03028_1960
5万分の1地質図幅説明書
(旭川 第 28 号)
通商産業技官 秦光男
地質調査所
昭和 35 年
地質図印刷上の誤りを下記のように訂正および追加する。
目次 I. 地形 II. 地質 II.1 概説 II.2 天売島噴出岩類(新第三系) II.2.1 下部熔岩 II.2.2 下部火山角礫岩 II.2.3 中部熔岩 II.2.4 上部火山角礫岩 II.2.5 上部熔岩 II.3 焼尻島噴出岩類(新第三系) II.3.1 下部火山角礫岩 II.3.2 下部熔岩 II.3.3 中部火山角礫岩 II.3.4 中部熔岩 II.3.5 上部火山角礫岩 II.3.6 上部熔岩 II.3.7 最上部火山角礫岩 II.3.8 最上部熔岩 II.4 岩脈類 II.5 第四系 II.5.1 洪積層 II.5.2 冲積層 III. 応用地質 III.1 石材 III.2 地下水 III.3 鉱床 文献 Abstract
1 : 50,000 地質図幅説明書 (昭和 34 年稿)
(旭川 第 28 号)
本図幅地域は北海道北西部の苫前町および羽幌町の北西方約 25 km の日本海上にあり, 焼尻島 [ 以下の [注] 参照 ] と 天売島 との2島で構成される。
焼尻島と天売島とはともに長径 4 km 内外の島で, 約 3.5 km の武蔵水道を挾んで対坐している。 本地域は暑寒別岳と利尻火山とのほゞ中間にあって, ほとんどが硬い火山噴出岩類からなり, 両島地域で海底の地形は浅い台地状を呈しており, また両島の近傍には多くの岩礁を点在せしめている。 海図(第 1 図)によれば, 本地域の東方 北海道本島との間の海域は, 東から西へ緩やかな傾斜面をもつ水深 55 m 以内の大陸棚をなしているが, ほゞ中央でやゝ傾斜が強く地形的に不連続となっている。 天売島西方ではかなり急な傾斜を示しながら深くなり, 約 10 km で大陸棚から大陸斜面へと移行している。 なお, 本地域の北西方約 60 km の地点には武蔵堆が存在する。
また, 両島の北方では急な斜面を示して深くなっているのに反して, 南方海域では水深 60 m 以内のほゞ三角形の台地状が発達している。
焼尻島は, 図版 1 のように最高標高 97 m で, 平坦な島である。 これは海成段丘が発達しているためで, とくに 55~75 m の台地は島の中央部を構成し, みごとな平垣面を示している。 このほか, 本島ではその前面に3段の段丘面が発達している(第 4 図参照)。 海岸の大半は海蝕崖を形成し, 海蝕崖と汀線との間は狭く, 通常 10 m 以内であるが, 白浜・豊崎附近で最大 20 m の幅をもつところがある。 なお, 本島の南西端は断崖絶壁をなしており, 歩行不可能なところがある。
天売島は西部が高く(最高標高 184.5 m), 5段の段丘面を形成しながら, 緩やかに傾斜して東部海岸へ移行している。 海岸線は通常海蝕崖をなすが, とくに西部海岸は高さ 100 m あまりの断崖絶壁を形成しており歩行不可能なところが多い。 このような崖の形成は, 多分に北西方向からの強い季節風に起因するものと思われる。
河川は両島とも小沢程度のもので, 普通高さ 40~50 m 段丘より高位の段丘の堆積物基底を切っているところが多い。
本地域への交通は, 苫前港から毎日1往復の定期船による便があるが, 冬季間は風雪のため不定期となり, きわめて不便である。
なお, 天売島の断崖をなす海岸には, とくに春から夏にかけて ウミネコ(俗にゴメ)・ロッペン鳥(オロロン鳥)・ウトウ・ケイマフリ(赤足) などの渡り鳥が数万羽棲息している。
また秋から冬にかけてはアビ・オオハムなどの大型海鳥と, シノリガモ・ウミアイサ・クロガモ・キンクロハジロ・スズガモなどのカモ類, およびウミスズメなどの海鳥の越冬地ともなっている。
本地域の地質に関する近年発表された資料としては, 僅かに勝井義雄・武田裕幸 1) によるもののみである。
本地域を構成する地質は, 新第三系の火山噴出岩類, 第四系の洪積層および冲積層からなる。
火山噴出岩類は, 主として安山岩質熔岩および火山角礫岩からなり, 両島ともによく似た輝石安山岩が主として発達している。 しかしそれぞれの熔岩が連続して観察されず, また多少岩質を異にしているので, 焼尻島噴出岩類と天売島噴出岩類とに区分した。 なお, 安山岩の岩質から一応対比してみるならば, 第 1 表に示すような関係になる。
域内における堆積岩は, 勝井義雄・武田裕幸 1) によって 「焼尻島北西部オネトマリ(西浦)附近の海岸波打際に約 2 m の灰白色泥岩がある」 と報告されているが, 今回の調査では発見できなかった。 なお, 安山岩質熔岩・火山角礫岩のほか焼尻島北海岸 豊崎附近には玄武岩熔岩が, 天売島東海岸の前浜附近には層理を示す凝灰質粗粒砂岩が 6 m 以上の厚さを有して存在する。
