04088_1970
地域地質研究報告
5万分の1図幅
札幌(4) 第 88 号
北海道大学 勝井義雄
通商産業技官 佐藤博之
昭和 45 年
地質調査所
目次 I. 地形 II. 地質 II.1 概説 II.2 東山外輪山 II.2.1 東山下部熔岩 II.2.2 東山上部熔岩 II.2.3 東山岩脈 II.3 西山外輪山 II.3.1 西山下部熔岩 II.3.2 西山中部熔岩 II.3.3 西山上部熔岩 II.3.4 西山岩脈 II.3.5 西山抛出物 II.4 中央火口丘 II.4.1 中央火口丘熔岩 II.4.2 側火口熔岩 II.5 海浜砂礫層 III. 渡島大島の火山活動記録 文献 Abstract 巻末図版(Plates I~IV)
地域地質研究報告
5万分の1図幅
(昭和 44 年稿)
札幌(4) 第 88 号
本図幅の野外調査は昭和 30 年 6 月に勝井によって行なわれ, その結果はすでに KUNO 10) によって引用されている。 昭和 42 年 7 月に, 勝井および佐藤は前回の補足調査を行ない, 引きつづいて内業は, おもに北海道大学において行なわれた。 この報告は以上の成果をとりまとめたものである。
なお, 昭和 42 年の調査は北海道開発庁費によった。
渡島大島は, 北海道 渡島半島の西海岸から約 50 km 西に離れた, 日本海上に浮ぶ火山島で, 北緯 41°30', 東経 139°22' に位置する。 漁労のために短期間漁民が仮泊するほかは, 定住民のいない孤島である。
渡島大島は, 東西約 4 km, 南北約 3.5 km で, 東に頂点をもつ一見 二等辺三角形のような形をしている。 最高点は東山の頂上で海抜 714 m を示し, 一般に山腹は急斜面をなしており, 平地はほとんど発達しない。 海底地形図から判断すると, この火山島は, 海面下 1,000~1,200 m からそびえる, かなり巨大な火山であり, その基底直径は約 12 km に及んでいる。 海面下の山体傾斜は一般に緩く, 10~15°であるが, 海面上では 30~40°に及ぶ。
島の東半部は 東山 と呼ばれ, 山頂部には西へ開く外輪山があり, その東壁が海抜 714 m で, この島の最高点となっている。 東山の東斜面の侵食はあまり進んでいないが, 北斜面および南斜面は海食によって海岸線が後退し, たえず崩壊が行なわれている。 東山の外輪山は, 直径 1 km 以上(約 2 km ?), 東壁からの深さ 200 m 以上のカルデラを抱いている。 しかし, このカルデラの西半部は, 西山の成長により, その噴出物によって完全に被覆されている。
西山 の山頂部には北へ開く外輪山があり, その南東壁がもっとも高く, 海抜 708 m となっている [ 以下の [注] 参照 ] 。 西山外輪山は, 直径約 1.3 km, 南東壁からの深さ約 160 m のカルデラを抱いている。 西山も侵食はかなり進み, とくに西腹には熔岩流の累重が観察される。 南側の 難破 岬を構成する熔岩流は, 一枚の熔岩流としては本島で最大の規模を有し, 山腹を流下して海中へ流入した様子がうかがわれる。 すなわち, 山腹では中央の流動部が流下したために溝状となり, 両外縁は早期に固化したために熔岩堤をなしている。 一方, 海抜 200 m 以下では逆に中央部がやや高く, 左右に拡がり熔岩デルタが形成されている。
西山カルデラのほぼ中央に新しく中央火口丘(海抜約 665 m)が生じ, カルデラ底は中央火口丘の熔岩・抛出物で完全に充たされている。 中央火口丘は比高約 200 m に達し, その頂上には径 250 × 300 m, 深さ約 70 m の火口がある。 中央火口丘の東麓と西麓には, 多量の熔岩流を流出した側火口がある。 これらの熔岩は典型的なアア熔岩で, 北へ流れて海岸に達している。 東側の熔岩流はすでにやや波食をうけているが, 西側の側火口から流出した熔岩流はもっとも新しく, 海中に突出してヤケクズレ岬を造っている。
海岸の多くは海食を強く蒙って断崖となっており, 浅い入江として, アイ 泊 ・ヤマセ泊などがあるにすぎない。 海浜砂礫層はこの2カ所および東岸の 日方 泊に狭少に発達するのみである。 地表を流れる川は皆無で, 流水による侵食はまったくみられない。 水の便は非常に悪く, わずかにアイ泊で, 熔岩流の空洞中にしたたり落ちる水を集めて飲料に供することが出来るにすぎない。
渡鳥大島は全般に新しい火山噴出物によって覆われ, 地形も急峻であるため, 島内の植生は非常に貧困であり, 植物群落も比較的簡単である。 もっとも新しい熔流岩の上にはコケ植物群落が現われ, ついで比較的新しい砂礫地などではミヤマ クロスゲを主とする群落がみられ, 土壌化が進むにつれて, やや古い熔岩流の上などでは, ヤマブキ ショウマ・マイズル ソウ群落が発達している。 さらに冬期の季節風的な北西風を受けることもなく, しかも土壌の厚いところ, とくに東山東斜面のような古い面には, エゾアザミ - エゾニウ, エゾニウ - エゾススキ群落や, 灌木植物群落の発達がみられる 7) 。 以上のようにこの島の植物群落は, 火山形成史の上からみても非常に興味がある。
