02060_1962

5万分の1地質図幅説明書

湧洞沼

(釧路 第 60 号)

工業技術院 地質調査所
通商産業技官 松野久也

北海道開発庁

昭和 37 年


目次

I. 地形
II. 地質
II.1 概説
II.2 新第三系
II.2.1 大樹層
II.2.2 チョウブシ層
II.2.3 時代および対比
II.3 第四系
II.3.1 段丘堆積物
II.3.2 冲積層
II.4 地質構造
文献

Abstract

5万分の1地質図幅説明書

湧洞沼

(釧路 第 60 号)


本地質図幅は北海道開発庁の委嘱によって作成されたものである。 この地質図幅作成のための野外調査は, 昭和 35 年 8 月から 9 月にかけての期間と 10 月との2回にわけて実施された。 これと並行して, 北に接する浦幌地質図幅の調査が実施され, 同図幅の南部地区の調査を担当した 当所北海道支所 山口昇一技官の未公表の資料を参照することにより, 野外調査ならびにその結果の取りまとめに際し益するところが非常に大きかった。

I. 地形

本図幅地域は北海道の南東部太平洋岸, 十勝川の河口の南西岸に近い「豊頃丘陵」の一部を占めている。 その大部分は, 低夷な丘陵性の台地からなり, その最高点でも 100 m を僅かに超えるにすぎない。 特に海岸線に沿う地帯は, かなり開析が進んではいるが, 幅員 2~3 km にわたって平坦面(段丘面)が保存されている。 この平坦面は, 内陸部では標高 80~90 m に達するが, 海に向かって緩やかに傾斜し, 海岸附近では 20~30 m であり, その末端は海蝕崖となっている。 海蝕崖の下には幅員数 10 m から 100 m 内外の砂浜が発達している。

河川は, 域内もしくは域外の僅かに北方の低夷な丘陵に源を発する小河川であって, 流量も少なく, かつ勾配も極めて緩やかであって, 著しく蛇行している。 これら河川のうちには, 河口部が北東から南西に向かって生長した砂洲によって閉塞され, その内側に潟湖が発達したものがある。 すなわち, 長節沼, 湧洞沼および 生花苗 おいかまなえ 沼等であって, これらは季節的に砂洲の南西端附近に開口部を生じ, 海に連絡するだけで, 通常は砂洲を通じて満潮時には海水が浸入し, 逆に干潮時には湖水が海に流出する状態にある。 これらの潟湖は, 河川によって運搬された泥土によって次第に埋積されると共に, 湿地性の植物の遺骸によって周縁から次第に沼沢地に変じ, 海岸平野へと姿を変えつつある。 このため各河川に沿う冲積平原は, すでに干上がって農耕地となっている湧洞および長節附近の一部を除いて, 湿原となっており, 殆ど歩行することすらできない。

以上, 地形の概要を述べたが, 本地域には海産物を除いて資源としてみるべきものがないことと, 上述のような地形的条件のため 農耕に適する所も湧洞附近と長節附近の一部にすぎないとのため, 公共の交通機関は皆無である。 また, 域内全体を通じて車輌の通れるような満足な道路も皆無と言ってよいくらいである。

II. 地質

II.1 概説

本図幅地域に分布する地層は, 新生代の, それも比較的新期の堆積岩のみである。 すなわち, 中新世後期の大樹層, これと整合で中新世末期から鮮新世にまたがるチョウブシ層, これらと不整合関係にある更新世に属する段丘堆積物および現世の冲積層である。 これらの層序関係を模式的に示すと第 1 表の通りである。

第 1 表 模式地質総括表

第 1 図 地質構造概念図

第 1 図に示すように, 北方の浦幌炭田においては, 白堊系を中核として 古第三系および新第三系が南々西に向かって沈下する複背斜構造(浦幌複背斜)をなし, また西方には, 先白堊系を中心とし, これに直接する新第三系が南北方向に延びる豊頃ドームを形成し, 両者相雁行している。 域外北方, 豊頃村茂岩附近には, 両構造単元を連ねる隆起部があり, これによって両者の間の向斜部は二つの構造単元に区分されている。 そのうち, 北部のものは北にひらいて帯広構造盆地の一部をなし, 南部のものは小さな褶曲を伴なうが, 大局的には南にひらいた半盆状構造を形作っている。 そして, この地域の新第三系は, 後者の西翼部, 言いかえると豊頃ドームの東翼に位置している。

