, 開析されて薙を生じており, その薙は下流にいたり仁加又沢と呼ばれ, 本火山で最も大規模なものである。

山頂部から北西約 2 km に当る塋塚山は, 1つの独立した山体を形成する楯状火山で, 塋塚山熔岩は塋塚山山頂附近をかっての火口として噴出, 流下したもので, 西方に緩傾斜の広い台地状地形を形成している。

白根火山の噴出物は熔岩・集塊岩および火山砕屑物からなる。

熔岩は灰黒色でやゝ斑状の橄欖石輝石安山岩で, 少量の石英を含むほか, しばしば淡灰黒色で径数 cm 内外の不規則な形状のオートリスをもっている。

白根山頂附近および金精山・座禅山等は, この熔岩によって構成されているほか, 一部に砕屑岩を伴なう。

火口瀬附近は主として熔岩からなり, 集塊岩および火山砕屑岩を挾んでいる。 下流の大広河原および小広河原においては, 集塊岩と砕屑岩が多く, 熔岩の分布は少ない。

火山の北斜面すなわち菅沼・丸沼・大尻沼にのぞむ緩傾斜の地域は, 主として集塊岩と砕屑物とからなり, 熔岩の分布は少ない。

奥白根山頂部附近に分布する白根山熔岩は暗灰色ないし灰黒色を呈し, 爆裂火口の火口壁を形成している。 熔岩には堅硬, 緻密なものと, 多孔質で粗鬆なものとが認められ, 後者は赤褐色を呈することがある。 緻密なものを鏡下でみると, 橄欖石紫蘇輝石普通輝石石英安山岩であって, 斑晶は斜長石・紫蘇輝石・普通輝石および橄欖石からなり, 少量の石英を含むことがある。

斜長石は曹灰長石程度で卓伏を示し, 概して新鮮であるが, 一部には2次的変質を蒙り, やゝ汚染されているものが認められる。 輝石やガラスの小粒を包有することがある。

紫蘇輝石および普通輝石はともに柱状または不規則な破片状を示し, 磁鉄鉱の小粒を包有している。 紫蘇輝石にはしばしば黒褐色のオパサイト様のリムが認められる。

橄欖石は少量含まれる程度で, その多くは円味を帯びた形状を示す。

石英は円味を帯びた形状を呈して稀に含まれ, 概して新鮮である。

石基はガラス基流晶質で, 拍子木状の斜長石, 小粒状の単斜輝石および小柱状の紫蘇輝石等からなり, ガラス・磁鉄鉱を多量に含む。

塋塚山熔岩は塋塚山頂部附近から西方に分布し, 加羅倉の北西および南西部の斜面に熔岩による崖を形成している。 白根山熔岩と外観上よく似ており, 灰黒色を呈し緻密である。

塋塚山頂のものは角閃石含有橄欖石紫蘇輝石普通輝石石英安山岩であって, 鏡下では斑晶は斜長石・普通輝石・紫蘇輝石・橄欖石・角閃石および石英からなる。

斜長石は曹灰長石程度で, ほとんど自形で柱状ないし卓状を呈し, おゝむね清透であるが, なかには変質により暗色に汚染されているものが認められる。 累帯構造はかなり著しい。

普通輝石は柱状を呈し, やゝ熔融されて円味を帯びている。 包有物として小粒状の磁鉄鉱を合む。

紫蘇輝石も柱状を呈し, 多少熔融された形状を示すものが少なくない。 多色性は著しくない。 磁鉄鉱を包有するが, その量は多くはない。

橄欖石は円味を帯びた形状を示し, 淡い黄色を帯びた劈開が発達しており, 一部はイディングス石に変質し, 赤褐色を呈している。

角閃石は褐色を帯び柱状を呈するが, その多くはオパサイトに変質し, 黒色の仮晶を形成している。

石英は円味を帯びた融蝕形を示し, 概して新鮮であるが, なかには微細な包有物を含むものが認められる。

石基はピロタキシティック組織で, ガラス基流晶質を呈することもある。 拍子木状斜長石と単斜・斜方両輝石, 磁鉄鉱のほか多量のガラスを含む。

黒雲母角閃石普通輝石紫蘇輝石石英安山岩 : 本岩は菅沼の南側湖岸に近く分布する白根熔岩中の捕獲岩である。 灰白色で多孔質の粗鬆な浮石質安山岩で, 斑状組織が顕著である。 肉眼では黒色の柱状結晶を示す輝石類と, ほかに斜長石が著しく認められる。

