07077_1956

5万分の1地質図幅説明書

燧岳

(新潟 第 77 号)

通商産業技官 村山正郎
通商産業技官 河田清雄

地質調査所

昭和 31 年


目次

I. 地形
I.1 概説
I.2 燧岳火山
I.3 湿原・湖沼
II. 地質
II.1 基盤岩類
II.1.1 栗山層
II.1.2 檜枝岐層
II.1.3 栗山層と檜枝岐層との関係
II.1.4 戸倉層
II.1.5 斑粝岩
II.1.6 戸倉超塩基性~塩基性岩類
II.1.7 花崗岩類
II.1.8 脈岩類
II.2 火山岩類
II.2.1 流紋岩類
II.2.2 安山岩類
II.3 第四系
III. 応用地質
文献

Abstract

1 : 50,000 地質図幅説明書 (昭和 30 年稿)

燧岳

(新潟 第 77 号)


本図幅は昭和 26 年 8 月から昭和 27 年 10 月に亘り, 約 140 日間の野外調査によって作成された。 その間, 村山正郎はおもに図幅地域北半部および鬼怒川流域の調査に従事し, 河田清雄はおもに図幅地域南西部の片品川流域の調査に従事した。 また, 大沢穠は村山正郎とともに 図幅地域中北部の舟岐川上流流域および南東部の鬼怒川流域の調査に従事した。 各調査者の野外調査日数は, 村山正郎 70 日, 河田清雄 50 日, 大沢穠 20 日である。

I. 地形

I.1 概説

本図幅は関東地方の北西部に位置し, 帝釈山脈の南端部を含み, いわゆる足尾山地の北方にあたる。 図幅地域の中西部には景勝地として知られる尾瀬沼および尾瀬ヶ原の東縁部が含まれ, これらの地域一帯は奥日光国立公園として指定されている。 図幅地域を北東 - 南西方向によぎる帝釈山脈の主脈および支脈が, 福島県・栃木県・群馬県の3県境を成し, ほゞ中央部に位置する黒岩山においてこの3県境は会している。 また図幅地域の北西隅には只見川がほゞ北流し, 福島県・新潟県の県境にあたっている。 図幅地域内は地勢が険しいために, 交通の便が悪く, 僅かに檜枝岐川・片品川・鬼怒川に沿う道路と, 図幅地域南部から西部に亘る奥日光国立公園を主とする地帯に, 若干の山道が開かれている程度である。

図幅地域の北東隅から南西方向へ向かって 田代山(1,926.3 m)・ 帝釈山(2,059.6 m)・ 黒岩山(2,162.8 m)・ 鬼怒沼山(2,140.8 m)・ 四郎岳(2,156.1 m)を連ねる帝釈山脈南端部の主脈が走り, 黒岩山からはさらに西北西方向へ 黒岩山・ 赤安山(2,050.7 m)・ 檜高山(1,932.2 m)・ 燧岳(2,346.0 m)からなる山稜が延び, そこからさらに南方へ 皿伏山(1,916.8 m)・ 荷鞍山(2,024.0 m)等からなる山嶺が走っている。 この帝釈山脈の主脈およびその他の山嶺によって, 図幅地域内の水系は裏日本の阿賀野川水系と, 表日本の利根川水系とに2分される。 すなわち, 図幅地域内はこの2大水系の水源地域の一部に相当し, 裏日本の水系に属するものとしては, 山脈の北側から阿賀野川の支流只見川およびその支流檜枝岐川・西根川が発し, 表日本の水系に属するものとしては, 山脈の南側から利根川の支流片品川および鬼怒川が発している。

地域内の山系の特徴として挙げられるのは, 最新期の形成にかゝる燧岳を除いては, すべての山嶺が 大体 1,900 m から 2,100 m 前後に亘る 比較的定高性のある高度分布を示していることと, また山頂部に平坦面がしばしば存在することとである。 最高の山頂平坦面に相当する山嶺としては, 田代山・長須ヶ玉山・高石山 − 黒岩山 − 鬼怒沼山山稜・四郎岳等が挙げられ, また長須ヶ玉山西部・鬼怒沼南部は高度の一段低い平坦面に相当する。 このような山系の定高性と平坦面の存在は, 図幅地域を含むこの地方一帯に普遍的な傾向で, 隆起準平原の存在したことを示すものとも考えられている 1) 。 しかし図幅地域内のみにては, この点は明らかではない。

地質構造的にみて, 田代山 − 四郎岳を連ねる 北東 − 南西方向の帝釈山脈の火成岩類で構成されている主脈は, この火成岩が生成する前には, この方向に1つの構造線が存在したことを推定させるが(II.1.3 参照), 地形的にこの北東 − 南西方向を比較的顕著に表わしているものとしては, 檜枝岐川本流(北隣の檜枝岐図幅内も含む)と その支流硫黄沢の示す方向とが挙げられる。 この水系の示す直線的な北東 − 南西の方向性は, 上記の推定される構造線の存在を支持する1事実と考えられる。

地域内の諸火山のうち, 燧岳・皿伏山・荷鞍山の3火山はほゞ原形に近い形態を保っているが, これ以外の諸火山は侵蝕によってほとんどその原形態を失っており, その噴出の時期が, 前記3火山に較べ比較的古いものであることがわかる。 燧岳・皿伏山・荷鞍山の3火山の噴出時期は, 第四紀更新世に属するものであることは確かであるから, 他の諸火山は 第三紀末あるいは第四紀初め頃の噴出にかゝるものであろうと考えられる。

皿伏山・荷鞍山は広い面積に亘り比較的なだらかな山形を形成しており, また図幅地域内にその一部が見られる菖蒲平の熔岩も, 皿伏山・荷鞍山と同じような山形を形成している。 一方これら3火山を構成する安山岩熔岩は, それぞれの岩相が単調で, かつ3者ともきわめて類似した岩相を有している。 これらのことから, この3火山の形態は楯状火山に属するもので, かつほゞ同時期の噴出にかゝるものであろうと思われる。

燧岳火山は最も新期の噴出による成層火山で, 火山体の原形がほゞ保たれている。

地域内には, 火山の活動に関連して大小それぞれの規模の湿原・湖沼が形成されている。 これらについては項を改めて記述する。

I.2 燧岳火山

燧岳は図幅地域内で最も新しい時期まで活動を続け, 現在は活動を休止している火山である。 南部に分布する皿伏山・荷鞍山熔岩との直接の関係を観察できる地点はないが, 両火山の熔岩流の分布状態および火山形態の保存程度から判断して, 燧岳火山の活動は皿伏山火山の活動よりも後期まで継続したものと考えられる。 この火山の基盤としては, 南部では皿伏山・荷鞍山熔岩と, この熔岩の下位に分布する景鶴山熔岩とがあり, 北部および東部では, 古生層あるいはジュラ紀下部層に相当する檜枝岐層(II.1.3 参照) およびこれを貫ぬく花崗岩類, さらにこの花崗岩類を覆う旧期安山岩熔岩流に相当する実川熔岩が挙げられる。 これらの基盤岩類のうちで, 燧岳熔岩に最も広く覆われていると思われるものは花崗岩類である。 燧岳北部にある沼沢地三池が, 只見川の支流深沢と檜枝岐川の支流七入沢との分岐点に当っていて, その高度が約 1,550 m であり, 一方 南部の尾瀬沼の北西端にあたる沼尻附近に花崗岩礫が認められるとのことであり 2) , その高度は約 1,650 m である。 これらの事実と燧岳火山の噴出物の分布状態(II.2.2 参照)からみて, 燧岳の噴出の中心は, この両地点を結ぶ花崗岩からなる稜線に近い地点に位置したものと推定される。

燧岳は多量の熔岩流と比較的少量の火山砕屑物とからなる成層火山で, 南方の楯状火山である皿伏山・荷鞍山あるいは菖蒲平とは, きわめて対照的な形態を呈している(地質断面図参照)。 さらに, 燧岳火山自体については, その北半部と南半部との形態の相違が特徴的に認められる。 すなわち, 北方からその北半部を望見すると, 山腹の傾斜がゆるく裾野が広く拡がった円錐形を呈しているが, 南方から見るとその南半部は山腹の傾斜が急で, 北半部のような広い裾野が発達していない。 このような形態の差異は侵蝕作用の結果ではあるが, 基盤地形と熔岩流の噴出の時期, 様式および岩質の間の相互関係とによるものであろう。 すなわち前述した花崗岩の稜線近くに始まった活動の初期には, 熔岩流はおもに西方の只見川方面に傾斜する斜面上を流下して, 現在の北西麓を形成し, 活動の晩期には, 現在の山頂部に見られる熔岩で代表される活動があり, おもに北東麓および南半部の山体を形成したものと考えられる。

燧岳の山頂部には数個の独立峯が, ほゞ直径 800 m 前後の円形の輪廓を示して配列しており, これらは外輪山に相当するものであろうと思われる。 これらの外輪山のうち, 南端部に位置する高度 2,240 m 峯の頂上部には, 小火口状の凹地が残されており, これは比較的新期の活動地点を示すものかも知れない。 外輪山で囲まれた山頂部の中央部よりやゝ東寄りには, 中央火口丘らしい小丘が認められる。 また外輪山壁の北側には, 只見川の支流シボ沢の方向へ向け, 爆裂火口状の裂開部が開口している。