渡島大島は, 海面下 1,000~1,200 m からそびえる巨大な成層火山の頂上部が, 海面上に突出しているものであって, 全島が火山噴出物から構成されている。 その他には, 海岸に円礫・砂からなる海浜砂礫層がわずかに発達するにすぎない。 海岸段丘の発達はまったく認められない。
海面上に突出している火山体は, すでに地形上からも明らかなように, 3重の火山構造をもち, 東山外輪山・西山外輪山・中央火口丘の順に形成された。 これらはいずれも, 熔岩および砕屑物を交互に噴出して発達した成層火山である。
渡島大島火山の形成年代については, 孤島のことでもあり, 時代推定の証拠に乏しい。 東方の渡島半島の表層には, 渡島大島火山起源と考えられる橄欖石・角閃石を含む火山灰層が数層分布している。 しかし, 火山発達史とこれらの火山灰層との対比はまだ行なわれていない。
渡島大島火山の基盤は不明であるが, 熔岩中に含まれる捕獲岩類や異質抛出物から推察すると, おそらく渡島半島にみられる古生層と, これを貫く花崗岩質深成岩類が基底に発達していると考えられる。
渡島大島の海面上に露出する部分でもっとも古い山体, すなわち東山は, かなり侵食が進んでいるとはいえ, 完全に火山形態をとどめている。 近隣の解析の進んだ 渡島小島 11) よりは, はるかに遅れて生成したものと考えられる。 したがって, いまのところ東山の形成年代を洪積世末期~冲積世初期と推定しておく。
東山の南・北麓の侵食が進み, 海岸線がかなり後退したあと, 西山が形成されている。
西山では岩石の風化はほとんど進んでいない。 最後に生じた中央火口丘は, 現在のところ弱い噴気活動を続けているにすぎないが, 18 世紀にはかなり活発な活動を行なったことが記録されている。
渡島大島火山の岩石は, 全般を通じて, 斑状の玄武岩・安山岩からなり, 一般にアルカリに富み, 近隣の渡島小島 11) をはじめ, 日本海側の諸火山の岩石と類似した性質を示す。
玄武岩はシリカに不飽和で, 一般に石基鉱物の結晶作用を通じて橄欖石と単斜輝石とが平行晶出を続け, 終末期に珪酸鉱物が晶出せず, アルカリ長石の現われるのが特徴である。 一方, 安山岩はシリカに過飽和で, 斑晶として通常は角閃石を含み, 石基形成期には橄欖石の晶出がみられなく, 一般に単斜・斜方の両輝石が平行晶出を行ない, 終末期にはアルカリ長石と珪酸鉱物とが現われる。
抛出物および熔岩中には, ホルンフェルス・チャート・閃緑岩・花崗岩などの基盤岩岩片のほかに, 角閃石斑糲岩・ダン橄欖岩などの深成岩様捕獲岩~異質抛出物がしばしば発見される。 これらの母岩は大部分が安山岩質である。
渡島大島の地質を総括すれば, 第 1 表のとおりである。
| 現世 | 海浜砂礫層 | (B) | ||
| 中央火口丘 | 側火口熔岩 | (Cp) | ||
| 中央火口丘熔岩 | (Cc) | 1741~42, 1759, 1768, 1790 年の歴史時代噴火 | ||
| 西山外輪山 | 西山抛出物 | (Ne) | カルデラ形成, 760 ± 70 年 B.P. | |
| 西山上部熔岩 | (Nu) | 岩脈(Nd)の迸入 | ||
| 西山中部熔岩 | (Nm) | |||
| 西山下部熔岩 | (Nl) | |||
| -- ? -- |
海食
カルデラ形成 岩脈(Hd)が放射状に迸入 | |||
| 更新世後期 | 東山外輪山 |
東山上部熔岩
東山下部熔岩 |
(Hu)
(Hl) | |
| Samples | 1 | 2 | 3 | 4 |
| SiO2 | 61.72 | 48.89 | 55.56 | 49.90 |
| TiO2 | 0.37 | 1.02 | 0.61 | 1.09 |
| Al2O3 | 17.71 | 15.00 | 18.28 | 16.05 |
| Fe2O3 | 1.12 | 2.92 | 2.46 | 5.03 |
| FeO | 4.33 | 6.41 | 5.11 | 5.55 |
| MnO | 0.10 | 0.25 | 0.19 | 0.14 |
| MgO | 1.83 | 10.60 | 4.05 | 7.03 |
| CaO | 5.19 | 10.91 | 8.57 | 10.51 |
| Na2O | 3.21 | 1.95 | 2.67 | 2.15 |
| K2O | 3.28 | 1.13 | 1.80 | 1.91 |
| H2O (+) | 0.83 | 0.64 | 0.62 | 0.26 |
