01054_1968

5万分の1地質図幅説明書

旭岳 あさひだけ

(網走 第 54 号)

北海道立地下資源調査所
技術吏員 国府谷盛明
嘱託 小林武彦
嘱託 金喆祐 [ Cheoul Woo Kim ]
嘱託 河内晋平

北海道開発庁

昭和 43 年 3 月


この調査は, 北海道総合開発の一環である, 地下資源開発のための基本調査として, 北海道に調査を委託し, 道立地下資源調査所において実施したものである。


目次

はしがき
I. 位置および交通
II. 地形
III. 地質概要
IV. 先第三紀の地層
IV.1 下部日高層
V. 新第三紀中新世の地層および岩石
V.1 カウンナイ・プロピライト
V.1.1 石英粗面岩質プロピライト
V.1.2 角閃石安山岩質プロピライト
V.1.3 石英安山岩質完晶質岩
V.1.4 玄武岩質プロピライト
V.2 ヤンベタップ層
V.2.1 変質火山岩類
V.2.2 堆積岩相
VI. 新第三紀鮮新世に属する岩石
VI.1 トムラウシ熔結凝灰岩
VI.1.1 熔結凝灰岩相
VI.1.2 凝灰質砂層
VI.2 ユニ石狩熔岩
VII. 大雪火山群形成に関連する岩石
VII.1 大雪火山群の基底の形成期に属する岩石
VII.1.1 美瑛下部熔岩
VII.1.2 黄金ヶ原下部熔岩
VII.1.3 沼ノ原熔岩
VII.1.4 緑岳下部熔岩
VII.1.5 化雲岳熔岩
VII.1.6 凡忠別岳熔岩
VII.1.7 黄金ヶ原熔岩
VII.1.8 忠別岳熔岩
VII.1.9 高根ヶ原熔岩
VII.2 古大雪火山の形成期に属する岩石
VII.2.1 ヤンベタップ集塊岩
VII.2.2 古大雪熔岩
VII.2.3 白雲岳熔岩
VII.2.4 後旭岳熔岩
VII.2.5 トムラウシ第1熔岩
VII.2.6 トムラウシ第2熔岩
VII.3 新大雪火山の形成期に属する岩石
VII.3.1 層雲峡熔結凝灰岩
VII.3.2 トムラウシ第3熔岩
VII.3.3 熊ヶ岳熔岩
VII.4 旭岳火山の形成期に属する岩石
VII.4.1 旭岳火山
VII.4.1.1 旭岳第1熔岩
VII.4.1.2 旭岳第2熔岩
VII.4.1.3 旭岳第3熔岩
VII.4.1.4 旭岳第4熔岩
VII.4.1.5 旭岳火山砕屑物
VIII. 第四紀更新世~現世の地層
VIII.1 第1段丘堆積物
VIII.2 白陽平層
VIII.3 第3段丘堆積物
VIII.4 崖錐堆積物
IX. 大雪火山群形成史
IX.1 基盤の問題
IX.2 第Ⅰ期
IX.3 第Ⅱ期
IX.4 第Ⅲ期
IX.5 第Ⅳ期
X. 氷蝕地形および周氷河地形
X.1 カール
X.2 表層地形
X.2.1 多角形土
X.2.2 条線砂礫
X.2.3 流土階段
X.2.4 舗石
X.2.5 雪田雪蝕地形
XI. 応用地質
XI.1 金属非金属鉱床
XI.1.1 銅・鉛・亜鉛鉱床
XI.1.2 硫黄鉱床
XI.2 温泉
XI.2.1 天人峡温泉
XI.2.2 湧駒別温泉
XI.2.3 高原温泉および周辺の温泉
XI.2.4 トムラウシ温泉群
文献

Résumé

5万分の1地質図幅説明書

旭岳 あさひだけ

(網走 第 54 号)


はしがき

この図幅は, 昭和 37 年から 39 年にかけて行なった, 野外調査の結果をとりまとめたものである。

この地域は, 既刊の大雪山地質図幅に南接し, 大雪山地質図幅とともに, 大雪火山群からなる山岳地域である。 近年, 大雪国立公園として, 脚光を浴び, 交通の便も比較的よくなってきたが, 大部分が急峻な山岳地帯であるため, 地質調査にあたっては, すべてテントを使用しなければならなかった。 大雪火山群は, 大雪山から十勝岳に至る広大な地域を占めているので, 地形的な制約もあり, 多くの問題が未解決のまま残されているが, 大雪火山群の北部についてできるだけ, 総括的にのべる。

野外調査にあたっては, 図幅の西部のカウンナイ川周辺を金が, 東北部および全域について小林が, 旭岳の西部を河内がそれぞれ分担し, 国府谷が, ほぼ全域にわたって調査した。 また, 松井公平 [ 北海道立地下資源調査所 研究職員 ] , 野地保正 [ 北海道開発局 土木試験所(調査当時は北大 大学院) ] 両氏の協力, 援助を受けた。 報告に先きだち, これらの諸氏や, 野外調査に際し, いろいろと便宜をはかっていただいた上川町役場の多くの方々に謝意を表する。

I. 位置および交通

この図幅は, 北緯 43°30'~43°40', 東経 142°50'~143°00' に位置し, 北海道のほぼ中央部にあたっている。 行政上は, 上川郡 上川町, 東川町, 美瑛 びえい 町, 新得 しんとく 町に属している。

第 1 図 位置図

全域が山岳地帯であり, 一般の部落は全くない。 交通は, 旭川より忠別川にそって 天人峡 てんにんきょう 温泉および 湧駒別 ゆこまんペつ 温泉に至るバス, 層雲峡 そううんきょう 温泉から石狩川の支流のヤンベタップ川に沿って, 高原温泉に至るバスが通じているだけである。 また, 道路は ヌタクヤンベツ川 [ これは図幅地域東端の南北中央付近の「ヌタプヤンベツ川」? ] まで林道があるだけで, ほかはすべて山道のみで, 交通の便は悪い。

II. 地形

この地域の地形を概括的にみると, 大雪火山群とこれらの基盤を構成している地域, 石狩川に沿って発達する平坦な地形とに分けることができる。

大雪火山の基盤は, 西部と東部にみられるだけである。 西部は, カウンナイ・プロピライトで構成されている。 また, 東南部は粘板岩で構成されている。 いずれも, 大雪火山にくらべ, 急峻な山岳地形を呈している。 とくに東南部の粘板岩で構成されている地域は, ほかの地域にくらべて, 沢はこまかく発達し, 稜線もせまく, 東北東から西南西にのびる稜線が顕著に発達している。 この稜線は切峯面図 [ 第 2 図 ] にもみられるように, 北から西南に, 大雪火山弧にそって, 弧状に発達している。

第 2 図 切峯面図

火山地形としては, 平坦な山稜を形成する熔岩流の地形, ドーム状の地形, 成層火山の地形に分けることができる。

平坦な熔岩台地状の地形は, この地域の大半を占めているものである。 これらの代表的な地形は, 高根ヶ原 たかねがはら [ ← 図幅地域北端中央やや東の 白雲岳 はくうんだけ 小白雲岳 しょうはくうんだけ の南方 2 km ] 黄金ヶ原 こがねがはら [ ← 図幅地域南端中央付近のトムラウシ山の北西方 2 km ] 五色ヶ原 ごしきがはら [ ← 図幅地域ほぼ中央の 化雲岳 かうんだけ の東方 2 km の五色岳(標高 1868 m ; 図幅には名称の記載なし)の東南方 2 km 付近 ] などにみられる。 これらの地域では, 平坦で, 山稜の幅も広い。 高根ヶ原, 五色ヶ原などでは, 水平距離 2 km で, 標高差 200 m 前後のゆるい傾斜の平坦さである。 このように緩傾斜の平坦面を形成しているが, 熔岩流の末端部では急な崖を形成している。

ドーム状の地形を呈しているものは, 白雲岳, トムラウシ岳などに代表される。 いずれも, 一見 ドーム状の形態をしめしているが, 大雪山地質図幅でものべたように, 粘性の高い熔岩流で形成されたものである。 とくにトムラウシ岳では, 後にのべるように, 東側に多量に熔岩流を流した地形が認められる。

第 3 図 トムラウシ岳

成層火山としては, 旭岳 [ ← 図幅地域北端中央付近 ] があげられる。 旭岳は, 両側に口を開いた馬蹄形の火口を持つ截頭円錐形を呈している。 東および北側は, 他の山にさえぎられ, 裾野の発達はよくないが, 西および南には裾野が広く発達し, 浅い放射状谷が発達している。 また, 西側には多量に熔岩を流出しており, とくに, 湧駒別 ゆこまんぺつ 川にそって流下した熔岩流は, 両側が堤状に高くなり, そのうちがわは, 不規則な階段状の凹凸が発達し, 熔岩流の地形をよく残している。

これらの火山地形とは別に, 図幅の東北部には, 石狩川に沿って平坦な地形が発達している。 これらは, 白陽平 はくようだいら 層, 第1, 第3段丘堆積物などで構成される面であるが, この地形については, それぞれの地質の項で詳述する。

また, 大雪火山群は, 標高 1,700 m をこえており, 各所に氷蝕地形および周氷河地形とみられるものが発達している。 その代表的なものについては, 地質図上にも記載した。 氷蝕地形および周氷河地形については, 項を別に詳述する。

このほか, 特徴的な地形としては, 高根ヶ原の東側にみられる, 地辷り地形である。 ここでは, 大きな岩塊が, 何段にも辷り, 地形図上では, 不規則な等高線で示されている。 それぞれの地辷り塊の背後には, 小湖沼が多数にみられる。

III. 地質概要

この地域を構成している地層は, 先第三紀に属する日高累層群と新第三紀中新世に属する火山岩類および堆積物, さらに, これらをおおって発達した大雪火山群を構成する多くの熔岩が大部分を占めている。 このほか, 第四紀に属する新しい堆積物が若干分布している。

第 1 表 模式柱状図

時代 層序 記号 備考
第四紀 現世 旭岳火山 火山破砕物 D 大雪火山
第Ⅳ期活動
第4熔岩 A4 周氷河的
気候条件
第3熔岩 A3
第2熔岩 A2
第1熔岩 A1
崖錐堆積物 Tu
第3段丘堆積物 T3
現世

更新世
白陽平層 Fs
熊ヶ岳熔岩 K 大雪火山
第Ⅲ期活動
トムラウシ第3熔岩 Tv3
更新世 層雲峡熔結凝灰岩 So
第1段丘堆積物 T1 氷蝕
トムラウシ第2熔岩 Tv2 大雪火山
第Ⅱ期活動
トムラウシ第1熔岩 Tv1
白雲岳熔岩 / 後旭岳熔岩 Hv / Uv
古大雪熔岩 Sm
ヤンペタップ集塊岩 Ya
第四紀

第三紀
更新世

鮮新世
忠別岳溶岩 / 高根ヶ原熔岩 / 黄金ヶ原熔岩 Cv / Tl / Kl 大雪火山
第Ⅰ期活動
化雲岳溶岩 / 凡忠別岳熔岩 Ql / Pl
黄金ヶ原下部熔岩 / 沼ノ原熔岩 / 緑岳下部熔岩 Kv / Nl / Ml
美瑛下部熔岩 Bl
ユニ石狩熔岩 Ul
トムラウシ熔結凝灰岩 凝灰質砂 Ts
熔結凝灰岩 Tw
第三紀 中新世 カウンナイ・
プロピライト
ヤンベタップ層 堆積物 Kp Ys
変質火山岩 Yv 鉱化作用
先第三紀 日高塁層群 Sl

先第三紀に属する地層は, 日高累層群である。 この地域の日高累層群は, 主として粘板岩で構成されている。 分布は, 図幅の東南部にわずかにみられるだけで, この地域間では構造を明らかにするまでにはいたっていない。

新第三紀に属すると考えられる地層は, 大半が火山岩類によって構成されているので, その時期を明確にすることはできないが, 岩質, 分布などから隣接地域の地層と対比した。

この時期に属するものは, カウンナイ川を中心に西部に分布しているカウンナイ・プロピライトと 東北部のヤンベタップ川周辺に発達しているヤンベタップ層である。

カウンナイ・プロピライトは, 一種の複合火成岩体で, 石英粗面岩質プロピライトから玄武岩質プロピライトまで岩質が変化し, 一部には完晶質岩をもともなっている。

ヤンベタップ層は, いちじるしく珪化作用を受けた熔結凝灰岩を主体とし, わずかに泥岩層や砂岩層をともなう。 いずれも, 東に隣接する石狩岳地質図幅の 東高地 ひがしこうち 層に対比されるものである。

鮮新世に属するものは, トムラウシ川熔結凝灰岩, ユニ石狩熔岩である。 トムラウシ熔結凝灰岩は, この図幅の東南部から, 南に隣接する十勝川上流地質図幅に広く分布している, 石英粗面岩質安山岩である。