I.3 湿原・湖沼

図幅地域内には諸処に火山活動に由来する大小の湿原・湖沼が形成されている。 これらは成因的に, ① 熔岩流表面の平坦面上に形成されたものと, ② 熔岩流による河水の堰止により形成されたもの, との2つに大別することができる。 ① に属するものとしては, 地域の北東部に位置する田代山の山頂平坦部, 中北部の長須ヶ玉山の南西域, および中南部の鬼怒沼山南部の鬼怒沼が代表的なものであり, また燧岳北東麓部の三池・大池もこれに類するものである。 なお中央部の黒岩山や赤安山の北部にも平坦面があって, 小規模の沼沢地ができている。 これらの湿原は, 燧岳北東麓のものを除き, すべて高度約 1,600 m から 2,000 m の間に存在し, 非常に平坦な熔岩流の表面上にできているわけであるが, この平坦面の形成は, 熔岩流噴出以前の基盤地形が準平原化されていたことに由来するものか, 単に熔岩流が舞台状に流出してできた平坦面であるか, あるいは熔岩流の面が侵蝕されて一度平坦面をつくったことの証か, は明らかではない。

② に属するものは, 尾瀬ヶ原・尾瀬沼およびその周辺地域の湿原, 燧岳東部の硫黄沢上流部の沼沢地がこれに相当する。

尾瀬ヶ原は, 燧岳火山の活動によって只見川が堰止められて, 現在の尾瀬ヶ原地域をみたす堰止湖が形成され, 続いて湖の北端部より只見川本流に連なる流水の開析作用が進み, 一方湖は 燧岳火山の噴出物および 四囲の山地から流出される土石の堆積によって浅くなり, 現在の尾瀬ヶ原湿原を形成するに至ったものである。 図幅地域内には尾瀬ヶ原の東縁部が僅かに含まれているのみである。 尾瀬ヶ原については, 関係各部門の綜合学術調査が 昭和 25 年から同 27 年(1950~1952)にわたり行われ, その調査結果が報告されている 3)

尾瀬沼および燧岳東部の沼沢地は, いずれも燧岳火山の活動による熔岩流が河水を堰止めたために形成されたものである。

II. 地質

II.1 基盤岩類

図幅地域内で第三紀以後の火山岩類に覆われる諸岩類を基盤岩類として一括すれば, これに属するものは, 図幅地域東部の鬼怒川流域および 図幅地域北部の檜枝岐川流域に分布する堆積岩類, これらの堆積岩類を貫ぬき 図幅地域北半部および鬼怒川流域に分布する花崗岩類, ならびに各種岩脈類, さらに図幅南西隅地域に分布する塩基性岩類の3者に大別することができる。

堆積岩類のうち, 鬼怒川流域に分布するものと, 檜枝岐川流域に分布するものとの中間地域には, 花崗岩類・火山岩類が分布しており, この中間地帯を境として, 両者の岩相は非常に相違する。 したがって, こゝでは鬼怒川流域のものを栗山層, 檜枝岐川流域のものを檜枝岐層と名づけて両者を区別した。 また地域南西隅の塩基性岩類は戸倉超塩基性~塩基性岩類として一括する。 なお戸倉超塩基性~塩基性岩類分布地域には, 本岩類に貫ぬかれる堆積岩類がきわめて小区域に分布している。 これを戸倉層と名づける。

花崗岩類は地域の北半部に比較的小岩体として2, 3分布する中粒角閃黒雲母花崗岩, これをとりかこむような形で分布する粗粒黒雲母花崗岩, および鬼怒川地域の中粒斑状黒雲母花崗岩に大別される。 これをそれぞれ檜枝岐川花崗岩・只見川花崗岩・鬼怒川花崗岩と名づける。

基盤岩類を貫ぬく各種岩脈類としては, 栗山層を貴ぬく輝綠岩・閃綠玢岩・リソイダイト・石英斑岩の岩脈や, 檜枝岐層を貫ぬく斑粝岩・花崗斑岩・文象斑岩・斜長斑岩の岩脈がある。

II.1.1 栗山層

本層は均質の黒色粘板岩からなり, チャートおよび石灰岩の薄層を挾有している。 砂岩は認められない。

粘板岩は所によりきわめて軽微なホルンフェルス化作用を受けて, 帯紫黒色を呈する場合があるが, その分布は一定していない。 しかし 帝釈山 - 台倉高山を構成する只見川花崗岩に接する幅数 10 m の部分においては, 接触変成作用を受けて菫青石ホルンフェルスを生じており, また石灰岩はスカルンに変じている場合もある。 なお鬼怒川花崗岩に接する部分では, このような現象は見られないようである。 無砂谷中流部では, 粘板岩は所により珪質な部分, あるいは千枚岩質の性質を示す部分もある。

チャートおよび石灰岩は 0.5~5 m 前後の厚さを有するものが多く, 稀に 10 m 以上のものがある。 また石灰岩は 0.5 m 前後の厚さの板状, レンズ状をなしている場合が多く, 暗灰色の不純石灰岩である。

チャートあるいは石灰岩の分布の方向から知られる一般走向は N 30~50°E, 傾斜は北西あるいは南東へ 80°前後で, 全体的にみると南東へ傾斜している場合の方が多い。 この NE - SW の方向性は, 本図幅地域の東方あるいは南方地域に分布する古生層の一般走向に一致している。 断層は走向方向に発達するものが顕著なようである。

本層中からは化石が全く得られなかったために, その地質時代は不明であるが, 本地域の東方に当る 栃木県栗山村湯西川附近(7 万 5 千分の1塩原図幅)に 分布する石灰岩層から化石が発見され, その附近の堆積岩類の時代は二畳紀の上部に相当するであろうと報告されている 4) 。 この湯西川附近の堆積岩類と本層とは, 岩相・構造・分布等から考えて同一の層であるものと思われるので 5) , 本層の時代は二畳紀上部に相当するものと考えてよいであろう。

本層は数地点において 輝綠岩・閃綠玢岩および新期のリソイダイト岩脈に貫ぬかれている。

II.1.2 檜枝岐層

本層は均質の黒色粘板岩からなり, まれにやゝ粒度の粗い部分が認められる。 チャートおよび石灰岩は全く存在しないようである。 全域にわたり軽微なホルンフェルス化作用を受けて, 外観は帯紫黒色ないし帯紫暗灰色を呈している。 また しばしば珪質の部分が細かい縞状あるいはレンズ状に発達している場合がある。 このような現象は分布地域の西半部に多いようである。

一般走向は, 岩質が均質であるために明瞭ではないが, 大体 N 30~50°E を示し, 傾斜はほとんど垂直であるが, 時に南東へやゝゆるく 50°前後を示す場合が認められる。 図幅北辺に沿う檜枝岐図幅内の檜枝岐川支沢では, 走向方向あるいは E - W 方向の断層が発達していることが観察されたが, 図幅地域内ではこの延長を明らかにし得なかったために地質図には記入していない。

本層の分布地域には, その一般走向方向にほゞ一致するような方向に長い斑粝岩質の岩脈が認められ, このほかに 本層中に貫入している花崗岩類に由来するものと考えられる 花崗斑岩・文象斑岩等の岩脈が存在する。

II.1.3 栗山層と檜枝岐層との関係

前記の2項で記述したように, 栗山層と檜枝岐層との間には, 岩相上の明らかな相違が認められる一方, 地質構造上には一部に共通性が存在する。 すなわち, 両層ともに主体をなすものは黒色粘板岩であるが, 岩相上の相違としては, 栗山層に普通に見られるチャートおよび石灰岩が, 檜枝岐層には全く認められないこと, また 檜枝岐層に特徴的である斑粝岩質の岩脈が栗山層には存在しないこと, 等が挙げられる。 一方, 地質構造上の共通性としては, その一般走向および傾斜がほゞ一致していることがある。

両層の地質時代については, 栗山層はその東方延長部における化石の産出によって, 二畳紀上部層に相当するであろうと考えられるが, 栗山層に近接に分布しているが, 岩相を非常に異にする檜枝岐層から化石を発見し得ないために, 両者が同一層中の異なる層準に相当するものか, あるいは堆積の時代を全く異にする個々に独立した堆積層であるのか, いまのところ確定することはできない。

しかし檜枝岐層は栗山層と岩相上明瞭な相違を示していることから推して, その地質時代については, 次のような可能性も考えられる。 すなわち, 黒色粘板岩からなり, チャート・石灰岩を欠くこと, および斑粝岩質岩石の貫入の著しいこと等から, 本層は当図幅の南西に位置する沼田図幅地内, および同図幅の北方地域に分布する 下部ジュラ紀の岩室累層に属するという可能性である 6), 7) 。 なお図幅南西隅地域に分布する時代不明の戸倉層, およびこれを貫ぬく戸倉超塩基性~塩基性岩類の時代も, 前記の岩室累層ならびに これを貫ぬく超塩基性~塩基性岩類の時代と同一であろうとも考えられる。 しかし, 檜枝岐層あるいは戸倉附近の諸岩類と岩室累層との関連性については, 未だ確定的なことはわかっていない。

栗山層と檜枝岐層および戸倉超塩基性~塩基性岩類は, 図幅地域北東隅から南西部にかけて分布する 火山岩類および花崗岩類によって分離されている。 この火山岩類・深成岩の線状配列および帯状分布は, これらの諸岩類の貫入以前, すでにこの線の方向に構造線が存在したことを推測させるものであり, このことは栗山層と檜枝岐層および戸倉地域の諸岩類が, 連続した岩層でなかったことを裏付ける1事実であろう。

II.1.4 戸倉層

本層はおもに黒色粘板岩からなり, 暗綠色を呈する細粒砂岩の薄層を挾有している。 本層は戸倉超塩基性~塩基性岩類によって分断された形で, 数地点に分離して分布しているが, 各地点の岩相は大体同一の性質を示している。 戸倉附近では, 本層が戸倉超塩基性~塩基性岩類によって貫ぬかれていることがわかり, また片品川と尾名沢との合流点附近に分布する本層も, 貫入の接触部は見られないが, 近接する変質した輝岩に貫ぬかれているものと考えられる。

