05012_1976
地域地質研究報告
5万分の1図幅
青森(5) 第 12 号
[ 地質調査所 ] 上村不二雄
昭和 51 年
地質調査所
目次 I. 地形 II. 地質概説 III. 下北半島の新第三系 III.1 桧川層 III.2 小沢層 III.3 脇野沢安山岩類 IV. 夏泊半島の新第三系 IV.1 間木層 IV.2 石英安山岩 V. 第四系 V.1 段丘堆積層 V.2 沖積層 VI. 応用地質 VI.1 鉱泉 文献 Abstract
地域地質研究報告(昭和 50 年稿)
5万分の1図幅
青森(5) 第 12 号
脇野沢地域の地質の研究は, 昭和 34 年度から2カ年間, 北隣の 陸奥川内 地域と共に野外調査を行い, そのご中断していた。 昭和 42 年, 通商産業省が実施した金属鉱床密集地域の広域調査に筆者も参加した。 この報告は筆者の研究のほか, 広域調査の結果によるところが大きく, とくに重力調査と音波探査の各図は, これを実施した金属鉱業事業団(当時の金属鉱物探鉱促進事業団)の許可を受げて 掲載したものである。
昭和 34 年当時, この研究に対して種々の教示をあたえられた 東京科学博物館(当時の資源科学研究所)の桑野幸夫博士, 広域調査の際に指導をいただいた 岩手大学の高橋維一郎教授をはじめ下北班の各位, および, 調査のはじめから助言をいただいた 東北大学の北村信教授と岩手大学の多田元彦博士らの方々に深謝の意を表する。
この地域は陸奥湾をはさんで, 下北半島の頭部の脇野沢付近と 夏泊 半島の北端の狭い地域に分かれている。
脇野沢付近は, 北隣の陸奥川内地域から続く標高 200 m 前後の山地が 平館 海峡と陸奥湾に面している海岸線まで拡がり, 平地は殆んどない。 平館海峡に面している急な崖は, 佐井 地域から陸奥川内地域を経て この地域まで続く南北方向の断層に沿ってできた断層地形の一部で, この断層を下北海岸断層と呼んでいる。 この懸崖に沿って東側に陸奥川地域から延びている南北方向の稜線がある。 この稜線上の [ 標高 304.4 m の ] ガンケ山付近がこの地域ではもっとも標高が高い。
夏泊半島側は北端の島, 大島と, 椿山 と呼ばれている丘陵と, その南の海岸線とからなっている。 大島は干潮時には半島とつながる小島で, 石英安山岩の貫入岩体からなり, 周囲の新第三紀層の頁岩のなかで侵食から取残されてドーム状の形を示している。 この海岸は景色が美しく, 県立公園に指定されており, 椿山は椿の自生林の北限として知られている。
この地域は東北日本のいわゆるグリーンタフ地域の一部である。
この地域の北の陸奥川内地域には, 先第三系と石英閃緑岩を覆って, グリーンタフ地域に特徴的な 新第三紀中新世の変質して緑色を帯びている火山岩類が広く分布している。 しかし, この地域のうち脇野沢側にはその上部の一部が分布しているに過ぎない。 この報告では, 陸奥川内地域内の層序を参考として この地域内に出て来る地層に限って述べ, 全般的な層序については「陸奥川内地域の地質」(上村, 1975)によることとした。 この地域の層序を総括して第 1 図に示している。 なお, 夏泊半島側には南隣の 浅虫 地域から拡がっている新第三系の一部が分布しているが, 分布がせまく, また模式地は浅虫地域にあるので, 脇野沢側とは切離して記すこととする。
| 時代 | 地層名 | 模式柱状図 | 岩相 | 火成作用 | ||||
| 第四紀 |
完新世
~ 更新世 | 冲積層 | 砂・礫・粘土 |
流
紋 岩 ↓ |
玄
武 岩 ↓ | |||
| 段丘堆積層 | 砂・礫 | |||||||
| 新第三紀 | 中新世 | 脇野沢安山岩類 | 安山岩凝灰角礫岩 | |||||