ユニ石狩熔岩は, この図幅の東北部から [ 北に隣接する ] 大雪山地質図幅, [ 東に隣接する ] 石狩岳地質図幅域に広く分布している。 しそ輝石普通輝石安山岩である。

そのほかの火山岩類は, 大雪火山の形成に関連した熔岩であり, 一部は鮮新世に属するものと考えられるものがあるが, 時代区分を明確にすることが困難なので, 大雪火山群の形成時期に合わせて説明することにした。

大雪火山の形成史は, 以下の4期に分けられる。

Ⅰ) 大雪火山群の基底の形成期
Ⅱ) 古大雪火山の形成に関連する時期
Ⅲ) 新大雪火山の形成期
Ⅳ) 旭岳火山の形成期

このうち第Ⅰ期は鮮新世~更新世に属し, 第Ⅳ期以降がほぼ現世に属すると考えられる。

第Ⅰ期に属するものは, 美瑛下部熔岩, 黄金ヶ原 こがねがはら 下部熔岩, 沼ノ原 ぬまのはら 熔岩, 化雲岳 かうんだけ 熔岩, 緑岳 みどりだけ 下部熔岩, 凡忠別岳 ぽんちゅうべつ 熔岩, 黄金ヶ原熔岩, 忠別岳熔岩, 高根ヶ原熔岩などである。 これらの熔岩はいずれも複輝石安山岩で, 板状節理が発達している。 広域に分布し, 平坦な熔岩台地を形成している点に特徴がある。 これらの熔岩のうち, 忠別岳熔岩では, 逆滞磁していることが報告されており, 恐らく鮮新世に属するものと考えられる。 これらの熔岩は, いわゆる flat lava と呼ばれている型のものである。

第Ⅱ期に属するものとしては, 古大雪熔岩, 後旭岳 うしろあさひだけ 熔岩, 白雲岳 はくうんだけ 熔岩, トムラウシ第1, 第2熔岩である。 いずれの熔岩も, 大きい斑晶の角閃石をもっている点に特徴のある安山岩である。

第Ⅲ期に属するものとしては, 層雲峡熔結凝灰岩, 熊ヶ岳 くまがたけ 熔岩, トムラウシ第3熔岩などである。

第Ⅳ期に属するものとしては, 旭岳火山を形成するいろいろの熔岩であり, 旭岳第1~第4熔岩および旭岳火山砕屑物である。 これらは, いずれも層雲峡熔結凝灰岩を不整合におおうものである。

このほか, 堆積物としては, 第四紀更新世に属する, 第1段丘堆積物, 白陽平 はくようだいら 層, 第3段丘堆積物が, それぞれ, 石狩川にそう低地に発達している。

IV. 先第三紀の地層

この地域に発達している先第三紀の地層は日高累層群に属する地層で, 下部日高層である。

IV.1 下部日高層 [ Sl ]

石狩川の上流部および 図幅の東南部の ヌプントムラウシ川の上流 [ ← 図幅の南部地域外 ? ] に分布しており, 沼ノ原から 石狩岳 [ ← 図幅の東部地域外 ] の稜線では, 標高 1,300 m の高さまで分布している。 この地域では, 主として粘板岩で構成されている。 この粘板岩は, 東側の石狩岳地質図幅における下部日高層に対比することができるので, 下部日高層とした。 また, 南接する十勝川上流地質図幅では, ニペソツ層とされているものである。

この地域における下部日高層は, 大部分が黒色, 緻密で, 板状の劈開の発達した粘板岩である。 一部には, 暗灰色の砂岩層をともなっている。

V. 新第三紀中新世の地層および岩石

この地域に発達している新第三紀 中新世に属すると考えられる地層のうち, 正常堆積物をともなうものは, ヤンベタップ層の一部だけである。 他は, すべて火山岩類である。 ヤンベタップ層の正常堆積岩相のなかからは, 化石など時代を指示するものはみつかっていないので, これらの地層や岩石の正確な時代を直接決めることはできない。 岩質や分布などから, 隣接図幅との対比で, 石狩岳地質図幅の 東高地 ひがしこうち 層と対比した。 カウンナイ・プロピライトと ヤンベタップ層との関係については十分にわかっていないが, カウンナイ・プロピライトは, ヤンベタップ層の下部と考えられる。

V.1 カウンナイ・プロピライト [ Kp ]

カウンナイ・プロピライトは, 忠別川流域 [ ← 図幅中央から南西 ] , カウンナイ川流域 [ ← 図幅地域の西端の南北中央 ] 辺別川 べべつがわ 流域 [ ← 図幅地域の西端のやや南方 ] , 美瑛川の上流 [ ← 図幅地域南西隅 ] に分布している。 このほか, 東部のヤンベタップ層の下部にみられるプロピライトもこの地層に含めた。

カウンナイ・プロピライトは, 岩相がいちじるしく変化し, 石英粗面岩質のものから玄武岩質のものまでみられ, さらに完晶質岩をもともなっている。 一種の複合火成岩体を形成している。 大雪火山の噴出物に広くおおわれているので, 露頭は忠別川, カウンナイ川, 辺別川など川岸にだけに限られているとともに, 鉱化作用の影響など受けているので, 各構成岩相の分布, 構造など, 十分に明らかにできない。 したがって地質図上では一括して図示した。 このプロピライトは, 次の各岩質に大略区分することができる。

1) 石英粗面岩質プロピライト
2) 角閃石プロピライト
3) 石英安山岩質完晶質岩
4) 玄武岩質プロピライト

これらの各岩質は, ときに漸移する場合も認められるが, 各岩質相互の関係は, まだ十分に明らかにされていない。 つぎに, 各岩質ごとにのべる。

V.1.1 石英粗面岩質プロピライト

この岩質のものは, 忠別川の上流部, 天人峡温泉付近, 湧駒別温泉の西南の山稜, カウンナイ川, 辺別川の中流部など, 広く分布している。 岩質も変化に富み, 一般には均質な石英粗面岩質であるが, 流理構造をもつ流紋岩質のものから, いわゆる, 第三紀花崗岩と呼ばれる完晶質のものまでみられる。 この完晶質岩相のものは, 特異な分布をしめしているので, 石英安山岩質完晶質岩として分けた。

石英粗面岩質で, 流理構造の発達しているものでは, その走向・傾斜は, ほぼ一定で, N 50°W, 80°SW 前後である。 また, カウンナイ川の中流流域では, N 10°W, 50~60°NE 方向の顕著な節理の発達するものがみられる。

一般的に, 淡緑色ないし, 灰緑色を呈し, 緻密 堅硬な岩石であるが, カウンナイ川の中流付近では, ところどころが鉱化作用を受けているため, 粘土化し, 酸化などのヤケを生じている部分が多い。 また, 辺別川の中流では, いちじるしく片状化した部分もみられ, N 10°W, 70°NE 方向の片状構造が発達している。

顕微鏡下では, 一般に斑状組織をしめし, 石基部のうねる流理組織をもつものもみられる。

斑晶鉱物は, 石英をのぞき, ほとんどが交代され, 緑泥石, 絹雲母, 方解石および緑簾石にかわっている。 有色鉱物は, 黒雲母と柱状の角閃石であるが, 大部分が緑泥石および緑簾石に交代され, 形態が残されているだけである。 斜長石は, 火山岩特有の明確な境界をもった累帯構造をしめし, 割目や周辺部より曹長石化し, さらに方解石と絹雲母に交代されている。 石英は新鮮で, 結晶周辺部がなめらかな彎曲面をもつ融蝕石英である。

石基部は, 微細な隠微晶質のものから細粒な結晶質のものまでみられるが, 大部分が緑泥石, 方解石および緑簾石に交代されている。 鉱化作用を受けているところでは, 石英および絹雲母が形成され, 黄鉄鉱化がいちじるしい。

V.1.2 角閃石安山岩質プロピライト

プロピライトの代表的な岩石で, 忠別川の上流, カウンナイ川, 美瑛川などで, 石英粗面岩質プロピライトと接して分布するが, 相互の関係は明らかでない。 この岩石は, 一般に柱状の角閃石が目立つ緑色ないし濃緑色 堅硬な岩石である。 分布状態は明らかでないが, 一部に角礫状あるいは, 緑色, 黄緑色や赤色のいりまじる雑色角礫状のものも分布している。

顕微鏡下では, 斑晶と石基の区別が明らかな斑状組織で, 大部分の岩石がプロピライト化され, 新鮮なものは少ない。 斑晶鉱物は, 斜長石, 角閃石で構成されるが, 一部に輝石と思われる短柱状のものがみられるが, ほとんど緑泥石および緑簾石に交代されているため, 識別ができない。 斜長石は, 曹長石化および方解石に交代されるものが多い。 柱状角閃石もまた緑泥石と緑簾石に交代され, 大部分仮像となっている。 微斑晶の構成も斑晶と同様で, ほとんど交代されている。

石基部は, 隠微晶質で緑泥石, 緑簾石および針状微細な絹雲母に交代され, 黄鉄鉱化を受ける場合が多い。

V.1.3 石英安山岩質完晶質岩

この岩石は, 石英粗面岩質プロピライトの中に分布している。 産状から2種類のものが区別される。

ひとつは, 石英粗面岩質プロピライトと漸移するもので, 忠別川の敷島の滝の上流, ポンカウンナイ川の中流, ポンカウンナイ合流点付近, カウンナイ川の中流, 辺別川の中流部などにみられる。 この岩石は, 斑状 完晶質岩で, 比較的新鮮な, 灰白色ないし灰緑色を呈する。 斑晶の有色鉱物は, 黒雲母と角閃石からなり, 緑泥石と緑簾石に交代されているものが多い。 斜長石はいちじるしい累帯構造をしめし, 割目や周縁部より曹長石化するものがみられる。 石英は新鮮でなめらかな結晶輪かくをもつ融蝕石英である。

石基部は結晶質で, 石英, 斜長石, 黒雲母と少量の角閃石からなるが, 部分的に緑泥石, 方解石および緑簾石に交代され, 識別できないものも認められる。

このほかのものは, 石英粗面岩質プロピライトと明白な境界で接し, 岩脈状となるもので, カウンナイ川の上流部に分布している。

一般に灰白色 中粒 堅硬な岩石で, 比較的 均質 新鮮である。

顕微鏡下では, ほぼ等粒な粒状組織を示し, 斜長石, 石英, 黒雲母および少量の角閃石からなり, 部分的に曹長石化, 緑泥石化, 緑簾石化および方解石化が認められる。 石英は斑状完晶質岩のものと同様な融蝕石英である。

これらの完晶質岩は, いわゆる第三紀花崗岩と称されているものに類似している。 他のプロピライトとは漸移あるいは貫入状の構造をとっているが, 河岸の露頭で観察されるだけで, 正確な分布はまだ明らかでないが, ほぼ南北性のレンズ状に分布するようである。 貫入状のものも, ほかのプロピライトと大きな時間的な間隙はないものと思われる。

V.1.4 玄武岩質プロピライト

この岩石は, カウンナイ川の上流, 下流にみられる。 分布状態から岩脈状をなすものと思われる。 灰緑色を呈し, 緻密な岩石で, 斜長石斑晶がいちじるしく認められる。

顕微鏡下では, 石基鉱物がインターサータル組織を示すものから, 隠微晶質のものまで認められるが, 大部分 結晶質である。

斑晶鉱物および微斑晶鉱物は, 斜長石, 角閃石および少量の輝石からなる。 斜長石は, 大部分が曹長石と方解石に交代されている。 角閃石および輝石は, 形状から区別されるだけで, ほとんどが緑泥石と緑簾石, 方解石に交代されている。

石基部は細粒オフィティック組織となるものと, 隠微晶質のものがみられる。 前者が比較的新鮮であるが, 隠微晶質のものでは, 緑泥石化, 針状絹雲母化および方解石化が認められる。 黄鉄鉱化は少ない。

これらの岩相とともに, カウンナイ川の支流の一部では, 緑色凝灰岩の薄層を介在する場合も認められる。

V.2 ヤンベタップ層

この地層は, 図幅東部の石狩川の支流, ヤンベタップ川に標式的に発達している。 このほか, ホロカ石狩川 [ ← 図幅地域北東隅 ] , シビナイ川に分布し, 標高では 1,300 m の高さ付近まで分布している。

大部分が変質した熔結凝灰岩で, 上部はこまかい葉理の発達した凝灰質砂岩の互層に漸移している。 ヤンベタップ川では, 下部はプロピライトに接しているが, その関係は不明である。

V.2.1 変質火山岩類 [ Yv ]