暗綠色細粒砂岩は, 肉眼的にやゝ片理を認めることができ, 鏡下では 粘板岩質の基質中に稜角の明瞭な破片状の石英・長石片が その長径を一定方向に向けて並び, 葉片状の黒色不透明部が片理に沿って発達しているのが認められる。 全体としてはやゝ凝灰質の性質を示している。

走向・傾斜は所により変化があるが, 大体 N 30~60°E の走向と, 約 60°NW の傾斜を示している。

本層の時代を確定する事実はないが, チャート・石灰岩を欠く点, 超塩基性~塩基性岩類の貫入を受けている点等から, 前項で記述した檜枝岐層のそれと同じく, 近接した南西方の地域に分布する岩室累層との同時性が考えられる。

II.1.5 斑粝岩

本岩は檜枝岐層中に, その一般走向に平行した岩脈として, あるいは岩脈群として分布する。 檜枝岐川の西部および東部に各一帯ずつ貫入帯があり, いずれも角閃斑粝岩に属し, 粒度は細粒から粗粒にわたる。 鏡下では基性斜長石と角閃石が認められる。 基性斜長石にはソーシュライト化作用を受けたものがあるほか, 多少とも2次的変質を受けて濁っている。 角閃石は無色かあるいは淡褐色で, 無色のものの周縁部に淡褐色の部分が発達している場合があり, また繊維状あるいは小形の角閃石の集合体に変じているものがある。 檜枝岐川の西方に分布するものは圧砕作用を受けており, 角閃石は細かく破砕されている。

本岩の貫入の時代については, 檜枝岐層を貫ぬき, 第三紀末あるいは第四紀に属する安山岩類に覆われること以外には, それを決定できる根拠はない。

II.1.6 戸倉超塩基性~塩基性岩類

本岩類は図幅地域南西部の戸倉附近を中心に片品川に沿って露出し, 戸倉層を貫ぬき, 新期の流紋岩・安山岩により覆われている。 おもに細粒~中粒閃綠岩および細粒~粗粒斑粝岩等の塩基性岩からなる。 戸倉附近の県道やこの附近の片品川の沿岸および尾名沢においては, 暗綠色を呈する細粒, 緻密の玄武岩質ないし粗粒玄武岩質岩石が, また片品川と尾名沢との合流点附近には変質を受けた輝岩が認められる。

本岩類の南方への延長部は, 南隣男体山図幅地内にほゞ南北方向にのびた形で分布しており, 岩相も本地域のそれと同様であるが, しばしば細長く伸びた小貫入岩体として, 橄欖石が存在する点が特徴として挙げられる 8)

野外における観察では, 閃綠岩と斑粝岩は互に錯雑して分布しており, 両者は同一岩体内で相互に岩相が移化するものと考えられるが, 玄武岩質岩石と細粒の斑粝岩との関係は明らかでない。 また局部的に圧砕作用を受けて, ミロナイト状岩石を生じている場合が認められる。 例えば, 戸倉沢と片品川との合流点附近から, 約 1 km 上流の片品川沿いに露出する中粒閃綠岩は圧砕されており, かつ網状に発達した石英細脈に貫ぬかれている。 鏡下においても圧砕作用の影響を観察することができる。 なお戸倉附近では, 幅 2 m 内外の灰白色, 細粒の石英斑岩ないし珪長岩質岩脈によって, しばしば貫ぬかれている。

戸倉南方および尾名沢に露出する暗綠色, 細粒の玄武岩質ないし粗粒玄武岩質岩石は, 鏡下で見ると, 大部分が変質を受けており, 粗粒玄武岩組織を呈する斜長石および角閃石からなり, 少量の石英を含んでいる。 斜長石は曹灰長石に属し, 自形, 柱状または拍子木状を呈し, 暗色に汚濁している。 角閃石は綠色で自形, 柱状を呈するが, 多くは綠泥石に変質している。 また角閃石には, 淡綠色を帯び針状を呈する陽起石質角閃石がしばしば認められる。 石英は他形, 粒状で, 綠簾石等とともに脈状をなすものもあり, また小斑晶としても少量含まれる。 これらの各鉱物間を塡める基質は, 微細な黒色不透明の鉄鉱を多量に含んでいる。

戸倉の北方約 1 km に分布する中粒斑粝岩質岩石は, 鏡下で斜長石・異剝石質輝石および少量の角閃石からなり, 角閃石異剝石斑粝岩である。 斜長石は曹灰長石に属し, 他形を呈し, ソーシュル石化している。 輝石は淡綠色を帯び, 明らかな裂開を有する異剝石に属するものと, 裂開をもたない透輝石質輝石とがあるが, 前者が量的に非常に多い。 角閃石は褐色角閃石で量は少なく, 輝石の間を塡めるような形をとっている。 また角閃石には針状を呈するものもある。 このように戸倉地域の斑粝岩は, 檜枝岐層を貫ぬく角閃斑粝岩とは, 岩相上やゝ趣きを異にしている。

戸倉沢と片品川との合流点から約 1 km 上流に分布する 中粒閃綠岩質岩石を鏡下で見ると, 斜長石・角閃石・普通輝石および少量の石英からなり, 閃綠岩ないし石英閃綠岩に属する。 一般に変質が著しい。 斜長石は特に2次的変質が著しく, その成分の判定は困難である。 ほとんど暗色に汚濁しており, 炭酸塩鉱物を多量に生じている。 角閃石は淡綠色で他形を呈し, しばしば針状ないし繊維状体の集合を形成していることがあり, また綠泥石に変質している場合が多い。 普通輝石は他形を示し, 少量含まれる程度である。

超塩基性岩としては, 片品川と尾名沢との合流点に見られる輝岩が挙げられる。 変質を受けていて, 鏡下では輝石はすべて絹布石に変じている。 絹布石には, もとの異剝石に特徴的な裂開を残しているものが時に認められる。 絹布石のほかに, 滑石・板温石・炭酸塩鉱物および鉄鉱がみられる。

本岩類の貫入時期については, 檜枝岐層を貫ぬく斑粝岩の場合と同様に, 本岩類によって貫ぬかれる戸倉層の時代が不明のために, その貫入時期を決定することはできない。 しかし, 本地域内および男体山図幅地内をも含めた本岩類は, 南方地域に分布する岩室累層を貫ぬく超塩基性~塩基性岩類にきわめて類似しており, 両地域におけるこれら火成岩類の活動の間に密接な関連性があることが推定される。

II.1.7 花崗岩類

地域内の花崗岩類は, 岩質および分布区域によって 檜枝岐川花崗岩(角閃黒雲母花崗岩)・ 只見川花崗岩(黒雲母花崗岩)・ 鬼怒川花崗岩(斑状黒雲母花崗岩)の3者に区分される。 これらのうちで相互の直接の関係が野外で観察されるのは, 檜枝岐川花崗岩と只見川花崗岩との関係で, 前者は後者との接触部において後者の影響を受けている部分があり, 迸入時期に新旧の別が考えられる。 これは舟岐川上流でよく観察できる。 檜枝岐川花崗岩は只見川花崗岩にとりかこまれたような地域内に, 比較的小さな迸入岩体として分布しており, 北に連なる檜枝岐図幅地内でも, 檜枝岐川に沿い2, 3ヵ所に迸入しているが, 大きな岩体は形成していない。 只見川花崗岩は, 本地域を含む北西の地域に最も広い面積を占めて分布している。 一方鬼怒川花崗岩は孤立した岩体として迸入しているので, 前2者との関係は不明であるが, 岩質から考えて, 只見川花崗岩と同じく新期に属するものと考えられる。 なおその迸入岩体の形が NW - SE に延びた形をしており, 岩体の北西方向への延長上の旧期安山岩の分布地域内に, 硫化作用による変質帯が点々と一直線上に並び, この方向の構造線の存在を推測せしめる。

これら花崗岩類では, 檜枝岐川花崗岩が檜枝岐層を, 鬼怒川花崗岩が栗山層を, また只見川花崗岩が両層を貫ぬき, かついずれも新第三紀中期以後の火山岩類に覆われている。 したがって, それらの迸入時期は大体上部二畳紀以後新第三紀初期以前という以外に, 確実な証拠はない。 しかし 檜枝岐層は前に触れたように下部ジュラ紀に属する可能性があるから, もしそうであるとすれば, 花崗岩類の迸入時期の範囲は狭くなり, ジュラ紀以後新第三紀初期以前となる可能性があるわけである。

檜枝岐川花崗岩(角閃黒雲母花崗岩)

本岩は中粒で斜長石がやゝ青味を帯びているために, 全体として帯青灰色を呈する。 鏡下では 主成分鉱物として斜長石・カリ長石・石英・角閃石・黒雲母, 副成分鉱物として褐簾石・ジルコン・燐灰石・鉄鉱からなり, 斜長石が軽微な絹雲母化作用を受けているほかは新鮮である。 角閃石と黒雲母は大体等量で, 角閃石は綠色角閃石で多色性が著しい。 黒雲母は明るい茶褐色を呈する。 石英は少量であるが, 多くのものが波状消光あるいは部分消光を示す。 ミルメカイト構造は認められない。

このような岩体の大部分において示される岩相は, 只見川花崗岩との接触部においてはその趣を変え, 接触部に沿い幅 10~20 m に亘って特殊な岩相を呈する。 これは舟岐川中流部においてよく観察される。 肉眼では, 岩石全体の粒度が主体に較べてやゝ細粒となり, 有色鉱物, 特に黒雲母は小形になるとともにその量を増して, 全体として暗灰色を呈してくる。 また長径 5 mm 程度の半自形の斜長石が, 斑状に散点するのが特徴である。