鏡下では斑晶は斜長石・普通輝石・紫蘇輝石・角閃石・黒雲母および石英からなる。

斜長石は曹灰長石で卓状を示し, 累帯構造は著しくない。 一般に清透である。

普通輝石・紫蘇輝石はともに柱状を示し, 磁鉄鉱を包有するが著しくない。 紫蘇輝石はかなり多色性を示す。

角閃石は柱状を示すもののほか, 小さな破片状を示すものが認められ, いずれも褐色を呈する。

黒雲母は板状または破片状で暗褐色を呈し, その量は角閃石とほヾ同量で散点している。

石英はいずれも円味を帯びた形状を示し, 融蝕形を示すものが少なくない。 一般に包有物を含まずきわめて清透である。

石基はほとんど無色透明のガラスからなり, 微細な斜長石の破片や, 少量の単斜・斜方両輝石の小粒状ないし小柱状結晶および磁鉄鉱を含む。 一般に流理構造が顕著である。

II.11.10 男体火山噴出物(N1~N4)

図幅地域の東端に聳立する標高 2,484.4 m の男体火山は, 地域内で唯一の典型的な成層火山である。 本火山は最近山崎正男の研究 3) により, 塩原図幅(75,000 分の1)内の大真名子・小真名子両火山, および本図幅内の太郎山・山王帽子山等の諸火山より 噴出時期が新しいことが明らかになった 。 男体火山はこの地域の諸火山のなかでは, 最もよく原形を維持しており, 山座は比較的小さいが, 頂上には明瞭な火口のあとを残している。 この火口から北へ向かって御沢に洋ぐ湯殿沢を火口瀬とし, そのほか薙と称せられる放射状の谷が生じている。

山体は浮石・火山灰および火山砂等によって覆われており, 熔岩の良好な露頭は開析された溪谷のほかにはみられない。 頂上の火口附近には, 赤褐色ないし暗灰色のスコリアが認められる。

浮石・火山灰および火山砂等は, 幾回かの爆発の際に降下したものであって, その新旧の識別は困難である。

男体火山の活動の初期に噴出した熔岩は, 主として塩原図幅(75,000 分の1)内の日光地域に分布し, 本図幅地域には比較的後期に噴出した熔岩の分布が認められる。

華嚴熔岩(N1) : 本岩は男体山の南東側斜面に主として分布し, 特に図幅地域外の華厳ノ滝においては, 柱状節理のよく発達した露頭がみられる。 また本岩とほとんど同種の熔岩が, 男体山の山頂部附近にきわめて小範囲に分布するが, 岩質ならびにその産状から華厳熔岩として一括した。

華厳熔岩は暗灰色の緻密な石基を持ち, 肉眼で斜長石・輝石類のほかしばしば橄欖石が認められる。

本岩は橄欖石紫蘇輝石普通輝石安山岩であって, 鏡下では斑晶は斜長石・普通輝石・紫蘇輝石・橄欖石等からなる。

斜長石は曹灰長石程度で, 卓状を示すもののほか破片状のものも少量認められる。

普通輝石・紫蘇輝石はともに短柱状を呈し, 磁鉄鉱や斜長石の小粒を包有する。

橄欖石は円味を帯びた半自形を示し, その外郭はしばしば暗褐色の鉱物によってふち取られている。

石基は淡褐色ないし暗色を呈し, 微細な毛氈状組織を呈する。

大薙熔結疑灰岩(N2) : 本岩は男体山の西部から北西部にかけて分布し, 一部は浮石質安山岩に覆われている。

暗黒色ないし暗灰色の緻密な岩石で, ガラス状光沢の著しい部分と, それほど著しくないものとがあり, 流理構造を呈し貝殼状の劈開を示す。 本岩は捕獲岩に富み, その種類は石英斑岩・花崗斑岩・花崗閃緑岩等で, クルミ大のものから大きいものでは径 10 cm 内外に達するものが認められる。 また本岩に伴なって, 黒灰色のやゝ結晶度の高い緻密な熔結凝灰岩が認められる。 おそらく同時に噴出したものと考えられるが, 本岩中にも前者にみられるような捕獲岩が認められる。 石基中に白色の長石様の鉱物が点在している。