変質火山岩類の大部分は, 熔結凝灰岩起源のものである。 ホロカ石狩川, ヤンベタップ川などに発達している。

岩質は, 石英安山岩質の熔結凝灰岩で, 下部では濃緑色を呈し, ひじょうに緻密で, つぶされて横にのびた軽石片や気泡はほとんど認められない。 これに対して, 上部では灰緑色~灰褐緑色を呈し, 斑状に緑色部がみられる。 一般に粗しょうで軽石粒が多い。

このような岩相部では, とくにあらい柱状節理が発達している。

顕微鏡下では, 斑晶は斜長石, 石英からなり, 有色鉱物は斑晶としては, 黒雲母, 角閃石がみられるが, すべて外形のみで, 緑泥石, 方解石, 細粒の石英に変質している。

石基部は, 熔結凝灰岩特有の流理構造, 球顆構造をとどめるのみで, ガラス部分の多くは緑泥石化, 方解石化している。

V.2.2 堆積岩相 [ Ys ]

ヤンベタップ層の上部にともなうもので, 凝灰質砂岩, 泥岩の互層である。 ホロカ石狩川の上流部, シビナイ川の上流部に分布している。

ホロカ石狩川の上流部のものは, 全体に粗粒で, 砂岩ないし, 細粒角礫岩相が卓越しており, 全体に粗しょうである。 これに対し, シビナイ川の上流部では, 黄褐色を呈する泥岩および砂岩が発達している。

VI. 新第三紀鮮新世に属する岩石

新第三紀鮮新世に属すると考えられる岩石は, トムラウシ熔結凝灰岩, ユニ石狩熔岩である。 そのほか, 大雪火山群の基底をつくる多くの熔岩も, この時期に属するが, 説明の都合上, ここでは前者だけにした。 大雪火山群の基底を形成する多くの熔岩とユニ石狩熔岩とは, 時代を区分して分ける積極的な根拠はあまりないが, 他の熔岩にくらべて分布地域が大雪山の東側にひろがっているので, 大雪火山群の形成に直接的には関与していないものとして, この項に入れた。

VI.1 トムラウシ熔結凝灰岩

この熔結凝灰岩は, 図幅の東南部の石狩川の上流のクチャンベツ川, トムラウシ川流域に広く分布している。 さらに, 隣接する十勝川上流地質図幅地域に広く分布している。 一部には堆積岩相をともなっている。

VI.1.1 熔結凝灰岩相 [ Tw ]

トムラウシ熔結凝灰岩については, [ 本図幅地域の南隣の ] 十勝川上流地質図幅で詳述されている。 同図幅の説明によれば, トノカリ凝灰質砂岩層をはさみ, 上下二枚の熔結凝灰岩に分けられる。 下部の熔結凝灰岩は石英粗面岩質のもので, トムラウシ熔結凝灰岩とされ, 上部のものはトノカリ凝灰質泥岩層を不整合におおって発達するもので, 角閃石安山岩質のものである。 上は下富良野熔結凝灰岩とされている。

旭岳図幅域では, トムラウシ川の中流部で, 一部に堆積岩相をともなう部分もあるが, トノカリ凝灰質砂岩層とこの堆積岩相とは岩質上にも相違があり, また, 熔結凝灰岩も岩質上には全く相違がない。 凝灰質砂層をともなう点は十勝川上流地質図幅の記載と類似しているが, ここでは上部の下富良野熔結凝灰岩は発達していない。

トムラウシ熔結凝灰岩は, 石英斑晶をともなう石英粗面岩質熔結凝灰岩である。 この地域では全体的には比較的熔結度が低く, とくに上部では熔結度が低くなり, 凝灰岩質になる。 全体的には均質で, 黄褐色を呈し, やや粗しょうである。 トムラウシ川の上流部などでは, いちじるしく温泉化作用を受け粘土化しているところもある。 また, この熔結凝灰岩で特徴的な点として, ところにより, いちじるしく多量の外来岩片をともなっている場所がある。 これらの外来岩片は大部分が粘板岩であり, 少量の砂岩, 輝緑岩岩片をともなう。 これらの外来岩片は, すべてこの地域の基盤を構成する日高累層群に由来するものである。 場所により, 大部分が外来岩片によって構成されており, あたかも角礫が固結したような外観を呈する部分もある。

このような, 外来岩片を多量にともなう岩相は, クチャンベツ川付近, [ 南に ] 隣接する十勝川上流 [ 図幅 ] のヌプン トムラウシ温泉の北側, トムラウシ川の上流合流点付近などに限定されている。 これらの地域は, いずれも, トムラウシ熔結凝灰岩の分布の東限にほぼそっている。 この地域では, ほぼ南北性の方向で分布し, 十勝川上流では西南方向に分布域がひろがっており, この熔結凝灰岩の噴出機構と関連するものと考えられる。

また, 一部には断層が発達している。 とくに, トムラウシ川上流の通称 地獄と呼ばれている温泉付近では, N 40°E 方向の断層があり, 温泉化作用による粘土化がいちじるしいので, 正確に原岩を確定することはできないが, 基盤の粘板岩が, 断層に沿ってわずかにみられる。 また, [ トムラウシ川の上流部の北西方で化雲岳の間にある ] ヒサゴ沼の東南部では, 東西性の小断層が多数発達している。

顕微鏡下では, 斑晶は石英, 斜長石, 有色鉱物として黒雲母よりなる。 いずれも破砕片で, 石英は融蝕形態をしめしている。

石基はガラス片および軽石片よりなり, 多少ひきのばされた無色のガラス片が多く, 熔結凝灰岩の特徴をしめしている。

VI.1.2 凝灰質砂層 [ Ts ]

すでにのべたように, トムラウシ熔結凝灰岩の上部では熔結度が低くなり, 凝灰質になる。 一部では, このような無層理の凝灰岩から凝灰質砂層に漸移する。 この凝灰質砂層の上部では, 細かい層理をもった凝灰質砂層となる。 トムラウシ川の東側の △ 1,314 m 付近に発達している。 ここでは, 十勝川上流 [ 図幅 ] のトノカリ凝灰岩のように木片, 亜炭などはみられず, 軟弱な黄灰色を呈する凝灰質砂層である。 この砂層を熔結凝灰岩が直接おおう現象は観察されていないが, 分布では, この砂層ははさみと考えられる。 しかし, 上部に来ると思われる熔結凝灰岩は岩質上, 区別はつかない。 同質であるため, トムラウシ熔結凝灰岩として一括したが, 今後なお検討を要する。

VI.2 ユニ石狩熔岩 [ Ul ]

ユニ石狩熔岩は, 図幅の東部および [ 北東もしくは東に ] 隣接する上支湧別, 石狩岳の各地質図幅域に広く分布している。

この地域では, 日高累層群およびヤンベタップ層を不整合におおって発達している。 灰褐色~暗褐色の緻密な安山岩である。 一般に, 数 cm の厚さの板状節理が発達している。 ところによってはこまかい柱状節理の発達しているところもある。 下部には集塊岩をともなうが, 岩質はユニ石狩熔岩と同質である。 岩質はしそ輝石安山岩である。

顕微鏡下では, 斜長石は 0.3~1 mm の大きさで, 斜長石と輝石が集斑晶状になる。 石基は, ハリ基流晶構造をしめし, 斜長石, 普通輝石, しそ輝石, クリストバル石が認められる。

VII. 大雪火山群形成に関連する岩石

地質概要でのべたように, この説明書では, 個々の熔岩流の時代を確定することが困難であり, また相互に関連があるので, 時代区分とは別に, 大雪火山群の形成に関連する岩石をまとめて記載することにした。 ここでは大雪火山群の形成を次の4期に分け, それぞれについてのべる。

Ⅰ) 大雪火山群の基底の形成期
Ⅱ) 古大雪火山の形成期
Ⅲ) 新大雪火山の形成期
Ⅳ) 旭岳火山の形成期

VII.1 大雪火山群の基底の形成期 [ 大雪山第Ⅰ期活動 ] に属する岩石

この期に属する岩石は, 美瑛下部熔岩, 黄金ヶ原下部熔岩, 沼ノ原熔岩, 緑岳下部熔岩, 化雲岳熔岩, 凡忠別岳熔岩, 黄金ヶ原熔岩, 忠別岳熔岩, 高根ヶ原熔岩の各熔岩である。

いずれも岩質は類似し, ともに平坦な熔岩台地状の地形を呈している。 いわゆる flat lava あるいは platy lava と称されている熔岩流に類似している。

これらの熔岩について各熔岩の時代を確定することは困難である。 忠別岳熔岩については, 逆滞磁していることがしられていること [ 以下の [注] 参照 ] , 岩質, 産状がいわゆる flat-lava 型である点などから, 大雪火山群の基底を形成しているこれらの熔岩は 地質図上では新第三紀 鮮新世~第四紀 更新世としたが, 恐らく, 鮮新世末に属するものと考えられる。

[注]
未公表 ; 横田・小林による。

VII.1.1 美瑛 びえい 下部熔岩 [ Bl ]

この熔岩は, 黄金ヶ原の南部から, [ 南に ] 隣接する十勝川上流 [ 図幅地域内 ][ 西南西方 3~5 km の美瑛富士・美瑛岳に続く ] オプタテシケの山稜にかけて分布している。 カウンナイ・プロピライトを不整合におおっている。

暗灰色~黒色で緻密な安山岩であるが, 一部では, 多孔質なところがある。 斑晶はやや少ない。 下部には同質の集塊岩をともなっている。

顕微鏡下では, 斑晶は斜長石, しそ輝石, 普通輝石よりなる。 斜長石は自形~半自形を呈し, 一部緑泥石化している。 しそ輝石は普通輝石の反応縁をもっている。

石基はインターサータル構造をしめし, 斜長石, クリストバル石, 普通輝石, しそ輝石よりなり, 一部は緑泥石, 方解石に変質している。

VII.1.2 黄金ヶ原 こがねがはら 下部熔岩 [ Kv ]

この熔岩は, 図幅南部の トムラウシ岳 [ トムラウシ山 ? ] の下部に発達している。 十勝川上流地質図幅では, 美瑛火山上部熔岩として記載されているものがあるが, 美瑛火山には直接関係していないので, 地名をとり, 黄金ヶ原下部熔岩とした。 この熔岩は, トムラウシ熔結凝灰岩を直接 不整合におおっており, トムラウシ熔岩によって不整合におおわれている。

黒色を呈し, 緻密で, 板状節理が発達している。 下部には, 厚い同質の集塊岩をともなっている。

顕微鏡下では, 斑晶は斜長石, しそ輝石, 普通輝石からなる。 しそ輝石の一部は, 周辺や劈開にそって緑泥石化しているものもある。

石基はインターサータル構造をしめす。

VII.1.3 沼ノ原 ぬまのはら 熔岩 [ Nl ]

この熔岩は, 図幅東南部の沼ノ原の台地を構成しているもので, 見事な平坦面を作り, 高原性湿地を形成している

少なくとも 2 枚の熔岩からなる。 暗青灰色を呈し, 比較的大きな斑晶の多い部分と, ガラス質の多い部分からなり, ガラス質の部分では, 球顆をともなうため, 一見 熔結凝灰岩状を呈する。

顕微鏡下では, 斑晶は斜長石, しそ輝石からなり, 石基はクリプトクリスタリン [ cryptocrystalline ] 構造を呈している。

VII.1.4 緑岳 みどりだけ 下部熔岩 [ Ml ]

図幅の北部, 緑岳 [ or 松浦岳 ] の下部およひヤンベタップ川上流に発達しているもので, 下部に厚い同質の集塊岩をともなっている。 黒色, 緻密でややあらい板状節理が発達している。

顕微鏡下では, 斑晶は斜長石, しそ輝石, 普通輝石からなり, 斑晶の周辺, 劈開にそって, 緑泥石化しているものがある。

石基はインターサータル構造をしめしている。

VII.1.5 化雲岳 かうんだけ 熔岩 [ Ql ]

[ 図幅地域中央付近の 小化雲岳 しょうかうんだけ および ] 化雲岳から [ それらの東方の ] 五色ヶ原 ごしきがはら にかけて広く分布しているもので, 少なくとも 3 枚以上の熔岩で構成している。

暗灰色, 緻密な熔岩であるが, 上部では, とくに板状の節理が発達している。 また, 化雲岳の付近では変質のいちじるしい部分もみられる。 岩質は, 含かんらん石しそ輝石, 普通輝石安山岩であるが, かんらん石はごく少量である。 下部の熔岩は比較的粗粒な斑晶が多い。

顕微鏡下では, 斑晶は, 斜長石, しそ輝石, 普通輝石および少量の粒状かんらん石からなる。 変質のいちじるしいところでは, しそ輝石, 普通輝石の周辺, 劈開にそっで緑泥石化し, かんらん石はほとんど緑泥石化している。

石基は, ピロタキシティック~ハイアロフィリテック組織を呈している。

VII.1.6 凡忠別岳 ぽんちゅうべつだけ 熔岩 [ Pl ]