鏡下における特徴は次のようなものである。 斜長石は絹雲母化作用が著しく進み, ほとんど双晶片を識別できない程度になるが, このような斜長石は新鮮な斜長石の薄い外套に常に覆われている。 周辺に発達している斜長石には正規の累帯構造が著しくみられ, この累帯構造は, 内部に包まれた汚れた斜長石の累帯構造とは不連続である。 両斜長石とも円味を帯びた輪廓を有している。 そのほか, 周辺に発達する斜長石と同じ新鮮さをもち, 形は円味を帯び, かつ累帯構造の著しい斜長石が, 単独の結晶としてしばしば発達している。 カリ長石は主体におけるよりもその量が減じ, 斜長石とは異なり, 新生の外套は発達しないが汚濁の程度が著しくなる。 角閃石は2次的の変質作用により他形に近くなり, 綠簾石・綠泥石および黒雲母に変じている。 変質をまぬかれた部分の角閃石も, 主体のものより濃い綠色を呈し, 時に青綠色を呈している。 黒雲母は大形のものは綠簾石・綠泥石に変じているが, このほかに小形の新鮮なものが多数認められ, いずれも主体のものに較べて色が濃くなり暗褐色を呈し, 常に鉄鉱を伴なっている。 これらの各鉱物の間隙を小形の斜長石・石英が, 全体としてモザイク構造を呈して塡めるような形に存在している。 この斜長石は汚れた内核を有するものである。 石英は主体に較べて増加している。

このような特徴を有する岩相は, 只見川花崗岩との接触部にのみ認められるもので, 檜枝岐川花崗岩の単なる縁辺相ではなく, 只見川花崗岩によって接触変成を受けているものと考えられる。

只見川花崗岩(黒雲母花崗岩)

本岩は非常に粗粒な灰白色の花崗岩で, やゝ大形の淡紅色のカリ長石が散点している。 図幅地域内では, 北東隅の西根川地域内に時に半花崗岩質の部分がある程度で, 岩相の変化はほとんどないが, この花崗岩に連続していると思われる只見川中流流域では, 種々岩相の変化が見られるようである 8)

鏡下では, 斜長石・カリ長石・石英・黒雲母が主成分鉱物で, きわめて少量の綠色角閃石を含む。 これらのほかにジルコン・燐灰石・褐簾石が認められる。 斜長石が軽微な絹雲母化作用を受けているほかは, すべて比較的新鮮である。 肉眼でやゝ大形に見えるカリ長石は微斜長石である。 他のカリ長石のなかには, 微パーサイト構造を示すものがある。 ミルメカイト構造は見られない。 石英は圧砕作用を受けていて, 波状消光あるいは部分消光を呈する。 黒雲母は比較的明るい茶褐色である。

鬼怒川花崗岩(斑状黒雲母花崗岩)

前記の只見川花崗岩に似た外観を呈しているが, 粒度が小さい。 中粒~粗粒で有色鉱物が小さく, かつ比較的多量に散在しているので, やゝ黒味がかった色調を示す。 白色時にやゝ淡紅色を呈するカリ長石が斑状に散点している。 鏡下での只見川花崗岩との相違を記せば, 造岩鉱物の種類は只見川花崗岩と同じであるが, 綠色角閃石が比較的多く, また黒雲母・角閃石ともに形が小さい。 また全体としてカリ長石が少なく, 斑状カリ長石は間隙を充塡している傾向が強く認められる。 石英の圧砕の程度は弱い。 黒雲母は只見川花崗岩のものに較べ綠泥石化が著しい。

II.1.8 脈岩類

輝綠岩 : 本岩は図幅地域東半部の栗山層分布地域中に, 岩脈あるいは岩床状態で見られる。 これらの輝綠岩には, 有色鉱物として普通輝石を主とするものと, 角閃石を主とするものとがある。

普通輝石を主とする輝綠岩は, 馬坂沢・無砂谷および鬼怒川南支流の門森沢等の処処に分布している。 暗綠色を呈する緻密, 細粒の岩石で, 肉眼では構成鉱物の判定はできない。 鏡下では, オフイティック組織を示す短冊状の基性斜長石と普通輝石とからなる。 斜長石にはしばしば大きく発達し斑状を呈するものがある。 普通輝石は無色である。 また, 門森沢の輝綠岩は破砕作用を受けており, 普通輝石は著しい波状消光を示す。

角閃石を主とする角閃輝綠岩は, 幅 20~30 m の岩脈として, 無砂谷の中上流部の川岸にのみ好露出として認められる。 淡青綠色を呈し, 細粒~中粒の基質中に長柱状の角閃石が発達しているのが, 肉眼で認められる。 鏡下では, オフイティック組織を示す基性斜長石・角閃石・普通輝石・磁鉄鉱からなる。 角閃石と普通輝石の量比は大体 2:1 程度である。 角閃石は赤褐色角閃石で, 周辺部が綠色を呈しているものが多い。 新鮮で, 時に長径は 5 mm に達する。 普通輝石はすべて多少とも2次的変質作用を受け, 炭酸塩化物に変じており, 変質をまぬかれている部分は無色である。 基性斜長石は軽微な絹雲母化作用を受けているほか, ゾイサイト・綠簾石を生じているものがある。

閃綠玢岩 : 本岩は栗山層中に 10 m 前後の幅の岩脈として見られる灰綠色, 中粒の岩石で, 肉眼で 1 mm 前後の斑晶状の斜長石が認められる。 鏡下では斜長石・角閃石・普通輝石の斑晶状の結晶と, 短冊状斜長石および少量の石英からなる基質とが認められる。 このほか綠泥石・ジルコン・燐灰石・鉄鉱がある。 斑晶状角閃石と斑晶状普通輝石は斑晶状斜長石に較べ非常に少量で, ともに炭酸塩化物・綠泥石に交代されている。 斑晶状斜長石には普通累帯構造が見られ, 軽微なカオリン化作用を受けている。

この岩石は無砂谷でよく観察されるが, 帝釈山 - 台倉高山を構成する花崗岩に近接した地域のものは, 2次的変質作用が進む一方, 角閃石・普通輝石はなくなり, また形態の不鮮明な微細な黒雲母の集合体が散在するようになる。

花崗斑岩 : 本岩は只見川花崗岩・檜枝岐川花崗岩にかこまれた形の檜枝岐川地域に点在する。 肉眼で斑状構造の明らかなやゝ青味を帯びた灰色の岩石である。 鏡下では, 斜長石・カリ長石・黒雲母・角閃石の斑状結晶と, 石英・斜長石・黒雲母からなる基質とが認められる。 これらのほかに燐灰石・ジルコンがある。 斑状長石類のうちカリ長石は少量で 斜長石・カリ長石とも絹雲母化作用を著しく受けている。 斑状角閃石は綠色角閃石であるが, ほとんどすべてのものが ゾイサイト・綠泥石・黒雲母・チタン石の集合体に変じている。 斑状黒雲母はやゝ黒味がかった茶褐色で, 緑泥石・緑簾石に変じている場合も多い。 このような岩相と分布状態とから考えて, この岩石は檜枝岐川花崗岩の一部が岩株状をなしているものと考えられる。

文象斑岩 : 本岩は前記の黒雲母花崗斑岩の分布する檜枝岐川地域に見られる。 帯青白色を呈し緻密である。 鏡下では 斑状をなす斜長石・カリ長石・石英・黒雲母と, 文象構造をなすカリ長石・石英および少量の斜長石とからなる。 このほかに燐灰石がしばしば認められる。 斑状長石類は長径 2 mm を越えず, また双晶片を判別できない程度に絹雲母化作用を著しく受けている。 斑状石英は少量で, 自形を呈さず卵形を呈する。 斑状黒雲母はすべて緑泥石に変じている。

石英斑岩 : 本岩は図幅地域南東隅の鬼怒川支流熊野沢に見られる。 石英・長石の斑晶が明らかに認められる青灰色の岩石で, 長石はしばしば 1 cm×3 cm 大に発達している。 鏡下では, 微花崗岩質構造を呈する珪長質の石基中に, 斑晶として石英・カリ長石・斜長石・黒雲母が散在する。 斑晶の石英は融蝕形を示し, 長石類はいずれも絹雲母化作用・炭酸塩化作用を受けており, また黒雲母はすべて緑泥石に変じている。

斜長斑岩 : 本岩は檜枝岐川地域の舟岐川支流呼出沢に見られる。 灰色の岩石で黒雲母の斑晶が散在している。 鏡下では, 斑晶として斜長石・黒雲母・角閃石が認められ, 石基は短冊状斜長石・黒雲母・鉄鉱と, これらの間隙を塡める珪長質の微粒とからなる。 斑晶のうち角閃石はきわめて少量で, 緑色を呈し新鮮である。 斑晶黒雲母は明るい帯黄褐色で, きわめて新鮮である。 斑晶斜長石は量が最も多く, 累帯構造が著しく, また包有物を多く含んでいる。

リソイダイト : 本岩は栗山層を貫ぬく小岩派として2, 3ヶ所に見られる。 これらの流紋岩岩脈は, 図幅地域内に広く分布する 新第三紀の流紋岩熔岩の活動に関連するものであろうと考えられる。 なお図幅地域南西部の戸倉超塩基性~塩基性岩類を貫ぬく流紋岩岩脈も, これと同様のものであろう。

この岩石は淡緑色を帯びた灰白色を呈し, 肉眼で細かい縞状の流理構造の見える堅硬, 緻密な岩石である。 鏡下では, 非常に細粒のリソイダイト質の石基と, 少量の長石および有色鉱物の斑晶とが認められる。 斑晶はいずれも変質を受けており, もとの鉱物の成分, 種類等を判定することは困難である。