II.2 新第三系

新第三系は, 整合一連の関係にある海成層からなり, 下部の大樹層と上部のチョウブシ層とに大別される。

大樹層は, 佐々・根本による 10 万分の1地質図幅「大樹」における 「大樹層上部」の下半部に含まれるものであり, その下限は本図幅地域には露出していない。 チョウブシ層は上述の「大樹層上部」の上半部から以上の地層に対する新称である [ 以下の [注] 参照 ]

[注]
10万分の1地質図幅「大樹」においては, 新第三系を下部から広尾層群, 大樹層群および十勝層群に3分している。 大樹層群は豊似川層と大樹層に2分され, 大樹層は更に岩相から泥質相を主とする上部と砂質相を主とする下部に分けられている。 一方, 大樹図幅の北に接する帯広図幅では大樹層上部のみを大樹層として取り扱っている。

第 2 図 新第三系化石産地

第 2 表 新第三系産化石表。
The list of the Molluscan fossils from the Neogene system.

層準(Horizons) 大樹層(Taiki formation) チョウブシ層(Chobushi formation)
種名(Species)↓ 産地(Localities)→ 242 243 237 43 67 298 54 92 93 189 52 252 199 204 35 31 30 1 80
Acila (Acila) sp. × ×
Ennucula cf. cyrenoides (KURODA) ×
Ennucula sp. ×
Nuculana pernula (MULLER) × * * ×
Portlandia thracuaefirnus (STORER) × × × * × ×
Portlandia sp. × ×
Modiolus sp. *
Patinopecten sp. ×
Thyasira bisecta (CONRAD) × × * * *
Lucinoma acutilineata (CONRAD) ×
Clinocardium californiense (DESHEYES) ×
Clinocardium sp. ×
Serripes gloenlandicus (BRUGUIERE) ×
Serripes sp. ×
Macoma calcarea GMELIN × *
Macoma sp. × × × ×
Mya sp. × ×
Panope sp. ×
Trophon (?) sp.
Natica sp. × ×
Gastropoda gen. et. sp. indet. × ×
[注]
1) Nuculana pernula は上記のほか, チョウブシ層中の泥質岩中に普遍的に見いだされる。
2) * は個体数が非常に多いもの。
3) 産地は第 2 図に示す。

II.2.1 大樹層

大樹層は本図幅地域の南西部, 湧洞沼背斜の軸部に露出し, 比較的緻密かつ均質な帯緑青灰色, 塊状の砂質泥岩からなる。 この砂質泥岩中には, 稀に厚さ数 cm から 10 cm 弱の細粒砂岩 および数 cm から 1 m に達する白色の細粒凝灰岩が挾有される。

本層の主部を占める砂質泥岩は, いちじるしく凝灰質であり, かつ珪藻土質であって, 風化面は淡黄灰色を呈し, 乾燥すると白色に変わり, 露頭面に沿って不規則な形の大きな破片となって崩壊する性質がある。 乾燥した破片は珪藻岩状を呈し, 極めて軽い。 また本泥岩中には, しばしば径数 10 cm から 1 m に達する泥灰質団塊が含まれる。 中でも湧洞部落の西方で 本層の上限から数 10 m 下位の層準に含まれる中程度の大きさの団塊中に Portlandia thraciaeformis (STORER) が密集して包蔵されている(第 2 図, 第 2 表)。

砂岩は非常によく淘汰された細粒砂岩からなり, 殆ど石英粒のみから構成され, 凝灰岩は白色を呈し, 一般に細粒で葉状の層理が発達する。 これらは塊状, 均質な砂質泥岩中にあって, 走向・傾斜の測定に非常に有効である。

本層中, その上限から数 10 cm 下位の層準に認められる団塊中に多産するものを除いて, 貝化石の産出状態は極めて散点的である。 すなわち, Portlandia thraciaeformis (STORER), Lucinoma acutilineata (CONRAD), Mya sp. 等を数ヵ所で見出したにすぎない(第 2 図, 第 2 表)。 以上のほか, 本層中には場所および層準によって差はあるが, 全層を通じて Makiyama chitanii (MAKIYAMA) を普遍的に産する。