凡忠別岳付近から西側の平坦な稜線を形成し, 忠別川の二股付近で深い峡谷を作っている熔岩である。

暗灰色を呈し, 緻密な熔岩で, 板状節理がよく発達している。 岩質は, 含かんらん石普通輝石しそ輝石安山岩である。

顕微鏡下では, 斑晶は, 斜長石, 普通輝石, しそ輝石, かんらん石からなっている。

石基は, ややガラス質でピロタキシテック組織をしめしている。

VII.1,7 黄金ヶ原 こがねがはら 熔岩 [ Kl ]

この熔岩は, 図幅西部の黄金ヶ原から硫黄沼にかけて広く分布している熔岩で, カウンナイ川上流では, 少なくとも 3 枚以上の熔岩で構成され, 熔岩流と熔岩流の間には, 同質の集塊岩をともなっている。

暗灰色, 緻密な熔岩で, 大まかな板状節理が発達している。 岩質は, 普通輝石しそ輝石安山岩であるが, 下部の熔岩には極く少量のかんらん石をともなっている。

VII.1.8 忠別岳 ちゅうべつだけ 熔岩 [ Cv ]

忠別岳山頂付近からおもに東側に分布している熔岩で, 山頂の西側では, 少なくとも 3 枚の熔岩からなる。 化雲岳熔岩, 凡忠別岳熔岩をおおっている。 暗灰色を呈し, 緻密で, 比較的大きな斑晶をともなっている。 板状の節理が発達している。 東側にはゆるい傾斜面を形成しているが, 西側は急崖を作っている。

岩質は, しそ輝石普通輝石安山岩である。

顕微鏡下では, 斑晶は斜長石, しそ輝石, 普通輝石からなる。 石基はややガラス質で, インタースティシャル組織である。

VII.1.9 高根ヶ原 たけねがはら 熔岩 [ Tl ]

[ 忠別岳の北方 4 km の ] 高根ヶ原の稜線から西側に分布している熔岩で, 黒色を呈し, 斑晶はひじょうに細かい。 ごく薄い板状節理がいちじるしく発達していて, 片状に剥理しやすい特徴がある。 東側の急崖では, 少なくとも 2 枚の熔岩で構成されている。

岩質は, 普通輝石しそ輝石安山岩である。

顕微鏡下では, 斑晶は一般に小型で, 斜長石, 普通輝石, しそ輝石よりなる。 石基はインタースティシアル組織を呈している。

VII.2 古大雪火山の形成期 [ 大雪山第Ⅱ期活動 ] に属する岩石

第Ⅰ期の活動に属するものは, すでにのべた平坦な山稜を形成する各種の熔岩を基底にして発達した火山で, 新大雪火山の形成以前のものである。 この時期については, すでに大雪山地質図幅でのべたように, 層雲峡熔結凝灰岩の時代から上限が確定できる。 下限については, 根拠はないが, 一応 更新世に属するものと考えられる。 ただし, この時期に含めたトムラウシ岳の熔岩は, 層雲峡熔結凝灰岩と直接的な関係はない。 ほかの岩質との類似性および熔岩流の地形から, トムラウシ岳熔岩の一部をこの項にふくめた。

この時期に属するものは, ヤンベタップ集塊岩, 古大雪熔岩, 白雲岳熔岩, 後旭岳熔岩, およびトムラウシ岳第1熔岩, 第2熔岩である。

いずれの熔岩も岩質はよく似ており, 特徴として, ひじょうに粗粒な角閃石斑晶を有する角閃石しそ輝石普通輝石安山岩である。 第Ⅰ期熔岩で形成された地形とは対称的に山体は急崖をなし, 一見 ドーム状の地形を呈している。

VII.2.1 ヤンベタップ集塊岩 [ Ya ]

[ 図幅地域東部北端の ] 赤岳 [ ← 図幅地域の北方地域外 ? ] の東側から緑岳 [ ← 図幅上に記載なし ; 標高 2019.5 m ; 別名「松浦岳」 ] の下部にかけて発達している。 岩質は, 古大雪熔岩と同じ角閃石しそ輝石普通輝石安山岩で, 20~30 cm の礫から, さらに 1 m 前後の亜角礫で構成されている。 一部は塊状熔岩となる。 古大雪熔岩の前駆的な活動をしめすものである。

VII.2.2 古大雪 [ Older Taisetsu ] 熔岩 [ Sm ]

古大雪熔岩については, すでに大雪山地質図幅で説明したが, この図幅地域では北部にわずかに分布しているだけである。 図幅北部の赤岳から緑岳にかけて分布している。 大雪山地質図幅で古大雪熔岩を2期に分けて説明したが, この地域の古大雪熔岩は, 初期の活動に属するものである。

この地域では, 緑岳下部熔岩およびヤンベタップ集塊岩をおおい, 白雲岳熔岩, 層雲峡熔結凝灰岩などにおおわれている。

岩質は, ひじょうに粗粒な斑晶が多く, とくに角閃石は 1 cm をこえる大型の斑晶をともなっている。 また, 捕獲岩として, 外来岩片を多量にともなっている。 角閃石しそ輝石普通輝石安山岩である。

顕微鏡下では, 斑晶は, 斜長石, 角閃石, しそ輝石, 普通輝石からなり, 一般に大型の斑晶である。 角閃石は, 淡緑褐色~赤褐色の多色性を示している。 ところにより, ごく少量の黒雲母や, 残斑晶としてかんらん石をともなっている。

石基は, ハイアロピリティック組織である。

VII.2.3 白雲岳 はくうんだけ 熔岩 [ Hv ]

図幅北部の白雲岳, 小白雲岳に分布しているもので, 岩質は古大雪熔岩と同じである。 古大雪熔岩をおおい, 層雲峡熔結凝灰岩におおわれている。 時期的には, 古大雪熔岩と一連のもので, 大雪山地質図幅でのべた [ 古大雪熔岩の ? ] 後期に属するものである。 独立した山峯を形成しているので, 後旭岳とともに, 一応 別個の熔岩とした。

白雲岳熔岩は, 白雲岳から小白雲岳にかけて, 西南方向に熔岩流を流下させており, 両側からこの状態はよく観察される。 山頂部には, 直径約 300 m のごく小型の爆裂火口をもっている。 火口壁は比較的よく保存され, 原形をとどめている。 火口間には, 層雲峡熔結凝灰岩の下部岩相である降下軽石が, 火口壁の北部をおおって分布している。

岩質は, 古大雪熔岩と全く同じである。

VII.2.4 後旭岳 うしろあさひだけ 熔岩 [ Uv ]

後旭岳熔岩も, まえにのべた白雲岳の熔岩と同様に, 古大雪熔岩の活動期に属するものである。

山頂部 [ ← 地質図幅上に「後旭岳」の記載なし ; 標高 2212 m(最近の地形図では 2216 m) ] には, 直径 200 m の小火口と思われる地形をとどめている。 火口壁はほとんど破壊され, わずかに窪地として残されているだけである。

岩質は, 古大雪熔岩と同じである。

VII.2.5 トムラウシ第1熔岩 [ Tv1 ]

図幅南部の トムラウシ岳 [ トムラウシ山 ? ] を構成している熔岩である。 これらの熔岩については, 地形上では第 4 図のように区分することができるが, 地質図上には, 主な3期に分けて塗色した。 第1熔岩としたものは, トムラウシ岳の南部を構成しているもので, 全体の基底を構成するものである。 山腹斜面は急崖を形成しているが, 山頂部は比較的平坦である。 黄金ヶ原下部熔岩および黄金ヶ原熔岩をおおっている。

第 4 図 トムラウシ熔岩分布図

岩質は, 古大雪熔岩と全く同じで, 粗粒な斑晶の多い, 角閃石しそ輝石普通輝石安山岩である。 多量の捕獲岩をともない, 捕獲岩のなかには, 砂岩や斑栃岩起源と思われるものが多量にみられる。

VII.2.6 トムラウシ第2熔岩 [ Tv2 ]

この熔岩は, トムラウシ第1熔岩の北部に分布しているものである。 分布の標高は, 第1熔岩の分布域よりもむしろ低いが, 比較的熔岩流の地形をとどめている部分もあり, 全体として第2熔岩としてまとめた。 第2熔岩は地形の上では, 第 4 図のように, 3つに分けることができる。 このうち, ヒサゴ沼の南部, 標高値 1,848 m の北部のものは, 熔岩流の地形をよくとどめている。

VII.3 新大雪火山の形成期 [ 大雪山第Ⅲ期活動 ] に属する岩石

この図幅では, この時期に属するものは, 層雲峡熔結凝灰岩およびトムラウシ第3熔岩, 熊ヶ岳熔岩などである。

VII.3.1 層雲峡 そううんきょう 熔結凝灰岩 [ So ]

この地域では, 北海岳 [ ← 図幅北部地域外 ] と白雲岳の鞍部から忠別川にそって分布しているものと, [ 図幅地域北西隅の ] ピウケナイ沢付近から下流に分布するものとに分けられる。 いずれも, 現河川によって侵蝕された沢ぞいに分布し, その堆積面は平坦面を形成している。 大雪山の上部に分布しているものは, 下部に降下軽石をともなっているが, 山体から離れるにしたがい, 降下軽石は少なくなる。 天人峡付近では, 2 枚に分けられるところもある。 また, 天人峡付近では, 厚く堆積しており, 柱状節理がよく発達し, 見事な景観を呈している。 また, 天人峡の羽衣の滝も, この層雲峡熔結凝灰岩で形成されているものである。 また, 分布の上で, 白雲岳火口内に降下軽石を堆積していることは, 古大雪熔岩の時期を知る一つの手懸りとなると同時に, ひきつづいて, 層雲峡熔結凝灰岩の本源をなす熱雲は, 降下軽石をもたらした爆発にくらべ, むしろ低地を流下するような形態であったことをしめしている。

層雲峡熔結凝灰岩の形成時期については, すでに大雪山地質図幅でのべたように, 河岸段丘との関係などから, 更新世末のものと考えられる。

岩質は, 暗灰~青灰色を呈する輝石安山岩質のもので, 黒色のスコリアをともなっているのが特徴である。 スコリアの量は, 降下軽石と同様に, 山頂部に多いが, 降下軽石にみられるように, 急激には減少していない。 天人峡付近, カウンナイ川付近の熔結凝灰岩中にも, 黒色のスコリアは散点してみられる。

顕微鏡下では, 斑晶としては, 斜長石, 緑色の角閃石, 普通輝石をともなっている。 いずれも破砕片である。

石基は, 無色ガラスが多く, 多少ひきのばされた形をしめしている。 わずかに褐色ガラスもみられ, 褐色ガラス部分では, 球顆が発達している。

VII.3.2 トムラウシ第3熔岩 [ Tv3 ]

トムラウシ第3熔岩は, トムラウシ岳 [ トムラウシ山 ? ] 本峯および前トムラウシ [ 山 ] 付近に分布している。 白雲岳熔岩などと同様に, 形態はドーム状の地形を呈しているが, 熔岩流である。 とくに, トムラウシ本峯のもの, 前トムラウシのものなどは, ともに, トムラウシ川に向って, 多量の熔岩流を流出している。 いずれも岩質は同じで, 野外調査では, それぞれを十分に区分することはできないが, 航空写真によると, 比較的地形区分することができる。 第 4 図は, これらの地形をもとに細分化し, その分布地域をしめしたもので, トムラウシ川に向って, 4 km 以上も舌状に流下していることがわかる。

トムラウシ岳本峯および, 前トムラウシには, それぞれ火口をともなっている。 本峯では直径約 400 m の火口で, 地形は比較的よく保存されている。 前トムラウシでは, 火口壁はすでに崩壊し, 窪地として残っているだけである。

岩質は, ほかのトムラウシ熔岩とかわりなく, 角閃石しそ輝石普通輝石安山岩である。

VII.3.3 熊ヶ岳 くまがたけ 熔岩 [ K ]

熊ヶ岳は, 新大雪火山の西南に位置し, 直径 500 m の円形の火口を持つ火山である。 この図幅では, 北部に, その南麓がわずかにみられるだけである。 熊ヶ岳火山については, すでに大雪山地質図幅でその詳細をのべたので, ここでは省略する。

岩質は, 角閃石しそ輝石普通輝石安山岩で, 斑晶は粗粒であり, 暗灰色を呈する緻密な安山岩である。 古大雪熔岩と類似しているが, きわめて新鮮であり, 古大雪熔岩とくらべて捕獲岩はごく少ない。