II.2 火山岩類

以上に記述した基盤岩類を覆って, 各種の火山岩類が図幅地域内に広く分布している。 これらの火山岩類のうち最も古いものは, おもに地域南半部に広く分布する流紋岩類(鬼怒川・片品川流紋岩)である。 なお地域北東隅に分布する田代山流紋岩熔岩は, 他の火山岩類との関係を示す野外の事実がないためにその時代は不詳であり, また前記の流紋岩類とは岩相がやゝ異なっている。 これら流紋岩類は, 図幅地域外の南方および北方の地域一帯に亘り, 一部には いわゆる緑色凝灰岩類を含む色々な火山砕屑岩類と相伴なって 広域にわたり分布している流紋岩類と, 同類のものであろうと考えられる。 したがって, 図幅地域内の流紋岩類の噴出時期も, 上記のものと同様に, 初期ないし中期新第三紀と考えられる。 図幅地域内では火山砕屑岩類は伴なわれていない。 この流紋岩類を覆い, 新第三紀後期から第四紀に亘り, 各種の安山岩類が図幅地域内の各所に分布している。 安山岩類のうち最も古いものは, 檜枝岐川支流実川の西岸地域に分布するもの, および図幅地域西部に位置する皿伏山・荷鞍山熔岩の基盤をなしているもので, 前者の噴出中心は不明であるが, 後者は西隣の藤原図幅内の尾瀬ヶ原北方に位置する景鶴山を, 噴出中心とする安山岩熔岩に属するもののようである。 したがって前者を実川熔岩,後者を景鶴山熔岩と名づける。 この両者の間の直接の関係は見られない。 いずれも後述する中期安山岩類および新期安山岩類に覆われる。

この旧期安山岩類に続く中期安山岩類に属するものとして, 北から 長須ヶ玉山熔岩・ 実川熔岩・ 高石山熔岩・ 檜高山熔岩・ 鬼怒沼山熔岩・ 四郎岳熔岩・ 根名草山熔岩が分布し, また南隣の男体山図幅地内にその噴出中心がある金田熔岩・太郎山熔岩の一部が, 図幅地域南東部に分布している。 これら中期の火山活動に由来する各火山は, 金田熔岩を除きすべて単純な成層火山に属するもののようであるが, 現在はその噴出中心と思われる地点の周囲に, 小面積を占めて安山岩熔岩が残存しているのみである。 金田熔岩は一種の円頂丘構造を示していることが, 男体山図幅説明書のなかに指摘されている。 この中期火山活動の時期は第三紀末, あるいは第四紀初め頃と考えられる。

引続いて図幅地域の西部に新期火山活動が見られ, 燧岳を初め皿伏山・荷鞍山・菖蒲平の各火山体が形成された。 これらのうち菖浦平火山の主体は西隣の藤原図幅地内に存在しており, その熔岩の東端部が本地域内に分布している。 皿伏山火山・荷鞍山火山・菖蒲平火山は, 地形から判断して楯状火山に属するものであり, 燧岳火山は成層火山に属し, かつ最も新期の火山である。 これらの各火山は, 上述した中期火山活動に由来する諸火山と異なり, 火山の形態が保存されており, その活動の時期は第四紀初めと考えられる。 なお燧岳東方 1,727 m 三角点附近には, 燧岳熔岩と類似した安山岩熔岩が分布している。

図幅地域の南西端に位置する硫黄沢には, 硫化作用により白色化した岩石が分布している。 この岩石は皿伏山・荷鞍山熔岩および菖蒲平熔岩に覆われており, 図幅地域内には新鮮な非変質部が分布していないために, その起源を知ることができない。 こゝでは硫黄沢硫化変質岩類として一括しておく。

II.2.1 流紋岩類

田代山流紋岩 : 本岩は淡紅色を帯びた灰色を呈し, 斑晶は多くやゝ脆い角閃石含有黒雲母流紋岩である。

鏡下では斑晶として石英・斜長石・アルカリ長石・黒雲母・角閃石が認められる。 斑晶鉱物中に角閃石が認められる点が田代山流紋岩の特徴であって, 図幅地域内に広く分布する鬼怒川・片品川流紋岩にはこれが見られない。 石基は部分的にガラス質, 潜晶質あるいは微珪長質で一定していないが, 全体として一定方向にかすかな流理構造を形成している。 斑晶鉱物はすべて圧砕作用を受けて破砕されたり, あるいは彎曲したりしている。 斑晶石英は円味を帯び融蝕されている場合が普通で, 中心部は微細な包有物で汚濁されている。 斑晶斜長石は石英と同じく円味を帯びた形をしており, 累帯構造を示す。 斑晶アルカリ長石はその量は少なく, 光軸角は 40°以上である。 斑晶黒雲母は暗褐色で形は小さく, かつ彎曲している。 斑晶角閃石は帯褐緑色を呈し, 量は少ない。

鬼怒川・片品川流紋岩類 : 本岩類の主体をなすものは, 肉眼的に多少の相違はあるが, 淡紅色を帯びた灰色を呈し, 斑晶鉱物の量が多く, 一見してガサガサした感じの黒雲母流紋岩であって, これは鬼怒川・片品川および実川沿岸に広く普遍的な岩相を示して分布している。 このような流紋岩のなかには, 図幅地域南東部の門森沢上流にあたる西沢金山附近のように, 局部的に岩相を異にし, リソイダイト質の岩相を示す場合もあり, また片品川支流では, 諸処に岩脈状あるいは岩床状のピッチストーンも認められる。 なお, 主体をなす流紋岩には, 肉眼的に石基が比較的ガラス質で, 緻密, 堅硬な場合, あるいは蠕虫状のガラス質部を多量に含む場合が認められるが, このような場合には, 鏡下では後述するように, サニディンあるいはイソサニディンが斑晶鉱物として含まれている。 このような部分は地域内の諸処に認められる。

図幅地域中央部の黒岩山附近の流紋岩は, 珪化作用を受けて, 白色, 緻密, 堅硬な岩質を示し, 鏡下では微細粒で珪質の石基のなかに斑晶石英が残存している。 このように2次的変質作用の影響を受けている部分は, 片品川および鬼怒川地域においてしばしば見受けられる。 特に著しく影響を与えている変質作用としては, 鬼怒川上中流部および支流湯沢上流における温泉作用, また片品川上流および支流根羽沢上下流部におげる硫化変質作用が挙げられる。

鬼怒川支流湯沢の下流部附近の流紋岩中には, 粘板岩を主とする角礫が多数取り込まれている。

主体をなす黒雲母流紋岩を鏡下で見れば, 珪長質の石基中に, 斑晶として石英・斜長石・アルカリ長石・黒雲母が認められる。 斑晶長石類のなかで, 常に多量に存在するものは斜長石で, アルカリ長石は普通少量であり, 時にはほとんど認められない場合もあって, 全体としていわゆる斜長流紋岩に近い岩質を有している。 なお, 石基が微球顆構造を呈する場合も時に認められる。 斑晶石英は融蝕形を示し, 斑晶斜長石は多少とも炭酸塩化作用を受けている場合が普通である。 斑晶アルカリ長石の光軸角は大体 40°よりも大である。 斑晶黒雲母は少量で, 形も小さく緑泥石に変わっている場合が多いが, 新鮮なものは暗茶褐色を呈する。

主体をなすこのような流紋岩のなかに, 局部的にやゝガラス質の岩相を示すものが認められる。 それを鏡下で見れば, 石基はすべて真珠岩状の割目を持つガラスからなり, 斑晶としては, 主体をなす流紋岩と同じく, 石英・斜長石・アルカリ長石・黒雲母がある。 アルカリ長石の量は斜長石に較べて非常に多く, かつ光軸角が 30°以下であって, 明らかにサニディンであることがわかり, 岩石は主体をなす流紋岩とは異なった岩質を示している。 なお, 斑晶をなすサニディンには, 光学性が (-) のもののほかに (+) のもの, すなわちイソサニディンも認められる。

西沢金山附近のリソイダイト質流紋岩は, 栗山層を貫ぬく岩脈としてみられる流紋岩 (II.1.8 脈岩類・リソイダイトの項参照)と, 鏡下では同様な岩質を示すものが多い。

片品川支流の各所に認められるピッチストーンは, 鏡下で真珠岩状の割目を有するガラスからなる石基中に, 斑晶として石英・斜長石・黒雲母・角閃石が認められるもので, アルカリ長石は存在しない。

II.2.2 安山岩類

景鶴山熔岩 : 本岩は 西隣の藤原図幅地内の景鶴山を形成する 安山岩熔岩に続いていたものと考えられるが, 現在は削剝されて景鶴山附近と, 本図幅地域内では燧岳・皿伏山・荷鞍山等の, 新期火山噴出物の基底の一部として露出するに過ぎない。

普通輝石紫蘇輝石安山岩に属し, 肉眼で灰黒色ないし暗灰色の堅硬, 緻密な岩石で, 斜長石・輝石の斑晶が少量認められる。 皿伏山・荷鞍山熔岩や菖蒲平熔岩に較べるとより黒色で, かつほとんど捕獲岩片を含まない点が相違している。 鏡下ではピロタキシティック組織を示す石基中に, 斑晶として斜長石・紫蘇輝石および普通輝石が認められ, 稀に橄欖石や石英を含むことがある。 斜長石は曹灰長石に属し, 自形, 柱状を呈し, おおむね清透である。 紫蘇輝石および普通輝石はともに自形, 柱状を呈し, ほゞ等量含まれる。 橄欖石はすべてイディングス石に変わっている。

