07070_1973

地域地質研究報告
5万分の1図幅

新潟(7) 第 70 号

竹貫 たかぬき 地域の地質

秋田大学 加納博
東京教育大学 黒田吉益
宮城第一女子高等学校 宇留野勝敏
岡山大学 濡木輝一
東北大学 蟹沢聰史
東京教育大学 丸山孝彦
高知大学 梅村隼夫
工業技術院 光川寛
秋田大学 瀬戸延男
秋田大学 大平芳久
地質部 佐藤茂
地質部 一色直記

昭和 48 年

地質調査所


目次

I. 地形
II. 地質
II.1 概説
II.2 御斎所・竹貫変成岩類
II.2.1 研究史
II.2.2 御斎所・竹貫変成岩の地質学的位置
II.2.3 変成分帯と岩石記載
II.2.4 複変成作用
II.3 変成岩類の地質構造
II.3.1 概説
II.3.2 構造要素の記載
II.3.3 褶曲構造
II.3.4 断層
II.4 変成小貫入岩類
II.4.1 超塩基性岩類
II.4.2 変成輝緑岩~斑れい岩
II.4.3 変成石英斑岩類
II.5 小塩基性岩類
II.6 花崗質深成岩類
II.6.1 鮫川複合岩体
II.6.2 宮本複合岩体
II.6.2 付. 十文字岩体
II.6.3 石川複合岩体
II.6.4 小花崗岩質岩体
II.6.5 論田岩体
II.6.6 好間川複合岩体
II.6.7 入遠野複合岩体
II.6.8 芝山岩体
II.7 小貫入岩体(アプライト・ペグマタイトなど)
II.8 第三紀(?)貫入岩体
II.9 第三系
II.9.1 概説
II.9.2 湯長谷層群
II.9.3 白土層群
II.9.4 高久層群
II.10 第四系
III. 応用地質
III.1 層状含マンガン磁鉄鉱鉱床
III.2 層状マンガン鉱床
III.3 層状含銅硫化鉄鉱鉱床(沢渡鉱山)
III.4 珪石および砕石(付. 庭石)
III.5 石灰石
III.6 ざくろ石
III.7 温泉および鉱泉
文献

Abstract

地域地質研究報告
5万分の1図幅 (昭和 45 年稿)

新潟(7) 第 70 号

竹貫 たかぬき 地域の地質


竹貫図幅地域は, 御斎所 ございしょ ・竹貫変成岩の模式地を含み, 世界でも著名な変成帯の一つとして B. KOTO(1893)以来多くの研究がなされてきた。

筆者らの研究グループによる調査研究は, 昭和 40 年から昭和 42 年にわたる総合研究 「日本の変成帯形成史の総合的研究」(研究代表者 : 加納博)の一環として行なわれた。 この研究の主たる目的は, 阿武隈変成帯 [ 以下の [注] 参照 ] における複変成作用の研究にあったが, そのための基礎として精細な地質図作りが必要とされた。 野外作業には全員が参加したが, とくに卒業論文または修士論文の課題として長期にわたる野外作業に従事したのは, 丸山(鮫川および石川岩体, 1966), 光川(宮本岩体, 1967), 梅村(御斎所街道地域, 1967~69)および大平( 沢渡 さわたり 地域, 1970)である。 丸山・光川・大平は当時いずれも秋田大学の学生, 梅村は広島大学の学生であった。 こうして地質図幅の骨子は昭和 43 年にほぼ出来上ったが, 昭和 44 年には地質調査所の事業として加納・黒田が嘱託を受け, 同年 7 月に全員の協力を得て補足調査を完了した。

[注]
阿武隈帯または阿武隈変成帯とは, 黒田(1963)が定義したように, 南は日立地方の西部から本地域を経て猪苗代湖の北方, 東北地方の脊梁部までに分布する御斎所・竹貫型の変成岩の分布する帯をいうことにする。

このとき [ = 昭和 44 年の補足調査において ] , 第三紀層分布地域の調査が佐藤・一色によって行なわれた。 本報告は変成岩類, 塩基性~超塩基性岩類の記載は黒田・蟹沢, 変成岩類の構造は濡木・梅村, 深成岩類は加納・丸山, 第三系は佐藤・一色, その他は主として加納・黒田によって執筆された。 その後, さらに加納・黒田によって文章その他の体裁が整えられた。

広島大学の原郁夫博士からは総合研究のさいの協同研究者として援助を受けた。 秋田大学の鈴木幹郎技官・地質調査所の大野正一技官には薄片の作成をお願いした。 また, 鈴木幹郎技官には現地での自動車運転を, 秋田大学の平野次男技官には化学分析をわずらわせた。 そのほか現地では矢内桂三氏とそのご一家にお世話になった。 筆者らの手の及ばなかった金属鉱床および温泉についての資料は, それぞれ東北大学の南部松夫博士, 三本杉温泉開発研究所の三本杉巳代治博士から提供された。 以上の方々に深い謝意を表する。

I. 地形

阿武隈山地 [ 以下の [注] 参照 ] は, 北上山地などとともに地形学上は隆起準平原として, また従順山形として知られている。 KOIKE(1969)によると, 阿武隈山地は, 地形的には, 北須 きたす 川( [ 本図幅の北隣の小野新町図幅・北西隣の須賀川図幅地域内をへて 西隣の棚倉図幅地域内で阿武隈川に合流する ] 阿武隈川の一支流)と [ 本図幅の北隣の小野新町図幅・北東隣の川前図幅・東隣の平図幅地域内をへて 太平洋に流れる ] 夏井 なつい 川を結ぶ線で大きく北半部と南半部に分かれる。 そのうち, 北半部は東縁を双葉破砕帯の断層崖で境され, 西に向っていくつかの浸食平坦面を伴いながら低くなる傾動地塊を形成するとされている。 これに対し, 本図幅地域を含む南半部の山地については, 全体としてドーム状を呈し, 浸食平坦面も北部ほど広範ではないといわれている。 これは 南部山地では基盤岩類(御斎所・竹貫変成岩)が広く分布することと関連するものであろう。

[注]
いわゆる阿武隈高原(Abukuma plateau)という呼称は, KOTO(1893)以来, 主として地質学者の間で使われてきたが, 地形学上は阿武隈山地(Abukuma Mountains)が正しい。

第 1 図(巻末付図) 切峯面図

第 2 図 図幅の中央・北よりの 大黒 だいこく 山(787 m)から 北西 - 北 - 北東 - 東 - 南東をみた鳥瞰図(1969 年 11 月中旬に大平が撮影)。 隆起準平原の平坦面と, それより一段と高い残丘地形が顕著にみられる。

第 3 図 [ 図幅の中央・西よりの ] 鎌倉 かまくら 岳(670 m)から [ その北方 2.5 km の ] 古殿 ふるどの 町の主要部などの展望図(光川, 1967)。

第 4 図 [ 図幅の中央・南よりの ] さめ 川左岸( [ 御斎所街道沿いの ] 薄木 うすぎ の北)の尾根から [ その南方 4 km の ] 三珠 みかぶ 山(842 m)の遠望。 山頂付近のゆるやかな高原状地形と中腹以下に刻まれた深い V 字谷地形の対立が, 典型的な隆起準平原地形を示している(光川, 1967)。

図幅地域は [ 前述の ] KOIKE(1969)の南部山地に属し, その北東部に位置する。 地域の地形を切峰面図(第 1 図, 巻末の袋に収納)で概観すると, 地域南東部の第三紀層から成る地区は別として, 深成岩および変成岩から成るその他の地域は, 典型的な隆起準平原地形を示し, 標高 500 m 以上の高所に 浸食平坦面が各所にかなりの範囲を占めて残っている(第 2・3 図)。 すなわち, [ 図幅地域南北中央・東端から 2 km の ] 鶴石 つるいし [ 767.5 m ] から [ 鶴石山の西北西方 4 km の ] 葭平 よしだいら の東方および 三株 みかぶ 山の周辺に分布する標高 700~750 m の平坦面(第 4 図), [ 図幅地域の中央・北よりの ] 大黒 だいこく 山から [ その南西方 4 km の ] 犬仏 いぬぼとけ [ 767.4 m ] にかけての 650~700 m の面, [ 図幅地域南西部の ] 遠ケ竜 とおがりゅう の北方の 650~700 m の面, [ 図幅地域中央・やや西の ] 有実 ありざね 付近一帯の 600~650 m の面, [ 図幅地域北東部の ] 下市萱 しもいちがや の北方および [ 図幅地域中央・西よりの ] 竹貫の北方山地の 550~600 m の面などである。 これらの平坦面地域は, 古期花崗岩または変成岩類から成っている。 上記の平坦面の高さは, 全般的にみて東または南東から西ないし北西に向って漸次低くなっていくが, このことは北半部で解析されたように(KOIKE, 1969), 南半部でも段階的な上昇に伴う傾動運動が行なわれたことを意味するものかもしれない。

隆起準平原のもう一つの特徴は, 以上の浸食平坦面から一段と高く突出した残丘の存在で, 図幅地域の最高峰の三株山(841.8 m)をはじめ, 芝山(819.2 m)・ 大黒山(787 m)・ 犬仏山(767.4 m)・ 入道山(686.5 m)・ 大辷 おおつべ 山(734.4 m)などがそれである。 これらのうち, 三株山・大黒山・犬仏山・大辷山は, 斑れい岩ないし超塩基性貫入岩類から成り, 入道山は珪岩, 芝山はいわゆる新期花崗岩で, いずれも いわゆる古期花崗岩または 変成岩より浸食抵抗の強い岩石類から成る堅牢残丘である。

いっぽう, 隆起準平原は さめ 川, 好間 よしま 川などの回春河川の下刻作用によって谷地形をつくる。 典型的な V 字谷はとくに, 本地域の南半部を東南東に流れる鮫川の中流部, あるいは鮫川の支流で地域の東半部を南南東に流れる 入遠野 いりとおの 川の中流, とくに [ 犬仏山の東方 2.5 km の ] 高房 たかぼう [ 鶴石山の南西方 2.5 km の 往生 おうじょう 山(599.1 m)の西方 2.5 km の ] 入定 にゅうじょう の間で著しく, 青年期ないし壮年期の急峻な谷地形が発達する。 しかし復活した浸食作用はこれらの河川の上流から源流部には未だおよばず, そこには中流部とは対照的な緩傾斜で, かつ広く浅い波状の地形が展開し, 農耕地あるいはスギ林などに利用されている(第 5 図)。

第 5 図 犬仏山付近の隆起準平原面につくられた緩傾斜の谷地形(光川, 1967)。

水系および山系の方向は, 大局的にみて後述する地質構造(褶曲および断層構造)と調和している。 この点とくに著しいのは, [ 図幅地域南西隅付近の ] 湯ノ田 ゆのだ から北流し, [ 図幅地域西端・南北中央付近の ] 長光地 ちょうこうじ を経て竹貫を頂点として大きく彎曲する鮫川の流路で, これは明らかに鮫川岩体 [ mgS, QdS ] を中心とするこの地域のドーム状背斜構造に支配されたものである。 鮫川は [ 竹貫の南東方 5 km の ] 大原 だいばら から下流では, 流路の方向をステップ状に変えながら御斎所変成岩地域 [ ms, bs ] を東南東に流下する。 後に述べるように, この付近の変成岩の構造は, 大原以西の竹貫変成岩地域 [ sg, pg ] とはちがって, 比較的波長が短かく, かつ折りたたみの急な背斜, 向斜を繰り返しており, このような構造が流路の屈曲によく反映しているのは面白い。 すなわち地質図でもわかるように, 鮫川の流路は 背斜軸または向斜軸を横切るところで東西方向となり, 翼部で北西または南東方向となっている。

[ 図幅地域北端・東西中央やや西の ] 芝山の東方のゆるい分水界から発して南流する入遠野川の方向は 南北性の縦走断層である 馬場平 ばばだいら 断層 [ ← 図幅地域北部~中部 ] 井戸沢 いとざわ 断層 [ ← 図幅地域中部~南部 ] によって大きく支配され, それらに交叉する入定, [ 大辷 おおつべ 山の東方 1.5 km の ] 大風 [ 読み方不明 ; おおかぜ ? ] 付近の東西性の横断層 [ ← 大風断層 ? ] によっても影響を受けている。 その付近でのステップ状の流路が褶曲軸と関係があることは鮫川本流の場合と同様である。 そのほか, 長光地から北西に曲って 石川方面に延びる直線状の広い谷や好間川の谷も断層に沿ってできた谷であろう。

[ 図幅地域南東隅の ] 上遠野 かどおの 町および 入遠野 いりとおの 地区の低平な段丘地域は, 第三紀層の分布と一致する。 北側および西側の古期岩層とはそれぞれ湯ノ岳断層と井戸沢断層で境され, 前者による断層線崖はことに顕著で, 隣接平図幅地域につづく。 この地域内の平坦面は 170~250 m の間にあって, 300 m 近い残丘は変成岩から成っている。

II. 地質

II.1 概説

第 6 図 阿武隈山地の地質図。
T : 竹貫, G : 御斎所山, N : 西堂平

[ 第 6 図の凡例の説明 ]
1 : 竹貫変成岩
2 : 御齊所変成岩
3 : 松ヶ平変成岩(M), 山上変成岩(S), 八茎変成岩(Y)
4 : 古生層およびその変成層(日立変成岩)
5 : 相馬層群(ジュラ紀)
6 : 双葉層群(白亜紀)
7 : 第四系および第三系
8 : 最古期圧砕花崗岩
9 : 超塩基性岩類
10 : 斑れい岩類
11 : 古期花崗閃緑岩 - 石英閃緑岩類
12 : 新期花崗閃緑岩・灰色黒雲母花崗岩類
13 : 新期淡紅色黒雲母花崗岩・両雲母花崗岩類
14 : 第三紀火山岩・火山砕屑岩類

南北 200 km, 東西 60 km 以上にもわたる阿武隈山地は, 北上山地とともに 東北日本における重要な地質単元の一つをなす深成岩・変成岩地域である(第 6 図)。 その範囲は地形的にも地質的にも明瞭で, 顕著な地質構造線または断層帯で区切られている。 すなわち, 山地の東側は海岸線にほぼ平行な双葉破砕帯で境され, 南西縁は 日立地方の西部から北北西に走る棚倉破砕帯で 八溝山地の非変成中・古生層地域と隔てられている。 西および北西縁は阿武隈川低地帯で, ここには地球物理学的な盛岡 - 白河線が走り, この線を境にした重力異常の違いはことに著しい。 地質的にはこの付近から西方, 日本海までの山地はいわゆるグリーンタフ地帯で, 新第三系および第四紀火山噴出物が広く基盤岩類をおおって発達する。

阿武隈山地の大半は, 各種の花崗質岩石を主とする深成岩類から構成されており, それに貫かれている変成岩類や古生界は, わずかな地域に断片的に分布するにすぎない。 その中で比較的広い範囲にまとまって露出するのが, 日立地方および相馬地方の古生界とその変成相, それに いわき市の西部から東白川郡 古殿 ふるどの 町・鮫川村にかけて分布する 時代未詳の変成岩類 -- いわゆる御斎所・竹貫変成岩類である。 その分布は竹貫図幅地域で最も広く, かつ 変成度の低い緑色片岩から 変成度の高い片麻岩までの各岩石種が連続して発達する。 鮫川渓谷に沿った御斎所街道はその模式地で, 地質学巡検で一般にもよく知られたところである。

御斎所・竹貫変成岩類は, 通常, 御斎所変成岩と竹貫変成岩に分けられている。 前者は塩基性岩起源の緑色片岩と細粒角閃岩を主とし, 細粒雲母片岩, 砂質片岩および珪岩をはさみ, 図幅地域の東半部に分布する。 後者は竹貫片麻岩ともいわれ, 珪質片麻岩と縞状雲母片麻岩を主とし, しばしば粗粒の角閃岩と晶質石灰岩を伴う。

従来, この変成帯は 高温低圧の「紅柱石 - 珪線石」型の標準的変成帯(MIYASHIRO, 1961)とされでいたのであるが, 宇留野と宮城第一女子高校 地学クラブの生徒による 川砂中の重鉱物の研究(宇留野ほか, 1966)に導かれて, 十字石 [ staurolite ] または藍晶石 [ kyanite ; 同一化学組成の異像が紅柱石(andalusite)と珪線石(sillimanite) ] を含む変成岩の現地露頭が各地から発見された(総研 阿武隈グループ, 1969 ; 第 7 図)。 いうまでもなく十字石と藍晶石, ことに後者は「紅柱石 - 珪線石」型より高圧の変成帯を特徴づける鉱物であり, この発見は 前から複変成作用を主張していた筆者らのグループを大いに力づけることになった。 その後, 十字石または藍晶石について追加すべき資料はないが, ざくろ石の研究にもとずく新しい変成史の試案が本報告で述べられる。

第 7 図 これまで発見された十字石または藍晶石含有変成岩の産地(KANO and KURODA(1968a); 加納・黒田(1968b)より)。

[ 第 7 図に関する注意書き ]
採取した試料の詳細
1 : 古殿町 照内(十字石), 2 : 古殿町 横川(十字石), 3 : 古殿町 長光地(藍晶石), 4 : 北茨城市 阿吹(十字石), 5・6 : 常陸太田市 西堂平(藍晶石・十字石)
網地の部分が御斎所・竹貫変成岩, 白地の部分は大体花崗岩類。
k - k' は古期変成帯の藍晶石アイソグラッドと考えられる線。

御斎所変成岩と竹貫変成岩とは, 層位的にはひと続きの整合関係にあって, 前者が後者の上にのっていると考えられている。 筆者らの中にも意見の相違がないわけではないが, 現在のところそのように考えておく。 両者の境は必ずしも明確とは言えないが, 典型的な両者の間では原岩構成を異にするほか, 地質構造の上でもかなりな違いがみられる。 今回の調査では, この点にもとくに力が注がれ, 変成岩地域としては画期的な構造地質図を作ることに成功した。 その結果によれば, 御斎所変成岩は見かけの層厚は大きいが, 軸を北または南へゆるく落したアコーディオン型のような褶曲を繰り返すのに反して, 竹貫変成岩は鮫川複合岩体を核とするドーム構造のまわりに, それと調和的につくられた大波長の背斜構造を基本構造としている。 これらの地質構造発達史を, 中~小規模ないし顕微鏡的な岩石構造または ゲフェーゲの解析によって解明する研究が, グループの中のとくに梅村(1970)によって行なわれた。 東北日本の変成帯でははじめての試みである。

深成岩類については, 花崗質岩を主体とする複合変成岩体が図幅地域内で重要な位置を占める。 すなわち, 地域の中央部にあって御斎所変成岩と竹貫変成岩とのほぼ境界に迸入した宮本岩体, 地域の南西隅にあるが古殿・鮫川地域の地質構造の中核をなす鮫川岩体, その西隣りの石川岩体, 北東隅の 好間 よしま 川岩体, その南の 入遠野 いりとおの 岩体, 北部の芝山岩体, などが主なものである。

これらのうち, 宮本・鮫川・石川・好間川の諸岩体は, [ 南に ] 隣接の川部図幅内の 田人 たびと 岩体とともに, 阿武隈山地の骨組みである「S 字状構造」を作る古期花崗岩類として注目され, GORAI(1944)・渡辺ほか(1955)の研究で知られていた。 これらは一般に片状の流理構造がよく発達し, 変成帯の中軸部に位置して, 母岩の構造とよく調和した内部構造および迸入形態を示す。 そのため, 昔は「調和性底盤」と呼ばれたが, われわれの構造解析によれば, これらの花崗岩体がいわゆる底盤である可能性はきわめて少ない。 花崗岩体の構造的研究の一部は丸山(1970)が鮫川岩体について報告したが, 宮本および好間川岩体については本報告ではじめて記載される。

いっぽう, 入遠野岩体と芝山岩体は, 上記の古期岩体とはちがって比較的小規模で, かつ塊状の迸入形態を示し, 新期花崗岩と呼ばれるものに属している。 しかし, 新期といい古期といっても, 最近の放射年代資料ではあまり大きな差がないこと(河野・植田, 1965), あるいは同じ古期岩体でも西から東に向って少しづつ若くなること(上野・小嶋, 1969)など興味ある事実が知られてきており, この方面からの今後の研究が期待される。 ちなみに, 新旧2期の深成作用の地史的関係については第 1 表のように考えられていた。

第 1 表 1950 年代における火成活動造構史(渡辺ほか(1955)より ; "*" を付けた岩石は竹貫図幅地域内に産出する火成岩類)

上記の深成岩体には, 多くの場合, 花崗質岩石のほかに各種の塩基性ないし超塩基性岩類が伴われる。

そのほか, 図幅地域内に分布する貫入岩類に, 竹貫周辺地域で鎌倉岳 [ ← 図幅地域西端付近・南北中央付近の 長光地 ちょうこうじ の東南東方 3.5 km ] および矢野山 [ ← 長光地の北北東方 2 km ] の山体を構成する玢岩 [ Po ] または安山岩 [ An ] 類があり, 変成岩中に貫入している。 [ 図幅地域北東部の ] 沢渡 さわたり の東部から [ 図幅地域南東部の ] 入遠野 いりとおの にかけては石英斑岩 [ Qpm ] の貫入が卓越する地帯があり, これには変成作用以前のものと以後のものとが区別される。 変成作用以前の岩脈としては, 輝緑岩質のものが, とくに宮本岩体の東縁に沿った超塩基性岩 [ ← U ? ] に伴って比較的多くみいだされる。 中でも御斎所 街道の 石住 いしずみ [ ← 図幅地域南端付近・東西中央やや西の 三珠 みかぶ 山の北東方 3 km ] 付近に露出する変成輝緑岩脈 [ ← Dm ? ] は, 新旧2回の変成変形作用の解析に役立つ数少ない鍵の一つとして注目に値する。 宮本岩体内部の 浪滝 なみだき [ ← 犬仏山の西北西方 2.5 km ] の角閃岩脈 [ ← 確認できない ] も同様の意義を持つもので, これについては牛来(1941)の先駆的研究がある。

御斎所・竹貫変成岩からなる阿武隈高原主部の変成帯は, 見掛け上の類似から領家帯の延長とみなす研究者が少なくなかった(牛来(1954); 山下(1957); 都城(1958))。 しかし, 本報告では, 第 8 図のように, 阿武隈を含む東北日本は, 領家を含む西南日本とは地質構造的にみて連続しないもので, 両者は利根川構造線という第一級の地質構造線で分けられると考える。 したがって, 領家帯の延長が阿武隈であるとは単純には言えないであろう。

第 8 図 東北日本における阿武隈山地の構造的位置(黒田, 1963)

[ 第 8 図の凡例の説明 ]
1 : 北上帯(主として非変成古生層, 西縁部に藍閃変成帯)
2 : 阿武隈帯(御斎所・竹貫変成岩を基盤とする深成迸入帯)
3 : 足尾帯(主として非変成古生層)
4 : 上越帯(藍閃変成帯)
---- 利根川構造線 ----
5 : 秩父帯(主として非変成古生層)
6 : 三波川帯(藍閃変成帯)
7 : 領家帯(深成変成帯)
8 : 美濃丹波帯(主として非変成古生層)
9 : 飛騨外縁帯(藍閃変成帯)
10 : 飛騨帯(ひだ変成岩を基盤とする深成迸入帯)

いっぽう阿武隈変成帯の北方への延長は, 古期花崗岩の片状構造が S 字状構造をなすことから, 北上山地につづくと考えられたこともあった(牛来, 1954)が, その後, これは訂正されている。 現在ではその延長は北北西に奥羽脊梁山脈の下にもぐり, グリーンタフ地域の先第三系の基盤岩として 数地点に露出するものにつながると考えられている。 猪苗代湖の東方, 秋田・山形県境の 神室 かむろ 山の周辺, 秋田県 生保内 おぼない 川の上流, 秋田市の東方の 太平山 たいへいざん などに分布するものがそれで, いずれも片状花崗閃緑岩を伴った雲母片岩・縞状片麻岩・角閃岩を主とするものである。 これらを含む先第三紀基盤構造区を阿武隈帯(黒田, 1963)と呼んだ。

変成岩および深成岩から成る山地の東側の丘陵地帯には常磐炭田の第三系が分布する。 竹貫図幅地域にも, その南東隅の上遠野地区に基底礫岩からはじまり, 砂岩・泥岩・水中火砕流堆積物などから成る新第三系が堆積している。

最新の堆積物として, 段丘および河床堆積物のほか, 芝山の東麓一帯と犬仏山の北東方に浮石質火山灰(ローム)の厚さ数 m ほどの地層がある。 これは本地域の西 60 km の那須火山に由来する降灰堆積物ではないかと考えられる。

以上の地質系統を総括すると第 2 表のようである。

第 2 表 竹貫図幅地域の地質系統の一覧("*" を付けた地質系統は本地域には分布しないが, 第 6 図に記されている重要地質単位)


[ 地質図の凡例 ]

第四紀 冲積層 a 砂・礫および泥
ローム層 l 火山灰
新第三紀
・中新世
高久 たかく 層群 上高久 かみたかく Ka 砂岩
白土 しらど 層群 中山 なかやま Na 礫岩・砂岩・泥岩および
 水中堆積の軽石火山礫凝灰岩~凝灰岩
湯長谷 ゆながや 層群 たいら Tv 水中火砕流堆積物
Tp 玄武岩枕状溶岩およびハイアロクラスタイト
水野谷 みずのや 上部層 Mu 砂岩および泥岩
下部層 Ml 泥岩
五安 ごやす Go 砂岩
砂岩・泥岩および礫岩(下部)
第三紀 ? 貫入岩体 Ba 玄武岩
An 安山岩
Po 玢岩
中生代 小貫入岩体 Ap アプライトおよびペグマタイトなど
花崗質
 深成岩体
芝山 しばやま 岩体 AdSh 灰色アダメロ岩
入遠野 いりとおの 複合岩体 GIr 弱片状花崗閃緑岩(アダメロ岩質部分も含む)
GbIr 斑粝岩質岩石
好間川 よしまがわ 複合岩体 AdY 塊状アダメロ岩( 差塩 さいそ 岩体)
GY 弱片状花崗閃緑岩( 永戸 ながと 岩体)
論田 ろんでん 岩体 TrR トロニエム岩
小花崗質岩体 G 主として花崗閃緑岩
石川 いしかわ 複合岩体 QdI 片状石英閃緑岩
十文字 じゅうもんじ 岩体 QdJ 片状石英閃緑岩
宮本 みやもと 複合岩体 AdM 弱片状斑状アダメロ岩
TrM 片状トロニエム岩~花崗閃緑岩
DM 閃緑岩~石英閃緑岩
GbM 斑粝岩(一部コートランド岩)
mgM ミグマタイト質岩類
鮫川 さめがわ 複合岩体 QdS 片状石英閃緑岩
 (花崗閃緑岩・アダメロ岩の部分も含む)
mgS ミグマタイト質岩類
小塩基性岩類 Gb 斑粝岩(一部コートランド岩)
変成小貫入岩類 Qpm 変成石英斑岩類
Dm 変成輝緑岩~斑粝岩
U 超塩基性岩
先中生代 御斎所 ございしょ 変成岩類 bs 塩基性岩源片岩
lst 晶質石灰岩
ms 珪質・砂質および泥質岩源片岩
竹貫 たかぬき 変成岩類 us 超塩基性岩源片岩
am 角閃岩
ls 晶質石灰岩
pg 泥質岩源片麻岩
sg 珪質および砂質岩源片麻岩

II.2 御斎所 ございしょ 竹貫 たかぬき 変成岩類

II.2.1 研究史

御斎所・竹貫変成岩類とよばれる本地域の変成岩類は, 1893 年に B. KOTO がはじめて, 御斎所統(系), 竹貫統(系)と命名したものである。 彼は前者を上部, 後者を下部と考え, いずれも始原界であるとした。 この当時は, 結晶片岩・片麻岩はすべて始原界と考えられていたふしがあり, そのことについて積極的な証拠があったわけではない。 なお, 小藤は御斎所統は三波川層と似ていると考えていたようである。 したがって, 彼は 1896 年には次のような層序を提案している。

始原界 上部 御斎所統(≒ 三波川統 ?)
下部 竹貫統
基底角閃花崗岩および片状花崗岩

この間のいきさつは今井(1966)に詳しい。

その後, 阿武隈山地からも古生層が発見され, 日本の先カンプリヤ系がいろいろの角度から検討されるという時代が来た。

1935 年, K. SUGI は南部 阿武隈山地の変成岩類をまとめたが, 彼は, 古生層から変成したものと, その基盤の先カンプリヤ系との両方があると考えていたようである。 しかし, 時代に関する詳しい議論や考察は行なっていないし, 明らかに古生層より変成した日立地方の変成岩類も, 御斎所・竹貫変成岩類もあまり明確に区別していない。 しかし彼の御斎所・竹貫変成岩類についての考えの中で, 特筆すべきことは, diaphthorite [ = 後退変成作用を受けた岩石 ] が存在するとしたことである。 このことから, かつて高い変成度をもっていた変成岩(先カンプリヤ系 ?)が, 後からの動力変成作用で低下的に低い変成度の岩石になったものがあると考えた。 彼があげた diaphthorite の証拠は, 今から考えてみると必ずしも説得力のあるものとは言えなかったが, 後述するように, われわれの新しい研究によって, ちがった形でよみがえってきた。 また, 彼は広域変成作用のときの, 変形運動と再結晶作用の時間的関係についても論じているが, それもわれわれの構造解析の結果から新しく見直されている。

1944 年, M. GORAI は南部阿武隈山地の深成岩類の総括的研究を行なったが, この時の研究を基礎にして, 領家帯と阿武隈 - 北上帯を本州造山帯の中軸帯として位置づけた(牛来, 1954)。 この考えは, T.KOBAYASHI(1941)の秋吉・佐川造山輪廻による日本列島の構造発達史に はげしく疑問をなげかけた新しい日本列島構造発達史であった。 これは小島丈児・加納博・山下昇をはじめ多くの研究者の支持を得て 日本列島の地質構造発達史に大きな影響を与えた。 しかし, 後述するように, この考え方も阿武隈に関してはかなりちがったものとなっている。

都城秋穂の一連の研究は「阿武隈」の名前を世界に高からしめた。 それは2つの点で大きな影響をもっている。 一つは岩石学的な面である。 後述するように, 彼は 1958 年にこの地域の変成岩類を A, B, C の3つのゾーンに分帯して, A は緑色片岩相に, B と C は角閃岩相に相当するとした(第 9 図)。 そして, 緑れん石角閃岩相が欠除していることが特徴であると述べた。 紫藤文子(1958)も同じような結論をこの地域の南方の変成岩類について述べた。 彼らは, このような緑れん石角閃岩相の欠除は低圧 - 高温型の変成作用の特徴であると指摘した。 また, ざくろ石の Mn 含有量と変成度の関係からもそれが支持されると考えた(MIYASHIRO, 1953b)。

第 9 図 MIYASHIRO(1958)の変成分帯。
T : 田人岩体, M : 宮本岩体, S : 鮫川岩体, Is : 石川岩体, Ir : 入遠野岩体

都城の他の問題点は地質学的な面である。 彼は西南日本で, ひだ帯と三郡帯, 領家帯と三波川帯が, それぞれ低圧 - 高温型と高圧 - 低温型の変成帯のペアであり, 前者が古生代~中生代初め, 後者が中生代後期(白亜紀)の変成であるとした。 そして, 阿武隈山地の御斎所・竹貫変成岩類を領家帯に, 阿武隈東縁に分布する藍閃石を含む結晶片岩を三波川帯に対応させた(都城(1959); MIYASHIRO(1961))。 この考え方は, さらに世界の古生代以降の変成帯すべてに拡大されて, 「都城の変成帯ペアの理論」(MIYASHIRO, 1961)としてもてはやされたのであった。

II.2.2 御斎所・竹貫変成岩の地質学的位置

御斎所・竹貫変成岩類は 前述の小藤文次郎の御斎所統・竹貫続から出発しで慣用的に使われてきた名称で, 御斎所変成岩は 本地域の東半分に産する塩基性岩源の変成岩の多いもの(泥質, 珪質, 砂質のものも含む)をいい, 竹貫変成岩は西半分に産する珪質, 泥質の変成岩の多いもの(塩基性岩源のものも含む)をよんできた。 それから出発して本地域外でも南は日立地方から, 北は猪苗代湖北東部にいたるまで, 比較的低変成度のように見える塩基性岩源岩石の多い変成岩を御斎所変成岩類, 比較的高変成度に見える珪質~泥質岩の多い変成岩を竹貫変成岩類とよんできた。

