02015_1968

5万分の1地質図幅説明書

西達布 にしたっぷ

(釧路 第 15 号)

北海道立地下資源調査所
技術吏員 小山内煕
技術吏員 酒匂純俊
技術吏員 松井公平
技術吏員 松下勝秀

北海道開発庁

昭和 43 年 3 月


この調査は, 北海道総合開発の一環である, 地下資源開発のための基本調査として, 北海道に調査を委託し, 道立地下資源調査所において, 実施したものである。


目次

はしがき
I. 位置および交通
II. 地形
III. 地質
III.1 地質の概要
III.2 地質各説
III.2.1 先白堊系 -- 日高累層群
1. 中の川層群~神威層群(ホルンヘルス)
2. 空知層群
2.1 山部層
2.2 主夕張層
III.2.2 十勝熔結凝灰岩
III.2.3 大麓山熔岩
III.2.4 第四系
III.2.5 変成岩類
1. ホルンヘルス
2. 緑色岩類
III.2.6 花崗質岩類
IV. 応用地質
IV.1 石灰石
IV.2 ドロマイト
文献

Résumé(in English)

5万分の1地質図幅説明書

西達布 にしたっぷ

(釧路 第 15 号)


はしがき

この図幅および説明書は, 昭和 39 年から昭和 41 年にわたり, 約 130 日間の野外調査の結果をとりまとめたものである。

野外調査にあたっては, 北西部を酒匂が, 南西部を小山内, 松下が, 東部を松井がそれぞれ分担し, 全般的なとりまとめは小山内が行なった。 また, 西部の調査に際しては, 北海道立地下資源調査所 研究職員の石山昭三氏の, また東部は, 北海道大学理学部大学院 研究生の小林武彦氏の協力を, それぞれたまわった。

西達布図幅地域は, 日高構造帯を構成する, いろいろな変成岩類や火成岩類分布の北端部にあたる。 したがって, 岩石学的にも, 地質構造的にも, いろいろと期待される地域であるが, 図幅北部からはじまる, 十勝大雪火山群起源と考えられる, 新期の火山噴出物に広くおおわれ, 日高構造帯北端沈降部としての, 地質的な性格を充分に把握するにはいたらなかった。 しかし, [ 南隣の ] 落合 [ 図幅地域 ] から連続して発達するホルンヘルス -- 日高変成岩類の西側に発達し, 日高帯としては, 南部日高帯とことなった構造をもつ -- と, 図幅地域に点々としてみとめられる花崗岩質岩とが, 関連性があるのではないかという一つの見とうしをうることができた。

野外調査に際して, 協力をたまわった, 石山昭三, 小林武彦氏に深く感謝する。 また現地で, いろいろな援助をいただいた, 富良野市役所および東京大学演習林の方々に厚く御礼申し上げる。

I. 位置および交通

西達布図幅の占める地域は, 北緯 43°10'~43°20', 東径 142°30'~142°45' の範囲である。

図幅地域は, 行政上は大部分が上川支庁 富良野市に, また, 東端の一部が十勝支庁 新得町の管轄にふくめられる。

図幅の南西部の西達布川にそって国道 38 号がはしり, 西達布, 幾寅 いくとら [ ← 本図幅の南隣の落合図幅地域内 ] をへて, 空知川に下っている。 また, 図幅の北西部地域には, 麓郷 ろくごう 布礼別 ふうれべつ などの部落と, 富良野, 西達布などと連絡する地方道が発達し, 定期バスの運行があって, 交通は比較的便利である。 しかし, 東部地域は, シイソラプチ川および 中の沢 [ 位置不明 ; 「奥の沢」の誤り ? ] にそって林道が開通しているだけである。

II. 地形

図幅地域の地形は, いろいろな特徴からおよそ次の4つに区分することができる。

(1) 標高 800 m 以上の高さをもち, 比較的急斜面で構成される山地帯
(2) 標高 400 m から 700 m 台の比較的平坦な丘陵性の山地帯
(3) (2) の地形面上にモナドノック [ 残丘 ] 状に突出する山地
(4) 河川の沿岸に発達する平坦地

(1) の山地帯は図幅の北部にみられ, 十勝岳図幅地域に発達する第四紀の火山群につらなる山麓斜面の一部で, 安山岩熔岩で構成される地形である。

(2) の丘陵性山地帯は図幅地域の大半をしめ, (1) の山麓斜面に連続して南南西にゆるく傾斜し, 比較的平坦なスカイラインをしめす地形面をもっている。 この地形地域は十勝熔結凝灰岩で構成されている。 したがって, この地域を流れる河川は一般に下底侵蝕がいちじるしく, 河岸は高い崖をつくっていることが多い。

