06050_1965

5萬分の1地質図幅説明書

焼石岳

(秋田 第 50 号)

東北大学 北村 のぶ

地質調査所

昭和 40 年


目次

I. 地形
II. 地質
II.1 概説
II.2 基盤岩類
II.3 大荒沢層
II.4 小出川層
II.5 西小沢層
東山流紋岩部層
II.6 前川層
小寒沢凝灰岩部層
II.7 下嵐江層
市野々原凝灰岩部層
II.8 貫入岩類
II.9 瑞山層
II.10 大平層
II.11 国見山安山岩
II.12 新期火山噴出物
II.13 扇状地および段丘堆積物
III. 応用地質
III.1 金属鉱床
III.2 亜炭
III.3 石油徴侯
文献

Abstract

1 : 50,000 地質図幅説明書(昭和 38 年稿)

焼石岳

(秋田 第 50 号)


焼石岳図幅は, 岩手・秋田県境部の奥羽脊梁山脈の核心部とその東縁部とにあたり, 焼石岳から須川岳(栗駒山)北麓にいたる範囲を占めている。

本地域はかつて Nauman 博士が, 奥羽脊梁山脈の横断踏査を行なったさいに, 通過したことのある地域であるが, その後はほとんど調査されていなかった。 昭和 25 年に谷正巳は, 東北大学 理学部 岩砿学教室 在学中に本地域の地質調査を行ない, その後の調査の基礎資料を作った。 北村は昭和 25 年 9 月に同地域の, 主として胆沢川沿岸の地質調査を行ない, その結果を報告した。 翌 26 年以降に引続き本地域の地質調査に従事し, 北村と谷とは連名で, 本図幅の大部分の地域の地質を取り纒めて発表したが, 地域東半部の地質については, なお, かなり不備の点が残されていた。 昭和 29 年に北村は東北大学地質学教室の小高民夫・早坂祥三らの応援を得て, 地域東半部の調査 検討を行ない, その結果を発表した。

このたび, 地質調査所の委嘱によって図幅として取り纒める機会をえたので, 従来の資料を基にして, 未調査地域および隣接地域との関係などを再吟味し, ここに総括した。

本図幅および説明書を作製するにあたり, 東北大学名誉教授 半沢正四郎博士をはじめとし, 畑井小虎教授・浅野清教授からは種々の御教示を賜わった。 また, グリーンタフ研究会の方々からもしばしば御討論をしていただいた。 谷正巳技官からは未公表の貴重な資料の提供をうけ, 小高民夫博士・早坂祥三博士・武藤章修士らには現地調査の労を煩わし, さらに, 幾多の御援助を賜わった。

本地域から産出した貝化石は畑井小虎教授・小高民夫博士・早坂祥三博士らの鑑定を仰ぎ, 有孔虫化石は高柳洋吉博士・斉藤常正博士らに鑑定を仰いだ。

I. 地形

本地域の西半部は岩手・秋田両県に跨がる奥羽脊梁山脈の一部を占めているので, かなり急峻な地形を呈している。 東半部は北上川の河谷の低地帯に移化する中間の山地であるが, 第三紀後期の火山岩類によって構成されているため, 複雑な小山頂をもつ起伏の著しい地帯となっている。

地域北端に位置する焼石岳は, 脊梁山脈中核の頂上に噴出した第四紀の火山であって, この地域における脊梁山脈の平均高度より 一際 ひときわ 高く突出し, 標高 1,548.1 m に達している。 本地域の南に接して聳えている栗駒山(須川岳)も標高 1,627.7 m に達し, 焼石岳と同様に第四紀の火山である。 脊梁山脈の実際の中核は, 上述の両火山を結んだ NNE - SSW の方向の線に一致するものである。 焼石岳南麓を囲繞する 胆沢 いさわ 川は強力で, 脊梁山脈の中核に対して先行谷的存在となって, その西翼部にまでも延びている。 したがって, 東西の分水嶺, すなわち,秋田・岩手県境は胆沢川上流で著しく西方に彎曲している。

脊梁山脈の平均高度は 1,100 m 前後であるが, この西方へ彎曲した部分では低下し, とくに胆沢川本流が分水嶺に接した地点ではかろうじて 900 m に達する程度である。

脊梁山脈の西斜面は, 西隣を南北方向に直線的に北流する成瀬川の水位が低いため, その支流によって深く刻まれ, 急峻となっている。 とくに, とち ケ森山・桑原岳・大 あざみ 山を連ねる稜線の西側に刻んだ桑の木沢・唐松沢・合の又沢および 木賊 とくさ 沢などは, ほとんど懸崖に近い斜面をもつ V 字型河谷を形成している。 一方, 北半部の分水嶺の西側斜面は比較的緩やかな傾斜を保ち, 一部においては硬質の黒色頁岩の層面斜面(dip slope)となっている。

脊梁山脈の東斜面は, 標高 1,000 m から 500 m までほゞ単調な勾配を保って低下している。 北半部は胆沢川およびその支流の 小出 おいで 川によって深く刻まれ, かなり急傾斜をもつ V 字谷が発達しているが, 南半部では, 稜線から離れるに従って谷幅の広い, 斜面勾配の比較的緩やかな河谷となっている。

地域南東部中央寄りに位置する 高検能 たかひの 山を中心とした山塊は, それぞれ山頂を別にする 10 数個の独立した山の集合であるが, これらを構成するものはほとんどすべて鮮新世の火山岩類である。 噴火の中心は高検能山付近と推定されるが, その後の鉱化作用・風化作用および侵蝕作用によって 火山の形態を復元することはほとんど不可能となっている。 現在 山頂として残っている部分は, 珪化作用やその他の鉱化作用によって, 著しく硬化した部分であったり, 岩脈または岩頸の中心となっていた部分である。 元来 集塊岩質~凝灰岩質の火山砕屑物を主とした脆弱であった部分や, その後の粘土化作用などによって著しく軟弱化した部分の, 差別的侵蝕作用がこのように複雑な地形を残すにいたったものと考えられる。

地域北東部の鍋割山から北方に延びる山地も, 高検能山と同様に鮮新世の火山岩類によって構成されているが, 第四紀に噴出した焼石岳・経塚山などの熔岩によっておおわれ, 第四紀火山の裾野を構成するかのような地形を呈している。

胆沢川は本地域最大の川で, その水源は本地域の一大分水嶺全域に及び, 分水嶺の延長は実に 20 km にわたっている。 北半部では脊梁山脈の一大背斜構造を横断して, その西翼部にまでも達しているので, 上流部は適従谷(subsequent stream)となって N - S に近い方向をとるものが多い。 胆沢川上流部およびその一支流の小出川上流部に発達する支流の多くは, この型式のものである。 胆沢川上流部でボートフックベンド(boathook bend)をなし, あたかも河谷の争奪のあった様子を示す部分がみられるが, 分水嶺を越して, かつて西側へ流れていたことを示すような風隙(wind gap) およびその河床堆積物の存在などは確認されていない。 ボートフックベンドをなす部分に次ぐ胆沢川上流部は, 明らかに, 傾斜の方向に反して流れているので逆従河流(obsequent stream)といえる。 これは, さらにその下流部で脊梁山脈中核部を横断している胆沢川そのものが, 先行河流(antecedent river)としての性格をもっていたことに由来するものと考えられる。 小出川の下流部も同様の発達を意味し, 急速な下刻作用のため両岸に高い懸崖を作っている。 南半部の地域を縦走する前川は, ほゞ脊梁山脈に平行して北上しているが, その西側の支流はほとんど必従河流(consequent stream)として, 脊梁山脈の東縁部に深く切り込んでいる。 前川の上流部は, 脊梁山脈の東斜面の傾斜に対して斜めに流れるもので 無従河流(insequent stream)の型をとるが, 中流部では NE - SW および N - S の2つの断層および褶曲軸の方向と一致して流れ, さらに下流部では, ふたゝび NE - SW 方向の断層方向をもって無従河流の型式をとっている。 胆沢川は 下嵐江 おろせ 付近で前川と合流し, 著しく河床勾配を減じ, 土砂の堆積を行なっているが, ふたゝび 尿前 しまえ [ ← 尿前 しとまえ ? ] - 馬留 うまどめ 間の狭窄部を横断して, 両岸に絶壁を作っている。 この狭窄部を構成しているものは, 上部中新世の石英安山岩質熔結凝灰岩で, 図版 1 にみられるようなみごとな柱状節理を示している。 馬留を経て 市野々 いちのの にいたる間では, この石英安山岩質熔結凝灰岩が次第に東方に向かって地表下に没するので, 胆沢川の両岸も低下し, 山腹の斜面も緩やかになってくる。 市野々以東に広大な面積を占めて発達している胆沢川扇状地の頂部が, 馬留 - 市野々間に存在していたことは, 上述の狭窄部の存在によって明らかである。 現在残されている胆沢川扇状地の堆積物の西限は, 市野々南方の標高 260 m 地点であるが, 扇状地形成当時にはさらに西方の馬留付近が頂部であったと考えられる。

図版 1 尿前付近の胆沢川沿岸に発達する石英安山岩質熔結凝灰岩の柱状節理

胆沢川扇状地と称されるものは, 南部のものほど高く, 北部に向かって漸次低下する3段の扇状地の複合したもので, 数次にわたって, 胆沢川の下流部が氾濫したことがうかがえる。 このさい 胆沢川の流路そのものも, 南から北へ次第に移行していったため, 古くに形成された扇状地堆横物の一部が一段高く残され, その北側に次の扇状地堆積物が発達し, さらにまた, 同様のことが繰り返されて, このように3段の複合扇状地堆積物が形成されたものと考えられる。 これら扇状地堆積物よりも若い河岸段丘堆積物は, 胆沢川沿岸にさらに低い段を作って発達している。

地域の南東部の高検能山, および国見山を中心とする山塊を放射状に解析している水系のうちで, 西側のものは前述の胆沢川の支流の前川に注ぎ, 北東側のものは北股川に, 南側のものは南股川に注いでいる。 北股川と南股川とは地域の東方で合流して衣川となり北上川に注いでいる。 北股川の上流部および南股川の上流部では, 鮮新統の安山岩を完全に侵蝕し去り, 中新統の下嵐江層・市野々原凝灰岩部層・前川層などにまでも刻み込んでいるが, とくに地形的な変化はみせていない。 一般に鮮新統の安山岩類に刻まれた谷は比較的急斜面をもつが, 下流部で鮮新統の大平層を刻んだ所では, 谷幅の緩い広い谷を作っている。

磐井 いわい 川は胆沢川同様に大きな川であるが, 本地域内では南部にその上流の一部がみられるにすぎない。 この川は, とくに地質構造に支配されることはなく, むしろ, その構造を横断して大荒沢層・ 小出川 おいでがわ 層などに深く刻み込んだ V 字谷を作っている。 その北方支流の鬼壁沢 [ ← 鬼越 おにかべ 沢 ? ] は, 著しく東方に屈曲して高手山北側に達しているが, とくに争奪によってできたとか, あるいは, 構造に支配されたとかの現象ではない。

胆沢川北岸では, 尿前川と焼石岳との間には顕著な地辷り地形が発達し, 数多くの堰止湖や凹陥地がみられる。 胆沢川沿岸に押出した岩屑が数 km にわたって発達しているのも, この斜面の地辷りによるものである。 焼石岳から獅子鼻岳に延びるほゞ N - S の嶺線の東側には 200 m にも達する高さの崖があって, その東側の地塊はほとんどが地辷り堆積物によって覆われている。 地辷り地帯は嶽山 [ ← 岳山 ? ] (970 m)を中心にして半径 2~5 km にも及ぶもので, これに注ぐ水系は現在でも堰き止められたり, 変更したりしている。 元来が第四紀に噴出した火山砕屑物によって覆われていたこの地帯は, 過剰の地下水によって泥流と化して流動を行なったのであるが, 第四紀火山砕屑物の基盤となっている第三系の地質構造にも, 大きく支配されているのである。 前川の流路を決定づけている N - S および NE - SW 方向の構造線は, 褶曲軸ばかりでなく断層線となって, 胆沢川を横断して, この地辷り地帯の下に潜在していることは容易に推定される。 現在の地辷り地帯内に, 点々と露出する第三系の地層を正しく復元することは, もとより不可能であるが, 周辺の地層の分布とは著しく不調和な形で分布している。 おそらく, 相当に複雑化した地質構造をもっていて, しかも断層の再活動が, 第四紀火山活動の衝激とともにしばしば起こって地辷りを惹き起こしたものと考えられる。