本層の厚さは 300 m 以上であるが, 本図幅地域内では下限は不明である。

II.2.2 チョウブシ層

チョウブシ層は図幅地域の大半を占めて広く分布し, 主として砂質泥岩と砂岩との互層からなる。 これらの互層中には, しばしば礫岩および凝灰岩の薄層が挾有される。

本層を概観すると, 下部は主として砂質泥岩ないし微細粒砂岩からなり(第 3 図), 上部は砂質泥岩と砂岩とがほぼ等量に近く, 少量の礫岩および凝灰岩を挾有する。

第 3 図 チョウブシ層中下部の互層の一例

砂質泥岩は, 新鮮な面では青灰色ないし帯緑暗灰色であって, 殆ど層理を示さない。 風化面では灰白ないし淡黄灰色を呈し, 下位の大樹層の砂質泥岩と誤認し易い。 しかし, 後者に比べてより砂質であり, ところによっては細粒砂岩となり, 指頭大以下の大小の円礫を散点的に含んでいる。

砂岩は通常中粒ないし細粒であって, 多くの雲母片を含んでいる。 一般に砂岩は青灰色ないし淡褐色を呈する。 これら砂岩は互層中にあって, 下位の砂質泥岩とは明瞭な境界をもって接し, 上位のそれとは漸移し, いわゆる級化成層する。 一般的に, 下位の砂質泥岩との接触面は細かな波状の凹凸面をなし, これに沿って径数 mm の軽石粒を含むことがある。

礫岩は一般に細粒ないし中粒の円礫からなり, 厚さ 10 cm から 10 数 cm のものが普通であるが, 湧洞沼北岸では拳大の礫からなり, 厚さ 25 cm に達するものが一枚認められる。

凝灰岩は灰白色軽石質であり, 多くは細粒均質である。 粗粒なものは径数 mm 以下の軽石粒からなり, 多くは砂粒を混えている。

以上のほか, 本層中には -- 特に砂質泥岩中に -- 最大径 3 cm に達する, 絹糸状を呈しかつ石英に富む軽石粒が散点的に含まれている。

本層中, 上下を通じて砂質泥岩中に Nuculana pernula (MULLER) を産することを特徴とするほか, 第 2 図および第 2 表に示すような貝化石を産する。 貝化石群集の組成を比較すると, 前述の大樹層に比べてチョウブシ層はより浅い海に堆積したものと考えられる。

以上のほか, 本層の最下部基底より上, 少なくとも第 1 表中 Thyasira 帯まで, 大樹層から引き続いて Makiyama chitanii (MAKIYAMA) が多産する。

本層の厚さは最大 700 m あるいはそれ以下と推察される。

II.2.3 時代および対比

大樹層・チョウブシ層両層の地質時代については この地域だけでは古生物学上の資料が少なく, 決定的結論には到らない。 しかし, 北に接する浦幌図幅地域の西縁に沿って, 東北日本から以北, 北海道および樺太にかけて, 鮮新世下部に限って産する Fortipecten takahashii (YOKOYAMA) を代表種とする化石帯が, 本図幅地域の北限近くまで追跡されている。 さらに, この化石帯を構成する貝化石のほか, この層準を特徴づける有孔虫化石 Cribroelphidium ezoense ASANO を特徴種とする 浅海性の有孔虫化石群集の産出が確かめられている。 すなわち, 浦幌図幅地域内, カンカン山の北々東約 500 m の地点から南方へ, 独立標高点 202 m の南々東約 1 km の地点, さらにその南方約 2 km の地点等を経て, 長節川北岸独立標高点 152 m の南西方約 1 km の地点まで, 上述の Fortipecten takahashii (YOKOYAMA) の化石帯が追跡確認されている。

この層準は野外調査の結果, 長節沼西方の向斜部(第 1 図)の化石産地とほぼ同層準のものと推察される。 従って, この層準はチョウブシ層の中部に相当し, この層準を含めて上位, すなわち, チョウブシ層の上半部は鮮新世と考えられる。

大樹層からチョウブシ層の下半部にかけては, Makiyama chitanii (MAKIYAMA) のほか, Portlandia thraciaeformis (STORER), Thyasira bisecta (CONRAD), Lucinoma acutilineata (CONRAD) など, 中新統上部の稚内層から声問層にかけての層準に 極く普通に認められるような貝化石群集を産することから, これらと同層準, すなわち中新世後期のものと推察される。