本地域の噴出岩類は, 南方の暑寒別岳の基盤や 7), 9), 10) , また東方の稚内層準に伴なう安山岩類 [ 以下の [注] 参照 ] などと一連の火山活動に起因するものと考えられる。 これら本地域の火山岩類の噴出時代は, 堆積岩に乏しく, また化石の産出がないために決定できない。 しかし岩質からみて浜益地域 7) の毘砂別層~茂生層の安山岩類に近似しており, また変質程度の弱いことから, 一応新第三系中部~上部と考察される。 なお, 域内ではこれらの噴出岩類を貫ぬく, 玄武岩質および安山岩質の岩脈が数多く存在する。 これらは天売島噴出岩類および焼尻島噴出岩類とやゝ岩質は異なるが, 焼尻島噴出岩類活動末期のものであろう。
第四系の洪積層および冲積層は, 天売島噴出岩類および焼尻島噴出岩類を覆って発達している。 洪積層は第 4 図のように5段のみごとな面を形成する段丘堆積層からなる。 冲積層は段丘堆積層および現海浜を形成しており, 分布は狭い。
域内における地質構造はきわめて単調なものであり, 両島ともに東へ 5~10°の傾斜を示す単斜構造を示している。 断層は天売島弁天から西海岸へ通る東西方向のもの, 焼尻島西部および豊崎附近で北西 − 南東方向のものがそれぞれ観察されるが, いずれも小規模のものである。 なお, 第 1 表の通りに両島の噴出岩類が対比できるとすれば, 構造上両島間に断層が推定される。 すなわち武蔵水道下であり観察しがたいが, 両島間の海底地形にも現われているもののようである。
これらの傾動および断層運動は, 天売島噴出岩類および焼尻島噴出岩類活動後洪積層形成前に行なわれたもので, 第四紀においては数段の平坦な段丘堆積層を形成した数次の上昇がみられる。
本岩類は天売島を構成するものであり, 主として安山岩質熔岩と同質火山角礫岩との繰り返しからなっている。 このほか一部には凝灰岩薄層および凝灰質砂岩を挾有している。 なお, これらの火成活動は両輝石安山岩の活動を主体としているが, 上部に角閃石安山岩の活動がある。
これらの累重関係は第 2 図に示す通りである。
本岩は域内の最下位を占めており, 天売島西海岸で小範囲に露出している。 本岩は 塊状を呈する両輝石安山岩質熔岩および 同質自破砕熔岩(auto-brecciated lava)からなり, 後者は通常 10~50 cm の角礫状をなしている。 肉眼では, 塊状をなすものは暗灰色の緻密な岩石であり, 角礫状のものは暗灰色~灰色の斑状を呈し多少多孔質なものである。 本岩の厚さは 20 m 以上である。
鏡下では,
本岩は天売島西部海岸に露出する。 主として火山角礫岩からなり, 中部に層状を示す火山礫凝灰岩および安山岩質熔岩を挾有している。 基底には部分的に厚さ 30~50 cm の帯黄灰色の凝灰質粗粒砂岩が存在し, 下位の熔岩と接しており容易に区別できるが, 砂岩の存在しない場所もある。 火山礫凝灰岩は基底部の砂岩から約 14 m 上部に位置し, 10 m 内外の厚さを有する灰色~灰白色を呈するもので, よい鍵層となっている。 安山岩熔岩はレンズ状をなして処々に挾在しており, 肉眼で暗灰色斑状の両輝石安山岩である。 主体をなす火山角礫岩は帯褐灰色を呈し, 角礫は通常径 15~25 cm であるが, 大きいものには 1 m 以上のものも含まれている。 岩質は挾在する両輝石安山岩とほゞ同質のものであるが, 肉眼的には緻密なものから多孔質のものまであり, 色もまた暗灰色から帯赤褐色を呈するものまである。 本岩の厚さは約 30~40 m である。
鏡下では,
本岩は天売島北西部から南部海岸にかけて露出し, 下部角礫岩とは通常塊状の厚い熔岩で接している。 本岩は南部で厚く北部で薄く, 中部に自破砕熔岩を伴なっている。 肉眼では一般に暗灰色で斜長石の斑晶の目立つ両輝石安山岩で, 下部は緻密であり, 上部は多少多孔質である。 本岩の厚さは最大 70 m を算する。
鏡下では,
やゝ変質しているが, 炭酸塩化および緑泥石化を多少蒙っているにすぎない。
本岩は天売島の海岸の各所に淡灰色の崖をなして露出し, 相影から弁天にいたる海岸でとくによく観察される。 本岩の厚さは約 35 m で下部は火山角礫岩~凝灰角礫岩からなり, 上部は凝灰質粗粒砂岩からなる。 火山角礫岩は西部海岸および南部海岸で発達しており, 厚さは 10 数 m を有し, 主として 20~40 cm の安山岩質亜角礫と, その間を灰白色の火山砂で固結している。 凝灰角礫岩は東部海岸からゴメ岬両側の下部で発達し, 灰白色の軟質凝灰質砂岩中に 20~30 cm の安山岩質亜角礫~円礫が入るもので, 火山円礫岩に近似したものである。 凝灰質粗粒砂岩は前浜海岸で発達しており, 6 m 以上の厚さを有し, 灰白色~帯黄灰色の層理を示す砂岩で, 安山岩質の円礫を散含している。