| 石英安山岩凝灰角礫岩 | ||||||||
| 小沢層 | 塊状泥岩 | |||||||
|
硬質頁岩(安山岩熔岩・
凝灰岩を挟む) | ||||||||
| 玄武岩枕状溶岩 |
↑
石 英 安 山 岩 |
↑
安 山 岩 | ||||||
| 硬質頁岩 | ||||||||
| 檜川層 |
流紋岩~石英安山岩質
凝灰岩・凝灰角礫岩・ 熔岩(頁岩を挟む) | |||||||
| 時代 | 地層名 | 模式柱状図 | 岩相 | |
| 新第三紀 | 中新世 | 間木層 | 硬質頁岩 (細粒凝灰岩を挟む) | |
| 石英安山岩貫入岩 | ||||
層序 : この地域で最下位の 桧川 層は [ 本図幅の北隣の ] 陸奥川内地域に広く分布している。 陸奥川内地域では石英安山岩ないし流紋岩の火山砕屑岩を主とし, 同質の [ 石英安山岩ないし流紋岩 ] 溶岩, 安山岩と玄武岩の溶岩, 硬質頁岩などを挟む地層である。 しかし, この地域では平館海峡に面している 穴間 付近に上部の安山岩の溶岩と軽石凝灰岩がわづかに分布しているに過ぎない。
小沢 層は脇野沢川以東におもに分布している。 陸奥川内地域では桧川層の上に整合に重なる地層で, 下部および上部層に分かれている。 下部層は下から硬質頁岩, 酸性凝灰岩と石英安山岩溶岩, 硬質頁岩, 玄武岩と安山岩の溶岩, 硬質頁岩, 上部層は塊状泥岩, 酸性凝灰岩のそれぞれ順に重なっている。 この地域では下部層の石英安山岩より上部と上部層の塊状泥岩が分布している。
脇野沢 安山岩類は陸奥川内地域とこの地域の 口広川 の河口から 松ヶ根 [ ← 松ヶ崎 ? ] までの海岸線付近では小沢層の上に整合的に重なっている。 しかし, この付近から脇野沢川上流を経てその西に向うに従い, 小沢層の下部と桧川層の上に直接オーバーラップしている。 最下部には一部では石英安山岩の火山砕屑岩がみられるが, おもに安山岩の凝灰岩をはさむ凝灰角礫岩と溶岩とからなっている。
夏泊半島の北端では, 新第三系は脇野沢側の小沢層にあたる 間木 層と, これを貫く石英安山岩とからなっている。 間木層はおもに硬質頁岩からなっており, 海岸に, また, 石英安山岩は先端の大島にそれぞれ分布しているが, いずれもこの地域では分布は狭い。
第四紀の地層は海岸段丘堆積物と沖積層があるが, いずれも分布は狭い。
対比 : この地域と陸奥川内地域の新第三系の地層名の比較と近隣の地域の層序との対比, および秋田県 男鹿地方の標準的年代層序区分との関係を第 1 表に掲げている。 ただし, 表のうち太線で囲む部分 [ = 陸奥川内・脇野沢地域の脇野沢安山岩類, 小沢層, 檜川層 ] がこの地域に分布している地層である。 夏泊半島の間木層はこの表に加えていないが, 北端に分布している部分は下北半島の小沢層の下部にほぼ相当する。
| 男鹿半島 |
津軽半島北部
上村ほか (1959) |
陸奥川内・
脇野沢地域 上村 (1974) |
陸奥川内地域
金属広域 下北班 (1969) |
陸奥川内
西半部
桑野・鈴木 (1962) |
佐井・
大間地域 上村 (1962) |
大畑地域
上村・斎藤 (1957) | ||||||||
| … | ||||||||||||||
地質構造 : この地域を含む下北半島の頭部の新第三系の地質の概略と地質構造を第 2 図に示している。 脇野沢地域の新第三系は, 大局的には その北の陸奥川内地域の北部に分布している基盤岩類を取囲む緩い盆状構造 [ = 牛滝盆状構造 ? ] の南にあり, これと調和した構造を示しているが, 脇野川の流域に軸があり, 南に向って沈む半盆状の構造があり, その中心部に脇野沢安山岩類が広く分布している。 西の穴間・ アモ十太 岬・屏風岩を結ぶ海岸線は 100 m 以上の高さの懸崖が発達しており, その西の海域下に陸奥川内地域から延びており, 後述の音波探査で確められている下北海岸断層が覆在している。