II. 地質

II.1 概説(第 1 図参照)

第 1 図 地質総括図

本地城は, 奥羽脊梁山脈の中核をなす一大背斜構造を含んでおり, その周辺にはいわゆる「グリーンタフ」が広く発達している。 地域の西半部には, 主として新第三紀初期の旺盛な火成活動に伴なった火山砕屑物と, それに引き続いて堆積した中新統が分布の大半を占め, 東半部は上部中新統の石英安山岩質の火山砕屑物と, 鮮新統の安山岩質火山砕屑物とが広く発達し, さらにその周辺部を取り囲んで鮮新統の浅海~瀕海~陸成の堆積物がわずかに発達している。

脊梁山脈の一大背斜構造の核心部には, おそらく二畳系と思われる古生層と, これを貫く花崗閃緑岩・蛇紋岩などが発達している。 地域の北部のとくに胆沢川沿岸には, 花崗閃緑岩類が広く発達するに反し, 南部の秋田県と岩手県との県境部には, 古生層の堆積岩類が主として発達している。 この核心部の古生層からはいまだ化石は発見されていないが, さらに南東部の磐井川沿岸では, 断層に沿って露出する基盤の石灰岩から Waagenophyllum がすでに発見されており, 二畳系であることが確認されている。

新第三系は下位から大荒沢層・ 小出川 おいでがわ 層・ 西小沢 にしこざわ 層・前川層・ 下嵐江 おろせ 層・ 瑞山 みずやま 層・ 大平 おおだいら 層および国見山安山岩に分けられる [ 以下の [注] 参照 ] 。 大荒沢層および小出川層は, いわゆるグリーンタフと呼ばれている緑色凝灰岩によって特徴づけられているもので, これらの上位の西小沢層・前川層および下嵐江層は, 砂質~シルト質の海成の細粒堆積物を主としている。 これらは第三紀中新世に形成された地向斜的堆積盆地の埋積物であって, 脊梁山脈の上昇に伴なって噴出した石英安山岩質の火山砕屑物は, 瑞山層として地域中央部に分布している。 地域の東半部は主として鮮新統の発達する地域で, 大平層の陸性~瀕海性の堆積物およびそれを覆う国見山安山岩からなっている。

[注]
火山岩類として顕著なものに, 小出川層と同時異相の東山流紋岩部層, 前川層中にはさまれる 小寒沢 こさむざわ 凝灰岩部層, 前川層上部から下嵐江層上部までと同時異相関係の 市野々原 いちののはら 凝灰岩部層, および石英斑岩・安山岩の貫入岩類がある。

第四系には, 胆沢川扇状地堆積物のほか, 各河川に沿って発達する河岸段丘堆積物がある。 焼石岳および栗駒山から噴出した火山岩類は, 火山砕屑物とともに火山を中心にして数 km にわたって分布している。 これら新期火山噴出物の時代を決定することは困難であるが, 胆沢川扇状地堆積物とほゞ同時代と考えられている。

新第三系下部の大荒沢層および小出川層は, 緑色凝灰岩によって特徴づけられ, 横黒線 [ ← 国鉄 北上線 ? ; 北隣の川尻図幅地域を東西に縦断 ] 沿線の大荒沢層・大石層に直接連続するもので, 岩質的にも, 堆積環境のうえでも, ほとんど共通し, 同時代のものと考えられている。 大石層の黒色シルト岩からは, Globigerinoides bisphericus が産出しており, 仙台付近の茂庭層と対比されている。 茂庭層は Lepdocyclina joponica によって特徴づけられ, 出羽丘陵の院内層からも同じ化石が産出することによって, 両者は同一時代と考えられている。 また, 小出川層および大石層のような海成層は, 脊梁山脈から東西にはなれるにしたがって, 「台島型 flora」を産する地層と指交関係にあることが, 方々でたしかめられているので, 大倉又層および台島層と同一時代であることが明らかにされている。

西小沢層 [ 以下の [注] 参照 ] は, 本図幅地域内では脊梁山脈の背斜構造の西翼を構成するもので, 暗灰色凝灰質シルト岩と緑色凝灰岩との互層からなっている。 北部では大荒沢層を直接整合に覆うにもかかわらず, 南西部では小出川層の上位に重なっている。 緑色凝灰岩の地域的膨縮を考慮に入れて考察してみると, 西小沢層と小出川層とは同層準のもので指交関係にあるものとなる。 また, 本図幅地域北西部から横黒線 [ ← 北上線 ? ] まで追跡した結果によると, 西小沢層上部は 小繋沢 こつなぎさわ 層にも相当することが判っている。

[注]
Lepidocyclina を産出した院内層は稲庭図幅地域に発達する西小沢層の下部に相当している。

前川層は黒色板状頁岩によって特徴づけられるもので, 最下部は西小沢層の上部と同層準で「西黒沢層」に相当する可能性もあるが, 大部分は秋田県の女川層に対比される。

下風江層は前川層を整合に覆い, 主として青灰色砂岩からなり, これに黒色シルト岩を挟有している。 黒色シルト岩には多くの有孔虫を産し, 上部の砂岩には貝化石を多く含み, 横黒線の黒沢層や, 秋田油田の船川層に対比されるものと考えられる。

瑞山層は下位層を不整合に覆い, 主として石英安山岩ないし石英安山岩質凝灰岩からなり, 脊梁山脈の造構運動を直接に反映したものである。 地質時代を指示する明確な資料はないが, 一応 中新世後期と考えられている。

大平層および国見山安山岩は鮮新世を代表するもので, 後者は安山岩噴出に由来する火山砕屑物を主体とするに反し, 前者は瀕海~浅海性の堆積物からなり, 貝化石を含有している。 とくに, 大平層と国見山安山岩との指交する部分には亜炭層を挟有し, それより東方に離れた地域では, 仙台付近の竜の口層に対比される化石を含有している。

胆沢川扇状地堆積物は拳大以上の礫を主とし, これに褐色の砂・粘土が混然と混り合った岩相からなり, 市野々の南西方を頂点として東方に扇状に拡がって発達している。

焼石岳および南隣図幅内の栗駒山を中心にして分布する新期火山噴出物は, 安山岩熔岩のほか, 各種の火山砕屑物を主とし, ひろくそれぞれの裾野に分布している。 とくに, 胆沢川の北岸の火山砕屑物は, その後の地盤運動に影響されて広範囲の地辷を起こし, 泥流となって胆沢川沿岸まで押し出している。

本地域の地質構造を大きく支配しているのは, 脊梁山脈の一大背斜構造とその東翼部に存在する構造帯である。 脊梁山脈一大背斜構造は, ほゞ NNE - SSW の走向を示し, その東翼部の構造帯の延長方向もこれと一致している。 これら両者が一体となって脊梁山脈を構成しているもので, さらに東方の地域は, 標高も低下し, より新期の堆積物によって覆われている。

脊梁山脈一大背斜構造は, 古生層およびこれを貫く花崗閃緑岩などの基盤岩類を核心とし, 大荒沢層・小出川層などの緑色凝灰岩類および それらと同時期の火山岩類によって構成されている。 背斜構造の両翼は 20°前後である。 背斜構造の軸部では比較的緩傾斜であるが, 火山岩質のものが多く, 小断裂を無数に伴なっている。 とくに, 基盤岩に近接した地域ではブロック状に寸断された所が多い。 背斜構造の西翼部は, 西小沢層およびそれを貫く東山流紋岩によって構成されているが, 20°前後の同斜状構造を作り, 地形的にも層面斜面(dip slope)を作って西方に傾斜している。 しかし, 本図幅の西隣の稲庭図幅地域に入るや, ただちに, 著しい構造帯となり, 褶曲・断層によって擾乱されている。 この関係は, 東翼部に存する構造帯と共通しているものと考えられる。

東翼部にみられる構造帯は, 脊梁山脈の背斜構造を構成している小出川層から, 整合的に移化する前川層にみられる褶曲構造にはじまり, さらに上位の下嵐江層をも加えた数条の背斜構造, および向斜構造によって特徴づけられるものである。 背斜構造は一般に東翼が急で, 向斜構造は西翼部が急である場合が多く, 軸面が西に傾斜した非対象的な構造と考えられる。 一般に褶曲軸の連続性に欠け, ドーム状およびベースン状構造に近似なものも少なくない。 また, 本構造帯には褶曲軸とほゞ平行した NNE - SSW 性の断層が多くみられ, 褶曲の軸部および翼部が, 圧砕を伴なった断層によって置き換えられているものと考えられる。 本構造帯のなかには, 明らかに NW - SE 性の延長方向をもった断層や, ほゞ N - S 性の断層もみられるが, NNE - SSW 性のものに較べて延長が短い。 NNE - SSW 性の断層を含む同方向の褶曲帯は, 幅 4~5 km にも達して, 本地域のほゞ中心部を縦断して, さらに北および南に接する図幅地域内に延びている。 この東翼部の断層帯の北方延長は, 夏油 げとう 温泉の東方を経て, 横黒線沿線の仙人断層に連続することがたしかめられている。 この断層帯に関連して 胆沢川北岸・拍山を中心とする地域に地辷り・崩壊地帯が発達していることは興味深い。 この地辷り地帯の冠部は, はるか西方の獅子鼻の東斜面にあるが, 断層帯直上ではもっとも著しく擾乱され, 現在でも絶えず小地辷り・崩壊を行なっている。

東翼部構造帯の東側地域は, 主として中新世後期の石英安山岩と, 鮮新世前期の安山岩との分布地帯となっているが, それら火山噴出物の下位には, 前川層や下嵐江層に相当する地層が著しく層相を変えて分布している。 小寒沢凝灰岩部層および市野々原凝灰岩部層などがそれに相当し, 前者は前川層中に, 後者は主として下嵐江屑中に胚胎するものであるが, ときにはこれら部層がその主体部を占めている。 市野々原凝灰岩部層は, 衣川の支流の南股川上流一帯に広範に発達し, 一つの大きいドーム状構造を形成し, その下部に前川層ならびに小寒沢凝灰岩部層をのぞかせている。

鮮新統のもつ構造はごく緩やかな波曲構造で, 特定の褶曲軸をもったものではない。 基盤岩類のもつ構造を, 確実に把握することは, はなはだ困難であるが, 小出川の下流部においては, 花崗岩類が著しく圧砕され, 一部にミロナイト様の構造を示し, さらに蛇紋岩の貫入岩体も認められる。 これらは明らかに基盤岩類中に断裂帯の存在を暗示するものと考えられる。 また, 胆沢川・小出川の合流点付近には, 角閃片岩などが存在し, 母体地方や阿武隈東縁の松ケ平層に類似したシルリヤ系, ないしデポン系の存在の可能性をも暗示している。 この地域の基盤岩類は, 母体地方の構造上の位置からかなり西方に位置していて, むしろ阿武隈東縁構造帯の北方延長に相当しているのではないかとさえ考えられ, 東北地方の基盤岩類の構造を探究するうえに重要な手懸りとなるものと思われる。 したがってこの地域の基盤岩類は, もっと広範な地域の基盤岩類と併せて研究する必要がある。

II.2 基盤岩類

本地域の基盤を構成するものは, 古生層とこれを貫く花崗閃緑岩が主体である。

古生層 は横嶽 [ ← 横岳 ? ] ・胆沢川沿岸・小出川沿岸・大沢上流の桑原岳北麓, 桑の木沢および唐松沢上流から上鉢山西麓にかけての一帯などのほか, 磐井川 [ の沿岸の ] 真湯 しんゆ の西方などに点在して発達している。 これら古生層は 主として黒色粘板岩・輝緑凝灰岩・黒色片岩・緑色片岩・石灰岩などからなり, ほゞ N - S ないし NNW - SSE の走向をもち, 東または西に高角度に傾斜している。 片岩類のもっともよく発達するのは胆沢川沿岸のもので, 古生層分布の最東部を占めている。 他の地域の古生層は黒色粘板岩が主体で, 輝緑凝灰岩や石灰岩を伴ない, すべて同一地質系統のものであるという確かな証拠はないが, 磐井川の沿岸の真湯の西方の石灰岩から Waagenophyllum cfr. indicum(WAAGEN and WENZEL)を産出し, 一部はたしかに二畳系であることを指示している。 胆沢川沿岸の黒色片岩および緑色片岩の顕微鏡鑑察結果は次の通りである。