| H2O (-) | 0.16 | 0.12 | 0.13 | 0.06 |
| P2O5 | 0.20 | 0.05 | 0.22 | 0.23 |
| Total | 100.05 | 99.89 | 100.27 | 99.92 |
|
C. index
[ 色指数 ? ] | 14.0 | 47.1 | 25.6 | 41.2 |
東山外輪山は, 安山岩および玄武岩の熔岩・抛出物からなる成層火山で, 頂上部に直径 1 km 以上(約 2 km ?)のカルデラを抱いている。 しかし, このカルデラは西山の成長によって被覆され, 東壁のみしか観察できない。 山体の侵食は北斜面と南斜面で著しく, 海食崖が発達し, 現在も急速に侵食が進行中である。 しかし, 東斜面における侵食はほとんど進行せず, 海岸には海浜砂礫層が発達している。 このような差異は, おそらく卓越風の影響によって生じたものであろう。 南北の斜面では, 侵食によって 20~30 枚の上部熔岩が階段状に露出し, 放射状に貫入した玄武岩岩脈も観察される。
上部熔岩流の走向は, 一般にカルデラ壁にほぼ平行で, 外側に 10~30°の傾斜を示している。 放射状岩脈の走向の収斂する位置は, 現在の頂上の西側で, 推定された熔岩流の噴出位置とほぼ一致する。 故に東山の山体は東半部に関する限り, 主として中心噴火によって成長した成層火山であると考えられる。
熔岩の走向傾斜から推定すると, 南北の海岸線が占めていたもとの位置は, 現在よりも 200~500 m 沖にあったものと考えられる。 つまり, 東山は山体の形成以後に,こ れだけ侵食を受けたことになる。 しかし, 上述のように, 東斜面における侵食はほとんど進行せず, 東斜面の表面は最上位の熔岩流の流走面に一致している。
東山の山体の下半部は安山岩の熔岩および抛出物からなり, その上にほぼ整合に玄武岩の熔岩および抛出物が被覆している。 東山の火山形成はこの順で進行したものと考えられる。 最後に頂上の火口を中心として, カルデラ陥没が起こったのであるが, このカルデラの形成がどのような機構で行なわれたかは明らかでない。
本岩は東山の南および北麓の海岸の崖, すなわち, もっとも山体が侵食を受けた部分に露出している。 角閃石を含む安山岩の熔岩および抛出物から構成され, 露出している全層厚は, 南北海岸ともに約 120 m である。
熔岩流は玄武岩のそれよりも一般に厚く, 北麓では一枚の熔岩流のもっとも厚いもので 40 m(+)に達する。 抛出物はおもに火山岩塊・火山礫・スコリヤ・火山灰などからなり, 火山弾・軽石をほとんど含まない。
本岩は一般に灰色斑状で, 特徴的に角閃石斑晶を含む安山岩であるが, その鉱物組成はかなり多様である。 それらのおもな型を以下に示す。
以上の安山岩熔岩および抛出物中には, しばしば径数~20 cm の深成岩様捕獲岩類および基盤岩岩片が含まれている。 これらは量の多いものから順に以下のものである。
本岩は多数の玄武岩の熔岩流およびこれと互層する抛出物から構成されており, 東山外輪山の大部分を占めている。 熔岩流は一般に薄く, 厚さは 1~10 m で, おもにアア熔岩の構造を示し, 上下にはスコリヤ状のクリンカーを伴う。 北麓では高さ約 200 m の海食崖に 22 枚のうすい熔岩流が累重しているのが観察され, 下位の厚い東山下部熔岩と著しい対照を示している(巻末図版 II-1)。 抛出物は黒色のスコリヤ・火山礫・粗粒火山灰を主とする。
熔岩は灰色~暗灰色を呈し, 大部分が橄欖石普通輝石玄武岩であって, きわめて少量の苦鉄質安山岩を伴う。 おもな岩型を以下に示す。
東山下部および上部熔岩を貫き, 放射状に 10 本以上の岩脈が迸入している。 露頭では一般に垂直に近い幅 1~3 m の板状体を示し, その延長は最大 600 m に達する。 しばしば1本の連続したものでなく, 雁行状に分かれて貫入している場合も認められる。 一般に暗灰色, 緻密であるが, ときには気孔を含むこともあり, 発泡のあとをとどめている。 このことから, これらの岩脈は山体のきわめて浅い部分にまで迸入したことが明らかである。
検鏡した限りでは ,すべて以下に示すような玄武岩で, 東山上部熔岩の性質に類似しており, おそらく上部熔岩噴出の比較的末期に迸入したものであろう。
西山外輪山は, 安山岩および玄武岩の熔岩・抛出物からなる成層火山で, 山頂部には北に開いたカルデラを抱いている。 東麓は東山外輪山に接し, 山体の発達が妨げられているが, 他の3方には自由に発達し, 海中に熔岩が流入している。 南海岸における東山の山体との境界をみると, 西山の熔岩流は東山の海食崖よりも約 200 m 沖合へ延びて流下しており, すでに東山の侵食がかなり進んだ後に, 西山が噴出したことを示している。