夏泊半島の北端の間木層は, この地域ではわずかな間で背斜と向斜を繰返えしている。
下北半島の頭部の等重力線図(ψ = 2.4 [ ← 仮定密度が 2.4 g / cc ? ] , 1 mgal 間隔)を第 3 図に示している。 この重力分布図は金属広域調査の一環として 1969~1970 年に調査作製されたものである。 この地域の重力分布はおおむね地質構造と調和して, 南に向って沈む半盆状のパターンを示してる。 脇野沢の西の 寄浪 ~ 蛸田 間は, その周囲に比較するとやや重力の値が高いが, この付近には半ドーム状の構造があり, 脇野沢安山岩類の下から小沢層の玄武岩と硬質頁岩が露出しており, これも地質構造と調和している。
金属広域調査の一環として, 通商産業省(1970)は脇野沢側と夏泊半島側との間の陸奥湾の音波探査を実施した。 この結果と陸域で推定された基盤深度とによって求められた基盤深度分布を 第 4 図に示している。 陸奥湾内の海底は 蠣崎 の南の, 図のほぼ中央部に基盤の形が示している盆状の構造があり, また, 夏泊半島の北端よりやや東と 脇野沢側の蛸田・寄浪付近を結ぶ北西 - 南東方向の背斜構造が認められる。 盆地の東北東と寄浪の南の背斜の軸部には, 破線で示されている 層状の堆積岩のパターンを切る火成岩体とみられる円形または楕円形のパターンが認められる。 前に述べた下北海岸断層は, その南の延長が音波探査によって確認されており, そのほかに北西 - 南東方向と東北東 - 西南西方向の断層が認められている。 湾内ではボーリングは未だ行われていないが, 音波探査の結果からみると, 新第三系は下北半島側より厚く, また基盤の浅い背斜かドーム構造の軸部かその近くに火成岩が分布しているものと推定される。
|
命名 : 北村信ほか(1959)。
模式地 : 下北郡 川内町 桧川の中・上流(陸奥川内図幅地域内)。
分布 : 脇野沢村 穴間付近に小範囲分布する。
層厚 : 本層は, 「陸奥川内地域の地質」(上村, 1975)において述べているように, いくつかの火山性盆状構造に分かれて, その中心部では厚く堆積している。 盆状構造の形成は時間とともに位置が少しづつずれているため, いわゆる将棋倒し構造を示しており, 層厚は積算すると非常に厚くなる。 しかし, 実際はそれ程厚くなく, 陸奥川内地域のボーリングでは [ 蠣崎の北東方の ] 長浜付近で 730 m [ ← ボーリング 44 EASM-2 号の試料より ] , [ 陸奥川内図幅地域の北東部の ] 和白沢 付近で 420 m [ ← ボーリング 44 EASM-1 号の試料より ] であり, この地域では穴間付近において上部約 200 m が露出している。
岩相 : この地域に分布している桧川層は, 下から安山岩溶岩 [ Ha ] , 軽石凝灰岩 [ Ht ] の順に重なっている。
安山岩の溶岩は, 大部分は黒色の一部 緑色化した岩石で, 柱状節理が発達している。 鏡下で観察した結果では普通輝石しそ輝石安山岩である。 また, 軽石凝灰岩は青灰色, 粗鬆な岩石で, 軽石礫のほか少量の石英と斜長石を含んでいる。
層位関係 : 本層の下位の 金八沢 層は陸奥川内地域には広く分布しているが, この地域には露出していない。 陸奥川内地域では本層の下部は金八沢層の上に整合的に重なっており, 場所によっては中部の層準がオーバーラップしている。