これらの古生物学上の資料と岩相の特徴とから, 隣接地域における層序との対比について考察を試みると次の通りである。

吉田三郎(1957)による石神層は, 根本・佐々(1933a)の「大樹層」上部にほぼ一致する。 石神層は凝灰質シルト岩からなる下部と, 軽石粒の薄層を挾有する含礫凝灰質砂岩からなる上部とに分けられ, 上部に Fortipecten takahashii (YOKOYAMA) が知られている。 従って大樹層はその下部に対比され, チョウブシ層はその上部に対比されるものであることは, ほぼ間違いないものと考えられる。

また, 長尾・三谷(1960)の茂岩泥岩層には砂岩・礫岩等の粗粒岩がかなり多量に含まれるが, その砂質泥岩ないし泥岩の岩質上の特徴は, 大樹層のそれに一致し, かつ層位上の位置は Fortipecten takahashii (YOKOYAMA) の産出層位の下位であることから, 大樹層に対比される。 その上位の糠内砂岩層は 野外調査の結果から明らかにチョウブシ層と連続するものである。 すなわち, その最上部の局所的な一異相とされている砂川礫岩層の直下に Fortipecten takahashii (YOKOYAMA) が認められ, この化石帯(前述)と砂川礫岩層とは 共に連続してカンカン山から南方本図幅地域の北限長節川の北岸附近まで追跡される。 しかし, 南岸 本図幅地域内に入ると, 同礫岩層は姿を消してしまい, これと同時に化石帯も殆ど認められなくなる。

織田精徳(1959)によって, 東台層群とされた地層の下半部である瀬多来累層から Fortipecten takahashii (YOKOYAMA) が知られているが, 同層がチョウブシ層と全く一致するものであるかどうかは明らかでない。 また, 図幅地域の北東, 音別 8) ・厚内 15) ・白糠 9) 図幅地域で, 新第三系は厚内層群として一括され, 下位から直別累層, 厚内累層および白糠累層に3分されている。

本図幅地域中における大樹層からチョウブシ層下部にわたる層準は, 前述の厚内累層の上部から白糠累層にかけての部分に対比される公算が強い。 チョウブシ層の上部 すなわち Fortipecten takahashii (YOKOYAMA) を産する層準から上位の部分は, 白糠累層よりも上位の層準に相当するものとも考えられる。

すなわち, これら両地域の各層の泥質岩を比較すると, 大樹層と厚内累層とのそれは, 著しく細粒凝灰質で, 風化面では灰白色ないし白色を呈し, 極めて軽くかつ珪藻土質であることに対し, チョウブシ層と白糠累層のそれは幾分粗く細粒砂岩に近い点が注目される。 さらに チョウブシ層と白糠累層中には共に Naculana pernule (MULLER) を特徴的に産し, かつ両者の下半部には, 下位の大樹層あるいは厚内累層から引き続いて Makiyama chitanii (MAKIYAMA) が認められるのも共通の特徴として挙げられる。

しかし, 音別, 厚内, 白糠各図幅地域では, 未だ Fortipecten takahashii (YOKOYAMA) あるいはこれに伴なう鮮新世を特徴づける化石動物群の存在は知られていない。 従って, これらの地域にはこの層準が存在しないものと想像される。

これらの点は, 北に接する浦幌図幅地域の調査の完了によって明らかにされるであろう。

II.3 第四系

本図幅地域における更新統の主要なものは, 海岸および河岸の段丘堆積物で, 新第三系とは不整合関係で, ほぼ水平にこれを覆っている。 冲積層は海浜堆積物, 潟成層, 河川堆積物などを含むが, これらは極めて密接な関係を保ちつつ現在もなお成長を続けている。

II.3.1 段丘堆積物

海岸段丘堆積物

図幅地域内, 海岸線に沿って広い平坦面(内陸部で 80~90 m, 海岸線で 20~30 m の標高を示す)が発達している。 この平坦面を構成する堆積物は 主として偽層に富む種々の粒度の砂と細礫との互層からなる。 本堆積物は層相の側方変化がかなりいちじるしく, 所によっては中上部に粘土あるいは凝灰質粘土等の泥質の堆積物が卓越し, この部分に1~2枚の泥炭層を挾有する(第 4 図)。

第 4 図 海岸段丘堆積物柱状図

礫は主として, 指頭大以下の粘板岩, チャートなど古期岩類の円磨礫からなり, 長節沼西方の台地上で附近の道路補修用に極めて小規模に採取されたことがある。

本堆積物の厚さは, 海岸線に沿った地域では 20~25 m である。 内陸部では全体の厚さは摑み難いが, 上述の砂利採取跡で観察されたところでは少なくとも 10 m に達する。