そのような変成岩類の分布は点々と広いはんいにわたっており, 少なく見積っても南北 120 km, 東西 80 km に達する。 日本の変成帯のうちで, このように幅広いものは, ひだ変成帯を除いては見られない。 しかも, これらの変成岩類は, はっきりと古生層と判定できる地層から漸移するところが発見されていないし, また, 古生層から変成したことが確認できる変成岩(例えば日立変成岩)とも漸移していない。 このように, 原岩がまったく判定できない変成帯としては, これもひだ変成帯を除いては御斎所・竹貫変成岩の阿武隈変成帯しかない。

さて, 御斎所変成岩と竹貫変成岩の両者の区分はきわめてあいまいであった。 今回の図幅作製の調査においても, その点を一つの問題点として両者の関係を明らかにしようとつとめた。 しかし, 両者の間には断層, あるいは不整合という関係は認められなかった。 そこで, 本図幅中では, 過去のあいまいな区分の主旨を生かして, 宮本複合岩体の西側付近から北西にかけての線を境に 整合関係で両者は接していることにしてある。 つまり, 塩基性岩源変成岩が多くなるところから東側を御斎所変成岩類, 西側を竹貫変成岩類とする。 後述する「II.3 変成岩類の地質構造」で述べているように, 竹貫変成岩類は大きなドーム状の褶曲を特徴とし, 御斎所変成岩類は鋭角的に折れ曲がった比較的 波長の短かい褶曲をしている。 そして, 竹貫変成岩類は御斎所変成岩類の下部に漸移するようである。

ここで注意をしておくが, 以上の説明は一応 常識的なものであり, 後に述べるように, 別の推定も成り立つのである。 その点, 今後の問題にわたる部分が多いことを指摘しておきたい。

次に阿武隈山地東縁の変成岩類との関係について述べる。 阿武隈山地東縁には, ほぼ南北に伸びる2本の大きな破砕帯があり, それに沿って, 北から 割山 わりやま [ ← 宮城県 角田市 平貫 割山峠 ] 山上 やまがみ [ ← 福島県 相馬市 山上 ] 松ヶ平 まつがたいら [ ← 福島県 相馬郡 飯舘村 松ヶ平 ] 高ノ倉 たかのくら 新井田川 にいだがわ [ ← 福島県 南相馬市 原町区 高倉・新田川 ] 八茎 やぐき [ ← 福島県 いわき市 四倉町の八茎鉱山付近 ] などの各地に変成岩類が分布している。 これらの変成岩類と 同じ地域に分布する古生層(上部デボン系から二畳系までの存在が確かめられている) との関係は, 北上山地における母体層群と古生層との関係とよく似ている。 その時代については二つの可能性が考えられる。 すなわち, 一つの可能性としては, 佐藤敏彦(1956)のいうように, これらの変成岩類は上部デボン系に不整合におおわれており, 先後期デボン紀の変成作用であろうというものである。 今一つは, 小貫義男(1966)も指摘しているように, これらの変成岩は下部~中部デボン系(一部シルリヤ系を含む)を主としたものであるが, 変成作用の時期は後期デボン紀~前期石炭紀であろうというものである。

北上山地も含め, これらの変成岩はいろいろの岩石学的性質から考えて(岩生(1958); SEKI and OGINO(1960); 黒田・小倉(1960); KURODA and OGURA(1963); KANISAWA(1964)), 藍閃石片岩変成帯のものであったらしい。 しかしそれが三波川帯の延長でないことは地質学的に明らかなことである [ 以下の [注] 参照 ]

[注]
三波川帯では古生層上部(二畳系さえ)まで藍閃石変成作用をうけている。 また, その変成作用の年代測定データもまったく異なっている。 その他, 地質学的背景が異なっている。 これらのことは本図幅で詳しく述べる余裕がないので, 黒田(1963)や MINATO et al.(1965)などを参照されたい。

さて, このような変成岩類と御斎所・竹貫変成岩類との関係は, 直接的には確かめられていない。 ただ, この破砕帯にそってはセプタ状に御斎所・竹貫変成岩類に似た岩石が産している(大野ほか,1953)。 しかし, それと前述の藍閃石片岩帯のものらしい変成岩との関係はよくわからない。 もし, それらが漸移しているとすれば, 御斎所変成岩の一部に, 東縁の藍閃石片岩帯のものが混入している可能性も否定はできない。 事実, 御斎所変成岩類の一部には, 藍閃石片岩帯の変成岩によく似た微褶曲構造を示して肉眼的には区別しにくいものもある。 ただし現在の御斎所変成岩類の中には藍閃石は発見されていない。

II.2.3 変成分帯と岩石記載

MIYASHIRO(1958)は, 第 9 図に示すように, この地域を A, B, C の3つに分帯した。 しかし, この各帯の境は鉱物の反応関係で示されるようにはっきりしたものではない。 第 10 図の鉱物共生関係図を見ればわかるとおり, ゾーン A とゾーン B との境では砂質・泥質岩では出現鉱物に差がない。 もっとも, 彼は塩基性岩中の角閃石の軸色を中心にして分帯をしたらしいので, A → B, または A + B → C + D というような鉱物の反応によった境をゾーンの境としていない。 したがって, ゾーン A, B, C の境がかなりあいまいであるのは仕方がない。 しかし, 実はそれが後述するようにこの地域の特色の一つでもあるのである [ 以下の [注] 参照 ]

[注]
MIYASHIRO の 1961 年の論文ではよりかんたん化されて, 1958 年のものよりもゾーンの境の意味ははっきりしてきている。 いずれにせよ, A は緑色片岩相に, B と C は角閃岩相に相当し, 緑れん石角閃岩相が欠除していることを強調している。

第 10 図 MIYASHIRO(1958)の分帯図

変成岩の変成度の上昇は, ある線(または面)で境されるようなきわどいものか, 漸移的なものか, それ自体が問題でもあるが, 上述のような角閃石の軸色による基準は, 岩石の総化学成分によってもかなり左右されるであろうから, 反応式で境されるものに較べれば, P - T 条件を考えるときにはあいまいなものでしかない。

いっぽう, 牛来(1958)も第 11 図のような変成分帯を示した。 この図の都城のものと異なる点は, 緑れん石角閃岩相を示す部分がかなりの幅で描かれていること, C 帯の分布が鮫川岩体を中心とするように書かれており, とくに C3 亜帯に特徴的に珪線石 - 菫青石 - 雲母片麻岩が強調されていることである。

第 11 図 牛来(1958)の変成 分帯。
Ⅰ : 古期迸入岩体, Ⅱ : 新期迸入岩体, Ⅲ : 接触変成帯(角閃岩相)。
1 : 入遠野, 2 : 根岸 [ ← 南隣の川部図幅地域内 ] , 3 : 才鉢, 4 : 大原 だいはら , 5 : 竹貫, 6 : 石川,
In : 犬仏山, Go : 御斎所山, Mi : 三珠 みかぶ 山, As : 朝日山 [ ← 南隣の川部図幅地域内 ]

[ 第 11 図の変成 分帯 ]
A : 緑色片岩帯
B : 緑れん石 角閃岩帯
C : 角閃岩帯   C1 : 雲母片岩帯
 C2 : 鉄ばん ざくろ石 雲母片岩帯
 C3 : 珪線石 菫青石 雲母片麻岩帯

第 12 図 変成 分帯図。
a : 迸入岩類, b : 好間川岩体接触帯, c : ゾーンⅠ, d : ゾーンⅡ

本報告では, これらのもの [ = 第 9 図の MIYASHIRO(1958)の変成分帯と第 11 図の牛来(1958)の変成分帯 ] とまったく別個に, 変成岩地域を大きく二つのゾーンに区分した(第 12 図)。 その境はほぼ 馬場平 ばばだいら 断層で, 以東をゾーンⅠ, 以西をゾーンⅡとする [ 以下の [注] 参照 ] 。 ゾーンⅠは一般的にいえば低変成度, ゾーンⅡは高変成度と考えてよいが, その間には, ふつうの意味での鉱物出現変化図は描けない。 ただ, ゾーンⅡでは 泥質岩にかなり珪線石がふつうである [ 意味不明 ] が, ゾーンⅠでは珪線石は発見されていないということがある。

[注]
本当は変成分帯の変成度を示すゾーンという語とまぎらわしいので, 地域という語を使用するつもりであったが, 変成作用(変成史)が異なること, かつて本当の意味の変成分帯があったのかも知れないこと, などの理由もあって, あえてゾーンの語を使用しておいた。

分けた根拠は, 後で詳しく述べるが, その境を境としてざくろ石の累帯構造が逆転すること, それより西側では crenulation [ ← 複数方向の応力で形成された岩石組織 ? ] の型の S3(Ⅱ・Ⅲ 型)が出現すること, 東側は西側にくらべて変成鉱物の粒度が極端に小さいこと, などである。 このように, ふつうの意味での変成分帯ができにくいことは, この地域の変成史の複雑さと関係するものであろう [ 以下の [注] 参照 ]

[注]
ここでは古い時期の変成作用の レリクト [ ← 残留鉱物 ? ] と考えられる藍晶石や十字石は 現在の変成岩類の分帯の規準にするわけにはゆかないと考えている。

[ II.2.3.1 ] ゾーンⅠ

このゾーンは後述するように, 粒度が小さいことをのぞけば, 変成度としては角閃岩相を示すものも, 緑れん石角閃岩相を示すものも存在する。 それら変成度の異なったものの産状の規則性, たとえば地質構造や層準との関係などは 今のところデータが少ないこともあってよくわかっていない。 ひじょうに一般的にいえば, 東には低変成度のものが多く, 西には高変成度のものが多い。 しかし, どこかに線をひいて緑色片岩相, 緑れん石角閃岩相, 角閃岩相を分帯することは今のところ不可能である。 それほど入りまじっているということでもある。 好間川 よしまがわ 岩体に接したせまい地域では, ほとんどが角閃岩相のものとなっており, 後述のざくろ石のデータとも合わせ考えてみると, その部分は好間川岩体による後期の接触変成帯であろう。

塩基性岩石 : 緑色片岩相を示すものは, 陽起石・緑泥石・緑れん石・酸性斜長石を主成分鉱物とし, リューコクシン・不透明鉱物・石英・黒雲母・方解石などをいろいろの量で含んでいる。 全体に細粒であるが, 原岩の残存組織を示すようなものはまったく見られない。 陽起石は淡緑色~淡黄緑色の弱い多色性を示す針状結晶である(第 13 図)。

第 13 図 縁色片岩(YK65 - 24), 遠野町 入定の西方約 1 km。 針状鉱物は陽起石, 不透明鉱物は磁鉄鉱, 脈を構成する白色鉱物は主に曹長石

このようなものが若干変成度が上昇してきたとおもわれるものでは, 角閃石が不均質となり, 内側が淡色, 外側が緑色の累帯構造を示すようになる。 また, 緑れん石は少なくなり, 斜長石には内側は曹長石質, 外側は中性長石質という逆累帯構造が見られるようになる。 この斜長石の逆累帯構造の境はシャープで, 外側の部分の幅はせまく, 角閃石の淡色 → 緑色への変化と対応しているように思われる。 このようなものは緑色片岩相から, 緑れん石角閃岩相を欠除して角閃岩相へと変成度がすすんだ証拠としてみられていた。 しかし, これは増進変成作用の過程を示すものではなく, 局部的な(接触変成的な), しかも時期を異にする温度上昇を示すものであろう。

完全に緑れん石角閃岩相を示すものもある。 すなわち, 均質の緑色普通角閃石・曹長石・緑れん石の組合わせを主とし, 少量の石英・黒雲母・不透明鉱物を含むものである。 また, 緑色普通角閃石に斜長石(中性長石)の組合わせを主とする角閃岩相のものもある。

泥質・珪質岩 : これらの変成岩はゾーンⅠのはんいではほとんど同じような鉱物組合わせ, 粒度からなっており, 塩基性岩に見られたような変成度の違いを見分けることは困難である。 ただ, 緑泥石の量に多少の変化がある。 また, ゾーンⅡではざくろ石は普遍的であるが, ゾーンⅠでは黒雲母の多いものには少なくて, 珪質のものに多い傾向がある。 かつ, 珪質岩中のざくろ石はとくに Mn に富む傾向もある。 構成鉱物は石英・カリ長石・斜長石・電気石・リン灰石・不透明鉱物である(第 14 図)。

第 14 図 ざくろ石黒雲母片岩(YK65 - 11), 御斎所街道峠 [ ← 御斎所山の北部にある御斎所峠 ? ] 付近。 このざくろ石は Mn に富んだパイラルスパイト [ pyralspite ] で, MnO = 20.4 %。
G : ざくろ石, bi : 黒雲母

[ II.2.3.2 ] ゾーンⅡ

このゾーン内ではすべて典型的な角閃岩相を示す粗粒の変成岩である。 ゾーンⅠにくらべて, ひじょうに粒度が大きい。 ゾーンⅠでは塩基性岩でも泥質岩でも, 石英・長石のようにコロコロしたものではふつう 0.02~0.04 mm, 雲母・角閃石のように長く伸びた鉱物では長いもので 0.08 mm 程度であった。 しかるに, ゾーンⅡでは, 石英・長石類でふつう 0.08~0.20 mm, 雲母・角閃石の長く伸びたもので 0.20~0.35 mm 程度である。

このゾーンの中にも多少の変成度の差があるかとも思われるが, 今のところ判然としない。 ただ, 花崗質岩体に近いところでは, 局部的に珪線石 - 正長石の組合わせに紫蘇輝石をともなうものがあり, 輝石ホルンフェルス相程度になっているところがある。

塩基性岩 : 中性長石と普通角閃石を主成分鉱物とする典型的な角閃岩が主体であるが, 時に透輝石を含む部分もある。 角閃石には青緑色でヘスチングサイト質のものと褐色がかったものとがある。 褐色がかったものは鮫川複合岩体の近く -- 牛来の C3 亜帯に多く見られるが, 変成度の上昇を意味するかどうかは疑問である。 化学組成の影響かもしれない。

ざくろ石(パイラルスパイト [ pyralspite ] )は普通の組成の角閃岩にはほとんど現われず, 石灰岩と密接な関係にある鉄の多い特殊な角閃岩に産出する。 横川 [ ← 竹貫の南東方 1 km ] 産のものはその一例である(KANISAWA, 1969)。 同じ露頭から 十字石・コランダム・ヘルシナイト・珪線石・ざくろ石・マーガライトなどを含む Fe・Al が特別に多い変成岩が発見されている(URUNO and KANISAWA, 1965)(第 15 図)。 この十字石は, 宇留野と宮城第一女子高校生徒の 川砂の追跡からつきとめた現地露頭からみいだされた最初のものである。

第 15 図 珪線石 十字石 ざくろ石岩(HK6573101), 古殿町 照内 [ ← 長光地 ちょうこうじ の北北西方 1 km ] 。 十字石(St, 実線でかこんだ部分)は, 写真ではざくろ石(Ga)と区別がむずかしいが, 鏡下では黄色の多色性が顕著なので, はっきり同定できる。
si : 珪線石 [ sillimanite ] , sp : ヘルシナイト [ hercynite ; 鉄尖晶石 ]

鉄ばん ざくろ石 [ almandine ] を含むふつうの組成の角閃岩も, 熊倉付近その他 2, 3 の地点から発見された。 熊倉 [ ← 大辷 おおつべ 山の東方 3.5 km ] のざくろ石は径 4 mm の大晶で, Mn が比較的少なく Fe に富んだパイラルスパイトである(第 3 表)。 後に述べるように, このような岩石は, 藍晶石や十字石の残晶を含む岩石とともに, 古い Dalradian 型 [ ← スコットランドの変成帯のタイプ ] の広域変成作用の時の残存岩石と考える。

第 3 表 熊倉産 ざくろ石 [ の化学組成 ] (EPMA 分析 : 加納)

重量 % 原子数(O = 12)
SiO2 36.07 Si 2.93
Al2O3 21.30 Al 2.04
FeO 31.25 Fe 2.12 3.05
MnO 5.61 Mn 0.39
MgO 2.10 Mg 0.25
CaO 3.40 Ca 0.29
99.71

全体的に, 斜長石の組成は An 40~An 55 程度のものが多いが, 時には An 90 以上のものもある。 一般に累帯構造の組成変化幅は An 2~7 と小さいが, 多くのものが逆累帯構造を示す。 正常な累帯構造を示す場合もあるが, その時は変化幅が大きい。

珪質・泥質岩 : 竹貫変成岩には SiO2 が 80 % 以上の珪質岩が多い。 それらは石英を主とし, 斜長石・カリ長石・黒雲母・ざくろ石・不透明鉱物・石墨を含む。 泥質岩でも構成鉱物の種類は変らないが, 石英が少なくなり, 長石・黒雲母・石墨がふえる。 菫青石または紅柱石を含むものはわりあい少なく, ことに菫青石を有する岩石は 小名沢 おなざわ [ ← 三株 みかぶ 山の北西方 3 km ] 付近から鎌倉岳の南方にかけ, 鮫川岩体をとりまくドーム状背斜構造の中の薄い一層準に発見されているにすぎない (第 16 図)。 紅柱石も上記の小名沢産の片麻岩と, 好間川岩体の接触部(中ノ内 [ 位置不明 ; 図幅地域東端付近・南北中央の鶴石山の北方 3 km ] )にみられるだけである。 これに反して, 珪線石は鮫川岩体のまわりでは珍しくなく , 比較的大きい結晶が発達する。 斜長石は An 23~35 程度でほとんど累帯構造を示さないが, 測定したかぎりでは An 2~4 の変化幅で逆累帯構造を示している。

第 16 図 菫青石 黒雲母片麻岩(HM66102303), 古殿町 小名沢。
C : 菫青石, G : ざくろ石(棒状に伸びている), B : 黒雲母, Si : 珪線石(粒状断面), P : 灰曹長石, K : カリ長石, Q : 石英, ap : 燐灰石

第 17 図 藍晶石(K)を含む黒雲母片麻岩, 古殿町 長光地。
B : 黒雲母, P : 灰曹長石

竹貫の西方の長光地の小さな沢の黒雲母片麻岩からみいだされた藍晶石は, 第 17 図に示したように, きわめて微細な残晶である(KANO and KURODA(1968); 総研 阿武隈グループ(1969))。 この付近でこれまで露頭を確認したのは今のところここだけであるが, そのほかにも, 長光地で成功した [ 場合 ] と同じ方法で探せば, 藍晶石の発見が期待できる個所は少なくない。 第 18 図に示した小沢の流域がその一例である。 これらの地点を結ぶ地帯は おそらく古い時期の変成作用の含藍晶石岩の層準を意味するものであろう。 十字石の分布がそれとは別の層準を示していることも興味深い。

第 18 図 竹貫の西方地域における, 川砂中の十字石および藍晶石の分布(宇留野)。

[ II.2.3.3 ] 斜長石の秩序度

ゾーンⅠの斜長石は細粒すぎて測定が困難であるが, ゾーンⅡのものについて測定した結果を第 19 図に示す。 これからわかるように, 秩序度が 0.6~1.0 のものが圧倒的である。

第 19 図 ゾーンⅡの各種変成岩中の斜長石の秩序度(蟹沢の原図による)

[ II.2.3.4 ] 変成岩の化学組成

今回の調査ではとくに多量の変成岩類の全岩分析は行なわなかったが, 代表的なものについてだけ第 4 表に示した。 MIYASHIRO(1958)は彼のゾーン A, B, C ごとに何個かずつ全岩分析を行ない, 塩基性岩も泥質~砂質岩も各ゾーンごとに少しずつ組成が異なるかのように考えた。 もっとも, 彼は後に, いろいろの機会にそのことを否定している。 MIYASHIRO(1958)のデータやその後のデータを合わせ考えても, とくにこの地域の変成岩が変わった組成をもっているとは思えないし, ゾーンⅠ, Ⅱの間での違いも明らかではない。 今後の研究に待つべきところであろう(第 4 表)。

第 4 表 代表的な御斎所・竹貫変成岩の化学組成(分析 : 平野次男)

試料の産地 1 2 3 4 5
SiO2 46.06 69.73 48.22 60.35 46.29
TiO2 2.56 0.69 0.56 0.60 1.09
Al2O3 18.70 14.64 13.65 17.36 16.78
Fe2O3 3.85 1.46 2.41 1.69 2.88
FeO 5.72 3.68 6.30 4.87 8.98
MnO 0.18 0.09 0.13 0.19 0.32
MgO 5.28 1.85 9.52 3.14 7.97
CaO 10.95 1.58 13.50 4.35 11.30
Na2O 3.12 2.72 2.52 2.82 1.32
K2O 0.92 1.55 0.43 2.72 1.20
H2O (+) 2.36 1.53 2.01 1.38 1.32
H2O (-) 0.13 0.07 0.12 0.06 0.02
P2O5 0.10 0.07 0.09 0.08 0.04
Total 99.93 99.66 99.46 99.61 99.51
[ 第 4 表の試料の産地の詳細 ]
1(71 I 2203):
緑色片岩(緑れん石・陽起石・曹長石・石英), 遠野町 皿貝 さらがい [ 位置不明 ; 図幅地域南東隅 ]
2(71 I 2204):
珪質片岩(黒雲母・石英), 遠野町 皿貝
3(71 I 2205):
角閃片岩(角閃石・斜長石・少量の透輝石・石英), 峠 [ ← 御斎所峠 ? ] ~ 才鉢間
4(71 I 2206):
黒雲母片岩(ざくろ石・黒雲母・斜長石・石英), 古殿町 小名沢
5(71 I 2206):
角閃岩(角閃石・斜長石), 古殿町 入道 にゅうどう [ ← 三株山の西北西方 2.5 km ]

II.2.4 複変成作用

御斎所・竹貫変成岩に十字石や藍晶石が残晶状にみいだされること, 竹貫変成岩はもともと菫青石をほとんど含んでいなかったこと(KURODA, 1959)などから考えて, それらが少なくとも, 低圧高温あるいは紅柱石 - 珪線石 型の変成作用を, 簡単にただ1回だけ受けて出来たものではないことは明らかである。 言いかえれば, これらは複変成岩 -- それもきわめて複雑な歴史をたどったものである。

第 20 図 ざくろ石の累帯構造による分帯(加納)

第 5 表 ざくろ石の化学組成(EPMA 分析 : 加納)

ゾーン 産地 番号 SiO2 Al2O3 FeO MnO MgO CaO
平口 73003 36.3 22.4 12.0 21.8 0.5 9.6 102.6
平口 73008 34.9 21.0 20.4 21.8 1.0 1.3 100.4
沢渡鉱山 36.7 21.6 20.2 20.0 1.1 3.0 102.6
新田 66102308 34.8 21.4 28.4 14.0 1.7 0.7 100.9
御斎所 72711 34.6 21.0 22.7 20.9 1.0 1.0 101.2
御斎所 65-11 34.7 21.3 22.4 20.4 0.8 1.8 100.4
御斎所 72713 36.4 21.5 31.0 8.4 2.1 1.5 100.8
越代 6980903 34.9 22.0 26.8 13.8 2.3 1.0 100.8
雨降山 34.0 20.9 5.5 34.2 0.3 4.8 99.7
葭平 6983102 - - 2.2 39.9 0.4 4.6 -
熊倉 6981906 36.6 21.4 19.5 17.4 0.6 4.1 99.6
Ⅰ' 高野 69110403 - - 26.3 5.8 4.8 1.2 -
堀内 6991602 34.2 21.6 27.9 12.6 3.0 1.0 100.2
宿 6990301 35.4 21.0 23.8 12.7 4.5 2.8 100.2
貝屋沢 6982501 36.2 21.4 23.6 15.9 2.7 1.6 101.4
石住 66101104 35.2 21.9 20.7 14.1 2.1 6.4 100.5
仁田 66102308 35.3 21.9 25.4 14.1 3.0 0.8 100.5
大原 66082005 34.8 21.3 32.5 5.2 4.0 1.2 99.1
古内 66102301 37.0 20.7 28.8 11.0 2.8 0.7 101.0
馬場 66103107 36.4 21.6 31.8 6.4 3.4 1.0 100.5
松風 66082002 36.5 21.7 29.8 7.6 4.8 1.4 101.8
松風 66082003 34.9 21.3 29.1 8.8 4.6 1.1 99.8
前木 66100703 36.2 21.7 26.1 8.1 4.9 2.8 99.7
古殿 66100407 34.6 21.9 24.4 10.6 4.5 4.1 100.1
戸草 66090309 35.9 22.3 28.2 9.8 4.1 1.3 101.6
宮前 66090304 36.2 22.0 29.5 9.4 3.6 1.0 101.6
宮前 66090303 36.0 21.1 24.4 14.4 4.0 0.8 100.7
作根 66090302 35.6 21.3 27.8 11.3 2.8 0.9 99.7
谷地 670724-1 35.5 21.6 29.3 7.6 5.1 0.9 100.0
鬼越 65090410 34.6 22.4 16.9 20.0 6.0 1.9 101.8
入道 65072917 34.4 22.2 14.1 23.0 6.2 1.8 101.7
横川 66090306 33.5 20.9 41.0 0.6 2.3 0.5 98.7
[ 第 5 表に関する注意書き ]
ゾーン Ⅰ' は好間川岩体接触帯。
化学分析の値は結晶を直径方向に 10 等分して行なった点分析の平均値

都城が低圧高温型変成作用の証拠の一つとしたものに, ざくろ石の Mn 含有量がある [ 以下の [注] 参照 ] 。 そこでわれわれもざくろ石に注目し, あらゆる変成度の泥質岩中に産する 30 数個のざくろ石を EPMA(電子線プローブ マイクロ アナライザー)で分析した(第 20 図 [ および第 5 表 ] )。 その結果によると, ほとんどすべてのざくろ石は累帯構造をしており, 外縁部だけをとってみると, ゾーンⅠでは MnO の量は少ないもので 5 %, 多いもので 37 % に達する。 それに対し, ゾーンⅡでは最低 0.5 %, 最高 25 % である。 これまで言われていたように, 低変成度から高変成度にかけて MnO 量が急激に減少するということはない。 珪線石が安定な高変成度の部分でも 21 %( 鬼越 おにごえ [ ← 長光地の南南西方 2 km ] ), 25 %(入道 [ ← 三株山の西北西方 2.5 km ] )という高マンガンざくろ石を産する。 いっぽう, 御斎所街道の峠付近では MnO = 5 % というアルマンディン [ 鉄ばん ざくろ石 ] を含む黒雲母片岩が, MnO = 20 % のざくろ石を含む黒雲母片岩と近接して産出したりする。 ちなみに, 前者 [ = 珪線石が安定な高変成度の地域(鬼越や入道)で産する高マンガンざくろ石 ] は以前から阿武隈研究者の間で diaphthorite [ = 後退変成作用を受けた岩石 ] (SUGI, 1935)と言われていた岩石の一つである。

[注]
彼(MIYASHIRO, 1953b)はざくろ石と黒雲母との間の Mn - Fe - Mg の分配を考え, それが温度条件を反映するであろうと考えた。 当時としてはひじょうにすぐれた先駆的な業績であった。

第 21 図 ざくろ石の累帯構造(加納)

次にざくろ石の累帯構造による組成変化を Mn - Fe - Mg 三角図(第 21 図)でみると, ゾーンⅠから産出するものはスペサルタイトに近いものからアルマンディン質のものまで, すべてが中心から外縁に向って Mn が一せいに減少する。 これを仮に正の累帯とする。 これに対してゾーンⅡから産出するざくろ石は, [ 竹貫の南東方 5 km の ] 大原 だいばら 産の H' と H" を例外として [ 以下の [注] 参照 ] , 中心から外側に向って Mn が逆に増加(Mg は減少)する逆の累帯型式を示す。

[注]
大原 だいばら 産のものは十字石, 藍晶石の他に各種の残存鉱物やめずらしい鉱物の出る変成岩の露頭のもので, 全体的傾向とは一緒にできない。

Mn の量に関してざくろ石の累帯構造の型式が, ゾーンⅠとⅡとでこのようにはっきりと違うのはなぜかということであるが, ゾーンⅠのものでも好間川岩体の接触変成域に産出するざくろ石が, ゾーンⅡのものとまったく同じ道累帯構造をなすことからすれば, ゾーンⅡのざくろ石も似たような条件下で再結晶(複変成)し, 外側に向って Mn が増加し Mg が少なくなる方向(図の矢印の方向)に変化した と考えることもできる。 そうだとすれば, ゾーンⅠの正累帯ざくろ石は, そのさいに複変成の影響をほとんどまたはまったく受けなかったということになる。 しかし, ゾーンⅡと好間川岩体の接触帯とが 同じように熱による複変成作用であると断定することはできない。 ゾーンⅡの変成条件とゾーンⅠの変成条件が異なっていたと考えてもよい。

第 22 図 ざくろ石と黒雲母との元素分配(ゾーンⅠ)(加納)

第 23 図 ざくろ石と黒雲母との元素分配(ゾーンⅡ)(加納)

このようなことは, 同じ薄片内で共生するざくろ石と黒雲母の間における元素の分配関係からも 上述と同様な推論が可能である(第 22・23 図)。 [ これらの ] 図では同じ薄片中のざくろ石と黒雲母の点を tie-line で結んである。 今, この tie-line の Mn を頂点としたときの傾斜に注目すると, [ 第 22 図の ] ゾーンⅠでは御斎所(G)を別とすれば, 比較的急傾斜(> 60°)であるが, [ 第 23 図の ] ゾーンⅡではわりあい緩い傾斜(≦ 60°)となる。 また, ゾーンⅠとⅡの境界に近いものは中間的な傾斜を示すこと( [ 第 22 図のゾーン ] Ⅰの S, [ 第 23 図のゾーン ] Ⅱの I・K・N・Ko など), [ ゾーンⅠ' の ] 好間川岩体の接触変成域の逆累帯ざくろ石が tie-line の傾斜においてもゾーンⅡと同じになることは注目に値する。 このように tie-line の傾斜が地域によって異なることは, それぞれのゾーンまた地域の形成された温度・圧力条件が違うことを意味する。 同一または近似の条件下でできたざくろ石は, たとえ組成が著しく違っていても -- 例えば, [ 第 22 図の ] ゾーンⅠの Y とそのほかのもの, 共存する黒雲母とを結ぶ tie-line は互に平行か, 交わっても大きくは交わらない [ 以下の [注] 参照 ]

[注]
これらのざくろ石と黒雲母の共存関係, 全岩の組成との関係, ゾーソⅠ, Ⅱの間の差については別途詳細な報告をする。

以上のことから結論として, ゾーンⅠとゾーンⅡとは変成作用の性格と履歴を異にし, 単一のサイクルでできた同一相系列の変成帯を構成するものではなさそうである。 その場合, 二つの可能性が考えやすい。 まず第一は, ゾーンⅠもゾーンⅡも原岩はおそらく先カンブリア系 [ 以下の [注] 参照 ] で, はじめにいわゆる Dalradian 型 [ ← スコットランドの変成帯のタイプ ] の広域変成作用を受けた。 変成度は西高東低で, 東から緑色片岩相 - 緑れん石 角閃岩相 - 角閃岩相となり, 角閃岩相の部分では十字石・藍晶石を含み, 菫青石をほとんど含まない変成岩が形成された。 その後, おそらくジュラ紀か白亜紀の初めごろ, 花崗岩類の迸入を伴ったいわゆる紅柱石 - 珪線石型に近い熱変成作用がおこった。 その結果, ざくろ石には逆黒帯構造が生じ, 十字石や藍晶石は残晶となってしまった。 それがゾーンⅡであるという考え方である(黒田・加納, 1970)。

[注]
ここで何故 先カンブリア系と考えねばならないかについては議論しない。 一つの可能性の問題であり, 興味をもつ人は黒田(1963)その他一連の論文, あるいは MINATO et al.(1965)を参照されたい。

第二の考え方は, もともとゾーンⅡとゾーンⅠとは異なった変成岩類であって, ゾーンⅡはかなり変成度の高い Dalradian 型のものであり, ゾーンⅠは変成度の低い, あるいは変成作用の型式の異なる阿武隈東縁の変成岩に似たものであった。 この場合, 両者は時代が異なった可能性もある。 そして, これらすべてが後からの花崗質岩石により接触変成作用をうけたというものである。 この立場をとれば, 御斎所変成岩と竹貫変成岩はもともとちがっており, その境がゾーンⅠとⅡの境であるという見方も成立する。

II.3 変成岩類の地質構造

II.3.1 概説

御斎所変成岩類に見られる褶曲構造は, 標本の規模, 露頭の規模, さらに大きな地質図上での規模のいずれの場合でも, 褶曲頂部が鋭角的に曲げられたものが普通である(第 24 図)。 当地域がまだ詳しく調査されていなかった段階で書かれた地質図上の岩相境界が, いずれも直線に近い線で南北に走っているのは, このような御斎所変成岩類に特有な褶曲構造を見のがしていたからであろう。

第 24 図 御斎所変成岩の褶曲構造 -- P2 褶曲の parasitic fold のいろいろの産状(大平, 1970)