火山角礫岩および凝灰角礫岩の角礫は, 肉眼で一般に灰色~淡灰色を呈する粗鬆な両輝石角閃石安山岩で, 角閃石および輝石の斑晶が目立ち特異である。
鏡下では,
本熔岩は天売島噴出岩類の最上部をなしているもので, 天売島の上面を厚く覆って発達分布している。 海岸ではゴメ岬および相影附近に露出する。 本岩は主として両輝石安山岩質熔岩からなり, 肉眼では一般に暗灰色で斜長石の斑晶の目立つ斑状の岩石で, 塊状を呈している。 本岩の厚さは 80 m 以上ある。
鏡下では,
なお, 天売燈台の下のもので, 石基は斑状組織を呈し, 変質した橄欖石の微斑晶とピジョン輝石(2V ≒ 0)を含むものがある。
前述のように天売島噴出岩類は, 全般的に石基中にガラスが少なく, 細粒の場合にも完晶質に近く, アルカリ長石および黒雲母がかなり晶出しており, クリストバル石を常に伴なっているのを特徴としており, 比較的アルカリ質である。 なお, 石基中の有色鉱物の量からみると, その大部分は中性~酸性の安山岩で, 塩基性安山岩質のものは少ない。 後者にはしばしば微斑晶状の橄欖石(完全に変質している)が含まれており, その石基輝石はピジョン輝石のみからなっている。 次に各層準ごとの石基輝石組合せ出現状況を示す。
| 層準(記号) | 石基輝石組合せ | ||||
| Tl3 | Tv2 | Tl2 | Tv1 | Tl1 | |
| 1 | 1 | c : 石基輝石がピジョン輝石のみ | |||
| 1 | 2 | 1 | 1 | d : 〃 普通輝石および紫蘇輝石 | |
| 5 | 2 | 2 | 1 | e : 〃 紫蘇輝石のみ | |
本岩類は焼尻島を構成するもので, 主として安山岩質熔岩および火山角礫岩からなっているが, 一部には角礫凝灰岩を挾有している。 これらの火成活動は天売島噴出岩類と同様に, 両輝石安山岩の活動を主としているが, このほかに角閃石安山岩および玄武岩の活動がある。
これらの累重関係は第 3 図に示す通りであり, 全般的に東方へ 5°内外傾斜している。
本岩は, 焼尻島西部海岸に露出し, 焼尻島噴出岩類の最下位を占めている。 主として径 20~40 cm の安山岩質角礫および亜角礫からなる火山角礫岩であるが, 下部に安山岩質熔岩を挾有している。 角礫は両輝石安山岩で, 肉眼では暗灰色緻密なもの, 灰色斑状のものおよび多孔質のものなどがある。 また, 赤褐色を呈するものなどもある。 なお, 本岩の厚さは 20 m 以上である。
鏡下では,
これらもまた多少の炭酸塩化および緑泥石化を蒙っている。
本岩は西浦海岸および白浜西部海岸に露出している。 主として塊状の安山岩質熔岩からなるが, 一部に自破砕熔岩が観察される。 本岩は肉眼で暗灰色を呈し, 短柱状の斜長石が目立つ斑状の両輝石安山岩であるが, 西方突端部で角閃石の斑晶を含有するものがある。 本岩の厚さは 50 m 以上を算する。
鏡下では,
変質度は低く, 炭酸塩化を多少蒙っているにすぎない。
本岩は西浦海岸に露出し, 西方に帯状に分布している。 しかし, 西方の NW - SE 方向の断層によって切られて南部の白浜海岸には露出していない。 本岩は灰色の凝灰質な砂と安山岩質角礫~亜角礫とからなる。 角礫は通常径 3~10 cm, 肉眼では暗灰色斑状の岩石で, 緻密なものから多孔質のものもあり, 両輝石安山岩で下位の下部熔岩に酷似している。 本層の厚さは 20 m 内外である。
本岩は豊崎海岸から白浜海岸西部にいたる間に帯状に分布し, 豊崎海岸で良好な露出をなしている。 主として塊状の安山岩質熔岩からなるが, 自破砕熔岩を伴ない, 中部には火山角礫岩の薄層を挾有している。 これらはほとんど両輝石安山岩であるが, 中部に玄武岩熔岩がみられる。 本岩の厚さは最大 80 m 内外である。
両輝石安山岩は, 肉眼で一般に暗灰色~帯褐灰色の緻密な岩石であるが, 一部斑状を呈するものがある。
鏡下では,
玄武岩熔岩は, 豊崎海岸に露出し, 西部は断層によって切られている。 下部は 1~5 cm の厚さの板状節理が発達しているもので, 上部は多孔質の岩石となり, 上位の両輝石安山岩質熔岩に覆われている。 なお厚さは 5 m 以上ある。 本岩は粗粒な輝石玄武岩で, 新鮮なものは帯褐暗灰色~暗灰色緻密であるが, 風化するといっそう褐色を帯びるものとなる。
鏡下では,
本岩は, 新開橋の沢出口附近(豊崎)から白浜海岸にいたる間に分布する。 本岩は暗灰色~灰色を呈する火山角礫岩の薄層で, 角礫は通常径 5~15 cm の両輝石安山岩からなる。 肉眼では新鮮なものは暗灰色~灰色斑状を呈するものである。 鏡下では中部熔岩の両輝石安山岩と同様の性質を示すが, ガラス質である。