(3) は, (2) の地形面上に 100 m から 300 m 前後の比高で突出する地形である。 一般にまるみをおびた山頂をもっている。 この地形は, 図幅地域の基盤岩層で構成されており, 十勝熔結凝灰岩に被覆されずに残された基盤の凸出部とみなされる。

(4) の河川流域の平坦地形面は, 比高 10 m 以下の河岸段丘, 扇状地および沖積氾濫原とからなりたっている。

第 1 図 930.8 m 三角点から東北方を望む。 左側のなだらかに傾斜する山体が大麓山熔岩で構成される。

第 2 図 麓郷の南西地点から東北方を望む。 十勝熔結凝灰岩で構成される平坦なスカイラインが明瞭である。 後方の山体は十勝岳火山群。

第 3 図 西達布の南方の台地から北方を望む。 十勝熔結結凝灰岩で構成されるなだらかな丘陵と, その上に突出し, 日高累層群で構成される山体のコントラストが明瞭である。

第 4 図 麓郷付近の耕作地。 扇状地的な段丘堆積物で構成されているため礫が多い。

III. 地質

III.1 地質の概要

西達布図幅地域は, 北海道の中軸を構成する, いわゆる日高構造帯にふくめられる。 しかし, この図幅地域は, 日高構造帯の沈降部にあたっていて, 南部地域のような帯状配列をしめす変成岩類はみられず, むしろ日高帯のなかの上部相が発達する地域とみることができる。 この地域の特徴は, 落合図幅から連続して日高変成帯の西側にあたる位置にも ホルンヘルスが発達していることと, それらのホルンヘルス化を進行させたと考えられる花崗質岩類が 分布は小さいが点々と存在すること, などである。

図幅地域を構成する岩層は, 基盤の日高累層群, それをおおう火山噴出物, 山麓斜面にみられる崖錐堆積物および河岸に発達する新期の堆積物に大別される。

第 1 表 西達布図幅の層序表

時代 層序 岩相 火成岩
第四紀 沖積世 氾濫原堆積物 / 崖錐堆積物 砂, 礫, 粘土
洪積世 河岸段丘堆積物
第四紀

新第三紀末
大麓山熔岩 しそ輝石普通輝石安山岩熔岩
十勝熔結凝灰岩 流紋岩質熔結凝灰岩
先白亜紀









無名沢
輝緑岩質岩砂岩層
砂岩, 頁岩, チャート,
輝緑岩質凝灰岩, ドロマイト
?
輝緑岩
滝ノ沢頁岩層 頁岩, 砂岩, チャート
ニゴリ沢砂岩層 砂岩


富士川頁岩層 砂岩, 頁岩, チャート
トマム
輝緑岩質岩層
輝緑岩, 輝緑岩質凝灰岩,
チャート, 石灰岩
花崗質
岩類
輝緑岩
ホルンヘルス / 緑色岩類

日高累層群は, ホルンヘルスおよび緑色岩類などの変成された岩層と, まったく未変成の岩層とからなっている。 前者 [ ホルンヘルスおよび緑色岩類 ] は, 粘板岩を主体とし, 砂岩, チャートおよび輝緑岩質岩などを介在する, 相変化のとぼしい厚い堆積層の, 中の川層群ないし神威層群の一部が変成されたものと考えられる。 また, 後者は, 輝緑岩質岩層や砂岩, 頁岩, チャートなどの正常堆積岩層からなり, 空知層群の山部層と主夕張層の一部に相当する地層である。

日高累層群をおおって広く分布する火山噴出物は, いわゆる十勝熔結疑灰岩とよばれてきた流紋岩質熔結疑灰岩と, 十勝岳火山群の一部を構成する安山岩質の大麓山熔岩である。 ともに, 十勝大雪火山群のいずれかに噴出源があるものと考えられており, 第三紀未から第四紀にかけての噴出物とされている。

以上の岩層をおおって, 山麓斜面には崖錐堆積物, 河岸には段丘堆積物および氾濫原堆積物が発達している。 これらは, 第四紀 洪積世にかけての堆積物である。

西達布図幅地域は, ほとんど大半が十勝熔結凝灰岩でおおわれているため, 基盤岩層の地質構造の全容を把握することはむずかしい。 しかし, 日高累層群のいろいろな岩相の分布状態は [ 南隣の ] 落合図幅地域から連続していて, 大局的には, 落合図幅でたしかめられた, 南北性の地質構造に支配されているものと考えられる。