西山のカルデラ陥没前の山体を復元してみると, 第 3 図のように海抜 800 m 以上に達する成層火山であったと推定される。 西山は山体成長のあと, 山頂部から北山腹にかけ陥没が行なわれ, 北に開いた外輪山を形成した。 現在の外輪山壁および後述の中央火口丘の火口配列から推定すると, この陥没は 第 3 図の太破線に示されるような 北に開いた2重の弓状割れ目に沿って行なわれたと想像される。 この陥没は西山最後の軽石・スコリヤ抛出活動に関係して起こったと推定され, その年代に関しては 後述のように 軽石中の木片の 14C 年代測定から 760 ± 70 年 B.P.(GaK-1604) [ 以下の [注] 参照 ] という値が得られている。
海食崖および外輪山内壁における露出は良好で, これらの露頭における観察を総合すると, 西山の発達は次のように整理される。
西山外輪山の南部の内壁基部および西麓海岸露頭の下部に 玄武岩の熔岩流およびこれと互層する抛出物の発達が認められる。 これを西山下部熔岩と呼ぶ。 この上位には, 角閃石を含む安山岩類によって特徴づけられる西山中部熔岩が被覆している。
西山下部熔岩の個々の熔岩流は, 厚さ 1~数 m で一般に薄く, アア熔岩の表面構造を示し, 西麓海岸では総計 10 枚以上の熔岩流が累重している。 これらと互層する抛出物は, スコリヤ・火山礫・粗粒火山灰で, 多数の牛糞状その他の火山弾を含む。
西山下部熔岩の岩質は, 一般に以下に示すような橄欖石を含む玄武岩である。
ヤマセ泊産の本岩の化学組成を第 2 表 [ の試料 2 ] に示す。
上述の下部熔岩を被覆して, 角閃石および橄欖石斑晶をしばしば含む安山岩の熔岩・抛出物が, 外輪山の内壁から西・南斜面に広く発達している。 これを西山中部熔岩と呼ぶ。 この上位は, 玄武岩からなる西山上部熔岩および 軽石・スコリヤからなる西山抛出物によって部分的に被覆されている。
西山中部熔岩の個々の熔岩流は一般に厚く, とくに南西斜面を流下して 難破 岬をつくる熔岩は, 外輪山壁で約 40 m, 岬付近で 80 m の厚さに達している。 この難破岬の熔岩は, 1枚の熔岩流としては, 本島でもっとも規模の大きなものである。 山腹斜面では, 両側に生じた熔岩堤間の幅は約 250 m で, 中央の溝状部を後続の熔岩が流下充填している。 海岸に達すると両側へ数列のひだをつくって 幅約 1 km の熔岩デルタとなって拡がっている。
熔岩は部分的にアアと塊状の両方の表面構造がみられるが, いずれも典型的なものではない。 一般に節理は不規則であるが, 難破岬の熔岩のように厚くなると, 部分的に柱状および板状節理が発達する。 熔岩と互層する抛出物は, スコリヤ・火山礫・火山岩塊および火山灰などからなる。
西山中部熔岩は, 角閃石および橄欖石斑晶などをごく普通に含む輝石安山岩であるが, 両鉱物の斑晶の量は一定でなく, 全体として多様性に富む。 この多様性は同一の熔岩流のなかでも, しばしば認められるようで, 難破岬の熔岩流では, 早期に噴出したものには角閃石・橄欖石が多く含まれるが, 後期のものには両鉱物の斑晶がはとんど認められない。 しかし, 石基が完晶質またはそれに近い場合には, いずれも 斜長石・紫蘇輝石・普通輝石・鉄鉱・アルカリ長石・クリストバル石あるいは鱗珪石 などからなり, 鉱物成分上著しい変化は認められない。 おもな岩型を以下に示す。
西山外輪山の南東の頂上部から, 上述の中部熔岩を被覆しながら, 南に流下してアイ泊に達する数枚の玄武岩の熔岩および抛出物がみられる。 これを西山上部熔岩と呼ぶ。
典型的なアア熔岩の表面構造を示し, アイ泊では熔岩流の中心部が流出して洞穴を残している。 抛出物は粗粒火山灰・火山礫・スコリヤなどで, 火山岩塊・火山弾を含む。
西山上部熔岩は, 主として以下に示すような普通輝石橄欖石玄武岩からなる。
西山では山体の侵食が進んでいないため, 岩脈の露出は極限されている。 カルデラ壁の北西部および北東部の破壊された部分に, 合計3本の岩脈が認められるにすぎない。 走向傾斜は北西部で N 20°W・垂直, 北東部で N 60°E・70°NW である。 したがってこれらの方向の延長は, 西山外輪山のほぼ中心を通過する。 それ故, 西山の岩脈は東山の岩脈と同様に, 山体中心から放射状に迸入したものであろう。
岩脈の幅は 1~3 m, 露出の延長は 50~500 m である。 地表に近いため岩脈はすでに発泡しており, 暗黒色でやや多孔質の玄武岩である。 本岩の岩質は以下の通りである。
西山外輪山の南斜面および東斜面から東山へかけて, 厚さ 1~2 m の軽石・スコリヤ層が広く表層をなしている。 ごく表層部の厚さ 20~30 cm は黒色で, 中央火口丘起源の粗粒火山灰・スコリヤであるが, その直下の一連の厚い抛出物層は, 上部および中部熔岩を被覆して外輪山壁によって切られている。 これを西山抛出物と呼ぶことにする。