VII.4 旭岳火山の形成期 [ 大雪山第Ⅳ期活動 ] に属する岩石

この時期に属するものは, 旭岳を形成するいろいろな熔岩および火山砕屑物である。

VII.4.1 旭岳火山

旭岳は図幅の北西部に位置し, 新大雪火山の南西部にあたる。 標高 2,290.3 m の高さで, 道内の最高峯である。 旭岳の北および東側では, 熊ヶ岳, 後旭岳に接しているので, 裾野の発達は悪いが, 南および西側では裾野が広く発達し, 成層火山特有の地形をしめしている。 山頂部から西側に口を開いた爆裂火口をもち, 現在も噴気活動を行なっている。

VII.4.1.1 旭岳第1熔岩 [ A1 ; 以下の [注] 参照 ]

[注]
大雪山地質図幅において, 旭岳第1および第2熔岩の名称の付け方を間違ったので訂正し, 旭岳地質図幅に合わせる。

旭岳第1熔岩は, 旭岳火山を構成する熔岩のうち, 現在観察されるもので, 一番古いものである。 この熔岩は, 湧駒別 [ 温泉 ] の南にある二見滝 [ 位置不明 ] で, 層雲峡熔結凝灰岩を不整合におおっているのが観察される。

岩質は, 黒色を呈し, 緻密, 堅硬で, 2~3 mm 前後の斜長石斑晶が散点する, 普通輝石しそ輝石安山岩である。

顕微鏡下では, 斑晶は, 斜長石, 普通輝石, しそ輝石からなり, ところにより少量のかんらん石をともなっている。

石基は, ハイアロフィリチック組織をしめしている。

VII.4.1.2 旭岳第2熔岩 [ A2 ; 前記の [注] 参照 ]

山体の西側に広く分布しているが, 新期の火山砕屑物におおわれていて, 露頭は少ない。 沢ぞいや急崖にだけみられる。 とくに 天女ヶ原 てんにょがはら 付近の急崖は, この熔岩の末端部にあたる。 岩質は, 第1熔岩と変りがない。

VII.4.1.3 旭岳第3熔岩 [ A3 ]

この熔岩は, 瓢沼付近 [ 位置不明 ] から, 西に細長くのび, ピウケナイ川と湧駒別川の間を流下し, [ 西に ] 隣接する志比内地質図幅の, 忠別川とピウケナイ沢との合流点付近まで, およそ 10 km 近く流下している。 この熔岩は, 両側は, やや高く堤防状につらなり, その内側は, 不規則な階段状の凹凸がみられ, 熔岩流の地形をよくとどめている。 先端部は舌状をしめし, 急な崖を形成している。

流出源は, 第2熔岩の末端部にあたる瓢沼付近の急崖から先は不明になり, 追跡できない。 あたかも, 第2熔岩におおわれているかのようであるが, 熔岩流の地形からみると, 明らかに, 第2熔岩より よく地形をとどめており, 新期のものと考えられる。 この付近から火山砕屑物が厚くおおっているので, 地形的な連続をつかむことができないのか, あるいは, 第2熔岩の下部を潜伏し, 第2熔岩の末端部の急崖から流出したものかもしれない。 しかし, いずれにせよ, 旭岳の現火口付近から流出した比較的 新期のものである。

岩質は, ほかの熔岩とあまり変りなく, ややガラス質である。

VII.4.1.4 旭岳第4熔岩 [ A4 ]

第4熔岩は, 旭岳の山頂部付近に分布しているもので, 一部は, 現在の硫気活動で変質しているものがある。 ほかの第1~第3熔岩との直接的な関係がないので, 山頂部にある点から第4熔岩とした。 あるいは, 第3熔岩より古いものであるかも知れない。

岩質は, 黒色で多少 多孔質である。 含かんらん石普通輝石しそ輝石安山岩である。

顕微鏡下では, 斑晶は, 斜長石, 普通輝石, しそ輝石, かんらん石からなっている。

石基は, ハイアロフィリティック組織をしめしている。

VII.4.1.5 旭岳火山砕屑物 [ D ]

旭岳山頂から 裾合平 すそあいだいら [ ← 図幅の北方地域外 ] にかけて広くおおっているもので, 熔岩, スコリアの破砕片からなっている。

VIII. 第四紀 更新世~現世の地層

第四紀 更新世から現世にかけての堆積物は, 主として, 図幅の東部にある石狩川にそった低地に発達している。 この時期に属する地層および堆積物は, 第1段丘堆積物, 白陽平層, 第2段丘堆積物, 第3段丘堆積物, 崖錐堆積物である。 これらのうち, 第2段丘は石狩川の低地に発達しているが, この地域ではほとんど発達をみないので地質図の記載には省略した。

第 5 図 石狩川低地の堆積物

VIII.1 第1段丘堆積物 [ T1 ]

第1段丘は, [ 図幅地域東端南北中央付近の ] シビナイ川, ヌタックヤンベツ川付近に発達しており, シビナイ川付近では, 現河床より 150 m の比高をもつ面を形成している。 一般にユニ石狩熔岩を削剥して発達している。 10~5 m の層厚を持つ円礫層からなる。 この面は, 他の面にくらべて傾斜しているとともにいちじるしく開析されているので, 現在は, 丘陵性の地形をしめしている。

礫層は, 赤褐色の粗粒砂を基質とし, 安山岩礫からなる。

VIII.2 白陽平 はくようだいら [ Fs ]

[ 図幅地域東端北半部の ] 石狩川にそって分布しており, 従来, [ 西隣の ] 石狩岳地質図幅では三国層, [ 北東に隣接する ] 上支湧別地質図幅では白滝層とされていたものの一部であるが, 後にのべるように, より新しい地層であるので白陽平層とした。

石狩川にそう白陽平付近 [ 位置不明 ] に, 標式的に発達している地層で, シビナイ川付近では, 堆積物の面の高さは標高 940 m で, 現河床との比高さは 100 m ± である。 ひじょうによく面が発達しており, 面の発達が広いことと, 面の傾斜が少ない点に特徴がある。

図幅域外ではあるが, この層の面は, [ 本図幅の北隣の大雪図幅地域内の ] 大函 おおばこ より 2 km 上流の左岸では, 比高約 160 m(標高 880 m)である。 また, 本流ぞいでは, 白陽平付近で, 比高 140 m(標高 900 m)であり, 全体に, この堆積面は現河川の勾配よりも小さい。

白陽平層は, 100~150 m の層厚をもち, ほぼ水平な地層である。 この地層の特徴は, 石狩川の削剥による低地で, 山間地の堆積物であるのに, シルト, 細粒砂など細粒物質が卓越した地層であり, 葉理構造がいちじるしく発達していること, また, 泥炭層をはさんでいることである。 このような性格から, 一般的な河岸段丘とはことなり, 湖成堆積物であると考えられる。

岩相は, 全体として, 最下位にうすい礫層をもち, その上位に礫層をはさむ厚いシルト~砂層, さらに上部に砂層をはさむ礫層からなる, 上下変化をもっている。 このうち細粒なシルトの岩相は, 本流では, ユニ石狩川合流点 [ ← 東隣の石狩岳図幅地域内 ? ] より下流に主に分布している。 支流では, ホロカ石狩川, ユニ石狩川, 三角点沢 [ ← これら 3 河川は東隣の石狩岳図幅地域内 ? ] などの沢ぞいに分布している。 これらは, いずれも, 白陽平層の下部相を構成するもので, 泥炭, 亜炭を夾在している。

砂相はほぼ全域にみられるが, 白陽平より石狩川の上流部では, この地層の基底部から上部まで砂相が発達している。

礫相は, 本流流域では細粒相の中のはさみとしてみられることが多いが, 支流ではむしろ礫相が卓越し, とくに本流より遠ざかるにしたがい全体に礫相になる。 とくに, ホロカ石狩川, ヤンベタップ川などの支流ぞいに発達しているものでは, 地形図にもみられるように, 上流部で堆積面がしだいに高くなり, 扇状地的性格に漸移している。

以上のように,

  1. 白陽平層は, 大函より上流だけに分布しており, これより下流にはみられない。
  2. ユニ石狩熔岩, 粘板岩などを侵蝕して形成された新しい河川谷にだけ発達している。
  3. 堆積物の岩相は, ユニ石狩川合流点の下流に細粒物が多く, 周辺部は粗粒である。
  4. 白陽平層は, ほかの段丘面にくらべ広い面を形成し, 面の傾斜は少なく, 堆積面の高さは層雲峡熔結凝灰岩の堆積面の高さと一致している。

以上の点が特徴としてあげられる。 このような点から, 白滝層あるいは三国層として構造盆に堆積したものではなく, 石狩川の侵蝕で形成された低地にだけに限られた堆積物であり, 層雲峡熔結凝灰岩による石狩川の堤止による堆積物と考えられる。

なお, 白陽平層をきって, 比高 60 m 前後の第2段丘が石狩川ぞいには発達しているが, この地域では, わずかに発達しているだけである。 したがって, 地質図では省略した。 第2段丘は, 上流ほど現河床との比高は高くなり, ヌタックヤンベツ川合流点付近では比高 60 m ± となる。

VIII.3 第3段丘堆積物 [ T3 ]

第3段丘は, あまり広い面積を占めていない。 現河床との比高は約 15 m である。 比高はやや高いが, ほとんど変化がないので, 新期の段丘と考えられる。 主として, 白陽平層を基盤として, 約 3 m の厚さをもって堆積している人頭大の円礫~亜円礫からなる。 礫は, おもに安山岩礫である。

VIII.4 崖錐堆積物 [ Tu ]

おもなものは, 高根ヶ原の東側にみられるが, これはすでに地形でのべたように, 厳密な意味では地辷り堆積物である。 また, 時期についても, 氷蝕地形との関連からみると, あるいは更新世末のものとも考えられる。

IX. 大雪火山群形成史

大雪火山群としては, トムラウシ岳 [ トムラウシ山 ? ] 以北の火山の全体を扱うが, いわゆる大雪山の概要については大雪山地質図幅で説明したので, 旭岳図幅地域を中心に全体についてのべる。

IX.1 基盤の問題

粘板岩は図幅の東側に広く分布し, 石狩岳など標高 1,800 m をこえる山体を形成している。 この粘板岩は, 図幅の東側にわずかにみられ, 北々東から西南へ弧状に分布している。 この西側では, 新第三紀 中新世に属するプロピライトなど, 一部には緑色凝灰岩相が発達し, これを基盤として, 大雪火山群が形成している。 大雪山の東縁を境として, 西側には, ほとんど粘板岩はみられない。 大雪山地質図幅でも, ポン 安足間 あんたろま 川で標高 600 m 付近に分布しているだけで, 全体に粘板岩の基盤は沈みこんでいる。 このような沈み込んだ地域に, 中新世のプロピライトを主とした火山岩および火砕流が発達している。 これらの分布は, 美瑛川の上流で標高 1,500 m, カウンナイ川では 1,400 m 近くまで分布している。 したがって, 大雪火山群の直接的な基盤はほぼ 1,400~1,500 m の高さで, 比較的平坦な山稜を基盤として成り立っている。

一方, 南部では, トムラウシ熔結凝灰岩が広く発達している。 トムラウシ熔結凝灰岩は, すでにのべたように, この分布の東および南縁に, 外来岩片を多量にともなう岩相が発達している。 この熔結凝灰岩は, 分布からみても, 中心噴火的なものより, むしろ裂か型のものではないかと思われる。 このような点からみると, 外来岩片の多い岩相はこれら基盤の構造を反映するもので, 粘板岩の沈み込みと, この熔結凝灰岩を流出する裂かとの相関関係をしめすものと考えられ, 大雪山 - 十勝岳の弧状の構造にほぼ平行した配列を示しているが, なお検討を要する問題である。

IX.2 第Ⅰ期 [ 大雪火山群の基底の形成期 ; 以下の [注] 参照 ]

[注]
[ 本図幅地域の北隣の ] 大雪山地質図幅の説明書では大雪山のみに限って火山活動期を分けたので, この説明書における区分とは異なっている。

大雪火山群の基底を形成する活動 [ 第Ⅰ期の活動 ] は, 忠別岳熔岩, 高根ヶ原熔岩など一連の熔岩流であり, 大雪山地質図幅域では, 米飯 べいぱん 山熔岩などがこれにあたるものである。 いずれの熔岩も, それぞれ多少の相異はあるが, 概括的にみれば複輝石安山岩であり, 一般に板状節理の発達した, いわゆる flat lava 型の熔岩流であり, 平坦な山稜地形を形成している。

これらの熔岩流は広大な面積をおおって発達しており, 大雪火山群の基底を形成するものである。 十勝火山までふくめて, 全体的にみると, これらの熔岩流は北部ほど広い面積を占めて発達するとともに, 分布する高さも高く, 南に向うにしたがい縮小している。

IX.3 第Ⅱ期 [ 古大雪火山の形成期 ]