III.2 地質各説

III.2.1 先白亜系 -- 日高累層群

西達布図幅地域の日高累層群は, 分布が限られていることとホルンヘルス化されている部分が多いため, 日高累層群全般についての岩相区分は困難である。 しかし, 上部の堆積岩を主体とし未変成の部分については, [ 本図幅の南隣の ] 落合, [ 落合図幅の南隣の ] 千呂露 ちろろ [ or 千栄 ちさか ] 図幅地域で明らかにされた岩相層序が大まかに追跡され, おおよそ次のように分類することができる。

日高累層群 空知層群 主夕張層 無名沢 輝緑岩質岩砂岩層〔S3〕
滝ノ沢 頁岩層〔S2〕
ニゴリ沢 砂岩層〔S1〕
山部層 富士川 頁岩層〔Y2〕
トマム 輝緑岩質岩層〔Y1〕
神威~中の川層群 ホルンヘルス〔Ho〕
緑色岩類〔Ge〕

1. 中の川層群~ 神威 かむい 層群(ホルンヘルス)

ここでは, ホルンヘルスの原岩と考えられる地層について考察する。

第 5 図 ホルンヘルスの露出(国道切り割り)

図幅の南部地域には, 十勝熔結疑灰岩におおわれて, ホルンヘルスが点々と分布している。 その分布は, 落合図幅でユートラシナイ沢層とした地層の分布の延長部にあたっている。 したがってホルンヘルスの原岩の大半は, ユートラシナイ沢層と考えられる。

落合図幅地域に発達しているユートラシナイ沢層は, 粘板岩を主体とする地層であるが, その一部がホルンヘルスになっている場合が多い。 このように落合図幅地域ではホルンヘルスの原岩の岩相も明瞭にみとめられる。 しかし, 西達布図幅地域ではほとんどホルンヘルスになっており, また断片的に分布しているため, 全般の初生的な岩相層序はわからない。 全般的にみて, 粘板岩を主体とする厚い岩相が変成されてホルンヘルスになったものと考えられる。 ごくまれにみられる比較的変成の弱い地域(幾寅峠の西側の地域や 岩魚 いわな 沢の下流の西岸山腹の採石場)では, ホルンヘルスの原岩が砂岩と粘板岩の薄互層や, 灰白色~淡赤色チャートを介在する粘板岩であることがうかがわれる。 このような砂岩, 粘板岩の薄互層やチャートを介在する粘板岩などの岩相は, 落合図幅や千呂露図幅のユートラシナイ沢層でも普通にみとめられる岩相である。

変成の弱い地域でみとめられる初生的な走向傾斜は, 一般に南北性の走向と東傾斜をしめしている。 しかし, 全般的な構造は, 露出がまばらなために明らかでない。 落合図幅では, 空知層群より下位の日高累層群には, 中の川層群や神威層群に対比されると考えられるものもふくめて, 一括して中の川層群~神威層群としてとりあつかっている。 この図幅でも, 落合図幅地域以上に両層群を区分することは困難である。 したがって, 落合図幅にならって, 空知層群以外のものを中の川層群~神威層群としておく。

なお, 落合図幅では, ユートラシナイ沢層の上位にさらに落合層, ウェンザル川層, ペンケヌシ川層などが区分されるが, この図幅地域では, ホルンヘルスと未変成の空知層群とが分布上 直接している。 したがって, 落合層, ウェンザル川層, ペンケヌシ川層などは断層によってかいているものと考えられる。

2. 空知層群

図幅の南部地域には, まったく未変成の地層が発達している。 これらは, 落合図幅地域で空知層群とした地層の延長部に分布し, まえにのべたホルンヘルスおよび緑色岩類と断層で接している。 岩相的には, 落合図幅とほぼ一致し, 落合図幅と同様の層序区分が可能である。 したがって, 地層名は落合図幅にならって用いた。

空知層群は, 全般的にみて, 東側に下位層が西側に上位層が発達し, 正常な層序をしめしているが, 構造は, ほとんど東傾斜である。 したがって逆転構造とみなければならない。 ただ, 図幅の西南隅の地域では, この地域の空知層群の最上位層を中心として, 東傾の向斜構造がみとめられ, 西翼にふたたび下位層が分布している。