化石 : この地域では, 本層から化石は発見されていない。 陸奥川内地域でこの地域に近い長浜のボーリング(44 EASM-2 号)から Martinotiella communis, Haplophragmoides sp., Spirosigmoillinella compressa, Bathysiphon sp., またまれに Sagarites sp. がみつかっている。
時代 : 本層はその岩相から, 西隣の津軽半島北部に分布する長根層から小泊層の下部までと同時異の関係にある 三厩 流紋岩類と 母衣月 火山岩類に対比することができ, 男鹿半島の西黒沢層か, 西黒沢層と女川層の下部と同時期の中新世中期の地層と考えられる。
命名 : 北村信ほか(1959)。
模式地 : 下北郡 脇野沢村 小沢。
分布 : 脇野沢村 松ケ崎の東から小沢の沢口までの海岸線とその北の丘陵, 脇野沢の西方の 寄浪 ~ 蛸田 間の海岸線, および平館海峡に面した穴間付近に分布している。 ただし後2者は分布が著るしく狭い。
層厚 : 本層は, 陸奥川内地域に分布している部分を含めると, 小沢からロ広川の下流までの間では 300 m の厚さをもっている。
岩相 : 本層は陸奥川内地域では上部層と下部層に分けられている。 [ 陸奥川内地域の ] 下部層は下から硬質頁岩, 酸性凝灰岩と石英安山岩および硬質頁岩, 安山岩溶岩, 硬質頁岩の順に, また, [ 陸奥川内地域の ] 上部層は塊状泥岩, 酸性凝灰岩の順に重なっている。 この地域では, 松ケ崎の東から小沢までの間には下部層の石英安山岩より上の層 [ = 石英安山岩(Kd), 硬質頁岩(Ks), 安山岩溶岩(Ka) ] と上部層の塊状泥岩 [ ← これも Ks ] が分布しており, 上部層の酸性凝灰岩は塊状泥岩と脇野沢安山岩類の間に収れんし分布していない。
松ケ崎の東~小沢間の地域では 最下部の石英安山岩 [ Kd ] は小沢から蠣崎までの海岸沿いとその北の丘陵に露出している。 この岩石は陸奥川内地域では一部が下位の桧川層のなかに貫入しているが, この地域では溶岩流だけが分布している。 本岩は灰白色 ガラス質の石基中にやや密に石英・斜長石などの斑晶を含む岩石である。 鏡下では次のようである。 斑晶はおもに石英・斜長石・普通角閃石からなり, ほかに黒雲母の微斑晶が認められる。 石英と斜長石はいずれも 5.0~2.0 mm 大のものがかなり密に含まれている。 普通角閃石は 3.0 mm 程度の柱状のものである。 石基はガラスが脱ガラス化したものとみられる隠微晶質組織を示し, 流理構造を示す部分がある。
石英安山岩の上位の硬質頁岩 [ Ks ] は数 cm ないし 20~30 cm の板状の層理をもつ珪質の岩石で, 新鮮な部分では暗灰色, 表面は茶褐色に汚れている。 硬質頁岩のあいだに挾まれている凝灰岩は, 内部は青灰色, 表面は風化により淡黄色を示す粘土質の岩石で, 少量の石英・斜長石粒を含んでいる。
安山岩の溶岩 [ Ka ] は数枚の溶岩流からなっている。 安山岩とその上の硬質頁岩 [ Ks ] との関係は口広川の河口付近で観察することができる。 ここでは頁岩が安山岩の最上部のこまかい割目をうめている。 これは 一見 頁岩のなかに安山岩が迸入したように見えるが, 頁岩は安山岩の熱の影響を全く受けておらず, 安山岩の溶岩流が固化したあとで頁岩が堆積したことを示している。 安山岩は柱状節理の発達した黒色の普通輝石しそ輝石安山岩である。 鏡下の観察では, 斑晶は 3.0~5.0 mm と 0.5 mm 前後の斜長石と, 2.0 mm かそれ以下の普通輝石としそ輝石からなっている。 石基は間粒状組織を示し, 斜長石・単針輝石・斜方輝石・磁鉄鉱および少量のガラスからなっている。 そのうち斜方輝石は単斜輝石の反応縁によって取巻かれており, 久野(1954) [ 以下の [注] 参照 ] による Ⅴd-c 型の安山岩と同じである。 二次的に斑晶斜長石と石基のガラスのそれぞれ一部が モンモリロン石様の粘土鉱物に置換されているが, 桧川層の火山岩類に比較すると新鮮である。