本岩の厚さは 15 m 内外である。
本岩は豊崎東方海岸から白浜海岸にいたる間に露出し, 島のほゞ中央部を構成している。 本岩は主として塊状の両輝石安山岩質熔岩および同質自破砕熔岩からなるが, 一部に角閃石含有両輝石安山岩熔岩がある。 また, 豊崎東部海岸で本岩上部に 7 m 内外の厚さを有する灰色の火山礫凝灰岩が挾在している。
本岩の厚さは 40 m 内外である。
両輝石安山岩は, 肉眼で一般に暗灰色で, 斜長石の斑晶が目立つ斑状の岩石である。
鏡下では,
一方角閃石含有両輝石安山岩は, 肉眼で帯褐灰色~暗灰色の斑状を呈する岩石である。
鏡下では,
本岩は, 東浜北端の岬附近から白浜東部海岸にいたる間に分布し, 白浜海岸で良好な露出をなしている。 本岩は主として暗灰色~灰色を呈する径 5~20 cm の火山角礫岩からなるが, 白浜海岸における本岩の上部には火山礫凝灰岩がある。 この火山礫凝灰岩は帯赤褐色を呈し, 風化して表面はガサガサとなり, 角閃石や輝石の結晶が目立つほど入っている。
火山角礫岩の角礫は, 両輝石安山岩と角閃石含有両輝石安山岩との2種があり, 構成鉱物の性質は下位の上部熔岩のものにそれぞれ酷似している。
本岩の厚さは最大 20 m を有する。
本岩は, 焼尻島噴出岩類の最上部を構成するもので, 焼尻港附近から焼尻燈台にいたる東浜海岸に露出し, 厚さは 70 m 以上ある。 主として安山岩質熔岩および同質自破砕熔岩からなるが, 上部には火山角礫岩を挾有している。 なお, 東浜東方の神居岩も本岩に含まれるものである。 本岩の主体をなすものは, 肉眼で暗灰色~帯褐暗灰色で斜長石および輝石の斑晶が目立つ斑状の両輝石安山岩である。 火山角礫岩の角礫も同質の安山岩からなり, 角礫は径 5~30 cm を示している。
鏡下では,
焼尻島噴出岩類は天売島噴出岩類に較べると, 一般にガラス質のものが多く, アルカリ長石が少ないが, 石基輝石がピジョン輝石である場合には天売島のものに似てアルカリ長石に富んでいる。 石基に含まれる有色鉱物の量からみると, 中性ないしやゝ塩基性の安山岩が大部分を占めている。
天売島の例のように石基輝石組合せ出現状況を次に示す。
| 層準(記号) | 石基輝石組合せ | ||||
| Yl4 | Yl3 | Yl2 | Yl1 | Yv1 | |
| 2 | 1 | 2 | c : 石基輝石がピジョン輝石のみ | ||
| 5 | 1 | 1 | 1 | d : 〃 普通輝石および紫蘇輝石 | |
| 1 | 1 | 1 | 1 | e : 〃 紫蘇輝石のみ | |
岩脈類は, 焼尻島噴出岩類および天売島噴出岩類を貫ぬくもので, 両島ともに存在する。 天売島ではわずかに1本観察されたにすぎないが, 焼尻島では多く, とくに東浜海岸から白浜海岸にかけて 20 数本観察される。 これらの岩脈の迸入時期は両噴出岩類後洪積層堆積前である。 なお, 焼尻島の岩脈類のほとんどは海岸線に対して直角の方向を示している。 これらの岩脈には玄武岩質から安山岩質のものまであり, 相互の関係は不明である。
橄欖石玄武岩 : 本岩は焼尻島に露出し, 白浜海岸で2本, 西浦海岸で2本, 本澄寺の沢および新開橋の沢下流で各1本観察される。 これらはいずれも 2.5~5 m の幅を有し, 10 m 以上の延長がある。 肉眼で一般に黒色~暗灰色を呈する緻密堅硬な岩石で, 風化して橄欖石が淡褐色を呈して観察されるのを特徴としている。
鏡下では,
橄欖石含有両輝石安山岩 : 本岩は焼尻島東浜海岸で3本, 白浜海岸で1本露出している。 岩脈の幅は 2.7~4.5 m を有し, 肉眼で帯緑黒色~暗灰色の緻密な岩石である。
鏡下では,
両輝石安山岩 : 本岩は焼尻島で 18 本, 天売島に1本露出する。 数も多く脈幅も大小あるが, 最大のものは天売島の西海岸に露出するもので 8~10 m を有する。 本岩は肉眼的にもかなりの差があって, 暗灰色~帯黄灰色および帯褐灰色を示すものがあり, 斑状を呈し, 斜長石および輝石類の斑晶が目立つ岩石で, 比較的堅硬なため海へ突出していることが多い。 なお, これらの岩脈は母岩への変質作用をほとんどあたえていない。
鏡下では,
安山岩質の岩脈類は全般的に熔岩よりも激しい炭酸塩化, 緑泥石化を蒙っているが, 玄武岩は比較的新鮮であり, 前者よりやゝ遅れて貫入したものと考察される。
本地域の第四系は, 海成段丘を構成する洪積層および冲積層からなる。
洪積層として本地域に発達するものには海成段丘堆積物がある。 焼尻島および天売島では海成段丘がともに良好な発達を示し, とくに焼尻島においては4段のみごとな面を形成している。 なお, 焼尻島と天売島とでは面に多少高低差が認められるが, これらの面は次のように区分される。