黒色片岩
波状消光著しい大型の石英の間を埋める微細な 黒褐色黒雲母・石英・アルカリ長石・電気石・斜長石・燐灰石などからなり, 石英がその大部分を占め, 次いで黒雲母が多い。 黒雲母は緑泥石化し, 少量の灰曹長石および青緑色の電気石が散在している。 斜長石は集合体となって存在する。 そのほか燐灰石その他鉄鉱鉱物も散在するのが観察される。
緑色片岩 (石英絹雲母緑泥石片岩)
著しく破砕されている大型の石英の間は絹雲母・石英・緑泥石の集合体からなり, レンズ状の圧砕された石英を含む。 ところによって緑泥石の点紋が認められる。 石英脈によって貫かれている。

花崗岩類 は, 胆沢川の上流沿岸一帯および小出川沿岸一帯にもっとも広く発達しているほか, 秋田県側の桑の木沢の上流・唐松沢の上流の古生層を貫いて小範囲に分和している。 これらは, 花崗閃緑岩を主体としたもので, 黒雲母花崗緑岩・ 黒雲母アダメロ岩・ 含石英角閃石閃緑岩・ 変質黒雲母角閃石閃緑岩などからなっている。

図版 2 小出川下流部にみられる花崗閃緑岩の破砕部

図版 3 小出川下流部にみられる花崗閃緑岩の破砕部と蛇紋岩(黒い部分)

黒雲母花崗閃緑岩 : 胆沢川の上流および小出川沿岸一帯にもっとも広範囲に発達するもので, 部分的にかなり圧砕されたものとみられる。

主成分鉱物 : 斜長石・正長石・石英.黒雲母
副成分鉱物 : 磁鉄鉱
中粒~粗粒で, 斜長石は灰曹長石~中性長石を主とし, 劈開に沿って緑泥石脈・絹雲母が生じており, ときにカオリン化作用を蒙っている。 また, 部分的に曹長石化している所もみられる。 カリ長石は小片状をなして他の結晶の間を埋め, 主として正長石からなるが, ときにペルト長石・微斜長石も認められる。 石英は新鮮であるが波状消光を示す部分も認められる。 黒雲母は他の鉱物の間に彎曲し, 緑泥石に変わっているものが多い。

黒雲母アダメロ岩 : 小出川の中流部に発達し, 阿武隈山地の新期型のものに近似している(千藤忠昌教授による)。

主成分鉱物 : 斜長石・石英・正長石・黒雲母
副成分鉱物 : 磁鉄鉱
斜長石は灰曹長石を主とするが, カリをかなり含有し, カリ曹長石に属する。 カリ長石は正長石を主とし, ペルト長石構造を示すものも認められる。 黒雲母は褐色を呈し, 彎曲している。

含石英角閃石閃緑岩 : 胆沢川沿岸に小規模に露出し, 中粒ないし細粒で変質を蒙っている。

本岩は斜長石・黒雲母・角閃石を主とし, 少量の石英を伴なっている。 斜長石は灰曹長石を主とし, 多少変質して曹長石化している。 また, 一部は綿雲母・斜黝簾石化している。 黒雲母は大部分が緑泥石化し, 緑色角閃石も部分的に斜黝簾石・緑簾石・緑泥石化している。

変質黒雲母角閃石閃緑岩 : 胆沢川沿岸に小規模に露出するもので, 著しく片状構造の発達したものである。

本岩は斜長石・黒雲母・石英・角閃石を主としている。 斜長石は灰曹長石を主体としたものであるが, 著しく汚染されて絹雪母が生じ, 部分的に曹長石化されている。 黒雲母はほとんど緑泥石に変化し, 角閃石は緑色~褐色を呈し, 緑泥石化している。 角閃石の内部には鱗片状の集合体となった黒雲母が生じており, 一部には緑簾石に変化したものや炭酸塩化したものもみられる。

以上の深成岩類は, 胆沢川沿岸および小出川沿岸で著しく圧砕され, ところによっては角礫状になっている。 また, 小出川の下流部と胆沢川との合流点付近には, 変質角閃片岩 とそれを貫く 蛇紋岩 が認められている。 変質角閃片岩は 阿武隈山地の東緑に発達する松ケ平層(デボン系)の岩質と近似しており, 超塩基性岩体を伴なった阿武隈東縁構造帯の延長部が, この付近に賦存している可能性がある。

II.3 大荒沢層

本層名は, 岩手県和賀郡 横黒線 [ ← 北上線 ? ] 沿線に発達するものに対して, 井尻正二(1941) 5) が命名したのである。 本図幅地域内の新第三系最下部層は, はじめ胆沢川層(北村・谷, l953) 8) と命名し, 同層準で秋田県側のものは, 桑の木沢層(武藤, 1956) 15) と命名されていた。 その後 筆者は, 横黒線沿線から本図幅地域およびその西方地域をも一括して, 脊梁山脈全体の地質構造をとりまとめるにさいし(北村, 1959) 11) , 胆沢川層や桑の木沢層は岩相上からも, 層位上からも, 大荒沢層と一致するものであって, 地層名の繁雑, 混乱を避けるため, 大荒沢層として一括する方がよいと結論した。

模式地 : 岩手県和賀郡湯田村 大荒沢 和賀川沿岸一帯。

層厚 : 400~500 m

分布 : 胆沢川上流の焼石岳南麓一帯・ 尿前川上流の焼石岳東麓部一帯・ 下鉢山 - 上鉢山 - 大薊山周辺一帯などのほか, 磐井川 真湯の西方に分布し, 脊梁山脈―大背斜構造の核心をなしている。 本層分布地域は, 標高 800~1,200 m の山岳地帯を形成し, 起伏量大で, 河川は深く切り込んだ V 字形の谷となっている。

岩相 : 本層は主として緑紫色変朽安山岩熔岩・同質集塊岩・凝灰角礫岩からなり, 細粒凝灰岩を伴なう。

変朽安山岩熔岩 は本層の下半部に多く, 暗緑色~暗紫色を呈し, 自破砕熔岩・集塊岩と移化している。 胆沢川沿岸においては基盤の黒雲母片岩・緑色片岩・花崗閃緑岩類を直接覆っており, 基底礫岩は存在していない。 桑の木沢・唐松沢上流では, 変朽安山岩熔岩の下位に 300 m にも達する暗紫色の集塊岩を伴ない, その基底近くでは, 基盤の砂岩や花崗閃緑岩の拳大の礫を伴なっている。 変朽安山岩と自破砕熔岩との移化部はきわめて不明瞭で, 同一熔岩体内部でも自破砕化された部分が不規則に発達している。

普通輝石安山岩
斑晶 : 斜長石・普通輝石
斜長石は 1~3 mm 大で, 汚染され, 緑泥石~緑簾石化している。 また, 部分的に曹長石化している。 普通輝石も 1.5~4 mm 大のもの多く, ほとんどが緑泥石化している。
石基 : 斜長石・単斜輝石・磁鉄鉱
充間組織をなし, 部分的に微珪長質物質で埋められている。

凝灰角礫岩 は緑色を呈し, 変朽安山岩の火山礫を多量に含み, モザイク状を呈している。 基質部も同質の細礫および火山灰で構成されているが, 礫質部が 80 % を占め, 基質部は 20 % ないしそれ以下である。 一般に大きい礫ほど円味を帯び, 基質部の細礫のように小さい礫のほうが角張った礫となっている。 図版 4 に示したものでは拳大以上の礫は円味を帯び, あたかも礫岩の観を呈しているが, 細礫部および基質部では水磨された証拠がまったくない。 また, このような凝灰角礫岩は自破砕熔岩と密接な関係にある。 自破砕熔岩形成のさいに特異な条件で円礫化したものが, 次々に火口から噴出してくる火山砕屑流にとりこまれて, さらに円味を帯びたものであろう。 横黒線沿線の大荒沢層中には, この種の凝灰角礫岩が多く発達しているが, これとまったく同じ機構によって生じたものと考えられる(北村・武藤, 1962) 12)

図版 4 小出川に発達する大荒沢層の凝灰角礫岩。 拳大以上の礫は円味を帯びているが細礫のものほど角張っている。

大荒沢層からはまだ鑑定に耐える化石は発見されていないが, 武藤章(1956) 14) は桑の木沢に発達する緑色凝灰角礫岩から海棲二枚介化石の破片を採取しており, 海底火山の噴出によって供給された堆積物であることが明らかにされている。

II.4 小出川 おいでがわ

模式地 : 岩手県胆沢郡胆沢村 小出川沿岸一帯。

層厚 : 500 m

分布 : 岩手・秋田県境部の脊梁山脈背斜構造の核心部の東西両側に, 下位の大荒沢層を覆って分布している。 本層は東翼部では脊梁山脈とほゞ平行に南北に延び, 尿前川の上流・胆沢川の上流・小出川・磐井川の上流などに発達し, 西翼部では 胆沢川の上流・小出川の上流から 秋田県側の桑の木沢・唐松沢沿岸に広範に発達している。 本層分布地域はおもに 700~900 m の高さの比較的急峻な地形を形成している。

岩相 : 本層は緑色凝灰角礫岩・緑色砂質凝灰岩を主とし, 凝灰質砂岩・黒色砂質シルト岩・黒色硬質頁岩を挟有し, さらに斜長流紋岩・玄武岩質安山岩をも挟有している。

緑色凝灰角礫岩 は本層の主体をなすものであって, 下位の大荒沢層のものよりも酸性で, 石質ではない。 しかし, 本層下部のものは, 大荒沢層の安山岩質集塊岩や自破砕熔岩と水平的に漸移するところもあり, その間の区別は困難である。 本層中部から上部にかけてのものは, 流紋岩質で, しばしば軽石質となっているので, 大荒沢層のものとは容易に区別することができる。

緑色砂質凝灰岩 は, 凝灰角礫岩と水平的にも垂直的にも移化するもので, 一般に淡緑色を呈し, 斜交層理が発達している。 細粒の礫や軽石は淘汰され, 円味を帯びている。 また, 5~30 cm 単位の級化成層(graded bed)をなしているところもみられ, 一部には火山砕屑流として供給されたものもあるのではないかと考えられる。

凝灰質砂岩 は砂質凝灰岩のさらに淘汰の進んだもので, 多くは淡褐色~緑灰色を呈し, 10~50 cm 単位に成層している。 比較的 角礫質の火山礫を含むものもあるが, 石灰質に富んだ物質で膠結されている場合が多く, 二枚介・フジツポなどの破片を多数含んでいる。

黒色砂質シルト岩 は一般に凝灰質で, 本層中部に 1 m 以内の厚さで成層して, 緑色凝灰岩や凝灰質砂岩と互層して発達する。 塊状のものには緑色凝灰岩の細片が混入することが多く, 非常に不規則な境界をもって, 緑色凝灰岩および凝灰質砂岩に移化することも珍しくはない。 このなかには植物化石・巻貝・海胆・海綿・有孔虫・魚鱗などの化石が含まれている。

黒色硬質頁岩 は暗黒色~暗灰色を呈し, 5~10 cm 単位の板状層理がよく発達している。 本層中・上部では 凝灰質砂岩・黒色砂質シルト岩・緑色凝灰岩などとともに律動的な互層を作り, 横黒線沿線の大石層中部の層相と, よく似た累層となっている。 Makiyama, Cyclammina などの化石が散在することが多い。

流紋岩熔岩 は胆沢川沿岸および前川の西側支流に発達し, 集塊岩・軽石質凝灰岩を伴なっている。

流紋岩
斑晶 : 斜長石
斜長石は 0.5~2 mm 大で曹長石化されたものが多い。
石基 : 石英・長石・磁鉄鉱
脱ガラス作用をうけて微珪長質組織を示すものが多いが, 新鮮なものでは流理構造が明瞭である。

玄武岩質安山岩 は, 真湯の東方の磐井川沿岸に熔岩として胚胎し, 一部に集塊岩を伴なっている。

構成鉱物は斜長石・輝石からなり充填組織を呈し, 著しく変質している。 斜長石は曹長石化し, 輝石は緑泥石・炭酸塩鉱物および磁鉄鉱微晶によって置換されている。 また, 部分的に緑泥石・炭酸塩鉱物・珪長質鉱物などからなる杏仁状球顆を含んでいる。