上部層の塊状泥岩 [ Ks ] は暗褐色の岩石であるが, 表面は風化により脱色し, 黄褐色に汚れている。
寄浪~蛸田間には 寄浪と蛸田に分かれて小ドーム構造があり, その軸部に脇野沢安山岩類 [ Wd ] の下から本層が小範囲露出している。 下から安山岩の溶岩 [ Ka ] , 玄武岩の溶岩 [ Kb ] , 硬質頁岩 [ Ks ] の順に重なっている。
最下部の安山岩溶岩 [ Ka ] は, 前記の小沢~口広川の河口間に分布している安山岩に似た 柱状節理の発達した黒色の普通輝石しそ輝石安山岩である。
下部の玄武岩溶岩 [ Kb ] は水中で形成されたことを示す枕状溶岩で, 最も典型的なものは寄浪の南西の海岸線で観察することができる(第 5 図)。 この岩石は, 白色の杏仁状球顆を多量に含む 1 m 大までの暗緑色の楕円体と, その間をうずめる赤褐色の細粒の部分とからなっている。 楕円体はその周縁部に約 1 cm の厚さのガラス質の急冷相が認められるが, それ以外は結晶質である。 いずれも変質作用を受けており, 脆弱な岩石である。 鏡下の観察によれば, 斑晶は斜長石・普通輝石・橄欖石とからなっている。 しかし, 普通輝石を除いては, 斜長石はモンモリロン石様の粘土鉱物と沸石に, また, 橄欖石は鉄サポナイトにそれぞれすべて置換えられている。 石基は間粒状組織を示し, 斜長石・普通輝石・鉄鉱物およびガラスからなっている。 しかし, 普通輝石を除いては, すべて鉄サポナイトに置換えられている。 白色の杏仁状球顆は, 緑色の殻の部分と, 内部の放射状集合を示す白色の沸石とからなっている。 緑色の部分はガラスを置換えた鉄サポナイトであり, 白色の沸石はソーダ沸石とトムソン沸石との針状結晶が平行連晶をなしているものである。
硬質頁岩 [ Ks ] は小沢付近の下部層の硬質頁岩と同じである。
穴間付近 の硬質頁岩 [ Ks ] は珪質で燧石様の岩石で褐色であるが, 表面は脱色して茶白色を示している。
層位関係 : 本層 [ Ks ] と下位の桧川層 [ Ha and Ht ] が接しているのは, この地域では穴間付近だけである。 ここでは構造的に差異がない。 陸奥川内地域でも同じように構造的な差異はみられないが, 地域の南東部では本層の上部層が桧川層のうえに直接オーバーラップしている。 したがって, 本層の下部層と桧川層との間にも若干の堆積間隙が存在すると予想されている。
化石 : この地域の小沢層からは化石は発見されていない。 この地域に近い陸奥川内地域の長浜付近 [ ← 蠣崎の北東方 ] のボーリング 44 EASM-2 号の深度 342.30~342.40 m の本層の泥岩から有孔虫化石 Martinottiela communis, Haplophragmoides sp., Cylamina cf. ezoensis, Spirosigmoilinella compresa が発見され, 通商産業省(金属広域下北班)(1970)により報告されている。
時代 : 本層は下部層の硬質頁岩 [ Ks ] と上部層の塊状泥岩 [ Ks ] の岩相と有孔虫化石などから, 津軽半島の北部の小泊層, 男鹿半島の女川層と船川層に対比され, 中新世中・後期の地層である。
命名 : 上村不二雄(1975)。
模式地 : 下北郡 脇野沢村 松ケ崎から同村 脇野沢付近までの海岸。
分布・層厚 : 下北半島側の脇野沢川を中心に, おもにその西側に広く分布している。 北隣の陸奥川内地域を併せると, 層厚は 500 m 以上である。