| 天売島 | 焼尻島 | |||||
| A 面 | 海抜 | 160~170m | ||||
| B 〃 | 〃 | 80~100 m | 85~95 m | |||
| C 〃 | 〃 | 60~75 m | 55~75 m | |||
| D 〃 | 〃 | 40~55 m | 40~50 m | |||
| E 〃 | 〃 | 20~40 m | 20~40 m |
これら各面の状況を断面図で図示すると第 4 図の通りである。
第 4 図に示すように, 段丘面は全体に東方に緩く傾斜しており, 段丘形成後の傾動を伴なう隆起状況がうかゞわれる。
A 面の段丘堆積層 は, 天売燈台附近の面を形成するもので, 分布は狭小であり, かなり侵蝕されている。 堆積物は薄く 50 cm 以内で, 安山岩の角礫および砂からなっている。
B 面の段丘堆積層 は, 天売島中央部でよく発達している。 これと同時面と思われるものに焼尻島西端部のもっとも高い面がある。 なお, 天売島においてこの面と A 面との間には, 段丘面を形成する時期があったのかも知れないが, 海抜 80 m 以上の面はかなり侵蝕によってくずされているため不明瞭となっている。 本層の堆積物もまた安山岩質角礫および砂からなり, 厚さは 1~1.5 m である。
C 面の段丘堆積層 は, 焼尻島中央の台地を形成しているもので, 発達も広く, また保存も上位のものに比較して非常に良好である。 この面に相当するものに天売島中央部台地を形成しているものがある。 本層の堆積物は比較的厚く, 焼尻島では公園の池附近に黄灰色を呈する 2~4 m の崖を形成して良好な露出をなしている。 基底部は 径 1~3 cm の珪化岩の礫もまれに含む 安山岩質円礫~亜角礫からなり(約 10~30 cm の厚さ), その上位は風化して黄褐色を呈する含礫砂および淡褐色の砂まじり粘土からなっている。 天売島では相影から燈台への道路側の小沢で観察される。 厚さは 3 m 内外で径 3~5 cm の安山岩質亜角礫および砂から構成されている。
D 面の段丘堆積層 は, 焼尻島では焼尻燈台および役場の存在する面を形成するもので, 東部, 南部, 北部で環状に発達し, 天売島では南東部の学校裏の台地を形成するものである。 本層の堆積物は, 焼尻島東浜附近でよく観察され, 約 2 m の厚さを有し, 径 1~3 cm の安山岩の亜角礫および砂からなっている。 一方天売島では天売港附近海岸の崖の上部に露出し, 安山岩の亜角礫~円礫からなり厚さは約 3 m である。
E 面の段丘堆積層 は, 天売島では学校の位置する面を形成するもので, D 面段丘の前面に良好な発達を示している。 焼尻島において豊崎および白浜附近ではかなりの広さを示すが, 東浜地域では狭小な分布を示している。 本層の堆積物は焼尻島燈台下の海蝕崖において, 下部 2 m は径 2~10 cm の安山岩角礫からなり, その上部約 1 m は径 1~5 cm の安山岩円礫および砂粒から構成され, 安山岩礫は風化して粘土化している。 天売島の学校附近では約 2 m の厚さを有している。
これらの海成段丘堆積層は, 新第三系の火山噴出岩類を不整含に覆い, 更新統に属するものであるが, 更新統のいずれの時期に属するかは決定する資料がないので明らかでない。
なお, 北海道本島の海成段丘との関係を追求することはかなり困難であるが, 段丘面の高さから比較してみると, 苫前図幅 4) および羽幌図幅 5) の羽幌段丘面には C 面が, 苫前段丘面には D 面 + E 面が相当する。
冲積層として本地域に発達するものには, 冲積段丘堆積層および現海浜堆積物がある。
冲積段丘堆積層 は, 焼尻島東部海岸および北部海岸, 天売島東部海岸に小分布をなして発達するもので, E(段丘)面の前面に海抜 5~10 m で境界のやゝ不明瞭な面を形成して存在する。 堆積物は場所によって異なるが, 径 1~10 cm の安山岩円礫および砂からなり, 礫は風化していない。 また, 天売島西部海上に突出する岩の頂上に, 本面に対比される面および堆積物が観察される。
なお, 本層は小規模なため地質図上には表現せず, 冲積層として一括した。
現海浜堆積物 は, 焼尻島および天売島の現海岸の浜を形成するもので, 比較的狭く 10 m 内外である。 堆積物は少なく, 安山岩礫および砂を主としている。 なお, 焼尻島南部海岸, すなわち白浜海岸には海棲貝類の殼が多く寄せ揚げられており, 白く輝いている。
焼尻島および天売島には前述のように, 安山岩および玄武岩の緻密な熔岩が広く分布しており, 石材として利用できる。 現在は北海道開発庁の手によって, 焼尻港および天売港の築港用材として, 焼尻島南西海岸および天売島北西海岸の一部で採石を行なっている。