以上のほか, 小岩体をなす 紫蘇輝石安山岩 普通輝石安山岩 などがみられるが, ともに変質を蒙っている。

層位関係 : 脊梁山脈の東縁の胆沢川沿岸・前川の西側支流においては, 下位の大荒沢層と漸移する関係がみられ, 上部になるにつれて変朽安山岩の火山礫を次第に減じ, 古生層由来の砂岩・粘板岩などの異質礫を増してきている。 さらに, 上部になるに従い, 流紋岩の礫を豊富に含む比較的酸性の凝灰角礫岩となり, ついに流紋岩熔岩を挾有するにいたっている。 したがって, 大荒沢層とは漸移的で, 人為的な境界しか引き得ない。

胆沢川上流では大荒沢層上部と小出川層との境界はまったく不明で, 明らかに大荒沢層とされる岩相のなかに流紋岩質凝灰岩が挟まれ, 両層が指交関係にあるのではないかと考えられる。 こゝでは後に述べる西小沢層の黒色シルト岩が直接接し, 多少 地層の擾乱はあるが, 断層による地層の欠如または不整合の存在は考えがたい。

桑の木沢・唐松沢においては, 整合漸移の関係にある。

磐井川沿岸においては, 本層最下部に珪化した木片の多数含まれた部分があって, これを境として下位の大荒沢層と岩相が変わっているが, 不整合の存在は認められない。

以上によって, 大荒沢層と本層との関係は整合漸移の関係であるが, 一部においては指交関係にあるものと解される。

化石 : 以下のような動物化石・植物化石が採取された。

1. 一ノ関市の磐井川上流の本層上部の凝灰質砂岩から
Neptunea koromogawana NOMURA
Cyclammina Japonica ASANO
Makiyama chitanii (MAKIYAMA)
2. 岩手県胆沢郡胆沢村の小出川沿岸の本層中部の黒灰色シルト岩から
Ficus tiliaefolia HEER
Acer sp.
Quercus sp.
Pterocarya sp.
Ulmus sp.
Vibrunum sp.
3. 岩手県胆沢郡胆沢村の尿前川沿岸の本層下部の石灰質砂岩から
Chlamys cf. akitana (YOKOYAMA)
Chlamys cf. arakawai (NOMURA)
Nanaochlamys notoensis (YOKOYAMA)
Patinopecten kimurai (YOKOYAMA)
Phaxus sp.
Bryozoa
Brachyopoda

II.5 西小沢 にしこざわ

本層名は武藤章(1956) 14) によって, 本図幅の西隣の稲庭図幅地域内に分布する地層に対して命名されたものであるが, その後の調査によって本図幅地域の西縁部に発達する地層も, 同岩質・同層準であることが確認されたので踏襲することにした。

模式地 : 秋田県雄勝郡東成瀬村 西小沢

層厚 : 500~700 m

分布 : 本層は脊梁山脈背斜構造の西縁に, 下位の小出川層を覆って発達し, 岩手・秋田県境部の 太森山(1,149 m)・柏峠(1,018.5 m)・東山(1,117.5 m)・五郎沢山(993.6 m) などの山頂部を構成するとともに, その西側斜面に沿って分布している。 太森山・柏峠などの西斜面では多少 波状に褶曲してはいるが, 県境の稜線以西では地形の傾斜と地層の傾斜が一致し, いわゆる層面斜面(dip slope)を形成している。

岩相 : 本層は灰白色~暗灰色凝灰質シルト岩を主とし, 軽石質凝灰岩および黒色頁岩を挟有している。 本層は小出川層中部のシルト岩卓越部の岩相に似ているが, 凝灰岩類の夾みが少ない。 板状の黒色頁岩の発達した部分は前川層に類似しているが, それよりは凝灰質物質に富んでいる。

灰白色~暗灰色凝灰質シルト岩 は胆沢川の最上流から県境部にかけてもっともよく発達し, 最下位に玄武岩質の凝灰角礫岩を伴ない, 大荒沢層を直接覆って発達する。 シルト岩は一般に層理がよく発達し, 黒色頁岩と互層をなすが, 小出川層にみられるような緑色凝灰岩の夾みはごくまれである。 部分的にかなり石灰質となり, Makiyama を多数含んでいて, 横黒線沿線の小繋沢層と, きわめて類似した岩相を呈している。

層位関係 : 本層と小出川層との関係を知るためには, 本層の模式地の岩相変化についての知識が必要である。 模式地は本図幅地域の西端から約 4 km 西方にあって, そこでは 暗灰色凝灰質シルト岩と緑色凝灰角礫岩・凝灰質砂岩のほゞ等量の互層となっている。 しかも, 部分的に流紋岩質凝灰角礫岩が著しく発達し, 小出川層の岩相と非常に類似しているのである。 このように緑色の酸性凝灰角礫岩の膨縮は, 流紋岩の噴出源の距離に密接な関係があって, 地層追跡のさいには. しばしばとまどうことがあるので, むしろシルト岩質の部分の特徴を基準にして, 西小沢層を追跡した結果, 上述のような分布をとることが明らかになったのである。

胆沢川の上流部においては, 大荒沢層の上位に玄武岩や, 玄武岩質凝灰角礫岩を伴なった部分がわずか 4~5 m 挟在して, 直接 西小沢層の暗灰色シルト岩が重なっている。 この間には不整合の存在も認められず, 断層による地層の欠如も考えられない。 同様の関係は, さらに胆沢川の上流を遡って, 流路が北東に転ずる付近でも認められる。

小出川の上流においては, 小出川層の緑色凝灰角礫岩の上位に, あたかも基底礫岩と思われるような火山礫凝灰岩が円礫を伴なって発達し, 局部的不整合で西小沢層が重なっている。 この関係はさらに南西方向には追跡できず, 東山南方の荒倉沢や, 桑の木沢の下流部では整合的に重なっている。

前にも述べたように, 西小沢層の緑色流紋岩質凝灰角礫岩は地域的に膨縮著しいこと, 小出川層中部の凝灰質シルト岩および黒色頁岩卓越部は, 胆沢川上流の西小沢層ときわめて類似した岩相をもっていること, および胆沢川上流では西小沢層が直接大荒沢層に整合的に重なることなどを考えると, 西小沢層は小出川層とほゞ同層準であると考えて差支えない。 このさい、 大荒沢層と小出川層との関係も加えて考えると, 3者の間には第 2 図のような関係が成立するものと考えられる。 桑の木沢や小出川の上流では明らかに上下の関係や一部不整合的な現象もあるが, 両層指交部の側方移動を物語るものと考えられる。

第 2 図 大荒沢・西小沢・小出川の3層の間の層序関係の標式図

化石 : 本層のシルト岩から武藤章(1956) 14) は, 秋田県雄勝郡皆瀬村 落合北方の沖の沢において 次のような有孔虫・二枚介その他の化石を採取している。

Bulimina pupoides d'ORBIGNY
Cassidulina sp.
Cibicides altamiraensis KLEINPELL
Cyclammina cancellata BRADY
Cyclammina japonica ASANO
Cyclammina arbicularis BRADY
Cyclammina pusilla BRADY
Dentalina sp.
Dyocibicides sp.
Globigerina sp.
Haplophragmoides cf. trullisatum (BRADY)
Haplophragmoides sp.
Martinottiella communis (D'ORBIGNY)
Nonion nicobarense CUSHMAN
Nonion pompilioides (FICHTEL & MOLL)
Planulina nipponica ASANO
Trochammina sp.
Chlamys sp.
Conchocele sp.
Lucinoma acutilineata CONRAD
Ostrea sp.
Trophonohsis sp.
Terebratulina sp.

東山流紋岩部層

本部層は一つの独立した岩体としての分布範囲をもつものではあるが, 西小沢層の緑色凝灰角礫岩と密接な関係にあって, 層位的にも西小沢層中の一部層として取り扱った方が, 都合がよいので部層単位で取り扱った。

模式地 : 秋田県雄勝郡東成瀬村 東山の西麓一帯

分布 : 秋田・岩手県境部にある東山(117.3 m)を中心に南北約 9 km にわたって分布する。

岩相 : 本部層は流紋岩・同質集塊岩・同質火山礫凝灰岩の複合体からなるもので, 流紋岩は熔岩・岩脈などとして存在し, 集塊岩や凝灰岩との境界はきわめて不明瞭である。 本岩体は全般的に熱水溶液による鉱化作用をうけ, 黄鉄鉱・黄銅鉱によって鉱染されているほか, 珪化作用・綿雲母化作用などをうけている部分も多い。

流紋岩
斑晶 : 斜長石・石英
一般に斑晶に乏しく, 1~3 mm 程度の短冊状の斜長石のほか, ごくまれに石英の小斑晶が認められるにすぎない。
石基 : 斜長石・石英
徴珪長質組織を示し, わずかに流理構造を残している。 また, 球顆状構造を示す部分も認められる。

II.6 前川層

模式地 : 岩手県胆沢郡胆沢村 前川沿岸一帯

層厚 : 400~450 m

分布 : 本層は脊梁山脈の東縁部の標高 600 m 前後の山地を構成して, 尿前川の中流から下嵐江部落の西方を経て, 前川沿岸一帯に帯状に分布している。 また, 図幅地域南部では磐井川沿岸の 祭畤平 まつるべ 付近一帯, および鬼壁沢沿岸に分布するほか, 高検能山の南東麓の北股川沿岸にも断片的な露出をみせている。

岩相 : 本層は黒色~暗灰色砂質シルト岩・黒色板状頁岩・青灰色細粒砂岩などを主とし, 淡緑色凝灰岩および凝灰質砂岩を挟有している。 本層最下部には暗灰色~暗緑色凝灰質砂岩や, 貝殻破片を多量に含む石灰質砂岩を 2~3 枚挟んでいる。 また, 本層中部には淡青緑色凝灰岩の発達した部分があって, 胆沢川南岸から 小胡桃 こぐるみ 山の西方を取り囲み, 大寒沢 おおさむざわ 小寒沢 こさむざわ 上流で特異な存在となっているので, これを 小寒沢凝灰岩部層 として区別した。

黒色~暗灰色砂質シルト岩 は本層の主要構成岩相の一つで, 10~50 cm 単位に成層し, しばしば淡緑色凝灰岩の薄層や, 凝灰質砂岩の薄層を挟有している。 一般に凝灰質であって軽石の微粒を散点させることもある。 本岩は前川層中下部に比較的多く, とくに, 小寒沢凝灰岩部層に近接した部分と, 地域南東部によく発達している。

黒色板状頁岩 は本層上部によく発達し, とくに前川沿岸一帯では 10 cm 前後の単位で成層して, 秋田県油田地方の女川層ときわめて類似の岩相を示している。 新鮮な部分では暗褐色~黒褐色で油臭を発し腐泥質である。 本岩は前記のシルト岩と互層をなすことが多く, 本層下部では凝灰岩をも伴なって 1~3 m 単位の互層をなしている。 本岩の発達は前川沿岸以北に多く, 磐井川沿岸ではシルト岩に置き換えられている。 シルト岩と本岩とは本質的な差異はあまりないようであるが, 両者の発達地域がある程度区別される傾向がある。 これはおそらく堆積環境の差異および変遷を意味するものと考えられる。

層位関係 : 胆沢川沿岸では, 下位の小出川層の緑色凝灰岩を整合に覆って 暗灰色砂質シルト岩・黒色板状頁岩・緑灰色細粒凝灰岩の互層が発達し, そのなかに 5 cm くらいの厚さをもった石灰質砂岩が挟まれ, この互層部が前川層の下部を代表するものであることがわかる。 本層中部は板状の黒色頁岩が厚く発達し, 小寒沢凝灰岩部層の浄化した部分が, 舌状(tongue)をなしてそのなかに 1~2 m の厚さで 2~3 枚にわかれて挟在している。 本層上部はふたたび黒色板状頁岩の累層となるが, 多少シルト質となって成層の単位も厚くなっている。

前川支流の小寒沢・大沢・大寒沢においては, 一つの向斜構造を作り, その西翼で下位の小出川層との関係がみられる。 これらの地域では, 小出川層上部の緑色凝灰角礫岩から漸移する 細粒緑色凝灰岩・暗灰色砂質シルト岩・黒色頁岩の互層部には, 貝殻破片を多数含む石灰質砂岩薄層(5~10 cm)が 2~3 枚挟在していて, 胆沢川沿岸の本層下部と共通している。 しかし, 中部では小寒沢凝灰岩部層を代表する淡青緑色凝灰岩, および同質細粒砂岩が厚く発達し, 上部になってはじめて黒色板状頁岩の厚い累層となっている。