岩相 : 本安山岩類は, 場所によって石英安山岩の溶岩あるいは凝灰角礫岩 [ Wd ] からはじまり, 安山岩の凝灰角礫岩 [ Wa ] に移化しているところがあるが, おもに安山岩の凝灰角礫岩からはじまり同質の凝灰岩と溶岩をはさんでいる [ Wa ] 。
石英安山岩の凝灰角礫岩 [ Wd ] からはじまっているのは西海岸のアモ十太岬, また, [ 安山岩の ] 溶岩と凝灰角礫岩 [ Wa ] からはじまっているのは陸奥湾に面している寄浪~蛸田間である。
アモ十太岬付近の石英安山岩の凝灰角礫岩 [ Wd ] は灰白色の基質中に黒色の人頭大, またはそれ以上の大きさの本質火山礫ないし火山岩塊を多量に含むものである。
礫の石英安山岩は石英・斜長石・角閃石などの斑晶を密に含むものである。 鏡下の観察によると, 斑晶は石英・斜長石・普通輝石・しそ輝石・角閃石・黒雲母からなり, ほかに捕獲結晶とみられる虫食い状に汚れた斜長石を少量含んでいる。 これらのうち角閃石と黒雲母は周縁部か, あるいは殆んど全部がオパサイト化している。 石基はガラス基流質組織を示し, 斜長石・単斜輝石・斜方輝石・磁鉄鉱および褐色のガラスからなっている。
また, 寄浪~蛸田間には真珠岩質の石英安山岩の溶岩と凝灰角礫岩 [ Wd ] が分布している。 この凝灰角礫岩には安山岩の溶岩を挾んでいる。 礫の石英安山岩は灰白色の基質中に灰白色の多斑晶質岩石を含むものである。 鏡下の観察では, 斑晶は石英・斜長石・角閃石・普通輝石およびしそ輝石からなっており, 石英に較べて斜長石が多い。 石基はガラス質で, 一部は脱ガラス化している。 なお, 口広川の河口より南西の松ケ崎付近に分布している本安山岩類の最下部には, 安山岩凝灰角礫岩のなかに安山岩塊とほぼ等量の石英安山岩塊を含むものがある(第 6 図)。
主体をなしている安山岩の凝灰角礫岩は, 黄灰色の基質中にふつうは人頭大以下の黒色の安山岩礫を多量に含むものである。 礫のなかには異質礫をまったくあるいは殆んど含まない。 これらのなかには溶岩が水中を流れてできた自破砕溶岩とみられるものがあるが, 正規の溶岩から移化しているところは見られなかった。 層理は明らかではなく, 遠望で確かめ得る程度である。 溶岩は黒色ないし暗灰色で柱状節理が発達するもの, 塊状で, 上部は空隙に富むものなどがある。 凝灰角礫岩の礫と溶岩はいずれも普通輝石しそ輝石安山岩で, まれに石英の斑晶を含むものがある。 溶岩の安山岩を鏡下で観察した結果では, 斑晶は 長さ 5.0 mm の斜長石, 3.0 mm の普通輝石および 5.0 mm のしそ輝石からなっており, まれに少量の石英を混えている。 石基は 斜長石・単斜輝石・斜方輝石・磁鉄鉱と少量のガラスからなる塡間状組織を示している。
火山岩は一般に下位の桧川層に較べて新鮮であり, しそ輝石の一部に劈開に沿い鉄サポナイトに変化しているものが見られる程度である。
層位関係 : この地域での下位の小沢層と本安山岩類との関係は, 口広川の河口付近と寄浪~蛸田間で直接 観察できる。 前者では 小沢層の上部の塊状シルト岩の上に 松ケ崎付近の石英安山岩の異質礫を含む安山岩凝灰角礫岩が覆い, また, 後者では 酸性凝灰岩をはさむ硬質頁岩の上に石英安山岩の溶岩と凝灰角礫岩とが重なっており, 両者の間には構造的差異は認められない。 口広川の河口の場合は, 北方の 大間 付近の例からほぼ整合とみられるが, 脇野沢川上流などでは本安山岩類は桧川層まで直接 覆っており, 下位の地層の上にオーバーラップしているものと考えられる。
時代 : 本安山岩類は下北半島の佐井・大間図幅地域の 易国間 安山岩類と同じであり, また津軽半島北部の小泊層の上部から塩越層までと同時期の 今別 安山岩類に対比され, 中新世後期の火山岩類である。