西山外輪山の南東部では, この抛出物は下部 70 cm が灰白色の角閃石安山岩質軽石(径 1~15 cm, 平均 3 cm)からなり, 上部 150 cm が黒色の玄武岩質スコリヤ・粗粒火山灰からなっており, 紡錘状火山弾(径最大 3 m)および牛糞状火山弾を含んでいる。
注目すべきことは, 軽石からスコリヤの堆積に至るまで休止期がなく, 1回の噴火輪廻のうちに, 噴出物の著しい組成変化が行なわれたことである。 この噴火の直後, 西山の頂部が陥没し, 外輪山が形成された。
西山のヤマセ泊海岸では, 軽石層が急斜面に崩落して2次的に厚く堆積して, その上位には, さらに集積したスコリヤ層が覆っており, 木材. 木片が多く埋没している。 この軽石堆積物中から採取された木片(径約 1 cm の小枝)の 14C 年代は, 学習院大学の木越邦彦教授によって 760 ± 70 年 B.P.(GaK-1604)と測定された。 この年代は西山最後の火山活動の時代を指示し, このとき外輪山が形成され, その後 中央火口丘の活動が始まったと解釈される。
西山外輪山の火口原のほぼ中央に生じた中央火口丘は, 玄武岩の熔岩・抛出物からなるもっとも新しい成層火山で, 山頂に主火口があり, 東西の両麓に側火口がある。
山頂の主火口は直径 250 × 300 m で, 一見 単一の火口のようであるが, 東西方向に配列する4コの小火口が重合したものである。 この西および東への延長上に, 山麓の側火口が位置している。 以上6コの小火口の配列は北に開く弓状を呈し, 西山外輪山とほぼ平行している(第 3 図)。 このような小火口の配列は, 北に開く西山外輪山形成の際, その内側にも ほぼ相似的に北側に開く弓状の断裂・陥没が2重に行なわれたことを暗示する。 おそらくこの内側の割れ目に沿ってその後の噴出が行なわれ, 中央火口丘が形成されたものであろう。
中央火口丘は多数の玄武岩の熔岩流および抛出物の互層からなり, その比高は約 200 m に達する。 山体の植生はほとんど進まず, 赤褐色の山膚をあらわしている。
山頂の主火口の周辺には, 現在も弱い噴気活動が続けられている。
熔岩は典型的なアア熔岩の構造を示し, 1枚の厚さは 0.5~3 m で, 一般に薄い。 抛出物は紡錘状・棒状・牛糞状などの各種火山弾, スコリヤ, 火山礫および粗粒火山灰などで, 山頂の主火口周辺ではやや固結して岩滓集塊岩となっている。 以上の熔岩・抛出物は, いずれも暗灰色~赤褐色の橄欖石普通輝石玄武岩からなる。 その性質は, 後述の側火口熔岩ときわめて類似しているので, ここでは記載を省略する。
山頂の主火口からは, かなり多量の砕屑物が抛出されているのに対し, 東西の山麓の側火口からは, 熔岩流のみが多量に流出している。 したがって, これらの山麓の小火口は, 通常の大きく開かれた円形の火口とならず, 熔岩の小丘の頂部に直径数~10 m の小火口が開かれ, 一方が破れて熔岩の流路となった溝へつらなっている。 東麓ではこの小丘は1コしかないが, 西麓では 2~3 コあり, 周囲に多数の熔岩トンネル(直径 2 m 前後)が存在する。 このトンネルを伏流した熔岩がふたたび地表に流出し, 多数の2次小火口(直径 3~4 m)が開かれている。 火口と2次的な小火口とは形態が類似しているので区別しがたいが, これらの大部分が2次的なものであることは, 熔岩トンネルで互いに連なっていることから知られる(第 4 図)。
山麓の側火口から噴出した熔岩は西山外輪山が北へ開いているため, 火口原を埋めて海中に流入している。 層位的には西側の側火口からの熔岩流がもっとも新しく, 海中に流入してヤケクズレ岬をつくっている。 おそらく, この熔岩流は 1741~42 年, 1759 年, 1790 年(?)の歴史時代のいずれかの活動の際に噴出したものである。 記緑によれば, これらの活動では火山灰など抛出物を噴出しているので, 多分 西麓の側火口が単独で活動したのではなく, 山頂火口からは抛出物と熔岩とが間歇的に噴出し, 山麓の側火口からは, ほぼ純粋に熔岩のみが噴出したものであろう。
側火口の熔岩はいずれもアア熔岩で, 熔岩流の末端ほどコークス状のクリンカーを厚くのせている。 熔岩は暗灰色~黒色の玄武岩で, その岩質は以下の通りである。
渡島大島の海岸は一般に断崖で囲まれ, 海食が進行中である。 このため海浜砂礫の発達に乏しく, わずかに東海岸の日方泊と湾入したアイ泊・ヤマセ泊の海岸に狭少に分布するにすぎない。
この砂礫層はすべて背後の急斜面からもたらされた熔岩塊・抛出物を母材としており, 円礫・亜角礫および砂などからなる。