熔結凝灰岩を鏡下で検すると, 斑晶は一般に乏しいが, 斜長石・普通輝石・紫蘇輝石からなる。

斜長石は曹灰長石で, 一般に不規則な破片状を示すが, なかには卓状を示すものが認められる。 累帯構造が著しく, 概して清澄である。

普通輝石・紫蘇輝石は短柱状をなして少量含まれる程度である。

基地は暗褐色ないし淡褐色を帯びたガラスからなり, 著しい流理構造を示す。 また非常に微細な毛氈状のガラス質物が集合して凝結した凝灰岩様組織を呈する。

御沢浮石流(N3) : 本岩は竜頭ノ滝附近と湯川の川底に沿って分布し, また御沢の下流では浮石質安山岩に覆われて露出している。

本岩は赤褐色を帯びた暗灰色を呈し, 特に竜頭ノ滝附近では赤褐色に汚染されている。 岩質は粗鬆できわめて脆弱である。 本岩中には大小さまざまの灰白色の浮石や, 安山岩質岩塊およびガラス等を包有している。

竜頭ノ滝附近バス道路横のものは, 角閃石紫蘇輝石普通輝石石英安山岩であって, 鏡下では斑晶は斜長石・紫蘇輝石・普通輝石および少量の角閃石と石英とからなる。

斜長石は曹灰長石程度で卓状を示し, ガラスの破片や普通輝石の小粒結晶を包有している。

紫蘇輝石・普通輝石はともに短柱状を呈し, 斜長石や鉄鉱物の小粒を包有している。

角閃石は褐色を呈し柱状を示し, まれに含まれる程度である。

石英は自形を示すものは少なく, 多くは円味を帯びた形状を呈し, 淡褐色を帯びた微細な塵埃状の包有物を多量に含んでいる。

石基は無色ないし淡褐色のガラスからなり, 一部には流理構造や真珠構造を呈する。

湯殿沢浮石質安山岩(N4) : 本岩は火口瀬の湯殿沢に沿って流下し, 男体山の北西側斜面を覆って分布する。 本岩は湯殿沢で熔結凝灰岩を, また御沢では浮石流を被覆している。

本岩は灰白色を呈し, 岩石全体がやゝ粗鬆で, 斜長石・輝石および透明なガラスからなる。

梵字滝の南西方における本岩は, 橄欖石含有角閃石紫蘇輝石普通輝石石英安山岩であって, 鏡下では斑晶は斜長石・紫蘇輝石・普通輝石・角閃石・橄欖石および石英からなる。

斜長石は曹灰長石程度で卓状を示し, 一般に清澄である。 小粒状ガラスの包有物に富む。

紫蘇輝石と普通輝石はともに短柱状を示し, 鉄鉱物の小粒結晶を包有している。

角閃石は褐色を呈し柱状を示すが, 輝石類に較べて少量である。 角閃石のまわりを紫蘇輝石・普通輝石の小粒状結晶が取りまいていることがある。

橄欖石はやゝ円味を帯びた半自形を示し, まれに含まれる程度である。

石英は自形に近い形状のものも認められるが, 概して円味を帯びた形状を呈し, きわめて新鮮である。

石基は無色透明のガラスからなる。

また本岩中には捕獲岩として輝石安山岩がしばしば認められ, その岩質は斜長石・紫蘇輝石および普通輝石を斑晶とし, 石基は間粒状組織を呈する。

II.12 段丘堆積物(td)

本堆積物は主として図幅地域西端に分布し, 片品川の東岸に沿って発達する河岸段丘を構成する。

堆積物は厚い所では 20 m に達するものと推定され, 花崗岩や斑粝岩等の基盤岩の上にのる砂礫層と, その上位の粘土層とに分けることができる。

砂礫層は主として砂・礫からなるが, しばしば粘土層を挾んでいる。

粘土層の厚さは約 10 m 内外と推定され, かなり連続的な分布を示している。 粘土層の上にはしばしば浮石層がのっているのが認められる。

II.13 男体浮石層(Np)