2.1 山部 やまべ

山部層は, 輝緑岩質岩からなるトマム輝緑岩質岩層と, その上に整合的に発達し, 頁岩を主体とする富士川頁岩層に区分される。

2.1.1 トマム輝緑岩質岩層〔Y1〕

この地層は, 図幅の南西部の空知川と西達布川にはさまれた山地帯に, 断層に切られて重複して分布しているほか, 西達布の北方の山頂部にもわずかにみとめられる。

この地層は, 輝緑岩, スピライトおよび輝緑岩質凝灰岩などいろいろな輝緑岩質岩類の複合体であるが, 大部分は暗緑色~暗緑灰色の輝緑岩で構成されている。 落合図幅地域に発達するものと同様に, しばしば石灰岩を介在しているらしい。 しかし, 賦存位置の確認されているのは, 空知川の北岸の伊勢団体の北方の山腹部にみとめられるレンズ状小岩体だけである。

2.1.2 富士川 ふじがわ 頁岩層〔Y2〕

伊勢団体の北方のトマム輝緑岩質岩層の西側に帯状に分布している。 露出不良のため, 確実な岩相はあきらかでない。 しかし, 落合図幅の富士川頁岩層と同様に, 暗灰色頁岩, 青灰色砂岩および灰白色チャートなどで構成されていることが転石からうかがえる。

2.2 主夕張層

主夕張層は, 砂岩を主体とするニゴリ川砂岩層, 頁岩からなる滝ノ沢頁岩層, および 砂岩・頁岩を主体とし, 輝緑岩質岩を介在する無名沢輝緑岩質岩砂岩層とに区分される。

2.2.1 ニゴリ川砂岩層〔S1〕

この地層は, 伊勢団体の北西の山地帯, 西達布の東部の山腹部および西達布の北方の山頂などに分布している。 伊勢団体の北西部では, まえにのべた富士川頁岩層に接して発達しているが, 整合的かどうかはわからない。 少なくとも落合図幅と同様に整合的関係をしめすものと考えられる。 西達布の東部では, 変成された緑色岩類と分布上 直接しており, おそらく断層で接するものと考えられる。 また西達布の北方の山頂部では, まえにのべたトマム輝緑岩質岩層と断層で直接している。

この地層は, 暗灰色ないし灰白色の粗粒ないし中粒砂岩を主体とし, 暗灰色の頁岩を介在している。 全般的に塊状の砂岩からなるが, 局部的に板状層理も発達している。

2.2.2 滝ノ沢 たきのさわ 頁岩層〔S2〕

滝ノ沢頁岩層は, 図幅の西南隅の山地にみられる向斜構造の東西両翼を構成して分布しているほか, 西達布の東北の山地の残丘状の小丘を構成している。

この地層は, 暗灰色の頁岩を主体とし, 硬砂岩やチャートをはさんでいる。 一般に板状層理の発達する地層であるが, 図幅地域ではかなり破砕されている。

2.2.3 無名沢 むめいざわ 輝緑岩質岩砂岩層〔S3〕

この地層は図幅の西南隅の山地で, 向斜構造の中心に分布しているだけである。

この地層は, 輝緑岩質凝灰岩, 砂岩, 頁岩, チャートなどから構成されている。 空知川の北岸地域では, 落合図幅でみられた岩相がほぼ連続している。 すなわち, 暗緑色の輝緑岩質凝灰岩, 暗灰色の頁岩,暗赤褐色や灰白色のチャートなどの互層からなり, とくに, チャートが厚く発達し, ほぼ NS 方向につらなる岩峯を構成している。 西達布の南部のドロマイト鉱山(鹿越鉱業 東山採鉱場)では, 暗緑色~淡緑色の輝緑岩質凝灰岩, 珪質の黒色頁岩, 暗灰色の砂岩, 灰白色~淡赤色のチャートなどで構成されている。 全般的には, 下位は輝緑岩質相, 上部は頁岩, 砂岩, チャートなどの堆積岩相が卓越している。 石灰石およびドロマイト鉱床は, 輝緑岩質岩相にも堆積岩相にもみとめられるが, 杉本ほか(1964)によれば 一般に上部の堆積岩相のなかに胚胎するものが規模も大きいといわれている。

この地域の輝緑岩質岩相は, 下位のトマム輝緑岩質岩層のものと区別しがたいが, しばしば砂岩, 頁岩などを介在している点や, 南部の空知川の河岸に分布する地層との関連からみると, 無名沢 輝緑岩質岩砂岩層中のものとみるのが妥当である。

III.2.2 十勝 とかち 熔結凝灰岩〔Wa〕

この熔結凝灰岩は, 日高累層群の分布する低地をうめ, なだらかな台地状の地形をつくって広く発達している。 この図幅地域内では 1 枚の熔結凝灰岩しかみとめられない。 しかし, [ 東に ] 隣接の 佐幌岳 さほろだけ 図幅周辺では, 橋本誠二ほか(1968)によれば 4 枚の熔結凝灰岩に区分されている。 この図幅内のものは, 岩質, 分布状態から, 4 枚のうちの最上部の熔結凝灰岩に対比できる。 したがって, 更新世の可能性も考えられる。