宮本複合岩体の東側に分布する御斎所変成岩類には 北北西 - 南南東から南北方向にゆるく傾斜した軸をもつ褶曲構造が圧倒的に多い。 軸の方向は, 北部で北西 - 南東方向に変化し, 宮本複合岩体周辺部で少し急傾斜になる。 好間川, 入遠野両岩体の周辺では目だった変化は認められない。

いっぽう竹貫変成岩類では翼部が開いた褶曲がごく普通である。 その褶曲軸ないしリニエーションは一定の方向を示していない。 これはいくつかの時期にまたがる線構造が存在するということであるが, 御斎所変成岩類に見られた線構造の傾向とは, はっきり異なっている。

このような著しい差異は, 御斎所変成岩類に特徴的な褶曲構造と 竹貫変成岩類に特徴的な褶曲構造とが, 時期と性格を異にする二つの変成作用ないし造構造運動によって形成されたからである。 われわれは, 前者 [ = 御斎所変成岩類に特徴的な褶曲構造 ] は古い褶曲構造の残存であり, 後者 [ = 竹貫変成岩類に特徴的な褶曲構造 ] は深成活動に結びついた新しい褶曲構造であると考える。

II.3.2 構造要素の記載

まず御斎所竹貫変成岩類にみられる構造要素 [ 以下の [注] 参照 ] にどんな種類のものがあるか, また, それらが成因的にどんな関係にあるかを説明しておく。 いろいろ構造要素が御斎所・竹貫変成岩類のすべての岩相に一様に見られるわけではない。 たとえばある種の面構造は御斎所変成岩類のうち泥質~珪質岩にのみ現われ, 塩基性岩には見られない。 また, 御斎所変成岩類には普遍的に見られるのに 竹貫変成岩類ではまれにしか見られないということもある。

[注]
ここで構造要素と呼んでいるのは野外や顕微鏡下で観察できる小構造のことで, 面構造と線構造に大別できる。

御斎所・竹貫変成岩類に見られる面構造は, その形成順序に従って古い方から S1, S2, S3, S4, S5 の5つに区別できる。

線構造はリニエーションと褶曲(軸)にわけて扱う。 リニエーションは古いものから, L2 と Lm2, L3 と Lm3, L4 と Lm4 の3つのグループに分けられる。 褶曲軸は, 同じように B2, B3, B4, B5 の4つに区別できる [ 以下の [注] 参照 ]

[注]
以下, 単に B2, B3, … と呼ぶのは B2 褶曲, B3 褶曲, … の軸のことである。 それらを軸とする褶曲構造の場合は, B2 褶曲, B3 褶曲, … と呼ぶことにする。

以下この順序で説明する。

II.3.2.1 面構造

S1 : 本地域の全体にわたって発達しているもので, ある種の変輝緑岩岩脈など, 2, 3 の塊状岩を除くほとんどすべての変成岩類にみいだされる。 雲母類, 緑泥石類のような層状構造の鉱物や 角閃石類の規則的な配列によって特徴づけられる片理構造であり, 層理面に大ていの場合平行である。 上記の鉱物類の定方向配列がみられない変成岩の場合には, もとの層理面が観察されれば, それを S1 として取り扱った。

S2 : 後述する B2 の軸面に平行な劈開で, LEITH その他によって定義された Strain-slip-cleavage の特性を示している。 B2 褶曲の翼部にしばしば発達している軸面劈開にほぼ平行な小断層も, S2 として取り扱った。

S2 はゾーンⅠの変成岩, とくに泥質片岩と珪質片岩の互層中でよく観察される。 ゾーンⅡの変成岩類中ではほとんど発見できない。

S2 に沿う鉱物の走向配列はほとんど認められない。 しかし, ある場合に白雲母が, 平行に配列している例もある。

S3 : 後述する B3 褶曲の軸面劈開に相当する面構造で, 本地域のどこででもみいだされる重要な面構造である。 S3 は変輝緑岩のような塊状岩にも発達し, また微弱ながら花崗質岩脈にも認められることがある。 鏡下で観察すると, S3 に沿う黒雲母の配列の仕方によって, S3 は次の3つの型に分類できる(第 25 図)。

第 25 図 黒雲母の配列によって特徴づけられる B3 褶曲の軸面劈開(S3)の3つの型式と黒雲母の (001) の fabric(梅村, 1970)。
a. Ⅰ型(測定数 : 200, 等密度線 : 1 - 3 - 5 - 10 - 15 - 20 %)
b. Ⅱ型(測定数 : 150, 等密度線 : 1 - 3 - 5 - 7 - 9 %)
c. Ⅲ型(測定数 : 200、 等密度線 : 1 - 3 - 5 - 7 - 9 %)

Ⅰ型 : B3 褶曲に結びつけられる軸面片理面(axial plane schistosity)で, 黒雲母の平行配列によって特徴づけられる [ 以下の [注] 参照 ] 。 S2 と S3 が同時に発達している岩石では, この両者を野外で区別するのは必ずしも容易ではない。

[注]
Ⅰ型の S3 を示す泥質片岩や珪質片岩の黒雲母の (001) は S3 にほぼ完全に平行である。

Ⅱ型 : 次に記すⅢ型の特性と上のⅠ型の特性をあわせもったものである。

Ⅲ型 : いわゆる crenulation cleavage [ ちりめんじわ劈開 ] の特性をもつ S3 である。 これは雲母類の (001) は S1 に平行配列し, その S1 が微褶曲を規則的にくり返すことによって現われる面構造であって, Ⅰ型のように, はっきりした片理面とか「割れ(fracture)」とかの形で認められるものではない。 黒雲母を多く含むⅢ型の S3 を示す変成岩を鏡下で観察すると, Ⅰ型の場合と異なり, 黒雲母がある褶曲軸をとりまいて規則的に配列していることが明らかである。

上の3つの型の S3 はそれぞれ別な地域に発達している。 一つの標本で2種の S3 がみいだされる例はない。 大ざっぱにいえば, Ⅰ型はゾーンⅠの東半分に分布する岩石中に, Ⅲ型はゾーンⅡの変成岩中に, Ⅱ型は両者の中間ゾーンⅠの西半分の変成岩中に発達しているといえる。 各型が発達している岩石相互の境界は北西 - 南東の方向で, MIYASHIRO(1958)の A・B・C 帯の境界とは一致しない。 もちろん, 変成岩類の岩相境界とも一致しない。

このように, 三つの型の S3 がそれぞれ異なる地域に発達しているのは, S3 形成時, ないし形成直後における温度・(圧力)条件が, 地域全体を通じて一様でなかったことを暗示しているのであろう。

S4 : 後述する B4 褶曲の褶曲軸面に平行に発達している "crenulation cleavage" で, S3(Ⅲ型)と同じく「割れ」ではない。 S4 は西部地域の, とくに宮本複合岩体の西~南部, すなわち, 鮫川岩体の周縁部でしばしば認められる。

S5 : キンクバンドに類似した B5 褶曲(後述)の軸面に相当する。 S5 に沿った鉱物の定方位配列は認められない。

II.3.2.2 線構造

前述のように, リニエーションは L2~L4, Lm2~Lm4 [ 以下の [注] 参照 ] に, 褶曲軸は B2~B5 にグループ分けができるが, これらの線構造は成因的に L2・Lm2・B2, L3・Lm3・B3, L4・Lm4・B4, B5 の4つのグループに分けることもできる。 そこで, 線構造の記載はこの新しいグループに従って行なう。

[注]
Lm というのは雲母, 角閃石, 珪線石などが規則的に配列した結果生じた線構造をいう。

L2・Lm2・B2 : 東部地域のゾーンⅠではっきり認められ, 3者はそれぞれ平行である。 L2 は S1 と S2 の交線リニエーションであり, Lm2 は白雲母を多く含む変成岩中に見られる。 B2 褶曲は [ 「II.3.1 概説」の項で紹介した ] 第 24 図に示されるように, その頂部が鋭角的に曲げられた形態を示し, 時には S2 に沿う転位によって "rootless fold"になっていることもある。

L3・Lm3・B3 : 本地域全体にわたって顕著に発達している。 この3者もそれぞれ平行である。 L3 は S1 と S3(Ⅰ型とⅡ型)の交線リニエーションで, Lm3 は黒雲母や角閃石の多い岩石にみとめられる。 B3 褶曲の頂部は B2 褶曲よりもさらに鋭角的に曲げられているのが普通である。 ゾーンⅠでは一般に B2 と B3 がほぼ平行なようであるが, ゾーンⅡでは B2 褶曲と B3 褶曲の区別がむずかしい。

B2 と S2, B3 と S3 はともにほぼ全域にわたって認められるけれども, それらの発達の仕方はひどく異なっている。 B2 と S2 は変成岩地帯全域にわたってほぼ一様に発達しているのに, B3 と S3 は特にゾーンⅡに, いわば局部的に顕著に発達している。 構造要素のもつこのような局地性は, 本地域における B3 褶曲以後の造構造運動でさらにはっきりしてくる。

L4・Lm4・B4 : この3者もそれぞれ平行である。 また, これらが認められる地域は L3・Lm3・B3 のみとめられる地域よりもさらに狭く, 宮本複合岩体の南西域の竹貫変成岩類中に限られる。

L4 は B4 に平行な微褶曲軸として, Lm4 は黒雲母や珪線石, 角閃石の定方向配列によって認められる。 泥質・珪質片麻岩中で見られる B4 褶曲は鈍角的な開いた形態を示すが, すべての露頭で顕著に発達しているわけではない。

B3 に伴うⅢ型の S3 と B4 に伴う S4 はともに "crenulation cleavage" であるから, 野外で B3 と B4 の区別はもっぱら褶曲の形態によって行なった。 B4 褶曲を示す泥質片麻岩の黒雲母の (001) のゲフューゲ [ gefüge = fabric ] も, B3 のものと同じである。 珪線石の長軸はしばしば L4 や B4 に平行に配列する。 B4 褶曲は, おそらく B3 褶曲にやや遅れて形成されたもので, B4 褶曲が形成された際には「珪線石 + 黒雲母 + カリ長石」の組合せが安定であったであろう。

B5 : S1 面が頂部で角ばり, 翼部で平面的な褶曲を示すもので, いわゆるキンクバンドに相当する構造であろう。 B5 に平行な鉱物の定形配列は認められない。 B5 の方向は不定で全域にわたって観察される。

II.3.3 褶曲構造

本地域の東半分の御斎所変成岩類の地質構造は, 地質図から容易にわかるように, 急角度に折りたたまれた背斜構造と向斜構造のくり返しである。 この褶曲軸方向は大体 北北西 - 南南東ないし南北で, 落としはゆるいか水平に近い。 また, それら大きな構造と小構造の幾何学的関係から考えて, 御斎所変成岩類の S1 は一般に急傾斜である。 他方, 本地域の西半分の竹貫変成岩類の地質構造は, これまで多くの研究者によって主張されてきたように, また地質図からわかるように, 一つの背斜構造が認められるにすぎない。 しかも, 竹貫変成岩類の S1 は一般に緩傾斜である。 しかし, 地質構造を詳細に調べると, 竹貫変成岩類の構造は御斎所変成岩類のものより複雑である。

本地域の地質構造を詳細に調べるために, 全体を 23 の小区域に分割して, 数種の構造要素の幾何学的関係を吟味した。 各小区域は, その区域内でいくつかの構造要素がそれぞれ均一, ないしはほぼ均一に近い状態に分布しているように分けたものである。 小区域のうち, Ⅰ~ⅩⅢ は御斎所変成岩類が分布する地域で, ⅩⅣ~ⅩⅩⅢ は竹貫変成岩類が分布する地域である。 第 26 図と第 27 図には, Ⅰ~ⅩⅩⅢ の小区域の位置と同時に, 各小区域内で得られた S1 の極を投影したダイアグラム(πS1 - 図)と 線構造を投影したダイアグラムがそれぞれ記入してある。 以下, 第 26 図と第 27 図を参照しながら本地域の地質構造を説明する。

第 26 図 葉理面(πS1)ダイアグラム

第 27 図 線構造ダイアグラム

御斎所変成岩地域(東部地域)の構造 : [ 第 26 図に示された ] Ⅰ~ⅩⅢの πS1 - 図を見て気づくことは, 圧倒的に多数の S1 がほぼ南北に近い走向をもち, ひじょうに急傾斜であること, 走向はⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅸ・ⅩⅢなど北部に位置する小区域では, 北方のものほど北西にふれていること, ⅩⅡ・ⅩⅢなど宮本複合岩体に接する小区域では, 他の小区域のものにくらべて πS1 の最大集中域の分布の様子や位置が異なっていること, などであろう。

第 27 図に投影された線構造は L2, Lm2, B2, L3, Lm3, B3 の測定値である。 これらの線構造は, サンプルや露頭の単位で, それぞれの方位を測定した結果では一般にほぼ平行であるため, 無差別に投影した。 B2 と B3 がはっきり斜交するのは小区域ⅩⅡで認められるにすぎず, それらは東部地域全域にわたってほぼ平行である。 Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅸの小区域で線構造の落とし角が少し急傾斜であることなどは, πS1 - 図を検討した結果とよく対応している。

宮本岩体周縁部を除く東部地域の大部分の小区域で, 上に指摘したような, πS1 と線構造の間の幾何学的規則性が認められることは, B2 や B3 などの小構造の方位と 地質図に表わされる大きな構造の軸の方位が厳密に平行であることを意味している。 また, 東部地域が構造岩石学的に均一な地域であることを示している。 小構造の方位が他の小区域から変化しているⅩⅠ・ⅩⅡ・ⅩⅢ は Ⅱ型の S3 が発達している地域である。 このことは, 小区域ⅩⅠ・ⅩⅡ・ⅩⅢで認められる構造の変化も S3 の形成も 宮本岩体の活動に直接的あるいは間接的に結びついたものであることを暗示している。 これらのことから 宮本岩体が現位置に貫入する以前に S3 構造は完成していたと判断される。 そして, 小区域ⅩⅠ・ⅩⅡ・ⅩⅢで認められる小構造の規則性の変化は 宮本岩体が現位置に貫入した時期か, あるいはその直前に起こったもの, いいかえれば, 同岩体の貫入活動に直接むすびついてひき起こされたものと考えられる。 東部地域でははっきり現われないが, 西部地域に現われる B4 褶曲はその時期に形成されたものであろう。 そして, S3 構造の形成は宮本岩体など「古期」の深成活動の一部であり, S2 構造とは地域的な広がりや幾何学的性質などの点で, 質的に異なった構造である。

竹貫変成岩地域(西部地域)の構造 : 小区域ⅩⅣ~ⅩⅩⅢの πS1 - 図は東部地域の πS1 - 図にくらべて, 一般に幅広いガードルらしい形で特徴づけられている。 しかし, いずれも単一なガードルではない。 πS1 - 図がガードルを作るのは S1 の走向・傾斜が 一つないし相互に平行な二つ以上の褶曲軸に規制されて変化しているからであり, ガードルの幅が広がったり複雑な形になるのは S1 を褶曲させている平行でない構造軸が二つ以上重なっているか, あるいははっきりした構造をもたないからである。 つまり, 西部地域の地質構造は決して単純でないことがまず予想される。

従来, 西部地域の竹貫背斜の軸方向は, 地質図に表現された石灰岩の分布などから, 木戸脇 [ ← 長光地の北北東方 1.5 km ] - 中野 [ 位置不明 ; 長光地の南方 5 km の「赤坂中野」? ] を走る北北西 - 南南東の断層 [ ← 木戸脇断層 ? ] にほぼ平行だと考えられてきた。

第 28 図 竹貫変成岩地域(ⅩⅩⅠ, ⅩⅩⅡ, ⅩⅦ)の πS1 - 図(梅村, 1970)

第 28 図は小区域ⅩⅩⅠ・ⅩⅩⅢとⅩⅦの一部の S1 を投影してえた πS1 - 図(梅村, 1970)である。 この場合, 竹貫背斜の軸方向をしらべるのに, S1 の方位がいろいろな原因で複雑化している他の小区域からの測定値を除外したわけである。 第 28 図は完全なガードルを示し, ガードルの極(P)は N 7°W へ 30°傾いている。 つまり, この図から判断すると, 竹貫背斜は幾何学的にみても見事な大構造をもっており [ 以下の [注] 参照 ] , その軸方位は N 7°W へ 30°傾いていて, 木戸脇 - 中野を走る断層と平行ではない。 竹貫背斜軸の傾きは小区域ⅩⅩⅡからⅩⅩⅠへだんだん低角度になっている。 竹貫背斜軸の方向が東部地域の B2 で代表される大構造の軸方向と平行であることは, 竹貫背斜が B2 期の大構造の1つであることを意味している。

[注]
大構造の軸が完全に平行な場合のその軸の数や, それらが向斜であるか背斜であるかは πS1 - 図からはわからない。

竹貫背斜の軸部以外にあたる小区域ⅩⅣ~ⅩⅩ(ただしⅩⅦ はその東半部)・ⅩⅩⅢでは, 竹貫背斜の翼部としての構造はほとんど見いだせない。 小区域ⅩⅣ~ⅩⅩでは S1 はむしろ宮本複合岩体の西縁や鮫川岩体の東縁に沿った走向を示している, と見るのが妥当であろう。 πS1 - 図を検討しても, 上の各小区域において S1 の方位がどんな原因で現在のように変化したのかを理解することはむずかしい。 この問題を [ 先に示した ] 第 27 図 [ 線構造ダイアグラム ] によってもう少し検討してみよう。

第 27 図に投影した線構造は L3, Lm3, B3, L4, Lm4, B4 が大部分で B2 はほとんど含まれていない。 それらのうち, 小区域ⅩⅣ~ⅩⅥの線構造図に投影した線構造の大部分は L4, Lm4, B4 であり, ⅩⅦ~ⅩⅩ・ⅩⅩⅡ・ⅩⅩⅢは L4, Lm4, B4 のみである。 しかし, ⅩⅩⅠは大部分が L3, Lm3, B3 の測定値である。

小区域ⅩⅩⅠに示した線構造の方位はよく集中し, 北北西へ低角度の傾きが一般的であることがわかる。 他の小区域でも L3, Lm3, B3 はときどき測定できるけれども, B4 が発達しているために, それらの方位は種々変化していて, 西部地域全体の B3 の方位がどうであったかはなかなか決められない。 しかし, 東部地域の小区域ⅩⅡで観察できる B3 が一般に北北西 - 南南東の方向で, B2 と低角度で斜交していることから推察すると, 西部地域の全域を通じて L3, Lm3, B3 が北北西 - 南南東に近い方向であったと推定しても大きな矛盾はない。 小区域ⅩⅩⅠに現われる L3, Lm3, B3 が竹貫背斜の軸方位とはっきり斜交しているのも不可解ではない。 従来, 竹貫背斜の軸方向が木戸脇 - 中野を走る断層 [ ← 木戸脇断層 ? ] に平行だと考えていたのは, 野外で測定される線構造が大部分 B3 褶曲に関係したもので, それらの線構造の方向が上の断層の走向にほぼ平行なためだからであろう。 小区域ⅩⅧでは他の小区域に比べて L4, Lm4, B4 が顕著に発達しており, 線構造図の最大集中点の方位も東北東 - 東へ低角度で落としている。 しかし, この線構造が顕著に発達しているから, 東北東 - 東の方向が L4, Lm4, B4 のもとの方向, あるいは, 一般的な方向だということにはならない。 各小区域の L4, Lm4, B4 がいろいろの方位を示すのは, それらの方位が後で変化させられたにしても, それらがもともと広域にわたってある定まった方位をもった線構造でなかったからである, と考えるべきであろう。 B4 褶曲はおそらく西部地域の変成岩類が, 広域変成作用の最高の温度条件下におかれた際に形成された構造であろう。 したがって, そのような物理的条件下では, 岩石はかなり流動性をもっていたのであろう。 とにかく, B4 褶曲はその幾何学的特性や地域的分布などから考えて, B3 褶曲よりもさらに局地的な構造だといえる。

B4 褶曲は, 上に考察したように, 最初から "flow fold" の性格がかなり強かったと考えられる。 B の方位はその後の深成岩類の貫入運動によって, さらに変位させられたのであろう。

本地域の地質構造は, 従来は 御斎所変成岩地域と竹貫変成岩地域とでは全く異質なものとして取り扱われていたが, 構造岩石学的にみれば次のような順序になっているものと解釈することができる。

(1) B2 褶曲およびこれに伴なう大・小構造は本地域に起こった最初の造構造運動で, この運動がおよんだ範囲は竹貫図幅の範囲をはるかにこえる規模のものであった。 それらの軸方向は北北西 - 南南東から南 - 北であった。 この時期の変成作用は, 御斎所変成岩地域の東部の岩石から推察すると, かなり低度のものであったらしい。 しかし, 現在の竹貫変成岩地域の岩石がどの程度の変成作用をこうむっていたかは推察できない。

(2) 次に起こった造構造運動は B3 褶曲である。 この運動は地域のほぼ西半部, 見方をかえれば宮本複合岩体や鮫川岩体を中心とする地域に発達したもの(ゾーンⅡ)で, B2 褶曲に比べて局地的な構造である。 大部分の B3 褶曲の軸方向は B2 褶曲のそれと少し斜交し, また, 深成岩体の分布とも斜交し, 北北西 - 南南東だと推察される。

(3) B4 褶曲は宮本複合岩体の西縁, 鮫川岩体の周縁に沿う地域に発達していて, B3 褶曲よりもさらに局地的に現われた構造である。 B4 褶曲はおそらく 「珪線石 + 黒雲母 + カリ長石」の鉱物組合せが安定であった時代の構造で, "flow fold" の性格をもっており, その軸方位は最初からばらついていたと考えられる。

(4) 前述のように, 本地域では B2 褶曲には B3 褶曲や B4 褶曲が, B3 褶曲には B4 褶曲が重複していて, 結局, B4 褶曲が発達している地域の地質構造が最も複雑化している。

(5) B2 褶曲と B3・B4 褶曲とはそれぞれ特性を異にしている。 すなわち, B2 褶曲は本地域の深成活動に直接関係しなかった構造であり, 他は関係した構造である。 さらに B3 褶曲はこの深成活動の初期の構造であり, B4 褶曲は最盛期の構造であろう。

(6) B2 褶曲と B3~B4 褶曲の間に, 時間的にどのくらいのギャップがあったかは, 地質構造や岩石構造だけからは十分によくわからない。 両者の間に断裂運動があったことを示す証拠としての変成塩基性岩脈(牛来(1941); 梅村(1970))もあるが, 十分な説得力を持つにはやや数が少なすぎる。

II.3.4 断層

変成作用および深成作用以後の断層は大別して, 褶曲構造を縦断する縦走断層(longitudinal fault)と 褶曲構造を横切る横断層(transverse fault)に分けられる。 前者の方向は北北西 - 南南東または北西 - 南東, 後者は東北東 - 西南西および西北西 - 東南東で, それらのうち比較的規模が大きく, かつ顕著なものを地質図に記入した。

第 29 図 馬場平断層の細部構造 (馬場平の南方, 入遠野川の河床の露頭)(大平, 1970)

馬場平断層 は典型的な縦走断層で, 馬場平付近では N 20°W で直立, 幅は 3 m 以上で, 圧砕作用が進んでいる。 断層内の細部構造は第 29 図のようで, 母岩はミロナイト化した珪質片岩である。 この断層の北方への延長は, 入達野川の谷に沿って [ 本図幅の北隣の小野新町図幅地域内の ] 上三坂 かみみさか の方面につづくが, 芝山花崗岩体の東縁に発達する剪裂帯につなげる見方もある。 南方への延長は 大風 おおかぜ 断層で一たん切られて西に転位するが, 御斎所街道の 貝屋 かいや [ ← 三株山の東北東方 4.5 km ] の東方を通る断層 [ ← 貝屋断層 ? ] に続くものと考えられる。

II.2.3 [ =「II.2.3 変成分帯と岩石記載」の項 ] に述べたように, この断層は変成作用の上から重要な意義を持っており, この線を境にしてゾーンⅠとゾーンⅡに分けられた。 ざくろ石の正累帯型と逆累帯型の分布の境界もこの線に一致する。 岩石構造の点からも(II.2.3), S3 のⅠ型とⅡ型の境がやはりこのあたりにくる。 さらに, この断層を境にして 変成岩にみられる線構造(リニエーション)が 東側では南南東ないし南東落しであるのに対して, 西側では北北西ないし北西落しになるという著しい違いがある(第 26 図参照)。 しかし, この線を境にした大構造上の差異は, 断層の形成によって生じたものではなく, 断層以前のおそらく B2 褶曲期からすでにできていたものとみられる。 [ 大辷 おおつべ 山の東北東方 4 km の ] 新田 しんでん の西方での観察によれば, 変成岩の線構造が, 東から西に行くにつれて南南東落しから北北西落しに漸移するが, その間には馬場平断層の延長にあたる断層も剪裂帯もまったく認められないからである。

図幅南東隅に近く, ゾーンⅠの低変成度部を北北西 - 南南東に切る 井戸沢 いとざわ 断層 [ 以下の [注] 参照 ] もかなり顕著な縦走断層で, これを境として岩層の不連続があり, ミロナイトも発達する。 馬場平断層の場合と同じく, この線を境にして両側地域の線構造が異なり, 東側で N 10°W に 0~20°で落し, 西側では S 15°E に 0~35°で落している。 この断層の位置が MIYASHIRO(1958)の 変成分帯の A 帯(緑色片岩相)と B 帯(角閃岩相)の境界にほぼ一致していることも注意を要する。 この断層の南方への延長は, [ 本図幅の南隣の ] 川部図幅地域内の柿ノ沢から井戸沢に続き, 地形上も顕著な断層谷をつくって以前より井戸沢断層とよばれていたものになる。

[注]
梅村(1966)は 細畑 ほそばたけ 断層とよんでいるが, 同じものである。

横断層の代表的なものは 大風 おおかぜ 断層 で, 模式地では走向 N 65~70°W で, 傾斜は一般に 70~80°S, 2 m 前後の幅の圧砕帯ないし粘土化帯を形成して連続する。 断層運動による転位は, 相対的に右へ 100~300 m 走向移動し, 垂直落差は 100 m 以上である。 正断層で, 断層の北側が下盤をなし, 南側の地塊に対して相対的に上昇しているものとみられる。 上記の馬場平断層より明らかに後の形成で, これを切っている。

大風断層の東への延長は, いろいろ分岐はするが, 結局は 湯ノ岳 ゆのだけ 断層 に続く。 この断層は入遠野花崗岩体と遠野地区の第三紀層とを境する大規模なもので, 大風断層と同じく右へ走向移動する正断層である。 垂直落差も大きく数 100 m に達するとおもわれ, 顕著な断層崖が [ 図幅地域東端・南北中央やや南の ] 二ツ石山の南西斜面につくられている。 そのほか同様の横断層が好間川花崗岩体内部を西北西 - 東南東方向に走っている。 その一つは好間川の谷に沿って [ 本図幅の東隣の ] 平図幅内の赤井断層につづくもので, 岩生・松井(1961)によれば, その延長が平地方の第三紀層まで切る後生断層である。

花崗岩体を切る断層は, 宮本複合深成岩体内部の 浪滝 なみだき [ ← 犬仏山の西北西方 2.5 km ] 付近の河床でも認められ, その延長が西方に延びて変成岩中の横断層になる。

図幅西縁に近い 木戸脇 きどわき 断層 は, 竹貫背斜の軸方向に近い横断層で, これに沿って鮫川支流が直線状の広い谷をつくり, 両側の石灰岩層の分布をみても断層の存在は明らかであるが, 詳しいことはわからない。

おわりに, 本図幅地域の中央部から東よりの 入定 にゅうじょう [ ← 往生山の西方 2.5 km ] から馬場平あたりの地帯に, これまで渡辺ほか(1955), 牛来(1958)などによって「中央破砕帯」が想定されていた。 それは双葉破砕帯や棚倉破砕帯とともに新期花崗岩の活動に関係があるといわれるが, その提唱理由はあまり明白にはされていない。 そのあたりに断層や破砕帯の多いことは事実であるが, 具体的に「中央被砕帯」に該当する地帯を 今回のわれわれの調査から指摘することはむずかしい。 それよりはむしろ, 先に述べた馬場平断層のはうが, 本地域の地質構造発達史の上ではるかに重要な意味を有している。

II.4 変成小貫入岩類

II.4.1 超塩基性岩類 [ us, U, Gb ]

図幅中での区分 [ = 凡例 ] では, 超塩基性の組成の岩石は3つに分かれて示されている。 すなわち, 竹貫変成岩類の中の超塩基性岩源片岩 [ us ] , 変成貫入岩類中の超塩基性岩 [ U ] , 小塩基性岩体(斑れい岩類)中の一部にある輝岩~コートランド岩 [ Gb ] である。 これらの一部については 後述する 「II.6.1 鮫川複合岩体」, 「II.6.2 宮本複合岩体」などでも若干記載するが, ここではその他のものも含めて総括的な説明をする。

阿武隈山地と北上山地の超塩基性岩類は, いずれも強い変成作用(再結晶作用)をうけているものが多く, 日高帯, 神居古潭帯, 三波川帯のような単純な, いわゆる蛇紋岩帯中に産するものとは異なっている。 Research Group of Peridotite Intrusion(1967), 黒田・田崎(1969), 黒田(1970)が述べているように, 一つの変成帯には一つの特徴的な超塩基性岩の系列が産することが一般的である。 たとえば, 日高帯ではダンかんらん岩 - レールゾライト - 斜長石レールゾライトの系列, 神居古潭帯ではダンかんらん岩 - ハルツバージャイト, 三波川帯ではダンかんらん岩 - ウェールライトというごとくである。

阿武隈山地では 八茎 やくき 地方, 日立地方などにかなり大きい蛇紋岩体が産するほか, あまり大きくはないが, かなり多数の蛇紋岩体が点々と産する。 それらは多くの場合, いわゆる御斎所・竹貫変成岩類とともなうことが多い。 それらを総括してみると, 後の変成作用(再結晶作用)により不明確にはなっているが, ダンかんらん岩 - ハルツバージャイトの系列も ダンかんらん岩 - ウェールライトの系列も存在していたようである。 また, 領家帯ではコートランド岩が唯一の超塩基性岩類であるが [ 以下の [注] 参照 ] , 阿武隈山地では前述のかんらん岩類のほかにコートランド岩も産する。 このことは阿武隈山地の地史の複雑さを示すものであり, 領家帯の延長としての阿武隈山地という考え方は, このことだけからも受け入れがたい。

[注]
そのような変成帯は, 日本では領家帯のみである。

[ II.4.1.1 ] 超塩基性岩源片岩 [ us ]

鮫川複合岩体の周囲のミグマタイトや竹貫変成岩類中に, その片麻状構造と一致した構造, 組織をもって産する(第 30 図)。 細長くレンズ状にのびており, 現在では変成岩中の一構成単位としてみる方がよい産状を示している。 その中には, ほとんど普通角閃石のみからなる片麻状角閃石岩と片麻状ウェールライトが区別される。

第 30 図 岩床状変成かんらん岩, 鮫川村 遠ケ竜 とおがりゅう [ ← 三株山の西北西方 4.5 km ] の東方

片麻状角閃石岩はほとんど普通角閃石ばかりからなり, わずかに磁鉄鉱を含む。 普通角閃石は淡緑色で弱い多色性を示す。 その c 軸は一定の方向に沿って伸びて線構造をつくるが, それはその付近の一般的な線構造の方向と一致している。

片麻状ウェールライトは, かんらん石, 透輝石を主とするが, 蛇紋石類, 透角閃石もかなり多い。 他に方解石, 多量の細粒の磁鉄鉱を含む。 かんらん石は比較的細粒で再結晶した様子がよく認められる。 蛇紋石類にはふつうのアンチゴライト様のものの他に, 濃い緑色の屈折率のやや高い, 複屈折の低いものや, ブルーサイト様のものがある。 透輝石は 1~数 mm に達する大きなもので, ポイキリティックにかんらん石やときに透角閃石もとりこんで成長している。 透角閃石(2V (+) = 56°)は長柱状に多量に成長している。 阿武隈山地の超塩基性岩類の二次的鉱物としては滑石と透角閃石が特徴的であるが, この種類のものには滑石がほとんどみられない。

[ II.4.1.2 ] 変成超塩基性貫入岩類 [ U ]

この区分に入れた超塩基性岩類は前の片麻状超塩基性岩よりも塊状の形をしたものが多く, とくに馬場平断層の西, 宮本複合岩体の東側の地帯に大きな岩体が分布している。 中でも 大辷 おおつべ 山を構成するものは幅約 500 m, 延長約 1500 m におよぶ。 しかし, これらは岩体の形, 再結晶作用(変成作用)の程度において, 前述の片状のものとそれほどはっきりとした区別があるわけではない。 むしろ, その分布する地域と鉱物組成の上でちがいがある。 この区分に入れた超塩基性岩類には, 完全な蛇紋石岩・変成ダンかんらん岩・変成ハルツバージャイトがある。