実川熔岩 : 本岩は暗黒色, 緻密の岩石で, 水平方向の節理が発達している場合が多く, 沼田街道・実川流域等で良く観察される。 紫蘇輝石普通輝石安山岩に属する。

鏡下では斑晶として斜長石・紫蘇輝石・普通輝石が認められ, きわめて稀に石英が存在することがある。 斑晶斜長石は曹灰長石ないし亜灰長石に属し, 清澄で新鮮なものが多いが, これとは全く異なって, 微細な包有物により汚濁したものが少量存在する。 新鮮な斜長石は輝石のポイキリティックな小結晶を含有している場合がある。 紫蘇輝石と普通輝石はほゞ等量である。 石基はピロタキシティック組織を示し, 短冊状斜長石・輝石・磁鉄鉱からなる。 輝石は粒状あるいは微晶をなし, 大半は単斜輝石に属する。 これらの石基鉱物の間隙を隠微晶質の部分が塡めている。

本熔岩の分布地域中には, 地質図に示したように, 硫黄沢中流部附近から実川上流域にかけて, NW - SE 方向に硫化変質作用を受けた部分が帯状に断続している。 この変質帯上には, その北西端に近い 1,727 m 三角点附近に, 実川熔岩とは異なる安山岩熔岩が露出しており, またこの変質帯の南東方の延長線上には, 大体この方向に近く鬼怒川花崗岩が迸入していて, こゝに NW - SE 方向の地質構造線の存在を推定させる。

硫黄沢硫化変質岩 : 本岩の主体は西隣藤原図幅地内にあって, 本図幅地域では南西部の硫黄沢に分布する。 肉眼で灰白色ないし白色, 細粒, 緻密な岩石で, 硫化作用の影響を強く受けている。 著しい変質作用のために, 原岩の組織を失っており, 原岩の判定は困難である。 しかし, 岩相および分布から考えて, 本岩の原岩は, 菖蒲平および皿伏山・荷鞍山熔岩より古期の 火山岩熔岩または火山砕屑岩類と推定される。

根名草山熔岩 : 本岩は紫蘇輝石含有角閃石石英安山岩に属する。

淡白色ないし帯紫灰色を呈し, 石基が多孔質のガラスからなるために脆い岩質を呈している。 最長 3 mm 程度の角閃石斑晶が散在している。 鏡下では, 斑晶として 石英・斜長石・角閃石・紫蘇輝石・普通輝石・黒雲母が認められる。 石基はガラスあるいは潜晶質で, ガラスの場合には真珠構造が見られる。 ジルコンが稀に存在する。 斑晶石英は比較的少量ですべて融蝕されている。 斑晶斜長石には新鮮なものと, 微細な包有物により濁ったものとがあり, 新鮮なものは灰曹長石ないし中性長石に属し累帯構造の著しいものが多いが, 包有物で濁ったものはより灰長石分の多い斜長石に属し, 累帯構造の比較的微弱なものが多い。 斑晶角閃石は有色斑晶鉱物のうちで最も多量に存在するもので, 長柱状, 自形, 濃い帯褐緑色を呈し, 長柱状体における消光角は 10°内外である。 斑晶輝石類のうちでは紫蘇輝石が普通輝石よりも著しく多量である。 斑晶黒雲母は暗茶褐色を呈する。

このような角閃石石英安山岩が現在の根名草山熔岩の主体をなして, 最も広く分布しているものであるが, この下部に相当する位置にある鬼怒川上流南岸には, ハイアロピリティック組織を呈する石基を有する 普通輝石紫蘇輝石安山岩が分布している。 露出が不良のためにその分布範囲は不明であるが, おそらく上記の角閃石石英安山岩の下部に分布するもので, 同じく根名草山を噴出中心とするものであろうと考えられる。 この普通輝石紫蘇輝石安山岩中の斜長石斑晶のうちには, 上記の角閃石石英安山岩の斑晶斜長石の場合と同じく, 包有物で汚濁したものがしばしば認められる。 斑晶石英は存在せず, また輝石類は量も少なく形が小さい。 なお紫蘇輝石の方が普通輝石よりも著しく多量である。

鬼怒沼山熔岩 : 本岩は根名草山熔岩と同じく角閃石石英安山岩に属する。 淡白色あるいは帯紫灰色を呈し, 石基が多孔質のガラスからなるため岩質は非常に脆い。 最長 3 mm 程度の長柱状の角閃石が散在している。 鏡下では 斑晶として石英・斜長石・角閃石・紫蘇輝石・普通輝石が認められ, 石基は透明のガラスからなり, 針状あるいは樹枝状の晶子を多数含んで流状構造を呈する場合と, 全く晶子を含まずに茶褐色のガラスのみからなり, 真珠岩状の割目が発達している場合とがある。 斑晶石英は融蝕を受けている。 斑晶斜長石は灰曹長石ないし中性長石に属し, 比較的新鮮であり, 累帯構造を呈する。 斑晶角閃石は茶褐色を呈し, 長柱状体における消光角は小さく 10°前後である。 また斑晶角閃石のうちには, 濃い赤茶色を呈し, かつ柱状体における消光角がきわめて小さく, ほとんど 0°に近いものがある。 これはいわゆる酸化角閃石に属するものであろう。 斑晶をなす紫蘇輝石と普通輝石とはほゞ等量に存在するが, 斑晶角閃石に較べると量は少なく, きわめて小形となる。

長須ヶ玉山熔岩 : 長須ヶ玉山の山体を構成する熔岩は地形から上下2種に区分される。 いずれも紫蘇輝石普通輝石安山岩に属する。

下位のものは, 暗黒色, 緻密の岩石で, 肉眼的には前述した実川熔岩と近似である。 鏡下では斑晶として斜長石・紫蘇輝石・普通輝石が認められる。 斑晶斜長石には, 微細な包有物で汚濁したものと, 清澄なものとがある。 斑晶紫蘇輝石の周辺は粒状の普通輝石でとりまかれている。 石基は短冊状斜長石・輝石・磁鉄鉱からなるピロタキシティック組織を呈している。 石基輝石はほとんど普通輝石で, 紫蘇輝石は少なく, いずれも粒状あるいは短柱状を呈している。

上位のものは下位のものと異なり, 帯青灰色で, 斑晶をなす斜長石・輝石が肉眼で認められる。 鏡下では, 斑晶として下位のものと同じく斜長石・紫蘇輝石・普通輝石が認められるが, 下位のものよりは石基に対する斑晶の量が多い。 石基は珪長質で, 比較的結晶度の進んだ微晶の集合した部分と隠微晶質の部分とが, 不規則に混淆しており, 下位のものの石基と趣を異にしている。

檜高山熔岩 : 本岩は紫蘇輝石普通輝石安山岩に属する。

黒色, 緻密の岩石で, 2 mm 前後の斑晶斜長石が散在している。 鏡下では斑晶として紫蘇輝石・普通輝石・斜長石が認められる。 斜長石には普通輝石の微晶を含んでいるものがあり, このような斜長石は微細な包有物によって濁っている場合が多い。 他の斜長石は清澄であるが, 縁辺部に微細な包有物からなる細い帯(外廓に平行)があって, その外方には新鮮な斜長石からなる被膜が発達しているものが, しばしば見受けられる。 この包有物帯を境とする内部と外部の斜長石は, 光学的方位が一致する場合もあり, 一致しない場合もある。 石基はピロタキシティック組織を呈し, 斜長石・輝石・磁鉄鉱の微晶からなる。

高石山熔岩 : 本岩は石英角閃石含有紫蘇輝石普通輝石安山岩に属する。

帯紫灰色を呈し, 1~3 mm の斑晶が散在している。 鏡下では斑晶として紫蘇輝石・普通輝石・斜長石および少量の石英があり, 稀に角閃石・橄欖石が認められる。 紫蘇輝石の方が普通輝石よりも比較的に量が多く, 形が大きい。 斜長石は2~3個で聚斑状をなす場合が多く, 清澄であり, 非常に細かい累帯構造を呈する。 また普通輝石の微晶を含んでいるものがある。 石英はすべて円味を帯び, 融蝕されている場合が普通で, 形が小さい。 角閃石は帯褐緑色を呈する。 橄欖石はきわめて稀で, イジングサイトに変わっている。 石基はピロタキシティック組織を呈するのが普通であるが, やゝハイアロピリティック組織に近いものも見受けられ, 斜長石・輝石・磁鉄鉱の微晶からなる。

四郎岳熔岩 : 本岩は石英含有紫蘇輝石普通輝石安山岩に属する。

暗灰色を呈し, 長径 1~3 cm のレンズ状あるいはこの程度の大きさの不規則, 塊状の, きわめて細粒の安山岩片を捕獲岩として多数含んでいる。

鏡下では, 斑晶として斜長石・紫蘇輝石・普通輝石および稀に石英が認められる。 石基はガラスないし潜晶質で, 全体として僅かに流状構造が見られる。 斑晶斜長石の量はきわめて多く, 比較的清澄で, 曹灰長石ないし亜灰長石に属する。 斑晶石英は円味を帯びている。

捕獲岩の安山岩は紫蘇輝石普通輝石安川岩で, 斑晶は 短冊状の斜長石と粒状に近い 紫蘇輝石・普通輝石および多量の磁鉄鉱からなり, 石基は潜晶質あるいはハイアロピリティック組織を呈するようであるが, 鏡下でもよくわからない。 この捕獲岩片は四郎岳熔岩中にきわめて密に含まれており, また岩相が母岩と近似しており, おそらく同源捕獲岩に相当するものと考えられる。