河岸段丘堆積物

湧洞川および長節川に沿って局所的に平坦面が認められるが, 多くの場合露出が悪く, 果して堆積物が存在するかどうか不明である。 しかし, これらの平坦面の末端部にはしばしば古期岩類を始め, 硬質頁岩の径 2~3 cm 以下の礫の転石が認められ, 地質図には記入していないが, 湧洞から長節へ通ずる道路の昇り口附近, 道路の彎曲部附近に硬質頁岩の円磨礫が転石としてかなり広範囲に認められる。

II.3.2 冲積層

海浜堆積物

各河川の河口部海岸線に沿って砂洲が長くのびている。 これらの砂洲は 北東から南西方向への沿岸流と 太平洋から打ち寄せる波浪とによって形成されたものと考えられる。 これらの砂洲は「はまなす」その他の灌木によって覆われている所もある。 このほか, 海岸線に沿う海蝕崖の下には砂浜が認められることは, 既に地形の項で述べた通りである。

潟成層

上述の砂洲の内側は海と距てられ潟湖となっている。 これらの潟湖は今なお海水の浸入があり, 海陸両性を示し, 砂泥とともに, かき, しじみ等の貝殻等を沈積しつつある。 一方 これらは河水の流入する側から搬入される土砂で浅くなるとともに, 淡水域となり水生植物が繁茂し, この遺骸が沈積して次第に沼沢地へと姿を変えつつある。 これらが水面上にあらわれたところでは, 柳・榛の木等の林となっている。

河川堆積物

各河川の支流や上流では, 谷底を埋めて, 砂・礫および粘土からなる河川堆積物が発達する。 現在の河川は, これらの上を自由蛇行し, 中下流では山脚部を側方侵蝕している所以外では殆ど基盤があらわれず, 堆積物の状況は明らかでない。

下流では沼沢地中を蛇行し, 殆ど堆積物は観察できないが, 潟湖に流入する所には泥土を三角洲として堆積させているのが空中写真から判読される。

II.4 地質構造

本地域の新第三系は, 第 1 図に既に示したように, 地質構造上, 豊頃ドームと浦幌複背斜との間の複向斜部の西翼部, 換言すれば豊頃ドームの東翼部を構成する。

第四系は, 上述の褶曲運動によって転位した新第三系を傾斜不整合関係に覆ったものであり, その後の極めてゆるやかな傾動運動を蒙っているにすぎない。 以下, 新第三系の地質構造について記述する。

新第三系は, 前述の構造に支配されて, 大局的には東ないし南東方に行く程, 逐次上位の層準が露出する傾向を示すが, 決して単調ではなく, ゆるやかな波状の小褶曲をなしている。 その比較的顕著な構造と認められるものは, 湧洞沼背斜とその南西側に位置する一向斜構造である。 これらの両構造は北西 - 南東方向の軸をもち, 南東に向かってゆるやかに沈下している。 一方, その北西延長は域外において, まもなく開いて豊頃ドームの南西翼の単斜構造に吸収されてしまう。