完全な蛇紋石岩はクリソタイル, アンチゴライトからなり, いわゆる網目状構造をしている。 磁鉄鉱が多く, ブルーサイト, ピナイト質の緑泥石も含む。 炭酸塩はあまり含まれない。

ダンかんらん岩は主としてかんらん石, アンチゴライト, クリソタイルからなり, かなり多量の滑石を含む。 ブルーサイト, ピナイト(緑泥石)も含む。 大きな針状の透角閃石が生じている。 他には磁鉄鉱がある。 [ 大辷山の北方 2 km の ] 越代 こしだい の東, クマタカスの岩体 [ 位置不明 ] には, KURODA & SHIMODA(1967), 松久(1968)の報告したような (100), (010), (001) にへき開があるかんらん石が認められる。 そのへき開は現在は再結晶作用によって消滅しかかっているが, もともとはへき開の強いかんらん石であったことは明らかである(第 31, 32 図)。 このようなかんらん石の産状は限られているので(舞鶴帯の北側, ひだ外縁帯のみ), 将来興味ある問題をひき起こすであろう。

第 31 図 かんらん岩中の劈開のあるかんらん石(HM66101701), 古殿町 越代の東方

第 32 図 消えかかった二方向の劈開のみられるかんらん石を含むダンかんらん岩(YK), 古殿町 クマタカス [ 位置不明 ]
O : かんらん石, tr : 透角閃石, tc : 滑石, ch : 縁泥石

ハルツバージャイトは かんらん石・ 斜方輝石・ アンチゴライト・ クリソタイル・ 滑石・ ブルーサイト・ 透角閃石・ 磁鉄鉱・ まれに緑色スピネルからなる。 かんらん石と斜方輝石の量は岩体によっても, また岩体中の部分部分によってもかなり変化し, かんらん石 - 斜方輝石岩と言える程度のものまである。 かんらん石には小さな再結晶性のものと, 大きくて残晶性のものとがある。 斜方輝石(2V (+) = 71~73°)は大きくて, 再結晶性の小さいものは少ないが, 離溶ラメラを示すものは少ない。 これはふつうのかんらん岩中の斜方輝石には珍しいことである。 透角閃石は大きくて, 多量に生じている。

[ II.4.1.3 ] 輝岩・コートランド岩 [ Gb ]

角閃石黒雲母花崗閃緑岩を主とする複合岩体には斑れい岩質~閃緑岩質の部分があるが, とくに宮本複合岩体にはそれが多い。 そのような斑れい岩~閃緑岩の一部に輝岩, コートランド岩が存在する。 代表的なものとしては犬仏山 [ ← Gb or GbM ? ] , 鎌田のものがあり, 入遠野岩体内にも産出する [ ← GbIr ? ]

輝岩は単斜輝石・普通角閃石・陽起石・かんらん石の他に少量の斜長石を含む。 副成分鉱物としては磁鉄鉱・緑色スピネルである。 蛇紋石・緑泥石が生じているものもある。 単斜輝石は (100) にラメラ状のものがあるものがあり, その部分が陽起石質の角閃石に変わって, かつ広がっているものがある。 また再結晶した細粒の透輝石の集合体となっていることもある。 普通角閃石は淡褐色で, まわりから陽起石化している。 かんらん石は脈状に輝石を切って晶出していたりして, 再結晶のとき生じたものである。 斜長石は An 50~70 でほとんどが双晶・累帯構造を示していない。 もともとは透輝石・褐色角閃石・かんらん石に少量の斜長石をもっていたものが, 再結晶し, 陽起石化したものであろう。

コートランド岩は かんらん石・紫蘇輝石・透輝石のコロコロした自形性結晶のまわりを 緑褐色 角閃石にとりかこまれ, 大きく発達した角閃石中にはポイキリティックに自形性の斜長石が入っている(第 33 図)。 これらの量比は部分的に異なっている。 かんらん石を全く欠く場合もある。 他に磁鉄鉱・蛇紋石などを含む, 紫蘇輝石は多くの場合に多色性のはっきりしたものであり, 離溶ラメラをもつものもある。 斜長石は An 75± で, アルバイト双晶, ペリクリン双晶などは発達しているが, 累帯構造はほとんどみられない。 かんらん石・紫蘇輝石・透輝石と斜長石が直接接することなく, 必ず角閃石が間に入っている。 角閃石は部分的に陽起石質になっていたり, 新しい陽起石が大きく成長している部分がある。

第 33 図 コートランド岩(HM66091103), 古殿町 犬仏山。
O : かんらん石, Px : 普通輝石, P : 斜長石, H : 角閃石

これら輝岩・コートランド岩の相互関係, また斑れい岩との相互関係はよくわからないが, 漸移するようである。

第 6 表にこれら超塩基性岩の化学分析値をあげてある。 これからみられるように, ダンかんらん岩は Mg / Fe 比の高いもので, 一般的な蛇紋岩帯のものに似ている。 これはダンかんらん岩 - ハルツバージャイト系列のものばかりである。 三波川帯(御荷鉾帯)のものとは明らかに異なっている。 ダンかんらん岩 - ウエールライト系列のものは小さくて, 後からの変成作用によってひどく変成されているから, その化学組成の検討によってもとの性質を検討することは不可能である。

第 6 表 超塩基性岩類の化学組成 (分析 : 平野次男)

試料 1 2 3 4 5
SiO2 47.34 44.40 41.16 42.10 41.28
TiO2 0.30 0.21 tr. tr. tr.
Al2O3 4.95 16.95 1.11 1.60 1.09
Fe2O3 4.68 5.07 4.83 6.03 4.91
FeO 3.51 4.94 1.18 1.07 1.61
MnO 0.08 0.04 0.01 0.04 0.04
MgO 20.13 11.91 41.38 39.97 37.11
CaO 15.76 14.10 0.54 0.43 2.18
Na2O 0.82 1.17 0.42 0.36 0.51
K2O 0.15 0.12 0.07 0.07 0.12
H2O (+) 1.04 0.55 8.20 7.14 10.04
H2O (-) 0.60 0.17 0.87 1.04 0.68
P2O5 0.03 0.05 0.02 0.06 0.04
Total 99.36 99.68 99.79 99.82 99.61
[ 第 6 表の試料の詳細 ]
1 : かんらん石 - 単斜輝石岩(No. 66091102, 犬仏山)
2 : コートランド岩(No. 6609103, 犬仏山)
3 : ダンかんらん岩(No. 66101901, 大辷山)
4 : ダンかんらん岩(No. 66101801, 大辷山)
5 : 透角閃石 - ダンかんらん岩(No. 66101701, 越代)

II.4.2 変成輝緑岩~斑れい岩 [ Dm ]

変成輝緑岩 : 変成作用以前に貫入し, 母岩とともに広域変成作用を受けている塩基性岩としては, 変成輝緑岩が最も多い。 その分布はほぼ変成帯の全域にわたっているが, とくに多いのは馬場平断層の西側の大黒山から大風・熊倉にかけての地帯で, 構造的には複向斜または複背斜の軸部に集中するようにおもわれる。 岩体の規模は通常幅 50 cm ないし 10 m で, ときに 50 m 程度のものもある。 変成岩層に対しては整合的に, 岩床状に貫入するものが多いが, ときに斜交して岩脈状をなす場合もある。 第 34 図は前者の場合で, 変成岩の褶曲構造に調和的に貫入しており, B2 褶曲以前, または同時期の古い貫入岩である。 第 35 図は後者の場合の岩脈で, GORAI(1944, p. 245, Fig. 2 - 3)によって第1期貫入岩の一つとされたものである。 この岩脈は 周囲の変成岩と同じ変成度の変成作用を受けて角閃岩化しているにもかかわらず, Sm [ = 変成岩の S1 片理 ] に平行な片理を示さない。 しかし Sm の褶曲, すなわち B2 褶曲の軸面に平行な弱いが明瞭な片理 S が発達し, さらに同じ方向に花崗岩の小脈が網目状に貫いている。 これらのことから, この岩脈の貫入時期は Sm の形成以後 B2 褶曲のある時期で, この岩脈を境にして それ以前の古い変成作用と, それ以後で花崗岩の活動を伴う変成作用の二つの時相が区別されることになる。 [ 後述する「II.6.2 宮本複合岩体」の項の ] II.6.2.6 [ = 「II.6.2.6 浪滝の変成塩基性岩脈」の項 ] で述べるように, 浪滝 なみだき [ ← 犬仏山の西北西方 2.5 km ] の変成塩基性岩脈も同様の意義を有するものと考えられているが, この場合の岩脈の母岩をなすものは宮本複合岩体の石英閃緑岩である。 さきにも注意したように(II.3.3 [ = 「II.3.3 褶曲構造」の項 ] ), これらの変成塩基性岩脈を変成変形の時相解析の鍵とするには資料が不足であり, とくに新旧両時相を通じて変形運動が co-axial であったことが解析を一層困難にしている。

第 34 図 変成輝緑岩岩床の一例 ; 母岩の片状角閃岩(Am)の褶曲構造に調和的に貫入した変成輝緑岩(B)。 熊倉の西南西 1 km の大風林道の切割(大平, 1970)

第 35 図 変成輝線岩岩脈の一例 ; 観察地点は御斎所街道の 石住 いしずみ [ ← 三株山の北東方 3 km ] (梅村, 1966)。
B : 変成塩基性岩, G : 花崗岩質岩脈, M : 変成岩, S : 輝線岩中の片理, Sm : 変成岩の S1 片理, C : B2 褶曲の軸面

変成斑れい岩 : これも馬場平断層の西側に多く発達し, そのほか 上市萱 かみいちがや [ ← 図幅地域北東部 ; 芝山の東方 4.5 km ] の東方, 塩見 しおみ [ ← 芝山の東北東方 3 km ] の西方にも散在する。 鮫川複合岩体の東側の片状斑れい岩については後で述べる(II.6.1.2 [ = 「II.6.1 鮫川複合岩体」の項の「II.6.1.2 随伴小貫入岩類」の項 ] )。 これらのほとんどは変成岩の構造方向に伸びた岩体をつくり, 褶曲の軸部に位置する。 岩体の規模は, 小さいもので幅約 10 m, 普通は 50~150 m, 延長数 100 m 程度で, [ 大辷山の北方 2 km の(宮本複合岩体の東部に位置する) ] 越代 こしだい の北東の岩体では約 1.5 km に達する。 母岩との関係は不明なものが多いが, 観察されたかぎりでは, 母岩に整合的な岩床状で, 片状斑れい岩から斑れい岩質片状角閃岩を経て, 母岩の変成岩(角閃岩)に漸移することが多い。 大風の北方および越代の東方の岩体のように, 変成超塩基性岩 [ ← U ? ] を伴って産出することもある。 この場合には両者は漸移関係で, ともに褶曲したりうねったりする。 おそらく斑れい岩と超塩基性岩とは相前後して貫入し, 混り合ったものとおもわれる。

II.4.3 変成石英斑岩類 [ Qpm ]

塩基性~超塩基性岩類に対して, 酸性の貫入岩類も多数存在し, しかもその多くのものが変成作用を受けて片状となり, 再結晶している。 分布はほとんど全域にわたっているが, とくに集中して多いのは [ 好間川沿いの ] 根古屋 ねごや の南方から南, [ 根古屋の南南西方 4.5 km の ] 葭平 よしだいら の東方から [ 葭平の南方 3.5 km の ] 入定 にゅうじょう の北方に至る地帯で, 大風 - 湯ノ岳断層以南では, [ 入遠野の北西方 1 km の ] 平口 たいらぐち の西方から [ 平口の南南東方 3.5 km の ] 清道 きよどう の西につづく地帯である。 この地帯は, 大構造的には ゾーンⅠの東半部の複背斜の軸部およびその東西両翼の軸に近い上部に相当する。 別の見方をすれば, これらの酸性貫入岩類は, 本地域で比較的新期の深成作用に属する 好間川岩体および入遠野岩体に沿った地帯に分布し, 前述の塩基性~超塩基性貫入岩類が, 古期深成作用に属する宮本複合岩体の東縁に沿って分布するのと対照的である。

岩体の規模は, 小さいもので幅 1~10 m, ときに 50 cm 以下のものもあり, 長さはいずれも数 10 m 以下である。 大きいものでは幅 100~数 100 m, 延長 500 m 以上にわたる。 変成岩との接触面は一般によくわかり, 変成岩の片理に平行な場合と, 低角度で斜交している場合とがある。 また, ときには第 36 図のように 変成岩の構造と調和して褶曲やうねりなどの変形を示す場合もある。

第 36 図 母岩と調和的な変成石英斑岩脈, [ 芝山の南東方 3 km の ] 雨降山 てんきちょう 林道の峠の切割(大平, 1970)。
1 : 緑色片岩, 2 : 珪質片岩のはさみ, 3 : 岩脈

変成斑岩類のうち最も多いのは石英斑岩で花崗斑岩がこれに次ぐ。 いずれも再結晶作用を受けて黒雲母を生じ, 石基はモザイク化する。 しかし融食形の石英斑晶は残っている(第 37 図)。 一般に黒雲母の鱗片状変晶の配列による片状構造が明瞭で, またしばしば片理面上では黒雲母のクロットの平行配列による線構造が認められる。

第 37 図 変成石英斑岩(HK6573006), 遠野町 平口。 融食石英(Q)の残晶がある。 黒雲母(B)は再結晶した鱗片状集合

これらの変成酸性貫入岩脈が現在の位置を占めた時期については, 母岩と全く調和的な第 36 図のような例では B2 褶曲と同時か以前と考えられる。 しかし母岩との境界面が変成岩の片理と, 一般に低角度ながら明らかに斜交する場合には, 先に述べた変成塩基性岩脈の場合のように, 二つの変成変形時相の中間の断裂期に貫入したとも考え得るであろう。 その場合, 最初の時相は B2 で, 後のものは B3 または B4, 具体的には好間川岩体および入遠野岩体の貫入に伴う時相であろう。 この問題に関連して, 原(1966)は, 平口の西方の変成石英斑岩の石基を構成する石英粒のゲフューゲ [ gefüge = fabric ] 解析を行なったが, その結果示された組織型式は, 変成テクトナイトに普通の線構造を軸とする ac-cleft circle girdle を示している。 そして, それは 一つの変形時相において機械的塑性変形によって形成されたものとすれば 合理的に説明できるという。

以上のほか, アプライト質, 石英脈質のものなどもある。 鮫川村 赤坂中野 あかさかなかの [ ← 図幅南西部 ; 長光地の南方 5 km ] の石切場の露頭, および [ 赤坂中野の南方 1 km の ] 内ヶ竜 うちがりゅう で採集した転石には, 母岩の片麻岩を切るアプライト脈に黒雲母の再結晶による新しい片理を生じたものがある。

II.5 小塩基性岩類 [ Gb ]

後述するように, いわゆる古期の複合岩体にはとくに小さな塩基性岩体がともなってくる。 とくに, 宮本岩体ではそれが顕著である。 それらは, 地質図上でできるかぎりにおいて区別をしておいたが, 区別できないほど小さいもの, あるいはまったく花崗質岩石と移り変わって境のわからないものもある。 また, 花崗質岩体と独立したものでは, 前述の変成小貫入岩体中の超塩基性岩, 変成輝緑岩~斑れい岩と区別しにくいものもある。

主体をなすものは主として透輝石斑れい岩で, 透輝石の縁辺部が各種の角閃石によってとりかこまれているというタイプのものである。 しかし, 他に 角閃石斑れい岩・コートランド岩・輝岩・角閃石岩・石英閃緑岩質など いろいろの部分がある。 そこで, この種の岩類は主として相伴う花崗質岩石の記載の項で, それぞれかんたんに説明を加えることにする。

II.6 花崗質深成岩類

II.6.1 鮫川 さめがわ 複合岩体 [ mgS, QdS ]

II.6.1.1 分布および構成

図幅地域の南西部から [ 南に ] 隣接の川部図幅の北西部にかけて分布する。 平面的には頭を北東に向けたおたまじゃくし状の岩体をなし, 東西の幅最大 4 km, 南北延長 15 km にわたる(第 38 図)。 岩体を構成する岩石は, マグマ起源の片状石英閃緑岩を主とし, 花崗閃緑岩 - アダメロ岩類もかなり含むもの (これを 狭義の鮫川岩体 [ QdS ] とする)を主体とし, そのまわりをとりかこんでミグマタイト質岩相帯 [ mgS ] が発達する。 そのミグマタイト質岩相の部分までも含めて鮫川複合岩体とする。 そのほか種々の小貫入岩類が伴われる。

第 38 図 鮫川および石川岩体と周辺地域の地質図(括弧内の地名は5万分の1地形図の名称)(丸山, 1970)

[ 第 38 図に関する注意書き ]
地質図の凡例の説明
1 : 角閃岩, 2 : 砂質~泥質岩源片麻岩, 3 : 晶質石灰岩, 4 : 超塩基性岩源片岩, 5 : 斑れい岩類, 6 : 閃緑岩類, 7 : 片状 中粒 トーナル岩, 8 : 片状 粗粒 トーナル岩質石英閃緑岩, 9 : 強片状 中粒 斑状石英閃緑岩, 10 : 片状 中粒 斑状石英閃緑岩, 11 : 片状 細粒 石英閃緑岩, 12 : 片状 中粒 斑状花崗閃緑岩, 13 : 弱片状 中粒 斑状アダメロ岩, 14 : ミグマタイト, 15 : 片状トロニエム岩, 16 : 塊状 斑状黒雲母花崗岩, 17 : 塊状 斑状 黒雲母 桃色花崗岩, 18 : 玢岩・安山岩
地質図上の地名
A : 浅川(西隣の棚倉図幅地域内), C : 長光地, F : 古殿, I : 石川(西隣の棚倉図幅地域内), K : 越虫 こえむし (南隣の川部図幅地域内), N : 中野 [ ← 赤坂中野 ? ] , Na : 滑石 なめりいし (西隣の棚倉図幅地域内), Ny : 入道, T : 遠ヶ滝, W : 渡瀬(南西隣の はなわ 図幅地域内), Y : 湯ノ田, Yo : 世々麦 よよむぎ (南隣の川部図幅地域内)

II.6.1.2 随伴小貫入岩類

広義の鮫川岩体の内部およびその周囲に分布する小貫入岩体として, 片状超塩基性岩・片状斑れい岩・細粒閃緑岩および黒雲母花崗岩などがある。 これらは小貫入岩類としてここに一括したが, 貫入の時期はいろいろである。

片状超塩基性岩 : この岩体の周辺には, すでに II.4.1 [ = 「II.4 変成小貫入岩類」の項の「II.4.1 超塩基性岩類」の項 ] で述べたように, 泥質片麻岩中に岩床状に貫入し(第 30 図), 広域変成作用を受けている超塩基性岩体がある。 その分布は, 幅 70~100 m, 南北方向に約 6 km にわたって追跡できる。 また, ミグマタイト中にはゼノリス状に 若干量の直閃石・透角閃石・かんらん石・透輝石・滑石を含む蛇紋岩が産することもある。

片状斑れい岩 : 上記の変成超塩基性岩の近くに, 幅 10 m, 南北延長約 500 m の岩床をなして片麻岩中に貫入, 片状構造が著しい斑れい岩がある。 主要構成鉱物は褐色普通角閃石・普通輝石・斜長石である。

細粒閃緑岩 : 鮫川岩体(狭義)の花崗質岩中にゼノリスとして含まれる細粒の塊状岩で 緑色普通角閃石・黒雪母・斜長石から成り, ときに少量の石英を伴う。

黒雲母花崗岩 : 鮫川岩体の片状石英閃緑岩および そのまわりのミグマタイト中に貫入して岩脈をなす中粒~細粒の塊状岩で, 鮫川岩体の花崗質岩とちがって流理構造を示さず, また角閃石を含まない。 主成分鉱物は, 斜長石・石英・カリ長石 > 黒雲母 ≫ 白雲母。 斜長石は An 20~27(第 39 図)。

第 39 図 ミグマタイト(べナイト相)を切る黒雲母花崗岩の岩脈。 鮫川村 遠ケ竜 [ ← 三株山の西北西方 4.5 km ]

II.6.1.3 ミグマタイト質岩類 [ mgS ]

ここでいうミグマタイトとは, 変成岩物質と花崗岩質物質が混じり合ったもので, 混じり合いの状態によって, アグマタイト状, ベナイト状, 星雲状, 花崗岩様の4つに細分することができる(丸山, 1970)。 これらのうち, 後のものほど変成岩の要素が少なく, マグマ的な性質が強くなる。 鮫川岩体の周囲にはこれらが複雑に入り組んで分布している。

[ II.6.1.3.1 ] アグマタイト状ミグマタイト (第 40 図)

第 40 図 アグマタイト状ミグマタイト 鮫川村 内ヶ竜 [ ← 赤坂中野の南方 1 km ]

アプライト質またはペグマタイト質のものが, 5~50 cm 大の変成岩を塊状にとりこんでいるもの。 塊状部の岩石の鉱物組合せはこの地域の変成岩類と同じであるが, 白色岩脈状の部分は, 主として斜長石・カリ長石・石英から成り, 黒雲母・白雲母・ざくろ石が若干含まれる。

[ II.6.1.3.2 ] ベナイト状ミグマタイト (第 41 図)

第 41 図 べナイト状ミグマタイト, 鮫川村 遠ケ竜

アプライト質岩石が片麻岩中に調和的に迸入したもの。 アプライト質部分および片麻岩質部分の幅は不均一で, 幅が狭いときには注入片麻岩状になる。 微褶曲構造を示すこともしばしばある。 この型のミグマタイト相は鮫川岩体の東翼と西翼の一部に, とくに発達している。 鏡下では, 細~中粒の斜長石(An 35~38)・ カリ長石・ 石英・ 黒雲母および若干の白雲母から成り, 花崗岩質組織を示し, 片状構造もみられる(第 42 図)。

第 42 図 黒雲母ミグマタイト(TM65082409), 鮫川村 中沢 [ ← 図幅地域南西隅 ] の北。 片理が左下から右上の方向にある。
B : 黒雲母(片理に平行に配列), P : 斜長石, Q : 石英

[ II.6.1.3.3 ] 星雲状ミグマタイト (第 43 図)

第 43 図 ミグマタイト中の ghost structure, 鮫川村 官ノ代 [ 読み方および位置不明 ; 赤坂中野の南にある 官代 かんだい ? ]

片麻岩と花崗岩質岩とが不規則に入りまじり, 元の片麻岩の構造がほとんど残っていないか, わずかに gbost 状に残存しているもの。 片麻岩質部分と花崗岩質部分との境は漸移で, 全体としてきわめて不均質なのが特徴である。 主な鉱物組合せは, 中粒の斜長石・カリ長石・石英・黒雲母で, 花崗岩質組織である。 鮫川岩体の東側に典型的なものが発達する。

[ II.6.1.3.4 ] 花崗岩様ミグマタイト

角閃岩のパレオゾーム [ paleosome ; ミグマタイトの変成岩の部分 ] または透輝石や角閃石の残晶があるほかは, 変成岩の要素がほとんど残っていないで, 深成岩的様相をもつものである。 鮫川岩体の北側に, 岩体をとりまいて半ドーム状をなして分布する。

鏡下では主として斜長石(An 35)・カリ長石・石英・黒雲母から成り, それに普通角閃石・透輝石・灰ばん ざくろ石を少量含むことがある(第 44 図)。

第 44 図 含角閃石黒雲母ミグマタイト(TM65080108), 鮫川村 石井草 いしいくさ [ ← 赤坂中野の北東方 1.5 km ]
H : 角閃石, B : 黒雲母, P : 斜長石, K : 微斜長石, Q : 石英

以上に述べたミグマタイト類は, ① 変成岩のパレオゾームの存在, ② 組織が変成岩的(パレオゾーム)なものと花崗岩的なものの両者がある, ③ 斜長石に C 双晶が多い, ④ 変成岩類とはクリーンカットの接触関係を示すことがある, などの理由から, 固体反応による花崗岩化作用の産物ではなく, 溶融した花崗岩物質の混合による混成作用(ミグマタイト化作用)の産物と考えられる(丸山, 1970)。

II.6.1.4 岩体(狭義)の構成岩類 [ QdS ]

ミグマタイト類でとりかこまれた狭義の鮫川岩体を構成する深成岩類は, 片状石英閃緑岩・花崗閃緑岩, およびアダメロ岩から成り, 酸性なものほど中心に近く分布する(第 7 表)。

第 7 表 鮫川複合岩体を構成する花崗岩質岩類の特徴(丸山, 1970)

石英閃緑岩 花崗閃緑岩 アダメロ石
構成鉱物 普通角閃石・斜長石・
黒雲母 > 石英 ⪢ カリ長石
普通角閃石・黒雲母・
斜長石・石英 > カリ長石
斜長石・石英・カリ長石 >
黒雲母 > 普通角閃石
組織 粗粒~細粒
閃緑岩状
一部 斑状
中粒
花崗岩状
~斑状
中粒
花崗岩状
~斑状
流理構造 顕著 顕著
普通
角閃石
X
Y
Z
淡黄
オリーブ緑
暗緑
淡黄
オリーブ緑
暗緑
淡黄
黄緑
暗緑
β 1.668~1.674 1.674~1.677 1.677
c ∧ Z 16° 18° 18°
2 V(-) 56° 60° 60°
黒雲母 X
Y = Z
淡黄
暗褐

暗褐

暗褐
γ 1.640~1.643 1.643~1.647 1.647
斜長石の An % 35~48 28~40 20~30

片状石英閃緑岩 : 中粒~粗粒優黒質で, 流理構造(面構造と線構造)がよく発達する(第 45 図)。 主として普通角閃石・黒雲母・斜長石から成り, 石英・カリ長石は少ない。 普通角閃石がしばしば斑状をなすこと, 斜長石が半自形ないし他形粒状で累帯構造が少ないことが特徴である。 カリ長石は弱い moiré appearance [ = 波紋状の外観 ? ] を呈し, 局部的に quadrille 組織 [ = 方眼状の組織 ? ] がみられることがある。 面構造と線構造は角閃石と黒雲母の配列によるものである。 第 46 図に顕微鏡写真を示す。

第 45 図 鮫川岩体の石英閃緑岩にみられる流理面構造(フォリエイション)。 鮫川村 渡瀬 わたらせ [ ← 本図幅の南西隣の塙図幅地域内 ]

第 46 図 鮫川岩体の周縁相をなす石英閃緑岩(TM409), 鮫川村 蕨草 [ ← 蕨ノ草 わらびのくさ ? ; 赤坂中野の南方 2.5 km ] の東方 1.5 km。
H : 角閃石, B : 黒雲母, P : 斜長石, Q : 石英

本岩は鮫川岩体の周辺部によくみられる。

花崗閃緑岩 : 片状石英閃緑岩よりも優白質である。 普通角閃石・黒雲母・斜長石・石英からなり, カリ長石は少ない。 石英閃緑岩と同様に, 斑状の普通角閃石を含み, 面構造・線構造もみられる。 本岩は石英閃緑岩と後述のアダメロ岩の中間に分布する。

アダメロ岩 : 花崗閃緑岩よりもさらに優白質である。 本岩の構成鉱物は, 斜長石・石英・カリ長石を主とし, 黒雲母・普通角閃石は少ない。 角閃石は時に粗粒の斑晶状を示すことがあるが, 他の鉱物は一般に中粒である。 斜長石は An 成分が 20~30 % と, 鮫川岩体を構成する花崗岩類の中では低い。 本岩の分布は, 鮫川岩体の北部の中心部付近に限定されている(第 47 図)。

第 47 図 鮫川岩体の中心相をなすアダメロ岩(TM65072221), 鮫川村 楢久保 ならくぼ [ ← 赤坂中野の東南東方 2 km ] の西方。
H : 角閃石, B : 黒雲母, P : 斜長石, K : 微斜長石, Q : 石英

鮫川岩体内部の 23 点(第 48 図)から採集した深成岩試料のモード・比重の測定結果を 第 8 表に示した。 モードの測定は, コバルチ亜硝酸ナトリウムで染色した薄板を, 0.25 × 0.5 mm 間隔のポイントカウンターおよび双眼顕微鏡を使って行なったものである。 また, この資料から作成した等 An % 図および等色指数図を第 49, 50 図に示す。 これからわかるように, 岩体の内部では中心部ほどより酸性, かつ優白質となり, 岩質的には石英閃緑岩から花崗閃緑岩へ, さらにアダメロ岩へと漸移する。

第 48 図 試料産地(鮫川および石川岩体)(丸山, 1966)

第 8 表 鮫川複合岩体の花崗岩質岩類のモード組成・比重(採集・測定 : 丸山孝彦 ; カウント数 : 1枚につき 2500~6500)

サンプル番号 石英 斜長石 カリ長石 黒雲母 角閃石 An % 色指数 比重
8111 11 41 1 22 25 41 46.5 2.85
82748 6 51 1 3 39 40 42.5 2.82
81701 1 56 2 15 26 36 40.9 2.90
409 13 52 2 5 28 32 32.9 2.79
82528 10 55 3 5 27 37 31.9 2.79
81109 28 39 1 16 16 37 31.6 2.80
92214 8 54 6 5 27 - 31.5 2.81
72215 19 47 3 7 24 28 30.6 2.80
92001 11 56 3 3 27 - 30.2 -
81129 20 50 1 6 23 37 29.3 2.79
81126 21 48 2 3 26 35 29.2 -
72218 19 43 10 10 18 32 27.8 2.76
385 26 47 0 10 17 31 27.7 2.73
71922 18 51 4 6 21 - 27.3 -
72006 29 42 2 9 18 38 26.7 2.79
81120 23 47 4 10 16 - 25.9 2.76
72029 24 44 7 15 10 38 24.8 2.77
72214 26 50 1 4 19 36 23.2 -
82525 18 57 2 3 20 - 23.1 -
92409 16 61 1 7 15 38 23.0 2.77
92016 21 51 5 1 22 - 22.6 -
81711 22 58 1 15 4 32 19.3 2.74
72221 27 42 15 3 14 26 17.0 2.70
平均 18 50 3 8 21 36 28.8 2.78

第 49 図 等 An % 図(鮫川および石川岩体)(丸山, 1970)

第 50 図 等色指数図(鮫川および石川岩体)(丸山, 1970)

II.6.1.5 深成岩・ミグマタイト・変成岩の相互関係

[ II.6.1.5.1 ] 鮫川複合岩体と変成岩との関係

岩体と変成岩との直接の関係を観察することはできないが, 次の事実から判断すれば, 岩体の貫入は変成作用以後と考えられる。

① 周囲の変成岩と同じ鉱物組合せのものが, 岩体を構成する花崗岩質岩やミグマタイト中に ゼノリスまたはパレオゾームとしてみいだされる。 ② 花崗岩質岩中には, 変成岩に貫入したと同じ超塩基性~塩基性深成岩がゼノリスとして含まれる。 ③ ミグマタイト中の変成岩のパレオゾームは, 同一露頭内でも線構造が著しく不均一のことがあり, ミグマタイト化作用が変成作用以後であることを示している。

[ II.6.1.5.2 ] 岩体(狭義)の花崗岩質岩とそれをとりまくミグマタイトとの関係

ミグマタイトの形成は, 分布からみても狭義の鮫川岩体と密接な関係が考えられる。 ミグマタイト化作用と岩体の貫入とは大局的にはほぼ同時とみなされるが, 実際の露頭での関係はきわめて複雑で, 片状石英閃緑岩がベナイト状ミグマタイトに岩床状に迸入したり(第 51 図), あるいは逆に石英閃緑岩の面構造がミグマタイトによって切られたり(中沢 [ ← 図幅地域南西隅 ] の北方), そうかとおもうと, ゼノリスとしてつかまれたりする(第 52 図)。 ミグマタイト中にストック状をなして石英閃緑岩が貫入してくることもある( 戸草 とくさ [ ← 図幅地域南端・西端より東方へ 4 km ] )。

第 51 図 べナイト状ミグマタイト(V)に迸入した石英閃緑岩(QD), 鮫川村 湯ノ田 ゆのだ 蕨ノ草 わらびのくさ 間(丸山, 1966)。
Gn : 片麻岩, Amph : 角閃岩, apl : アプライト

第 52 図 鮫川 石英閃緑岩(Sm)をゼノリスとして含むミグマタイト(mg)。 鮫川村 戸草の南方

II.6.1.6 鮫川複合岩体の構造

[ II.6.1.6.1 ] ミグマタイト類の構造

花崗岩質のミグマタイトを構成する造岩鉱物, とくに黒雲母の面構造は, ほぼ全域にわたりよく発達する。 これはパレオゾームの片麻岩の面構造 S1 に平行である。 しかし線構造は花崗岩質のミグマタイトには発達しないことが多い。 パレオゾーム中には良くみられるが, 同一露頭でもその方向が著しく異なることが多い。