金田熔岩 : 本岩は次項で述べる太郎山熔岩と同じく, その主体が男体山図幅地内にあり, 本図幅地域の南東部にその一部が分布している。 岩質は太郎山熔岩と大差はないが, 角閃石を含み, 石英角閃石含有紫蘇輝石普通輝石安山岩に属する。 この溶岩の特徴はその噴出形式にあって, 太郎山の西方に独立して円頂丘構造を示す火山形態を呈している (なお岩石の記載その他については男体山図幅説明書 9) 参照)。

太郎山熔岩 : 本岩は石英含有紫蘇輝石普通輝石安山岩に属する。

暗黒色, 緻密なものと, 暗灰色で長径 2 mm 以下の斑晶斜長石が散在しているもの との2種が肉眼で区別されるが, その分布・状態は図幅地域内のみでは不明である。 太郎山熔岩の主体は南接する男体山図幅地内に分布する。 本地域内には暗灰色を呈する岩質のものの方が多量に存在するようである。 暗黒色, 緻密なものは, 鏡下で潜晶質の石基を有する紫蘇輝石普通輝石安山岩であるが, 暗灰色のものは, 石基は斜長石・輝石・磁鉄鉱からなるピロタキシティック組織を有し, 斑晶として少量の石英を含む石英含有紫蘇輝石普通輝石安山岩である (詳細は男体山図幅説明書 9) 参照)。

菖蒲平熔岩 : 本岩の主体は, 西隣の藤原図幅地域内にあって, 本地域内にはその東縁の一部が, きわめて小地域に分布しているのみである。 岩質は普通輝石紫蘇輝石安山岩に属し, 肉眼的にもまた鏡下においても, 後で述べる皿伏山・荷鞍山熔岩ときわめて似ている。 火山形態も両火山と同じく楯状火山に特有な形態を有していて, これら3火山は相前後してほゞ同時期に噴出したものと考えられ, 分布状態から本熔岩がやゝ早期に噴出したものと思われる。

皿伏山・荷鞍山熔岩 : 皿伏山および荷鞍山を形成する熔岩は, それぞれ独立した噴出中心を有するものと思われるが, 両者は肉眼でもまた鏡下でも, 全く区別し得ないほど類似した岩相を有している。 また, 両者の分布状態および開析の程度等から考えて, 両山体を形成する熔岩は, 同一時期の火山活動によるものであることは間違いなく, 両者を一括して皿伏山・荷鞍山熔岩と名づける。

肉眼で暗灰色ないし灰黒色のやゝ緻密な岩石で, 斜長石および輝石類の斑晶を多数認めうる。 鏡下ではピロタキシティック組織を示す石基中に, 斑晶として斜長石・紫蘇輝石・普通輝石が認められ, 稀に角閃石・橄欖石および石英が見られる。 斜長石は曹灰長石に属し, 暗色に汚濁しているものが多い。 紫蘇輝石と普通輝石はほゞ等量含まれている。 角閃石は多くのものがオパサイト化している。

本熔岩中には, 径 2 cm 前後の円味を帯びた形の淡灰色の捕獲岩片をしばしば含んでいる。 このことは, 前述した菖蒲平熔岩と共通した特徴といえる。

△ 1,727 m 熔岩 : 本岩は暗灰色で流状構造の明らかなガサガサした感じの岩石で, 石英含有橄欖石紫蘇輝石普通輝石安山岩に属する。

鏡下では斑晶として石英・斜長石・橄欖石・紫蘇輝石・普通輝石が見られる。 石基は斜長石・輝石・磁鉄鉱からなるピロタキシティック組織を呈するが, 部分的にガラス質部を加えてハイアロピリティック組織を示している。 斑晶石英は形が小さく円味を帯び融蝕されている。 斑晶石英の周辺の石基は, 結晶度が他の部分よりやゝ高くなっている。 斑晶橄欖石はすべて形が小さく, 多くは自形形態を保っている。

この熔岩は外観・岩質ともに基盤をなす実川熔岩とは異なり, 燧岳火山の北東麓部を構成する安山岩熔岩と近似している。 したがって燧岳火山の活動と関連性があるかも知れない。

燧岳熔岩 : 燧岳の中腹部は岩屑に覆われて全く露岩が見られず, 山体を構成する火山岩類をよく観察できる地域は, 山体の西麓部の只見川流域, 北東麓部の硫黄沢・七入沢地域および山頂部の3地域である。 西麓部には紫蘇輝石普通輝石安山岩が分布し, 深沢においてはこの下位に安山岩質凝灰角礫岩が見られ, その一部は上位の安山岩熔岩と互層している。 北東麓部および山頂部を構成する安山岩熔岩は, ともに石英含有紫蘇輝石普通輝石安山岩に属し, また北東麓部においてはこの熔岩の下位に安山岩質凝灰角礫岩が分布している。

安山岩質凝灰角礫岩 : 北西麓部の深沢下流において見られるものは灰色, 脆弱の岩石で, 凝灰質の部分が多く, そのなかに小豆大ないしクルミ大の安山岩の角礫を比較的まばらに含有している。 一方北東麓部に分布する凝灰角礫岩は, これとは趣を異にしている。 すなわち, 細密でやゝ泥質の基質中に, マッチ箱大前後の大きさの安山岩の角礫を密に含む, 長径 10~15 cm の不規則な形の白色凝灰角礫岩の岩塊が密在している。 白色の凝灰質の部分は鏡下で見ると, ガラス質の部分や識別のできない粉末の集合部からなる基質中に, 斜長石・紫蘇輝石・普通輝石の結晶片が散在していて, 斜長石には完全な自形形態を保っているものがしばしばみられる。 白色の凝灰質の部分に含まれる安山岩角礫は紫蘇輝石普通輝石安山岩で, 後述する北西麓に分布する安山岩熔岩に類似している。

北西麓の凝灰角礫岩が, その上部で上位の安山岩熔岩と互層すること, 北東麓の凝灰角礫岩の上位の安山岩熔岩は, 上記の北西麓のものとは岩質が異なり, 山頂部を構成する安山岩と同類のものであること, 等から, 両地域に分布する凝灰角礫岩の成生の時期は同時ではなくて, 北東麓に分布するものが, 北西麓に分布するものよりも後に成生されたものであろうと推定される。

紫蘇輝石普通輝石安山岩 : 本岩は西麓部において, 上記の凝灰角礫岩の上位に分布する。 肉眼的には暗黒色, 緻密なもの, 流状構造を示すもの, 暗灰色で孔隙が比較的多いもの等が区別されるが, 相互の分布関係は不明で, また鏡下ではいずれも紫蘇輝石普通輝石安山岩に属し, 明らかな相違点は認められない。 おそらくほゞ同じ時期に相前後して流出したものであろう。 これら熔岩には水平に近い節理が発達している場合もある。

鏡下では斑晶として斜長石・紫蘇輝石・普通輝石が見られ, 橄欖石や石英は認められない。 斑晶斜長石は累帯構造が顕著で, 曹灰長石ないし亜灰長石に属する。 斑晶紫蘇輝石には普通輝石で厚くふちどられているのがある。 石基は 斜長石・輝石・磁鉄鉱からなるピロタキシティック組織を呈するものが多いが, なかにはガラス質の部分があって, ハイアロピリティック組織を呈するものも見受けられる。

石英含有紫蘇輝石普通輝石安山岩 : 本岩は北東麓部および山頂部の諸独立峯を形成して分布する。 西麓部の安山岩熔岩に較べて一般にガサガナした感じの岩石で, 孔隙が多数見られる。

肉眼では数種の岩質が区別されるが, いずれも石英含有紫蘇輝石普通輝石安山岩に属する。 鏡下では斑晶として石英・斜長石・紫蘇輝石・普通輝石が最も普通の成分鉱物で, 山頂部に露出するもののなかには, 稀に橄欖石が見られるものがあり, また同じく山頂部の 2,240 m 峯を形成するものには, 角閃石が多く認められる。 斑晶石英は円味を帯び融蝕を受けており, また斑晶石英を包む周辺部の石基は, 他の部分と較べてやゝ結晶度が高くなっている。 斑晶斜長石は An 50 前後の中性長石ないし曹灰長石に属する。 斑晶角閃石は帯緑褐色を呈し, 周辺部あるいは全体がオパサイトに変じている。 石基は斜長石・輝石・磁鉄鉱からなるピロタキシティック組織を呈する場合が多い。

山頂部あるいは北東麓の安山岩のなかには, 橄欖石含有紫蘇輝石普通輝石安川岩の小片を多数取り込んでいるものがある。

II.3 第四系

片品川沿岸には, その右岸に限り砂・礫・粘土からなる河岸段丘が認められる。 またおもにこの段丘上に, 浮石を主とし若干の砂礫を混える浮石層が堆積している。 なお, 檜枝岐川支流実川左岸の矢櫃平にも浮石層が存在する。 これらの浮石がどの火山活動に由来するものであるかは, いまのところ明らかでない。

図幅地域内には, すでに記述したように, 火山活動に由来した湿原・湖沼が諸処に存在しているが, これらには湿原堆積物が見られる。 このなかでは, 尾瀬ヶ原を形成する湿原堆積物が規模の最も大きなものである。 この湿原については只見川の電源開発の基礎調査として, あるいは尾瀬ヶ原綜合学術調査の一部として, 堆積物その他に関して報告されている。 その詳細については該報告 10) を参照していただきたいが, きわめて概括的に述べれば, 堆積物は 湿原の東方に位置する燧岳火川の噴出物を層状に含んだ砂礫・粘土・砂からなり, 最上部には泥炭層が形成されている。 全体の厚さは 50 m 以上で, 最深部は 200 m に達するものと推定されるとのことである。 一方, 他の小規模な湿原・湖沼においては, 良好な断面の露出が見られない。