磐井川沿岸における本層下部では, 黒色頁岩の発達は不良で, 青灰色砂質シルト岩・同色細粒砂岩が, ともに凝灰質を帯びて板状に互層して小出川層から漸移している。 本層の下部を特徴づけている石灰質砂岩薄層の夾みは存在しない。 中部の小寒沢凝灰岩部層の挟在も判然としないが, これに相当する層準が凝灰質になっている傾向は認められる。 しかし, 鳴沢温泉から鬼壁沢沿岸では, 明らかに小寒沢凝灰岩部層の存在は認められた。

以上の各地域の層位関係を総括してみると, 本層は明らかに下位の小出川層と整合漸移の関係にあり, しかもかなり広範囲にわたって同じような環境の変遷があったことがわかる。

化石 : 本層の細粒砕屑物中には化石はきわめて少ないが, Makiyama chitanii (MAKIYAMA) および Cyclammina japonica (ASANO) はほとんど普遍的に産出している。 前川の支流の大寒沢・大沢・小白沢などに発達する 本層下部の凝灰質~石灰質砂岩薄層からは, 次のような化石が発見された。

Calytogena nipponica OINOMIKADO and KANEHARA
Calyptogena sp.
Cerastoderma cf.shinjiense YOKOYAMA
Chlamys crassivenius YOKOYAMA
Chlamys kagamianus YOKOYAMA
Chlamys sp.
Deleclopecten sp.
Lucinoma cf. acutrlineata CONRAD
Patinopecten kimurai ugoensis HATAI and NISHIYAMA

また, 本層の最上部の黒色板状頁岩中から浮遊性有孔虫 Globoquadrina altispira altispila (CUSHMAN and JARVIS) が発見された。

小寒沢 こさむざわ 凝灰岩部層

模式地 : 岩手県胆沢郡胆沢村 小寒沢沿岸一帯

層厚 : 250 m

分布 : 本部層は, 胆沢川の南岸から小胡桃山の南西部を取り巻いて, 大寒沢・大沢などの上流部に帯状に分布するほか, 前川の中流および小寒沢の中流部における背斜部にも分布している。 図幅南部地域では, 磐井川の上流の鳴沢温泉付近から鬼壁沢沿岸にかけても, 背斜構造中心部に比較的広く発達している。 高検能山の南東麓の北股川沿岸では, 上位の下嵐江層中の市野々原凝灰岩部層に取り囲まれて, 内座層 [ ← inlier ? ] として断片的に露出している。

岩相 : 本部層は, 淡青緑色凝灰岩・同質凝灰質細粒砂岩からなり, 一般に塊状無層理であるが, ときに層理を示すこともある。 とくに, 本部層の末端部が薄くなって前川層の黒色板状頁岩中に挟在したり, それらと互層する場合には層理を示すものが多い。 凝灰岩は安山岩質であるが. 比較的酸性で, 淡青緑色を呈し, 小出川層の緑色凝灰岩ほど変質は蒙っていない。 礫状に入っている軽石が, わずかに緑泥石化している程度で, 基質部のガラスは比較的新鮮である。

層位関係 : すでに前川層の項で述べた通り, 前川層の中部に介在するもので側方に舌状に指交し, その分布範囲は前川層の分布範囲内に限られている。 前川層以外の地層と接するのは高検能山の南東麓の北股川沿岸のみであるが, こゝでは上位の市野々原凝灰岩部層, および国見山安山岩と不整合で接している。

II.7 下嵐江 おろせ

模式地 : 岩手県胆沢郡胆沢村 下嵐江部落付近一帯

層厚 : 400 m

分布 : 本層は, 胆沢川支流の前川の東西両岸の 600~700 m の山腹を構成しつつ, 南北に帯状に分布している。 前川の西岸のものは, 向斜構造のほゞ中心を構成して, 小胡桃山をはじめその南の尾根に分布している。 前川の東岸のものは, 模式地の下嵐江付近から地辷り地帯を潜って尿前川沿岸にまで分布し, 南は金山沢・本寺沢を経て磐井川沿岸にいたるまで, 本図幅地域を縦断するかのごとく帯状に分布している。 高検能 たかひの 山を中心とする地域に分布する下嵐江層の大部分は, 本層の市野々原凝灰岩部層である。

岩相 : 本層は主として淡緑色凝灰角礫岩・ 淡緑色凝灰質砂岩・ 灰色細粒凝灰岩・ 暗灰色~黒色頁岩・ 青灰色凝灰角礫岩などからなっている。 本層のなかで, 青灰色凝灰角礫岩および火山砕屑岩のとくに著しく発達した部分は, 市野々原凝灰岩部層 として区分した。 模式地においては, 岩質の差によって3つの層序に区分され, 下部は淡緑色凝灰質砂岩, 中部は黒色頁岩, 上部は青灰色凝灰質砂岩によって代表されている。 この層序関係は, 多少の岩相の差異は認められるが, ほゞ全域に共通している。

淡緑色凝灰質砂岩 は本層下部を代表するもので, 偽層が著しく発達し, とくに下半部は軽石質で, 安山岩・黒色頁岩などの角礫を多数含み, 側方において凝灰岩に移化する。

図版 5 下嵐江部落の南東の前川沿岸に発達する下嵐江層下部の淡緑色凝灰質砂岩

淡緑色凝灰角礫岩 は, 前川の西側支流沿岸の本層基底部に発達し, 前川の東側地域の淡緑色凝灰質砂岩に移化するものである。 本岩は比較的 粗鬆で, 石英安山岩・安山岩・黒色頁岩などの角礫のほか軽石を多く含み, 基質部に 5 mm 大の石英粒を含んでいる。

黒色頁岩 は下嵐江部落の南方の前川沿岸にもっともよく発達し, 腐泥質で, 魚鱗化石を多く含み, 秋田県油田地帯の船川層に酷似した岩相を示している。 本岩は石油臭を発し, 比較的塊状である。

青灰色凝灰質砂岩 は, 模式地付近の本層上部を代表するもので, 一般に塊状, ときに 5~6 m 単位の層理を示し, 青灰色シルト岩薄層を挟有することもある。 本岩には径 5 cm 内外の石灰質団塊を含むほか, 多くの貝化石を含んでいる。 本岩は本図幅南部地域に向かうに従って緑色味を帯び, とくに磐井川沿岸では鮮緑色の凝灰岩となり, このなかに 5 cm 内外の石炭層を挟んでいる。

層位関係 : 本層は下位の前川層に整合的に重なり, つねに淡緑色凝灰質砂岩, または淡緑色凝灰角礫岩をもって始まっている。 前川の東側支流の金山沢・本寺沢から高検能山の周辺一帯に分布する市野々原凝灰岩部層とは, 指交関係にある。

化石 : 本層上部の青灰色~緑色砂岩から第 1 表に示す貝化石が産出している。

第 1 表 下嵐江層産 海棲貝化石

1. 西磐井郡厳美村 鳴沢温泉の南方 1 km
Glycymeris oinouyei NOMURA
Ostrea sp.
Lucinoma sp.
Trachycardium narusawaense (NOMURA)
Venus cfr. securis SHUMARD
Peronidia protovenulosa NOMURA
Mactra kurikoma NOMURA
Batillaria sp.
Polinices sp.
Neverita sp.
Siphonalia sp.
Nassarius sp.
Benthovoluta sp.
"Lora" sp.
Gastropoda gen. et sp. indet.
2. 西磐井郡厳美村 市野々原の北西約 500 m の磐井川東岸の河崖(栗駒山図幅内)
Limopsis sp.
Venericardia sp.
Macoma cfr. tokyoensis MAKIYAMA
Tellina protvenulosa NOMURA
Mya sp.
Panope sp. (japonica ?)
Thracia genbiana NOMURA
Gastropoda gen. et sp. indet.
3. 胆沢郡若柳村 下嵐江の南方の坊沢上流
Arca ? sp.
Glycymeris vestitoides NOMURA
Venericardia sp.
Tracycardium cfr. narusawaense (NOMURA)
Dosinia cfr. japonica (REEVE)
4. 西磐井郡厳美村 市野々原の北西約 1 km(栗駒山図幅内)
Dosinia sp.
5. 胆沢郡衣川村 豊巻橋の下(水沢図幅内)
Nuculana sp.
Macoma sp.
6. 胆沢郡若柳村 下嵐江
Chlamus cfr. heteroglyptus (YOKOYAMA)
7. 西磐井郡厳美村 小猪岡川 落合付近(一ノ関図幅内)
Dentalium yokoyamai MAKIYAMA
8. 西磐井郡厳美村 槻木平の北西 1 km
Anadara cfr. amicula (YOKOYAMA)
Trachycardium narusawaense (NOMURA)
Clinocardium shiobaraense (YOKOYAMA)
Dosinia kaneharai YOKOYAMA
Clementia sp.
Schizothaerus ? sp.
9. 胆沢郡衣川村 衣川沿岸の豊巻の南東 500 m(水沢図幅内)
Licinoma otukai HATAI and NISIYAMA
Macoma calcarea (GMELIN)
10. 胆沢郡衣川村 役場裏(水沢図幅内)
Anadara sp.
11. 胆沢郡衣川村 寺袋の東方 500 m(水沢図幅内)
Lucinoma otukai HATAI and NISIYAMA
Argobuccinum sp.

下嵐江部落付近の本層中下部のシルト岩, および黒色頁岩から産出した底棲性, および浮游性有孔虫化石は第 2 表, 第 3 表の通りである。

第 2 表 下嵐江層産 底棲性有孔虫化石 (Ⅰ: 中下部, Ⅱ: 中部, Ⅲ: 中上部)

Angulogerina hughesi (GALLOWAY and WISSLER) - - R
Anomalia glabrata CUSHMAN - R -
Biloculinella globula (BORNEMANN) R - -
Bolwina decussata BRADY - - R
Buccella inusitata ANDERSON - R -
Buliminella eleganthissima tenuis CUSHMAN and McCuLLOCH - - A
Cassidulina cf. orientale CUSHMAN - - C
C. sublimbate ASANO and NAKAMURA - C -
Cibicides akerianus (d'ORBIGNY) - C -
C. lobatulus (WALKER and JACOB) C R C
C. cf. lobatulus (WAKER and JACOB) R - -
C. cf. refulgens (MONTFORT) C - -
C. pseudoungerianus (CUSHMAN) R - -
Discopulvinulina orbicularis (TERQUEM) R - -
D. stachi ASANO C - -
Discorbis opercularis (d'ORBIGNY) R - -
D. subopercularis ASANO R - -
Elphidum advenum (CUSHMAN) R - -
E. cf. etigoense HUSEZIMA and MARUHASI - R -
E. fax NICOL C C -
E. jenseni (CUSHMAN) R R -
Eponides haidingeri (d'ORBIGNY) R - -
E. cf. haidingeri (d'ORBIGNY) - - R
E. nipponicus (HUSEZIMA and MARUHASI) ? R - -
E. umbonatus (REUSS) R - -
Fissurina semimarginata (REUSS) - R -
F. orbignyana SEGUENZA R R -
Guttulina sp. R - -
Hanzawaia nipponica ASANO R R R
Lagena sulcata lavicostata CUSHMAN and GRAY R - -
Oolina costata (WILLIAMSON) - R -
O. melo d'ORBIGNY - R -
O. cf. melo d'ORBIGNY R - -
Quinqueloculina sawanensis ASANO C - -
Robilus orbicularis (d'ORBIGNY) R - -
Rotalia beccarii aomoriensis ASANO - R -
R. nipponica ASANO - - R
R. takanabensis (ISHIZAKI) - R -
R. cf. takanabensis (ISHIZAKI) - R -
Spiroplectammina cf. higuchii TAKAYANAGI R - -
Triloculina trigonula (LAMARK) R - -
Uvigerina nitidula SCHWAGER - R -
[ 第 2 表に関する注意書き ]
R は rare, C は common, A は abundant の略字

第 3 表 下嵐江層産 浮游性有孔虫化石

個体数
Globigerina apertura CUSHMAN 8
G. bulloides d'ORBIGNY 26
G. conglomerata SCHWAGER 9
G. parabulloides BLOW 13
G. trilocularis DESHAYERS 26
G. sp. (?) 9
Globigerinoides conglobatus (BRADY) 1
G. obliquus BOLLI 1
G. ruber (d'ORBIGNY) 2
G. immatuus LEROY 6
G. sacculifer (BRADY) 4
G. n. sp. (?) 5
Globoquadruba pozonensis BLOW 5
Hastigerina siphonifera (d'ORBIGNY) 3