第 6 図 十勝熔結凝灰岩の露出(国道切り割り)

この熔結凝灰岩は, 一般に灰色~淡灰色を呈し, 熔結作用のていどで若干の岩相変化がみとめられる。 熔結作用の進んだ部分は流理構造が発達し, 麓郷 ろくごう の東方ではほぼ南北の走向で, 西に 10°傾斜する流理構造がみられる。 また, 熔結作用の進んでいない部分は, 西達布川の上流, 930.8 m 山の南の小沢などに若干露出している。 黒色~淡灰色の角状軽石(4 cm 大以下)および粘板岩, 砂岩などの岩片をふくみ, 軽石流堆積物の岩相をていしている。

岩質は, 流紋岩質熔結凝灰岩で, 3~5 mm 内外の大型の石英粒と黒雲母を多量にふくんでいることで特徴づけられる。

第 7 図 十勝熔結凝灰岩の顕微鏡写真(+ ニコル, × 20)

III.2.3 大麓山 たいろくさん 熔岩〔Ta〕

この岩石は, 図幅の中央北部に発達するもので, 北に隣接する十勝岳図幅にまたがって大麓山を構成している熔岩である。 大麓山は, かなり開析の進んだ火山で, 周辺部は厚い崖錐におおわれており, 大きな川筋に若干の露出が観察されるていどである。

基底部において観察された流理構造は, すべて北から北西に 15°ぐらい傾斜しており, 熔結凝灰岩をおおって発達していると判断される。

この熔岩は, 板状節理の目立つ黒色 堅硬な しそ輝石普通輝石安山岩で, 上部には集塊岩質のものもみられる。 いちじるしく斜長石の斑晶にとんだ斑状構造をしめし, しそ輝石, 普通輝石の斑晶のほかに, まれにかんらん石をふくんでいる。 石基は, 針状の斜長石と粒状の輝石をガラスが埋めたハリ基晶質をしめすが, 部分的には, 短冊状の斜長石が晶出して隙間構造をとるものもある。

第 8 図 大麓山熔岩の顕微鏡写真(+ ニコル, × 30)

III.2.4 第四系〔Tr, Tu, Al〕

この図幅地域に発達する第四紀の地層は, 空知川の河岸をはじめ各地の河川沿岸に発達する河岸段丘堆積物, 日高累層群で構成されるモナドノック状の山地の周辺や, 北部の火山岩地帯の山麓斜面に発達する崖錐堆積物, および河川流域にみられる氾濫原堆積物である。

河岸段丘堆積物は, 河床からの比高 5 m ていどの平担面を作って発達しており, とくに空知川の沿岸や麓郷地域で発達良好である。 麓郷地域では, 大量の人頭大前後の円礫で構成され, 22 / 1000 ていどの広い傾斜面を作っていて, 扇状地堆積物とも考えられる様相を呈している。 麓郷の西方の段丘堆積物の礫層からは, 大量の湧水がみられる。

崖錐堆積物は, 背後地を構成する岩層からの崩壊物で構成され, とくに南西部の日高累層群分布地域で厚く堆積している。

冲積氾濫原堆積物は, [ 図幅地域南西隅の ] 空知川の河岸でやや厚く堆積しているが, ほかの地域ではがいして薄く狭少な分布をしめしている。

III.2.5 変成岩類

図幅地域にはホルンヘルスおよび緑色岩類がみられるが, これらの層序的な位置については日高累層群の項 [ III.2.1 先白亜系 -- 日高累層群 ] で説明した。 ここでは顕微鏡観察の結果をのべる。

1. ホルンヘルス〔Ho〕

図幅の南半地域に点々と分布しているが, これらは, それぞれ構造的にも区別して考えなければならないものと思われる。 しかし, 分布がまばらなため, 相互の構造的な関係はあきらかでなく, したがって とりあえず一括してあつかった。 この地域のホルンヘルスは, 岩質的には, 黒雲母ホルンヘルス, 含菫青石ホルンヘルス, 含柘榴石菫青石ホルンヘルスなどにわけられるが, それぞれがどのように分布しているかは不明である。 全般的にみると, 落合図幅地域のホルンヘルスよりやや変成度の高いもののしめる面積が広いようである。 とくに, 幾寅の北方の浅野牧場付近 [ ← 図幅地域南西隅やや東の空知川の北方 1.5 km ] で, 花崗質岩のみられるあたりのものは変成度が高く, 柘榴石や菫青石 [ cordierite ; (Mg, Fe)2 Al3 (Al Si5 O18) ] が多量にふくまれている。 また, 石英, 黒雲母, 柘榴石, 菫青石などがかなり粗粒になり, 片理の発達も強く, 黒雲母片岩状になっている。 さらに, 絹雲母がいちじるしい方向性をもって配列している。 また, ほかの地域の方向性の弱いところでは, 石英と黒雲母がモザイク状に組合った粗粒なホルンヘルスとなっている。