只見川・檜枝岐川・鬼怒川・片品川の沿岸には, 砂礫からなる冲積層が狭長な帯状をなして分布している。

III. 應用地質

金鉱床 : 鬼怒川支流門森沢の上流域および片品川支流根羽沢下流域に分布する流紋岩中には, 含金銀石英脈が発達している。 門森沢上流域のものは西沢金山として, また根羽沢下流域のものは根羽沢金山として, 往時は稼行されていたが, 現在は諸施設も撤去されて休山している。 したがって西沢金山については, 従来の資料 11) によって知るほかなく, また根羽沢金山に関しては資料がないが, 鉱床は西沢金山のものと類似しており, 規模がやゝ小さいであろうと思われる。

モリブデン鉱床 : 図幅地域南東部に分布する鬼怒川花崗岩中に, 輝水鉛鉱を含む石英脈が認められる。 位置は鬼怒川沿岸の川俣温泉に近い錆沢下流部にあたる。 現在は試料を採取している程度であり, 鉱床の詳細については未だ不明である。

温泉 : 図幅南東部の地域には数地点に温泉の湧出が見られる。 すなわち鬼怒川本流に沿い, 上流部には日光沢温泉・八丁ノ湯・加仁湯等があり, 手白山の西方には手白沢温泉が, いずれも流紋岩中に湧出し, またこの地域より下流部には, 斑状花崗岩中に湧出する川俣温泉がある。 なお, 鬼怒川支流湯沢の中上流部には, その川岸あるいは川中に硫黄泉の湧出口が多数認められ, この沢の名称もこれにちなんだものである。 特に中流部の小滝の上にある湧出口の周囲には, 温泉沈澱物が高さ約 1 m の円錐形をなしており, その尖端より間歇的に温泉が噴出しているところがあり, 噴泉塔と呼ばれている。

各温泉については, 化学分析その他に関する2, 3の資料があり 12), 13) , それにしたがえば, 日光沢温泉は硫黄泉, 八丁ノ湯は単純泉, 川俣温泉は弱食塩泉であって, 泉温はいずれも 50~60℃ である。 なお燧岳西麓には鉱泉が湧出している。

ダム : 図幅北西部にその東端部が含まれる尾瀬ヶ原の周辺地域を源流域として, 図幅地域西辺部を北流する只見川は, 近年電源開発の対象として数地点にダム建設が予定され, 下流部の田子倉ダムはすでに建設工事が進渉中であり, 他のダム建設予定地附近では基礎調査が行われている。 図幅地域内には, 尾瀬ヶ原温泉附近に尾瀬ヶ原ダム建設予定地点があり, 電力研究所が基礎調査を実施している。

文献

1) 佐藤久 :
尾瀬ヶ原とその周辺の地形, 尾瀬ヶ原綜合学術調査団編, 尾瀬ヶ原, 日本学術振興会刊, p.1~20, 1954
2) H. Kuno, M. Yamazaki, T. Matsui, Y. Seki, and T. Shimizu :
Geology of Ozegahara and surrounding Area, 尾瀬ヶ原綜合学術調査団編, 尾瀬ヶ原, 日本学術振興会刊,p. 68~77, 1954
3) 尾瀬ヶ原綜合学術調査団 :
尾瀬ヶ原, 日本学術振興会刊, 1954
4) 藤本治義 :
栃木県塩谷郡栗山村及び兵庫県川辺郡田多村産紡錘虫, 地質学雑誌, Vol. 56, No. 657, 1950
5) 岩生周一・今井功 :
7万5千分の1塩原地質図幅および同説明書, 地質調査所, 1955
6) 木村達明 :
岩室累層の地質学的研究(1)(付,岩室累層周辺の一般地質), 地質学雑誌, Vol. 58, No. 685, 1952
7) 太田良平 :
5万分の1沼田地質図幅および同説朋書, 地質調査所, 1953
8) 沢村孝之助 :
只見川上流地域の地質, 地質調査所月報, Vol. 4, No. 1, 1953
9) 河田清雄 :
5万分の1男体山地質図幅および同説明書, 地質調査所, 1955
10) 松井健・桑野幸夫・桑野恵子 :
尾瀬ヶ原の湿原堆積物, 尾瀬ヶ原綜合学術調査団編, 尾瀬ヶ原, 日本学術振興会刊,p. 78~107, 1954
11) 加藤武夫 :
新編鉱床地質学,p. 359, 1937
12) 厚生省大臣官房国立公園部 :
日本鉱泉誌,p. 213~214, 1954
13) 栃木県 :
栃木県地質説朋書, 県政図譜解説第 3 号, 1953
14) 栃木県 :
20 万分の1栃木県地質図, 1953
15) 福島県 :
20 万分の1福島県地質図, 1955
16) 末野悌六 :
尾瀬地方の地質, 天然紀念物調査報告,文部省, 1933
17) 栃木県土木部砂防課 :
鬼怒川本流上流流域崩壊調査書(1), 1953
18) 山崎正男 :
日光火山群の諸火山の形成順序について, 地質学雑誌, Vol. 56,No. 652, 1950
19) 群馬県県立農業試験場 :
20 万分の1群馬県地質図, 1952

EXPLANATORY TEXT OF THE GEOLOGICAL MAP OF JAPAN Scale 1 : 50,000

HIUCHI-DAKE

Niigata, No. 77

By MASARO MURAYAMA & KIYOO KAWATA (Written in 1955)


Abstract

The area mapped is located at the northwestern region of the Kwantō region and almost occupied with the mountain-land which belongs to the southwestern part of the Taishaku mountain range. This range forms the watershed dividing the Japan Sea side and the Pacific side. Ozega-hara moor, famous for a fine sight, is situated at the western part of the area.

GEOLOGY

The rocks occuring in the area mapped can be classified into two geological units, namely, the basement rocks of the area and the overlying volcanic rocks of Cenozoic age. The former includes the Kuriyama formation, the Hinoemata formation, the Tokura formation, the Tokura ultra-basic~basic rocks, basic~acidic plutonic rocks and dyke rocks ; and the latter comprises rhyolite and andesite lava flows.

The Kuriyama formation consists mainly of slate beds intercalated with chert and limestone. In general, the strike is N 30~50°E and the dip is about 80°to the south or north. Strike faults are developed in the formation. Because of the lack of fossils, the age of the formation is not precisely ascertainable in the area. Judging from the rock facies and the structure of the formation, however, it can be correlated with the Paleozoic, perhaps the upper Permian, in the area of the neighbouring "Shiobara" sheet map (1 : 75,000). Diabase, diorite porphyrite, quartz porphyry and rhyolite dykes and granite are intruded in the formation. The Hinoemata formation differs from the Kuriyama formation, in the lack of intercalating chert and limestone, but the structural features of the formations are routhly similar to each other. Gabbro, granite, granophyre and granite porphyry are intruded in the formation. As no fossils have been found from this formation, the age of the formation is not precisely decided.

The Tokura formation is intruded by pyroxenite, peridotite, gabbro and diorite which belong to the Tokura ultra-basic~basic rocks, and consists of beds of sandstone and slate with no intercalated chert and limestone. These features are quite resemble to those of the Hinoemata and Iwamuro formations. The latter is Jurassic sediments, distributed at Iwamuro district about 20 km southwest of the area mapped.

Granitic rocks intruding the Kuriyama and Hinoemata formations, are divided into three types from their rock facies ; namely, medium-grained hornblende-biotite granite (the Hinoemata-gawa granite), coarse-grained biotite granite (the Tadami-gawa granite) and medium- to coarse-grained porphyritic biotite granite (the Kinu-gawa granite).

Rhyolitic lava flows are rather extensively exposed in the area. Excepting lithoiditic facies and pitch-stone dykes rarely exposed, the main mass is biotite rhyolite on the whole. Petrographically, it is characteristic that the phenocrysts of sanidine and isosanidine are found in the facies having glassy groundmass. These rhyolites are similar to those which crop out in the area of "Shiobara" sheet map. And those rhyolites are closely connected with the so-called green tuff of Miocene age. The rhyolite is covered unconformably by the andesite lava flows in the area.

Among these andesite lava flows, the Sane-kawa andesite and the Keizuru-yama andesite occupy the lower portion of these effusive rocks ; and the Sarabuse-yama and Nikura-yama andesite, the Ayame-daira andesite and the Hiuchi-dake andesite occupy the upper portion ; and others the middle portion. Judging from the feature of preservation of original volcanic forms, these three members, the lower, the middle and the upper may be Pliocene, younger Pliocene or older Pleistocene, Pleistocene in age, respectively. Excepting dacite of Kinunuma-yama volcano and Nenagusa-yama volcano, the lava flows of the other volcanoes consist of augite-hypersthene andesite with or without hornblende, olivine or quartz as constituents. Sarabuse-yama and Nikura-yama volcanos are shield volcanos, while Hiuchi-dake is a strato-volcano.

Terrace deposits, moor deposits, pumice deposits and the Alluvium are composed of sand, gravel, clay, and pumice.

ECONOMIC GEOLOGY

In the rhyolite exposed along the Neba-zawa and the Kadomori-sawa, gold-bearing quartz veins were worked in the past as the Neba-zawa and the Nishi-zawa gold mine.

Molybdenite-bearing quartz vein is found in the Kinu-gawa granite, near the Kawamata hot spring.

In several places along Kinu-gawa, for instance, Kawamata, Nikkō-zawa and Hatchōyu, hot springs are spouting and are used for mineral bath.


昭和 31 年 3 月 20 日印刷
昭和 31 年 3 月 25 日発行
著作権所有 工業技術院 地質調査所