市野々原凝灰岩部層

模式地 : 岩手県一ノ関市 市野々原付近一帯(磐井川沿岸)

層厚 : 400 m

分布 : 本部層は高検能山の南麓一帯から一ノ関市の市野々原北部にかけて分布し, 国見山安山岩によって覆われている。

岩相 : 本部層は比較的酸性の火山砕屑岩岩体であって, おもに淡青緑色凝灰角礫岩からなり, 石英安山岩および同質集塊岩を伴なっている。 一般に塊状無層理のものが多く, ときに青灰色~灰白色の凝灰質シルト岩や, 暗灰色のシルト岩を挟在することもある。 本部層は地域的に変質の程度が異なり, 高手山の北方・南股川の上流から鬼壁沢にかけての一帯は, もっとも変質の程度が強く, 灰白色, 粘土状に変質し, 非常に多くの硫化鉄鉱の微粒によって汚染されている。 高手山以南のものは, 幾分変質の程度弱く, 凝灰角礫岩中の軽石は緑泥石化し, 灰色の基地に淡緑色の斑点を散らした観を呈している。 市野々原付近では凝灰角礫岩中に, しばしば層理のよく発達した灰白色凝灰質シルト岩を挟有し, それらの互層となっている。 高検能山の南麓一帯では, 石英安山岩が広く発達し, その下位に輝石安山岩が分布している。 ともに著しく変質しているので区別困難である。

石英安山岩
斑晶 : 斜長石・石英・輝石
輝石は緑泥石化著しく, 斜長石も一部炭酸塩鉱物によって置換されている。
石基 : 斜長石・石英・ガラス
微珪長質組織をつくり, 緑泥石化・炭酸塩化作用著しいが, 一部にガラスの残存するのが認められる。
輝石安山岩
斑晶 : 斜長石・普通輝石・紫鰊輝石
3~5 mm 大の斜長石・普通輝石の斑晶が多く, 紫蘇輝石はその間にごくまれに存在するにすぎない。 斜長石・普通輝石の劈開に沿って緑泥石・絹雲母・炭酸塩鉱物が充填されている。
石基 : 斜長石・ガラス
ガラスの少ない充填組織を呈し, 緑泥石化作用および炭酸塩化作用著しい。

層位関係 : 本部層は下嵐江層中下部と指交関係にあるが, 北股川の上流に分布するものは, 前川層および小寒沢凝灰岩部層と, 局部的不整合関係に接している。 前川層および小寒沢凝灰岩部層と直接接しているものは, 輝石安山岩およびそれに伴なった凝灰岩であって, この局部的不整合は, 前川層堆積後の隆起削剥を意味するものではなくて, 本部層の積成をもたらした火山活動が, 前川層堆積中期から活動を行ないはじめたものと考えられる。 したがって, 小寒沢凝灰岩部層と, 市野々原凝灰岩部層の下半部, すなわち輝石安山岩類によって代表される部分は, 本質的に密接な関係にあると考えられる。

II.8 貫入岩類

普通輝石安山岩

本岩は前川の支流の小白沢付近に発達し, 大森山を構成して, 小出川層の緑色凝灰角礫岩に貫入した岩体である。 本岩は明らかに貫入岩体として胚胎している部分と, 熔岩として小出川層に挟在するかのような部分とがあって, 貫入の時期は小出川層の堆積とあまり隔ってはいないもののようである。 肉眼的に淡青緑~暗灰緑色を呈し, 一般に変質が著しい。

斑晶 : 斜長石・普通輝石
斜長石は 1~3 mm の灰曹長石を主とするが, ほとんどが曹長石化している。 普通輝石の斑晶も, 大部分が緑泥石化し一部は炭酸塩化している。
石基 : 斜長石・珪長質物質
石基は充充填組織を呈し, ガラスの大部分は再結晶を行なって微珪長質となっている。 石基中の斜長石も緑泥石化および炭酸塩化している。

紫蘇輝石安山岩

本岩は前川の上流の東岸の小滝森から, 南西に延びる岩脈をなして発達し, さらにその南西の 祭畤 まつるべ 山にも岩脈として胚胎している。 小滝森の南東の沢では前川層上部を貫き, おそらくその北東では下嵐江層をも貫いているものと考えられる。 祭畤山のものは小出川層を貫いているが, その分布状態にはかなり不明の点が多い。

斑晶 : 斜長石・紫蘇輝石・普通輝石
短冊形の斜長石は 1~3 mm 程度で曹長石化している。 紫鮮輝石は 0.5~3 mm 程度で自形または他形である。 紫蘇輝石の劈開に沿った部分は縁泥石化している。 普通輝石はごくまれで, 0.5 mm 程の他形のものである。
石基 : 斜長石・紫蘇輝石・磁鉄鉱
短冊形の斜長石微晶が毛せん状に配列した充填組織を呈し, 磁鉄鉱が散在している。 紫蘇輝石の微晶は緑泥石化しているものが多い。

石英斑岩

本岩は前川の西側支流の大沢付近に NW - SE 方向をもって分布する貰入岩体で, 同種のものは小胡桃山の南西麓にも小範囲に発達している。 本岩は小出川層・前川層および小寒沢凝灰岩部層を貫き, 自らもかなり変質を蒙っている。

斑晶 : 斜長石・石英・輝石
斜長石は 2~5 mm 短冊形のものが多いが, ほとんどが曹長石化され, 一部 緑泥石化している。 石英は 3~7 mm の自形または地形の巨晶が多く, 他の鉱物に較べ新鮮である。 輝石のほとんどは緑泥石化し, ところによっては磁鉄鉱の汚点によって置換されている。

II.9 瑞山 みずやま

模式地 : 岩手県一ノ関市 瑞山の北方の磐井川沿岸一帯

層厚 : 300 m

分布 : 本層は 下嵐江 おろせ 部落東方の 胆沢 いさわ 川沿岸一帯・ 尿前 しとまえ 川の下流流域から こび 山を経て 高検能 たかひの 山の北麓にいたる地域に広く分布し, さらに, 一ノ関市 瑞山付近の磐井川沿岸 [ 図幅の南端中央 ] に分布している。

岩相 : 本層の主体部は石英安山岩質熔結凝灰岩からなるが, 下部には 5~10 m の凝灰岩・凝灰質砂岩・同質シルト岩の不規則な互層と, その基底部の 1~4 m の厚さの礫岩を伴なっている。

図版 6 尿前 石淵ダム下流に発達する瑞山層の熔結凝灰岩

石英安山岩質熔結凝灰岩 は, 淡灰色~淡桃灰色, 粗鬆のもので, 柱状節理の非常によく発達したものである。 図版 1 および 6 に示したものは柱状節理のもっともよく発達した部分である。 本岩の熔結度のもっとも高い部分は, 中央部の厚さ 40~50 m に相当する部分で, こゝでは斑状構造の緻密な岩石となり, 一見, 熔岩と区別しがたく, 流理構造のように細長く水平に伸びたガラスをもっている。 熔結の程度は上下にはなれるに従って減じ, 水平に伸びた黒色のガラスも次第に扁平~紡錘状となり, 最上部ではまったく扁平化しない繊維状の軽石塊となっている。 この熔結度の減じ方は下方の方が早く, 上方の方がよりおそい傾向がある。 いずれの場合でもその間に明瞭な境界はない。 軽石塊が明らかに元に復した部分でも, 鏡下では微細なガラス片がかなり熔結を行なっている場合が多いので, 熔結した部分の厚さは相当な厚さに達するものと考えられる。

斑晶 : 斜長石・石英・黒雲母・普通輝石・紫蘇輝石
斑晶の鉱物はほとんどが他形で, 大きさが不動で, しかも破砕された感じのものが多い。 いずれも非常に新鮮である。 石英は融蝕されたものや破片状のものがとくに多い。
石基 : 石英・斜長石・ガラス・磁鉄鉱
石英・科長石の大部分は破片状の微晶で, ガラスは熔結し, 結晶と結晶との間で押し潰され, 側方にしぼり出されている。 変質は蒙らず新鮮である。

石英安山岩岩頸 が, 下嵐江の東方の猿岩を構成して発達しているが, これは地質図幅においてはとくに区別せず一括した。 これは下嵐江層を貫いているが, 熔結凝灰岩との関係は不明である。 斜長石・石英などの斑晶をもち, 毛せん状組織の石基からなり, 変質が著しく, 脱ガラス・炭酸塩化作用を蒙っている。 瑞山層の分布, 厚さ, 熔結状態から考えて, 熔結凝灰岩をもたらした 火道(vent)周辺の割れ目(fissure)の1つに生じたものと考えている。

下部互層 は凝灰岩・凝灰質砂岩・凝灰質シルト岩の数 10 cm 単位の不規則な互層で, 本図幅地域内では, 下嵐江の南方の坊沢でよく発達している。 こゝでは凝灰質砂岩は著しく石英粒に富み, ほとんど石英砂岩といいたい位になっていて, 数枚の亜炭層を挟有している。

図版 7 下嵐江の南方の坊沢沿岸の瑞山層下部

層位関係 : 本層下部互層の基底に, 顕著な礫岩が発達するのは磐井川の下流沿岸で, その大部分は本図幅に南隣する栗駒山図幅地域に入っている。 この礫岩は, 古生層由来のチャート・粘板岩を主とし, よく水磨された胡桃大の礫からなっている。 この礫の発達した地域では, 下嵐江層と明瞭な不整合関係で重なっているが, 礫岩の発達しない下嵐江の南方の坊沢では一見整合的に重なり, 侵蝕面を決定するのが困難である。 しかし, 下部互層の最下部に発達する石英砂岩は, 著しく偽層が発達し, 小礫を含んでいるので, 下位層との間に平行不整合が存在するのではないかと考えている。 本層下部の互層部の発達しない高検能山の北麓では, 基底部の礫岩も, もちろん発達しないので下位層との関係をつきとめることは一層困難である。 高検能山の北麓では, 本層の凝灰岩は前川層より下嵐江層にいたるあらゆる層準に直接 重なり, しかも, 市野々原凝灰岩部層の凝灰岩とは岩相を異にしているので, かなり大きな構造差をもった不整合が存在することが判る。

II.10 大平 おおだいら

模式地 : 岩手県胆沢郡衣川村 大平

層厚 : 150~400 m

分布 : 本層は図幅地域東縁部の山麓低地帯にのみ発達し, 北から 内穴沢の沿岸の細野およびその上流・ 胆沢川沿岸の上鹿合付近・ 衣川の支流の北股川および南股川沿岸一帯などに分布し, ひろく国見山安山岩に覆われでいる。

岩相 : 本層は 砂岩・礫岩・凝灰岩・凝灰質シルト岩の厚さ 1~5 m の不規則な互層からなっている。 本層下部には連続性に乏しい数枚の亜炭層を挟有し, ところによっては かき殻礁(Ostrea reef)が発達している。

模式地では凝灰質砂岩が厚く発達し, 礫岩および凝灰質シルト岩が挟在している。 凝灰質シルト岩は青灰色を呈し, かき殻礁がこのなかに発達している。 礫岩の基質部は凝灰質を帯び, 礫は拳大から人頭大の安山岩を主としている。

層位関係 : 国見山の南麓の南股川沿岸においては, 瑞山層を不規則に削って本層の基底礫岩が発達し, その上に亜炭層を挟有する青灰色凝灰質シルト岩が重なり, このシルト岩から貝化石を産出している。 その他の地域においても, 下位の瑞山層とは常に不整合関係にあるが, 瑞山層から下位の層準のものの上に直接 不整合で重なる所はみられない。 また, 瑞山層を不整合で覆う場合も基底礫岩のまったくない場合がある。 上位の国見山安山岩とは, かなりの層準にわたって指交している。

化石 : 北股川および南股川沿岸の青灰色凝灰質シルト岩からは, 次のような貝化石を産出した。 本層は仙台の竜の口層に対比される。

Anadara amicula (YOKOYAMA)
A. sp. (juvenile form)
callista brevisiphonata (CARPENTER)
Clinocardium fastosum (NOMURA)
Macoma cf. calcarea (GMELIN)
M. incongrua (MARTENS)
M. cf. praetexta (MARTENS)
Panope japonica A. ADAMS
Patinopecten poculum (YOKOYAMA)
P. sp.
Schizothaerus keenae HABE
Thracia cf. pertrapezoidea NOMURA