両島ともに火山噴出物からなり, また段丘堆積物も比較的薄く, 帯水層が少ないことから井戸によって飲料水をうることがかなり困難となっている。 このため住民の多くはそれぞれの小川の沢水を利用しているようであるが, 季節的な水量の増減がありまた上流地域の台地は農耕地となっており, 衛生管理の点からも適当な対策が必要と思われる。
天売島北西部海岸および焼尻島燈台西部地域の一部で, 硫気作用によると考えられる珪化および粘土化を蒙っている部分があるが, 顕著な鉱化作用は観察されなかった。
このほか, 焼尻島西部の台地および天売島燈台南斜面の表土は, 春から夏にかけて両島に棲息する数種の鳥の糞によって部分的に燐酸に富んでおり, 農耕地として他の地域(B~D 面上)よりも豊饒であるといわれている。
EXPLANATORY TEXT OF THE GEOLOGICAL MAP OF JAPAN Scale 1 : 50,000
Asahikawa, No. 28
By MITSUO HATA (Written in 1959)
The small twin islands, the Yagishiri and Teuri, of this sheet-map are situated in the Japan Sea, about 25 km off the shore of the northwest Hokkaidō. They are located just in the middle point as if to link the huge extinct volcanos, Rishiri and Shokambetsu, which are about 80 km distant to the north and south, respectively.
Both islands are almost wholly composed of volcanic rocks with a few thin beds of tuff and tuffaceous sandstone. The geological age of the rocks is estimated to be middle or later Neogene only by the degree of rock alterations as paleontological evidences are absent.
The Teuri-shima is a flat-topped island, which has the highest point (184.5 m) in its western end, and its surface inclines gently to the east.
This flat surface is defined to be the deposit plane of the highest terrace, and other four lower terrace surfaces are seen in the eastern slope. These five terraces are composed of unconsolidated gravel, sand and clay of Pleistocene age.
The volcanic rocks of the island are almost wholly pyroxene andesites, and among them the intermediate to acidic ones are predominated, while the basic ones which generally contain olivine as microphenocryst are scarce. Pyroxene-hornblende andesite crops out only as volcanic breccia accompanying with the tuffaceous sandstone between the thick cover of the uppermost bed consisting of lava flows of acidic pyroxene andesite. Dike of augite-hypersthene andesite with the width of 8~10 m is found in the northwest shore of the island. Petrographical characteristics of the rocks are the abundance of alkali-feldspar and