鮫川複合岩体の北部では, 面構造は花崗岩類をとり囲み, かつその傾斜は母岩の片麻岩の方へと傾く。 すなわち南開きの半ドーム状構造を示す。

鮫川複合岩体の東部では, 新期の黒雲母花崗岩の岩脈が迸入したり, また中心部付近には同じく新期の石英閃緑岩の岩体が迸入しており [ 以下の [注] 参照 ] , 構造は明確に解析できない。 測定した限りのデータでは, この部分の北部では, 南北方向, 垂直に近い面構造を示すが, 南部では南西方向へ半開きの半ドーム構造を形成している。

[注]
これらは本図幅中では主要なものではないし, ほとんどはずれているので記載ははぶく。

鮫川複合岩体の西部では, 走向は南北ないし N 40°E で, 50~70°西傾斜の面構造が卓越している。

以上のことから, ミグマタイト類は花崗岩質岩類の周囲を取りまくようなドーム構造を示し, 変成岩の構造ともほぼ調和していることがわかる。

[ II.6.1.6.2 ] 深成岩類の構造

鮫川複合岩体を構成する花崗岩質深成岩類には, 造岩鉱物, とくに角閃石・黒雲母の平行配列による線構造・面構造が全域にわたってみられる。 とくに岩体周辺部の石英閃緑岩相では, それらが良く発達している。 また, 板状・紡錘状をしたシュリレーンまたは暗色包有岩の形や配列も 上記の面構造・線構造と同じ方向を示すので, 岩体の構造解析のための重要な要素となる(第 53 図)。

第 53 図 鮫川岩体の石英閃緑岩中の塩基性包有岩。 鮫川村 内ケ竜

第 54 図 鮫川および石川岩体構造図(括弧内の地名は5万分の1地形図の名称)

[ 第 54 図の構造図の凡例の説明 ]
1 : 深成岩の流理面構造(foliation), 2 : 深成岩の流理線構造(lineation), 3 : 片麻岩の面構造(gneissosity), 4 : 変成岩の面構造(schistosity), 5 : 褶曲軸(背斜・向斜), 6 : 変成岩の線構造, 7 : ミグマタイト類, 8 : 変成岩類, 9 : 石灰岩, 10 : 超塩基性岩類, 11 : 閃緑岩および斑れい岩, 12 : 古期花崗岩質岩類(石英閃緑岩・花崗閃緑岩・アダメロ岩), 13 : 新期花崗岩質岩類(黒雲母花崗岩), 14 : 安山岩・玢岩類

これらの構造要素を地質図に投影したものが第 54 図の構造図である。 これによると, 岩体内部の構造は岩体内でも北部と南部では大きく異なり, 北部ではゆるやかなドーム状構造をなすのに対して, 南部では南北に伸びた漏斗状構造をとっている(ただし南部は, その大部分が隣接図幅に属する)。 すなわち, 北部では最も酸性なアブメロ岩から成る部分を中核として, 面構造は外側に傾斜しながら同心円状の配列を示し, いっぽう線構造は, 中心から外側に向った放射状のパターンをとる。 そして, 面構造も線構造も中心部ほど傾斜または落しの角度がゆるやかになる。 このようなドーム状構造が, 深成岩体のまわりのミグマタイト類や さらにそのまわりをとりまいて分布する変成岩類の構造と ほとんど調和的であることは注目すべき事実である。

これに対して岩体の南部では, 面構造は内側に傾斜し, 線構造の分布は求心的で, 岩体内部の或一点にほぼ収歛する傾向がある(戸草の南西方向約 2.5 km の地点)。 しかもこの場合の線構造の落しの角度は, 収歛点を南または北に離れるにしたがってゆるやかになる。

II.6.1.7 深成岩類の化学組成

第 9 表に鮫川岩体を構成する代表的な深成岩類の化学組成を示す。 このうちで, No. 3 から No. 6 の4個は, ドーム状構造をなす岩体の北部を東西に横断する内ヶ竜 - 遠ヶ竜ルートに沿った試料で, No. 3 と No. 4 は岩体の周縁相, No. 5 は中間相, No. 6 は中心相を代表している。 岩体がまわりほど塩基性で中心ほど酸性な岩相から構成されることはこれからも明らかである。 しかし, このような岩相構成は, 流理面構造の配列から考えられるような同心円状構造を必ずしもとってはいない。 丸山(1972)が第 9 表の分析のほか, もっと沢山の分析(部分分析も含めて)試料から解析した結果(第 55 図)によれば, 岩体内部の成分分布は, 全体として非対称的な偏心構造を呈している。

第 9 表 鮫川複合岩体の花崗岩質岩類の化学組成(採集 : 丸山孝彦 ; 分析 : 平野次男(No. 1 and 2), 丸山孝彦(No. 3~6))

試料 No. 1 2 3 4 5 6
SiO2 58.80 60.14 61.22 61.81 65.84 69.13
TiO2 0.66 0.84 0.83 0.65 0.67 0.66
Al2O3 17.83 16.78 17.27 17.17 16.54 14.76
Fe2O3 2.90 3.18 1.32 1.38 0.69 0.38
FeO 3.69 3.69 4.40 4.34 3.18 2.59
MnO 0.19 0.20 0.07 0.18 0.13 0.05
MgO 3.34 3.24 3.16 3.31 2.04 1.40
CaO 6.09 5.21 5.59 4.72 4.02 3.52
Na2O 3.32 3.51 3.04 2.83 3.80 3.07
K2O 2.17 2.25 1.30 1.55 1.85 2.85
H2O (+) 0.47 0.39 1.14 1.15 0.97 0.64
H2O (-) 0.07 0.53 0.19 0.10 0.17 0.14
P2O5 0.04 0.06 0.01 0.05 0.01 0.02
Total 99.57 100.01 99.54 99.24 99.91 99.21
Q 10.56 13.14 18.60 21.42 21.72 29.22
Or 13.34 13.34 7.78 9.45 11.12 17.24
Ab 28.77 29.34 25.68 24.10 31.96 25.68
D.I. 51.67 55.82 52.06 54.97 64.80 72.14
An 27.24 23.63 27.80 23.35 22.52 17.51
C - - 0.71 2.42 - 0.20
wo 1.28 0.93 - - 0.81 -
en 8.40 8.10 7.90 8.30 5.10 3.50
fs 6.73 6.47 5.94 5.81 4.36 3.17
mt 4.18 4.64 1.86 2.09 0.93 0.93
il 1.37 1.52 1.52 1.37 1.37 1.37
ap - - - - - -
[ 第 9 表の試料の詳細 ]
1 : 石英閃緑岩(72006), 鮫川村 蕨草の東方
2 : 石英閃緑岩(71922), 鮫川村 蕨草の西方
3 : 石英閃緑岩(19), 鮫川村 内ヶ竜(岩体の西縁)
4 : 石英閃緑岩(36), 鮫川村 中ノ内 [ 位置不明 ] (岩体の東縁)
5 : 花崗閃緑岩(55), 鮫川村 内ヶ竜の東方(岩体西縁から 650 m)
6 : アダメロ岩(29), 鮫川村 楢久保 ならくぼ (ドーム状部のほぼ中央)

第 55 図 鮫川岩体内部の岩相変化 (Fe2O3 の wt. % を例として)(原図は丸山)

II.6.2 宮本 みやもと 複合岩体 [ mgM, GbM, DM, TrM, AdM ]

II.6.2.1 分布

本地域のほぼ中央部に, 南北約 15 km, 東西 5 km(北部)ないし 2 km(南部)にわたって細長く分布する一大複合深成岩体を 宮本複合岩体とよぶ。 岩体を構成する岩石は, 大観して, 塩基性岩が東側に, 酸性岩類が西側に分布するが, 酸性岩類(弱片状斑状アダメロ岩 [ AdM ] )には, 北西部の 百目鬼 どめき [ ← 竹貫の北東方 2.5 km ] 能登沢 のとさわ [ ← 百目鬼の南東 ] を中心とするものと, 御斎所街道の 薄木 うすぎ [ ← 三株山の北北東方 4 km ] - 水沼 [ ← 薄木の南東方 1 km ] 間に分布するものとの2つがある。 北部の中央には, 塩基性包有岩に富んだ片状トロニエム岩~花崗閃緑岩 [ TrM ] が広く発達している(第 56, 57 図)。

第 56 図 宮本複合深成岩類の比重分布図(測定個数 43 ; 斑れい岩・コートランド岩は測定せず)

第 57 図 宮本複合岩体の斜長石成分(An %)の分布図(測定薄片数 72)

そのほか, 鮫川岩体の周縁部ほどではないが, ミグマタイト [ mgM ] が 岩体の西側の変成岩に接する部分, および岩体北部の セプタ状の部分 [ 位置不明 ] に発達している。

II.6.2.2 塩基性深成岩類 [ GbM, DM ]

岩体北東部の 犬仏 いぬぼとけ 山を中心に分布する塩基性深成岩類の主体をなすものは, 閃緑岩 [ DM ] ないし斑れい岩 [ GbM ] で, いずれも著しく多量の角閃石を含むことを特徴とする。 そのほか, 斑れい岩には一部でコートランド岩や角閃石岩を伴い, また各所に蛇紋岩のゼノリスも産出する(第 58 図)。 中でも犬仏山々頂付近に発達するゼノリスは大きい。

第 58 図 犬仏山付近の斑れい岩中のかんらん岩類のゼノリス。 球状, 塊状をなし, 周囲は滑石と蛇紋石に変質している。

蛇紋岩 : 暗緑色・暗灰色・黒色などで, 一般に塊状をなすが, ときに不明瞭な縞状構造がある。 主成分は再結晶したようなかんらん石と蛇紋石からなり, 滑石・透角閃石を多く生じている。 また磁鉄鉱も多い。

コートランド岩 : 犬仏山々頂付近に産出する。 ポイキリチックな角閃石の大晶(径 5 cm)で特徴づけられ, そのほか, かんらん石・斜方輝石・透輝石・亜灰長石を含む(II.4.1 [ =「II.4 変成小貫入岩類」の項の「II.4.1 超塩基性岩類」の項 ] 参照)。

斑れい岩 [ GbM ? ] : 黒色塊状で, 角閃石が著しく多く, 角閃石はときに定方位配列を示す。 粗粒なものから細粒なものまで種々の岩相があり, 鏡下の組織もオフィチックなものからブラノブラスチックなものまでさまざまである。 主成分鉱物は, 普通角閃石と斜長石で, ときに単斜輝石を伴う。 岩体南部の [ 標高 841.8 m の ] 三株山および 684 m 高地 [ 位置不明 ; 三株山の北方 1 km と南東方 500 m 付近に GbM の領域があるが, … ] 付近にも同様の岩相が分布する。

第 59 図 角閃石斑れい岩(HM66100806), 古殿町 犬仏山の北西麓。
H : 角閃石, P : 斜長石(主晶), pc : An 90 以上の石灰質核

角閃石斑れい岩(HM66100806, 分析 No. 13, 第 59 図): 古殿町 犬仏山の北西麓。
犬仏山付近に発達する優黒質深成岩の一つで, 鏡下では細粒ないし中粒のオフィチック組織を示す。 主として普通角閃石・斜長石・磁鉄鉱から成る。 角閃石は c∧Z = 20°, 2V (-) = 62~58°, 累帯構造があって, 主要部は褐緑色であるが, 周縁部で緑色に変る。 斜長石は 1~2 mm でしばしば 10 mm 前後の集合斑晶をつくる。 どの結晶にも不規則融食形の石灰質核(An 90 以上)があるが, その他の部分は曹灰長石(An 54)である。

閃緑岩~石英閃緑岩 [ DM ] : 暗色中粒塊状で, 角閃石が定方位配列を示すこともあるが, 一般にはほとんど無方向の塊状である。 主成分は普通角閃石と斜長石であるが, 少量の黒雲母と石英を伴うのが普通である。

含黒雲母閃緑岩(HM66100603, 分析 No. 12): 古殿町 山口 [ ← 犬仏山の西北西方 4 km ] の東方。
4~5 mm の角閃石の柱状結晶の多い優黒質岩で, やや片状を呈する。 鏡下では半自形斜長石と半自形ないし他形の角閃石, および少量の黒雲母が等粒状に発達し, かつ亜平行配列をなしている。 それらの粒間を他形粒状の石英がうずめている。 角閃石は, Z = 青緑色(部分により濃緑色), X = 明るい緑色, c∧Z = 17°, 2V (-) = 70°。 斜長石は, 虫食い状の石灰質核(An 90 以上)を有する曹灰長石(An 53)で, 核と主部の双晶接合面は続くけれども屈曲することがある。 黒雲母は濃褐色種で, ときに緑泥石化している。 そのほか, 磁鉄鉱・燐灰石を含む。

第 60 図 黒雲母角閃石石英閃緑岩(HM66100104), 古殿町 浪滝の東方。
P : 斜長石(主晶), pc : An 90 以上の石灰質核, H : 角閃石, sp : スフェン

黒雲母角閃石石英閃緑岩(HM66100104, 分析 No. 11, 第 60 図): 古殿町 浪滝の東方。
前記の岩石に似ているが, 角閃石が大きくポイキロオフィチックに発達し, かつ部分により不均一な色・干渉色を呈する。 中心が褐色で周縁が緑色の累帯構造を示すことが多い。 c∧Z = 17°, 2V (-) = 71°。 斜長石は他形粒状, 一部半自形で, An 90 以上の石灰質核のある曹灰長石(An 53)である。 石灰質核が方解石化していることもある。 黒雲母はしばしば緑泥石化し, 新鮮な部分と指交共生する。 石英は他形の粒状を示すが, 単一の結晶が大きく発達することもある。 その他, 随伴鉱物としてスフェン・燐灰石・磁鉄鉱がある。

以上の代表的岩類の構成鉱物比(モード組成)を第 10 表に示す。

第 10 表 宮本複合岩体の塩基性深成岩類のモード組成(GORAI(1944)より)

試料 A B C D E
斜長石 10 47 44 50 55
An % 85 75 60 50 45
石英 - - 2 3 1
かんらん石 8 - - - -
斜方輝石 12 - - - -
単斜輝石 11 - 11 - -
角閃石 57 51 42 43 23
黒雲母 - - - 3 20
その他 2 2 1 1 1
[ 第 10 表の試料の詳細 ]
A : コートランド岩, 犬仏山の西
B : 角閃石斑れい岩, 犬仏山の南
C : 透輝石角閃石斑れい岩, 犬仏山の南
D : 閃緑岩, 2コの平均
E : 黒雲母閃緑岩, 5コの平均

塩基性岩類相互の関係 : 上記の諸岩類の相互関係は, 露頭不良のためにわからない場合が多いが, 閃緑岩と斑れい岩とは明らかに漸移関係である。 斑れい岩とコートランド岩との間も, おそらく漸移であろう。 斑れい岩の細粒相と粗粒相との関係も不規則であるが, 後者は前者が再結晶してできたとおもわれるような産状を示す場合がある(第 61 図)。

第 61 図 細粒斑れい岩(B)がアプライト脈(C)に沿って粗粒化(A)する一例。 竹貫田 たけぬきだ [ ← 芝山の南南西方 2.5 km ] の南方(光川, 1967a)

角閃岩との関係 : 閃緑岩が母岩の角閃岩中に迸入した場合, とりこまれた角閃岩は, 片理が消えて細粒の閃緑岩状となる。 このようにして出来た板状またはレンズ状の塩基性包有岩はかなりあると考えられる。 また, 角閃岩にアプライト脈が迸入している部分では, 脈に沿って再結晶した角閃石の大晶が発達する。 また斑れい岩と角閃岩とが互層状をなして産する所では, 両者の境で角閃岩は粗粒になる。

II.6.2.3 酸性深成岩類 [ TrM, AdM ]

酸性深成岩類は, 岩体の中央部を占める片状トロニエム岩~花崗閃緑岩 [ TrM ] と, 岩体の西部に分布する弱片状斑状アダメロ岩 [ AdM ] から成る。 前者を 浪滝 なみたき 型, 後者を 百目鬼 どめき 型と称する。 代表的なもののモード組成を第 11 表に, 記載を以下に述べる。

第 11 表 宮本複合岩体の中~酸性深成岩類のモード組成(GORAI(1944)より)

試料 A B C D E F G
斜長石 52 51 60 46 58 53 40
An % 40 32 35 28 35 30 28
カリ長石 tr 4 3 13 tr 6 25
石英 22 31 23 33 32 31 27
角閃石 10 1 1 - - - -
黒雲母 16 13 13 8 10 10 8
[ 第 11 表の試料の詳細 ]
A : トーナル岩, 4コ平均
B : 塩基性トロニエム岩, 6コ平均
C : 斜長石に富む塩基性トロニエム岩, 7コ平均
D : トロニエム岩, 3コ平均
E : 斜長石に富むトロニエム岩, 3コ平均
F : 変晶組織のあるトロニエム岩, 6コ平均
G : 変晶組織のあるアダメロ岩, 8コ平均

片状トロニエム岩~花崗閃緑岩 [ TrM ] (浪滝型) : 優白質で, 中粒ないし粗粒のものが多く, ときに細粒のものもある。 主として黒雲母・斜長石,および石英から成り, カリ長石と角閃石は少量にすぎない。 しばしば, 板状・レンズ状・球状・塊状・墨流し状など, さまざまな形の塩基性包有岩を多量に含むことを特徴とする(第 62 図)。 これらの包有岩は閃緑岩ないし石英閃緑岩質で, 東に向かって量を増し, やがて優白質のトロニエム岩または花崗閃緑岩が細脈となって 優黒質の閃緑岩ないし斑れい岩中にしみこんで消失していくような産状(第 63 図), あるいは前者が後者に迸入し, これを切りはなして塩基性包有岩を作っていくような産状(第 64 図)を示す。

第 62 図 浪滝型のトロニエム岩~花崗閃緑岩に特有な板状, レンズ状の塩基性包有岩。
[ 上段の写真 : ] 古殿町 浪滝 - 竹貫田間。
[ 下段の写真 : ] 古殿町 花房 はなぼう [ ← 犬仏山の南西方 2 km ] - 有実 ありざね [ ← 犬仏山の南南西方 3.5 km or 大辷 おおつべ 山の西北西方 1.5 km ]

第 63 図 浪滝型の優白質岩が脈状に塩基性岩中にしみこみ, 消失していく産状。
[ 上段の写真 : ] 古殿町 花房 - 犬仏山。
[ 下段の写真 : ] 古殿町 花房

第 64 図 塩基性岩中に浪滝型酸性岩マグマが迸入して, これを切りはなし, 塩基性包有岩がつくられつつある産状。 大辷山の南(光川, 1967a)

第 65 図 片状黒雲母トロユニム岩(HM66102501), 古殿町 浪滝。
B : 黒雲母, P : 斜長石, Q : 石英

片状黒雲母トロニエム岩(HM66102501, 第 65 図): 古殿町 浪滝。
浪滝型の主体をなす中粒の優白質岩で, 黒雪母の亜平行配列による片状構造が肉眼でも認められる。 鏡下ではほぼ等粒状の花崗岩組織。 斜長石は 1~2 mm の短柱状の半自形で, 角にやや丸みがあるのが特徴である。 ときに屈曲したものもある。 比較的均質で平均して An 35, 石灰質核は含まない。 黒雲母は 2~3 mm の不規則な ragged aggregate [ = ぼろぼろの集合体 ] 。 角閃石は少なく, かつ小型で, Z = 若干青みのある濃緑色, X = 明るい黄緑色, c∧Z = 17°, 2V (-) = 62°。 石英は斜長石と黒雲母の粒間をうずめて径 1~3 mm に発達する。 カリ長石は存在しない。 その他, 随伴鉱物として, スフェン・ジルコン・燐灰石・褐れん石(累帯構造)がある。

第 66 図 片状黒雲母トロニエム岩(HM66081908), 古殿町 小滝 こだき [ ← 犬仏山の西方 2 km ]
ep : 緑れん石, B : 黒雲母, P : 斜長石, Q : 石英, K : カリ長石

片状黒雲母トロニエム岩(HM66081908, 分析 No. 6, 第 66 図): 古殿町 小滝。
前記よりやや粗粒, より酸性。 石英が多く, 5~8 mm のモザイク集合をつくる。 斜長石は 3~5 mm の短柱状の半自形で, 角に丸みがあることは前記と同じ。 平均成分 An 32。 カリ長石が少量ながら存在し, 2V (-) = 58°, moiré 組織があり, quadrille 組織 [ = 方眼状の組織 ? ] が局部的にみられる。 随伴鉱物としては, 緑れん石とスフェンが特徴。

第 67 図 塩基性包有岩(HM66072904), 古殿町 浪滝。
B : 黒雲母, H : 角閃石, P : 斜長石

塩基性包有岩(HM66072904, 分析 No. 9, 第 67 図): 古殿町 浪滝。
前述した浪滝の片状トロニエム岩に含まれるレンズ状包有岩で, 肉眼では, 片理のある細粒輝緑岩様の岩石。 径 2~3 mm の斜長石の白い斑点が特徴である。 鏡下では, 緑色普通角閃石・黒雲母・斜長石・石英から成る粒状ないし片状変晶組織で, 角閃石と黒雲母はほぼ等量, 石英は斜長石に比し少量である。 角閃石は c∧Z = 18°, 2V (-) = 67°, Z = 青みのある濃緑色, Y = 濃緑色, X = 明るい黄緑色で, これらの光学性は母岩のトロニエム岩中のものと変りない。 斜長石は母岩中のものよりも若干 塩基性で An 37 から An 43 ぐらい, An 85 の石灰質核を有するものもみいだされる。 肉眼で認められる長石の斑点は, 数個の斜長石の他形集合から成っていて, まわりの角閃石や黒雲母を押し分け, 斑状変晶状に発達して, 付近の片理を乱しているのが注目される。

弱片状斑状アダメロ岩 [ AdM ] (百目鬼型) : 優白質中粒で, 淡い紅色または白色の微斜長石の大きい斑晶(1 cm 前後)の散在で特徴づけられる。 片状構造がかなり著しく, 鏡下でモザイク状変晶組織 [ 以下の [注] 参照 ] もみられる。 前述の浪滝型とちがって, 塩基性包有岩はないが, 変成岩のゼノリスはまれにみいだされる。 有色鉱物は黒雲母のみで, その鱗片状結晶が岩石全体に均一に分散しながら, 片状構造をつくるのがこの岩石の特徴の一つである。

[注]
M. GORAI(1944)が, "metamorphic adamellitic to trondhjemitic rock" としたものが, これである。

第 68 図 片状斑状黒雲母アダメロ岩(HM66090202), 古殿町 中井 [ ← 犬仏山の西方 4 km ] の東方。
B : 黒雲母, P : 斜長石, m : ミルメカイト, K : 微斜長石, Q : 石英

第 69 図 片状斑状黒雲母アダメロ岩(HM66100507), 古殿町 薄木の東方

片状斑状黒雲母アダメロ岩(HM66090202, 分析 No. 1, 第 68 図): 古殿町 サブナラ(中井の東)。
片状斑状黒雲母アダメロ岩(HM66100507, 分析 No. 4, 第 69 図): 古殿町 薄木の東方。
径 1 cm 大の微斜長石の自形斑晶のある代表的な百目鬼型のアダメロ岩。 ほぼ等量の斜長石・石英および微斜長石の3者がモザイク状に発達して等粒花崗岩組織をつくり, それらの間を 1~2 mm の不規則な鱗片状の黒雲母が散在して弱い片状構造を岩石に与えている。 斜長石は丸みのある等方状結晶が多い。 わずかに累帯構造があるが, 平均成分は An 32 とわりあい一定している。 微斜長石は, 斑晶状のものと他形で細粒のものと2種あるが, いずれも 2V (-) = 70~80°のものが多く, quadrille 組織が方向によって顕著にみられる。 斜長石に接する部分ではミルメカイトが発達する。 随伴鉱物はジルコン・スフェン・燐灰石・ルチルで, いずれも微量かつ小さい。
片状アプライト質黒雲母アダメロ岩(HM66100404): 古殿町 能登沢の南。
前述のものに比べて石英が多く, 黒雲母が細粒(0.1~0.5 mm)である。 白雲母が少量含まれる。 石英・斜長石(An 32)・微斜長石は等粒モザイク組織をつくるが, 斜長石が丸みのある等方形を示すこと, 点滴状の石英がしばしば斜長石および微斜長石中に含まれ, あるいは逆に点滴状の斜長石が石英中に含まれたりする。 このような組織は, ミグマタイトや片麻岩にみられるものに似ている。

酸性岩類の相互関係 : 上述した片状トロニエム岩~花崗閃緑岩と弱片状斑状アダメロ岩との相互関係は, 地質図では後者が前者に迸入したような形に表わしてあるが, 野外での両者の境界は漸移している場合が多い。 第 70 図は薄木 - 水沼間の街道で GORAI(1944, p. 255)が観察した例で, 変晶組織をもった弱片状斑状アダメロ岩(Mad)が, 変晶組織をもった片状トロニエム岩(Mtr)から 変晶組織をもたない片状トロニエム岩(Tr)に漸移し, 最後のものが石英閃緑岩(Diq)に迸入している。 現在, この露頭は風化のためみられなくなったが, 同様な関係は百目鬼や小滝などでもみることができる。

第 70 図 トロニエム岩とアダメロ岩との関係を示した GORAI(1944)の図。 図中記号の説明は本文参照。

母岩との関係 : 宮本岩体をつくる酸性岩類が変成岩類に接する場合には, 一般に整合的で, 変成岩の片理に平行にいろいろな幅で明瞭な層々迸入を行なうことが多い。 第 71 図は母岩が泥質片岩の場合, 第 72 図は角閃岩の場合である。 いっぽう, しばしば母岩との間に混成作用(ミグマタイト化作用)が行なわれ, 種々のミグマタイト質岩をつくっている。 それらが発達するのは, とくに岩体の西側の 大原 だいばら [ ← 鎌倉岳の南東方 3 km ] - 大久田 おおぐた [ ← 鎌倉岳の東方 4 km ] , 大原 - 薄木地域, および岩体北部のセプタ状の変成岩体に接する部分に多く, 岩体の東側には少ない(第 73, 74 図)。

第 71 図 泥質片岩中に層層迸入した浪滝型花崗閃緑岩。 古殿町 大原 - 大久田間

第 72 図 角閃岩の層面に沿って層層迸入した浪滝型黒雲母トロニエム岩。 一部で石英閃緑岩質ミグマタイトをつくっている。 古殿町 仁田 にだ [ ← 三株山の北東方 3 km ] の南方

第 73 図 変成岩と接し, 変成岩を同化した花崗岩質岩。 黒雲母の streak [ = 脉 or 筋 ] がある。 古殿町 大久田付近

第 74 図 アダメロ岩中にみられる残存褶曲構造。 黒色の包有物は花崗岩化作用を免れて残った角閃岩。 古殿町 薄木の東方

II.6.2.4 深成岩類の化学組成

宮本岩体を構成する代表的深成岩類の化学組成を第 12 表に示す。

第 12 表 宮本複合深成岩類の化学組成 (分析者 : 平野次男)

試料 No. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
SiO2 71.43 69.59 72.73 67.69 57.75 57.65 52.75 52.02 51.89 43.75
TiO2 0.27 0.27 0.22 0.51 0.68 1.16 1.40 0.51 0.74 1.47
Al2O3 14.34 16.73 13.96 16.37 20.65 17.75 19.77 21.12 19.35 18.29
Fe2O3 0.99 0.78 1.06 1.12 3.38 2.65 3.50 1.13 4.25 5.90
FeO 2.10 1.88 2.00 3.07 4.24 4.69 6.16 4.34 4.95 7.86
MnO 0.08 0.11 0.03 0.07 0.17 0.18 0.23 0.12 0.21 0.24
MgO 1.06 1.15 0.81 1.22 1.98 3.65 3.66 4.56 5.20 7.31
CaO 2.95 2.43 3.78 4.33 5.78 6.60 7.88 12.01 9.19 11.66
Na2O 2.75 2.85 2.95 3.44 3.54 3.10 2.95 2.17 1.90 1.76
K2O 2.63 2.83 1.25 0.77 0.77 0.80 0.47 0.36 0.62 0.20
H2O (+) 0.61 0.57 0.38 0.63 0.51 0.80 0.58 0.82 1.03 0.96
H2O (-) 0.31 0.26 0.18 0.21 0.17 0.30 0.26 0.24 0.37 0.21
P2O5 0.11 0.07 0.04 0.08 0.10 0.07 0.21 0.08 0.04 0.01
Total 99.63 99.52 99.39 99.51 99.72 99.40 99.82 99.51 99.74 99.62
Q 36.36 37.44 39.96 32.04 16.98 15.00 8.64 5.52 9.60 -
Or 15.57 16.68 7.78 5.00 5.00 5.00 2.78 2.22 3.34 1.11
Ab 23.58 24.10 25.15 28.82 29.87 26.20 25.15 18.34 16.24 14.67
D.I. 71.51 78.22 72.89 65.86 51.85 46.20 36.57 26.08 29.18 15.78
An 13.90 11.12 18.90 20.57 28.08 31.97 38.36 46.70 42.53 39.75
C 1.73 4.90 0.71 2.35 3.67 0.10 0.31 - - -
wo - - - - - - - 4.99 1.28 di 14.52
en 2.70 2.90 2.00 3.10 5.00 9.20 9.20 11.40 13.00 hy 9.90
fs 2.64 2.38 2.38 4.09 4.22 4.75 6.47 6.34 4.75 ol 6.35
mt 1.39 1.16 1.62 1.62 4.87 3.94 5.10 1.62 6.26 8.58
il 0.61 0.61 0.46 0.91 1.37 2.28 2.74 0.91 1.37 2.89
ap 0.34 0.34 - 0.34 0.34 0.34 0.34 0.34 - -
[ 第 12 表の試料の詳細 ]
1 : アダメロ岩(HM66090202, サブナラ, 能登沢の北)
2 : アダメロ岩(HM66100507, 薄木)
3 : トロニエム岩(HM66081908, 小滝)
4 : トロニエム岩(HM66102503, 浪滝)
5 : 石英閃緑岩(HM66101509, 花房)
6 : 塩基性包有岩(HM66072904, 浪滝)
7 : 層状をなす塩基性岩(HM66072807, 大平入口 [ 位置不明 ; 「大平」は竹貫田の西方 1 km ]
8 : 石英閃緑岩(HM66100104, 浪滝)
9 : 含黒雲母閃緑岩(HM66100603, 山口 [ ← 浪滝の西方 2 km ]
10 : 角閃石斑れい岩(HM66100806, 犬仏山附近)

宮本複合深成岩類の化学成分は, SHIBATA and OKADA(1955)および小倉(1960)によっても分析されている。 小倉はその結果から, 宮本岩体の深成岩類は新期の阿武隈花崗閃緑岩に比して CaO が少なく K2O が多い傾向があり, アルカリ石灰指数はほぼ 60 になること, 岩石化学的には本邦の火山岩中, 角閃石安山岩で特徴づけられる鳥海火山帯の熔岩によく似ることが指摘されている。

II.6.2.5 宮本岩体の構造および形態

宮本岩体を構成する深成岩には, 造岩鉱物とくに黒雲母の配列による流理面構造が全岩体にわたって観察され, ことに酸性岩ほどよく発達する。 同じような面構造は 板状・レンズ・線状を呈するシュリーレン または暗色包有岩の形・配列によっても明らかにされる(第 75 図)。 しかし, 線構造はあまりよく発達しない。 閃緑岩や斑れい岩では, ときに角閃石が顕著な線状配列を示すこともある(第 76 図)。 しかし, これは一般的ではない。

第 75 図 薄いレンズ状の塩基性包有岩の配列によって示される面構造, 古殿町 薄木付近(光川, 1967a)

第 76 図 宮本岩体の石英閃緑岩にみられる線構造(矢印の方向)。 古殿町 大久田付近

第 77 図 宮本岩体とその周辺地域の構造図(光川, 1967a)

[ 第 77 図の構造図の凡例の説明 ]
1 : 安山岩および玢岩類, 2 : 新期花崗岩(芝山岩体), 3 : アダメロ岩(百目鬼型), 4 : トロニエム岩・花崗閃緑岩(浪滝型および鮫川岩体), 5 : 石英閃緑岩・閃緑岩, 6 : 斑れい岩, 7 : 超塩基性岩, 8 : 変成岩類, 9 : 晶質石灰岩

これらの構造要素を地質図に投影し, 岩体内部の岩相分布を考慮しながら作った構造図が第 77 図である。 これによると, 岩体内部の構造は, 大局的には変成岩の大構造に調和して南北(北半部では北北西 - 南南東, 南半部では北北東 - 南南西)に軸をもった盆状構造をとるようにおもわれる。 このような構造は, 岩体内部における岩石比重や斜長石の An % の分布(第 56, 57 図参照)の示す同心円構造とよく調和し, 岩体の周縁部から中心部に向って優白質, かつ酸性になる傾向が明らかである。