II.11 国見山安山岩

模式地 : 岩手県胆沢郡衣川村 国見山周辺部地域一帯

層厚 : 約 400 m

分布 : 本岩は, 国見山(788.1 m)を中心にして半径約 6 km の範囲に分布し, 長塚山(680 m)・ 高検能 たかひの 山(927.1 m)・ 高倉山(678.0 m)・風倉山(778.0 m)・高手山(866.3 m)および 鈴ケ森(752.7 m)などを構成するほか, 胆沢川の北方の鍋倉山(672.8 m)を中心に広範囲に分布し, 全般的に非常に起伏に富んだ地形をつくっている。

岩相 : 本岩は紫蘇輝石普通輝石安山岩・集塊岩・火山角礫岩などを主とするものによって構成され, 凝灰岩および凝灰質砂岩を伴なっている。

紫蘇輝石普通輝石安山岩
斑晶 : 斜長石・紫蘇輝石・普通輝石
斜長石は 1~4 mm 大で累帯構造が著しく多量に存在する。 紫蘇輝石は 0.5~2 mm で, 比較的多量に存在し, 新鮮である。
石基 : 斜長石・紫蘇輝石・普通輝石・磁鉄鉱
ガラス基流晶質組織を示し, 磁鉄鉱が散点している。 ほとんど変質をうけておらず, わずかにガラスおよび有色鉱物の一部が炭酸塩化作用をうけているに過ぎない。

層位関係 : 本層は大平層と指交関係にあり, とくに西方の縁辺部では, 大平層をまったく欠いて直接 瑞山層や下嵐江層を直接不整合に覆っている。

瑞山層との関係は, 北股川上流の媚山の東麓部でよくみられ, 明瞭な境界をつくっている。 下嵐江層との不整合関係も鮮明で, 高検能山の北東麓でみることができる。 市野々原凝灰岩部層と直接接する場合は常に不明瞭であるが, 変質の差によって両者を区別することはできる。

II.12 新期火山噴出物

焼石岳安山岩および火山砕屑物

焼石岳を構成する安山岩は, 石英含有紫蘇石安山岩で, 多孔質の噴出熔岩流とそれに伴なった火山灰からなっている。 焼石岳の北方に連続する経塚山・手形山・駒ヶ岳は, 両輝石安山岩からなり, 鬼森山は紫蘇輝石安山岩からなっている。 これらの噴出はほゞ近接した時期に行なわれたと思われ, それらに伴なった抛出岩塊と, 火山灰からなる火山砕屑物は焼石岳の南東麓に広く分布している。 この火山砕屑物のもっとも広く発達した地域は断層帯を被覆し, その運動に伴なって広大な面積に及ぶ地辷地帯を形成させている。

栗駒山熔岩流

図幅地域南西部の湯尻沢上流から 雨田森 あまだもり 一帯にかけては, 新期の紫蘇輝石普通輝石安山岩・紫蘇輝石安山岩などの熔岩流が分布している。 これらのなかには, 明らかに石英安山岩質の熔岩の介在も認められるが, ほとんどすべてが栗駒山火山の噴出に伴なった熔岩流である。

II.13 扇状地および段丘堆積物

扇状地堆積物は, 本図幅地域東部から北上川沿岸にいたるまで広範に分布し, 「胆沢川扇状地」と称されていた。 現在残されている扇状地堆積物の西限は, 市野々の南方の標高 260 m 付近の所であるが, 形成当時はさらに西方の市野々 - 馬留間の胆沢川狭窄部に頂点があったものと考えられる。 この扇状地は南部のものほど高く, 北に向かって次第に高さを減ずる 3 段の扇状地の複合体で, 胆沢川が数次にわたって氾濫を繰り返した結果として形成されたものと考えられる。 堆積物は拳大以上の安山岩の礫を主とし, これに茶褐色の砂・粘土が混然と混り合ったものからなり, 上流部のものほど礫の数が多く下流部ほど礫の数が少ない。 扇状地堆積物の上には, 褐色の火山灰層がひろく発達している。

河岸段丘堆積物は, 胆沢川沿岸の馬留の下流地域・ 合子ノ沢の南岸・ 下嵐江付近・ 前川沿岸・ 磐井川沿岸の槻木平などに分布するほか, 各河川沿岸に数段に刻んで小範囲に発達している。 堆積物は砂・礫・粘土からなり, 火山灰によって覆われている。

III. 応用地質

III.1 金属鉱床

本図幅地域は脊梁山脈の中心部を占め, 横黒線 [ ← 国鉄北上線 ? ] 沿線の 和賀 わが 鉱床地帯に南接する地帯であって, 当然 金属鉱床の賦存が期待されるのであるが, 実際には, 鉱化作用の広く及んでいる所もなく, また, 鉱脈・鉱染鉱床などの存在もきわめて少ない。 ほゞ南北に連なる脊梁山脈の構造方向が, たゞちに鉱床地帯の延長方向に結びつけえないことを示すのではなかろうか。 金属鉱床をもっとも多く胚胎する新第三系下部の「緑色凝灰岩」の分布ばかりでなく, それらの噴出から積成にいたる機構とか, 基盤岩類の構造支配, あるいは変質帯の性格などを広域にわたって比較検討することによって, 初めて鉱床地帯に属しているか否かを判断することができるのである。

北隣の図幅地内の和賀鉱床地帯においては, 大石層の上部に流紋岩を伴なった川尻凝灰岩が大量に積成していて, これが金属鉱床の胚胎と, 密接な関係をもっていると考えられている。 この川尻凝灰岩の層準に相当する本地域の小出川層や, 西小沢層の上部でも, 流紋岩質凝灰岩類の発達は, 一部を除いてきわめて貧弱である。 本図幅地域の西端の東山流紋岩地域はそれに相当し, 金属鉱床賦存の可能性をもっているが, いまだ大鉱床は発見されていない。 しかし, この層準をさらに西方に追跡した所には吉野鉱山がある。 したがって, この時代の流紋岩類の活動と, その積成機構に, 金属鉱床胚胎の鍵がひそんでいることは確かである。

本図幅の大半の地域は, 脊梁山脈の一大背斜構造の東翼を構成していて, こゝに発達する小出川層の上部には, 本図幅地域の西方および北隣の図幅地域内の金属鉱地帯に較べて, 流紋岩類の噴出物が非常に少ない。 したがって, この地域は金属鉱床賦存の可能性のある地域とはいえないのである。

現在までに, 本図幅地域内で発見され開発されたことのある金属鉱床は, 渋民鉱床のみである。 そのほかのものは, もちろん充分な調査は行なわれていないが, 開発の対象とはなっていない。

渋民 しぶたみ 鉱床

本鉱床は, 前川とその東側の支流の金山沢との合流点の通称 千軒原と称されている所にあり, およそ 100 余年前に, こゝで鉛の製錬が行なわれたといい伝えられている。 本鉱床は, 前川層の黒色板状頁岩と青灰色砂質(やゝ凝灰質)シルト岩との互層に形成された, ほゞ東西性の裂罅を充填したものである。 裂罅充填鉱物は石英・黄鉄鉱・方鉛鉱・閃亜鉛鉱を主とするもので, 脈幅約 50 cm であるが分岐著しく, 現在では鉛・亜鉛の含有量も非常に少ない。 周辺の黒色頁岩や砂質シルト岩は, 著しく珪化作用を蒙り黄鉄鉱によって鉱染されている。 現在まで第1坑道・第2坑道・第3坑道を試堀しているが, 鉱脈の延長方向にある下嵐江層の石英安山岩質凝灰角礫岩では, 鉱染帯の存在もなく消滅している。

上の倉 鉛・亜鉛鉱床

本鉱床は, 村井貞允ら(1954)によって調査されて, その状況があきらかにされたものである。 その結果を要約する。 鉱床は胆沢川を上の倉沢 合流点からさらに 200 m 遡った南岸, 河床から 60 m の高さにある。 付近は古生層の粘板岩・輝緑凝灰岩からなり, 鉱床付近で珪化・粘土化・黄鉄鉱化作用をも受けている。 鉱床は珪化岩中を N 60°E に貫き, 石英・黄鉄鉱・方鉛鉱・閃亜鉛鉱・黄銅鉱からなる準脈状体をなし, 脈幅約 4 m に達する。 このなかに, 幅 70 cm の方鉛鉱・閃亜鉛鉱に富む帯が存在し, Pb, Zn 合せて 5~6 % と推定されているが, 品位の詳細は不明である。 本鉱床の発見は明治時代で, 大正・昭和を通じてたびたび探鉱が進められてきたが, 連続性にとぼしく, いまだ本格的開発は行なわれていない。

小出川 モリブデン鉱脈

本鉱床は胆沢川と小出川との合流点から小出川を約 600 m 遡った付近に発達する, 黒雲母花崗閃緑岩の破砕帯に脈状に胚胎する。 鉱脈は数条に分かれて発達する石英脈で, このなかに 0.1~1 cm 大の輝水鉛鉱が散点するにすぎず, 多くの期待は望めない。

II.2 亜炭

本図幅地域内で, 石炭または亜炭層を挟有する地層は, 小出川層の基底部・下嵐江層上部・瑞山層・大平層などであるが, 大平層のものを除いては単に痕跡程度であったり, 炭質頁岩の部分のほうが多かったりして, 稼行の対象にはまったくならない。

大平層は鮮新統下部を代表するもので, これと同層準の地層は, 北隣の川尻図幅の本畑層, 東隣の水沢図幅およびその南の一ノ関図幅地域の有賀層など, いずれも亜炭層の非常に発達のよい地層となっている。 本地域では, 国見山安山岩が, 大平層の堆積とほゞ同時期に活動を行なったために, 亜炭層の堆積に悪影響を及ぼし, 亜炭層の急速な尖滅, 頻繁な夾みの介入などをみるにいたっている。

南股川下流の下立沢の付近では, 比較的連続性のある亜炭層が発達し, 最近まで家庭燃料源としてさかんに稼行されていたが, 現在ではそのすべてが休山している。

III.3 石油徴侯

秋田県油田地帯の含油第三系は, 女川層・船川層と称される腐泥質の細粒砕屑物で, 石油の成生はその堆積機構に由来し, それらの埋蔵は含油母層の地下における構造に支配されていることは言をまたない。

本図幅地内に発達する前川層や, 下嵐江層は層位的にも秋田油田の女川層や船川層と同層準であって, 岩質的にも黒色腐泥質岩を含み相共通した性格をもっている。 また, 前川沿岸を NE 方向に走る構造帯でみても, これら黒色頁岩類を挟有する地層は, 褶曲に対してかなり有能性のあることを示している。 さらに, 下嵐江の南方の坊沢付近および磐井川の上流の鳴沢温泉付近では, 油臭・油の滲出などの油徴が古くから報告されていた。 これらのことから本図幅東半部地域は, 石油鉱床あるいは, 可燃性天然ガス賦存の可能性があるのではないかと騒がれることもしばしばであった。

しかしながら, 図幅地域内の前川層および下嵐江層中に挟有されている有機物に富んだ黒色頁岩層は, 油田地域のそれらに較べれば問題にならぬほど薄く, 砂質ないし凝灰質のシルト岩の方がかなりの割合の厚さを占めているのである。 しかも, 高検能山付近一帯のように, 下嵐江層の大部分は, 市野々原凝灰岩部層によって置き換えられ, 黒色頁岩の発達はほとんどないのである。