crystobalite and the existence of thin flakes of biotite in their groundmass. The intermediate to acidic andesites generally belong to the hypersthenic rock series [*] , and the basic ones to the pigeonitic rock series [*] . The lavas belonging to the latter series are only 2 among the total 14 lava specimens, investigated microscopically.
The Yagishiri-tō is a flat island with the height of 97 m. The flat surface is the plane of the highest terrace, and other 3 terraces which are built by gravel, sand and clay, well develop at the side of the island. The Yagishiri-tō is also composed of alternation of lava flows and volcanic breccia with subordinate amount of lapilli tuff. The rock types are rather more variable than those of the Teuri-shima, and rocks ranging from olivine basalt to hornblende pyroxene andesite occur as lava flows. The lower half of the Yagishiri-tō volcanic rocks seems to be correlated to the Teuri-shima volcanic rocks, as they have some resemblance petrographically. In general, the rocks of the Yagishiri-tō are glassy, and contain only a small amount of alkali feldspar, crystobalite and biotite in their groundmass, except the rocks belonging to pigeonitic rock series, that well resemble the basic andesites of the Teuri. The number of the lava specimen of pigeonitic rock series is 5 in the total 15 observed under the microscope.
There are many dikes -- more than 25 -- in the Yagishiri-tō, and most of them run vertically to the beach line. Their width are small, namely 2~5 m. Augite-olivine basalts are rather fresh than olivine-pyroxene andesite and pyroxene andesite, in which the alteration has proceeded to obscure the mafic minerals in the groundmass in some specimens, and so the intrusion of the basaltic dikes seems to be later than that of andesites.
The two islands are almost barren in mineral resources, except some andesite for the local use as building stone.
There are silicified small area due to the sulfataric activity, but no indications of ore are found.
昭和 35 年 2 月 1 日 印刷 昭和 35 年 2 月 5 日 発行 著作権所有 工業技術院 地質調査所