命名 : 岩井淳一・浅野清 (1948) [ 以下の [注] 参照 ] 。
模式地 : この地域の南南東の東津軽郡 小湊町 間木付近(5万分の1地形図「浅虫」)。
分布 : 椿山およびその北の海岸線に分布している。
層厚 : 模式地付近では 400 m であるが, この地域ではその一部約 150 m が分布しているに過ぎない。
岩相 : 下北半島側の小沢層の下部と同じであり, 細粒の凝灰岩をはさむ硬質頁岩からなっている。
硬質頁岩は厚さ 10~20 cm の板状層理の発達した暗灰色の岩石である。 凝灰岩は粘土化しており, 内部は青灰色であるが, 表面は風化により黄白色に変っている。 硬質頁岩のなかには, ところによって径 30 × 100 cm の楕円形の断面をもつ泥灰質団球を含む。
層位関係 : 本層は模式地付近では下位の 東滝 層(下北半島の 金八沢 層上部と桧川層に相当する)の上に整合に重なっている。
時代 : 男鹿半島の女川層に対比され, 中新世中期の地層といわれている。
本岩は間木層の硬質頁岩を貫いて夏泊半島の北端の大島に分布している(第 7 図)。 灰色の, 斑晶の多い粗粒の岩石である。
鏡下では, 斑晶は石英・斜長石・普通輝石・しそ輝石・角閃石および黒雲母からなっている。 斜長石はもっとも多く, 3.0 mm 程度, 曹長石化している。 普通輝石は 2.0 mm, しそ輝石は 2.0~3.0 mm 程度で, しそ輝石はすべて緑泥石化している。 角閃石と黒雲母はいずれも量は少ない。 そのほかに副成分鉱物として燐灰石が含まれている。 石基は微晶質で石英が多い。 二次鉱物として緑廉石・緑泥石・方解石・石英・曹長石などが認められる。
この地域では, 脇野沢付近に海岸段丘が認められる。
海岸段丘は標高 15 m 付近にあり, 堆積層は厚さ 5 m 以下で, おもに砂および礫層からなっている。 脇野沢付近の段丘面は, 北村ほか(1972)によれば, 著者の1人の中川久夫は川内付近に標式的発達する川内段丘の一部としており, 中位段丘として区分している。
沖積層は脇野沢川沿いと海岸に分布しているが, 分布はきわめて狭い。
おもに砂および礫層からなっている。
瀬野川目 鉱泉 : 脇野沢村 瀬野より瀬野川の上流約 1.5 km の地点にある。 この付近の地質は脇野沢安山岩類の凝灰角礫岩 [ Wa ] からなっており, 鉱泉はこの割目から湧出している。
水温 16 ℃, pH 6.2 を示し, 主類含有弱食塩泉であり, 浴舎があり, 農閑期に利用されている。
QUADRANGLE SERIES
SCALE 1 : 50,000
Aomori (5) No. 12
By Fujio UEMURA (Written in 1975)
The mapped area is situated at the northem part of the Green Tuff Region of Northeast Honshu and comprises two parts, the south-western corner of the Shimokita Peninsula and the northern end of Natsudomari Peninsula which are separated by Mutsu Bay. Geologically, both of them are occupied by the similar Miocene volcanics and sediments. The stratigraphic sequence is summarized in Table 1.