構造上注目すべきことは, 岩体の北部に面構造が数カ所で渦巻構造をつくることで, このような構造は南半分にはない。 また, 渦巻部およびその近くでは, 線構造が直立または 70~90°の急角度で落している。 これに対し, 岩体の中部から南部で測った線構造は 北に比較的ゆるい角度(30~50°)で落すものが多い。 いっぽう, 岩体の東部では西北西に 40~60°で落す線構造があり, 中央部から西よりの部分には北東に落すものが発達する。 これらを総合すると, 第 78 図のように, 各方面の線構造はすべて北部の渦巻部に向って収歛することになり, 渦巻の中心が貫入の中心であったこと, 岩体の形態は そこから南上りの舌状にひろがった 非対称的な盆状岩体(lopolith)をなすことが推測される。

第 78 図 宮本岩体内部の花崗質岩類にみられる線構造。 直立する北部を中心として, 中部, 東部, および南部の線構造が収歛する(下半球投影)(光川(1967a)に大平の資料を追加)

面構造および線構造で示される岩体の内部構造は, 岩体に接する変成岩の構造に対して, おおむね整合的であるが, 岩体を境として東西両側地域の変成岩の線構造が, 大局的にみて 90°も異なる事実は注目に値する(第 79 図)。

第 79 図 宮本岩体の東側と西側における変成岩類の線構造。 岩体を境にして両側の線構造が直交している(下半球投影)(光川, 1967a)

これらのことから, 宮本岩体の構造形態および迸入機構を次のように考える。

  1. 深成岩類の迸入の中心は, 現在の露出範囲の中央よりは北にかたよった所にあった。
  2. そこから, 塩基性岩・ 浪滝型の片状トロニエム岩~花崗閃緑岩・ 百目鬼の型弱片状斑状アダメロ岩の順に迸入したが, そのさいに迸入の中心は少しずつ西に移動している。
  3. 迸入の中心から, これらのマグマは 母岩の褶曲構造(主として向斜構造)に調和しながら南上りにひろがっていった。

II.6.2.6 浪滝の変成塩基性岩脈

宮本岩体の北部の中で, 浪滝部落の南西のバス道路にそって, かつて牛来(1941)によって注目された変成塩基性岩脈の露頭がある(第 80, 81 図)。 この岩脈は枝分れをして, 母岩である浪滝型片状トロニエム岩と似ている片状の花崗岩質岩石の片状構造を切り, 第 82 図のように, 母岩を切る小さい断層に沿って迸入したような産状を示している。

第 80 図 浪滝の変成塩基性岩脈の露頭スケッチ(光川, 1967b)

第 81 図 塩基性岩脈。 第 80 図の A の部分の拡大図

第 82 図 断層に沿って迸入した塩基性岩脈(D)の枝分れ。 第 80 図の B の部分(光川, 1967b)

第 83 図 塩基性岩脈を構成する含黒雲母・角閃石片岩(HM66072905), 古殿町 浪滝。
B : 黒雲母, H : 角閃石. P : 斜長石

岩脈を構成する岩石(HM66072905, 第 83 図)は, 現在は角閃片岩であるが, オフィチック組織が残存することから, 輝緑岩または玄武岩のような塩基性火成岩を起源とする変成岩とみなされている。

鏡下では, 0.5~1.0 mm の緑色普通角閃石と斜長石を主とし, 若干の黒雲母を含む。 角閃石は Z = 青みのある濃緑色, Y = 濃緑色, X = 明るい黄緑色, c∧Z = 16°, 2V (-) = 74°。 斜長石は An 38 ぐらいの中性長石であるが, しばしば 2~4 mm の丸みのある斑状変晶をつくる。 この点では, さきに記載した母岩中の塩基性包有岩に似ているが, それよりずっと細粒であること, 石英を含まないことで区別される。

この岩石には, 走向北西で南西に傾斜する片理があり, さらに黒雲母による線構造(S 60°W 60°)も認められる。 これらの構造要素は, 浪滝から 1 km 北東の竹貫田付近に分布する 御斎所変成岩の片理および線構造と全く一致している。 したがって, その母岩の花崗岩質岩石は 現在の変成岩を規定している変成作用よりも古い可能性がある。 そのせいか, その花崗岩質岩石は再結晶して片麻岩状になった組織を示す。

II.6.2 付. 十文字 じゅうもんじ 岩体 [ QdJ ]

[ 竹貫の東北東方 1 km の古殿にある ] 古殿町 古殿神社の近くに, かつて小倉(1956, 1958)が, 塩基性火成岩の花崗岩化作用の例として記載した片状石英閃緑岩の露頭がある。 その層位的位置は 宮本複合岩体の下位の角閃岩が比較的多い竹貫変成岩の層準にあたっている。 この片状石英閃緑岩は, ここから北西に, 変成岩層とまったく調和的な岩床状をなしてつづき, 図幅地域北西隅に近い石川町 十文字付近ではやや広がって粗粒岩相を形成する。 この岩床状片状の石英閃緑岩を十文字岩体と名づける。 十文字の南方に露出するものは, きわめて片状構造の強い石英閃緑岩で, 黒雲母・濃緑色 普通角閃石・斜長石および石英の半自形粒状集合から成り, 副成分としてスフェンを含む, 斜長石(An 45)はやや斑晶状に発達するが黒帯構造を欠き, ときに湾曲する。

この岩体は岩相的には宮本岩体の塩基性花崗岩質岩部にきわめて類似しているが, その成因関係をきめる手掛りは今のところない。

II.6.3 石川 いしかわ 複合岩体 [ QdI ]

II.6.3.1 分布

鮫川岩体の西に並んで, 南北に細長く最大幅 8 km, 延長 45 km にわたって分布する, 主として花崗岩質岩類からなる深成岩体を, GORAI(1944)が石川複合深成岩体と命名した。 ただし岩体の主要部は隣接の棚倉図幅内にあり, 本図幅に分布するのは南東側の約3分の1程度である( [ 「II.6.1 鮫川複合岩体」の項で示した ] 第 38 図参照)。

II.6.3.2 随伴小貫入岩類

狭義の石川岩体は主として花崗岩質岩類から成るが, その内部または周縁地域に, 蛇紋岩・角閃石岩・角閃石斑れい岩などの小貫入岩類が産出する。 そのうち 蛇紋岩 は岩体の東側の [ 古殿町 ] 照内 てるうち [ ← 長光地の北北西方 1 km ] 付近で泥質片麻岩中に貫入するもので, 鮫川岩体に伴うものと同じ特徴を有する。 角閃石岩 [ 鮫川村 ] 戸倉 [ ← 長光地の南西方 1.5 km ] の南方で片麻岩および石灰岩中に貫入する粗粒塊状岩で, 鏡下では斜長石の客晶を含むポイキリチックな普通角閃石を主成分とする。 この岩体は石川岩体の主岩相である石英閃緑岩によって貫かれている。

以上の2つのものに比して, 図幅内で小塩基性岩類と区別したかなり大きい 角閃石斑れい岩 [ 長光地の周辺の ] 鎌田・淵上・ 発智岡 [ ← 発地岡 ほつちおか ? ] に分布する。 岩体内部が不均質なのが特徴で, かんらん石・ 紫蘇輝石・ 透輝石・ カミングトン石・ 普通角閃石に富み斜長石に乏しいコートランド岩質な部分から, 斜長石・普通角閃石・黒雲母に富む閃緑岩質の部分まである。 しかし, 岩体を構成する主要岩相は, かんらん石を含む輝石角閃石斑れい岩で, 鏡下では黄~褐色の普通角閃石中に粒状のかんらん石と普通輝石をポイキリチックに含む。 斜長石は平均して An 70 程度である。

II.6.3.3 岩体を構成する花崗岩質岩類

鮫川岩体と同じように, 中心部でより酸性, より優白質, 周縁部ほどより塩基性, より優黒質となり, 外側から内側に向って次のような岩相から構成される(第 38 図参照)。

1) 片状中粒トーナル岩
2) 片状粗粒トーナル岩質石英閃緑岩
3) 片状中粒斑状石英閃緑岩
4) 片状中粒斑状花崗閃緑岩

このうち 1) の岩相は石川町の西方に産出する。 本図幅内に分布するのは 2) と 3) だけで, 4) の中心相は西に隣接の棚倉図幅内に分布する。

第 84 図 石川岩体のトーナル岩質石英閃緑岩(TM65090508), 鮫川村 馬場 [ ← 長光地の南南西方 2.5 km ]
ep : 緑れん石, B : 黒雲母, H : 角閃石, P : 斜長石, K : 正長石, Q : 石英

トーナル岩質石英閃緑岩 (TM65090508, 第 84 図): 鮫川村 馬場
優黒質(色指数 32)の粗粒で強い片状を示す岩石で, 角閃石の多い部分では線構造も顕著である。 角閃石は黄~暗緑色の普通角閃石で, c∧Z = 16.5°, 2V (-) = 50°。 斜長石は黒帯構造が少なく, 平均成分 An 38。 カリ長石は部分的に moiré appearance を呈するが, 微斜長石組織はない。 随伴鉱物は緑れん石・スフェン・緑泥石・その他。

第 85 図 石川岩体の石英閃緑岩(TM650911294), 鮫川村 赤坂西野 [ ← 本図幅の西隣の棚倉図幅地域内 ]
sp : スフェン, H : 角閃石, B : 黒雲母, P : 斜長石, Q : 石英

片状石英閃緑岩 (TM650911294, 第 85 図): 鮫川村 赤坂西野。
粗粒で強い片状を示す岩石で, 鮫川岩体の周縁相とよく似ている。 角閃石が自形斑状をなすこと, 黒雲母・斜長石・石英の3者がほぼ等粒半自形ないし亜オフィチック組織を呈することが特徴。 斜長石の累帯構造は少ない。 普通角閃石は濃緑色で, c∧Z = 16°, 2V (-) = 60°。 カリ長石は局部的に quadrille 組織が発達するが, 少量である。

上記のものも含め, 石川岩体の全域から採集した 31 試料のモード・比重の測定結果を第 13 表に示す (試料の産地は [ 「II.6.1 鮫川複合岩体」の項の「II.6.1.4 岩体(狭義)の構成岩類」の項で示した ] 第 48 図を, 等 An % 図, 等色指数図は, それぞれ [ 前記の第 48 図の直後に示した ] 第 49, 50 図を参照)。

第 13 表 石川複合岩体の花崗岩質岩類のモード組成・比重(採集・測定 : 丸山孝彦)

サンプル番号 石英 斜長石 カリ長石 黒雲母 角閃石 An % 色指数 比重
80301 19 41 1 18 21 40 39.1 2.89
80321 13 50 3 12 22 42 34.2 2.82
90216 11 52 3 13 21 37 34.1 2.83
90508 22 43 3 15 17 38 32.4 2.78
80802 21 45 1 13 20 36 32.8 2.81
80310 18 49 1 13 19 33 31.7 2.76
82224 20 46 2 9 23 42 31.6 2.82
91106 16 50 3 8 23 - 31.4 2.79
596 15 53 2 9 21 38 30.2 2.79
82231 22 45 3 13 17 37 30.2 2.80
599 19 47 5 9 20 30 29.2 2.78
90222 16 54 3 10 17 38 27.1 2.81
80735 17 57 0 8 18 36 26.1 2.80
83137 17 56 1 9 17 40 26.4 2.78
90373 21 49 4 10 16 37 26.1 2.80
80314 20 51 3 10 16 37 25.6 2.80
91109 22 49 3 9 17 33 25.5 2.76
555 22 49 4 9 16 37 24.9 2.77
515 19 51 5 7 18 30 24.8 2.78
83104 26 47 3 10 14 40 24.2 2.77
914324 18 53 5 10 14 37 23.9 2.78
80738 17 55 4 13 11 38 23.8 2.74
91233 19 52 5 11 13 - 23.6 -
914320 20 52 4 8 16 33 23.6 2.77
914316 17 53 7 4 19 33 22.8 2.76
546 23 51 5 10 11 37 21.3 2.76
911294 19 56 4 12 9 40 20.9 2.80
80751 27 51 1 8 13 37 20.7 2.75
552 25 51 5 6 13 34 19.4 2.73
509 26 56 2 5 11 33 16.4 2.75
602 25 46 18 4 7 25 10.5 2.70
平均 (31 コ) 20 50 4 10 16 36 26.3 2.78

II.6.3.4 相互関係

石川岩体と変成岩との関係は, [ 赤坂中野の東にある ] 鮫川村々役場の裏の露頭で観察できる(第 86 図)。 そこでは石英閃緑岩が接触部で急冷細粒相を有すること, 変成岩と石英閃緑岩との構造上の違いから 前者が後者によって非調和的に貫入されているとみられる。

第 86 図 石川岩体と変成岩の関係。 鮫川村 新宿, 村役場の裏。
peg : ペグマタイト, gn : 珪質片麻岩,
Qz. Di. : 石英閃緑岩(接触部付近では急冷相ができている),
Fol. : 石英閃緑岩の面構造, Lin. : 石英閃緑岩の線構造, Gn : 片麻面

鮫川複合岩体との関係は [ 赤坂中野の南方 2 km の ] 湯ノ田温泉付近で, 石川岩体からの枝脈である石英閃緑岩の岩脈が, ベナイト状ミグマタイト中に貫入しており, 急冷縁辺相もできている。 従って, 石川複合岩体は鮫川複合岩体より後期ということになる。

II.6.3.5 石川複合岩体の構造および形態

宮本岩体や鮫川岩体の場合と同じように, 有色鉱物またはシェリーレンの配列による面構造および線構造が発達し, それによって岩体の構造形態を推定することができる。

[ 先に「II.6.1 鮫川複合岩体」の項で示した ] 第 38, 49, 50 図に示されているように, 岩体内部には, それぞれ南北に伸びた盆状構造が少なくも2つ認められる。 その一つは [ 本図幅の西隣の棚倉図幅地域内(?)の ] 石川町を中心とするもので, 構造の中心部には本岩体の中で最も酸性の花崗閃緑岩相(色指数 25 以下)が発達する。 第2のものは, [ 長光地の南西方 1.5 km の ] 戸倉の西方に中心のある構造で, ここでは面構造の盆状配置とともに線構造の求心的配置が顕著である。 しかし, この構造の中心部の岩相は, 第1の構造の場合ほど酸性ではなく, やや塩基性の花崗閃緑岩(色指数 25~30)となっている。

II.6.3.6 化学組成

石川複合岩体を構成する代表的な花崗岩質岩類の化学組成を第 14 表に示す。 これを鮫川岩体のもの(第 9 表)と比べてみると, 大局的にはよく似ているが, 石川複合岩体のほうが K2O に富み, Fe2O3 / FeO 比が高いなどの違いが目につく。 このことは両者のモード組成(第 8 表と第 13 表)にも反映し, 黒雲母 / 角閃石の比は石川岩体が 10 : 16 であるのに対し, 鮫川岩体では 8 : 21 と低い値を示している。

第 14 表 石川複合岩体の花崗岩質岩類の化学組成(採集 : 丸山孝彦, 分析 : 平野次男)

試料 No. 1 2 3 4 5 6 7
SiO2 56.40 60.04 60.10 61.06 63.86 65.14 68.24
TiO2 1.07 0.66 0.80 0.84 0.57 0.74 0.38
Al2O3 17.09 17.52 16.65 16.67 16.25 15.66 15.02
Fe2O3 3.48 2.82 3.68 2.83 2.84 2.68 2.54
FeO 5.72 3.10 2.74 3.34 2.62 1.79 0.95
MnO 0.15 0.04 0.12 0.02 0.13 0.07 0.09
MgO 6.31 3.01 2.99 2.92 2.19 2.77 1.25
CaO 3.19 5.41 5.70 5.52 4.67 2.50 3.19
Na2O 3.02 3.42 3.36 3.61 3.32 3.91 3.81
K2O 2.32 2.53 2.25 2.39 2.53 2.92 3.58
H2O (+) 0.66 0.66 1.28 0.51 0.69 1.15 1.00
H2O (-) 0.02 0.22 0.46 0.22 0.22 0.43 0.28
P2O5 0.09 0.07 0.05 0.10 0.08 0.01 0.05
Total 99.52 99.50 100.18 100.03 99.97 99.92 100.38
Q 18.48 13.74 15.12 17.10 20.40 21.60 24.24
Or 13.34 15.01 13.34 14.46 15.01 17.24 21.13
Ab 25.15 28.82 28.30 30.39 27.77 33.01 31.96
D.I. 56.97 57.57 56.76 61.95 63.18 71.85 77.33
An 15.01 25.02 23.91 22.24 22.24 11.68 13.34
C 4.28 - - - - 1.84 -
wo - 0.35 1.51 1.74 - - 0.70
en 15.80 7.50 7.50 7.30 5.50 6.90 3.10
fs 2.77 2.90 2.90 2.77 3.83 1.19 0.79
mt 5.10 4.18 5.34 4.18 3.94 3.94 3.71
il 2.13 1.37 1.52 1.52 1.06 1.37 0.76
ap 0.34 0.34 0.34 0.34 0.34 0.34 0.34
[ 第 14 表の試料の詳細 ]
1 : トーナル岩質石英閃緑岩(80301), 鮫川村 広畑
2 : トーナル岩質石英閃緑岩(90510), 鮫川村 馬場
3 : トーナル岩質石英閃緑岩(82231), 鮫川村 新宿の南西 1.2 km
4 : トーナル岩質石英閃緑岩(90505), 鮫川村 馬場
5 : 石英閃緑岩(91237), 鮫川村 棚橋 [ ← 発地岡の西方で本図幅の西隣の棚倉図幅地域内 ]
6 : 花崗閃緑岩(552), 石川町 立ヶ岡 [ ← 図幅地域北西隅の西方で本図幅の西隣の棚倉図幅地域内 ]
7 : 花崗閃緑岩(602), 石川町の東方 1 km [ 位置不明 ; 本図幅の西隣の棚倉図幅地域内 ? ]

II.6.4 小花崗岩質岩体 [ G ]

この地域には前述・後述するような比較的大きな花崗岩質岩体の他にも, 数~数 10 m 程度の小さな花崗岩質岩体が点在する。 それらは地質図に表わすこともむずかしいが, 他の岩体との関係もよくわからない。 そのうちで, もっとも大きいものが [ 雨降山 てんきちょう の南方 1 km の ] 馬場平の部落を中心として南北 500 m, 東西 200 m ぐらいの範囲に分布する。 それは中粒黒雲母花崗閃緑岩で, 母岩である変成岩の構造に調和的で, かつ馬場平断層に沿って貫入している。 この岩体は, 断層上にありながら, 圧砕作用をこうむった形跡があまり明瞭でない。 肉眼でみられる片状構造もおそらく初生的な流理構造とおもわれる。 もしそうだとすれば, この岩体の貫入は馬場平断層形成以後ということになる。

いずれの場合も, 岩質としては花崗閃緑岩~花崗岩質である。 前述までの花崗岩質岩体はいわゆる「古期」とよばれていたものであり, これから記述するものは「新期」とよばれていたものに相当する。 小花崗岩質岩体は, 岩質としては 「古期」とよばれるものに似ているものが多いので, 記載上の位置としてここに述べておいた。

II.6.5 論田 ろんでん 岩体 [ TrR ]

後述の芝山岩体の西, [ 前述の ] 宮本岩体の北西に分布する花崗岩質岩体で, 芝山岩体との間には, 超塩基性岩 [ ← U and Gb ? ] を含む黒雲母片岩および角閃岩から成る変成岩層 [ ← bs ? ] が帯状をなしてはさまれている。 しかし, 鵰巣 くまだがす の南では芝山岩体と接するらしいが, 貫入の前後関係は不明である。

岩体を構成する主要岩相は黒雲母トロニエム岩 [ TrR ] で(第 87 図), 代表的岩石(HM66082502)は石英が 32.5 %, 灰曹長石(An 25)が 52.2 %, 微斜長石(2V (-) = 50~74°)が 8.6 %, 黒雲母が 6.7 % から成り, 角閃石は含まない。 そのほか, 部分的にはアプライト質両雲母花崗岩も発達する。

第 87 図 論田岩体の黒雲母トロニエム岩(HM66082502), 古殿町 論田, 石戸谷 [ 位置不明 ; 論田の西 ? ] と山口 [ ← 論田の南方 2 km ] の中間。。
B : 黒雲母, P : 斜長石, m : 白雲母化した斜長石の内核, K : 微斜長石, Q : 石英

岩体の南部では, 岩体の境界にほぼ平行した弱い片状構造がみられたり, 変成岩類の細長いゼノリスもみられるが, 全体的には塊状である。

II.6.6 好間川 よしまがわ 複合岩体 [ GY : 永戸岩体, AdY : 差塩岩体 ]

本図幅地域の北東隅の好間川流域(旧 永戸村・三阪村地域)に広く発達する花崗岩質岩体で, GORAI(1944)の 永戸 ながと 岩体にあたり, GORAI はこれを入遠野岩体とともに "Third phase intrusive" とした。 しかし, 本調査では「永戸岩体」の中に さらにそれに非調和的に貫入する新期花崗岩体を確認したので(第 88 図), 後者を永戸岩体 [ GY ] から分けて 差塩 さいそ 岩体 [ AdY ] とし, 両者を合わせたものを新たに好間川岩体と呼ぶ。

第 88 図 永戸岩体(N)に貫入する差塩岩体(S)

岩石記載 : 永戸岩体を構成する花崗岩質岩類は, 中粒ないし粗粒の弱片状の花崗閃緑岩 [ GY ] であるが, 周縁相は一般にやや色指数を増し, かつ角閃石 / 黒雲母の比が大きい傾向があり, これに対し, 中心相ではより優白質で, 黒雲母が角閃石より多く, 最も酸性な 高戸 こうど [ ← 図幅地域北東隅 ] 付近ではアダメロ岩質 [ AdY ] となる。 塩基性包有岩は宮本岩体のように多くはないが, 長径数 cm~15 cm 大の楕円体ないし偏球状のものがしばしば見られ, とくに周縁部ほど多い。 次にこれら諸岩相のモード組成を第 15 表に, 代表的な顕微鏡写真を第 89, 90 図に示す。

第 15 表 好間川複合岩体の花崗岩質岩類のモード組成(大平, 1970)

石英 斜長石
(An %)
カリ長石 黒雲母 角閃石 その他 色指数
周縁相
(YO6990702, 中ノ内)
25.6 34.7
(46)
13.0 13.7 12.7 0.4 26.8
中間層
(YO6991502, 上市萱)
20.0 45.2
(45)
18.5 12.2 4.2 0.0 16.4
中心相Ⅰ
(YO69111902, 高戸)
30.1 33.5
(34)
20.3 11.3 4.9 0.0 16.2
中心相Ⅱ
(YO69112002, 高戸)
21.6 48.3
(30)
19.7 8.4 1.4 0.5 10.3
文象花崗岩
(YO69111503, 高野)
36.4 48.6
(20)
13.5 1.5 - - 1.5
塩基性包有物
(YO69112001, 根古屋)
2.0 38.3
(50)
2.0 17.5 40.2 - 57.7
差塩岩体
(YO69111903, 高戸)
17.9 51.5
(30)
24.6 4.6 0.7 0.7 6.0
差塩岩体の周縁相
(YO69112102,
下市萱の北北東 旧 村界付近)
36.4 24.6
(46)
17.6 14.1 7.0 0.2 21.3

第 89 図 好間川岩体周縁相のやや塩基性の黒雲母角閃石花崗閃緑岩(YO6990702), 三和町 中ノ内 [ 位置不明 ; 中寺の南方 1 km ]
B : 黒雲母, H : 角閃石, P : 斜長石, Q : 石英, K : 微斜長石

第 90 図 好間川岩体中心相の角閃石黒雲母花崗閃緑岩(YO 6991502), 三和町 上市萱 かみいちがや
H : 角閃石, B : 黒雲母, P : 斜長石, K : 正長石, Q : 石英

表からわかるように, 周縁相と中心相では色指数で 30 から 10 まで変化するが, 石英・斜長石・微斜長石の量はそう著しい増減がない。 全体を通じて quadrille 組織の顕著な微斜長石(2V (-) = 70~80°)が, 宮本岩体その他の花崗岩質岩類に比べて, 比較的多量に含まれるのが特徴である。 微斜長石は塩基性包有岩にも少量含まれる。

いっぽう, 差塩岩体を構成するものは, 永戸岩体の構成岩類より一段と優白質, アルカリ長石に富む塊状のアダメロ岩で, カリ長石は光軸角の小さい(2V (-) = 55~66°)正長石である(第 91 図)。 この岩体は本図幅内から北に隣接の小野新町図幅にかけて, 径約 4 km にわたって分布する。

第 91 図 差塩岩体の黒雲母アダメロ岩(YO69111903), 三和町 高戸。
H : 角閃石, B : 黒雲母, P : 斜長石, K : 正長石, Q : 石英

以上の諸岩相のほか, [ 鶴石山の北方 3 km の 高野 こうや の試料のように ] 変成岩との接触部に文象花崗岩が局部的に発達する(第 15 表参照)。

第 92 図 好間川岩体構造図(大平, 1970)

[ 第 92 図の構造図の凡例の説明 ]
1 : 流理面構造(70°以下), 2 : 流理面構造(70°以上), 3 : 流理面構造(90°), 4 : 流理線構造, 5 : 塩基性包有物が比較的多い部分, 6 : 背斜軸, 7 : 向斜軸, 8 : 断層, 9 : アプライト・ペグマタイト, 10 : 文象花崗岩

岩体の構造 : 永戸岩体の花崗岩質岩類には, 宮本岩体や鮫川・石川岩体ほどではないが, 有色鉱物の亜平行配列および 塩基性包有物による流理構造(面構造と線構造)が或程度発達しているので, 岩体の貫入構造を推定することができる(第 92 図)。 それによれば, 本岩体は, 大局的には母岩の構造および岩体の外形に調和したドーム構造をなしている。 ドームの翼部の傾斜は, 岩体の東部および南部では比較的ゆるく 60~70°であるが, 西部では 80~90°となる。 下市萱 しもいちがや の北部で急立した面構造が岩体の外形にやや斜交して北北西 - 南南東の方向をとるが, これは貫入後の構造運動によって初期の構造が改変したものであろう。

線構造は全域を通じて南東ないし南南東に落すものが発達する。 この方向は面構造から解析される β 軸と一致するので, 岩体の貫入軸を示すものと考えられる。 解析の便宜上分けたⅠ, Ⅱ, および Ⅲ 地区の βmax はそれぞれ, S 20°E 70°(Ⅰ), S 10°E 55°(Ⅱ), S 20°W 65°(Ⅲ)となる。 なお Ⅲ 地区では前記と異なる副次的な βmax があり, それに対応して線構造も乱れてくる。 乱れの原因は, この地区に数本の断層と小規模な剪裂帯が比較的密に発達するためであろう。

差塩岩体は, [ 本図幅地域内にない ] 北半分は未調査であるが, 調査した範囲では直径約 4 km の盆状岩体で, あたかも, ドーム状をなす永戸岩体の頂部に貫入したような関係を示している。 面構造ははっきりしていないが, その外形に平行して同心円状をなし, 内側に 70~85°で傾斜しているものと思われる。 βmax 軸は北に 76°と急立して岩体の中心に向かっており, 線構造もそれに近いものが発達している。

母岩との関係 : 好間川複合岩体は 本地域の変成岩類のうちゾーンⅠの緑色片岩を主とする岩層に貫入したもので, さきに述べたように, 接触部から約 1 kmほどが接触変成域を形成し, 片岩類をホルンフェルス化している。 母岩との接触関係は, 大局的には整合的で, 1~2 m の混成部を経て漸移するような場合(第 93 図)や, 狭い幅の急冷縁をもって母岩に貫入する場合(第 94 図)などがある。

第 93 図 永戸岩体の接触部の産状 Ⅰ( 遅川 おそかわ [ ← 根古屋と中寺の間の好間川の南岸 ] の南方)(大平, 1970)。
Ⅰ : 中粒花崗閃緑岩, Ⅱ : その片麻状部(ミグマイト質), Ⅲ : 黒雲母片麻岩(ミグマタイト質), Ⅳ : 片麻状黒雲母石英片岩, Ⅴ : 黒雲母石英片岩

第 94 図 永戸岩体の接触部の産状 Ⅱ(下市萓)(大平, 1970)。
Ⅰ : 花崗閃緑岩, Ⅱ : 片状構造がやや強い部分, Ⅲ : 急冷細粒部, Ⅳ : 黒雲母片岩, Ⅴ : 黒雲母片岩のゼノリス

II.6.7 入遠野 いりとおの 複合岩体 [ GbIr, GIr ]

図幅地域の東縁近くに分布し, 好間 よしま 川と 入遠野 いりとおの 川とを分つ鶴石山・二ツ石山塊の南西山腹に露出し, 一部は 東に隣接の たいら 図幅内の 三大明神 さんだいみょうじん 山から天狗山にかけて分布する。 GORAI(1944)の第3期迸入岩に属し, 「平・川前」図幅(岩生・松井, 1961)では, 好間川岩体とともに中期花崗岩の第1相にされている。

岩体の主要部は弱片状花崗閃緑岩 [ GIr ] (C. I. [ 色指数 ] = 11~26)から成るが, 周縁相ではやや優黒質, かつ片状となる。 また中核部にはアダメロ岩ないし花崗岩質(C. I. = 4~11, 微斜長石 20~22 %)の部分が発達する(第 95 図)。 そのほか, 岩体南部の湯ノ岳断層近くに コートランド岩と角閃石玢岩を伴う角閃石斑れい岩体 [ GbIr ] が迸入している。

第 95 図 入遠野岩体色指数分布図(瀬戸延男)。 ①~⑧ は化学分析に供した試料番号

岩石記載 : 主要岩相の平均モード組成を第 16 表に, 顕微鏡写真を第 96, 97 図に示す。

第 16 表 入遠野岩体の花崗岩質岩類のモード組成(大平, 1970)

石英 斜長石 カリ長石 黒雲母 角閃石 その他 色指数
周縁相 (4コ平均) 20.8 47.3 9.3 20.0 2.5 0.1 22.5
主岩相 (8コ平均) 23.4 45.3 15.8 12.6 2.8 0.1 15.4
中心相 (3コ平均) 32.8 38.3 20.9 7.1 0.7 0.2 7.8

第 96 図 角閃石黒雲母花崗閃緑岩(入遠野岩体, NS69-604)。
B : 黒雲母, H : 角閃石, P : 斜長石, Q : 石英, K : 微斜長石

第 97 図 黒雲母アダメロ岩(入遠野岩体, NS69-1014-2)。
M : 白雲母, B : 黒雲母, P : 斜長石, K : 微斜長石, Q : 石英

有色鉱物は黒雲母と緑色角閃石(2V (-) = 00~70°, c∧Z = 13~15°)で, 角閃石 / 黒雲母の比は, 好間川複合岩体に比べてやや少ない。 斜長石は, 主岩相では An 30~38 の中性長石で, 中心部のアダメロ岩では An 25 の灰曹長石となる。 周縁部の石英閃緑岩相では An 56 の曹灰長石で, 灰長石の中心核がある。 カリ長石は, 好間川岩体のものによく似て, quadrille 組織の明らかな微斜長石で, 光軸角が大きく, 2V (-) = 60~80°にわたる。

化学組成 : 斑れい岩から花崗閃緑岩まで8コの試料の化学分析値およびノルム組成を第 17 表に示す。

第 17 表 入遠野岩体の花崗岩質岩類の化学組成(採集・分析 : 瀬戸延男)