湧洞沼背斜の北東ないし東翼にはチョウブシ層が東傾斜で逐次上位の層準を露出させ, 長節沼附近に到って一向斜と一背斜を形成している。

これら新第三系の傾斜は極めて緩く, 全域を通じて 10 度内外あるいはそれ以下にすぎない。

今までに述べた新第三系の褶曲構造は鮮新世末, 更新世以前に決定されたものである。

文献

1) 根本忠寛・佐々保雄 :
10 万分の1地質図幅「大樹」および同説明書, 北海道地質調査会報告,No.1, 1933a
2) 根本忠寛・大石三郎・渡辺武男 :
10 万分の1地質図幅「帯広」および同説明書, 北海道地質調査会報告,No.2, 1933b
3) 佐々保雄・他 10 名 :
帯広盆地及びその周辺の地質,第1報 -- 第三系層序(演旨), 地質学雑誌,Vol.61,No.718, 1955
4) 橋本亘 :
十勝支庁管内の地質及び地下資源, 十勝総合開発促進期成会, 1955
5) 北海道地下資源調査所 :
20 万分の1北海道地質図 (4) 中央南部,および同説明書, 1952
20 万分の1北海道地質図 (6) 東南部,および同説明書, 1956
6) 吉田三郎 :
十勝国中川郡豊頃村より Fortipecten takahashii の発見(短報), 北海道地質要報,No.35, 1957
7) 岡崎由夫 :
北海道東部,池田層の地質, 北海道地質要報,No.35, 1957
8) 棚井敏雅 :
5万分の1地質図幅「音別」および同説明書, 北海道開発庁, 1957
9) 鈴木泰輔 :
5万分の1地質図幅「白糠」および同説明書, 北海道開発庁, 1958
10) 織田精徳・根本隆文・植村武 :
5万分の1地質図幅「常室」および同説明書, 北海道開発庁, 1959
11) 橋本亘・三谷勝利・吉田尚・織田精徳 :
5万分の1地質図幅「本別」および同説明書, 北海道開発庁, 1959
12) 北川芳男・他 :
十勝東部西部経営区の地質, 帯広営林局, 1960
13) 長尾捨一・三谷勝利 :
十勝平野周辺地域天然ガス調査報告, 北海道地下資源調査資料,No.61, 1960
14) 佐藤茂・長浜春夫・吉田尚 :
5万分の1地質図幅「上茶路」および同説明書, 北海道開発庁, 1961
15) 棚井敏雅 :
5万分の1地質図幅「厚内」および同説明書, 北海道開発庁, 1961
16) 棚井敏雅・山口昇一 :
5万分の1地質図幅「浦幌」および同説明書, 北海道開発庁, (未刊)

EXPLANATORY TEXT OF THE GEOLOGICAL MAP OF JAPAN Scale 1 : 50,000

YUDONUMA

(Kushiro - No. 60)

By Kyūya MATSUNO


Abstract

GEOLOGY

The Yūdōnuma sheet map area is located in the southwestern coastal region of the eastern Hokkaido. The rocks covering the area are sedimentary and they are of the upper Neogene and Quaternary systems (Table 1).

Table 1

Age Formation Thick (m)
Recent Alluvium
Pleistocene River terrace deposits
Coastal terrace deposits 10~25
Pliocene Chobushi formation
700 -
Miocene
Taiki formation 300 +

NEOGENE SYSTEM

Neogene system ranges from younger Miocene to Pliocene in age, and are divided based upon their lithology, palaeontology and stratigraphy, into the Taiki formation below and the Chōbushi formation above.

1. Taiki formation.

The Taiki formation is composed of greenish and bluish gray sandy mudstone rarely with thin intercalations of fine-grained sandstone and fine-grained pumiceous tuff. The sandy mudstone is of tuffaceous and diatomaceous, and becomes white in colour when it is weathered and dried. From this formation, a small number of marine molluscan fossils were collected as shown in Table 2 (section II.2 in the Japanese text) and a great number of Makiyama chitanii MAKIYAMA were found throughout the formation.

The surface distribution of this formation is quite restricted in the mapped area and only the topmost part of the formation can be seen in the western portion of the area.

2. Chōbushi formation.

The Chōbushi formation conformably overlies the aforementioned Taiki formation nd comprises alternation of sandstone and sandy mudstone or very fine-grained sandstone, in which thin conglomerates and pumiceous tuffs are intercalated. The alternation becomes downwards rich in sandy mudstone or very fine-grained sandstone. The sandy mudstone or very fine-grained sandstone sporadically contains granules or pebbles of older rocks and white pumice.

From this formation as well as the Taiki formation marine molluscan remains were found (Table 2 in the Japanese text). Among them, Thyasira bisecta (CONRAD) occurs in restricted zone and this zone can be traced from the eastern coast of the Yūdōnuma swamp in this mapped area to the northern Urahoro sheet map area. In the latter area, the lower Pliocene mol luscan and foraminiferal faunas were ascertained in the horizon just above the Thyasira bisect zone.

QUATERNARY SYSTEM

The Quaternary system unconformably covers the Neogene system which was deformed by folding movement in the late Pliocene age. Lithologically and topographically, they are divided into the Pleistocene coastal and river terrace deposits which are composed of gravel and sand chiefly, and the Alluvial sea shore deposits, lagoonal deposits of brackish environment and flood plane deposits.


昭和 37 年 9 月 25 日 印刷
昭和 37 年 9 月 30 日 発行
著作権所有 北海道開発庁