この期の活動として, 北鎮 ほくちん 岳, 黒岳をはじめ, 古大雪火山の広大な山地の形成があげられ, これに関連し, トムラウシ岳の形成があげられる。

古大雪火山の前駆的な活動として, ヤンベタップ集塊岩に代表される火砕流の活動が広く行なわれた。 この活動に引きつづき, 古大雪熔岩の流出がみられる。 古大雪熔岩は, すでに大雪山地質図幅においてのべたように, 数度におよぶ活動で山体を形成した。 この時期の後期に, 白雲岳, 後旭岳などの活動がみられる。 これらの活動と同時に, 南部ではトムラウシ火山の形成が行なわれた。 いずれも岩質は全く同じであり, 粗粒な角閃石斑晶で特徴づけられるものである。 また, 古大雪火山においても, トムラウシ岳においても, 山体の形成後, 地形的には不明確であるが, 潜在的なカルデラの形成で特徴づけられる。 古大雪火山では, このカルデラの中心噴火として, 古大雪熔岩とは異質な新大雪火山の活動に引きつがれるが、 これに対してトムラウシでは, 中心噴火は同質の熔岩によって引きつがれた。

潜在的なこれらのカルデラの活動にともなう噴出物については, 大雪山およびトムラウシ岳のいずれの場合も確認されていない。

IX.4 第Ⅲ期 [ 新大雪火山の形成期 ]

新大雪火山は, 古大雪火山とは岩質も異なり, 典型的な成層火山である。 古大雪火山のカルデラのほぼ中央に位置し, 山体形成後に多量の熔結凝灰岩を噴出した。 この熔結凝灰岩は, すでに大雪山地質図幅でのべたように, 石狩川, 忠別川, ピウケナイ川の3方向に流出した。 この図幅では, 忠別川およびピウケナイ川 [ ← どちらも本図幅地域の北西隅 ] に流下した一部がみられる。

層雲峡熔結凝灰岩は, すでに指摘しているように, 白雲岳では前駆的な活動としての降下軽石を山頂に堆積しているのに対し, 熔結凝灰岩の堆積はみられないので, 古大雪火山の相対的に低い部分で山腹をほこうするように流下したと考えられる。 層雲峡熔結凝灰岩は, 川岸段丘との関連より, 更新世末と考えられるので, 大雪火山群の主要な山体の形成は, 更新世末には終っていたと考えられる。

IX.5 第Ⅳ期 [ 旭岳火山の形成期 ]

この時期の代表的な活動は, 旭岳火山の形成である。 旭岳火山の形成初期に, 新大雪火山の西南に熊ヶ岳火山が作られ, また南部では, トムラウシ第3熔岩の活動によりトムラウシ岳が形成された。 トムラウシ岳については, 直接時期をきめる資料がないので, 第1, 第2熔岩との関連で一応この時期に設定したが, 第Ⅲ期の活動の可能性もある。

旭岳火山は典型的な成層火山であり, 今なお硫気活動を継続しているものである。

X. 氷蝕地形および周氷河地形

大雪山地質図幅でのべたように, 大雪山の多くの山が, 層雲峡熔結凝灰岩との関連からみると, 更新世末にはすでに形成されていたと考えられる。 このことは, 大雪山の標高からみて, この地域に氷蝕地形や周氷河地形がある可能性をしめしている。 このような点から, 大雪山系の地形について再検討すると, 氷蝕地形として考えられる地形が各所にみられる。 これらの氷蝕地形および周氷河地形とみられる 各種の地形の代表的なものの分布をしめすと, 第 6 図のようになる。

第 6 図 氷蝕地形および周氷河地形の分布図

水の凍結, 融解が侵蝕作用の主要な営力となる周氷河的条件の第一は, 気候条件である。 これらの気候的条件をしめる一つの指標として, 森林限界以上の高度であることがあげられている。 大雪山系では標高 1,600 m 以上は森林限界に入り, 一応 この条件は満たされているが, さらにほかの地域の中緯度山地において, 凍結と融解との交替が行なわれているシュニーコッペ, ゾンブリック, ツークスピッツなどでは, 第 2 表のようである。

第 2 表

測候所名 測候所の高度(m) 0 ℃ 以上の月 最暖月(℃) 最寒月(℃) 年平均(℃)
シュニーコッペ 1,202 5~10 月 8.3 -7.6 0
ゾンブリック 1,760 7~8 月 1.3 -13.6 -6.5
ツークスピッツ 1,371 6~8 月 1.9 -11.7 -5.1
[ 第 2 表の測候所の詳細 ]
シュニーコッペ(Schneekoppe) : ポーランドとチェコスロバキアとの国境, 1,603 m
ゾンブリック(Sonnblick) : オーストリア
ツークスピッツ(Zngspitze) : オーストリアとドイツとの国境, 2,968 m

大雪山地域では, 山頂部で観測が行なわれていないため, 直接 山頂部の気候条件を知ることはできない。 札幌と稚内では, 高層気象の資料があり, 札幌, 旭川, 稚内の各気象台における地上観測の各月別平均をまとめると, 1, 2 月をのぞいて, 旭川の気候条件は比較的 札幌に類似している。 したがって, 札幌, 旭川 [ これは「稚内」の誤り ? ] の高層気象資料から大雪山の山頂部の気候条件を推定することができる。 高層気象資料より 1,300 m および 1,800 m の気温を求めると, 第 3 表のようになる。

第 3 表

標高(m) 0 ℃ 以上の月 最暖月(℃) 最寒月(℃) 年平均(℃)
札幌 1,300
1,800
5~10 月
5~10 月
15.9
12.7
-13.2
-16.3
+1.1
-1.7
稚内 1,300
1,800
5~10 月
5~9 月
13.5
11.3
-14.5
-19.1
+0.7
-3.7

このような気候条件からみると, 他の地域に比較して寒暖の差は大きいが, 周氷河地形の形成に凍結と融解の営力が支配的であるとすれば, 0℃ 以下の気候条件のあり方が問題になるであろう。 この点からみると, シュニーコッペより最寒月の温度, 年平均も低く, ゾンブリックなどとの中間値に近い気候条件である。 また, 最低温度についてみると, 札幌の 1,800 m では, 6 月に - 1.0 ℃, 9 月に - 3.4 ℃, 稚内の 1,800 m では, 6 月に - 3.7 ℃, 9 月に - 3.4 ℃ がそれぞれ記録されている。 この点, 大雪山地域でも, 9 月~6 月の期間には部分的な凍結融解のくりかえされる時期と考えられる。 しかし, 大雪山地域が多雪地帯であることを考慮すると, 降雪期には実際の地表温度はこの温度より高いことが推定されるので, 現在の気温条件がそのまま周氷河地形を形成する営力と結びつくかどうかは さらに検討する必要があるが, その営力の程度は別に, 一応(少なくとも 1,800 m 以上の高度では) 現在も周氷河的気候条件下におかれていると考えても大きな間違いはないと思われる。 したがって, 更新世末には確実に周氷河的気候条件下にあり, 後にのべる各種の地形の多くのものは当時形成されたものと考えることができる。

X.1 カール

カール地形の代表的なものについてのべる。

第 7 図 黄金ヶ原カール

第 8 図 黄金ヶ原のカールおよびモレーン

第 9 図 黄金ヶ原カールおよびモレーン

黄金ヶ原付近には少なくとも2ヶ所にみられ, いずれも黄金ヶ原の稜線の南側に発達している。 一見, 南に口を開いた馬蹄形の凹地を形成しているが, よく観察すると, いずれも東南方向に口を開いている。 西側の小型のものではカール壁は約 60 m であり, カール底の先端部に舌状にモレーンをともなっている。 東側のものはカール壁は 60~80 m であり, カール底には何段かの堆積物が観察される。 これらの何段かの堆積物は, 少なくとも3群に分けることができる。 第1群は, カール壁とカール底の境付近にやや雁行状にならぶもので, 大きな岩塊からなり, その背後には小さな沼をもつ。 この第Ⅰ群は, カール形成後に崩壊した岩塊の可能性がある。 第Ⅱ群は, この下部に数 m の高さで小丘をつくり, カール壁に向う方はやや急な斜面で, 前面はゆるい傾斜で, 周辺部から中心部に舌状にのびている。 第Ⅲ群は, さらに下部に舌状にのび, その中央部近くで現河川で2分されている。 いずれも這松におおわれていて堆積物を十分に観察することはできないが, 主として 20~30 cm 大の角礫と黄褐色の粘土で構成されている。

化雲岳付近のものでは, カール壁から約 100 m はなれた所に 角礫を主とした堆積物が2段に分かれて観察される。 また, 1,940 m 峯の北東部では, カール壁が2段に分かれて発達している。

第 10 図 忠別岳付近のカール

忠別岳の南西には, 小型であり, カール壁も 30 m 位であるが, 比較的よく保存された地形がのこされている。

また, 忠別岳の北西にもみられ, ここではカール壁はやや不明瞭である。 一種の岩石氷河に類似した形態である。 氷蝕堆積物は, 細粒物質をともなわない, 粗大な岩塊からなっている。 カール底の先端部で, ややもり上がった岩塊の小丘を形成し, この小丘から連続し, ほそい舌状の形態で, さらに下部に 200 m にわたって流下している。 この堆積物では, 淘汰作用はとくにみられず, 粗大な岩塊が乱雑に堆積している。 周辺よりやや高く, 堤状をなしている。 さらに, この下部に馬蹄形状に同種の堆積物が小丘をなしている。

高根ヶ原の東側の場合は, 断層にともなう地辷り滑落崖に発達しているもので, カール壁は直線に近く, 浅い。 また, 堆積物の多くは流失しているが, 急崖にわずかにひっかかるようにのこり, 細粒物質はほとんど流失しているが, のこされた堆積物の上面のわずかな平坦部に多角形土が発達している場合もある。

白雲岳付近のものについては, すでに記載したが, カール壁はいちじるしく侵蝕されている。 堆積物は2段に分かれ, 白雲小屋の建っている小丘と, この下部に広く発達しているものとに分けられる。 下部のものは, ヤンベタップ川源流に舌状にはり出しており, 流水により細粒物質は流失し, あたかも岩石氷河のような地形を呈している。

このほか, 図幅西部の硫黄沼付近や小化雲岳の北方にも類似した地形が発達している。

このような氷蝕地形あるいは類似した地形の分布を全体的にみると, カール底の高さは標高 1,600 m 以上にそろう。 硫黄沼および小化雲岳の北方のものではやや低く, 標高 1,500 m の高さとなる。 このように一定の標高にそろうことは, 気候的要因に支配された地形であることをしめしている。

一方, このような地形の分布する地域は, すべて, 大雪火山群の第Ⅱ期以前の岩石地域にかぎられており, とくに規模の大きいものは, 第Ⅰ期の熔岩流地域に多く分布している。 また, 標高から判断すれば, 分布可能な地域に入る旭岳の山体, 新大雪火山の山体には類似した地形は全くみられない。 このような地形の形成には, 積雪量が一定の役割を果たすものであるが, 現在, 旭岳と後旭岳の鞍部付近ではほぼ万年雪に近い残雪がみられる点, 他の地域と積雪量の違いを推定することはできない。

以上のように, 地理的, 地質的分布からみると, 少なくとも大雪火山の第Ⅲ期以前に形成されたものである点, 氷期に形成された地形とみるのが妥当である。

X.2 表層地形

ここに周氷河的気候条件下に形成されたと考えられる表層地形としてあげるものは, 現在なお生成しつつあるものと, 化石化したものがふくまれている。 これらの区別は長期的な観察,気候条件の精査を必要とするので, 十分に解明するにはいたっていない。 しかし, 大まかにみて, 先にも気候条件をあげたように, 現在は積雪量が多い点, 冬期に地中への凍結の侵入は, あまり深層までは達していない。 とくに, 夏季における融雪, 降雨量の多い点, これらの流水の営力が現在では支配的であると考えられる。 現在なお継続的に形成されているものは, 雪による削剥作用やごく表層における凍結, 融解にともなうものに限られているであろう。

表層の地形には各種のものがみられるが, 現在, これらの地形の発生論的な分類は十分にはなされていないし, 名称も不統一である。 とくに日本では記載もほとんど行なわれていない。 大雪山地域におけるこれらの地形の分布については第 6 図にしめした。 この分布は, 氷蝕地形の分布とほぼ一致し, いずれも, 標高 1,600 m 以上にかぎられて分布している。 この点は, 多くのものが氷期に形成されたことを裏付けているものと考えられる。

大雪地域にみられるものは, 幾何学的な形態をしめすものとして多角形土(いわゆる構造土, 環状砂礫), 条線砂礫などがふくまれ, 幾何学的な形態をしめさない無定形土として小塚土, 斜面に発達する階段状をした地形として流土階段(階段状砂礫, 芝草階段), 比較的平坦な地形として砕石原, 舗石, また, ゆるい斜面地形として雪田雪蝕地形などがあげられる。

X.2.1 多角形土

一般に構造土と称されているもので, 構成物質, 構造によっていろいろな形態をしめしている。 大雪山地域でしばしば観察されるものは, 通常多角形土, 礫質多角形土が多い。