試料 No. 1 2 3 4 5 6 7 8
SiO2 58.78 56.06 58.97 66,42 67.08 67.57 69.05 69.68
TiO2 0.88 0.72 0.98 0.79 0.50 0.40 0.72 0.77
Al2O3 17.31 16.74 17.36 16.09 15.23 15.81 15.63 14.92
Fe2O3 2.14 2.08 1.63 1.24 1.26 1.51 0.87 0.90
FeO 6.38 5.84 5.18 2.88 2.72 2.46 2.01 2.18
MnO 0.21 0.17 0.10 - 0.08 - - 0.04
MgO 2.57 3.08 3.51 1.51 1.44 1.23 0.06 1.09
CaO 9.36 7.76 5.22 4.06 2.81 3.83 3.70 3.38
Na2O 3.60 3.50 3.24 2.70 4.01 3.10 3.55 2.46
K2O 1.76 2.19 1.78 2.25 3.30 2.82 3.53 3.72
H2O (+) 1.37 1.21 1.51 0.54 0.93 0.91 0.61 0.24
H2O (-) 0.62 0.52 0.35 0.20 0.43 0.18 0.30 0.36
P2O5 0.15 0.11 0.02 0.11 0.02 0.23 0.07 0.03
Total 100.13 99.98 99.85 99.79 99.81 99.70 100.10 99.77
Q 2.58 6.06 29.70 30.00 21.18 27.72 27.30 26.22
Or 10.56 12.79 10.56 13.34 19.46 16.68 20.57 21.68
Ab 30.39 29.34 13.10 23.06 34.06 26.20 24.10 29.34
D.I. 45.53 48.19 53.36 66.40 74.70 70.60 71.97 77.24
An 25.85 23.63 25.85 18.90 13.62 18.35 16.68 14.18
C - - 3.47 2.14 - 0.92 - -
wo 8.24 5.92 - - 0.12 - 0.35 1.16
en 6,40 7.70 8.80 3.80 3.60 3.10 0.20 2.70
fs 9.24 8.05 6.60 3.83 3.30 2.77 1.72 1.98
mt 3.02 3.02 2.32 1.86 1.86 1.86 1.39 1.39
il 0.91 0.91 1.98 0.46 0.91 0.76 0.92 1.52
ap 0.34 0.34 - 0.34 - 0.34 0.34 -
[ 第 17 表の試料の詳細 ]
1 : 斑れい岩(NS69-80706, 天王林道, 湯ノ岳断層から約 300 m)
2 : 斑れい岩(NS69-801001, 冷水 ひやみず [ 位置不明 ; 入遠野の東方 2 km ] の北東)
3 : 斑れい閃緑岩(NS69-80807, 折松 おりまつ 林道, 二つ石山の南西 750 m)
4 : 石英閃緑岩(NS69-80602, 官沢 かんざわ 林道,往生山の北)
5 : 花崗閃緑岩(NS69-80803, 折松林道, 二つ石山の南西 1200 m)
6 : 花崗閃緑岩(NS69-80604, 官沢林道, 鶴石山の南西 850 m)
7 : 花崗閃緑岩(NS69-80701, 天王 てんのう 林道上流 [ ← 入遠野から北東に延びる天王川沿い ? ] )
8 : 花崗閃緑岩(NS69-80702, 天王林道中流)

岩体の構造 : 比較的有色鉱物に富んだ周縁部では流理面構造が観察される。 その方向は岩体の輪郭に平行で, 外側に向かって 50~65°ぐらいの角度で傾斜して, ドーム状を呈する。 いっぽう, 比較的優白質の主岩相および中心相では, 有色鉱物の配列による面構造は認めがたいが, レンズ状またはシュリーレン状をなす暗色包有岩が北北西 - 南南東の方向を示し, 東または西に傾斜している。 その角度は, 岩体の両側から内側に向かって 65°- 60° - 85°と急になり, 最も急角度になったところが貫入の中心となる。 そこには岩体中で最も酸性なアダメロ岩相が分布する。

変成岩類との関係 : 大局的には変成岩の構造に整合的である。 北北西 - 南南東の貫入軸の方向は, この地域の褶曲軸に完全に平行である。 好間川複合岩体の場合と同じく, 接触部から 2~300 m ぐらいの幅で複変成帯をつくり, 黒雲母 - 斜長石 - 微斜長石 - 石英ホルンフェルス, カミングトン石 - 黒雲母 - 中性長石 - 石英ホルンフェルス, 点紋陽起石 - 黒雲母片岩, 変成輝緑岩などが発達し, 局部的に片麻状岩石をつくることもある。 接触面は一般に明瞭で, 急冷細粒相を伴ったり, 伴わなかったりする(第 98 図)。

第 98 図 入遠野岩体の接触部(往生山の北方 500 m, 官沢川沿いの小径)(大平, 1970)

II.6.8 芝山 しばやま 岩体 [ AdSh ]

図幅地域の中央北端の芝山(819 m)を中心として分布する塊状花崗岩質岩石で, 本地域の深成岩中で最も酸性なものに属する。 主要岩相は 等粒の黒雲母アダメロ岩(YO69111801, 石英 31.1 %, 灰曹長石 41.2 %, 微斜長石 20.2 %, 黒雲母 7.7 %, 第 99 図)または 黒雲母トロニエム岩(HM66072701, 石英 34.9 %, 灰曹長石~中性長石 52.1 %, 微斜長石 5.2 %,黒雲母 8.8 %)で, いずれも角閃石を含まないが, 周縁相には角閃石 - 黒雲母 - 石英閃緑岩(C. I. = 21.7)も発達する。 また岩体の北東部の周縁相には圧砕されたアダメロ岩が産出する。

第 99 図 芝山岩体の主要岩相を構成する黒雲母アダメロ岩(YO69111801), 芝山の山頂から 1 km 東麓。
B : 黒雲母, P : 斜長石, Q : 石英, K : 微斜長石

第 100 図 芝山花崗岩の接触部スケッチ, 水田 みつた [ 位置不明 ; 芝山の東方 1 km ? ] の南東, 馬場平に至る道路沿い(大平, 1970)

岩体と変成岩の接触関係は 水田 みつた [ 位置不明 ; 芝山の東方 1 km ? ] の南東 1 km の道路切割で観察され(第 100 図), 著しい急冷縁をもってホルンフェルス化した緑色片岩中に貫入している。 そこでは岩体の流理構造と母岩の片理とはほぼ整合的であるが, 全体の流理構造から考えられる岩体の大局的な構造は, 母岩の構造とは明らかに非調和的で, 岩体の外形にほぼ平行して外側に 80~90°で急斜したドーム構造を呈する。

II.7 小貫入岩体 [ Ap ] (アプライト・ペグマタイトなど)

[ II.7.1 ] アプライト・ペグマタイト

本図幅地域内では, 地質図に書き入れられるほど大きいアプライト・ペグマタイトの岩体は少ないが, 図幅西部の石川・鮫川・宮本などの複合岩体の周辺部には, 変成岩中に岩脈をなして散在している。 ペグマタイト脈は電気石 [ tourmaline ] を含むのが普通で, ジルコン [ zircon ; ZrSiO4 ] ・ゼノタイム [ xenotime ; YPO4 ] などを含むものも知られている(鮫川村 戸倉の北方 [ 位置不明 ; 戸倉の「東方」? ] )。

[ II.7.2 ] 変成岩中の小貫入岩体

非変成の酸性貫入岩が図幅地域内の東部に発達する。 分布範囲はたまたま変成石英斑岩 [ ← Qpm ? ] とほぼ一致し, 両者が同じ露頭内にみられる場合もある(第 101 図)。 この場合どちらも黒雲母石英斑岩であるが, 非変成のものは母岩の片理を切り, 急冷縁があり, かつ母岩に狭い範囲で接触変成を与えている。 変成石英斑岩にあるような片状構造は認められない。 しばしば黄鉄鉱の鉱染を有することもある。

第 101 図 変成石英斑岩と非変成石英斑岩の共存例, [ 往生山の西方 2.5 km の ] 入定 にゅうじょう の北東 2 km の沢山川の支沢沿い(大平, 1970)。
1 : 急冷縁と節理のある非変成黒雲母石英斑岩, 2 : 片状構造と線構造をもつ変成黒雲母石英斑岩, 3 : 泥質片岩, 4 : 緑色片岩

岩質は石英斑岩が多いが, 比較的大きい岩体では中心部が花崗斑岩質となる。 そのほか, 閃緑玢岩状の岩脈が [ 犬仏山の東方 2.5 km の ] 高房 たかぼう の北北東 1.5 km の林道切割りにみられるが, この種の岩脈は比較的まれである。

II.8 第三紀(?)貫入岩体 [ Po, An, Ba ]

変成岩地域には, 最終的な変成作用より明らかに後とみられる新鮮な貫入岩体が存在する。 その時代は判然としないが, おそらく第三紀のものと思われる。

[ II.8.1 ] 鎌倉岳 かまくらだけ の玢岩 [ Po ]

鎌倉岳(670 m)の頂上から北西斜面に分布する。 母岩はゾーンⅡの変成岩でも最も変成度の高い珪線石黒雲母片麻岩で, 接触部では第 102 図のように枝分れした岩床状貫入を示し, 全体としてはラコリス [ 餅盤 べいばん ] 状岩体をなすとおもわれる。 変成岩のゼノリスが多いのも特徴の一つである。 柱状節理とそれに直角な板状節理の発達がよく, 後者 [ = 板状節理 ] は岩体の延長方向および母岩の構造に平行して N 50~70°W で北西に 60~80°傾斜する。

第 102 図 鎌倉岳の玢岩と母岩との関係, 古殿町 荷市場 にいちば の南西(光川, 1967a)

岩石は輝石玢岩で, 普通輝石・紫蘇輝石・斜長石(An 60)および磁鉄鉱から成り, 斑状, 石基は完晶質粒状組織を示し, 少量の石英を含む(第 103 図)。

第 103 図 輝石玢岩, 鎌倉岳。
Pc : 普通輝石, Po : 紫蘇輝石, P : 斜長石

[ II.8.2 ] 矢野山の角閃石安山岩 [ An ]

竹貫の北西方の矢野山(608 m)とその周辺地域の変成岩中に分布する。 鎌倉岳の玢岩と違って, 角閃石の大晶を多量に含むのが特色である。 産状は, 地質図では矢野山を中心とするラコリス状岩体のように示したが, 露頭が悪く, 山頂付近には安山岩類とともに片麻岩や石灰岩の転石が分布している。 したがって, まとまった塊状の岩体というよりは, 岩脈または岩床の密集した状態であるかもしれないが, 詳細は不明である。 [ 矢野山の南南西方の ] 入山から [ 矢野山の北北東方 1.5 km の ] 入道山に至るルートで観察されるところでは, 母岩に整合的に貫入した岩床群をなしている。

この岩石の岩石学的性質については, 大森・竹内(1943)の詳しい記載がある。 それによれば, 普通角閃石・普通輝石・紫蘇輝石・磁鉄鉱・斜長石(An 63)から成る完晶質斑状岩で, 角閃石はオパサイト縁を有し, 累帯構造を示す。 長さは 5 mm 以内が普通であるが, ときに長さ 4 cm, 太さ 2 cm に達する大晶もみいだされる。 本岩中には変成岩のゼノリスはあまり多くないが, 角閃石斑れい岩を多数捕獲するのを特徴とする。 上記の大森・竹内はこれを本地域の各地(犬仏山, 三株山その他)に発達する角閃石斑れい岩と同源の岩石と考えている。

[ II.8.3 ] 雨降山 てんきちょう の玄武岩 [ Ba ]

おそらく新第三紀の火山活動に関連したとおもわれる玄武岩体が 変成岩地域内に点々と分布する。 大きなものは 雨降山 てんきちょう の北北西と [ 論田の西方 2.5 km の ] 名花 なばな 地域にある。

雨降山の北北西のものは, 緑色片岩中の剪断裂かに沿って貫入したとおもわれる岩脈で, 急冷縁があり, 母岩を捕獲し, また弱い接触変質(黒変)を与えている(第 104 図)。 岩石は かんらん石・普通輝石・亜灰長石の斑晶と 輝石および斜長石からなる間粒状石基から成る。 かんらん石は多量に含まれるが, 大部分は蛇紋石化した仮像をなし, 一部に変質を免れた残晶がみられる。 そのほか, この付近には若干の玄武岩質火山砕屑性岩脈もあるが, 産状はよくわからない。 変成岩地域にこのようなかんらん石玄武岩の活動があることは注目すべきで, おそらく, 阿武隈山地の北端部に分布する 霊山 りょうぜん 火山砕屑岩層中の玄武岩類(生出・大沼(1960); 八島・生出(1966)など)に対比されるものであろう。

第 104 図 変成岩中に貫入するかんらん石玄武岩脈, 雨降山の北北西 1 km の林道沿い切割(大平, 1970)。
1 : かんらん石玄武岩とその節理, 2 : 急冷縁, 3 : 角礫化した緑色片岩を含む微粒状かんらん石玄武岩, 4 : 緑色片岩, 5 : 珪質片岩の夾み, 6 : 黒変した接触変質部

II.9 第三系

II.9.1 概説

第三系は, 図幅地域の南東隅に小区域を占めて楔状に分布し, その北東縁は湯ノ岳断層によって限られている [ 以下の [注] 参照 ] 。 この区域は常磐炭田を形成する第三系堆積盆地の西縁部にあたり, 常磐炭田主要部では顕著に発達している古第三系( 石城 いわき 層群)を欠いて, 新第三紀 中新世の湯長谷層群が直接 御斎所変成岩類を不整合に覆う。 この第三系は, 湯ノ岳断層に接近して北西 - 南東方向の向斜軸を有する向斜構造を示すが, その大部分は南西翼に属し, 北東方向に平均約 8°で傾斜する。

[注]
図幅地域の第三系については, 徳永(1927)によって, はじめてその概要が5万分の1地質図として発表された。 その後, 須貝・松井・佐藤ほか(1957)は, この地域の第三系を含めて常磐炭田全域の5万分の1地質図を編集し, その地質について総括した。 この間, 1947 年には植田・菅原は1万分の1の精度でこの第三系を調査しているが, その結果は公表されていない。 今回の地質図および研究報告は植田・菅原の未公表資料に負うところが大きい。
この研究報告の作成にあたっては, 砕屑性堆積層についてはおもに佐藤が, また, 火山性堆積物についてはおもに一色が担当した。

第 105 図 新第三系模式断面図

常磐炭田の中央部においては, 中新統は, 第 105 図に示すように, それぞれ堆積輪廻を示す3つの層群, すなわち下部から湯長谷層群, 白土層群および高久層群に分けられる。 この図幅地域においても, これら3層群は堆積輪廻が不明瞭とはなるが認められ, 互に不整合関係を示す。

全層厚は最大約 570 m と推算される。

II.9.2 湯長谷 ゆながや 層群

図幅地域南東隅の 上遠野 かどおの から北西方の 官沢 かんざわ に至る道路ぞいおよびその西方に分布する。

図幅地域の湯長谷層群には, 常磐炭田の主要部では湯長谷層群の中部に発達する薄板状の泥岩相( 亀ノ尾 かめのお 層)がみられず, 砂岩相が著しく発達する。 また, この層群の層厚も, 常磐炭田主要部のそれに比べて一般に薄い。 これらのことから, 図幅地域の湯長谷層群は, 広く常磐炭田地域を覆った堆積盆地の縁辺部に堆積したものと推定される。 図幅地域内においても, この層群は 北西方に向かって泥質相が減じて砂質あるいは礫質相が優勢になると同時に 層厚が急激に減ずる(第 105 図)。

層厚は, 地域南東端の上達野付近では約 330 m に達するが, 第三系分布区域の北東端では約 50 m に減ずる。

この層群は, 岩相によって下部から五安層・水野谷層および平層に分けられる。

[ II.9.2.1 ] 五安 ごやす 層(Go)

非常に凹凸に富む御斎所変成岩類の侵食面を不整合に覆って不規則に分布する。 基底礫岩が発達することが多く, 五安層の下部は, 一般に砂礫質岩と泥質岩との不規則な互層からなり, 数 cm 以下の連続性に乏しい石炭ないし炭質頁岩の薄層を2・3枚挾む。 砂岩には著しく黒雲母質の部分がある。 また, 植物化石をしばしば含み, 川畑 部落の西方においては, 基底から約 2 m 上位に Ostrea sp.を多産する。

主要部は, 塊状の花崗質ないし石英質砂岩からなり, おもに中粒ないし粗粒であるが, 最上部は細粒となる。 ときに薄い泥岩層や炭質頁岩層を挾む。

層厚は基盤面の凹凸によって, 150 m 前後から 20 m 前後に変化するものと推定される。

[ II.9.2.2 ] 水野谷 みずのや 層(Ml, Mu)

下位の五安層の最上部の細粒砂岩から泥岩に移り変るところをもって水野谷層の下限とする。 したがって両者の間の地層界は不明瞭な場合が多い。 水野谷層は岩相のうえから下部層(Ml)と上部層(Mu)とに分けられる。

下部層 [ Ml ] は, 塊状の暗灰色ないし灰色泥岩からなり, ときに厚さ 1 m 以下の砂岩層を挾み, 炭質物片や硫化鉄鉱の小結核を含む。 一般に泥岩は風化すると黄褐色を呈し, 数 cm ないし数 10 cm 大に不規則に被砕され, 割れ目にそって黄褐色の独特の縁どりないし縞模様を示すことが多い。 層厚は最大約 50 m である。

上部層 [ Mu ] は, 砂岩と泥岩とからなり, 下部から, 細粒ないし中粒塊状砂岩層, 泥岩がちの泥岩・砂岩互層, ときに泥岩を挾む砂岩層, 2・3層の砂岩の薄層を挾む泥岩層の順に重なる。 砂岩の薄層にはきわめて黒雲母に富むものがある。 層厚はいずれも 10~15 m である。

水野谷層の砂岩・泥岩には 粘土鉱物・砕屑性鉱物粒のほかに 珪長質ガラス片(felsic glass shards)・珪藻および放散虫が含まれるのが特徴のようである。

水野谷層は上遠野付近では全層厚約 100 m であるが, 北西方に向かって上部の地層から順次尖滅し, 豆田 部落の北方で全層が尖滅する。

[ II.9.2.3 ] たいら 層(Tp, Tv)

平層は, 第三系分布区域の北西端の官沢部落付近にわずかに分布する 枕状熔岩 - ハイアロクラスタイト岩体(Tp)と, それを覆い主として区域の南東部に分布する水中火砕流堆積物(Tv)とからなる。 区域南東部に分布する平層は水野谷層を覆うが, 川畑 部落の北東方において, 北西方に向かって順次 水野谷層のより下部の岩相と接するようになる。 また, 官沢 部落付近では, 接触部は認められないが, 五安層を枕状熔岩 - ハイアロクラスタイトが覆い, さらにこれらを 水中火砕流堆積物の一岩相と思われる灰色無層理の凝灰岩が覆うように分布している。 このように, 平層は, 分布のうえからは下位の地層に対して不整合関係にあるようにみえるが, 平層の水中火砕流堆積物と水野谷層との接触部を露頭で観察したかぎり, 両者の間に不整合関係は認められない。 これは, 堆積盆地の縁辺部における砕屑性の堆積層と, 陸域から一時に供給され, 水中に堆積した火山砕屑物の基底面とが 斜交することによって生じたものと解される(第 105 図)。

枕状熔岩 - ハイアロクラスタイト [ Tp ] は官沢 部落の南端, 官沢橋の南北両側の道路ばたに露出している。 橋の南側では, 枕の長軸にほぼ垂直に切った断面が観察される。 枕は立体的にはやや扁平な楕円体であり, 短径数 10 cm, 橋の北側の露頭観察の結果も考慮に入れると, 長径は 1~1.5 m である。 枕の表面は 0.5 mm 以下の白褐色物質(ガラスが加水作用を受けて生じたもの)に覆われ, そのすぐ内側には厚さ約 1 cm の黒色ガラス殻があり, 中心に行くほど結晶度がよくなっている。 断面でみられる放射状の割れ目は枕の表面の亀甲状の割れ目に続いている。 一つの枕がほかの枕の間をみたすように突き出したり, また包むような形態をしている。 このような形態を示す側が枕状熔岩全体の下方を示すといわれる。 枕と枕との間は黒色ガラス片にみたされている。 橋の北側の露頭では, 枕の数が減少し, 黒色ガラス片の集合体が主体を占めるようになる。 これは水中に熔岩が流出したさいに急冷・破砕されたもので, ハイアロクラスタイトと呼びうるであろう。

鏡下で観察すると, 枕の黒色ガラス殻は主としてガラス(鏡下では淡褐色)からなり, その中に長さ 1 mm 以下の長柱状斜長石と長さ 0.2 mm 以下の粒状かんらん石が散在する。 孔隙は小型でかつ少数であり, 常に緑色粘土鉱物によってみたされている。 枕の中心部では バリオライト組織 [ 意味不明 ] が発達するようになる。 かんらん石粒が一部 緑色粘土鉱物に変わっていることがある。 ハイアロクラスタイトは 枕の黒色ガラス殻と同質の角ばった岩片とそれらを膠結する物質とからなる。 ガラスの部分は周囲から黄褐色粘土鉱物に変わっているが, 斜長石とかんらん石とはほぼ新鮮なまま残存している。 これらガラス片を膠結する物質は黄褐色でほとんど等方の ミネラロイド [ = 非結晶質鉱物 ? ] である。 これは, 加水作用の結果,ガラス片から溶脱して 生じたものと考えられる。 枕状熔岩 - ハイアロクラスタイトはわずかにノルム石英が算出される, ややナトリウムに富んだ玄武岩であることが, 化学分析の結果(未公表)から明らかにされている。

水中火砕流堆積物 [ Tv ] と枕状熔岩 - ハイアロクラスタイトとの層序上の関係は, 次に示すような関係から, 前者が上位である。 (1) 官沢 部落付近では, 直接の関係は観察されないが, 水中火砕流堆積物の一岩相と思われる無層理の凝灰岩が 枕状熔岩 - ハイアロクラスタイトを覆うように分布している。 (2) 図幅地域南東隅すぐ外側の上遠野中学校の体育館わきに露出する水中火砕流堆積物中には 枕状熔岩 - ハイアロクラスタイトから由来したと考えられる黒色ガラス質岩片が まれではあるが含まれる。

水中火砕流堆積物 [ 以下の [注] 参照 ] の標式的な露出地は 上記の上遠野中学校の校庭の切取りおよび さらにその東方約 0.5 km の上遠野川ぞいである。 上遠野中学校の体育館わきの切取りでは, 水野谷層の上部層の砂岩・泥岩層を覆って, 厚さ約 3 m の暗灰色ないし灰色, 無層理の凝灰角礫岩, さらにその上位に厚さ 7 m 以上, 暗灰色ないし黄白色で斜層理の発達した凝灰角礫岩 - 凝灰岩が露出している。 無層理凝灰角礫岩の基質は主として安山岩から由来したものであり, 数 10 cm の大きさに達する角礫ないし亜角礫も主として普通角閃石輝石安山岩で, そのほかに無斑晶玄武岩や下位の水野谷層から由来したと思われる泥岩がある。 小型でかつ水磨された普通角閃石片岩や黒雲母トロニエム岩の礫も含まれる。 この露頭では, そのほかに暗褐色の粘土岩(?)角礫が目につく。 上遠野川の右岸に露出するこの単層の上部では 含まれる礫が円礫となり, 地表風化を示す証拠なしにふたたび無層理凝灰角礫岩ではじまる単層に覆われる。 両者の境界面の直下には炭化木片が含まれる。 このような野外の事実から, 給源火山の位置は不明であるが, 陸上から水中に火山物質が乱流状態で流入堆積し, その後 その上部が流動する水の影響を受けて再堆積したものと考えられる。 このようなことが少なくとも2回繰り返えされた。 図幅地域内でも, 同様な堆積物がみられるが, 露頭が断片的であって岩相変化の状態を明らかにすることは困難である。

[注]
常磐炭田の中央部の平市街の北方約 4 km の石森山付近に顕著に発達する 「石森山凝灰角礫岩」(佐藤・松井(1951); 須貝・松井・佐藤ほか(1957))は 水野谷層上位の亀ノ尾層(図幅地域には分布していない)を整合に覆っているが, 図幅地域の水中火砕流堆積物と同層準のものと思われる(第 105 図)。

平層の層厚は最大約 80 m と推算される。

II.9.3 白土 しらど 層群

白土層群は湯長谷層群を不整合に覆い, 湯ノ岳断層の南西側に広く分布する。 [ 白土層群は ] 中山層のみの1層からなる(佐藤・松井, 1952)。

II.9.3.1 ] 中山 なかやま 層(Na)

中山層は全体として, 礫岩・砂岩・泥岩および珪長質軽石火山礫凝灰岩~凝灰岩の厚薄不規則な互層からなり, 一般に厚さ数 m の基底礫岩を有する。 概して下半部が砂礫質岩と軽石火山礫凝灰岩~凝灰岩とに富み, 上半部が泥質岩をより多く含む。

基底礫岩は, 安山岩礫が最も多く, 結晶片岩・花崗質岩・珪質岩等の基盤岩類および凝灰角礫岩の円礫からなり, 一般に北西方ほど厚く, かつ礫も大きくなる傾向を有する。 すなわち, 第三系分布区域の北西端部では, 砂岩を挾むが, 厚さが 50 m 以上となり, 礫は直径 1 m に達するようになる。

軽石火山礫凝灰岩~凝灰岩は, 中山層の基底から10~30 m 上位と, 上半部の下部とに連続性に富む顕著なものが挾在し, 前者が 10~20 m, 後者が 5~10 m の層厚を有する。 一般に白色ないし黄灰色を呈し, 層理が比較的明瞭な場合と不明瞭な場合がある。 [ 豆田の東南東方 1 km or 川畑の北西方 1.5 km の ] 台ノ坂の北方 0.4 km の道路わきに露出する下位のものは礫岩を覆い, 厚さは 3~4 m あるいはそれ以上である。 上位の地層との関係はここでみられない。 この露頭では, 下半は層理の比較的不明瞭な軽石火山礫凝灰岩, 上半は斜層理の発達したガラス質凝灰岩で, 両者の境界は明瞭である。 これらの事実から, 礫岩や砂岩が堆積している間に, 珪長質の軽石質物質が一時にその水域に流入・堆積し, その後, 細粒物質が動揺する水の影響下で堆積したとみることができよう。

上位の軽石凝灰岩~凝灰岩層の上位 10 m 以内に Vicarya sp. および Ostrea sp. を多産する 泥岩ないし泥質砂岩層が2層追跡することができる(YABE and UEDA, 1948)。

中山層全体を通じて, 砂礫質岩には斜層理が発達し, 炭質物や植物化石を含む。

層厚は最大約 200 m と推算される。

II.9.4 高久 たかく 層群

高久層群は第三系分布区域東部の向斜軸部に分布する。 図幅地域内においては, 高久層群と下位の白土層群との関係を明らかにすることはできなかった。 また, 図幅地域内の高久層群は, 狭い区域を占めて独立して分布しているため, 地域外の高久層群との関係を直接求めることも不可能である。 したがって, ここでは層序上の位置および岩質から推定して, 常磐炭田の主要部で白土層群を不整合に覆って発達する 高久層群最下部の上高久層に対比することとする [ 以下の [注] 参照 ]

[注]
植田・菅原(未公表資料)はこの地層を中山層の最上部層としている。

[ II.9.4.1 ] 上高久 かみたかく 層(Ka)

上高久層は, 青灰色 中粒ないし細粒の砂岩からなる。 この砂岩は一般にルースで, 直径 5~10 cm の安山岩の円礫を散点的に含んでいる。 折松 おりまつ 付近では斜層理を持つ砂岩中に礫が何層か列をなして点在する。 砂岩を構成する砂粒は 各種の安山岩・ 玄武岩・ 深成岩および変成岩(普通角閃石片岩・黒雲母片岩など)から由来したもので, 深成岩源のものが最も多く, 変成岩源のものは少ない。 礫はかんらん石輝石安山岩・角閃石輝石安山岩などの安山岩が多く, 無斑晶玄武岩礫もまれに存在する。 深成岩や変成岩礫は見当たらなかった。

全層厚は最大約 40 m である。

II.10 第四系

第四系は鮫川, 入遠野川, 好間川などの川沿いの低地に, 砂礫層, あるいは砂土層として堆積しており, 水田を形成する基地となっている。 しかし, 竹貫 部落, 入遠野 部落, 上遠野町付近をのぞいては, いずれも幅せまく, かつ うすいものである。

とくに洪積統が分布するという形跡は見られないで, すべて沖積層 [ a ] と考えられる。

これら河川の堆積物の他に芝山の東側, および犬仏山の北東の地形がゆるやかになった部分に, かなり広く火山灰 [ ← 地質図の凡例では「ローム層」(l) ] が堆積している。 厚さは場所によって異なるが, 厚いところで数 m ないし 10 m 程度までである。

乾燥した浮石質の黄白色~黄褐色の感じのもので, 肉眼的にも酸性の火山灰であることが明らかである。 その重鉱物を鏡下で調べると, 磁鉄鉱をのぞくと, 緑色角閃石がもっとも多く, つづいてやや淡色の角閃石, 褐色の角閃石が含まれている。 黒雲母も少量認められる。 紫蘇輝石はほんのわずかしか認められていない。 普通輝石, かんらん石はまったく認められない。

これらのことから考えると, 給源火山は酸性のもので, 那須火山あたりである可能性が強い。

III. 応用地質

III.1 層状含マンガン磁鉄鉱鉱床

御斎所変成岩中の鉄鉱床は, わが国ではわりあい珍しい層状変成鉱床として古くから注目され, 渡辺(1942, 1953), 原田(1957)などによる報文がある。 それらによると, 鉱床は御斎所変成岩の片状ないし塊状の角閃岩および珪質片岩または含鉄珪岩を母岩とし, それらに整合的なレンズ状ないし層状をなして胚胎する。 渡辺(前出)は母岩の一部に「流紋片岩」の存在を注意しているが, これは 「II.4 変成小貫入岩類」の項の「II.4.3 変成石英斑岩類」の項 で述べた変成石英斑岩であろう。 鉱層の規模は, 厚さが 1~2 m, 長さ 10~50 m 程度のものが多数 平行または雁行して鉱床帯をつくる。 そのため鉱量は比較的豊富である。 図幅地域にはこの種の鉱床帯がきわめて多く分布し, これまで知られているものに次のものがある。

小平鉱床群(楢坂・吉野草・山田山 鉱床) [ ← 芝山の西北西方 3 km ]
竹貫田 鉱床(悪原鉱床) [ ← 竹貫田の東方 1.5 km ]
鳥巣鉱床 [ ← 犬仏山の東方 1.5 km ]
大風鉱床 [ 位置不明 ]
長沢鉱床 [ 位置不明 ; 上市萱付近 ? ]
入遠野または福石鉱床群(清道・植木田・作・平口・綱木・小綱木・旗立山・白石形)

これらのうち, 小平鉱床群は芝山花崗岩のルーフペンダントをなすもの, 他は御斎所変成岩中のものである。

鉱石は堅硬 ち密な磁鉄鉱 [ 以下の [注] 参照 ] を主とし, 上鉱で Fe 品位 50~56 % におよぶが, 常に酸化マンガン鉱を含み(Mn 10 % 以下), 赤鉄鉱を伴うこともある。 そのほか, 脈石として石英・マンガンざくろ石・ばら輝石・菱マンガン鉱が知られている。

[注]
阿部・苣木(1956)によれば, この種の鉱床の磁鉄鉱には, 3.21~2.98 % の MnO を含んでいる。

上記の鉱床群のうち, 比較的便利のよい入遠野(または福石)鉱床は, 昭和 11 年から昭和 20 年まで, はじめ滝沢七郎により, 次いで川畑義雄によって開発稼行されたが, 戦後休山して現在に至っている。

III.2 層状マンガン鉱床

前記の層状含マンガン磁鉄鉱床と同じく, 御斎所変成岩の珪岩中に賦存する層状変成鉱床で, 図幅地域内では次のものが知られている。

新沢渡鉱山 (吉村(1953); 福島県(1964), 福島県鉱産誌, p. 128) : いわき市 三和町 葭平 よしだいら にあって, 昭和 13 年に小林寅雄が開発, 昭和 21 年まで稼行, Mn 40 % の鉱石 600 t を出鉱したが, 以後休山している。

鉱床は珪岩中の初生マンガン鉱床の露天化鉱床で, 母岩の構造と整合的な板状鉱体である。 主として採掘された不動1号・2号坑の鉱体は複雑な褶曲を示し, 彎曲の底部(褶曲軸部)では最大幅約 10 m の富鉱部を形成したが, しかし末端は分裂・細分し, 馬尾状となって尖滅した。 鉱石は, 地表の露頭で二酸化マンガン鉱で, 少量の赤鉄鉱・ばら輝石・マンガンざくろ石を伴っている。

そのほか, 鶴石山の北東 1.5 km, 海抜 500 m 付近の山腹に, 鶴石鉱山というのが上記の鉱産誌に記されている。

御斎所街道の洞門 [ ← 図幅地域南端の御斎所山の東方 500 m ] の対岸, 鮫川右岸の支沢にある 御斎所鉱山 は, 南部・岡田(1959)によると, 二酸化マンガン鉱のほかにブラウン鉱・ばら輝石を主とする鉱石が採掘された 本格的マンガン鉱床である。 鉱床は母岩の珪岩とほぼ整合的に2条あり, 走向は南北, 西に急傾斜し, 延長 130 m, 最大幅 2 m であるが膨縮が著しいという。 マンガン鉱物には, 上記の主要2鉱物のほかに, ハウスマン鉱・ヤコブス鉱・緑マンガン鉱・テフロ石などが認められている。 ただしこの鉱山は, 厳密には [ 本図幅の南に ] 隣接の川部図幅に入るらしい。 7万5千分の1「勿来」図幅説明書(渡辺・佐藤, 1937)に, 「福島県 石城郡 上遠野村 皿貝 西方1粁余, 鮫川南岸ニ近ク存ス」とあるのが, これであろう。