中央火口丘の活動は, 上述のように約 760 年 B.P. 以降 断続的に最近まで行なわれてきたと推定される。 しかし, 古記録には 1741 年以降の松前・津軽地方での 降灰・津波あるいは噴煙の遠望などが記録されているにすぎない。 古記録によれば, 1741~42 年にかなり激しい噴火が行なわれ, 一時休止して 1759 年にふたたび噴火があり, 1768 年および 1790 年頃に噴煙が望見され, 以来 現在まで約 2 世紀の間, 静穏状態にある。 武者 2), 4) によって編集された多数の資料をもとに, おもな記録をつぎに再録してみる。
1741 年 8 月 : 噴火, 江差・松前地方に降灰, 約 10~15 cm つもる。 津波が発生し, 熊石 [ ← 熊石図幅地域内 ] から根部田 [ ← 松前図幅地域内 ; 現在の館浜付近 ? ] の海岸で溺死者 1467 人をはじめ家畜・家屋・船舶などに多数の被害を与えた。 この津波は東北地方日本海沿岸および佐渡にも被害をおよぼした。 この噴火は中央火口丘の活動と考えられるが, 何故大きな津波を伴ったかは明らかでない。 IMAMURA 3) はおそらく火山近くの海底で断層運動が起こったので津波が生じたと考えた。
この噴火で降灰した火山灰は, 現在でも渡島半島西部の表層に堆積しており, 山田 8) は O.a 層と命名した。 層厚は白神 [ ← 松前図幅地域内 ] と石崎 [ 位置不明 ] で各 19 cm, 根部田で 16 cm, 上の国で 11 cm, 松前で 9 cm, 湯里 [ 位置不明 ; ニセコ湯ノ里 ? ] で 6 cm, 向上雷 [ 位置不明 ; 知内図幅地域内 ? ] で 5 cm である。 おそらくこのあとの 1742 年 1~5 月の降灰も累積したものと考えられる。 上記の層厚が記緑より薄いのは降下後の圧密によるものと思われる。
1742 年 1 月 : 噴火, 松前に降灰, 平地で約 10 cm つもる。
「炭」は黒色の灰と思われる。
1742 年 2 月 : 噴火, 津軽地方に降灰 10 cm。
有珠火山では 1626 年以降の活動記緑があるが, 1740 年代には噴火の記録がない。 この鉄砂のような灰は, おそらく玄武岩質の粗粒火山灰であって, この降灰は渡島大島中央火口丘の噴火によってもたらされたものであろう。
この火山灰の一部は渡島半島側にも降下したことは上述の北海道史のとおりである。
1742 年 5 月 : 噴火, 渡島半島に降灰, 火山毛を混える。
火山灰中に火山毛の混っていたことがよく記緑されている。 どの火山が噴火したかは明記されていないが, おそらく玄武岩質の火山毛を含む点において, また渡島大島が前年から活動期に入っていたことなどから, 同火山の中央火口丘の活動による降灰と考えられる。
1759 年 8 月 : 噴火, 青森に降灰 12 cm, 火山毛を混える。
この墳火は渡島半島側の記緑には発見されないが, 火山灰の飛来方向および火山毛を混えることなどから, 渡島大島の中央火口丘の活動と推定される。 火山灰を含む噴煙が南東へ飛行したため, 渡島半島側には記緑されなかったのであろう。
1768 年 : 噴煙
1790 年 : 噴煙
1955 年 6 月 : 弱い噴気活動
中央火口丘の主火口の東壁および東麓において弱い噴気活動が認められる。 最高温度は 81 ℃ で, 測定した噴気孔温度を第 5 図に示す。 この状態は 1967 年 7 月の調査の際もほぼ同様であった。
QUADRANGLE SERIES
SCALE 1 : 50,000
Sapporo (4) No. 88
By Yoshio KATSUI & Hiroyuki SATOH (Written in 1969)
Oshima-Ōshima, a volcanic island in the Sea of Japan, is situated off the western coast of the Oshima Peninsula, southwestern Hokkaido. It is located at Lat. 41°30' N and Long. 139°22' E.
The island of Oshima-Ōshima is 4 km long in E - W direction and 3.5 km wide, having an outline of an equilateral triangle whose apex is on the eastern side. Judging from the bathymetric chart, the volcanic cone has a submerged base, 12 km in diameter, from which the summit(714 m above sea level)rises 1,700~1,900 m. The slope of the cone below the sea is gentle, dip of which is generally 10° to 15°, but that above the sea is 30° to 40°. There is no surface water. Accordingly no stream erosion has taken place anywhere. The island has so long remained uninhabited due to paucity of fresh water.