| Age | Stratigraphy | Rock facies | |
| Quaternary | Holocene | Alluvium | Sand and gravel |
| Pleistocene | Terrace deposits | Sand and gravel | |
| Neogene | Miocene | Wakino-saka Andesite |
Andesite tuff-breccia
with inetrcalations of lava ~ Dacite tuff-breccia and lava |
| Kosawa Formation |
Massive mudstone
Hard shale Andesite lava Basalt pillow lava | ||
| Hinoki-gawa Formation |
Pumice tuff
Andesite lava | ||
| Age | Stratigraphy | Rock facies | |||
| Neogene | Miocene | Maki Formation | Hard shale with fine tuff | ||
| Dacite | Dacite intrusive rock | ||||
|
The Neogene consists of the Hinoki-gawa Formation, the Kozawa Formation and the Wakino-sawa Andesite in ascending order, the last of which is the most widespread in this area.
The Hinoki-gawa Formation which is widely distributed in the neighbouring Mutsu-kawauchi area is exposed only at Anama of the Wakinosawa village and is composed of black or greenish andesite lava and bluish gray pumice tuff. Most of these rocks are characterized by the alteration such as argillization.
The Kozawa Formation is developed on the coastal areas, east of Matsuga-saki and near Kinami and Takoda. This formation is composed of the lower hornblende dacite lavas, the middle hard shale with the intercalations of hypersthene - augite andesite lavas and the upper massive mudstone in Matsuga-saki of basalt pillow lava and hard shale in Kinami and only of siliceous shale in Takoda areas. These rocks are weakly altered. Fossils have not been found in the formation of this area, but Haplophragmoides cf. emaciation and others had been discovered from the hard shale of the lower part of the same formation in the Mutsu-kawauchi area.
The Wakino-sawa Andesite consists mostly of andesite tuff-breccia which is intercalated with lavas, but in the areas as Anama of the westrn coast and Takoda of the southern coast, the basal part is dacite lava and tuff-breccia. The main rock type of essential blocks in the tuff-breccia and of lavas of the former is unaltered hypersthene - augite andesite.
In the northern end of the peninsula, the Maki Formation which is contemporaneous with the Kozawa Formation and a dacite intrusive rock is distributed.
The Maki Formation is composed of hard shale and fine tuff. The dacite intrusive forms Ōshima Island. It is biotite - hornblende - hypersthene - augite dacite, abundant in phenocrysts.
The Quaternary consists of the terrace and the alluvial deposits. The coastal terraces develop in the area which faces the Mutsu Bay and in the vicinity of the Wakino-sawa village, respectively. The alluvium is distributed in narrow areas along the Wakinosawa-gawa and other rivers.
The Seno-kawa-me Mineral Spring is located at a point 1.5 km upstream from the mouth of the Seno-kawa (river). It gushes from a fissure in tuff-breccia of the Wakino-sawa Andesite and is a weak salt spring of 16 ℃.
昭和 51 年 8 月 10 日 印刷 昭和 51 年 8 月 16 日 発行 著作権所有 工業技術院 地質調査所 (C) 1976, Geological Survey of Japan