下嵐江層堆積後の火山噴出物の中心は, 図幅東半部の地域に移っていて, 下嵐江層以下の地層を突き破って噴出しているのである。

そのため, 下嵐江層以下の構造は, まったく擾乱されてしまっていることはもちろん, 揮発性成分の保存の可能性も失なわれているはずなのである。

これらのことを考えてみると, 石油あるいは可然性天然ガス賦存の可能性は, 期待できないものといえる。

文献

1) 半沢正四郎 :
日本地方地質誌,東北地方, 朝倉書店, 1954
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岩手県北上山地西縁より脊梁山地に亘る地域の新第三系の地質, 東北鉱山学会誌,No. 10, 1954
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東北日本内帯台島期植物群の 2 型, 地質雑,Vol. 55, 1949
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男鹿半島第三系の層序と構造, 石油技協,Vol. 15,No. 3, 1950
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本邦油田の地質構造の研究(第 1 報),横手仙人峠間の第三紀層, 石油技協,Vol. 9,No. 2, 1941
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Petrogenetic Consideration of the Green Tuff Found in the Lower Part of the Neogene Developed in the Yokote Basin in Akita Prefecture and the Shinjo Basin in Yamagata Prefecture, Sci. Rep. Tohoku Univ. Ser., Ⅲ, Vol. 5, No. 1, 1955
7) 北村信 :
岩手県若柳地区調査報告, 地質調査所月報,Vol. 4,No. 12, 1953
8) 北村信・谷正巳 :
岩手県胆沢郡西部及び西磐井郡西部の地質について, 岩鉱誌,Vol. 37,No. 3,4, 1953
9) 北村信 :
東北地方脊梁山脈周辺に発達する石英安山岩類の層位学的研究, 地球科学. No. 28, 1956
10) 北村信・小高民夫・早坂祥三 :
岩手県西南部の地質構造発達史について, 東北大学地古邦文報告 No. 47, 1956
11) 北村信 :
東北地方における第三紀造山運動について --(奥羽脊梁山脈をを中心として)--, 東北大学地古邦文報告,No. 49, 1959
12) 北村信・武藤草 :
大荒沢層の積成機構にかんする問題, 東北大学地古邦文報告,No. 55, 1962
13) 松野久也 :
岩手県一ノ関付近の地質, 東北大学地古卆論, 1947
14) 武藤章 :
横手盆地東南縁部地域の地質, 東北大学地古卆論, 1956
15) 武藤章 :
秋田県雄勝郡南部地域の地質, 東北大学地古修論, 1958
16) 村井貞允・他 6 名 :
胆沢郡若柳村地下資源調査報告, 岩手県地下資源調査報告, 1954
17) 中谷欽一 :
岩手県和賀郡和賀町南部の地質, 東北大学地古卒論, 1957

EXPLANATORY TEXT OF THE GEOLOGICAL MAP OF JAPAN Scale 1 : 50,000

YAKEISHl-DAKE

Akita, No. 50

By NOBU KITAMURA (Written in 1963)


Abstract

GEOLOGY

The area mapped occupies a part of the Backbone Ranges between Iwate and Akita prefectures in Northeast Honshu. It consists largely of the marine Lower and Middle Miocene and Lower Pliocene sediments. These are underlain with unconformity by the Paleozoic sediments and granodiorites, and overlain with unconformity by the Quaternary volcanics.

The Cenozoic sediments of this area are classified by the writer as shown in the annexed table.

Table 1

BASEMENT COMPLEX

The Paleozoic sediments which are exposed sporadically in the core of the broad anticline of the Backbone Ranges consist of amphibolite schist, biotite schist, phyllite, schalstein, slate, chert and limestone.

The large granodioritic batholith which consists of biotite adamellite, quartz-bearing-hornblende diorite and altered biotite-hornblende diorite is developed along the upper course of the Isawa and Oide rivers.

The isolated patches of highly metamorphosed and deformed rocks which lie on the eastern or southern peripheries of the large granodioritic mass are remnants of the former country rock into which the granodioritic magma rose. They include amphibolite schist, biotite schist and phyllite. Serpentinized ultrabasic intrusives found in these metamorphosed schists are also intruded by altered biotite-hornblende diorite and biotite granodiorite. These metamorphosed facies are assigned tentatively to the Middle or Lower Devonian because of their close resemblance lithologically to the Motai and Matsugatai groups in the Kitakami and Abukuma massifs.

The majority of the Paleozoic rocks of the borderland between Iwate and Akita prefectures is composed of slate, chert, schalstein and limestone occasionally with minor intrusions of granodiorite. These lithological facies can be easily distinguished from the aforementioned highly metamorphosed facies. Waagenophyllum indicum bearing limestone was discovered by Dr. M. Tani in 1952 from these unmetamorphosed Paleozoic rocks at the southern periphery of the sheet-map area in the west of the Shin'yu hot-spring.

From these facts, it is clear that the ages of the Paleozoic rocks of this area range from early Devonian to Permian.

NEOGENE TERTIARY

Oarasawa formation

This formation is well developed in the axial part of the broad anticline constructing the Backbone Ranges and it is represented by propyrite lava, volcanic breccia and tuff breccia. Almost all of these volcanics have changed in their color to greenish purple due to alteration such as chloritization, epidotization, silicification, carbonatization and other hydrothermal mineralization. This formation covers with unconformity the pre-Tertiary basement complexes and is superposed with the Oidegawa and Nishikozawa formations. The upper part of this formation interfingers with the lower part of the Oidegawa formation at the northern part of this area, though the latter occupies a higher horizon on the whole.

Oidegawa formation

This formation consists of green colored tuff breccia, sandy tuff, sandy siltstone and black hard shale ; it forms two wings of a broad anticlinal structure. The green tuff breccia of this formation is not so lithified and more acidic in character as compared with the tuff of the Oarasawa formation. The sandy siltstone and black hard shale predominate in the middle part of this formation and yield Middle Miocene marine mollusca and foraminifera. The upper part of this formation is characterized by the green colored sandy tuff and pale green colored fine tuff except in the northwestern part of the area. This formation is correlated to the Oishi formation which is distributed in the adjacent northern area and with the Daijima formation in the Oga peninsula, Akita prefecture.

Nishikozawa formation

This formation rests with conformity on the Oarasawa formation at the upper course of the Isawa river, but in the more southern part it overlies the Oidegawa formation without remarkable breaks. This formation consists of dark gray colored tuffaceous or sandy siltstone and black hard shale intercalated with green tuff. The fine clastic facies in the middle part of the Oidegawa formation is similar lithologically to this formation. The foraminifera species found in these formations are also common, and is probably correlative with one another. This formation appears to have been deposited far from the center of the volcanic activity which resulted in the thick accumulation of green tuff of the Oidegawa formation. Tozan rhyolite member , exposed at the western side of the borderland between Iwate and Akita prefectures, is a complex of rhyolite lava and its pyroclastics. The rhyolite lava itself is whitish or pale bluish gray in color and shows thin banded flow structure. The tongues of this rhyolite, mainly consisting of rhyolitic tuff breccia and pumiceous tuff, wedge into the adjacent Nishikozawa and Oidegawa formations. Alteration after accumulation is observed around the western part of Mt. Tozan.

Maekawa formation

This formation mainly consists of banded black hard shale, dark gray siltstone and pale green colored sandy tuff. The formation rests with conformity on the Oidegawa formation and makes the folded zone along the Mae river (Mae-kawa). Facies change in the middle part of this formation originates from the intercalation of pyroclastic materials, called the Kosamuzawa tuff member . At the basal part of this formation, there are several intercalations of calcareous sandstone or coquina sandstone which yield Middle Miocene Pectinidae. The main part of this formation is equivalent to the Sannai formation in the Yokote basin and the Onnagawa formation in the Akita Oil Field, though the basal part of the formation may be correlated to a part of the Sugota and Nishikurosawa formations in Akita prefecture.

Orose formation

This formation is typically developed along the Mae river in the southern part of Orose. The lower part of the Orose formation is represented by dacitic lapilli tuff with huge quartz grains and rests with conformity on the Maekawa formation. The black shale in the middle part closely resembles the same facies of the Funakawa formation in the Akita Oil Field, but its distribution is restricted in the area and measures only about 100 m or more in thickness. The upper part of this formation consists of blue or green colored sandstone with intercalations of tuff and tuffaceous siltstone. At the western part of Tsukinoki dai along the Iwai river, thin lignite bed are observed in the upper part of this formation. The Ichinonohara tuff member interfingers with the lower and middle parts of the formation in the eastern part of the area. Dacite lava and its coarse pyroclastics which make the main part of the Ichinonohara tuff member may be genetically related to the lowerpart of the formation. The geological age of this formation is Middle Miocene based upon the mollusca and planktonic foraminifera.

Mizuyama formation

This formation consists mainly of dacitic welded tuff and is typically developed around Mt. Kobi (Kobi-yama). At the basal part of this formation, an alternation of tuffaceous sandstone, tuff and conglomerate occasionally with several seams of lignite are developed. The columnar jointed welded tuff of the formation are observed along the Isawa and Shitomae rivers near Shitomae. The relation to the underlying formations is obscure where the basal alternate facies are lacking, but in the southern part of distribution it rests on different horizons of the Orose formation with angular unconformity.

Kunimiyama andesite

The main mass of the Kunimiyama andesite is distributed over the eastern half of this area and consists mainly of two pyroxene andesite lava, agglomerate and volcanic breccia, associated with tuff and tuffaceous sandstone. Most of these volcanic and pyroclastic rocks show no stratification but commence with basal coarse agglomerate or lava. The tongue of these volcanics always interfinger with the Odaira formation in the eastern part of distribution and overlie with unconformity the Mizuyama and Orose formations.

Odaira formation

This formation is developed at the eastern foothills of Mt. Kunimi and Mt. Nabekura, fringing the distribution of the Kunimiyama andesite and consists mainly of sandstone, conglomerate, tuff and tuffaceous siltstone which make an irregular alternation. In the lower part of this formation, there are intercalated several discontinuous lignite seams and occasionally an Ostrea reef. In the vicinity of the type locality, thick bluish gray tuffaceous siltstones are developed and yield many Pliocene marine mollusca. Fragments or blocks in the conglomerate, consisting almost of andesite, increase their size and decrease in roundness near to the distribution of the Kunimiyama andesite and rests with unconformity on the Mizuyama formation.

QUATERNARY

Younger volcanics

Quartz bearing hypersthene andesite, making Mt. Yakeishi (Yakeishi-dake), is developed in the northern part of this area and accompanied with volcanic detritus characterizing the land-sliding area around Mt. Dake (Dake-yama). The younger volcanics, distributed in the northern part of the Shitomae river and at the northern foothills of Mt. Kurikoma, consists of two pyroxene andesite and its detritus. The activities of these younger volcanics are considered to be contemporaneous with the formation of the fan deposits and terrace deposits along the Isawa river.

Fan deposits and Terrace deposits

The fan deposit along the lower course of the Isawa river is a compound fan, made by the result of several floods. The surface of this fan is modified into three steps ; the highest attains 277 m in altitude and is situated at the southern part, the middle is 210~240 m high and the lowest is close to the level of the Isawa river. There is another fan deposit at the northern part of Hosono, but its whole distribution has not been ascertained. These fan deposits consist of unconsolidated sand, gravel, silt and clay and are covered with a layer of volcanic ash. Well preserved river terrace deposits are developed along the lower course of the Isawa river. Other terrace deposits are distributed sporadically along the middle course of the Isawa river and its tributaries. Every terrace deposit consists of gravel, sand and clay and are covered with volcanic ash as well as fan deposits.

GEOLOGIC STRUCTURE

The western part of this area is characterized by a broad anticlinal structure comprising the central part of the Ou Backbone Range in Northeast Honshu with a trend of NNE-SSW. The eastern wing, consisting of competent facies such as the Maekawa and Orose formations, cut through the central part of this area and form the folded and thrust zones.

In the eastern part of this area, the structure completed by the Lower and Middle Miocene strata is concealed by the volcanic materials which were erupted during Upper Miocene to Lower Pliocene. The structure exhibited by these Upper Miocene and Lower Pliocene volcanics or the Lower Pliocene Odaira formation show gentle undulation.

ECONOMIC GEOLOGY

Metallic deposits

The Shibutami ore, situated along the Mae river (Mae-kawa), is of fissure filling vein type, containing quartz, pyrite, galena and zincblende. At present, no commercial production has been obtained. The quartz vein, accompanying with galena, zincblende, chalcopyrite and pyrite are observed in the Paleozoic rocks along the Jonokura river, but have no economic value. Molybdenite bearing quartz veins, in sheared granodiorite in the lower course of the Oide river, are similarly valueless.

Lignite

Lignites are found at several places in the Odaira formation and some of these were once exploited. They show low calorific value and frequently thin out into a trace, at present, none of them are being worked.

Oil indication

Although, the black shale facies in the Orose formation, having oil seepage or oil smell, is similar lithologically to the Funakawa formation and is its correlatives, no oil production can be expected in this area, as the thickness of the black shale and its distribution are much restricted.


昭和 40 年 2 月 11 日 印刷
昭和 40 年 2 月 18 日 発行
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