| Recent | Beach sand and gravel (B) | |||
|
Central
cone |
Parasitic crater lava (Cp)
Lavas of olivine augite basalt | |||
|
Central cone lava (Cc)
Lavas and ejecta of olivine augite basalt | ↖ |
Historic eruptions in
1741-42, 1759, 1768 and 1790 | ||
|
Nishi-
yama somma |
Nishi-yama fragmental ejecta (Ne)
Pumice of augite and hypersthen- bearing biotite hornblende andesite and ejecta of olivine augite basalt | ↖ |
Formation of caldera
760 ± 70 y.B.P. | |
|
Nishi-yama upper lava (Nu)
Lavas and ejecta of augite olivine basalt | ↖ |
Intrusion of dikes of
olivine augite basalt (Nd) | ||
|
Nishi-yama middle lava (Nm)
Lavas and ejecta of hornblende olivine augite hypersthene andesite and augite hypersthene hornblende andesite | ||||
|
Nishi-yama lower lava (Nl)
Lavas and ejecta of olivine augite basalt | ||||
|
Late
Pleistocene ? |
Higashi-
yama somma |
Higashi-yama upper lava (Hu)
Lavas and ejecta of olivine augite basalt | ↖ |
Marine erosion
Formation of caldera Intrusion of radial dikes of olivine augite basalt (Hd) |
|
Higashi-yama lower lava (Hl)
Lavas and ejecta of augite hypersthene hornblende andesite and hypersthene-bearing augite olivine andesite | ||||
The island of Oshima-Ōshima consists of a triple volcano. The eastern part of the island is occupied by the Higashi-yama somma which surrounds a caldera, more than 200 m deep from the top of its eastern rim. The western part of the caldera is completely covered by the lava of the Nishi-yama somma which in turn encircles a caldera 1.3 km across and more than 160 m deep from the top of its southern rim. The northern rim is much lower than the southern. Within this caldera lies a central cone with a summit crater 250 × 300 m in diameter and 70 m in depth, rising 200 m from its base. The central cone lava completely covers the caldera floor.