第 9 図 ホルンヘルスの顕微鏡写真(// ニコル, × 20)

2. 緑色岩類〔Ge〕

緑色岩類は, 図幅の南部地域のホルンヘルス中に介在して, ほぼ南北ないし北北東の方向性をもって, 帯状に分布している。 これらは, 落合図幅のほぼ中央地域で集中的に発達する岩体の延長部にあたっている。

岩質は, 灰緑色ないし緑色を呈する細粒 堅硬なもので, 落合図幅中に発達するものとまったく同様な岩質をしめしている。 つまり, 顕微鏡下では, 陽起石 [ or アクチノ閃石 or 緑閃石 ; actinolite ] と曹長石を主体とし, 少量の石英と緑簾石 [ epidote ] をともなっている。 陽起石は, いちじるしく繊維状を呈し, ごくまれに原岩の構造と思われるオフィテック構造を残している部分がみられる。

落合図幅では, ほとんど変成されていないユートラシナイ沢層中にしばしば輝緑岩体が介在しているが, これらは, 層序的あるいは構造的な位置からも, 緑色岩類としたものとほぼ同一のものとみることができ, 緑色岩類は, 岩脈状あるいは岩床状に迸入した輝緑岩の変成されたものと考えられる。

III.2.6 花崗質岩類〔Gr〕

花崗質岩類は, 幾寅市街地の北方の浅野牧場付近および図幅中央地域の 879 m 山付近などで, ホルンヘルス中にわずかに分布している。

岩質には, 粗粒な優白岩質のものと, 中粒ないし粗粒のトーナル岩質のものとがある。

優白岩質のものは, 石英, カリ長石, 斜長石を主体とし, 少量の黒雲母をふくんでいる。 とくに, カリ長石が多く, 斜長石を包有してパーサイト構造をとるものや, 石英とミルメカイト構造をとるものがある。 黒雲母は, 比較的細粒で, 絹雲母にかわっているものが多い。 ときに, ごく少量の柘榴石をふくむものがみられる。

トーナル岩質のものは, 石英, 斜長石, 黒雲母からなり, ごく少量のカリ長石, チタン石, 燐灰石をふくんでいる。 斜長石は, 短冊状の自形をとるものが多く, その間を石英と黒雲母が埋める形をとっている。

第 10 図 花崗質岩類の顕微鏡写真(+ ニコル, × 20)

この花崗質岩類は, 分布はごくわずかであるが, この岩体周辺のホルンヘルスはとくに変成度が高くなっていることや, ホルンヘルスの分布が, 点々とではあるが, かなりのひろがりをもっていることなどから考えると, 十勝熔結凝灰岩やホルンヘルスの下位には, 相当大きな花崗質岩の岩体の存在が推定される。

IV. 応用地質

西達布図幅地域の鉱産資源は, 石灰石およびドロマイトだけである。 ともに, 空知層群中にふくまれるもので, 胚胎層準は, トマム輝緑岩質岩層と無名沢輝緑岩質岩砂岩層の2層準である。

IV.1 石灰石〔Ls〕

[ 図幅地域南西隅の ] 伊勢団体の北方山地のトマム輝緑岩質岩層中にみられるレンズ状の小岩体である。 これは, 20 数年前に採掘したことがあるという。 長尾捨一ほか(1952)によれば, この石灰石鉱体は, 南方の落合図幅中にある日鉄 東鹿越 ひがししかごえ 鉱山で採掘中のものと同層準で, 性状も同一であるとされている。 また, 鉱体は輝緑岩質凝灰岩中にほぼ N 30°E, 50°SE の走向傾斜で介在する不規則なレンズ状を呈している。 厚さ 10 m, 推定延長 50 m, 採掘面の高さ 15 m ていどの鉱体で, 理論可採埋蔵鉱量 18,750 ton, 可採粗鉱量 7,500 ton と推定されている。