III.3 層状含銅硫化鉄鉱鉱床( 沢渡 さわたり 鉱山)

馬場平断層の東側の御斎所変成岩中に, 高房 たかぼう から 新田 しんでん にかけての入遠野川沿いに, 含銅硫化鉄鉱鉱床の露頭が走っている。 一時 日立鉱床に似ているということで注目された 沢渡鉱山 はこれを採掘したものである。

沿革 : 大正 6 年(1917 年)に開坑, 翌 7 年から日本鉱業 KK の経営に移ったが 1 年で休山, 昭和 17 年(1942 年)に再開して昭和 28 年まで稼行して以後休山。 所有も赤山鉱山 KK に移った。

出鉱 : 昭和 18~25 年

採掘粗鉱量 : 36,255 t
精鉱量 : 18,120 t
Cu 品位 : 2.93 %
Cu 量 : 531.532 t

地質鉱床 : 母岩は御斎所変成岩の緑色片岩を主とし, 一部に黒雲母片岩および石英片岩を挾む。 いずれも走向は南北で急傾斜し, 一部 石英斑岩脈に貫かれる。 鉱床は母岩の層理に沿い, 一部は断層に沿ってこれを横切り, 層状または脈状をなす。 鉱石は緻密な含銅硫化鉄鉱で, 黄鉄鉱のほか磁硫鉄鉱に富む。 良質部は Cu 2.5~3.0 % に達した。 鉱床の主なものは4号・5号・8号で, 厚さ 0.5~1.5 m, 延長 50~80 m, 深さ延長最大 50 m の規模のものであった(日本鉱業協会(1965), 日本の鉱床総覧(上巻), p. 353)。

なお本鉱山の母岩に菫青石を含むものがあるというが, 馬場平に露出する花崗質岩の影響によってできたものであろう。 前述の通り, 本地域の菫青石の産出はゾーンⅠではほとんどみられず, ゾーンⅡでもきわめて珍しいものである。

III.4 珪石および砕石(付. 庭石)

竹貫変成岩中の珪岩または石英片岩とペグマタイトまたはアプライトの石英質の部分が 珪石 資源の対象となり, 古殿町 仙石 [ ← 矢野山の西方 2 km ] , 入山 [ ← 矢野山の南西方 500 m ] などの各地で採掘された(岡田ほか, 1963)。 一般に珪岩および石英片岩は, 鉱量は大きいが不純物が多く, ペグマタイト質鉱床は品位は良好であるが, 鉱量はあまり期待されない。 また長石が混在する欠点がある。

不純物の多い珪質片岩は 砕石 に利用され, 鮫川村 赤坂中野その他で採掘されている。 そのほか, 矢野山の角閃石玢岩脈の一部にも石切場が開かれている。

いっぽう近年の 庭石 , または水石ブームにさいして, 色・つや・形・硬さにおいてすぐれた御斎所変成岩の緑色片岩および珪質片岩類は, ことのほか愛好者から珍重された。 そのため [ 三株山の北東方 3.5 km の ] 石住 いしずみ 以下 [ 図幅地域南西隅 or 図幅の南方地域外の ] 根岸までの鮫川河床に堆積していた大小の岩塊は, 業者の手によってほとんど運び出されてしまっている。

III.5 石灰石

古殿町 木戸脇, 照内付近の変成岩中に挾在する数枚の石灰岩(大理石)層は, あまり規模は大きくないが, 採掘され, 現地で石灰資源として利用されている。

III.6 ざくろ石

鮫川村 戸倉, 発智岡 [ ← 発地岡 はっちおか ? ] では石灰岩中のスカルン化した部分にざくろ石が濃集しており, それを研磨材として採鉱していたことがある。 石灰岩層自体が薄いものなので, ざくろ石の鉱体も小さく, 露天掘で小規模に行なっていた。 主として戦時中から戦後の初期にかけて稼行していたが, 現在はまったく休山している。

III.7 温泉および鉱泉

阿武隈山地の花崗岩地帯には, 泉温 25~38 ℃ 程度の低温泉(または微温泉)が少なくなく, 一定の構造方向に並んで分布する傾向がある。 本図幅地域内では, 鮫川村 広畑の南方 500 m の湯ノ田温泉が, 石川複合深成岩体と竹貫変成岩の接触部に沿って湧出している。 泉源は上ノ湯と下ノ湯の2カ所にあり, 源泉温度は上ノ湯(33 ℃)が若干高いが, 泉質はいずれも単純泉で変らない(第 18 表)。

第 18 表 湯ノ田温泉分析表(福島県厚生部(1960), 福島県の温泉, p.153 ; 分析機関 : 福島県衛生研究所)

湧出状況 源泉温度 湧出量 pH(現地) 泉質
下ノ湯 自然湧出 29.0~30.0 ℃ - 7.5 単純泉
上ノ湯 自然湧出 33.5 ℃ 21.6 l / m 8.3 単純泉
外観 臭味 反応 蒸発残留物(mg / kg) 比重(20 ℃)
下ノ湯 無色透明 異臭味なし 弱アルカリ性 112.8 1.0001
上ノ湯 無色透明 無味無臭 弱アルカリ性 134.4 1.0002
1 kg 中に含有する成分並に分量(mg)表
成分 下ノ湯 上ノ湯
カチオン K+ 1.5 1.7
Na+ 5.2 5.4
Ca++ 7.5 6.6
Mg++ 1.8 2.6
Fe++ 1.8 0.8
Al+++ 3.3 -
アニオン Cl- 7.5 8.6
SO4-- 17.5 17.4
HCO3- 38.4 17.2
非解離成分 HBO2 - -
H2SiO3 68.9 72.1
CO2 - -
H2S - -
総計 153.4 133.1

同様の温泉は, 湯ノ田から南南西の方向にほぼ一直線上に並んで, 谷川 やかわ (15~17 ℃), 塩ノ湯(27.5~29 ℃), 湯岐 ゆじまた (37~39 ℃)と分布し, さらにその延長上には茨城県 袋田温泉が位置する。 これらの温泉の熱源については問題があるが, 構造線に沿って花崗岩の下部に安山岩質のマグマが貫入しているという考え方もある (三本杉巳代治氏 私信)。

そのほか, 古殿町 入道, 古殿町 照内の西方にも自然湧出の鉱泉があり, 湯治に利用されている。

参考文献

阿部 宏・ 苣木 すがき 浅彦(1956):
阿武隈福石鉱床とくに含マンガン鉄鉱について. 地質雑,vol. 62,p. 378.
福島県(1864):
福島県鉱産誌. 296p.
福島県厚生部(1960):
福島県の温泉. 346p.
牛来正夫(1941):
中部阿武隈御在所 - 竹貫地方の片状花崗岩を貫く角閃岩岩脈に就て. 地質雑,vol. 48,p. 171 - 180.
GORAI, M.(1944):
Petrological study on the plutonic rocks of Gosaisyo-Takanuki district, southern Abukuma Plateau. Mem. Fac. Sci.,Kyūshū Imp. Univ.,Ser. D,vol. 2,p. 239 - 321.
牛来正夫(1954):
火成岩成因論(上). 128p.,地学双書 no. 8,民科地団研部会.
牛来正夫(1958):
阿武隈高原の変成作用と深成作用. 鈴木醇教授還暦記念論文集,p. 74 - 87.
原郁夫(1966):
阿武隈山地御斎所変成岩中の変成石英斑岩の quartz c-axis subfabric. 総研連絡誌「変成帯」,no. 2,p. 11 - 14.
原田久光(1957):
阿武隈山地の含満俺鉄鉱床について. 鉱山地質,vol. 7,p. 73.
今井功(1966):
明治時代における始原界論争 -- とくに原田・小藤両説を中心として --. 地学雑,vol. 75,p. 38 - 46.
岩生周一(1958):
領家帯. 鈴木醇教授還暦記念論文集,p. 101 - 122.
岩生周一・松井寛(1961):
5万分の1地質図幅「平・川前(付 井出)」および同説明書. 103p.,地質調査所.
KANISAWA, S.(1964):
Metamorphic rocks of the southwestern part of the Kitakami Mountainland,Japan. Sci. Rep. Tohoku Univ.,Ser. Ⅲ,vol. 9,p. 155 - 198.
KANISAWA,S.(1969):
Garnet-ampbibolite at Yokokawa in the Abukuma metamorphic belt,Japan. Contr. Mineral. Petrol.,vol. 20,p. 164 - 176.
KANO,H. and Y. KURODA(1968a):
On the occurrence of staurolite and kyanite from the Abukuma Plateau, Northeastern Japan. Proc. Jap. Acad.,vol. 44,p. 77 - 82.
加納博・黒田吉益(1968b):
阿武隈高原の変成作用 -- とくに紅柱石・藍晶石・珪線石の共存に関して. 総研連絡紙「変成帯」,no. 5,p. 12 - 16.
河野義礼・植田良夫(1965):
本部産火成岩の K-A dating (Ⅲ) -- 阿武隈山地の花崗岩類. 岩鉱,vol. 57,p. 177 - 187.
KOBAYASHI,T.(1941):
The Sakawa erogenic cycle and its bearing on the origin of the Japanese Islands. Jour. Fac. Sci.,Imp. Univ. Tokyo,Sec. 2,vol. 5,p. 1 - 578.
KOIKE,K.(1969):
Geomorphological development of the Abukuma Mountains and its surroundings, northeast Japan.Jap. Jour. Geol. Geogr.,vol. 40,p. 1 - 24.
KOTO,B.(1893):
The Archean formation of the Abukuma Plateau. Jour. Coll. Set.,Imp. Univ.,vol. 5,p. 197 - 291.
小藤文次郎(1896):
日本の始原界. 地質雑,vol. 3,p. 188 - 190.
KURODA,Y.(1959):
Petrological study on the metamorphic rocks of the Hitachi district, northeastern Japan. Sci. Rep. Tokyo Kyoiku Daigaku. Sec. C,vol. 7,p. 1 - 70.
黒田吉益(1963):
東北日本の深成変成岩類の相互関係. 地球科学,no. 67,p. 21 - 29.
黒田吉益(1970):
太平洋北西縁の藍閃石片岩変成作用. 鉱山地質,vol. 20,p. 43 - 51.
黒田吉益・加納博(1970):
天然における紅柱石 - 藍晶石 - 珪線石の平衝関係について, 鉱物雑,vol. 9,p. 497 - 506.
黒田吉益・小倉義雄(1960):
北部阿武隈山地における点紋片岩の発見とその意義. 岩鉱,vol. 44.p. 287 - 291.
KURODA,Y. and Y. OGURA(1963):
Epidote-amphibolite from the northeastern Abukuma Plateau. Sci. Rep. Tokyo Kyoiku Daigaku,Sec. C,vol. 8,p. 245 - 268.
KURODA,Y. and S. SHIMODA(1967):
Olivine with well-developed cleavages -- its geological and mineralogical meanings. Jour. Geol. Soc. Jap.,vol. 73,p. 377 - 388.
黒田吉益・田崎新市(1969):
変成帯の超塩基性岩. 地質学論集,no. 4,p. 99 - 108.
丸山孝彦(1966):
阿武隈高原鮫川~石川地方に分布する花崗岩類を主とした地質および構造(MS), 秋田大鉱山地質学教室卒論.
丸山孝彦(1970):
阿武隈高原鮫川~石川地方の地質と構造 -- 特に古期型花崗質岩類の構造に関連して, その1. 地質雑,vol. 76,p. 355 - 366.
丸山孝彦(1972):
阿武隈高原鮫川~石川地方の地質と構造 -- 特に古期型花崗質岩類の構造に関連して, その2, 地質雑,vol. 78,p. 117 - 127.
松久幸敬(1968):
長野県八方尾根地域の超塩基性岩体. 岩鉱,vol. 59,p. 195 - 205.
MINATO,M.,M. GORAI and M. HUNAHASHI (eds.)(1965):
The geologic developments of the Japanese Islands. 442 p.,Tsukiji-shokan.
光川寛(1967a):
中部阿武隈高原古殿地方の地質と構造 -- とくに宮本深成岩体とその周囲の変成岩類について(MS). 秋田大鉱山地質学教室卒論.
光川寛(1967b):
阿武隈高原古殿町浪滝の変成塩基性岩脈について. 総研連絡紙 「変成帯」,no. 4,p. 24 - 26.
都城秋穂(1949):
藍晶石・珪線石・紅柱石の安定関係と変成岩の生成条件. 地質雑,vol. 55,p. 218 - 223.
MIYASHIRO,A.(1953a):
Progressive metamorphism of the calcium-rich rocks of the Gosaisyo - Takanuki district,Abukuma Plateau,Japan. Jap. Jour. Geol. Geogr.,vol. 23,p. 81 - 107.
MIYASHIRO,A.(1953b):
Calcium-poor garnet in relation to metamorphism. Geoch. Cosmoch. Acta,vol. 4,p. 179 - 208.
MIYASHIRO,A.(1958):
Regional metamorphism of the Gosaisyo-Takanuki district in the central Abukuma Plateau. Jour. Fac. Sci.,Univ. Tokyo,Sec. 2,vol. 11,p. 219 - 272.
都城秋穂(1959):
阿武隈,領家および三波川変成帯. 地質雑,vol. 65,p. 624 - 637.
MIYASHIRO,A.(1961):
Evolution of metamorphic belts. Jour. Petrol. vol. 2,p. 277 - 311.
南部松夫・岡田広吉(1959):
福島県御斎所鉱山産マンガン鉱石の鉱物組成. 鉱山地質,vol.9,p. 28.
日本鉱業協会(1965):
日本の鉱床総覧(上巻). 581p.
岡田広吉・丹野晴夫・水戸研一(1963):
福島県古殿町付近のけい岩. 東北の工業用鉱物資源第 3 輯,p. 176 - 181.
小倉義雄(1956):
南部阿武隈山地竹貫地方にみられる角閃岩の花崗岩化作用. 地質雑,vol. 62,p. 609 - 621.
OGURA,Y.(1958):
On the granitization of some basic rocks of the Gosaisyo-Takanuki district, southern Abukuma Plateau,Japan. Jap. Jour. Geol. Geogr.,vol. 29,p. 171 - 198.
小倉義雄(1960):
南部阿武隈高原宮本複合岩体の深成岩類の岩石化学的性質. 地質雑,vol. 66,p. 341 - 351.
大平芳久(1970):
中部阿武隈高原沢渡地域の地質および構造(MS). 秋田大鉱山地質学教室卒論.
生出慶司・大沼晃助(1960):
東北地方を中心としたグリーンタフ時代の火成活動. 地球科学.nos. 50 - 51,p. 36 - 55.
大森啓一・竹内常彦(1943):
竹貫地方における玢岩質岩脈に就いて. 岩鉱.vol. 30,p. 91 - 106.
大野勝次・砥川隆二・渡辺岩井・柴田秀賢(1953):
北部阿武隈高原東南地域の地質. 東京文理大地鉱研究報告,no. 2,p. 79 - 89.
小貫義男(1966):
阿武隈山地八茎・高倉山地方の古生層の層位および構造. 松下進教授記念論文集,p. 41 - 52.
Research Group of Peridotite Intrusion(1967):
Ultrabasic rocks in Japan. Jour. Geol. Soc. Jap., vol. 73,p. 543 - 553.
佐藤茂・松井寛(1951):
福島県石城郡常磐炭田石森山地区炭田調査速報. 地質調月報,vol. 2,p. 339 - 347.
佐藤茂・松井寛(1952):
湯長谷層群と白土層群との関係. 地質雑,vol. 58,p. 562.
佐藤敏彦(1956):
北東部阿武隈山地に発見された上部デボン紀層(予報). 地質雑,vol. 62,p. 117.
SEKI,Y. and I. OGINO(I960):
Notes on rock-forming minerals (15). Pumpellyite in crystalline schists from the Yaguki district, Fukushima Prefecture,Japan. Jour. Geol. Soc. Jap.,vol. 66,p. 548 - 550.
SHIBATA,H. and S. OKADA(1955):
Chemical composition of Japanese granitic rocks in regard to petrographic provinces.Pt. Ⅱ. Sci. Rep. Tokyo Kyoiku Daigaku,Ser. C,vol. 4,p. 141 – 161.
SHIDO,F.(1958):
Plutonic and metamorphic rocks of the Nakoso and lritono districts in the central Abukuma Plateau. Jour. Fac. Sci.,Univ. Tokyo,Sec. 2,vol. 11,p. 131 - 217.
総研阿武隈グループ(1969):
阿武隈高原の複変成作用 -- とくに十字石と藍晶石の発見について. 地質学論集,no. 4,p. 83 - 97.
須貝貫二・松井寛・佐藤茂・喜多河庸二・佐々木実・宮下美智夫・河内英幸(1957):
常磐炭田地質図および同説明書. 143p.,日本炭田図 Ⅰ,地質調査所.
SUGI,K.(1935):
A preliminary study on the metamorphic rocks of southern Abukuma Plateau. Jap. Jour. Geol.Geogr.,vol. 12,p. 115 - 151.
徳永重康(1927):
常磐炭田地ノ地質, 早稲田大学理工学部紀要,no. 5,315p.
植田房雄・菅原省 :
常磐炭田上遠野地区調査報告. 地質調査所,1947 年調査,未公表.
上野直子・小嶋稔(1969):
日本列島変成帯の Rb-Sr,K-Ar 年代. 火山,第 2 集,vol. 14,p. 41.
梅村隼夫(1966):
阿武隈山地御斎所山付近の地質. 総研連絡紙 「変成帯」 no. 3,p. 16 - 19.
梅村隼夫(1970):
阿武隈高原中央部御斎所 - 竹貫変成岩類の構造, 高知大学学術研究報告,vol. 19,p. 119 - 147.
宇留野勝敏・宮城一女高地学クラブ重鉱物班(1966):
川砂から推定した阿武隈山地の含十字石岩の分布. 総研連絡誌 「変成帯」 no. 2,p. 16.
URUNO,K. and S. KANISAWA(1965):
Staurolite bearing rocks in the Abukuma metamorphic belt,Japan. Chikyu Kagaku (Earth Science),no. 81,p. 1 - 12.
渡辺岩井・牛来正夫・黒田吉益・大野勝次・砥川隆二(1955):
阿武隈高原の火成活動. 地球科学,no. 24,p. 1 - 11.
渡辺久吉・佐藤源郎(1937):
7万5千分の1地質図幅 「勿来」 および同説明書. 130p.,地質調査所.
渡辺万次郎(1942):
阿武隈山地の鉄礦床,特に入遠野礦床に就いて. 岩礦,vol. 27,p. 142 - 159.
渡辺万次郎(1953):
浜三郡の鋼鉄鉱床. 福島県地下資源資料,no. 10,35 p.,福島県総合開発調査局.
YABE,H. and F. UEDA(1948):
Vicarya-beds in the Zyôban coalfield. Proc.Jap.Acad.,vol. 24, no. 7,p. 14 - 19.
山下昇(1957):
中生代(上). 94p.,地学双書,no. 10,地団研.
八島隆一・生出慶司(1966):
東北表日本における中新世初期の火山作用と変質作用 -- グリーンタフ地域と非グリーンタフ地域の対立に関連して --. 地団研専報,no. 12,p. 103 - 111.
吉村豊文(1953):
福島県のマンガン鉱床, 福島県地下資源資料,no. 12,35p.,福島県総合開発調査局.

QUADRANGLE SERIES
SCALE 1 : 50,000

Niigata (7) No. 70

GEOLOGY OF THE
TAKANUKI
DISTRICT

By Hiroshi KANO, Yoshimasu KURODA, Katsutoshi URUNO, Terukazu NUREKI, Satoshi KANISAWA, Takahiko MARUYAMA, Hayao UMEMURA, Hiroshi MITSUKAWA, Nobuo SETO, Yoshihisa OHIRA, Shigeru SATO and Naoki ISSHIKI (Written in 1970)


Abstract

GEOLOGY

GENERAL REMARKS

The mapped area occupies the middle part of the central Abukuma Mountains which is known as a typical elevated peneplain in northeastern Japan. The greater parts of the area are composed of the so-called "Gozai-sho" [ see [note] below ] - Takanuki metamorphic rocks associated with various composite plutonic masses, such as Miyamoto, Same-gawa, Ishikawa, Yoshima-gawa, Iri-tono and so on. Beside the above-mentioned older complex, Tertiary formations are distributed on the hilly lands at the southeastern corner of the area. Brief explanations of these rocks are given below.

[note]
Some called "Gosai-sho" or "Gosai-syo".

[ Legend on the geological map ]

Quaternary Alluvial deposits a Sand, gravel and mud
Loam bed l Volcanic ash
Neogene
Tertiary・
Miocene
Takaku
Group
Kami-takaku
Formation
Ka Sandstone
Shirado
Group
Nakayama
Formation
Na Conglomerate, sandstone, mudstone and
water-laid pumice lapilli tuff~tuff
Yunagaya
Group
Taira
Formation
Tv Subaqueous volcaniclastic flow deposists
Tp Basalt pillow lava and hyaloclastite
Mizunoya
Formation
Upper
Member
Mu Sandstone and mudstone
Lower
Member
Ml Mudstone
Goyasu
Formation
Go Sandstone
Sandstone, mudstone and conglomerate (lower part)
Tertiary ? Intrusive body Ba Basalt
An Andesite
Po Porphyrite
Mesozoic Minor intrusive body Ap Aplite and pegmatite etc.
Granitic
plutonic
bodies
Shiba-yama mass AdSh Grey adamellite
Iri-tōno
composite mass
GIr Granodiorite with weak foliation
(including adamellitic part)
GbIr Gabbroic rocks
Yoshima-gawa
composite mass
AdY Massive adamellite
(Saiso body)
GY Granodiorite with weak foliation
(Nagato body)
Ronden mass TrR Trondhjemite
Minor granite body G Mainly granodiorite
Ishikawa
composite mass
QdI Quartz diorite with foliation
Jūmonji mass QdJ Quartz diorite with foliation
Miyamoto
composite mass
AdM Porphyritic adamellite with weak foliation
TrM Trondhjemite~granodiorite with weak foliation
DM Diorite~quartz diorite
GbM Gabbro (partly cortlandite)
mgM Migmatitic rocks
Same-gawa
composite mass
QdS Quartz diorite with foliation
(including parts of granodiorite and adamellite)
mgS Migmatitic rocks
Minor basic rocks Gb Gabbro (partly cortlandite)
Metamorphosed
minor intrusives
Qpm Metamorphosed quartz porphyritic rocks
Dm Metamorphosed diabase~gabbro
U Ultrabasic rock
Pre-
Mesozoic
Gozaisho
metamorphic rocks
bs Basic schist
lst Crystalline limestone
ms Siliceous, pasammitic and pelitic schists
Takanuki
metamorphic rocks
us Ultrabasic schist
am Amphibolite
ls Crystalline limestone
pg Pelitic gneiss
sg Siliceous and psammitic gneisses

THE GOZAISHO-TAKANUKI METAMORPHIC ROCKS

The metamorphic rocks constructing the basement of the Abukuma Mountains are generally divided into the Gozaisho series and the Takanuki series after KOTO (1893). Their distribution is wide in this mapped area. Especially the so-called Gozaisho Highway along the Same-gawa river is well known as the type locality of these metamorphic rocks. The Gozaisho metamorphic rock series occurs mainly in the eastern half of the area, consisting of abundant green schist and fine-grained amphibolite of basic rock origin with minor intercalations of fine-grained biotite schist, psammitic schist, and, quartz schist. These are considered to belong to green schist facies, epidote amphibolite facies and lower part of amphibolite facies. On the other hand, the Takanuki metamorphic rock series or simply Takanuki gneiss occurring in the western half of the area is chiefly composed of siliceous gneiss and banded biotite gneiss, occasionally associated with coarse-grained amphibolite and crystalline limestone. The metamorphic grade is higher than the Gozaisho series, corresponding to middle or higher part of amphibolite facies. It becomes highest in the vicinity of the Same-gawa composite plutonic mass, where sillimanite is common in pelitic gneiss and wollastonite is formed in calcareous rock. Occurrences of andalusite and cordierite are only few.

Notwithstanding the difference in original composition, the Gozaisho and Takanuki series are stratigraphically in conformable relation and the Takanuki series is overlain by the Gozaisho series without discontinuity. Structurally the Gozaisho metamorphic rocks are characterized with angular or chevron folds of which wavelength is 2 - 3 km, and the fold axes trend NNW to SSE, plunging to either north or south with a very low angle. In the Takanuki metamorphic rocks, contrariwise, open folds in which the limbs are inclined away from the axial plane are common. The lineations plunge to diverse directions.

On the genesis of the Gozaisho - Takanuki metamorphic rocks, it has been believed that they are the products of the late Mesozoic regional metamorphism of the typical andalusite-sillimanite type (MIYASHIRO, 1958, 1961). According to our cooperative study in these several years, however, the metamorphic history of this belt is not simple as previously assumed, but may be much complicated. The discovery of relic crystals of staurolite and kyanite from normal pelitic gneiss and schist (KANO and KURODA, 1968 ; Research Group of the Abukuma Plateau, 1969) has evidenced that an older metamorphism of Dalradian type essentially different from later super-imposing metamorphism of andalusite-sillimanite type may have occurred in this area. In this report a further evidence of poly-metamorphism is given from the microprobe study of pyralspite garnets.

To summarize briefly, the composition of garnet, especially Mn content never decreases regularly toward the higher grade as was previously considered (MIYASHIRO, 1953b). Spessartine-rich garnets exist even in the highest grade of the Takanuki gneiss around the Same-gawa plutonic mass, whereas almandine garnets poor in Mn are occasionally found from the lower grade of the Gozaisho metamorphic rock series. As for the zonal structure which is commonly found in every garnet grain, there are noted two distinct patterns of zoning : the normal type and the reverse type. The garnet of the normal type is zoned in such a way as the rim is poorer in Mn and richer in Fe than the core, while in the garnet of the reverse type increasing in Mn as well as decreasing in Mg is observed toward the rim. Significant is that garnets of the reverse type are distributed exclusively in zone Ⅱ as well as the contact zone of the Yoshima-gawa plutonic mass, whereas those of the normal type are chiefly found from zone I as shown in Fig. 20. Thus zone Ⅱ may be none other than the poly-metamorphic zone where the older Dalradian type metamorphic rocks were subjected to the later metamorphism of the andalusite-sillimanite type. The structural analysis of the metamorphic rocks, in broader sense, supports this conclusion.

PLUTONIC ROCKS

Plutonic masses mainly consisting of granitic rocks are classified into the older type and the younger type, according to petrographic and structural characteristics. Ronden, Yoshima-gawa, Iri-tōno and Shiba-yama masses belong to the younger type, and Same-gawa, Miyamoto, Jūmonji and Ishikawa masses are of the older type. Generally speaking, the younger type intrusives are massive in appearance and rich in adamellitic to granodioritic facies, while the older type intrusives are distinguished by strong foliation and lineation, and are composed of granodiorite and quartz diorite with subordinate amount of adamellite and diorite to gabbro.

The emplacement structures of these plutons have been investigated by means of granite tectonics. The Miyamoto mass intruding nearly along the boundary between the Gozaisho and the Takanuki series takes a northerly plunging spoon-like shape, in which adamellitic core lies asymmetrically near the northwestern margin. The Same-gawa mass associated with the surrounding migmatites and gneisses forms a well-defined dome structure. The zonal but somewhat eccentric arrangement of adamellite, granodiorite and quartz diorite from the center to the margin can also be observed in this pluton. The Ishikawa mass, though the greater parts are distributed in the neighbouring sheets, Suka-gawa and Tanagura, consists of at least two distinct basin structures, either of which has a granodioritic core and a quartz dioritic shell. Among the younger type plutons, both Yoshima-gawa and Iri-tōno masses show weak but obvious flow structures, and the intrusive forms are known to be dome structures.

Minor intrusive bodies of gabbro, cortlandite, and ultrabasic rock are developed around the above-mentioned major plutonic masses. Above all, metamorphosed dunites occurring in the zone from the east of the Ronden mass to the east of the Miyamoto mass are especially noted by the presence of cleavable olivines.

DYKE ROCKS

Dyke rocks ranging from quartz porphyry to diabasic rock are largely divided into the metamorphosed and the non-metamorphosed, according to presence or absence of metamorphic texture. Among them metamorphosed diabases or gabbros are prevailing in the western zone of the Baba-daira fault. On the other hand, numerous metamorphosed quartz porphyries predominate in the zone between the south of Negoya and the north of Nyujo. They are characterized by hornfelsic texture with distinct schistosity.

Probable Tertiary igneous bodies are intruded into the Takanuki gneisses at Kamakura-dake and Yano-yama of which the former is two-pyroxene porphyrite, the latter being hornblende andesite.

A small dyke of olivine basalt occurs cutting through green schist at the northern slope of Amefuri-yama. This may be correctable with the Miocene basalt of the Ryozen district of the northern Abukuma Mountains.

TERTIARY SYSTEM

Miocene formations unconformably overlying the Gozaisho metamorphic rocks are grouped into the Yunagaya, Shirado and Takaku Groups in ascending order and each of them is separated by an unconformity. The maximum thickness of the Miocene formations is about 570 m.

The lower and middle parts of the Yunagaya Group consist of clastic sediments, whereas the upper part of this group is composed of basalt pillow lava - hyaloclastite and subaqueous volcaniclastic flow deposits. The maximum thickness of this group is about 330 m. The Shirado Group being about 200 m thick in maximum is characterized by white or yellowish gray pumice lapilli tuff-tuff. The Takaku Group consists of loose sandstone with diagonal beddings.

From the lateral change in rock facies, these groups are thought to have been formed near the margin of the Miocene sedimentary basin covering the Jōban Coal Field.

QUATERNARY SYSTEM

Recent volcanic ash bed, so-called loam bed, develops locally at the eastern slope of Shiba-yama and the northeast of Inubotoke-yama. It is considered to have been derived from the Nasu volcano.

The river terrace deposits are distributed along the Iri-t¯ono river in the Kadōno district.

ECONOMIC GEOLOGY

MAGNETITE ORE

A number of bedded manganiferous magnetite deposits was worked at Kodaira, Takanukida, Torino-su, Ōkaze, Nagasawa, Tairakuchi, Uekida etc. Except Kodaira deposits which lie as roof-pendants on the Shiba-yama adamellite mass, the rest are enclosed in the Gozaisho metamorphic rocks. The deposits are of sedimentary origin and always occur as lenticular or bedded bodies intercalated with amphibolite, siliceous schist or ferruginous chert. The ore body is usually 1 - 2 m wide and 10 - 50 m long. The ore is chiefly made up of manganiferous magnetite associated with hematite, spessartine garnet, rhodonite, and rhodochrosite.

MANGANESE ORE

Two manganese mines are known in this area, Shin-Sawatari and Gozaisho, respectively. The Shin-Sawatari mine lies 1 km northeast of Yoshi-daira, having yielded 600 tons of 40 % Mn ore from 1938 to 1946. The deposit is of bedded type conformable with folded quartz schist. The maximum thickness amounts to 10 m. The ore is mainly composed of MnO2 minerals with a small amount of hematite, rhodonite, and spessartine garnet.

The Gozaisho mine is located in a small valley on the right bank of the Same-gawa river, near Do-mon. Unlike the former, the manganese ore consists of braunite and rhodonite in addition to Mn oxide ore.

COPPER ORE

A bedded cupriferous pyritic ore deposit was worked at the Sawatari mine east of Takabo. The deposit is embedded in green-schist, biotite schist and quartz schist, trending N - S. The ore consists essentially of cupriferous pyrite, often rich in pyrrhotite. The copper content reached about 2.5 - 3.0 % in maximum. The ore body is 50 - 80 m in length along the strike side and 50 m long to the dip side of ore shoot. Thickness is 0.5 - 1.5 m.

The mine was opened in 1917. After the long closure, it was reopened in 1943 and was finally closed in 1950. The total production of Cu ore went as far as 36,255 tons of which Cu content was 2.93 % in average.

SILICA

Though on a small scale, quartzites or quartz schists are quarried at several places, especially in the wesi of Takanuki. A quarry of impure quartz schist for road ballast is opened at the north of Akasaka - Nakano.

LIMESTONE

Limestone beds intercalated in the Takanuki gneisses are quarried near Kidowaki, west of Takanuki, though the production does not exceed the local demand.

HOT SPRING

A few low-temperature hot springs are present near or along the granitic plutons in the Takanuki district. Among them, Yu-no-ta hot spring reaches 29 - 33.5 ℃ in temperature, though the heat source is unknown.


昭和 48 年 1 月 20 日 印刷
昭和 48 年 1 月 25 日 発行
著作権所有 工業技術院 地質調査所

(C) 1973,Geological Survey of Japan