通常多角形土の代表的なものとしては, トムラウシのヒサゴ沼の西方, 標高 1,848 m 付近の窪地に発達している。

この窪地は, 直径 100 m 位のほほ円形に近い窪地で, 周辺は這松, ナナカマドの植生におおわれ, 中心部は裸地になっている。 這松から裸地の間はチングルマを主とした草本科の植生におおわれている。 中心部の裸地は, 例年 8 月初旬までは湛水している。 小さな段が2段発達しており, 最大湛水面以上の所にしか這松は生えていない。 したがって, ここでは, 多角形土の形成されているのは, 融雪期に一時期 湛水下に入るか, ひじょうに湿じゅんな条件下におかれている。 周辺部から中心に向かってゆるく傾斜し, 周辺部では条線砂礫との漸移型がみられる。 一般的に, 多角形土は中心部に向かうにしたがい大きくなり, 3 m におよぶものがあり, 構成する礫も大きくなる。 とくに多角形土と多角形土の交点にあたるところでは 50 cm 大におよぶ礫もみられる。 中心部のおそくまで湛水しているところには不規則に大きな礫があり, 多角形土の発達がそがいされている。

第 11 図 トムラウシの多角形土

第 12 図 トムラウシの多角形土

第 13 図 トムラウシの多角形土

ここの多角形土は一般に 1 m 前後の大きさで, 直径 10~20 cm 大の礫が 1~2 列並んで配列し, それにそって数 cm の礫が並び, 環状部を形成し, ほぼ六角形に近い形態をとっている。 環状部は粗大な礫で, 細粒物質はなく, ややくぼみ, 中央部は細粒物質でやや高く盛りあがっている。

ヒサゴ沼の場合, 沼の周辺は植生におおわれていて観察できない。 沼の中に多角形土が発達しているが, 水深 30 cm 以上のところではみられず, あとからのべる舗石に漸移している。

この2つの例は湛水地に発達しているものであるが, 湛水地以外にも発達している。 五色岳と忠別岳の鞍部, 忠別岳の北側, 高根ヶ原等にみられる。

いずれの場合も礫からシルトまでの不均一な物質で構成されているところで, 稜線部に発達している場合でも, 環状部の礫質以外のところを歩くと, もぐりこむように水が十分に供給されている条件下に形成されている。

第 14 図 通常多角形土

第 15 図 礫質多角形土

これに対して, 礫質多角形土の場合は, すべて礫で構成されている。 高根ヶ原でこの例はしばしば観察される。 ここでは, 板状節理の発達した熔岩で構成されていて, 細粒物質はともなわない。 周辺の環状物は比較的大きな礫からなり, 環状部に向かうにしたがい片状の礫がだんだん立ち, 環状物の中心部ではほぼ垂直に立ち, クサビ状にめりこんでいる。 中心部では礫が水平に散在している。 このように環状になっている場合と, 礫が中心部で垂直に立っていて周辺部にしだいに平になる場合があり, 一見 バラ石のような形態をしめすものとがある。 礫質多角形土と通常多角形土とは漸移している。 環状部で扁平な礫が立って配列することは, 多角形土の形成にあたって対流現象をともなうことをしめす一例である。

このような大型の多角形土が渡り石によって分割される例や, 多角形土中に直径 10~20 cm 程度の小型の多角形土で再分割されているものもある。 このような小型のものは, 現在形成されつつあるものの可能性がある。

X.2.2 条線砂礫

条線砂礫は, 前記の多角形土が平坦地に発達するのに対して, 斜面に発達したもので, 多角形土を形成する淘汰作用とともに, 直接的に重力の淘汰作用を受けて形成したものである。

五色岳と忠別岳の鞍部では, 幅 10~20 cm で数 cm の大きさの礫が斜面の最大傾斜方向にそって並び, 数 m もつらなっている。 一般に, 礫は長径を垂直方向に立てて 2~3 列に並んでいる。 このような粗粒物質の間は細粒物で充塡されていなく, 間隙が多い。 周辺よりややくぼみ, 夏期には自然排水路となるので水の営力も一部ではくわわる。

条線砂礫は通常多角形土と漸移している。 勾配が 5°前後の傾斜面になると, 多角形土は規則性をうしない, 六角形状から細長い短形に変じ, 斜面方向にのび, 引きちぎられて条線砂礫に漸移している。 しかし, 大雪山地質図幅においてものべたように, 細粒物質の少ないところでは, 勾配が 10°前後の傾斜地でも通常多角形土が安定して形成される場合がある。

このように条線砂礫は, 通常多角形土の分布地域には漸移形としてともなっている。

X.2.3 流土階段

流土階段については, すでに大雪山地質図幅で形態の概略を記載した。 流土階段は斜面に形成され, 前面に急な崖を持ち, その背後に平坦面を有することで特徴づけられる。

第 16 図 流土階段

第 17 図 流土階段 [ 第 16 図の写真のスケッチ ? ]

急な崖を作る部分は粗粒な礫からなり, 平坦面は細粒物質が多い。 前面の崖は植生におおわれ, 現在では物質の移動がとめられている。 前面をおおう植生はミネズオウ, ツガザクラのたぐいが多い。 平坦面は一般に裸地で, この面上に多角形土を形成している場合が多くみられる。

斜面のゆるいところでは崖は低く, 平坦面が広く発達するが, 急な斜面では崖の高さが 70~100 cm にもおよぶものがあり, 平坦面はせまい。 このような場合では平坦面上を植生でおおっており, わずかな裸地を露呈している場合もある。 このようなところでは, あたかも植生がはぎとられ, 裸地を露呈したかのように観察されるところもあり, 植生におおわれながらもなお移動しているかのようにも観察される。

流土階段は, 高根ヶ原, 忠別岳, 化雲岳, トムラウシなどによく発達している。

X.2.4 舗石

ここに舗石としたものは, 砕石原とはことなり, 同じように礫で構成されてはいるが, 砕石原では礫が乱雑に堆積しているのに対し, 礫の堆積した上面の高さがほぼ一定にそろい, 敷石をしきつめたように配列しているものである。 舗石では, 礫と礫の間を細粒物質が埋めている場合が多い。

舗石の発達しているところは沢がかった窪地が多く, 8 月頃まで多量に残雪がみられるところから一種の雪蝕地形と考えられ, 現在なお形成されつつある地形の一つである。 おそらく, 雪の圧力とわずかな移動により, コロイド状態の細粒物質中に礫が埋没し, 上面の高さがならされ, 水平になるものと考えられる。

白雲岳の北側のヒサゴ沼にはその典型的なものがみられる。 ヒサゴ沼のものは, 現在あまり長くまで残雪におおわれていないことと, 多角形土に漸移する点, 化石化したものである可能性がある。 また, トムラウシの北部では細粒物質が洗い出されており, 砕石原と漸移するものもみられる。 このほか, トムラウシ岳周辺には砕石原も多く観察される。

X.2.5 雪田雪蝕地形 [ 以下の [注] 参照 ]

[注]
とくに名称がないので, 雪田雪蝕地形と仮称した。

大雪山地域にはゆるい斜面地形がよく発達しているが, これらの斜面地形についてはあまり観察されていない。 これらの斜面地形のうち, ほかの地形ときわだって特徴のあるスプーン状のコンベックス・カーブをえがく, 広い緩斜面地形が発達している。 この斜面の上部は, やや急なコブ状になり, 上部の斜面に続いている。 明瞭な崖はあまり作っていないが, 半月状に弧状につらなり, 両端は斜面に漸移している, 斜面が急な場合ほど上部の崖は一般的に明瞭になる。 この斜面地形のところは, ほかの斜面とことなり小沢の発達がほとんどなく, 水の営力による侵蝕作用で形成されたものではないことをしめしている。

多くの場合, このような地形のところには夏季にも厚い残雪が残っている場合があるので, 大規模な雪田の移動にともなう侵蝕作用で作られたものと考えられる。 このような斜面には, イワブキ, キンポウゲなど草本科の植生が多い。 この点, すでに植生におおわれているので, 現在の雪田そのものの侵蝕作用は微弱なもので, 氷期に形成されたものである可能性が多い。

黄金ヶ原, 化雲岳の東南部などの斜面によく発達している。 黄金ヶ原では比較的残雪は少なく, 上部の崖状部は2段みられる。 この点, 氷期の時期をしめしていると考えられる。 化雲岳の東南部のものでは, 残雪が多く, 上部の崖も比較的明瞭である。 末端部では舗石に連続している。

XI. 応用地質

XI.1 金属非金属鉱床

この地域で鉱床としてあげられるものは, カウンナイ川中流にある銅・鉛・亜鉛鉱床と 旭岳の爆裂火口付近の硫黄鉱床があるが, いずれも現在は稼行されていない。

XI.1.1 銅・鉛・亜鉛鉱床

カウンナイ川の下流から中流にかけて, カウンナイ・プロピライトを母岩とした鉱化変質がある。 これらは標式的な浅熱水性鉱床で, カウンナイ川の下流付近で N 20~40°W, 70~80°NE 方向の銅・鉛・亜鉛石英脈が数条みとめられる。 これらは幅 20 cm 前後で, 石英脈中に銅・鉛・亜鉛の散点する程度で稼行の対象とはならない。 これらの母岩変質はいずれも石英 - 絹雲母 変質帯を石英脈ぎわにともなうが, 幅はせまく, 連続性にとぼしいため下部の探鉱の必要性はないであろう。

さらに, カウンナイ川の中流付近では, 石英 - 絹雲母 変質帯あるいは 粘土化をともなう石英 - 絹雲母 変質帯が, かなりの幅で露出している箇所が数箇所みとめられる。 これらには 0.5~1.5 cm 程度の鉛・亜鉛をともなう黄鉄鉱 石英脈がみとめられる。 これらの黄鉄鉱 石英脈は明らかな鉱脈の𨫤を形つくるものがなく, いずれも 1 m 程度で尖滅し, 石英脈だけとなる。 また, 石英 - 絹雲母 変質帯も NW 方向のかなりの幅をもつが, W 方向には露出状況が悪く, さらに E 方向には大雪火山噴出物におおわれるため, 連続性を追跡することはできない。

カウンナイ川の中流付近には, 大正初期に発見された 国光鉱山 の廃坑が数箇所みられる。 これらの坑道はいずれも崩壊し, 脈形態の観察はできなかったが, 従来の報文からみると次のようである。

鉱脈はマンガン重石 [ タングステン酸マンガン, MnWO4 ] をともなう, 浅熱水性の銅・鉛・亜鉛・黄鉄鉱 石英脈である。 鉱脈は N 60~80°W の走向をもち, 80°前後 NE あるいは SW の落しをもち, 80~160 m 程度の探鉱が行なわれている。 鉱石の品位は, An [ Au ? ] : 0.3 g / t, Ag : 50 g / t, Cu : 0.4 %, Pb : 1.6 %, Zn : 3.25 % の平均位で, 一部の富鉱部で Cu : 3~4 % を産したといわれている。 マンガン重石は, この脈の石英に富む部分に長さ数 cm ないし数 mm の薄板状をなし, 石英脈の盤ぎわに近い部分, あるいは石英脈中に捕獲された変朽安山岩片の周縁にそって配列しているもようである。

XI.1.2 硫黄鉱床

旭岳の火口に胚胎するもので, 現在は休山中である。 資料によると, 鉱床は 旭岳の北西 - 西側山腹にみられる 硫気活動にともなって生成されている昇華硫黄鉱床で, 主要なものは爆裂火口内の姿見の池から東方に賦存し, 東西方向に 1 km, 南北に 250 m の間に点在している。 この硫気活動は, 西側から漸次弱まっている。

昭和 19 年に採掘権が設定され, 昭和 26 年, 32 年に一部採掘され, また煙道をもうけて火口からの硫黄の採掘が試みられたが, 現在は休山中である。

XI.2 温泉

この図幅域には多くの温泉があるが, 利用されているものは, 西部の湧駒別温泉, 天人峡温泉と東部のヤンベタップ川中流の高原温泉だけである。 このほか, ヤンベタップ [ 川の ] 上流で高根ヶ原の東側, および南部のトムラウシ [ 川の ] 上流に多数の温泉があるが, いずれも交通は不便であり, 調査も十分に行なわれていなく, 未利用のままである。

第 18 図 天人峡および湧駒別温泉の分布図

XI.2.1 天人峡 てんにんきょう 温泉

この地域で最も古くから利用されている温泉で, 昔は松山温泉と呼ばれていた。

忠別川の右岸にそって約 300 m の区間に 10 数ヶ所の湧出孔がある。 崖錐堆積物中から湧出しているが, おそらく, 基盤のカウンナイ・プロピライトの裂か中から湧出するものと考えられる。 泉温は 49~45 ℃ である。