本層は男体山を中心に, その北方山王峠附近にいたる広い範囲に分布し, さらに東方の日光町および足尾町附近(図幅範囲外)にも認められる。

本層は 男体山の爆発に際して抛出された浮石・火山砂・火山灰によって構成されている。

浮石層は凝結されていないので移動し易く, 必ずしも堆積当時の厚さを示していないが, 山王峠附近では 1~2 m の厚さを示すことがある。 足尾町の附近では段丘の上部にのっているので, その噴出時期は比較的新しいと考えられる。

浮石の大ききはクルミ大のものから小豆大のものまでさまざまで, やゝ黄色を帯びた灰白色を呈し, 多孔質の石基中に長さ 2 mm 以下の有色鉱物の柱状黒色斑晶が認められる。

鏡下では斑状構造を呈し, 紫蘇輝石・普通輝石・斜長石をおもな斑晶とし, 石基は主として浮石構造を呈するガラスからなり, 輝石類や斜長石の微晶を含む。

II.14 追貝浮石層(OP)

本層は西隣の追貝図幅の東部にも広く分布するもので, 本図幅地域では片品川東側の河岸段丘, および緩傾斜の山麓一帯に広く分布する。

本層は主として浮石からなり, そのほか火山砂や火山灰によって構成されている。 凝結していないので移動し易く, 堆積当時の厚さを必ずしも示していないが, その厚さは 30~60 cm 内外と推定される。 浮石はクルミ大から小豆大にいたるさまざまな大きさを示し, やゝ黄色を帯びた灰白色を呈し, 粗鬆で多孔質であり, 有色鉱物として短柱状の輝石類が含まれる。 この浮石は近傍の赤城・榛名等の諸火山から噴出降下したものと考えられる。

II.15 岩屑堆積物(dd)

本堆積物は丸沼・管沼の南側の緩傾斜の小区域を占めて分布する。

砂・礫および粘土等のほかに 少量の安山岩や凝灰角礫岩等の岩塊によって構成されている。

II.16 湿地堆積物(sd)

本堆積物はかって戦場ケ原および小田代原一帯に広く分布したものであるが, 現在では諸渓谷から流出した土砂礫により覆われており, 僅かにそれらの一部に認められるにすぎない。

調査当時赤沼附近の道路工事による切割において本層を観察したところでは 第1図の通りである。 すなわち, 下部は火山から噴出して堆積したと考えられる粘土質物と浮石とからなり, 上部は有機物を含む粘土層から形成されている。 浮石層はほとんど直径 5 mm 程度の浮石の粒子からなり, 大きなものは余り認められない。 また浮石層の厚さは一定せず, 所により膨縮が甚だしい。

第1図 湿地堆積物(戦場ヶ原赤沼附近)

II.17 崖錐堆積物(tg)

本堆積物は主として火山地域の山麓一帯のやゝ緩い傾斜地を覆って分布するもので, 砂・礫および粘土等からなる。

これらの堆積物は溪流から押し出されたもので, 扇状の拡がりを示すことがある。 多量の礫のなかには比較的大きな安山岩の岩塊を含む。

II.18 冲積層

河流沿岸の平坦地を構成し, 主として礫・砂および粘土等から構成されている。

III. 応用地質

III.1 概説

本図幅地域はその大半が火成岩類によって構成されているために, これら火成岩類に伴なう浅熱水性鉱床の小規模なものが認められる。

鉱床は銅・鉛・亜鉛等で, 主として石英斑岩および流紋岩中に胚胎している。 調査当時はかって稼行した鉱山はその大半が休山中で, 採掘中の鉱山は僅かに1カ所のみであった。

またこの地域は那須火山帯に属する諸火山が分布し, それに伴なって温泉として著名なものがある。 すなわち 地域北東部の奥日光湯元温泉および 北西部の丸沼・白根の両温泉がそれで, これらの温泉は主として流紋岩中の裂罅から湧出する。

III.2 鉱床

銅鉱床(奥日光鉱山) : 西ノ湖の北方約 1 km の地点において, 花崗斑岩ないし石英斑岩中の含銅石英脈を採掘している。 稼行中の鉱脈は主として黄銅鉱および黄鉄鉱からなる。 鉱床および鉱山は小規模で, 野外調査実施当時は数名の従業員を数える程度であった。