品質は, 暗灰色~灰白色を呈し, やや結晶質で, 不純物が多く, 肉眼的にも品位不良とされている。

以上のように, 鉱量, 品質などの点から稼行価値はとぼしく, 現在では放置されたままである。

IV.2 ドロマイト〔Dm〕

西達布市街地の約 3 km 南方の山地帯は, 東鹿越の石灰石鉱床胚胎地層の延長が期待され, 以前から石灰石の賦存地帯として注目されてきた地域である。 しかし, この付近一帯は露出不良で, 確実な石灰石鉱床を把握するまでにはいたらなかった。 昭和 35 年頃から, 鹿越鉱業株式会社の探鉱が開始され, その結果, 鉱床の主体はドロマイト鉱床であることが確認され, また, 相当量の鉱量が把握された。 昭和 40 年から, 鹿越鉱業 東山採鉱場として採掘が開始され, 月産 2,000~3,000 ton の鉱石が出鉱されている。

第 11 図 ドロマイト鉱山(鹿越鉱業 東山採鉱場の採掘現場)

第 12 図 第 11 図の接写

第 13 図 ドロマイト鉱床賦存図(原図は杉本・石山)

ドロマイト鉱床は, 杉本良也ほか(1964)によれば第 13 図にしめしたように, 標高 350 m から 450 m にわたってほぼ出尾根部を構成し, 南北性の延長軸をもって紡垂形の分布をしめしている。 ドロマイトの賦存面積は 200 × 400 m である。 また, 試錐によって確認された鉱床の厚さは, 東端部で 30 m, 中央部で 60 m, 西端部で 28 m に達し, 不規則な層状鉱床と推定されている。 さらに, 西端部と中央部の間には向斜構造あるいは断層が推定されている。

第 14 図 ドロマイト鉱床の試錐柱状図の一例(鹿越鉱業 KK 資料による杉本・石山の原図)

鉱床は, 試錐柱状図 [ 第 14 図 ] によると, 大部分がドロマイトからなっているが, 石灰石, 頁岩, 炭酸塩化した輝緑岩質凝灰岩などを介在している。

ドロマイトは, 灰白色を呈し, ち密である。 不純物として石英, 粘土鉱物および褐鉄鉱をともなっている。

ドロマイトの分析結果は, 第 2 表のとおりである。

第 2 表 ドロマイト分析表(杉本・石山(1964)より転載)

試料番号 CaO % MgO % SiO2 % R2O3 % Ig. loss % 備考
1 34.50 14.74 2.80 3.20 44.55 ドロマイト鉱床試錐試料
2 34.84 16.08 1.28 2.41 44.83 ドロマイト鉱床試錐試料
3 37.33 16.50 0.28 0.60 45.58 ドロマイト鉱床試錐試料
4 42.01 11.32 0.70 - 44.98 第1鉱床転石
5 34.76 17.81 0.40 - 46.26 ドロマイト鉱床試錐試料
6 54.41 0.23 1.43 - 42.74 第2鉱床鉱石
7 55.10 0.25 0.51 - 43.40 第1鉱床(輝緑岩質岩層中)鉱石
8 38.63 13.94 1.34 - 45.12 ドロマイト鉱床試錐試料
9 55.23 0.33 0.34 0.32 43.64 第1鉱床(珪質岩層中)鉱石
10 40.70 12.36 1.22 0.60 45.15 ドロマイト鉱床試錐試料
11 46.79 0.27 14.41 0.82 37.28 第3鉱床鉱石
12 36.63 14.63 0.50 0.28 45.86 ドロマイト鉱床試錐試料
[ 第 2 表に番号を示した各試料の分析者 ]
1, 2, 3 : 北工試 桶屋 研究職員
4~12 : 地下資源調査所 二間瀬 研究職員

MgO はほぼ 15~18 % ていどしかなく, 成分上からは石灰質ドロマイトとよばれるもので, 品質はあまり良好とはいえない。 したがって, 利用面は苦土肥料の原料にかぎられると判断されている。

可採鉱量は, 試錐で確認された範囲で, 1,624,000 ton とされている。

なお, ドロマイト鉱体の南東部には, 小さなレンズ状の5つの石灰石鉱体が散点している。 いずれも規模が小さく, 20 × 20 × 80 m 以下であり, 稼行されてはいない。