分析値は第 4 表のようで, 含重曹 石膏泉に属する。

第 4 表 天人峡温泉の分析値(分析 : 衛生研究所)

天人峡
温泉
Temp
(℃)
pH K Na Ca Mg Fe Al Mn Cl PO4 SO4 HCO3 H2SiO3 HBO2 CO2 H2S
天三閣 45 7.5 5.6 175.0 278.0 112.0 0.30 1.20 0.30 300.0 0.30 685.0 509.0 188.0 25.1 - -
同(混合) 49 7.7 8.4 190.0 250.0 101.0 0.40 3.30 0.40 305.0 1.20 550.0 591.0 145.0 36.9 - -

XI.2.2 湧駒別 ゆこまんぺつ 温泉

旭岳の南西にあたり, 標高 1,300 m 付近から 900 m 付近まで数ヵ所にわたって湧出している。 旭岳熔岩中から湧出しているものである。 泉温は, 湧駒別温泉のある付近がもっとも高く 50~43 ℃ 内外で, 熊ノ沢 [ 位置不明 ] の上流, 湧駒別川の上流, 1,300 m 付近のものでは 40~30 ℃ で低い。 また, 双見沢 [ 位置不明 ] の上流では, 泥マンガンが広く沈澱している。

分析値は第 5 表のようである。

第 5 表 湧駒別温泉の分析値(分析 : 衛生研究所)

湧駒別
温泉
Temp
(℃)
pH K Na Ca Mg Fe Al Mn Cl PO4 SO4 HCO3 H2SiO3 HBO2
石川 - 6.6 1.71 34.9 85.4 20.5 0.60 0.50 - 285.0 2.20 633.0 232.0 267.0 -
営林署 - 6.0 1.74 3.1 175.0 68.9 0.50 3.40 4.30 283.0 0.70 569.0 128.0 226.0 -
43 6.5 1.53 2.6 214.0 85.2 0.20 6.30 - 224.0 0.60 524.0 451.0 100.0 12.6
小西 44 8.0 1.79 7.7 248.0 72.9 0.10 3.90 1.60 296.0 0.06 641.0 318.0 219.0 4.2
東川町 - 6.5 1.76 24.5 237.0 84.6 0.07 2.50 6.90 253.0 0.80 687.0 171.0 182.0 35.9

XI.2.3 高原 こうげん 温泉および周辺の温泉

第 19 図 高原温泉周辺の温泉分布図

ヤンベタップ川の左岸, ユスミの沢に高温な温泉が数ヵ所にわたって湧出している。 中でも直径 4 m, 深さ 2 m ほどの円形の湯つぼを形成して, 多量に間歇的に湧出しているもの(No. 1)もあり, 88~60.2 ℃ の温泉(No. 2, 3)がみられる。

高原温泉の上流で, ヤンベタップ川の二股から約 600 m 上流部にも多数の湧出孔があり, 周辺はいちじるしく温泉粘土化し「地獄」を形成している(No. 4)。 また, この周辺の川中にも湧出し 57 ℃, 12.3 ℃ のものがある(No. 5, 6)。 さらに, 上流の雪壁の沢 [ 位置不明 ] では崖にある孔から多量に噴出しているが, この温泉の上には蒸気徴候もみられる。 この温泉は上部の残雪がなくなると湯量は急激に減少するので, ごく表面に近いところで加熱されているものと思われる(No. 7)。 また, 地辷りによる崖錐中につくられた湯沼 [ 位置不明 ] では, 沼の中に湧出しているので正確な温度はわからないが, 湧出孔で 12.4 ℃ のものがみられる(No. 8)。 このほか, 稜線をこえた北側のエイコの沢では泉温 13.3 ℃ の鉱泉がみられる(No. 9)。

これらの分析値は第 6 表のようである。

第 6 表 高原温泉および周辺の温泉分析値(分析 : 佐藤巌・横山英二)

No. Temp
(℃)
pH Cl SO4 HCO3 free
CO2
Na K Al Total
Fe
Ca Mg Mn SiO2 TSM
1 85.0 4.5 4.6 261.7 - - 4.3 4.0 17.0 1.93 12.0 5.7 tr 53.5 421.0
2 88.0 6.2 5.7 0.0 6.0 13.2 - - 0.0 0.00 - - 0.00 8.5 27.0
3 60.2 4.8 7.1 - - - - - - 0.52 - - - - -
4 88.1 4.5 32.3 584.3 - - 9.2 5.5 66.0 11.15 18.0 9.3 0.28 119.0 1,024.0
5 57.0 6.5 - 5.0 475.8 90.6 - - - 0.34 - - - 109.0 -
6 12.3 7.8 4.2 - 280.6 6.2 - - - 0.00 - - - 94.0 -
7 66.7 4.8 3.6 - - - - - - 4.15 - - - 87.0 -
8 12.4 5.7 6.1 150.2 21.9 2.0 12.8 5.2 7.0 0.00 15.0 9.0 0.07 22.0 332.0
9 13.3 4.5 204.7 1,457.1 - - 23.6 12.8 10.1 10.50 74.0 20.1 0.65 95.0 2,034.0
[ 第 6 表に関する注意書き ]
TSM = total solid matter
No. の値と測定場所
No. 1, 2, 3 : ユスミの沢
No. 4, 5, 6 : ヤンベタップ川
No. 7 : 雪壁の沢
No. 8 : 湯沼
No. 9 : エイコの沢

XI.2.4 トムラウシ温泉群

第 20 図 トムラウシ地区の温泉分布図

第 21 図 トムラウシの地獄 [ 地獄谷 ? ] 付近の温泉分布図

第 22 図 トムラウシ地獄谷の湧出口

トムラウシ川の上流部に発達しているもので, 通称「地獄谷」と称されている。 ここでは, 第 21 図のように, 直径 30 m 前後の窪地を形成し, 数ヵ所から湧出している。 90 ℃ をこえるものが多く, 蒸気徴候がいちじるしい。 この地嶽谷からトムラウシ川右股にそって約 2 km の間に多数の徴候がみられ, 上流部でもそれぞれ地嶽を形成している。 その一つは, 新岳温泉と称されている。 また, この東側の稜線をこえた付近にもある。 いずれも 90 ℃ をこえる高温泉である。 これらの温泉はいずれも, トムラウシ熔結凝灰岩中から湧出し, ほぼ断層にそって湧出している。 これらの温泉についてはまだ十分な資料はないが, その一部は次のとおりである。

第 7 表 トムラウシ地獄谷周辺の温泉分析値

測定場所 温度(℃) pH Cl HCO3
地獄谷 No. 9 91.8 2.2 - -
No. 12 12.5 2.7 46.9 -
No. 14 91.8 7.7 7.1 69.5
新岳温泉 No. 1 95.3 2.6 - -

文献

石川俊夫・他(1952):
大雪火山, 地質学雑誌,Vol. 58.
石橋正夫(1953):
国光鉱山産マンガン重石およびその鉱床, 北海道地質要報,No. 23.
勝井義雄・他(1954):
大雪火山の岩石学的特性, 地質学雑誌,Vol. 60.
若生達夫(1957):
大雪山の構造土, 北海道学芸大学紀要,Vol. 8,No. 2.
五十嵐昭明・他(1957):
石狩国・十勝地区の硫黄・褐鉄鉱床調査報告, 北海道地下資源調査報告,No. 32.
石川俊夫(1958):
大雪山および層雲峡地質見学案内書.
酒匂純俊・他(1958):
トムラウシ山のみごとな構造土をめぐって, 地球科学,No. 36.
国府谷盛明(1963):
大雪山の氷蝕地形, 地下資源調査所報告,No. 30.
国府谷盛明・他(1966):
5万分の1地質図幅「大雪山」同説明書, 北海道開発庁.
北海道金属非金属鉱床総覧(1967):
工業技術院 地質調査所.

EXPLANATORY TEXT OF THE GEOLOGICAL MAP OF JAPAN (Scale 1 : 50,000)

ASAHI-DAKE

(Abashiri - 54)

By Moriaki Kōnoya, Takehiro Kobayashi, Cheoul Woo Kim and Shinpei Kawachi (Geological Survey of Hokkaidō)


Résumé

The area of Asahi-dake sheet map is situated in latitude 40°30' - 43°40' N. and longitude 142°50' - 43°00' E., and is located in the Daisetsu National park and belongs to Kami-kawa town, Higashi-kawa town, Biei town and Shin-toku town in Hokkaidō. The Daisetsu volcanic group is included in this sheet map and the neighbouring Daisetzu sheet map.

Topography

Topographically the area is divided into the Daisetsu volcanic group and their basements which are distributed in the eastern and western parts. The basement in the eastern part is mainly composed of the slate and base many ragged mountain ranges perallel to the structure of the slate. The western basement composed mainly of the propylite shows steep mountain. The Daisetsu volcanoes are comprise topographically the broad, relatively flat plains composed of basal lava flows, dome-shaped mountains such as Hakuun-dake and Tomuraushi, made of very viscous lavas, and typical stratified volcanoes such as Asahi-dake.

In addition, low flat plane is developed along the Ishikari river in the northeastern part.

Geology

The geology of this area is composed largely of Pre-Tertiary Hidaka Group, Miocene volcanic rocks and sediments, and many lava flows of the Daisetsu volcanic group which cover the above mentioned formations. In addition, Quaternary sediments are also present.

Pre-Tertiary formation is represented by the slate of the lower Hidaka Formation belonging to the Hidaka Group.

The Miocene formations comprise the Kaunnai propylite and Yanbetappu Formation. The Kaunnai propylite which is extensively distributed in the western part of the area is a kind of composite igneous body, being composed of rhyolitic and basaltic propylites. In some places both holocrystalline facies and green tuff are associated with them.

The Yanbetappu Formation is largely composed of latered, pale green welded tuffs, and is covered by normal deposits composed of the sandstons in the upper horizon.

The Pliocene Formations include the Tomuraushi welded tuff and the Uni-Ishikari lavas. The Tomutaushi welded tuff, composed of rhyolitic welded tuff covered by tuffaceous sandstone, is well-developed in this area as well as in the adjoining area of the sheet map of the upper-stream of the Tokachi River. The Uni-Ishikari lava composed of the hypersthene augite andesite is developed in the eastern part of the area.

The other volcanic rocks comprise the lava flows related to the formation of the Daisetsu volcanic group and can be grouped into the following stages.

  1. The stage of the formation of the basement of the Daisetsu volcanic group.
  2. The stage of the formation of the Older Daisetsu Volcano.
  3. The stage of the formation of the Younger Daisetsu Volcano.
  4. The stage of the formation of the Asahi-dake volcano.

Of these the I-stage belongs to the Pleo-Pleistocene, and the IV-stage belongs to the Holocene. The lavas of the I-stage include the Biei lower lava, Kogane-ga-hara lower lava, Numa-no-hara lava, Midori-dake lower lava, Ka-un-dake lava, Pon-chūbetsu lava, Kogane-ga-hara lava, Chūbetsu-dake lava, and Takane-ga-hara lava, all of which are two pyroxene andesites, somtimes wish well-developed platy joint. They are characterized by their extensive distribution, forming flat lava platforms, and are of the so-called flat lava type.

The II-stage includes the Older Daisetsu lava, Usiro-Asahi-dake lava, Haku-un-dake lava, Tomuraushi 1st lave and 2nd lava, all of which belong to the hornblende hypersthene augite andesites with coarse-grained phenocrysts.

The III-stage volcanics is represented by the Sōunkyo welded tuff, hypersthene augite andesitic in composition. Its geologic age is the late Pleistocene.

In addition the first terrace deposits, the Hakuyō-daira formation, and the third terrace deposits, all of which are Pleistocene or Holocene in age, are developed in the low land along the Ishikari River.

Glacial and Periglacial Topography

Cirques due to the glacial erossion are developed in the Kogane-ga-hara, Kaun-dake, Chūbetsu-dake and Takane-ga-hara, and their altitude is higher than 1,100 m above the sea level.

Peri-glacial topography includes polygonal soils, striation soils and stone pavements, all of which are also distributed in the altiude.

Economic geology

An epithermal deposit of copper, lead and zinc is found in the mid-stream of the Kaunnai River. An explitation was tried once, but the deposit was abandoned owing to its poor quality. The mining of sulfur which was the important non-metalic deposits in the crater of Asahi-dake has been discontinued.

Hot springs are abondant in this district, and many of them are used for bathing, such as Tennin-kyō, Yūkomanbetsu, and Kogen spas. Hot springs which issue from the upstreams of Yambetappu and Tomuraushi rivers have not been utilized. Especially along the upstream of Tomuraushi river, hot springs higher than 90 ℃ are distributed for the distance of about 2 km, and much steam is coming out.


昭和 43 年 3 月 25 日 印刷
昭和 43 年 3 月 30 日 発行
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