本図幅地域には小規模な鉱床がほかにもみられるが, いずれも休山中で鉱床周辺は荒廃しているため, 詳細を明らかにすることはできない。

III.3 温泉

湯元温泉 : 奥日光湯元温泉は湯ノ湖の北にあり, 主として流紋岩と三ツ岳火山噴出物を覆う冲積層中から湧出し, 湯ノ湖の北端が湧出の中心と推定される。 湧出口での温度は 68℃ 内外で, 自噴湧出量は1カ所1分間に 10 l 程度である。 泉質は無色, 透明で, 微かな硫化水素臭および微かな苦味をもち, 微弱なアルカリ性反応を呈する。

現在中禅寺温泉と称して中禅寺にあるものは, 湯元温泉からの引湯によるものである。

丸沼温泉 : 丸沼湖畔にある丸沼温泉は, 図幅北端の丸沼の北岸から約 1 km 北方に湧出口をもち, こゝから引湯したものである。 湧出口は明らかでないが, 流紋岩中の裂罅と考えられる。

本泉は無色透明の弱食塩泉で, 温度は 40℃ 程度である。

白根温泉 : 群馬県利根郡片品村にあり, 本泉は石英斑岩中の裂罅から湧出している。 無色, 透明の弱食塩泉で, 温度は 55℃ 内外である。

文献

引用文献

1) 木村達明 :
岩室累層の地質学的研究(1)- 付岩室累層周辺の一般地質, 地質学雑誌,Vol. 58,No. 685, 1952
2) 斎藤譲 :
日光火山彙地質調査報文, 震災予防調査報告,No.27, 1899
3) 山崎正男 :
日光火山群の諸火山の形成順序について, 地質学雑誌,Vo1.51,No. 652, 1950

参考文献

1) 奈佐忠行 :
20 万分の1日光図幅および説明書, 地質調査所, 1889
2) 田中阿歌麿 :
日光湯ノ湖, 地学雑誌,Vol. 15,No. 175, 1903
3) S. Tsuboi and K. Sugi :
Geological Guide to the Nikkō District, Guide-Book of the Excursion, The 3rd Pan-Pacific Sci. Cong., Tōkyō, 1926
4) 吉村信吉 :
日光西ノ湖の暼見, 地理学評論,Vol. 5,No. 1, 1929
5) 山崎正男 :
日光大真名子熔岩の石英閃緑岩質ゼノリス, 地質学雑誌,Vol. 56,No. 656, 1950
6) R. Morimoto :
Geology of Imaichi District with Special Reference to the Earthquake of Dec. 26., 1949. (I)(Ⅱ)
7) M. Yamasaki :
On the Chemical Composition of Lavas of Nyoho-Akanagi Volcano, Nikkō. Journal of Faculty of Science, University of Tōkyō, Sec. 2, Vol. 9, p. 2, 1954

EXPLANATORY TEXT OF THE GEOLOGICAL MAP OF JAPAN Scale 1 : 50,000

NANTAIZAN

Niigata, No. 89

By KIYOO KAWATA (Written in 1954)


Abstract

GENERAL REMARKS

The greater part of the mapped area is occupied by the various kinds of igneous rocks, although the Paleozoic formation and the Quaternary deposits are locally developed. The igneous rocks can be divided into the older and younger groups.

The older group consists of plutonic and hypabyssal rocks. The plutonic rocks are granites, granodiorites, associated with monzonitic granodiorites, diorites, gabbros and peridotites, which are intruded into the Paleozoic formation.

The younger group consists of rhyolitic and andesitic lavas and their pyroclastics, which rest on the eroded surface of the older group. The age of this volcanism seems to range from Neogene to Recent.

GEOLOGY

Paleozoic

The Chichibu Paleozoic formation, which is the oldest in the mapped area, is only poorly developed near Matsuki in Ashio-machi, although in the southern neighbouring area this formation is extensively developed and is named as the Ashio formation in the Ashio sheet map.

The Paleozoic formation in this area chiefly comprises thick layers of clayslate interbedded with sandstone, chert and cherty slate. The strata have the general trend of NE - SW, and the dip to the southwest, but it is rather strongly disturbed by fissuring, fracturing and faulting.

Diorite - Gabbro

They occur at the northwestern corner of the area mapped as an intrusive body elongated nearly in the north-south direction. They are intruded by quartz porphyry and covered by rhyolitic lavas. This intrusive body is composed chiefly of hornblende gabbro and partly of diorite. They are dark greenish in color, medium-grained, and consist chiefly of bytownite, diopside and hornblende. Locally, they show distinct gneissose structures.