The Higashi-yama somma, the oldest body of the volcano, has been fairly dissected due to marine erosion and exposes radial dikes cutting the body. However, other volcanic bodies remain free from such intense erosion. At least the visible part of the volcano probably ranges late Pleistocene to Recent in age.
The basement rocks of the volcano do not expose anywhere. It can be supposed, however, that they are the Paleozoic sediments and the plutonic rocks intruding the former which forms the basement of the Tertiary rocks in the southwestern part of Hokkaido, as judged from xenoliths found in the lava.
The sequence of development of the volcano is tabulated as follows :
Eruptions of andesite took place in the early stage of the growth of the Higashi-yama volcano. Then, basalt was erupted to form a gigantic strato-volcano which was intruded by radial dikes of basalt. The subsidence of the top of the strato-volcano resulted in a caldera which is now surrounded by the Higashi-yama somma on the east.
During some long period of quiescence, the volcanic edifice of Higashi-yama was subjected to marine erosion. Then, basalt and andesite were erupted within the caldera of Higashi-yama to form the second strato-volcano which completely covered the western part of the caldera. These rocks were also intruded by dikes of basalt. The top of the second strato-volcano was then subjected to subsidence to form another caldera, just after the successive eruption from pumice of augite- and hyperthen-bearing biotite hornblende andesite to coarse ash, lapilli, scoria and bombs of basalt. The age of subsidence of the caldera is estimated to be 760 ± 70 y. B.P., judging from 14C age determination on a wood twig buried in the pumice bed. The ring mountain surrounding the caldera is the Nishi-yama somma.
Within this caldera, the eruption of basalt took place to form the central cone. Flank eruptions also occurred at points on the western and northeastern foot of the central cone. From the small craters opened at these points, aa lava of basalt was extruded, which flowed into the sea at the northern coast.
During the historic time the central cone was active as shown in the follows :
Weak fumarolic activity is now seen on the crater wall of the central cone. In June 1955 the maximum temperature of the fumaroles was 81 ℃.
The basalt of Oshima-Ōshima contains phenocryst of olivine, augite, and plagioclase in a ground-mass mainly composed of plagioclase, augite, olivine, iron ore, alkali-feldspar, and apatite. Ortho-pyroxene does not appear either as phenocryst or ground-mass mineral.
The andesite contains phenocryst of plagioclase, augite, hypersthene, olivine, hornblende, iron ore, and rarely biotite. There is much variety in the assemblage of these phenocrystic minerals. The ground-mass is made up of plagioclase, augite, hypersthene, alkali-feldspar, iron ore, silica minerals, and apatite. The hypersthene, silica minerals, and alkali-feldspar are always present in the holo-crystalline ground-mass.
All the rocks of this volcano are rich in alkalies, and high in both K2O / Na2O ratio and in MgO / (FeO + Fe2O3) ratios, showing similar character to the rocks of other volcanoes on the Japan Sea side.
The basalt (columns 2 and 4, Table 2 in the Japanese text) is generally under-saturated with silica. This feature, taken jointly with its high alkali content, groups the basalt with the alkali olivine basalt of the Circum-Japan Sea alkali province. The andesite which is intimately associated with basalt, however, is over-saturated with silica (columns 1 and 3) and has a characteristic feature of the calc-alkali andesite in both mineralogy and chemistry.
Xenoliths of hornfels of pelitic sediment origin, chert, granite, and diorite are abundantly found in the andesite. Mafic and ultra-mafic inclusions of plutonic rock appearance are also found in the andesite.
| ol | : 橄欖石 | ; olivine, |
| aug | : 普通輝石 | ; augite, |
| hyp | : 紫蘇輝石 | ; hypersthene, |
| hor | : 角閃石 | ; hornblende, |
| bi | : 黒雲母 | ; biotite, |
| mt | : 鉄鉱 | ; iron ore, |
| pl | : 斜長石 | ; plagioclase, |
| gl | : ガラス | ; glass |
昭和 45 年 3 月 13 日 印刷 昭和 45 年 3 月 20 日 発行 著作権所有 工業技術院 地質調査所 (C) 1970,Geological Survey of Japan