文献

橋本誠二・太田茂志・藤原嘉樹(1968):
北海道中央部佐幌岳付近に分布する火山岩類の古磁気学的研究, 地球科学,22 巻 1 号
橋本亘(1953):
5万分の1地質図幅説明書「山部」, 北海道開発庁
勝井義雄・高橋俊正・土居繁雄(1963):
5万分の1地質図幅説明書「十勝岳」, 北海道開発庁
長尾捨一・小山内熙・酒匂純俊(1952):
石狩国空知郡南富良野村金山,鹿越および幾寅付近の石灰石鉱床, 北海道地下資源調査資料,第 4 号,北海道開発庁
小山内熙・長尾捨一・三谷勝利・長谷川潔・橋本亘(1962):
5万分の1地質図幅説明書「石狩金山」, 北海道開発庁
杉本良也・石山昭三(1964):
石狩国東山ドロマイト鉱床調査報告, 北海道地下資源調査資料,第 93 号,北海道開発庁
酒匂純俊・小山内熙(1962):
5万分の1地質図幅説明書「千呂露」, 北海道立地下資源調査所
酒匂純俊・小山内熙・松下勝秀・金山喆祐(1967):
5万分の1地質図幅説明書「落合」,北海道開発庁

EXPLANATORY TEXT OF THE GEOLOGICAL MAP OF JAPAN (Scale 1 : 50,000)

NISHI-TAPPU

(Kushiro - 15)

By Hiroshi Osanai, Sumitoshi Sakō, Kōhei Matsui and Katsuhide Matsushita (Geological Survey of Hokkaidō)


Résumé

The area of Nishi-tappu sheet map is situated in latitude 43°10' - 43°20' N, and longitude 142°30' - 142°45' E, and is located in the northern down-warped extension of the Hidaka zone which constitutes the central back-bone of Hokkaidō. Zonal arrangement of the metamorphic rocks or igneous rocks as observed in the southern part of the Hidaka zone is absent here, and instead, facies of relatively higher horizons are well-developed. The Hidaka Supergroup developed in this area is composed of metamorphic rocks such as hornfels, and green stones, and nonmetamorphosed rochs, as shown in the following table.

Hidaka
Super-
group
Sorachi
Group
Shu-yūbari
Formation
Mumei-zawa diabasic rock sandstone member
Takino-sawa shale member
Nigori-sawa sandstone member
Yamabe
Formation
Fuji-gawa shale member
Tomamu diabasic rock member
Kamui~Nakanokawa
Group
---- fault ----
Hornfels and Green rocks

The hornfels and the green stones of the lowermost horizon of the Hidaka Super-group constitute a characteristic metamorphic zone, different from other parts of the Hidaka belt. From the field evidences observed within this area and also the area of Ochiai sheet map it is inferred that the hornefls were formed by metamorphism of the Yūtorashinai-zawa Formation of the Kamui~Nakanokawa Group, and the green stones were derived from the diabase intruded into the Yutorashinai-zawa Formation as dykes and sheets.

All these metamorphic rocks are distributed sporadically in the southern part of the sheet map, and the sheet of metamorphism is increased in the vicinity of the granitic rocks, resulting in the formation of coarse-grained mica schists with strong schistosity.

The non-metamorphic Sorachi Group, separated from the metamorphic formations by the faults are developed in the southern part of the area. Its lowermost horizon is represented by the Yamabe Formation, which is divided into the lower Tomamu diabasic rock member composed of diabase, spilite and schalstein, and the upper Fuji-gawa shale member composed of the alternation of shale, sandstone and chert. The Yamabe Formation is covered conformably by the Shu-yūbari Formation which is also composed of Nigori-sawa sandstone member, Takino-sawa shale member, and Mumei-zawa diabasic rork sandstone member made of the alternation of sandstone, shale, chert and schalstein. Limestone and dolomite are frequently found in the lower-most and the upper-most formations of the Sorachi Group.

Tokachi welded tuff of rhyolitic composition forms an extensive flat plateau, covering the Hidaka Super-group. Tairoku-san lava of andesitic composition which forms a part of the Tokachi volcanic group is also distributed in the northern central part of the area. All of them are regarded to have been erupted from some centers in the Tokachi - Daisetsu volcanic group during the period from the end of Tertiary to Quaternary.

These formations are covered by talus deposits on the slopes of mountains, by terrace and alluvial deposits along the rivers, all of which were deposited during the Diluvial and Alluvial periods.

The mineral resouces in this area are represented only by limestone and dolomite in the Sorachi Group. The limestone layers are on small scale, confined to the shcalstein and were mined once, but they are now abandoned. Dolomine layers are intercalated between the alternation of the schalstein and sandstone, and their amount is estimated at about 162,400 tons and they are now mined for the raw material of the fertiliers [ ← fertilizers ? ] .


昭和 43 年 3 月 25 日 印刷
昭和 43 年 3 月 30 日 発行
著作権所有 北海道開発庁