Peridotite

Peridotite occurs as many small lenticular intrusives in the diorite - gabbro. It is black-lustered, compact, fine-grained rock, and consists of olivine and a small amount of tremolite, talc, spinel and clino-pyroxene. Olivine is commonly altered to serpentine.

Granitic Rocks

The rocks can be divided, according to the rock features, into the following three groups, although their mutual relations are remained obscure.

(1) Granodiorite, developed near Matsuki in Ashio-machi, is intruded into the Chichibu Paleozoic formation, which is contact-metamorphosed to biotite-cordierite hornfels. It is commonly fine- to medium-grained, and consists chiefly of plagioclase, potash feldspar, quartz, biotite and hornblende. In some parts it gradually changes to dioritic rocks. Near the contact to the Paleozoic formation, dark-colored, fine-grained monzonitic grano-diorite can be observed in a place. This rock consists chiefly of potash feldspar, plagioclase, diopside, hypersthene and a small amount of quartz.

(2) Granite developed around Lake Chūzenji is pink-colored, coarse-grained rock, consisting chiefly of plagioclase, potash feldspar, quartz and biotite. It is abundantly accompanied with the aplitic rocks.

(3) Granite developed near the Hirataki river is extensively covered by rhyolitic and andesitic lavas. It is leucocratic, medium-grained rock, consisting chiefly of potash feldspar, plagioclase, quartz and biotite. Biotite is generally altered to chlorite. In the marginal part of this granite, fine-grained quartz diorite consisting of plagioclase, hornblende, biotite and quartz, is recognized. Such basic facies seem to have been formed by the contamination accompanied with granite emplacement.

Quartz porphyry - granite porphyry

These hypabyssal rocks are exposed as three separated bodies, each of which is composed of various kinds of rocks such as quartz porphyry, granite porphyry and rhyolite.

(1) The hypabyssal body south of Lake Chūzenji is composed of quartz porphyry, granite porphyry and partly rhyolitic rocks. The first two show either gradual changes or intrusive relations to one another. Quartz porphyry is compact, porphyritic, and composed chiefly of plagioclase, quartz, potash feldspar and biotite, with pale bluish-green felsitic groundmass. Granite porphyry, widely developed near Kinzanchaya, is greyish-white in color, porphyritic, and composed chiefly of potash feldspar, quartz, biotite and hornblende. Rhyolitic rocks, developed near Asegata-tōge, are greyish-black to greyish-white in color, porphyritic, and consist of plagioclase, quartz, biotite and abundant glass. They seem to correspond to the effusive facies of the intrusion of these hypabyssal rocks.

(2) Near Matsuki, quartz porphyry which consists of plagioclase, potash feldspar, quartz, biotite and a little hornblende crops out.

(3) Quartz porphyry developed in Katashina-mura consists of plagioclase, potash feldspar, quartz and biotite.

Locally this quartz porphyry gradually changes to granite porphyry.

Quartz porphyrite

It forms a small body intruding grano-diorite on the north of Senjiga-hara. It can be recognized, also, in quartz porphyry widely developed around Lake Chūzenji. It is dark bluish-green in color, compact, fine-grained and consists of plagioclase, hornblende, biotite and a small amount of quartz.

Rhyolitic Rocks

The various kinds of rhyolitic rocks are widely distributed, overlying quartz porphyries and granitic rocks. The age of the eruption of these rocks seems to be Neogene.

Rhyolite (R1) in the southwestern corner of the area mapped is composed of abundant greyish-white felsitic groundmass and poor phenocrysts. The xenoliths of granite and clayslate are abundantly contained in it. There is also the other kind of rhyolite (R4) characterized by the distinct flow structure in the northwestern part of the area mapped.

Rhyolite (R6) developed in the wide area from Maeshirane-yama to Yuzenga-dake is pale brown to greyish-white in color, porphyritic, consisting chiefly of plagioclase, quartz, alkali feldspar, biotite and glass. Locally in this lava, rhyolitic tuff and glassy rhyolite are included. The former is coarse-grained, loose, greyish-white to pale green in color. The latter consists of plagioclase, quartz, biotite, hornblende and a large amount of dark-colored glass. It gradually changes to rhyolite (R6).

Rhyolitic rocks in other parts of the area are always biotite rhyolite. At Ashio mine, copper ore-deposits were formed in such rocks.

Andesitic Rocks

Volcanic activities caused by andesitic magma are assumed to have been taken place in the Quaternary period. The andesitic rocks may be divided into the older and younger groups.

The older group constructs numerous volcanoes such as Suzuga-dake, Shirō-dake, Mitsuga-mine, Kesamaru-yama, Kōshin-yama and Sukai-yama. Such volcanoes are so strongly eroded and dissected that their original forms and structures are hardly recognizable. This group comprises chiefly pyroxene andesite, olivine-hypersthene andesite and andesitic agglomerate, the last being confined only to Kōshin-yama volcano. The volcanoe ssuch as Suzuga-dake, Shirō-dake and Mitsuga-mine are chiefly composed of quartz-bearing pyroxene andesite.

The younger group constructs the volcanoes such as Shirane-yama, Tarō-yama, Sannōbōshi-yama, Mitsu-dake and Nantai-zan. Commonly these volcanoes are of Tholoide type except Nantai-zan volcano of Konide type. The volcanoes of Tholoide are chiefly composed of homogeneous pyroxone dacite and olivine-pyroxene dacite. The latter occurring in the vicinity of Keizuka-yama and Kaneda-tōge bears hornblende crystals.

Nantai-zan is the latest volcano in this area and is composed of the various kinds of lava. Kegon lava is olivine-pyroxene andesite, showing magnificent columnar joints near the Kegon water fall. Ōnagi welded tuff consists of glassy welded tuff with abundant dark-colored glass. Granitic and dioritic rocks are often captured in it. Osawa pumice flow consists of pumiceous hornblende-pyroxene dacite, which is greyish to reddish-brown in color, loose and coarse-grained. Yudono-sawa pumiceous flow consists generally of hornblende-pyroxene dacite which is greyish-white in color, loose coarse-grained and porous. Pumices, developed on and around Nantai-zan, are ejected from Nantai-zan volcano. They are pale brown to greyish-white in color, and consist chiefly of plagioclase, hypersthene, augite and abundant glass.

Dyke Rocks

The rocks are classified into three groups, namely glassy rock, porphyrites and andesitic rocks.

Glassy dyke is intruded in grano-diorite near Matsuki in Ashio-machi. It is greyish-black to dark bluish-green in color, glassy-lustered and has been named pigeonite-bearing garnet-orthoferrosilite-fayalite dacite by H. Kuno.

Porphyrite dykes are intruded mostly into rhyolitic rocks. They are bluish-green in color, compact and consist of plagioclace, hornblende, augite, etc.

Pyroxene dacite dykes are intruded into rhyolitic rocks near Konsei-tōge and Suge-numa. They are compact and fine-grained rocks, consisting chiefly of plagioclase, hypersthene and augite.

Propylite dykes are intruded in both of the Paleozoic formation and the grano-diorite near Nitamoto-zawa and Matsuki in Ashio-machi. They are greenish-colored rocks and highly altered to the aggregate of albite, chlorite and carbonate.

Diluvium

Terrace deposits are widely developed in the east of the Katashina river in the western corner of the area. They consist of gravel, sand and clay.

Alluvium

The Alluvium comprises detritus deposits, swampy deposits, talus deposits and flood plain deposits. Senjōgahara is occupied by the swampy deposits which consist of sand, pumice and clay. Talus deposits has been formed by the landslip and they are composed of abundant volcanic gravels besides mud and sand.

ECONOMIC GEOLOGY

Mineral deposits

A few ore-deposits of copper, lead and zine of small scale have been found in quartz porphyries and rhyolites in the mapped area. Only Oku-nikkō mine was worked at the time of this survey. The veins of this mine contain chalcopyrite, pyrite and pyrrhotite, but they are of small scale.

Hot Springs

Famous hot springs are found in the district belonging tovthe volcanic areas. They are common salt springs and hydrogene sulphide springs, in general, which gush out along the cracks of rhyolites. Yumoto hot spring in Oku-Nikkō is the most famous in the area mapped.


昭和 30 年 10 月 25 日印刷
昭和 30 年 10 月 30 目発行
著作権所有 工業技術院 地質調査所